PENTAX67用レンズ - PENTAX-K マウントアダプタの作成

 私が使うカメラはもっぱらフィルム用ですが、デジカメを全く使わないというわけではありません。一応、コンパクトデジカメとデジタル一眼レフをそれぞれ1台ずつ持っています。一眼レフは何年か前に中古で購入したPENTAX K-5というカメラですが、ほとんど出番がありません。作品作りはフィルムでということがデジカメの出番のない大きな理由ですが、レンズを1本しか持ち合わせていないということもあります。
 追加でレンズを購入しようと思ったことも何度かありましたが、あまり使うことのないカメラにお金をかけてももったいないということで、結局、踏ん切りがつかずに過ぎてしまいました。

 出番がかなり少ないとはいえ、レンズが1本しかないのは不便なので、PENTAX67用のレンズをマウントアダプタを介して使おうと思い、調べてみましたが、これがかなりお高いことが判明しました。
 それならば作ってしまえということで、家に転がっているパーツを使って作ってみました。
 使用するパーツは下の写真の通りです。

マウントアダプタに使う主なパーツ

 まず、PENTAX67用のレンズをはめ込むマウントとして使用する、1号の接写リング(写真左上)です。
 次に、マウントアダプタの長さを稼ぐために使うPENTAX67用レンズのリアキャップ(写真右上)。
 そして、PENTAX K-5のマウントにはめ込むための金具(写真右下)です。この金具をレンズのリアキャップに取付ければよいのですが、そのまま取付けたのでは長さが足りず無限遠が出ないので、スペーサーとしてPENTAX用のボディキャップ(写真左下)を使います。

 調べてみたところ、PENTAX K マウントのフランジバックは45.46mm。一方、PENTAX67のフランジバックは84.95mmで、マウントアダプタとしては、39.49mmの長さが必要ということがわかりました。1/100mmの精度の加工は無理なので、39.5mmとすることにしました。
 1号の接写リングの厚さは14mm、レンズのリアキャップの厚さは19.5mm、マウント金具の厚さが2mmでしたので、これらを重ねると35.5mmになります。あと4mmはスペーサーでカバーすることになります。

 接写リングは特に加工する必要がないので、そのまま使います。

 次に、レンズのリアキャップですが、PENTAXのボディキャップが入るように、中央に直径45mmの穴をあけます(下の写真)。

PENTAX67用レンズ リアキャップ

 PENTAX K-5のマウントにはめ込む金具は、ネットオークションで1円で落札したジャンクレンズから外して使います。金具を止めている小さなネジが5本ありますので、なくさないように要注意です。

 スペーサーとして使うボディキャップの加工には少し手間がかかりますが、まず、キャップの中央に直径42mmの穴をあけます。次に、キャップ裏側にカメラのマウントと嵌合する爪があるので、これをやすりで削り取ってしまいます。プラスチックなので簡単に取れます。
 そして、キャップの表面をやすりで削って、全体を薄くしていきます。削り取る厚さは2.5mmほどですが、厚みに偏りができるとレンズの光軸が傾いてしまうので、ノギスで厚さを測りながら慎重に行ないます。

 さて、ボディキャップの厚さが4mmほどになったら、これら4点のパーツを仮組して、PENTAX K-5にはめてみます。無限遠が出ていればOKです。もし、無限遠が出ていなければボディキャップがまだ厚すぎるので、もう少し削る必要があります。
 スペーサーとして完成したのが下の写真です。

PENTAX用ボディキャップを加工したスペーサー

 こうして、無限遠が出るようになったら、4点のパーツを組み上げます。マウント金具はスペーサーにネジ止め、スペーサーとレンズリアキャップは強力接着剤で固定します。レンズをカメラに取付けた時に、レンズの距離・絞り指標(赤い菱形のマーク)が真上になるよう、位置関係を確認して取り付けます。
 最後に、接写リングへの取付けですが、レンズのリアキャップは簡単に外れてしまうので、動かないように3か所からネジで締め付けるようにして固定します。
 少々不格好ですが、出来上がったマウントアダプタが下の写真です。

PENTAX6 - PENTAX-K マウントアダプタ

 そして、カメラに取付けるとこんな感じになります。つけているレンズはPENTAX67 MACRO 135mmです。

PENTAX K-5 + PENTAX67 MACRO 135mm

 一通り確認してみましたが、特に問題はなさそうです。
 ただし、光軸が撮像面に対して直角になっているかどうかまでは確認できていません。精密な工作機械で加工したわけではないので、間違いなく傾いていると思います。
 しかし、これでPENTAX67用のレンズ、35mmフィッシュアイから500mm望遠まで11本のレンズがPENTAX K-5で使えるようになりました。ジャンク箱の中から拾い集めたパーツで作ったので、新規購入コストは0円でした。

(2021.2.28)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #マウントアダプター

大判カメラによるマクロ撮影(3) 撮影の手順

 前回、前々回で撮影時における露出補正と撮影倍率について説明しましたので、今回は実際に撮影する場合の手順などについて触れておきたいと思います。実際に近接撮影した例も掲載しておきます。

撮影倍率を決めて撮影する

 まず、先に撮影倍率を決めて、その大きさで撮影する場合の手順について説明します。手近なところに花瓶に差した梅がありましたので、これを撮影してみたいと思います。
 テーブルフォトのようになるので、あまり長い焦点距離のレンズは使わず、今回は105mのレンズで等倍(1倍)撮影をしてみます。機材等は以下の通りです。

  カメラ      リンホフマスターテヒニカ45
  レンズ      フジノン CM Wide 105mm 1:5.6
  フィルムホルダー ホースマン67用フィルムホルダー

 撮影倍率はフィルムの大きさに影響を受けないので、今回はブローニーフィルムを使います(なにしろ、フィルム代が高いので)。

 撮影手順はざっと下のようになります。

  (1) レンズの繰出し量を求める
  (2) レンズと被写体の距離を求める
  (3) (2)の計算結果に基づき、カメラと被写体の位置を決める
  (4) 微調整によりピントを合わせる
  (5) 露出補正値を計算する
  (6) 撮影

