リンホフマスターテヒニカ2000 Linhof MasterTechnika 2000

 1995年にマスターテヒニカ45(MT45)の後継機種として発売されたモデルです。見た目はマスターテヒニカ45によく似ていますが、デザイン的にも機能的にいくつかの変更や改良が加えられています。今回はマスターテヒニカ45との違いを中心に、マスターテヒニカ2000をご紹介したいと思います。

マスターテヒニカ2000の外観

 マスターテヒニカ2000の外観はこんな感じです。

 マスターテヒニカ45と非常によく似ていて、パッと見では区別がつかないくらいです。バック部のロックネジが白くなって本体側面に配置されたとか、可動トラックのノブも白くなりテーパ型になったとか、ボディ上部の一部が上にめくれ上がるためのノブの形状が変わったとか、そういった細かいところで区別できるくらいでしょうか。

 マスターテヒニカ2000の主な仕様は以下の通りです(リンホフマスターテヒニカ2000 取扱説明書より引用)。
  画面サイズ    : 4×5インチ判
  レンズマウント  : リンホフ規格仕様
  フロントライズ  : 55mm
  フロントフォール : ベッドダウンとティルトアップによる
  フロントティルト : 前後各30度  
  フロントスイング : 左右各15度 
  フロントシフト  : 左右各40mm 
  バックティルト  : 前後各20度  
  バックスイング  : 左右各20度
  最大フランジバック: 430mm
  収納時外形寸法  : 180mm(W)×180mm(H)×110mm(D) ノブ等を除く
  重量       : 2,600g

 主な仕様はマスターテヒニカ45とほとんど同じです。

 また、マスターテヒニカ45は光学距離計が装備されているモデルとそうでないモデルがありましたが、マスターテヒニカ2000は装備されていないモデルのみです。このため、本体右側面から見ると、光学距離計を取り付ける部分のカバーのようなものが廃止されているのですっきりした感じに見えます。
 なお、電子測距システム(EMS) ユニットなるものを装着すると、90~300mmのレンズでフォーカスエイドや最大で60mの測距が可能となるようですが、実際に見たことも使ったこともありません。

ボディー内にフォーカシングトラックを装備

 マスターテヒニカ2000になっていちばん大きく変わったのは、何と言ってもボディ内にフォーカシングトラックを備えたことだと思います。
 マスターテヒニカ45の場合、焦点距離が75mmより短いレンズで遠景を撮影しようとすると、レンズ繰出し量が少ないので、レンズを取り付けるUアームが可動トラックに乗りません。このため、可動トラックによるピント合わせができませんでした。

 これに対してマスターテヒニカ2000は、それまで固定式だったボディー内トラックを可動式にすることで、ボディ内トラックだけでピント合わせができるようになりました(下の写真)。

 Uアームを引っ張り出すつまみの下に小さなツマミ(フォーカシングノブ)があり、これを左右に動かすことでボディ内トラックが10数ミリ前後に動きます。短焦点レンズの場合、ピント合わせの際のレンズ移動量は少ないので、この程度の移動でも十分にピント合わせができます。
 フォーカシングノブは狭いところにあるので決して操作性が良いとは言えませんが、ベッドダウンすると操作しやすくなります。マスターテヒニカ3000になるとフォーカシングノブが本体側面に配置されているので、とても使い易いと思います。

レンズマウント部がプチ整形

 たぶん、マスターテヒニカ2000からだと思うのですが、レンズマウント部に小さな改良(?)が加えられました。レンズマウント部の上部の左右両側に、レンズボードの受けがついています(下の写真の矢印の部分)。

 この受けはレンズマウント面よりほんの僅か高くなっており、ここでレンズボードを受けるようになっています。これにより、レンズボードを下部にある2点の受けと、左右のこの2点の合計4点で受けるようになったので、レンズボードの座りが向上しています。

 一方で、新設された上部の受けは、内側にほんの少し膨らんでいます。このため、このレンズボードの受けの内側の寸法は96.35mmしかなく、従来のリンホフボードは幅が97mmあるので嵌まりません。
 このレンズボード受けの位置に切り欠きのついたレンズボードが発売されているようで、それだと問題なく装着できるのですが、私も実際に使ったことはありません。
 そこで、従来のレンズボードを装着する場合、この受けが当たる部分を少しだけ削って対応しています。レンズボードの左右のコバの一部を少々削ったところで全く問題はありませんが、あまり気分の良いものではありません。

