シートフィルムをフィルムホルダーに装填する際のミス防止

 大判カメラで撮影する場合は、まずシートフィルムを専用のフィルムホルダーに装填しなければなりません。この装填の仕方についてはたくさんの方が投稿されていらっしゃいますので、そちらを見ていただいた方が良いと思います。ここでは装填時のミスを防ぐちょっとしたコツのようなものをご紹介します。

シートフィルム挿入時に発生しやすいミス

 シートフィルムを装填するのは真っ暗闇で行なわなければなりません。暗室がいちばん作業しやすいのですが、暗室がない場合はダークバッグやダークボックスの中で行なうことになります。私も家でフィルムの装填をおこなうときは暗室にこもりますが、撮影先でフィルムが不足した時は暗室がありませんので、ダークバッグを使います。ダークバッグは中が狭くて、決して作業性が良いとは言えませんが仕方ありません。

 シートフィルムの装填は慣れてしまえばどうってことないですが、慣れないうちはミスってしまうこともあります。多分、いちばん多いミスはフィルムホルダーの引き蓋用のスリットに入ってしまうことではないかと思います。フィルムの表裏を間違えるというミスも可能性としてはゼロではありませんが、右側から挿入する場合はフィルムについているノッチコードを右手前に来るように確認さえすれば、表裏が逆になることはまずありません。
 ということで、フィルムが正しくない位置に入ってしまうミスの防止について触れたいと思います。

フィルムホルダーの構造

 下の写真は4×5判フィルムホルダーの全景(写真左)と、ホルダーの引き蓋を引いた状態(写真右)です。

4×5判 フィルムホルダー

 ここにシートフィルムを1枚ずつ入れていくわけですが、挿入する箇所を拡大したのが下の写真です。

4×5判 フィルムホルダー

 引き蓋を引くとレールのようなものが2本あることがわかります。上側のレール(黄色の矢印)と下側のレール(赤色の矢印)です。上側のレールと下側のレールの間のスリット(溝)は引き蓋が通るところで、フィルムは下側のレールの下のスリットに入れなければなりません。
 ところが、引き蓋が通るスリットにフィルムが入ってしまうことがあります。そうなるとフィルムが浮いた状態になりますので、どんなにピントを合わせても実際に撮影するとピントがずれた写真になってしまいます。また、最悪の場合、撮影後に引き蓋を挿入するときに引き蓋でフィルムが押されて、フィルムが折れ曲がってしまうという事態になりかねません。

フィルムを正しい位置に入れるために

 フィルムが正しい位置に入った状態(写真左)と、引き蓋が通る溝に入ってしまった状態(写真右)が下の写真です。

4×5判 フィルムホルダー フィルムの挿入位置

 正しい位置に入ったかどうか確認するために、挿入後に指でこの2本のレールを触ってみるという方法があります。上側と下側のレール端が5mm程ずれていますので、2つのレールの端が確認できれば、フィルムが正しい位置に入っていることになります。
 また、もし引き蓋が通るスリットに入ってしまっている状態で引き蓋を閉めると、引き蓋の動きが重くなるので、注意しているとわかります。

 ですが、そもそも引き蓋が通るスリットに入らないようにするのが理想です。そのために、引き蓋を全部引き抜てしまうのではなく、下側のレールと同じくらいの位置まで開いた状態でフィルムを挿入することで、このミスを防ぐことができます(下の写真)。

4×5判 フィルムホルダー

 赤色の矢印が下側のレールの端で、これと同じくらいの位置で引き蓋を止めておきます。この状態だと、引き蓋が通るスリットに入れる方が至難の業です。
 真っ暗闇の中、手探りでこの状態にするのが難しい場合は、暗室やダークバックに入れる前にこの状態にしておきます。

 フィルムが正しい位置に入ると、フィルムの後端を指で軽く押すだけでスーッと入っていきます。もし、引っかかるような感触があったり動きが重いようであれば、正しくない場所に入っている可能性が高いので、再度入れ直しを行なった方が無難です。

 なお、フィルムホルダーを振り回したり強く振ったりすることなく、普通に扱っていれば引き蓋が勝手に抜けてしまうようなことは起こりませんが、もし心配な場合はマスキングテープとかパーマセルテープで止めておけば振り回しても安心です。

(2020.11.26)