 それでは、順を追って説明していきます。

 (1) レンズの繰出し量を求める

 前回説明した、撮影倍率とレンズの焦点距離から、レンズの後側焦点と撮像面の距離を求める計算式にあてはめます。
 ここで、各記号は以下の通りです。

   f : レンズの焦点距離(今回は105mm)
   z : レンズの前側焦点から被写体までの距離 
   z’ : レンズの後側焦点から撮像面までの距離
   M : 撮影倍率(今回は1倍)

 レンズの後側焦点から撮像面までの距離z’は、

   z’ = f・M
     = 105 * 1
     = 105mm

 よって、この値にレンズの焦点距離の105mmを加算した210mmがレンズの繰出し量となりますので、その位置までカメラの蛇腹をススーッと伸ばします。このとき、メジャーがあると便利です。

 (2) レンズと被写体の距離を求める

 次に、レンズ前側焦点から被写体までの距離zを求める計算式にあてはめます。

   z = f/M
     = 105/1
     = 105mm

 よって、レンズ中心から被写体までの距離は、レンズの焦点距離の105mmを加えた210mmとなります。

 (3) (2)の計算結果に基づき、カメラと被写体の位置を決める

 カメラ、もしくは被写体を動かしてこの距離を保った位置関係にします(下図を参照)。

 このとき、カメラのフォーカシングスクリーンを覗くと、概ね、ピントが合っているはずです。もし、ピントが大きくずれている場合は、レンズ繰出し量が違っているか、被写体との距離が違っているかです(両方違っている場合もありますが)。
 ここで注意が必要なのは、ピントがずれているときに、カメラ側のフォーカシングノブでピント合わせをしないということです。これをやってしまうと撮影倍率がくるってしまいます。ですので、レンズの繰出し量を再確認し、また、被写体との距離を正しい位置関係になるようにカメラ、もしくは被写体を動かし、フォーカシングスクリーン上でピントが合っている状態にします。

 すでにお分かりと思いますが、等倍撮影の場合、被写体からレンズ中心までの距離と、レンズ中心から撮像面までの距離(レンズ繰出し量)が等しくなります。そして、被写体から撮像面までの距離が最短になるのが等倍撮影のときです。

 (4) 微調整によりピントを合わせる

 最終のピント合わせ(微調整)はカメラのフォーカシングノブを動かして行います。(3)で説明した位置関係が正しく設定されていれば、微調整の量はごくわずかです。
 この状態でフォーカシングスクリーンを見ると、被写体と同じ大きさに投影された像が写されているはずです。

 (5) 露出補正値を求める

 今回の撮影ではレンズの焦点距離の2倍まで繰出しているので、露出補正が必要になります。「大判カメラによるマクロ撮影(1)」で説明した露出補正倍数を求める計算式にあてはめます。

   露出補正倍数 = (レンズ繰出し量/焦点距離)^2
          = (210/105) ^ 2
          = 4倍

 となり、この場合は4倍の露出補正が必要になります。
 すなわち、露出計で測光した値に対して、2段分、多く露光されるように露出値を決め、絞り、もしくはシャッター速度を設定します。

 (6) 撮影

 等倍撮影なので被写界深度は非常に浅くなります。絞りF8で撮影する場合、焦点深度は±0.24mm(許容錯乱円を0.03mmとする)、被写界深度はおよそ1.9mmとなります。つまり、ピントの合っている状態からレンズを前後いずれかに0.24mm動かすと、ピントの合っていた位置は被写界深度の範囲から外れてしまうことになります。

 実際に、上記の条件で撮影したのが下の写真です。

白梅(等倍撮影) Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 105mm 1:5.6 F11 1/4 PROVIA100F

 花の大きさがわかるようにメジャーも一緒に写し込みました。ピントは花の中心付近の雄蕊に合わせています。

撮影倍率ごとの作例

 撮影倍率によってフィルム上ではどのような感じになるかというのを見ていただこうと思い、1/2倍、等倍、2倍で撮影した67判のポジ原版を掲載しておきます。
 被写体は山形県米沢市の民芸品である「お鷹ポッポ」です。いずれも鷹のくちばしのあたりにピントを合わせています。梅の写真同様、メジャーも写し込んでいます。

1/2倍撮影 Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 105mm 1:5.6 F8 1/8 PROVIA100F
等倍撮影 Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 105mm 1:5.6 F8 1/2 PROVIA100F
2倍撮影 Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 105mm 1:5.6 F8 1s PROVIA100F

 フィルム面(黒縁の内側)の大きさは、横69mm×縦56mmです。実際にフィルム上に写ったメジャーの目盛りを測定してみましたが、ほぼ正確に1/2倍、等倍、2倍になっていました。
 ちなみに、2倍の倍率での撮影時の露出補正倍数は9倍になります。

撮影範囲とレンズを決めて撮影する

 「厳密な撮影倍率は気にしないが、このレンズでこの範囲を写し込みたい」ということがあると思います。その場合の撮影手順について触れておきます。
 この場合、写し込みたい範囲の寸法、撮像面の寸法、使用するレンズの焦点距離から撮影倍率を計算します。例えば、以下のような条件のとき、

  写し込みたい範囲の横幅   200mm
  撮像面の横の長さ      69mm(67判を想定)
  レンズの焦点距離      105mm

 撮影倍率は、69/200 = 0.345倍 となります。
 これ以降は上の手順と同じになります。

 参考までに計算をしてみます。
 この倍率からレンズ後側焦点から撮像面までの距離は、

   z’ = f・M
     = 105 * 0.345
     = 36.2mm

 よって、レンズ中心から撮像面までの距離(レンズ繰出し量)は、36.2 + 105 = 141.2mm になります。

 また、レンズの前側焦点から被写体までの距離を求めると、

   z = f/M
     = 105/0.345
     = 305.3mm

 よって、レンズ中心から被写体までの距離は、305.3 + 105 = 410.3mm になります。

被写体までの距離と撮影範囲を決めて撮影する

 「この位置からこの範囲を写したい」というときに、どの焦点距離のレンズを使ったらよいかを知りたいということがあると思います。
 まず、写し込みたい範囲の寸法と撮像面の寸法から撮影倍率を計算します。例えば、以下のような条件のとき、

