リバーサルフィルの使用期限

 私はフィルムや現像液などの保管専用に小型の冷蔵庫を使っています。フィルムは適当な量に小分けしてビニール袋に入れ、袋に使用期限を書き込んで保管しており、古いものから使用していくためにときどき冷蔵庫の中のフィルム位置の入れ替えをおこなっています。
 先日、フィルム位置の入れ替えをおこなっていたところ、7年ほど前の日付が書き込まれたフィルムが出てきました。日付の書き間違いかと思って袋を開けて確認しましたが、やはり7年ほど前に使用期限が切れているブローニーのリバーサルフィルムでした。5本入りが4箱(20本)、すでに製造販売が終了して久しいVelbia50の220フィルムでした。何故こんなことが起きてしまったのかわかりませんが、多分、フィルム位置の入れ替えの際に埋もれてしまったのでしょう。まるでセミの幼虫のように7年もの間、暗く冷たいところでひっそりと過ごしていたのかと思うと、なんだかいじらしくなります。もしかして冬虫夏草のようなものが生えていないかと思い確認しましたが大丈夫でした。
 ちなみに、箱には5,480円の値札ラベルが張られたままになっており、いまは220フィルムがなくなってしまったので単純比較はできませんが、現在の120フィルムの5本パックと同じくらいの価格ですから、この7年でフィルムの価格が約2倍になったという感じでしょうか。

Velbia50 220

 フィルムは生ものですので使用期限内に使ってしまうのが望ましいのですが、賞味期限を1~2日過ぎた牛乳を飲んでも何の問題もないのと一緒で、フィルムも保管状況が良ければ使用期限を数か月くらい過ぎたところで大した影響はないと思っています。しかし7年ともなると話しは変わってきます。そんなフィルムを今まで使った経験はありませんし、ネット上には10年、20年と使用期限を過ぎたフィルムを使ってみたというような投稿を見かけることがありますが、やはりあまり古いと色が綺麗に出ないようです。
 7年でどの程度の影響があるのかわかりませんが、現像してみたら駄目でしたということがあると恐ろしいので、きちんとした撮影に使うのはリスクがありすぎます。しかし、20本ものフィルムを捨ててしまうのはもったいないので、1本を使って試し撮りしてみることにしました。

 近所の公園で晴れた日、曇りの日、そして日没間近の夕方と条件を変えて撮影をし、現像に出しました。

 数日後、現像から上がってきたポジを見てびっくり。目視する限り、色に影響が出ているようには見えません。ルーペでも確認しましたが、使用期限内に撮影したポジとの違いはわかりませんでした。Velbia50は超高彩度で鮮やかな色乗りが特徴のフィルムですが、見るからにVelbia50という感じで写っていました。冷蔵庫で保管していたことが良かったのかどうかはわかりませんが、残りの19本のフィルムも多分問題なく使えるものと思われます。この調子だと、10年くらい過ぎても問題なさそうにさえ思えます。
 フィルムが非常にお高い昨今、このような出来事はとてもありがたい(?)ことです。私の脳は自分に都合の良いように考えるらしく、7年前にお金を払って購入したことなどすっかり忘れてしまい、今回の「棚から牡丹餅」のことだけに脳みそが使われているようです。

 私は大量のフィルムを一度に購入してストックして、それを何年も使い続けるということはなく、だいたい1年ほどの間には使い切ってしまいますので、今回のようなことは初めてです。使用期限を7年も過ぎたフィルムでも問題がなさそうというのはあくまでも私の個人的な感覚であって、厳密には乳剤の劣化とかが進んでいるのではないかと思います。また、メーカーが使用期限を設定しているのにはそれなりの理由があるのでしょうから、使用期限内に使ってしまうほうが良いのは当然ですが、それほどシビアな描写を求めるのでなければ、期限切れだからと言って捨ててしまうほどではないと思います。
 今回はリバーサルフィルムでしたので、カラーネガやモノクロフィルムが同じようになるかどうかは不明です。

 ちょっと話がそれますが、フィルムを長期保管する場合は冷凍保存が好ましいといわれています。「長期」というのがどれくらいの期間なのかわかりませんが、私の場合、保存期間は概ね1年程度ですので、冷凍保存は使ったことがありません。フィルムの劣化を防ぐためには冷凍保存のほうが良いのでしょうが、使う際に常温に戻すのに時間がかかってしまうので、お手軽な冷蔵保存にしています。

 7年の眠りから覚めた棚ボタのVelbia50で、2020年の紅葉を撮りに行きたいと思っています。

(2020.10.24)

