PENTAX67用の純正レンズの中でいちばん明るいレンズです。35mmカメラに換算すると50mmくらいのレンズの画角に相当し、中判レンズでは標準レンズに分類されます。
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有名なアトムレンズ...ではないようです
私の持っている105mmは「SMC TAKUMAR」で、「SUPER-TAKUMAR」の次であり「PENTAX」になる前のレンズです。シリアル番号が8490千番台ですので、1980年代中頃に製造されたレンズではないかと思います。ちなみに「TAKUMAR」の由来は、当時の旭光学工業の社長の弟さんである梶原琢磨氏からとったといわれています。
このレンズ、初期のものは屈折率を上げるためにガラスに酸化トリウムが添加されている、いわゆる「アトムレンズ」というのは有名な話ですが、私の持っているレンズがそれに該当するのかどうか、よくわかりません。アトムレンズは経年で黄変するといわれていますが、私のレンズは目視する限り、黄変は認められません。1970年代後半をもってアトムレンズは終焉を迎えたという話しもあるので、たぶん私のレンズは放射線は出していないと思われます。
余談ですが、数年前までPENTAX6x7 SHIFT 75mmというレンズを持っていましたが、このレンズはかなり黄変しており、カラーポジにはっきりと影響が出るほどでした。このレンズは製造年からしてアトムレンズではないと思うのですが、あまり出番がなかったので手放してしまいました。
レンズの主な仕様
レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
画角 : 46度
レンズ構成枚数 : 5群6枚
最小絞り : 22
最短撮影距離 : 1.0m
フィルター径 : 67mm
最大径x長さ : 91.5mm × 60mm
重さ : 590g
SMC TAKUMAR 6×7 105mm、見かけは小ぶりですが持った時にズシッとした重さを感じます(カタログ上は590gとなっています)。鏡胴が金属製ということもあるのでしょうが、明るくするために大口径のレンズを使っていることも重さの理由かもしれません。このレンズをPENTAX67に装着すると、絶妙なバランスを保っているように感じます。カメラとレンズで総重量が2.5kg近くにもなるので確かに重いのですが、このバランスのせいなのか、実際の重量ほどには感じないといったところでしょうか。
ヘリコイドも適度の重さがあり、35mmカメラ用のレンズに比べるとヘリコイドは重いと思うのですが、重量級のカメラに対してスカスカと動いてしまうようなことがありません。
SMC TAKUMAR6×7 105mm の写りと作例
個人的には非常に素直な写りのする素晴らしいレンズだと思っています。ガウスタイプのレンズは歪曲収差をおさえることができるといわれていますが、このレンズもダブルガウス構成になっており、風景が主な被写体の私にとって気になるような収差はほとんど見られません。開放で撮った際、被写体によってはごくまれに周辺部でふわっとしたような写りに感じられることがあります。ポジをルーペで見てみるとコマ収差が若干残っているような感じもしますが、詳しいことはわかりません。
シャープな写りをしますがカリカリとした硬さはなく、やわらかさを持ったシャープさとでも言ったらよいのか、それが画の立体感を生み出しているように思えます。そして、46°という画角は変に誇張することなく、ごく自然に風景を切り取ってくれるように感じます。画角は35mmカメラに50mmレンズをつけた時とほぼ同じとはいえ、焦点距離は約2倍の105mmあるわけですから、当然ぼけ方も50mmレンズのそれとは異なりますので、やはり中判カメラならではの画が生み出されます。
下の写真は福島県で偶然見つけた水芭蕉の群落です。小雨が降っていて、奥の方には霧が立ち込めています。写真の良し悪しはともかく、見事な描写をしてくれていると思います。
PENTAX67用の純正レンズはこれを含めて全部で11本そろえていますが、このレンズ、出番の多さでは3本の指に入ります。
余談
写りには関係ありませんが、私はTAKUMARレンズの平目ローレット加工されたデザインのヘリコイドが好きです。しかし、PENTAXになってからはあや目ローレットになってしまいました。しかも金属ローレット加工ではなく、ゴムのような材質のリングをはめ込んであるだけなので、質感も高級感も失われてしまっています。
(2020.7.26)