  写し込みたい範囲の横幅   200mm
  撮像面の横の長さ      69mm(67判を想定)
  被写体までの距離      500mm

 撮影倍率は、69/200 = 0.345倍 となります。
 また、「この位置」というのがレンズの前側焦点とすると、この値からレンズの焦点距離を計算すると、

   z = f/M より、
   f = z・M
     = 500*0.345
     = 172.5mm

 となります。

 計算結果にピッタリとした焦点距離のレンズはないと思いますので、最も近い値のレンズを使うことになります。この場合は180mmといったところでしょうか。
 よって、被写体から、500+180 = 680mm の位置にレンズの中心を置くことで、概ね、想定した範囲を撮影することができます。

 この時のレンズの後側焦点から撮像面までの距離も計算してみます。

   z’ = f・M
     = 180*0.345
     = 62.1mm

 よって、レンズの繰出し量は、180+62.1=242.1mmとなります。

 このように計算で求めることもできますが、せっかく計算してもぴったりとはまるレンズがないとなると、あくまでも目安程度ということになってしまいます。しかしながら、レンズ選択に迷うときには有効かもしれません。
 なお、もっと簡単にレンズを決めることができる方法があります。「プアマンズフレーム」なるものを使用することで、使用するレンズの焦点距離を選択することができますので、詳細は「我楽多箱」に入れてある下のページをご覧ください。

  「構図決めに便利なプアマンズフレームの作成

補足

 大判カメラでのマクロ撮影ということで、その手順について書いてきましたが、このやり方は35mm判や中判のマニュアル一眼レフカメラなどに接写リングやベローズをつけての撮影でも基本的に同じです。
 ただし、ヘリコイド型ではない通常の接写リングの場合、レンズ繰出し量は接写リングの組み合わせにより、段階的(不連続)になってしまいますので、ベローズに比べると自由度は制限されてしまいます。一般的には3個組になっているものが多いと思いますが、いちばん薄いのが1号、その倍の厚さがある2号、4倍の厚さがある3号の組合せとなっていますので、1号のリングの厚さを把握しておけば、その倍数で7通りの長さをつくることができます。
 ちなみに、PENTAX67用の接写リング1号の厚さは14mmですので、14mm刻みで98mmまでの組み合わせができます。

(2021年2月27日)

#マクロ撮影 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

構図決めに便利なプアマンズフレームの作成

 世の中にはフレーミングを決める際に便利なズームファインダーなるものがあります。大判カメラ用のズームファインダーは、大体65~400mmくらいのレンズの画角をカバーしますので、通常の撮影領域ではこのファインダーひとつで事足りてしまいますが、非常に高価な代物です。
 そこで、ほとんどコストをかけずに同等の機能をもつ「プアマンズフレーム」をつくってみました。

 まず、厚紙などで使用するフィルムと同じ大きさの枠をつくります。例えば、4×5判のフィルム用の場合は、150×130mmくらいの大きさの厚紙の中央に120×96mmの窓をくり抜きます(120×96mmが4×5判フィルムの有効サイズです)。
 次に、この厚紙の下の端に紐を取り付けます。そしてその紐に目盛りを振れば完成です。目盛りは取り付けたところを起点(0cm)として、使用するレンズの焦点距離を少し上回るくらいまで振ります(例えば、400mmまでのレンズを使うのであれば、45cmくらいまで)。

 こうしてできたのが下の写真です。

4×5判用プアマンズフレーム(目盛りは5cmの位置から1cm刻みで50cmまで)

 これの使い方はいたって簡単で、窓枠をくり抜いたボードを片手で持ち、もう片方の手で紐を持ちます。そして、片方の目でこの窓枠を覗き、写したい範囲が窓枠内に納まるようにボードを前後に動かします。フレーミングが決まったらボードを動かさないようにして、もう片方の手で持った紐をピンと張った状態で目の下にあてます。
 そのとき、目の下にあたった紐の目盛りを読み取れば、使用するレンズの焦点距離がわかるという優れものです。例えば、目盛りが15cmだったとすると、焦点距離150mmのレンズを使えばよいということがわかります。
 もちろん、ミリ単位の精度は望むべくもありませんが、レンズを決めるには全く問題ありません。

 また、使うレンズの焦点距離があらかじめ決めっている場合は、焦点距離に等しい目盛りの部分を目のところに当て、紐をピンと張った状態で窓枠を覗くと、その焦点距離のフレーミングになります。

 窓枠の縦横中央に糸などで十字線を張れば、フレーミングの際の目安になって便利かもしれませんが、余計なものがない方が使い易いだろうと思い、私は何もつけていません。
 また、ボードそのものを透明なアクリル板などにすれば窓をくり抜く必要はなく、逆に周囲をマスクすれば済むのでこの方が簡単に作れると思いますが、かなり透明度が高いものを使わないと像がくっきりとしないので、使いにくくなってしまうかもしれません。1円でも安くしたいというのであれば、やはり厚紙をくり抜く方法がお勧めです。

 このプアマンズフレームを覗いた時の目の位置は、使用するレンズの前側焦点の位置になります。したがって、そのフレーミングで撮影する際のレンズの中心は、目の位置から焦点距離分後方に置くことになります。このレンズの位置をあまり大きく変えてしまうと、無限遠の被写体の場合はさほど気にすることもありませんが、近接撮影の場合はフレーミングにずれが生じてきますので注意が必要です。
 とはいえ、もともとがかなり大雑把なものなので、レンズを選択する際の目安として使う程度であり、これにあまり高い精度を求めない方がよろしいかと思います。