#富士フイルム #リバーサルフィルム #ベルビア #Velvia

スライドフォトフレームを作ってみました

 フィルムで撮影していると、露出の過不足やカメラブレなどの失敗作がときどき生まれます。また、そういった失敗ではないにしても、写真や作品というにはあまりに駄作というものも量産されてしまいます。デジタルカメラの場合はすぐに確認して、失敗作や駄作は亡き者にしてしまうことができますが、フィルムの場合はしっかりと記録されてしまい、失敗作だろうが何だろうが分け隔てなく現像され、物理的に残ってしまいます。

失敗作でも廃棄できない撮影済みのポジ

 失敗作の多くは廃棄してしまいますが、露出も適正でブレもない、一応写真としては成り立っているものの、どう贔屓目に見ても駄作というコマについてはなかなか捨てることができません。出来の悪い子供ほどかわいいというのに似ているかもしれません。残しておいても一生、日の目を見ることもないだろうと思いながらも捨てられずにどんどん増えていってしまいます。

 日頃からポジはライトボックスで見るのが最も美しいと思っているのですが、ある日、現像から上がってきたポジをライトボックスでチェックしているときに、たまっている駄作ポジに光を当ててやろうと思いつきました。早い話、フォトフレーム(額縁)に駄作ポジを入れ、背面からライトで照らすだけのことですが、これによって駄作も少しは見栄えがするだろうと思ったわけです。
 私の場合、ブローニーの67判での撮影枚数が最も多いので、当然、67判の駄作の枚数もいちばんです。ということで、とりあえず67判のスライドフォトフレームを作ることにしました。

LEDライトを使ってバック照明

 2Lサイズのフォトフレーム(額縁)に合わせてマット紙をカットし、中央に67判ポジより一回り小さな窓を切り抜きます。マット紙の裏側にポジを固定し、乳白色のアクリル板を重ねて固定します。さらに、LED照明を取り付けるための枠を自作し、これをアクリル板に重ねてフォトフレームにはめ込みます。
 LED照明はアマゾンで2,000円ほどで購入。67判だけでなく4×5判にも使えるようにと、LED面がはがきサイズほどのものを選びました。これを先ほどの枠に取付ければ完成です。

スライドフォトフレーム用LED照明

 LED照明を点灯するとこんな感じです。

スライドフォトフレーム(67判)

 当然のことながら、バックライト方式ですので暗いところでも観賞することができます。プリントしたものを見るのと違って透明感や立体感があり、駄作でもずいぶん見栄えが良くなります。馬子にも衣裳という言葉がぴったりです。
 ときどきポジを交換すれば飽きることなく楽しめるかもしれません。
 また、4×5判用のマット紙を作れば4×5のポジも同様に見ることができるので、そのうち作ってみたいと思います。

 量産された駄作ポジ、何とか使い道はありましたが、日の目を見ることができるのはこれまでにたまった駄作のごく一部に過ぎないと思われます。

 余談ですが、駄作はブローニーだけでなく4×5判でも生まれます。しかし、撮影枚数に対する駄作の発生率がブローニーに比べてはるかに低いです。最近はほとんど使わなくなりましたが、以前、35mm判を使っていた時は、ブローニーよりも35mm判の駄作の発生率はずっと高かったです。やはり、フィルムが大きくなるにつれて、撮るときの気合の入れ方が違うのだろうと思います。

(2020.10.17)

#フォトフレーム #リバーサルフィルム

中判カメラPENTAX67Ⅱで撮る北秋川渓谷神戸川(東京都檜原村)

 GoToトラベルに東京もやっと仲間入りさせてもらったとはいえ、正直なところ、県境を越えて他県に行くことには気を使います。東京都ならいいというわけではありませんが、なるべく人と接しないようにということで北秋川渓谷の支流の一つである神戸川(かのとがわ)に行ってきました。

神戸岩の滝

 檜原街道から水根本宿線(都道205号)に入り、神大橋の手前を右折します。この先は北秋川に合流する神戸川に沿って進みます。4~5km行くと神戸岩(かのといわ)の駐車場に到着。車をここに停めて神戸岩に向かうと、間もなく神戸岩から流れ落ちる滝が見えてきます。落差はさほどありませんが岩穴から流れ出てくように見え、とても雰囲気のある滝です。

神戸岩の滝  PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR6×7 75mm 1:4.5 F22 1s PROVIA100F

 この滝の右側に梯子が掛けられており、そこを上っていくと神戸岩の中に入っていくことができます。しかしその先は岩場に幅30cmほどの足場があるくらいで、鎖につかまりながら進むという状態ですのでカメラや三脚などの機材をもっていくのは困難です。何とか持って行ったとしても三脚を立てるようなスペースもなく、残念ながら機材はこの滝の手前に置いていくしかありません。
 神戸岩はこの川の両側に垂直に100mほども切り立っており、ほとんど日差しが入ることもないと思われます。両側の岩に反響するせいか、流れる水の音がひときわ大きく聞こえます。