#フィルムホルダー

反射光式単体露出計:PENTAXデジタルスポットメーター

 私が使っているカメラは一部を除いて露出計が内蔵されていません。ですので、撮影の際には腰巾着のように単体露出計も連れていきます。そこで、日ごろ愛用しているPENTAXデジタルスポットメーターについてご紹介したいと思います。

デジタルスポットメーターとは

 スナップ撮影の時など、単体露出計を使わず目測だけで露出を決めて撮ることもありますが、風景撮影、特に大判カメラでの撮影時には必ず使用します。大体は目測でもわかりますが、フィルム代も現像代も高い大判で失敗するとダメージが大きいので、必ず単体露出計で確認をします。

 数台ある単体露出計の中でも最も出番の多いのが下の写真の「ペンタックス デジタルスポットメーター」です。

PENTAX DIGITAL SPOTMETER

 発売は1980年代の中頃らしく、かれこれ35年くらいは経っていることになります。もちろん、いまは製造されていません。ときどきネットオークションに出品されているのを見かけますが、程度の良いものは4万円近くの値がつけられています。
 露出計は測光方式によって大きく分けると入射光式と反射光式がありますが、この露出計は反射光式です。測光する範囲(受光角)は1度で、非常に狭い範囲の測光が可能です。受光角1度がどれくらいの範囲かというと、10m先にいる人の手のひらだけを測ることができるくらいの狭さです。35mm判カメラの2400mmくらいのレンズの画角になります。
 測光範囲はISO100でEV1~20、最小目盛りが1/3段ですので通常の撮影では全く問題ありません。

デジタルスポットメーターのファインダー内表示

 この露出計は機能が極めてシンプルで、基本的には被写体の輝度を測る輝度計といったところです。その輝度(Bv)をもとにISO感度に対応したEVの値が表示されるので、あとはダイヤルを回して絞りやシャッタースピードを求めるという、非常に単純な操作のみです。これのどこがデジタルなのかと思われるかもしれませんが、測光した値がファインダー内に数字(デジタル)で表示されるからだと思います。古き良きアナログ時代の匂いがする露出計です。

ファインダー内表示 (EV8+1/3 を意味します)
  中央の黒っぽい丸が受光角1度の測光範囲です

露出設定のための目盛りリング

 「測光(被写体の輝度)だけは責任をもって行なうから、あとは自分で決めてね。」と言わんばかりの潔さというかシンプルさが私はとても気に入っています。
 下の写真ではわかりにくいかも知れませんが、測光した値(EV)をオレンジ色の三角マークに合わせ、白で書かれたシャッター速度と青で書かれた絞りの組み合わせを読み取ると、露出値がわかるという仕組みです。

上からISO目盛り、シャッタースピード目盛り、絞り目盛り、EV目盛り

スポット露出計を使う理由

 風景撮影の場合、被写体が遠く離れたところにあることがほとんどですので、そこまで出向いて行って測光するというわけにはいきません。そのため、反射光式の露出計という選択になるわけですが、反射光式の中でもスポット露出計を使っている理由はそれだけではありません。フィルムに写し込まれる広い範囲の中には当然ですが明るいところも暗いところもあります。全体がなんとなく適正露出で写っているというのも大事ですが、ここだけはきちんと表現したいという場所があり、そこをピンポイントで測って、自分のイメージ通りの露出を決めるということができるのが最大の理由です。
 また、リバーサルフィルムを使用する場合、露出設定がシビアなので、明暗差が大きいと黒くつぶれたり白飛びしたりしてしてしまうことがありますが、それを把握できるのもスポット露出計ならではです。

 重さは250gほどで負担になるほどの重さではありません。もう一回り小さいとかさばらなくてありがたいとも思いますが、持った時に手になじむ感じと操作性は抜群で、これくらいの大きさが必要なのかも知れません。

 最近のカメラは露出計が内蔵されており、しかもいくつもの測光方式を使えるとあって、単体露出計の需要がガタ落ちです。それでもスタジオ撮影には使われることが多いのか、入射光式の単体露出計は複数のメーカーから何種類かの製品が出ていますが、反射光式の単体露出計は本当に少ないです。さらに、受光角が1度というような露出計は1~2機種といった状態ではないでしょうか。