オリジナルの蛇腹の品質がイマイチ

 これはマスターテヒニカ2000になる前から気になっていたことですが、リンホフオリジナルの蛇腹の質があまり良くないという印象を持っています。
 詳しいことはわかりませんが、交換した蛇腹を開いてみると紙の上に薄いビニールのような材質のものを貼り合わせたような構造になっています。見た目は綺麗なのですが、ピンホールができやすい気がします。
 また、表面に張ってあるビニールのような素材が収縮(経年劣化)するのか、ひび割れを起こしてきます。こうなると見た目もよろしくないので、ピンホールがなくても新しい蛇腹に交換したほうが良いと思います。

 私が使っているカメラは何度も蛇腹を交換しており、日本の職人の手による革製の蛇腹を使っています。それでも、5~6年もすると折り目のあたりにピンホールができたりしますが、オリジナルの蛇腹に比べると倍以上長持ちします。

 カメラは素晴らしいのになぜ蛇腹だけショボいのか、消耗品だからということで敢えてショボくしているのか、良くわかりませんが理解に苦しむところです。

バック部をロックする締め付けが弱い

 マスターテヒニカのバック部は、4か所のロックネジを緩めることで後方に約40mm引き出すことができます。この状態でバック部のティルトやスイングを行なうわけですが、いっぱいに引き出した状態だとロックネジを締めてもバック部が重みで少し下に下がってしまいます。

 上の写真はバック部をいっぱいに引き出し、ロックネジを締めた状態ですが、バック部が重みでわずかに下がっているのがわかると思います。

 マスターテヒニカ45ではこのようなことがなかったため、私の持っているカメラだけの現象なのかと思い、大判カメラの修理等を専門に行なわれていらっしゃる方におききしたところ、マスターテヒニカ2000になってからはどれも同じようになると言われました。
 バック部を目いっぱい引き出して使うことはまずないので撮影上の支障はありませんが、他の箇所はロックすればビクともしないのに比べると、ちょっと頼りない感じがします。

間違いなく完成度の高いカメラ

 マスターテヒニカ45と2000を比べるといくつかの違いはあるものの、いずれも完成度の高いカメラであることは間違いありません。ボディ内可動トラックを除けば操作性もほとんど同じであり、どちらのカメラを持ち出しても同じ感覚、同じ安心感で使うことができます。
 ただし、65mm以下の短焦点レンズでの撮影が多い場合は、マスターテヒニカ2000の方が便利だと思います。

 私も2台のカメラを特に使い分けているわけではありません。その日の気分で、というのが正直なところです。

(2021年7月25日)

#Linhof_MasterTechnika #リンホフマスターテヒニカ

“リンホフマスターテヒニカ2000 Linhof MasterTechnika 2000” への2件の返信

  1. はじめまして。いつも参考にさせていただいております。私もMT2000を愛用しております。私のものは、ノブが黒いので、こぼうしさんとは、製造年が違うのかもしれません。
    半年ほど前まで純正蛇腹でしたが、ビニールっぽい質感で安っぽいなと思っていました。バック部の締め付けネジがポロッと取れてしまい修理に出したところ、蛇腹が穴だらけであることが判明し、国産本革に取り替えました。質感はこちらの方がいいですね。
    レンズボードは、通常のリンホフボードを使用しています。光線漏れも特にないので、そのまま使っていますが、「受け」は2000からなのですね。格好いいカメラなので、大切に使いたいと思っています。

    1. うたろうさん
      ご訪問いただき、そしてコメントいただきまして、ありがとうございます。
      MT2000はとても素晴らしいカメラなんですが、純正の蛇腹だけはいただけないですね。
      レンズボードのマウント部分が変更になったのがどのモデルからなのか、詳しくはわからないのですが、多分MT2000からではないかと...
      リンホフを持ち出すと、やっぱり気合が入ります。
      私のカメラも一度、オーバーホールをしていますが、メンテナンスをしていけば一生もののカメラではないかと思います。
      今後とも、よろしくお願いします。

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