心霊スポットで有名な神戸対隧道 

 神戸岩を抜けた後、戻りは神戸岩をまいて通っている車道を歩くことになります。ここはトンネルになっているのですが、真っ暗なうえに有名な心霊スポットらしく、ここを一人で歩くのはちょー怖いです。後ろから何かついてきていないかとか、背中に何か張り付いていないかとか、そんなことが気になって振り返りながらつい足早になってしまいます。トンネル出口部分の天井だけコンクリートで固めてありますが、岩から染み出た水がこのコンクリートに女性の姿を描き出すといわれており、怖くて見る気にもなりません。トンネルから出た後に振り返りましたが、トンネルに吸い込まれるようなおどろおどろしい雰囲気があります。

小さな滝が続く神戸川の流れ

 気を取りなおし、神戸川を下流に向かいます。下の写真はいくつもの小さな滝を作りながら流れる神戸川を撮影した一枚です。

神戸川  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX-M 67 300mm 1:4 F32 8s PROVIA100F

 岩の間を流れ落ちる小さな滝と、川底が見える静かな流れとの対比がとても美しいと思います。枝っぷりの良い楓が渓流に張り出しており、まだ青々としていますが、紅葉するとまた違った美しさを見せてくれることでしょう。
 この辺りは山に囲まれており、かなり太陽が高くならないと渓谷まで陽が入り込んできません。陽が差し込んでくるとコントラストが強くなりすぎてしまい、しっとり感がなくなってしまうので、その前にできるだけ撮影しようと気がせいてしまいます。

神戸川 差し込む光に輝く水面

 午前10時半くらいになるとようやく木々の間から光が漏れて、渓谷に差し込んできます。澄んだ流れと光があちこちに美しい景色を作り出しています。そんな中の一枚が下の写真です。

神戸川  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 MACRO135mm 1:4 F22 1/4 PROVIA100F

 川面全体に光が差し込み、川底の石が輝いているようです。一方、川から垂直に立ち上がっている対岸の岩に差す光はまばらで、草や岩の上にたまった落ち葉を浮かび上がらせています。明るいところと暗いところの露出差が5EVほどもあるため、陽がさしていない岩のところは黒くつぶれてしまうかと思いましたが、かろうじて写ってくれました。

石垣に根を下ろしたシダ

 陽が高くなってきたので渓谷での撮影を切り上げ、林の中に入り、モノクロフィルムで林の中の小さな景色を切り取ってみました。下の写真は苔むした石垣の隙間に根付いたシダの葉っぱです。

シダ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 MACRO135mm 1:4 F4 1/60 ILFORD Delta 100

 石垣全体に陽が当たってしまうとフラットになってしまうので、木の枝の隙間からスポットライトのようにシダに陽が差し込む瞬間を狙ってみました。光を反射して輝く葉っぱと、周囲の濡れた苔とのコントラストが出るようにとの思いで撮影した一枚ですが、左上の苔に当たる光がちょっと強すぎる感じですね。
 林の中にはとっくに花期を終えたヤマアジサイもたくさんあり、モノクロで撮るには格好の被写体でした。

 今ごろの季節は、夏が終わって秋に向かうちょうど変わり目の時期で、ちょっと中途半端な感じもしますが、季節の移ろいを感じられる時期でもあります。錦秋の季節も間もなくで、気持ちも高ぶってきます。
 この日はすべてPENTAX67Ⅱでの撮影で、使用したレンズは55mm、75mm、105mm、135mm、200mm、300mmの6本でした。

(2020.10.10)

#神戸川 #北秋川渓谷 #渓流渓谷 #ペンタックス67 #PENTAX67

東京ゲートブリッジでピンホールカメラ試し撮り

 耐え難い暑さもやっとおさまったので、自粛中に作ったピンホールレンズの写りを確認するため、東京ゲートブリッジの定番撮影ポイントである若洲海浜公園に行ってきました。しばらく雨降りが続いていましたが久しぶりに青空が広がり、若洲海浜公園の駐車場は満車状態です。多くの方は釣りをしに来ているようです。ほぼ快晴で日差しは強いですが風がとても気持ち良いです。

