写真にタイトルをつける(2) タイトルをつけるときの視点

 前回は、写真にタイトルをつけることによる効果について触れましたが、今回は、実際に写真にタイトルをつける際に意識すること、もう少し具体的に言うと、どのような視点でタイトルを決めるかということについて進めてみたいと思います。
 私は今回ご紹介するように、5つの視点のうちのいずれかでタイトルをつけることが多いです。あくまでも私の個人的な視点ですので、もちろん他にもたくさんの視点があると思いますが、参考になればと思います。

光や色、音、匂いなどからタイトルをつける

 写真というのは光を画像として記録しているわけですから、当然のこと、光とか色を視覚的に認識することができます。カラー写真であれば様々な色であり、モノクロ写真であれば濃淡として表現されます。また、光芒とか光彩などのように、光そのものが感じられることもあります。

 さらに、光のように直接的に認識できるものだけでなく、画像から、その場に聞こえているであろう音とか匂いとか、そういうものも間接的に感じることができます。例えば滝の写真であれば、流れ落ちる水の音を感じるでしょうし、梅の写真を見ればほのかな香りを感じると思います。

 こういった光や色、音、匂いなどをタイトルのもとにすることは比較的多く、タイトルにし易いかも知れません。
 例えば、木々の間から差し込む光芒が印象的だった場合、それをタイトルに加工することで、より印象が強まります。ただし、タイトルを「光芒」などのようにそのまま使うのではなく、表現を変えるなどのひと工夫が必要です。

 下の写真は、ちょうど今頃に咲いている「ロウバイ」を撮ったものです。

 この写真のタイトルは「木陰のぼんぼり」としました。黄色のロウバイの花に光が差し込んで、まるで花が自ら発光しているような感じです。
 ロウバイの印象がより強まるようにと思い、逆光になる位置からの撮影で、背景は暗く落ち込むように陰になっている場所を選んでいます。
 光り輝いている小さな花が、まるでひな祭りのぼんぼりのように感じられたのでこのようなタイトルにしたのですが、これを「木陰の提灯」としてしまうと雰囲気がそがれてしまう感じです。また、ぼんぼりは漢字で「雪洞」と書きますが、漢字よりも平仮名の方が優しい感じになると思います。

擬人化してタイトルをつける

 このタイトルのつけ方は一般的な風景よりも、花とか木とかの写真に対して使うことが多いです。簡単に言うと、花や木を人間に見立てて、姿かたちや仕草、立ち居振る舞い、表情などに例えるというやり方です。特に花の場合は人間に例え易く、そういう視点で見るとまるで人間と同じように見えてくるので不思議なものです。

 チューリップやヒマワリ、ユリなどが被写体になることは多いと思いますが、咲いている姿が躍っているようだとか唄っているようだと感じた経験のある方もたくさんいらっしゃると思います。そういった人間の姿や言動を重ね合わせて、それをタイトルにします。
 踊っているように見えるとすれば、「踊り子」とか「バレリーナ」などという言葉が連想されますし、唄っているように見えるところからは「熱唱」とか「コーラス」などという言葉が浮かんできます。
 「踊り子」などは写真によってはそのままタイトルになるような場合もあると思いますが、ちょっと味付けをすることで、より印強いタイトルにすることができます。

 紅葉し始めたカエデの葉っぱを撮ったのが下の写真です。

 タイトルは、「初めてのルージュ」です。

 まるで塗り絵でもしたかのように、しかも一枚だけが色づくのはあまりないと思うのですが、その色づいた赤があまりに鮮やかだったので、初めて口紅を塗ってみた女性に例えたタイトルです。ちょっとはみ出してるように見えるところから、「初めてのルージュ」としてみました。

 また、この写真にはキャプションもつけてみました。
 「ようやく色づき始めたカエデが一葉 まだお化粧には慣れていないようです」

 タイトルだけでは伝わりにくいかなと思ったこともありますが、ほのぼのとしたユーモラスさを表現できればと思ってつけたキャプションです。
 自然界は時として予想もしなかった姿を見せてくれることがありますが、そういう光景も擬人化することで写真を引き立てるタイトルになることもあると思います。

主題からタイトルをつける

 写真は主役と主題があるとよく言われます。主役と主題が同じということもまれにはあると思いますが、主役と主題は別のものであることの方がはるかに多いのではないかと思います。
 例えば、桜を中心となる被写体として撮影した写真の場合、主役は桜であっても主題は全く別物です。雪の残る山を背景に咲いている風景であれば、「春の訪れ」というようなことが主題になるかも知れませんし、風に散っていく桜の写真であれば、「儚さ」のようなものや「春から初夏へ」というようなことが主題になるかも知れません。
 要するに、桜の写真を通して何を伝えたいかによって主題は変わってきます。