 デジタルカメラを露出計の代わりに使うという方法もあり、全体の仕上がり具合を見るには便利ですが、1度というような狭い範囲の測光は難しく、なかなか単体露出計の代用というわけにはいきません。

 なお、単体露出計を使った測光法や露出設定について書き出すと長くなるので、別途、「How to」のページに掲載したいと思います。

(2020.11.24)

#露出 #ペンタックス #PENTAX

八方ヶ原(栃木県)で紅葉と渓谷の撮影(後編)

 八方ヶ原での撮影の2日目です。風も少なく、穏やかな秋晴れが続いています。2日目はもう少し標高の高いところでの撮影です。

おしらじの滝

 まずは「おしらじの滝」からスタートです。矢板から塩原に抜ける八方道路(県道56号)をひたすら進むと、登り切ったあたりに駐車場があります。駐車場の脇から滝に下る登山道のような道がついていますので、ここを下っていきます。あちこちぬかるんでいて歩きやすいとは言えませんが、急なところには柵も設置されています。最近設置されたようで、遊歩道の整備を進めているのかもしれません。

 10分ほど下ると滝の正面に到着します。以前は滝つぼまで降りて行かれたようですが、現在は立ち入り禁止になっており、4~5人も立てばいっぱいになりそうな狭い観瀑台から見るしかありません。必然的に撮影のアングルもほぼ固定されてしまいます。
 水が枯れてしまって滝が消滅してしまうことも多いらしいのですが、この日はまずまずの水量が流れ落ちていました。

おしらじの滝  Linhof Mastertechnika 45 Schneider APO-Symmar 180mm 1:5.6
                     F22 6s PROVIA100F

 それにしても美しい滝です。豪快な音を立てて落ちる迫力のある滝も見事ですが、それとは対極にあるような優美な滝です。私が今までに見た中でも、3本の指に入るくらいの優美な滝ではないかと思います。吸い込まれるような深い色をした静かな滝つぼに滝が映り込んでおり、優美さを一層引き立てている感じです。陽が差し込むと滝つぼはターコイズブルーのような美しい色に輝くようですが、残念ながら早朝なので滝つぼには光が差し込んでおらず、奇跡の色を見ることはできませんでした。
 もう少し露光時間を長くして、水面に浮いている葉っぱの動く軌跡を写し込んだ方が良かったかもしれません。

 1時間ほど撮影をしていましたが、その間、訪れる人は一人もおらず、気兼ねなく撮影をすることができました。とても狭い場所なので、他に滝を見に来たり撮影しに来た方がいらっしゃると、三脚立ててゆっくり撮影というわけにはいきません。日中になると訪れる人も増えると思います。
 撮影を終えて駐車場に向かいますが、戻りは重い機材を担いで急な坂を上っていかなければならないので少々しんどいです。

鹿の股沢風景林で紅葉の撮影

 さて、次はスッカン沢に向かいます。この先、道路は下りになり、間もなく那須塩原市に入ります。紅葉真っ盛りといった感じで、ハッと目を引くような黄紅葉があちこちにあります。このあたり一帯は、「鹿の股沢風景林」と呼ばれており、美しい落葉樹の林が続いています。ちょっと寄り道して、この風景林の中で撮影していくことにしました。林の中に分け入っていくと、車道からでは見ることのできない発見があります。
 下の写真は林の中で偶然見つけた紅葉です。ハウチワカエデではないかと思われます。周囲はすでに落葉している木が多く、そのため、紅葉がひときわ輝いている感じです。

ハウチワカエデ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 55mm 1:4 F22 1/8 Velvia50

 写真でもわかると思いますが、この林の中に入るとこのような感じでたくさんの木があって見通しがききません。撮影をしているうちに方角がわからなくなり、どちらを向いても同じような景色で迷ってしまうこともありますので、出口までの目印を決めておいたほうが無難です。
 この風景林、初めて入り込んでみましたが、とても魅力的な場所です。新緑の季節もさぞかし美しいのではないかと思います。

スッカン沢 遊歩道修復工事中

 スッカン沢も紅葉の最盛期でしたが、昨年(令和元年)の台風19号で被害を受けた遊歩道の改修工事中のため、沢に降りることができません(現在は解除されているようです)。スッカン沢には「雄飛の滝」や「仁三郎の滝」など、見ごたえのある滝がたくさんあるのですが残念です。
 せっかくなので沢を見下ろす雄飛橋から1枚撮影してみました。まだ沢に陽が回り込んできていないので、若干色かぶりしていますが、右端の紅一点のモミジがとても映えていると思います。