WISTA 45SP でゲートブリッジ撮影

 2か月ほど前に作ったピンホールレンズでどの程度の写真が撮れるのか、4×5フィルムとブローニーフィルム(67判)で実際に撮影をしてきました。持ち出したカメラはWISTA 45SPとHorsemanのロールフィルムホルダーです。あとはピンホールレンズや単体露出計、メジャーなどの小物ばかりですので、レンズがないと本当に機材が軽いと実感しました。これで超広角から望遠まで無段階に対応できるのですから、ピンホールカメラ恐るべしです。

 まずは橋の南側からゲートブリッジ全体の形が綺麗に見えるポイントに行き、4×5フィルムで撮ったのが下の写真です。

東京ゲートブリッジ  WISTA 45SP Pin-hole Lens F330 7s (4×5判)

ピンホール径を逆算してみると

 撮影データですが、焦点距離は100mm(35mm判カメラに換算すると28mmくらいのレンズの画角に相当します)、F330でシャッター速度は7秒です。
 単体露出計で手前の草の部分と海面を計測し、ピンホール径が0.3mmということで計算した露出ですが、若干、露出オーバー気味です。ということはピンホール径が0.3mmよりもわずかに大きいようです。現像が仕上がったポジの状態からピンホール径を逆算すると、0.33mmくらいあることになります。ルーペを覗きながらマチ針で開けた穴ですので決して高い精度は望めず、まぁ、こんなものかなと思います。次回の撮影からはピンホール径が0.33mmということで露出を決めれば良いので、仕上がりはもう少し良くなることを期待したいです。

 周辺部の落ち込み(光量不足)がもう少しあるかと予想していたのですが、思ったほどではありませんでした。この写真のほかにもう一枚、焦点距離85mmで撮影したポジは四隅が若干暗くなっており、光量不足の影響が出始めているのがわかりました。計算上、最短撮影距離の68mmでは周辺部で2EVほど暗くなると思っていましたが、実際には1~1.5EVくらいでおさまりそうです。

画質は及第点

 画質は予想以上に解像しており、及第点といったところでしょう。さすがに草の一本いっぽんまでは識別できませんが、穂が伸びているところや左端にある時計の目盛りなどは十分わかります。少しボヤっとしていたほうが針穴写真らしいと思いますが、どこで折り合いをつけるかが悩ましいところです。機会があればもう少し径の大きなピンホールを作って試してみたいところです。
 この写真では太陽が左側にあるのですが、フレアが起きています。これを避けたい場合はフードやハレ切りを使えば防げますが、このように晴れた日の写真ではフレアがあることで降り注ぐ太陽の光を感じられるかも知れません。

ブローニーフィルムで撮影

 下の写真はブローニーフィルム(ロールフィルムホルダーを使用)で釣りをしているところを撮ってみました。

東京ゲートブリッジ  WISTA 45SP Pin-hole Lens F276 4s (67判)

 焦点距離が80mm(35mm判カメラ換算で40mmくらいのレンズの画角に相当)、F267、シャッター速度は4秒です。1枚目の写真同様、露出は若干オーバー気味です。
 手前の岩を大きく入れてみました。このような構図の場合、パンフォーカスにしようとするとレンズを使った通常の撮影ではかなり大きなアオリが必要になりますが、当然のことながらピンホールカメラでは全く気にせずにパンフォーカスになるのがすごいところです。
 また、シャッター速度が4秒くらいだと人の動きも極端に大きくブレることなく、ぎりぎりそれとわかるくらいには写し止めることができます。

遠景を望遠で撮影

 さて、長い焦点距離(望遠)ではどのように写るかということで撮影したのが下の写真です。

東京ゲートブリッジ  WISTA 45SP Pin-hole Lens F900 50s (67判)

 撮影データは、焦点距離270mm(35mm判カメラ換算で135mmレンズの画角に相当)、F900、シャッター速度は50秒です。露出オーバー気味も手伝ってか、やはりボヤっとした感じが強まっている印象ですが、ここまで写ってくれれば良しということにしましょう。

 今回は試し撮りということで4×5フィルム2枚、ブローニー(220)フィルム1本(20カット)を撮影してきましたが、構図確認用のピンホールレンズの穴径が大きすぎて、フォーカシングスクリーンに映る像がぼやけすぎてしまうということが判明しました。穴径が大きければ明るい像が得られますがボケも大きくなってしまい、構図を決めるのに手間がかかってしまいます。ここは改善の余地のあるところです。
 また、ピンホールレンズが計算通りに作ることができているか確認するため、今回は露出がシビアなリバーサルフィルムで撮影しましたが、針穴写真はモノクロやネガフィルムのほうが雰囲気があると思いますので、若干の改善をした後、次回は本格的な撮影に臨みたいと思います。

(2020.10.5)

#東京ゲートブリッジ #ピンホール写真 #ウイスタ45 #WISTA45 #リバーサルフィルム