 写真を撮影するときに主題が明確になっている場合もあれば、あとで仕上がった写真を見て主題が決まる場合もあるというのは前回にも触れた通りです。撮影の前に主題がはっきりしていたほうが作画意図が明確になるのは言うまでもありませんが、あとから主題を決めるのが悪いとも思いません。
 いずれにしても、その写真から何を伝えたいか、それを明確に持つことは大切なことで、それをタイトルにするというやり方です。

 長野県と群馬県の県境にある白根山を撮影しました。

 この写真には、「天翔ける」というタイトルをつけてみました。

 撮影したのは雨が降った翌日の早朝で、空気がとても澄んでおり、はるか向こうに富士山が見えます。筋状になっている雲も含めてとにかく空がきれいで、白根山と同じくらいの高さから撮影していることもあり、まるで空を飛んでいるかのような錯覚さえ覚えます。
 この写真の主題は限りなく広がる美しい空です。それを、そのとき自分が抱いた感覚をタイトルにしてみました。

 もし、空ではなく煙が立ち昇っている白根山に主題を感じたならば、構図も違ってくるでしょうし、当然タイトルも全く違ったものになります。

イメージや印象からタイトルをつける

 このタイトルのつけ方はちょっと説明しずらいのですが、被写体、あるいは仕上がった写真を見た時に全体から受ける印象をタイトルにする方法です。
 同じ被写体でも肉眼で見た時とファインダー越しに見た時、そして仕上がった写真を見た時では受ける印象はずいぶん違うことがありますが、いずれにしても全体から受けるイメージや印象を言葉にするといったやり方です。前の3通りのやり方のように、この部分がというよりは全体をボヤっと見た感じとでも言ったらよいのか、とにかく感覚とか感性に頼るという感じです。
 被写体として何が写っているかということよりも、全体の色とかコントラストとか、そういうものに影響されると思います。

 下の写真はニガナという小さな花を撮ったものです。

 「幸せの予感」というタイトルは、この写真全体から受ける印象をもとにしています。
 また、このようなタイトルは撮り手の感性によるところが大きいので、見る人はまったく違った印象を持つ可能性が大です。そのため、キャプションをつけています。

 「梅雨の合間の青空に黄色が映えて、何かいいことがありそうな気がします」

 このように、キャプションをつけることで撮り手が感じていることを伝える補助にはなりますが、だからと言って誰しもが同じように感じてもらえるわけではありません。理解不能などと思われてしまうことも考えられるということを承知しておいた方が良いと思います。

 とはいえ、このタイトルと写真がぴったりと合ったときは、それなりの訴求力があると思います。

説明的にタイトルをつける

 さて、タイトルのつけ方の5つ目ですが、これは写っている状況を説明するようなタイトルにするという方法です。
 説明するといっても、誰が見てもわかるようなことをそのまま表現しても効果的なタイトルにはなりません。例えば、湖のほとりに菜の花が咲いている写真に、「湖畔に咲く」という説明的なタイトルをつけても、言われるまでもないといった感じになってしまいます。

 偶然見つけたミズバショウの群落を撮った写真です。

 タイトルは「雪消水の潤い」です。
 雪消水(ゆきげみず)とは雪が解けて生じた水のことですが、その大量の水がこの場所に流れ込み、ミズバショウが育つ環境を作っているということを説明しようと思ってつけたタイトルです。
 湿地にミズバショウが咲いているのは写真を見れば明らかですが、それは冬の間に降った雪によってもたらされているということを伝えようと思いました。

 写真に写っている状況を直接的に説明するだけでなく、その状況を作り出すもとになっているものやそこに至るまでの経緯などを説明するようなタイトルにすることで、見る人にイメージを膨らませてもらうことが出来ると思います。

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 自分で撮った写真にタイトルをつけて、それを何度も眺めていると、しっくりくるものもあればちょっと違うなと思うものもあります。もし、違和感があればつけ直してみるも良し、また、違った視点でタイトルを考え直してみるも良しで、自分の写真を見直す良いきっかけになるのではと思っています。
 今回は日頃、私が写真にタイトルをつけるときに用いているやり方をご紹介しましたが、タイトルやキャプションのつけ方は自由です。自分の感性でつけるのがいちばんだと思いますが、できれば写真を生かすようなタイトルにしたいものです。

(2022年2月21日)

#フレーミング #写真観 #構図 #額装

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