 今回は4×5判を例にとりましたが、67判のフィルム用であればくり抜く窓枠の大きさは69×56mm、35mm判フィルム用であれば36×24mmの大きさになりますので、使用するフィルムに合わせて用意しておけば便利です。

(2021.2.23)

#フレーミング #構図 #撮影小道具

ケーブルレリーズの長さが中途半端

 最近の一眼レフカメラは電子レリーズ(リモートコントローラ)が標準対応ですが、私が使っている中判カメラや大判カメラは電子レリーズが使えないので、昔ながらのケーブルレリーズを使っています。簡単に壊れるものではありませんが、長年使っていると動きが渋くなってきたりしますし、撮影に行った際にどこかに落としてきてしまったなんてこともあるので、カメラバッグの中には常に3本くらいが入っています。

 このケーブルレリーズ、なかなかしっくりくる長さのものがなく、私にとって結構なストレスになっています。というのも、シャッターのところにレリーズの先端をねじ込み、手元まで持ってきたときに、押し込むノブが雲台の下あたりにくるのが最も使い易いのですが、これが短すぎたり長すぎたりすると、レリーズの位置を目で確認しなければならないからです。
 昔は種類も豊富で、いろいろな長さのものがあったのですが、いま市販されている製品のほとんどは30cm、50cm、1mの3種類くらいではないでしょうか?

ケーブルレリーズ

 私は主に中判カメラや大判カメラを使っているので、35mm判カメラで使うよりも長めのレリーズが必要になります。手元にあるレリーズは全部で9本ありますが、そのうち50cmが6本、1mが2本、そして60cmが1本です。
 50cmがいちばん多いのですが、これは購入の選択肢がないから仕方なく使っているというのが正直なところです。私にとって50cmのレリーズでは短すぎて、特に大判カメラで長い玉を使うときはレンズが前に繰り出されるので、その不便さを一層感じてしまいます。
 かといって、1mのレリーズは長すぎて、だらしなく垂れ下がってしまい、これまた不便なのです。
 私にとって最適な長さは60cm前後なのですが、今はこの長さのものが手に入りません。私の知る限り、70cmのレリーズが販売されていますが、ちょっと長すぎるかなという感じです。実際に使ったことがないので、一度、使ってみようと思っていますが...

 数年前にネットオークションで60cmのレリーズ(もちろん中古)をやっと見つけました。今時、ケーブルレリーズを買う人などいないらしく、私以外の入札者はおらず、簡単にゲットできました。
 この60cmというのは私にとって非常にしっくりとくる長さで、大判カメラで撮影するときはこれを使っています。
 しかし、虎の子のような1本なので、壊れたり落してなくしたりしたら大変です。予備でもう2~3本欲しいところですが、以来、ネットオークションでもお目にかかったことがありません。

 1mのレリーズを40cmほどカットして短くしてみようと試みたこともありましたが、ケーブルレリーズというのは分解してまた組み立てができるような構造ではなく、分解=オシャカということがわかり、結局諦めました。分解して、また組立てる方法をご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

 今でも販売されているかどうかわかりませんが、かつて、リモートレリーズというのがありました。これは、レンズなどを掃除するときに使うブロアのようなものの先に細いチューブが取り付けられており、ブロアをギュッと握ると空気の力でレリーズが押し出されるという仕組みでした。
 このチューブを60cmくらいにしてみようかとも思いましたが、それこそブロアがだらしなく垂れ下がってしまい、写欲も薄れてしまいそうなので実現していません。

 改造が無理なら自作できないかとも考えていますが、なかなか良いアイディアが浮かんできません。もしかしたら、ネットオークションや中古カメラ屋さんで遭遇することがあるかもしれないという淡い期待を抱き続ける日が続きそうです。

(2021.2.20)

#撮影小道具 #レリーズ

大判カメラのアオリ(3) フロントティルト

 今回はフロントティルトのアオリについて触れたいと思います。レンズを前に傾けるフロントティルトダウンと、レンズを後ろに傾けるフロントティルトアップがあります。

フロントティルトはこんな時に使うことが多い

 フロントティルトは比較的、使用頻度の高いアオリだと思います。特に風景写真などでパンフォーカスに撮りたいという場合によく使用されます。例えば、すぐ目の前からお花畑が広がっており、その先に森があり、さらに遠くには山並みがある、というようなシチュエーションを想定すると、一般的な一眼レフカメラなどでは超広角レンズでも持ってこない限り、どんなに絞り込んでも近景から遠景までピントを合わせることは困難です。
 また、それほど雄大な景色でなくても、密集しているお花畑を撮る場合、超広角レンズでは広範囲が写りすぎるので長めのレンズを使うと、やはりピントの合う範囲は限られてしまいます。
 このようなときに大判カメラのフロントティルトアオリを使うことで、目いっぱい絞り込まなくてもパンフォーカスの写真を撮ることができます。

シャインプルーフの法則

 フロントティルトのアオリを使うためには、「シャインプルーフの法則」について理解しておく必要があるので、それについて簡単に触れておきます。オーストリアのシャインプルーフという方が発見したのでこの名がついているようです。「シャインフリューク」と記載されていることも多く、どちらが正しいのかよくわかりませんが、ここでは「シャインプルーフ」としておきます。

 シャインプルーフの法則は一言でいうと、「撮像面(フィルム面)とレンズ主平面の延長線がある1点で交わるとき、ピントの合う被写体面の延長線も同じ点で交わる」というものです。
 一般のカメラは撮像面とレンズ主平面は平行になっており、これらの延長線が交わることはありません(下図を参照)。

 このため、ピントの合う被写体面は撮像面やレンズ主平面と平行な一面のみです(被写界深度があるので前後に幅を持った範囲にピントが合っているように見えますが)。
 これに対して、レンズ主平面を前に傾けた時の状態が下の図です。

