ギア雲台 Manfrotto マンフロット410の分解・調整

 私は主にマンフロットの410というギア雲台を使用しています。構図決めの際、微妙な調整がし易いのが愛用している主な理由です。3軸(パン、ティルト、ロール)が、それぞれ独立したノブを回すことで動くのですが、長年使っているとこのノブが重く(固く)なってきます。重くなると動かす際にとても力がいるので、分解して調整することにしました。

分解の手順

 マンフロット410雲台の外見は複雑な形をしていますが、構造は比較的シンプルです。

▲マンフロット410 ギア雲台

 分解は1軸ごとにやっていきます。どの軸も構造は同じです。
 まずはロール軸からですが、マンフロットのロゴと角度目盛りが書かれたラベルを剝がします。これはかなり強力な両面テープで張り付けてあるので、ラベルの端を剥がし、強く持ち上げるとラベルにキズ(折り目)がついてしまいます。ラベルの周囲から細めのマイナスドライバを差し込み、少しずつ持ち上げていくと綺麗に剥がれます。

▲オレンジ色の矢印のラベルを剥がす

 クッション性のある厚めの両面テープが使われており、剥がすとラベルの裏側と雲台本体の両方にテープが残ってしまいます。これを再利用することは難しいので、綺麗に剝ぎ取ってしまいます。
 ラベルを剥がした状態が下の写真です。

▲ロール軸のラベルを剥がした状態

 ラベルを剥がすとギアをおさえている丸い金属板(押さえ板)があり、その中央にネジ(オレンジ色の矢印)がありますので、4mmの6角レンチを使ってこのネジを緩めます。
 中央のネジを抜くと丸い押さえ板も外れますので、ロール軸の可動部も外れます。
下の写真でもわかるように、中は空洞です。

▲押さえ板を外した状態

 この状態で、ロール軸のギアのかみ合わせをリリースするノブ(下の写真の黄色の矢印)をいっぱいに回し、押さえ板がはまっていた反対側(オレンジ色の矢印の箇所)を軽く押すと、中にはまっている円筒形のギアがポロっと外れます。これで分解完了です。

▲押さえ板がはまっていたのと反対側の状態

ノブが重くなる原因

 このギア雲台は、上で外した円筒形のパーツの外側に付けられたギアに、ウォームギアがかみ合い、ウォームギアを回すことでそれぞれの軸が回転する仕組みになっています。そして、遊び(ガタ)が出ないように、強力なバネでウォームギアを円筒形のギアに押し付けています。
 ところが、長年使っていると円筒形のギアが徐々に摩耗して、歯高が低くなってしまいます。ここにウォームギアが押し付けられるので、ウォームギアの歯先が円筒形のギアの歯の底に当たってしまい、摩擦抵抗が大きくなり、ノブが非常に重くなるということになってしまいます。

▲円筒形のギア

 上の写真で、黒く汚れている辺りの歯が摩耗しているのがわかるでしょうか?
 一方、ウォームギアの方は特に摩耗しているようには見えません(下の写真)。

▲ウォームギア

 円筒形のギアはアルミ製で、ウォームギアは真鍮製です。真鍮はブリネル硬さでアルミの3倍ほどありますから、アルミ製のギアの方が摩耗してしまうのだと思います。

ギアのかみ合う位置を変える

 摩耗してしまったパーツは新しいものに交換するのが望ましいのですが、パーツ代も結構高額のようですので、まだ摩耗していないところを使うようにします。

▲未使用で歯が摩耗していない箇所

 この雲台のティルト軸とロール軸の可動範囲はそれぞれ120°です。この範囲を行ったり来たりしているので、円筒形のパーツは全周のおよそ1/3しか使っていません。残りの2/3は未使用状態ですので、この未使用部分とウォームギアがかみ合うようにすれば、ノブが重いという問題は解消されます。

 なお、ウォームギアのところにはグリスが塗ってありますが劣化してきているので、ウエスなどで綺麗にふき取り、新しいグリスを塗り込んでおきます。

 また、円筒形のギアも汚れていますので、こちらも綺麗にふき取り、グリスを塗っておきます。

組み上げの手順

 組み上げは、まずロール軸のギアのかみ合わせをリリースするノブをいっぱいに回した状態で、円筒形のギアをはめ込みます。この時、ギアが摩耗していない未使用の箇所がウォームギアがとかみ合うように、はめ込む位置を確認します。120°可動しても、摩耗した部分がウォームギアとかみ合うことがないようにします。

 次に、ロール軸を雲台に嵌合させ、押さえ板をはめてネジを締め込めば組み上げは完了です。

 この状態でロール軸の可動範囲いっぱいまでノブを回してみて、重くなることがなければ大丈夫です。もし途中で重くなるようであれば、摩耗している歯の部分にかみ合っているので、再度分解してギアの位置を移動させる必要があります。

 また、丸い押さえ板を止めるネジですが、これが緩んでくるとギア雲台にガタが生じますので、このネジはかなり強く締めておいた方がよろしいと思います。

 動作確認をして問題がなければ、最初に剥がしたラベルを張り付けます。何年後かにまた調整をすることを考慮すると、両面テープで張り付けるのが良いのではないかと思います。

ティルト軸の調整

 ティルト軸もロール軸と同様の手順で行ないます。
 ティルト軸の可動範囲もロール軸と同じ120°で、全周の2/3は未使用の状態ですので、そことウォームギアがかみ合うようにすればOKです。

パン軸の調整 

 パン軸も分解の手順は同じですが、状況が若干異なっています。パン軸の可動範囲は360°あり、このため、円筒形のギアの全周に渡って歯が摩耗している可能性があります。その場合は、ウォームギアとのかみ合い位置を変えても改善は見込めません。
 また、摩耗箇所が部分的であったとしても、使用している途中で摩耗箇所とウォームギアがかみ合う位置に来る可能性は十分にあるので、完全に問題解消というわけにはいきません。もし、パン軸のノブが重くて支障があるようでしたら、パーツを新しいものに交換するか、もしくは、雲台そのものを新しくするかしかありません。

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 この調整で、ノブが快調に動くのがどれくらいの期間かというのは使用頻度によって異なるので一概に言えませんが、いずれノブが重くなったとしても、ティルト軸とロール軸の円筒形ギアに関してはまだ1/3が未使用なので、さらにもう一度、調整できる余裕が残っています。それまでパン軸が耐えられればですが。

(2021.7.1)

#マンフロット #Manfrotto #ギア雲台

“ギア雲台 Manfrotto マンフロット410の分解・調整” への2件の返信

    1. 竹田正道さま
      拙いwebサイトをご覧いただきまして、ありがとうございます。
      マンフロット410雲台をお使いですか?
      私も長年愛用しており、とても気に入っているのですが、やはりメンテナンスは必要ですね。
      私のは20年以上になるので、そろそろ買い替え時かと思っております。

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