花を撮る(2) 春に咲く野草

 3月の声をきくとフィールドの野草も急激に増えてくる感じです。花の少ない冬が終わり、心もうきうきしてきます。
 春の野草は背丈が低いものが圧倒的に多く、撮影にも苦労します。ローアングルでの撮影が多くなりますが、今回はそんな春の野草の撮影にフォーカスしてみたいと思います。

ヒメオドリコソウ

 オオイヌノフグリとともに、今ではすっかり日本の春の風景となってしまったヒメオドリコソウ。シソ科の帰化植物ですがその繁殖力は旺盛で、日本中のいたるところで見ることができます。日本原産のオドリコソウはすっかり少なくなってしまいましたが、ヒメオドリコソウは増える一方です。

 葉っぱの色がくすんだ紫色をしてるため、群生しているところはお世辞にも美しいとは言えません。しかし、よく見ると赤紫の可愛らしい小さな花をつけています。
 この野草は、群生しているところよりも、1本だけ、あるいは数本だけのところを狙った方が可愛らしさを表現できると思います。

 下の写真は、1本だけですがオオイヌノフグリとコラボしているところを撮ってみました。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 EX2+3 PROVIA100F

 オオイヌノフグリとともに、春先に最も早く咲く野草の一つです。明るい日差しが感じられる方がこの野草には似合っていると思います。
 カメラを地面すれすれまで下げて撮っています。この写真のヒメオドリコソウの背丈は6~7cmほどですが、20cmくらいまで伸びますので、あまり大きくないほうがバランスは良くなると思います。
 赤紫色の花に露出を合わせていますので、オオイヌノフグリは露出オーバーになっています。

ムラサキハナナ

 この野草も良く見かけます。オオアラセイトウ、ショカッサイ、ハナダイコンなどとも呼ばれており、厳密にはそれぞれ違いがあるらしいのですが、私にはよくわかりません。花の色が紫色と赤紫色があるようですが、それも個体差なのかどうかもわかりません。
 この花が群生しているところを見かけることがありますが、それは見事です。

 群生しているほどではありませんが、そこそこ咲いている中から1本だけを撮ったのが下の写真です。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/30 1.4X PROVIA100F

 午前中の比較的早い時間帯、まだ太陽があまり高くならないうちに逆光の状態で写しています。薄い花びらを光が透過して輝きを放っているような雰囲気を狙ってみました。
 この野草は比較的、背丈も大きくなるため、地面にはいつくばって撮る必要もないのでありがたいです。

 露出アンダーだと赤紫色が濁ってしまうので、1段くらいオーバー目にした方が明るい雰囲気が出せると思います。

タチツボスミレ

 スミレの中では早めに咲き始めます。日当たりのよい道端や草原、森林、やぶなどに普通に見られる多年草です。背丈は20cmくらいまで伸びますが、春先に見られるのは半分ほどの背丈です。背丈には不釣り合いなくらい大きな花をつけるので、わずかな風でも大きな花が揺れてしまい、風の強いときの撮影は苦労します。

 下の写真は、里山の道端に咲いていたものです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 全面に光が当たっていると平面的になってしまうので、薄雲がかかって、花のところに直接光が当たらない瞬間を狙って撮りました。そのため、光が当たっている背景はかなり露出オーバーになっています。
 タチツボスミレと背景との距離が近いので、背景のごちゃごちゃしたものがボケきれていません。200mmのレンズで撮っていますが、もう少し長めのレンズの方が背景を美しくできたと思います。

 いちばん右の花とその隣の花では、わずかに右の花が手前にあります。両方の花にピントを合わせるため、レンズから二輪の花までの距離が等しくなるよう、カメラアングルを決めています。

タンポポ

 どこででも普通に見られる野草ですが、その多くはセイヨウタンポポです。日本の在来種であるニホンタンポポは本当に少なくなってしまいました。それでも、タンポポの咲いている風景というのは心和むものがあります。

 下の写真もセイヨウタンポポです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 165mm 1:2.8 F4 1/30 EX3 PROVIA100F