 レンズ主平面を前に傾ける(ティルトダウン)ことにより、撮像面とレンズ主平面の平行関係が崩れ、それぞれの延長線がある1点で交わります。この交点を通る延長線上がピントの合う面になります。上の図ではデフォルメしてありますが、近景の花、中景にある樹木、そして遠景の山並みにピントが合っている状態を示しています。
 もちろん、撮像面とレンズ主平面の交点を通る被写体面は無数にあるわけですが、ピントの合う面はレンズの繰出し量によって決まる一面だけです。

 また、近景から遠景までをピントの合うようにしても、被写界深度によってピントが合う範囲(奥行)を稼ぐ必要はあります。絞りを開くと被写界深度は浅くなりますので、上の図でいうと、被写界深度が浅くなると、いちばん手前の花や樹木の下の方がぼけてしまうということになります。

 (説明の便宜上、撮像面、レンズ主平面、被写体面が1点で交わるとしていますが、実際にはそれぞれが面なので、下の図のように1線上で交差することになります)

フロントティルトダウンの例

 大判カメラ(リンホフ・マスターテヒニカ)でフロントティルトダウンすると、下の写真のような状態になります。

 このカメラの場合、ティルトできる角度は前後それぞれ30度です。ただし、レンズの繰出し量によっては蛇腹やベッドの影響を受けるので、30度まで傾けることができない場合もあります。
 リンホフ・マスターテヒニカ45の紹介のページでも書きましたが、このカメラのフロントティルトはネジを緩めて手で動かす方式です。ごくわずかに傾けたい場合などは微妙な操作が必要です。

 実際にフロントティルトの効果を見ていただくために、テーブルフォトで試してみました。
 会津地方の民芸品である起上り小法師を一列に並べ、これを俯瞰気味に撮ったのが下の写真で、1枚目がアオリなしで撮ったもの、2枚目がフロントティルトダウンのアオリをかけて撮ったものです。

アオリなし(ノーマル撮影)
フロントティルトダウン使用

 いずれも、前から4つ目の起上り小法師にピントを合わせています。1枚目の写真は手前方4つ目の起上り小法師以外はすでにぼけていますが、2枚目の写真ではほぼ全部にピントが合っています。
 フロントティルトの効果がわかり易いようにあまり絞り込まずに撮影しています。撮影データはいずれも下記の通りです。
  レンズ 125mm 1:5.6
  絞り  F8
  シャッター速度 1/15

 また、実際に風景撮影でフロントティルトを使った作例が下の写真です。

白川郷合掌造り Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 150mm 1:5.6 F32 1/2 PROVIA100F

 白川郷で撮った合掌造りの写真ですが、すぐ目の前にある稲穂から、霧に煙ってますが遠景の山までパンフォーカスになるようにティルトダウンのアオリを使っています。
 この写真でのピント面は「手前の稲穂・石垣の上部・奥の合掌造りの屋根・樹木の先端・山の頂上」と想定しています。

 これからすると、石垣の下部や右側の合掌造りの屋根の先端などはピント面から外れることになります。このため、絞り込むことで被写界深度内に納めようとしていますが、やはり屋根の先端は若干ピントが甘いです。

フロントティルトの角度を計算する

 では、パンフォーカスの写真を撮るためにどれくらいのティルト角にしたらよいかを計算してみます。
 下の図に示すように、シャインプルーフの法則に基づき、三角関数で求めることができます。

 ここで、
  z  : 撮像面と被写体の距離
  z’ : レンズ主平面と撮像面の距離
  θ₁ : レンズのティルト角
  θ₂ : 被写体面と撮像面の角度
 になります。

 これらの間には以下のような関係式が成り立ちます。

  z’ = x tanθ₁
  z = x tanθ₂
 

  x  = z’/tanθ₁ = z/tanθ₂

 よって、

  θ₁ = tan⁻¹(tanθ₂・z’/z)

 または、

  θ₁ = tan⁻¹(z’/x)

 となります。

 例えば、レンズの光軸を水平から下に15度傾けて、撮像面から1.2m先の被写体面をパンフォーカスにする場合を想定します。この時のレンズの繰出し量を150mmとすると、

  z  = 1200
  z’ = 150
  θ₂ = 75

 となり、これらを上記の式にあてはめます。

  x = 1200/tan75
    = 321mm

  θ₁= tan⁻¹(tan75・150/1200)
    = 25°

 ということで、25度のフロントティルトをすればよいことがわかります。

 この計算は三角関数が入っているので暗算で行なうのは無理があり、また、厳密に計算したところでテクニカルカメラの場合、緻密な角度設定ができるわけでもないので、あくまでもティルト角の目安となるといった感じです。

 なお、レンズの繰出し量は被写体との距離が近いほど大きくなりますので、使用するレンズの焦点距離と撮影距離からレンズの繰出し量を計算で求める必要があります。これについては、下のページを参考にしてください。
  
  「大判カメラによるマクロ撮影(1) 露出補正値を求める

フロントティルトアップのアオリ

 ティルトダウンと反対に、レンズを後ろ側に傾けるアオリをティルトアップと言いますが、使用頻度はティルトダウンほど高くありません。
 アオリのふるまいはティルトダウンと基本的に同じですが、レンズ主平面の傾きがティルトダウンと反対になるため、ピント面が上側に来ます。すなわち、撮像面、レンズ主平面、ピント面の延長線の交点がカメラの上方に位置することになります。

 このアオリは、例えば、6月ごろに見ごろを迎える下り藤の藤棚を下から見上げるようなアングルで撮影する際に、藤棚の下面全体にピントを合わせたい時などに使うと効果的です。
 また、俯瞰撮影のアングル時にティルトアップをすると、パンフォーカスとは逆にごく一部だけにピントが合い、ミニチュア模型を撮影したような写真になります(この作例はWeb上にたくさんアップされていますので、そちらをご覧ください)。

 残念ながらどちらも手元に適当な作例がないのでご紹介できませんが、俯瞰状態でティルトアップした場合に、ごく一部にしかピントが合わないことがわかるサンプルが下の写真です。

フロントティルトアップ使用

 撮影データは上の2枚と同じです。ピントの合う面が極めて薄く、いちばん後ろの起上り小法師はボケてしまって何が写っているかわからないくらいです。窓際の自然光で撮影したため、右上に光が差し込んでしまったのはご愛嬌ということで...