スッカン沢  Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 150mm 1:5.6
                    F32 4s PROVIA100F

 スッカン沢を下りながら撮影する予定でしたが工事中のためそういうわけにもいかず、予定を変更してもう少し那須塩原方面に向かうことにしました。下調べをしっかりしておかないとだめですね。

カエデの紅葉が真っ盛り

 県道56号線は塩原方面に向けて上りになります。スッカン沢から北寄りの山は紅い色(紅葉)が多いように感じます。紅葉はどれも美しいですが、やはり何といってもカエデの紅葉は第一級だと思います。カエデの紅葉を見つけるとシャッターを切りたくなってしまいます。
 下の写真はヤマモミジかオオモミジのどちらかではないかと思うのですが、炎のような色が印象的で撮った一枚です。

ヤマモミジ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F8 1/60 Velvia50

 こういった光景は晴れた日でなければ撮れませんが、個人的には燃え立つような紅葉よりも、どちらかというとしっとりとした紅葉のほうが好きです。しかし、紅葉と青空の組み合わせは何とも言えない爽快感がありますし、何といっても秋の清々しい空気を感じます。

 今回掲載した写真のうち、2枚目と4枚目はVelvia50で撮影したものです。やはり、このフィルムの発色には派手さがあります。この派手さも、鮮やかな紅葉を写し取るには向いているのかもしれません。

 北関東以北の紅葉の時期はほぼ終わってしまいましたが、東京近郊の紅葉はこれからです。寒い地方の紅葉と比べると東京のそれは鮮やかさでとてもかないませんが、美しい紅葉に出会えることを期待したいです。
 

(2020.11.21)

#八方ヶ原 #渓流渓谷 #紅葉 #リバーサルフィルム

八方ヶ原(栃木県)で紅葉と渓谷の撮影(前編)

 10月も中旬を過ぎてから秋の進み方が例年に比べて早まった感じがします。今年は台風の上陸も少なかったため、紅葉が綺麗ではないかといわれていますので、紅葉が見ごろを迎えている栃木県の八方ヶ原に行ってきました。

宮川渓谷 傾聴の滝

 初日は八方ヶ原の入り口、県民の森のある宮川渓谷での撮影です。東北自動車道の矢板ICから30分ほどで県民の森駐車場に到着。広い駐車場が完備されていますが、早朝のせいか車は1台もありません。このすぐわきに宮川が流れており、ここを起点に川に沿って上流と下流にそれぞれ遊歩道が整備されています。まずはここで渓谷や滝を撮っていきます。

 上流に向かう遊歩道を歩くと間もなく「傾聴の滝」が見えてきますが、滝の上部に出てしまい全容が見えません。全体を見るためには川の反対側(右岸)に行かなければならないようです。少し引き返して橋を渡って右岸側に行き、上流に向かって歩くと滝つぼまで降りていくことができます。ここは宮川渓谷の中でも人気の撮影ポイントらしいです。

 ということで、下の写真が傾聴の滝です。

傾聴の滝  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F32 4s Horseman612 PROVIA100F

 落差は3mほどでそれほど大きな滝ではありませんが、滝に比べて滝つぼがとても広い印象です。そして、とても穏やかな滝つぼです。滝つぼ全体を入れると滝がずいぶん小さく感じられてしまうので、612ホルダーでパノラマ撮影しました。早朝ということもありますが周囲を大きな木が覆っているため、滝つぼはかなり薄暗いです。水面に滝の向こうにある木々の黄葉を映したかったのですが、かろうじて黄色く見えてるといった感じですね。新緑の頃は水面に緑が映り込み、とても美しいのではないかと思います。

色づき始めた宮川渓谷を大判カメラで

 さらに上流に向かうと、岩の間を蛇行する優美な流れが続いています。水量は多くありませんので激しさとか力強さというよりは、整った渓谷美という表現が適切かもしれません。
 中でもいちばん渓谷美を感じた場所から撮ったのが下の写真です。

宮川渓谷  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6
                   F32 4s PROVIA100F