 5月くらいになるとタンポポの背丈もかなり伸びますが、3月の頃に咲くタンポポは、葉っぱもロゼッタ状になっており、花も地面に張り付いてるくらいに背丈が低いものが多いです。一緒に咲いている小さな白い花はタネツケバナですが、それに埋もれてしまうくらいの背丈です。
 カメラを地面につくくらいまで下げ、タンポポとほぼ同じ目線から撮っています。タンポポだけクローズアップして撮ると花の表情が良く出ますが、周りの環境を含めて写すことにより、タンポポの魅力を引き出すことができると思います。

 タンポポに限らず、黄色の花は見た目以上に明るいので、かなり多めに露出をかけないと花の色が黒っぽく濁ってしまいます。太陽に向かって咲いている姿は、明るめの方が似合っていると思います。

クサノオウ

 ケシ科の越年草で有毒植物です。皮膚病などにも効果があるらしく、昔から薬として使われてきたようです。
 初夏の野草というイメージが強かったのですが、近年は暖かいせいか、関東では3月中旬くらいから見かけるようになりました。遠くからも目につく黄色い花を咲かせる野草です。

 近所の公園の脇に咲いていたクサノオウを撮ってみました。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 薄紙のような花弁が印象的です。日が当たっていない建物の陰をバックに、黄色の花を浮き立たせました。
 このようなシチュエーションでは画全体でとらえてもうまく露出設定ができないので、スポット露出計を用いてピンポイントで測光するのが望ましいです。
 この写真には写っていませんが、下の方の葉っぱが適正な明るさになるように露出を決めています。花の部分はそれよりも1.3段ほど、露出が多めになっています。先ほどのタンポポと同じで、黄色い花はかなり露出を多めにかけないと暗い印象になってしまいます。

 また、この花は産毛のようなものがびっしりと生えたつぼみも印象的で、良いアクセントになってくれます。

イチリンソウ

 野山に生える代表的な春の野草で、里山や林床などでよく見られます。可愛らしい白い花はとても清楚な感じがします。花が咲き終わり、初夏には地上部分がすっかり枯れてしまいますが、地下茎はしっかりと残っていて、長い期間をその状態で過ごすようです。
 群落をつくって咲くことが多く、写欲をそそられる花です。

 下の写真は偶然見つけたイチリンソウの群落です。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 たくさんの花が咲いているときは、どの花を撮るか迷います。いろいろなアングルから見て、画としてバランスの良い部分を見つけ出せればいいのですが、これがなかなか思うようにいきません。テーブルフォトのように被写体を自由に動かすことができればいいのですが。

 それぞれ好き勝手な方を向いて咲いていますが、こちらを向いている一輪を見つけたので、花の形が良くわかるアングルから撮影しました。カメラを目いっぱい低く構え、空が少し入るくらいにレンズを上向きにしています。これによって明るい春の日差しを表現しようとしました。
 こじんまりと咲いているオオイヌノフグリも色どりを添えてくれています。

 花が白いので、緑の葉っぱが適正になるように露出を決めると、色が濁らずに清楚な感じが保てると思います。

イワウチワ

 少し山に入った半日陰の岩場で見かける多年草です。どちらかというと北斜面の岩場で見られることが多く、他の植物が生えていないようなところにしっかりを根を下ろしています。薄ピンク色の花はとても可愛らしいです。
 イワウチワによく似た花にトクワカソウがありますが、葉っぱの形で区別できるようです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 F4 1/30 EX2 PROVIA100F

 岩場に枯葉が降り積もったような場所に生えているので、周辺の色合いはとても地味です。そのため、薄ピンク色の花は一層目立ちます。陽が差し込むと宝石をちりばめたような光景になります。
 上の写真も逆光気味で撮っており、花びらが浮き上がってくるようなところを狙いました。
 花がとても可愛らしいのでアップで撮りたくなりますが、周囲の環境がある程度わかるように撮った方が、この花の魅力が伝わるように思います。
 自動露出で撮ると、周囲が暗いので花の質感が飛んでしまう可能性があります。花をスポット測光して露出を決めた方が、花の質感を損なうことがないと思います。

 この花の撮影で苦労するのは、三脚が立てにくいところに咲いていることです。平らな足場の良いところに咲いているのを見たことがありません。しかし、毎年撮りに行きたくなるくらい魅力のある花のひとつです。

(2021.4.3)

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