 ボケを効果的に使った写真も素晴らしいですが、パンフォーカスの写真はそれはそれで見ていて気持ちの良いものです。アオリを使うことでそんな写真を撮れるのも、大判カメラの魅力の一つではないかと思います。

(2021.2.16)

#アオリ #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

大判カメラによるマクロ撮影(2) 撮影倍率

 前回は近接撮影の際にレンズを繰出すことによる露出補正について触れましたが、今回は撮影倍率について話を進めたいと思います。希望の倍率で撮影したい時のレンズの配置等についても触れておきます。

撮影倍率とは

 撮影倍率とは、被写体の大きさと、その被写体が撮像面(フィルム)に写った大きさの比率をいいます。例えば、直径20mmの1円硬貨が、撮像面上でも20mmに写っていれば撮影倍率は1倍(等倍)であり、撮像面上での大きさが10mmであれば撮影倍率は1/2倍ということになります。
 この撮影倍率は撮像面の大きさには関係ありませんので、35mmフィルムであろうと4×5フィルムであろうと、撮像面上で1円硬貨が20mmの大きさに写っていれば撮影倍率は等倍です(下図を参照)。

撮影倍率を計算で求める

 まず、レンズと光に関する基本的な特性として、以下の4点が挙げられます。

  1) ある一点から出たあらゆる光は、レンズを通過した後、一点に集まる
  2) 光軸と平行にレンズに入射した光は、レンズを通過した後、レンズの後側焦点を通る
  3) 前側焦点を通ってレンズに入射した光は、レンズを通過した後、光軸と平行に進む
  4) レンズの中心を通った光は直進する

 上の図で、それぞれの記号が示す意味は以下の通りです。

  F : レンズの前側焦点
  F’ : レンズの後側焦点
  H : レンズ中心 

  h : 被写体の高さ
  h’ : 撮像面上での被写体の高さ
  f  : レンズの焦点距離
  z : レンズの前側焦点から被写体までの距離 
  z’ : レンズの後側焦点から撮像面までの距離

 この図で、レンズ前側(図の左側)にある2つの黄色の三角形に注目すると、薄い黄色で塗られた大きな三角形(△ABF)と、濃い黄色で塗られた小さな三角形(△FHC)は相似形であることがわかります。

 また、
  辺BF = h  (薄い黄色の大きな三角形)
  辺HC = h’ (濃い黄色の小さな三角形)

 であることから、下の関係式が成り立ちます。

  h:h’ = z:f  ……… (1)

 次に、レンズ後側(図の右側)にある2つのオレンジ色の三角形に注目すると、薄いオレンジ色で塗られた大きな三角形(△C’F’H)と、濃いオレンジ色で塗られた小さな三角形(△F’A’B’)も相似形であることがわかります。

 上と同様に、
  辺C’H  = h  (薄いオレンジ色の大きな三角形)
  辺F’B’ = h’ (濃いオレンジ色の小さな三角形)

 であることから、下の関係式が成り立ちます。

  h:h’ = f:z’  ……… (2)

 hとh’の比率は、被写体の大きさと、撮像面上の被写体の大きさの比率となり、これが撮影倍率になります。
 撮影倍率をMとすると、Mは h’ / h となるので、下の関係式が成り立ちます。

  M = f/z  ……… (3)
  M = z’/f  ……… (4)

 これらのことから、撮影倍率は以下のように定義することができます。
  式(3)から、撮影倍率は、被写体からレンズの前側焦点までの距離と、レンズの焦点距離の比
  式(4)から、撮影倍率は、レンズの焦点距離と、レンズの後側焦点から撮像面までの距離の比

 これにより、所定の倍率で撮影したいときに、被写体からレンズまでの距離、レンズから撮像面までの距離を知ることができます。

 また、上の式は次のように書き換えることができます。

  z  = f/M   ……… (5)
  z’ = f・M   ……… (6)

  式(5)は、被写体からレンズの前側焦点までの距離は、レンズの焦点距離を撮影倍率で除した値
  式(6)は、レンズの後側焦点から撮像面までの距離は、レンズの焦点距離に撮影倍率を乗じた値
 ということを意味します。

 これにより、被写体からレンズまでの距離、およびレンズから撮像面までの距離がわかっているときに、撮影倍率を知ることができます。

 ここで注意が必要なのは、zは被写体からレンズの前側焦点までの距離なので、被写体からレンズ中心までの距離はzにレンズの焦点距離fを加算しなければなりません。
 同様に、z’はレンズ後側焦点から撮像面までの距離なので、レンズ中心から撮像面までの距離はz’にレンズの焦点距離fを加算しなければなりません。

撮影倍率によるレンズ位置の計算

 ここで例として、焦点距離100mmのレンズで1円硬貨(直径20mm)を2倍の大きさ(直径40m)で撮影したい時のレンズの配置を計算してみます。

 レンズの焦点距離 f = 100mm と、撮影倍率 M = 2倍 を式(5)にあてはめると、

  z = 100 / 2
   = 50mm

 となり、レンズの前側焦点の50mm前方に被写体を置けばよいことがわかります。これは、レンズ中心から150mmの位置になります。

 次に、撮像面の位置を計算するために、式(6)にあてはめると、

  z’ = 100 * 2
   = 200mm

 となり、レンズの後側焦点から200mm後方に撮像面を置けばよいことになります。これは、レンズの中心から300mmの位置になります。
 実際にカメラと被写体を配置してみると、下のような感じになります。
 (105mmのレンズが取り付けてありますが、撮影時のイメージを理解してもらうことが目的なので、焦点距離100mmのレンズということにしておいてください)