 この辺りは標高があまり高くないので紅葉もようやく色づき始めたところですが、緑と黄色のグラデーションも綺麗なものです。手前の岩から奥の木々までパンフォーカスにしたかったので、レンズを少しティルトしています。また、苔むす岩のしっとり感を出すために若干アンダー気味の露出設定にしています。

 ゆっくり撮影しながら2時間ほどで上流側の遊歩道の終点になります。ここで折り返して下流に向かいます。
 上流側は流れが穏やかでしたが、傾聴の滝からさらに下流にいくと流れも若干急になり、創造の滝、反省の滝、五条の滝のほかに名もない小さな滝がたくさん見られます。それにしてもこの渓谷の滝にはユニークな名前がつけられているものです。

赤滝 水辺景観10選

 午前中で宮川渓谷での撮影を切り上げ、中川にある「赤滝」に向かいました。林道赤滝線に入りましたが、滝の入り口がわかりません。途中から工事のため通行止めでしたので歩いていたところ、人ひとりが通れるくらいのガードレールの切れ目があり、「水辺景観10選 赤滝」と書かれた小さな看板が立っていました。車では気づかずに通り過ぎてしまいそうです。
 ここから狭くて急な道を降りていくと赤滝の正面に出ることができます。

 滝から下流は大きな岩がごろごろしており、足場は極めてよろしくありません。三脚を立てるのも一苦労といった感じです。

 滝の下の方の岩が赤いことから「赤滝」と呼ばれているようです。修験者の滝行にも使われているとのことですが、確かにそんな雰囲気が漂っています。水量はさほど多くありませんが落差は10mほどあるので、滝に打たれたら結構痛そうです。
 滝の美しさと周囲の険しい環境を表現できればと思い、撮影した一枚です。手前の岩を強調するため、カメラのバック部であおっています。

赤滝  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6 F32 2s PROVIA100F

 撮影しているときは全く気がつかなかったのですが、画の下側中央左寄りにある手前から2つ目の大きな岩に何やら文字のような絵のようなものが彫られています。フィルムスキャンした画像をパソコンで確認しているときに見つけましたが、何と書いてあるのか読めません。別のところにあったものが崩れてきたのか、それともここにあった岩に彫ったのかわかりませんが、いずれにしても霊験神秘な感じがします。

岩に刻まれた文字? 絵?

 なお、この滝のさらに下流には赤滝鉱泉という秘湯一軒宿があるらしいです。江戸時代から続く湯治場とのことで、次回は訪れてみたいと思います。

小さな秋があちこちに

 赤滝の撮影を終え、中川沿いを歩いてみましたが、この辺りまで来ると紅葉もだいぶ進んでいます。色づいた木の実もあちこちで見られたり、足元にはリンドウが咲いていたり、滝や渓谷とは違った小さな秋を撮ることができました。被写体は豊富で、いつまで撮っていても飽きることがありません。
 下の写真はガマズミだと思われます。葉はすっかり落ちていますが、真っ赤に色づいた実が輝いていました。もう少し寒くなって霜が降りる頃になると白い粉をふいて甘くなると思うのですが、まだ早いようです。

ガマズミ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX-M 300mm 1:4 F4 1/30 EX-Tube PROVIA100F

 後編に続きます。

(2020.11.17)

#八方ヶ原 #渓流渓谷 #紅葉 #リバーサルフィルム

フジノン 大判レンズ FUJINON SWD 1:5.6/75

 フジノンの大判用レンズです。SWD(Super Wide Delux)シリーズは65mm、75mm、90mmの3種類が発売されており、これはそのうちの一つです(もちろん、すでに販売終了になっていますが)。

レンズの主な仕様

 4×5判で使用した場合、35mm判に換算すると21mmくらいのレンズの画角になりますので、超広角に分類されるレンズです。最大包括角度は105度、イメージサークルは196mm(f22)あり、キャビネ判まで対応していますが決してゆとりがあるというわけではありません。横位置撮影の際のライズ可能範囲は26mmほどで、大きなアオリを使おうとするとケラれてしまいますので注意が必要です。

FUJINON SWD 1:5.6/75

 レンズの主な仕様は以下の通りです(富士フィルム株式会社 公式HPより引用)。
   イメージサークル  : Φ196mm(f22)
   最大包括角度    : 105度
   最大適用画面寸法  : キャビネ
   レンズ構成枚数   : 6群8枚
   最小絞り      : 45
   シャッター     : No.0
   シャッター速度   : T.B.1~1/500
   フィルター取付ネジ : 67mm
   前枠外径寸法    : Φ70mm
   後枠外径寸法    : Φ70mm
   フランジバック   : 85.1mm
   バックフォーカス  : 53.4mm
   全長        : 76.0mm
   重量        : 400g

ベッドの写り込みを防ぐ

 このレンズをリンホフマスターテヒニカ45で使用する場合は、横位置でも無限遠時はベッドがわずかに写り込んでしまいますので、ベッドダウンかライズが必要になります。しかし、撮影するポジションまでレンズを繰り出すとUアーム(レンズ支柱)がボディトラックと繰出しトラックの両方にかかってしまい、ベッドダウンができません。これを回避するためには凹みレンズボードを使って、Uアームがボディトラックから完全に外れ、繰出しトラック上にある状態にするか、もしくは、逆にUアームをボディトラック上に置いて、カメラのバック部を引っ張り出すかをしなければなりません。ただし、後者の場合はピント合わせに苦しみます。
 私の使っているレンズボードは通常のフラットなタイプですので、少しだけライズをしてお手軽に済ませてしまっています。(ちなみに、マスターテヒニカ2000の場合はボディトラックが移動するような機構が組み込まれており、Uアームをボディトラックだけに乗せて使えるのでずいぶん便利です)

大きな後玉外枠径

 F5.6の大口径ですので明るくて使い易いですが、レンズ単体で400gあり、結構重いです。また、後玉の外枠径が70mm(前玉の外枠径と同じです)もあるため、リンホフマスターテヒニカやウイスタ45では問題ありませんが、ホースマン45FAの場合はレンズ取付け部の穴径が小さくて入りません。どうしても取り付けたい場合はいったん後玉を外し、蛇腹の後方から手を突っ込んで後玉を取り付けるという面倒なことをしなければなりません。
 下の写真はSWD75mm(左)とW210mm(右)を真横から見た状態です。SWD75mmの後玉が大きいのがわかると思います。

FUJINON SWD75mm & FUJINON W210mm

 このレンズは建築やインテリアなどの撮影に使われることが多いのかもしれませんが、私はそういった写真を撮ることはほとんどなく、もっぱら風景撮影に使っています。手前から広がりのある風景をパンフォーカスで撮ることができるので、インパクトのある写真にすることができます。超広角といえども焦点距離は75mmあるわけですから、よほど間近なものでも撮らない限り、パースが強すぎることによる歪みは抑えられていると思います。超広角レンズの特徴であるパースをあえて出したい場合は極端に近寄るか、もしくは、より短焦点のレンズを使う必要があります。

作例 青森県下北半島 仏ケ浦

 同じフジノンの大判レンズの中でもこのSWDシリーズのレンズは、Wシリーズのレンズと比べるとコクのある色乗りと言ったらいいのか、若干こってりとした印象があります。決して嫌みのあるこってり感ではなく、ヌケの良いクリアな色乗りが特徴のレンズではないかと思います。

 下の写真は青森県の仏ケ浦で撮影したものです。

仏ケ浦(青森県)  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6  F45 1/8 PROVIA100F

 早朝に撮影したのでまだ太陽の光が若干赤みを帯びていますが、空と雲と岩のコントラストが綺麗に出ていると思います。中央右寄りの「如来の首」という名前がついている岩の高さは15mほどあります。この如来の首ももちろんですが、左端の岩も垂直に立たせたかったので、このレンズのギリギリまでライズしてカメラをできるだけ水平に近く保っていますが、もう少しイメージサークルが欲しいというのが正直なところです。画面ではよくわからないと思いますが、解像度でも色再現性においても、さすがFUJINONといった描写力だと思います。

 大判カメラに67判のフィルムホルダーを着けてこのレンズで撮影する場合は、35mm判換算で35~38mmのレンズに相当する画角になりますので、標準的な広角レンズといったところです。重いレンズではありますが、広い風景を切り取ったりパースペクティブを活かしたり、いろいろなシチュエーションで使えるレンズであり、重宝しています。

(2020.11.8)

#フジノン #FUJINON #レンズ描写