ピントが合って見える範囲は? 焦点深度と被写界深度

 ちなみに、この状態の焦点深度は極めて浅く、紙一枚ほどの厚さという感じです。実際にどれくらいの焦点深度があるか、計算をしてみます。
 焦点深度は下の式のように定義されています。

  焦点深度 = ± ε・F

 ここで、εは許容錯乱円、Fは絞り値になります。
 許容錯乱円を0.03mmとすると、絞りF8で撮影した場合の焦点深度は、

  焦点深度 = ±0.03 * 8
       = ±0.24mm

 となります。

 これを、焦点距離100mmのレンズを使ったこの撮影の場合の被写界深度に換算すると、およそ1.2mmとなりますので、ピント合わせは非常にシビアというほかありません。なお、許容錯乱円の値は、35mm判フィルムから四切程度に引き伸ばすことを前提に定義されていた値を用いています。
 被写界深度や焦点深度の詳細については別の機会にしたいと思います。

露出補正値を求める

 前回、露出補正値の求め方について触れましたが、上の例について露出補正値を計算してみます。上で求めた値を下の式にあてはめてみます。

   露出補正倍数 = (レンズ繰出し量/焦点距離)^2

 レンズ繰出し量は、f + z’ = 300mm ですから、

   露出補正倍数 = (300 / 100) ^ 2
          = 9

 となり、9倍の露出補正が必要ということになります。これは、絞りF5.6の場合の実効f値が16.8になることを意味します。

大判カメラでの最大撮影倍率は?

 では、大判カメラを使った近接撮影で、最大撮影倍率はどれくらいまで可能なのか、算出してみたいと思います。
 リンホフマスターテヒニカ45の最大フランジバックは430mmです(私のカメラは蛇腹の都合でそこまで延びませんが)。式(4)から、レンズの焦点距離が短い方が撮影倍率が高くなることがわかりますので、私が持っているレンズの中で最も焦点距離の短い65mmのレンズを使うことを想定します。
 レンズの最大繰出し量の430mmからレンズの焦点距離の65mmを引くと、レンズの後側焦点から撮像面までの距離 z’ は365mmになります。
 これを、式(4)にあてはめると、

  M = z’/f
    = 365 / 65
    = 5.62

 となり、約5.6倍の倍率で撮影ができることになります。
 これは、直径20mmの1円硬貨が、撮像面では直径112mmの大きさで写ることになります。画質の低下や被写界深度の浅さはあるとしても、驚くべき近接撮影です。
 実際にこのような近接撮影のニーズがあることはほとんどないと思われますが、大判カメラによる近接撮影のポテンシャルについてはおわかりいただけるのではないかと思います。

 実際の撮影手順や撮影例については次回にしたいと思います。

(2021年2月11日)

#マクロ撮影 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~立春~

 今年の立春は2月3日で、これは実に124年ぶりとの報道がされていました。寒さはまだ続きますが、これからの寒さは余寒というらしく、春に向けて暖かくなっていく寒さということで、こういう使い分けが日本人の感性の豊かさだと思います。
 旧暦では立春のころが1年の始まりだったようで、日本では旧正月を祝う習慣はなくなってしまいましたが、中国の春節やベトナムのテトなど、アジアでは旧正月を祝う国がたくさんあるようです。

梅が咲き始めました

 今ではすっかり日本の風景に溶け込んでいる梅ですが、奈良時代に中国から持ち込まれたものらしく、万葉の時代には花というと桜ではなく白梅のことをさすくらい、当時の人々に愛でられていたようです。
 学問の神様として有名な菅原道真も紅梅を深く愛したひとりで、彼の邸宅は「紅梅殿」とよばれ、春の訪れとともに芳しい香りに包まれたといわれています。藤原時平の訴えにより、九州の大宰府に左遷されてしまうわけですが、以来、日本各地にある天満宮の境内には梅の木が植えられ、神紋には梅鉢が使われるようになったといいます。

 下の写真は近所の公園で撮った早咲きの白梅です。ほかの木はまだ1~2輪がようやく咲き始めたところですが、この梅はこの公園の中でも真っ先に咲きます。

白梅 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 「梅は百花の魁」といわれますが、梅が咲き始めるとあたりが明るくなったようにさえ感じます。満開の状態はもちろん豪華ですが、個人的には梅は咲き始めた頃がいちばん好きです。ぽつぽつと咲き始めた頃のちょっと恥じらうような姿に風情が感じられます。特に白梅には楚々とした感じが漂っていて、例えると、春の光のもとで微笑む小町娘、といったところでしょうか。

 ここ数日の暖かさで紅梅も咲き始めていました。紅梅には白梅と違った華やかさがあります。白梅が楚々とした美しさであれば、紅梅は艶っぽさ漂う美しさといった感じです。

紅梅 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm 1:4 F4 1/500 PROVIA100F

福寿草も眩しいくらいに輝いて

 元日草とか正月花などの別名をもつ福寿草、旧暦の正月、ちょうど今頃に咲き始めることからついた名前のようですが、立春を待ちかねたように咲き始めていました。新年を祝う花として古くから日本人の心を癒してきたといわれていますが、いまの時代は春の訪れを告げる花というイメージの方がしっくりきます。
 雪を割って芽を出す姿には心惹かれるものがありますが、東京ではなかなかそういう姿にお目にかかることはできません。それでも緑がほとんどない大地から芽を出して、身の丈に比べて大きな花を咲かせる姿には癒されます。

福寿草 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 花の少ないこの時期に、輝くような黄色の花は遠目にも良く目立ちます。太陽の動きを追いかけて花の向きを変える性質(向日性)があり、このため、花の内側は外側に比べて温度が高くなるらしいです。まるで、太陽の熱を集めるパラボラ集熱装置のようです。

 品種改良がなされて二重咲や八重咲といった豪華な福寿草もありますが、日本に自生しているのは一種のみだそうです。上の写真の福寿草は自生種と思われますが、定かなことはわかりません。しかし、これから次々といろいろな花が咲き始めることを教えてくれることには変わりありません。 

立春限定の日本酒も

 立春の未明に搾りあがったばかりのお酒のことを「立春朝搾り」といい、日本酒好きの人には待ち焦がれたお酒です。このお酒は火入れをしていない生原酒で、どの蔵元のお酒も日付が入った同じデザインのラベルが貼られています。今年のラベルは、「令和三年辛丑二月三日」と書かれています。実は、このラベルの裏側には、「大吉」の文字が書かれており、ビンの反対側から透かすと見ることができます。ちょっとした遊び心ですね。

(2021年2月8日)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気

フジノン 大判レンズ FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm

 フジノンの大判カメラ用レンズの最終モデルとなってしまったCM Wideシリーズのうちの1本です。CM WideシリーズはWシリーズの後継モデルで、105mmから450mmまで10本がラインナップされていました。

レンズの主な仕様

 フィルターワークを容易にするために105mm~250mmまではアタッチメントサイズが67mmに統一されていました。W105mmのフィルターサイズは46mmでしたので、それと比べると前枠が大きく広がっており、図体はずいぶん大きくなったように感じます。

FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm

 レンズの主な仕様は以下の通りです(富士フィルム株式会社 公式HPより引用)。
   イメージサークル  : Φ174mm(f22)
   最大包括角度    : 78度
   最大適用画面寸法  : 4×5
   レンズ構成枚数   : 5群6枚
   最小絞り      : 45
   シャッター     : No.0
   シャッター速度   : T.B.1~1/500
   フィルター取付ネジ : 67mm
   前枠外径寸法    : Φ70mm
   後枠外径寸法    : Φ42mm
   フランジバック   : 103.4mm
   バックフォーカス  : 92.8mm
   全長        : 51.6mm
   重量        : 220g

 このレンズを4×5判で使った場合、画角は35mm判カメラでいうと30mmくらいのレンズに相当します。イメージサークルはΦ174mm(f22)で、W105mmのΦ162mmと比べると大きくなったとはいえ、シリーズの中では最も控えめな値です。
 前モデルのW105mmのイメージサークルはほとんど余裕がなく、4×5判で撮影する場合、フロントでのアオリは実質的に使えないという感じでしたが、こちらのレンズは若干の余裕があり、4×5判で横位置撮影の場合、フロントライズで約13mm、フロントシフトで約11mmが可能です。

富士フイルムが威信をかけて世に送り出したレンズ

 アタッチメントサイズが統一されたのは良いのですが、レンズボード面からレンズ先端までの長さ(高さ)にくらべて前枠径が大きいので、これが邪魔になってシャッター速度のリングが非常に回しにくくなってしまっていますし、刻印されたシャッター速度もとても見難くなってます(下の写真はレンズの下側から撮影したものなのでシャッター速度の目盛りが良く見えますが、レンズ上側からは非常に見難いです)。

FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm

 しかしながら、若干の使いにくさはあるものの、収差は全くと言ってよいほど感じられませんし、解像度も極めて高いレンズだと思います。
 富士フイルムのホームページにはフジノンの歴史エピソードとして次のように掲載されています。
 「1994年、FUJINONは大判カメラ用レンズの最新型となるCM FUJINONシリーズのラインナップ10本を完成させる。
1951年に、リリースされ始めたFUJINON大判カメラ用レンズは、40年の技術革新を経て完成を見たとも言える。それは、Professionalの求める”最高画質”の一つの到達点でもある。
今まで本連載でもとりあげたように、設計技術の進化があり、そして非球面レンズ、EDガラスレンズなどの新たな硝材の開発、コート技術の革新などが、絶え間なく繰り返されてきた。FUJINON大判カメラ用レンズの最終型に冠されたNamingは”CM”。それはCommercialを意味する。ProfessionalがProfessionalとしての報酬を得る業務、つまり”Commercial 写真の現場”で使用されるためのレンズ。」

 富士フイルムが威信をかけて世に送り出したレンズ、ということが感じられます。

CM Wide 105mmで撮影した作例

 上にも書いたようにイメージサークルは大きくないのであまり大きなアオリは使えませんが、ストレートに風景を写すには全く問題はありません。4×5判で使用すると対角画角が72度の広角レンズになりますが、風景を撮るには広すぎず、使い易い画角だと思います。アオリを使わなくても絞り込めば被写界深度は深くなりますし、絞りを開けば程よいボケも得られます。

 下の写真は、このレンズで冬の滝を撮ったものです。

魚止めの滝 Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm F32 1s Velvia100F

 手前の落ち葉もくっきりと写したかったので、F32まで絞り込み、わずかにフロントティルトのアオリをかけています。逆光での撮影ですがコントラストも良く出ていますし、画面の周辺部でも見事に解像していると思います。詳細はわかりませんが、CMシリーズになってレンズコーティング技術もかなり向上しているらしく(11層のコーティングがされているという話しもありますが、定かではありません)、その効果も大きいのかもしれません。

 この構図をもう少し離れたところから長めのレンズで撮ると、滝の力強さは増すと思うのですが広がりが希薄になってしまい、逆にもっと近づいてより広角で撮ると散漫になってしまうということで、ここではこのレンズの画角が最適という感じでした。

 手前の落ち葉のあたりを拡大したのが下の写真です。

魚止めの滝(部分拡大) Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm F32 1s Velvia100F

 画面ではうまくお伝え出来ないのが残念ですが、濡れた落ち葉の質感なども見事にとらえられており、このレンズの描写力の高さがわかるのではないかと思います。

 このレンズに限ったことではありませんが、こういう素晴らしい描写をする大判レンズが生産終了になってしまったのはやはり寂しく思います。

(2021.2.2)

#フジノン #FUJINON #レンズ描写