第192話 ローライ Rollei のモノクロフィルム SUPER PAN 200(120) の使用感

 ローライブランドではたくさんのフィルムが販売されていますが、このSUPER PAN 200フィルムはずいぶん前に数回使っただけで、それ以降は使うことがありませんでした。どこが気に入らないというような理由があったわけではありませんが、使い慣れていたフィルムを使い続けていたというだけのことです。
 しかし、数年前によく使っていた富士フイルムのACROSもACROSⅡになり、驚くほど価格が高騰してしまったので、その代替となるフィルムを物色し始めました。
 そんなわけで、久しぶりにローライのSUPER PAN 200を使ってみました。

ローライのスーパーパンクロマチックフィルム

 このフィルムはもともとアグファが出していたフィルムのようで、それを新たにローライのブランドとして発売しているようです。箱には、「 Made in Belgium」と書かれていますので、製造はアグファ・ゲバルト社で行なっているようです。
 大きな分類ではパンクロマチックのモノクロフィルムに属するのでしょうが、750nm付近の光まで反応するとのことで、赤外線フィルターを用いることで赤外線写真の撮影も可能なようです。パンクロマチックに「スーパー」が冠されているのはそのような理由によるものなのでしょう。そのためか、フィルムはかなり遮光性の高そうな、そして、なんの愛想もないパッケージに入っています。
 ISO感度は200なので使いやすいフィルムではないかと思います。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムです。1本1,500円ほどで購入しました。一般的なISO-100のフィルムに比べると少しお高めといった感じです。

 ローライから出されているデータシートを見てみると、ISO 125~250まで適応可能で、解像力は180本/mmとなっています。データ上は富士フイルムのACROSⅡとほぼ同じ解像力のようです。
 そして、「高感度の白黒ネガフィルム。多彩でコントラストの高い被写体の撮影に最適です。特に低照度条件で威力を発揮します。頼りになる万能フィルムです。」と書かれています。自信満々のようです。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像は一般的に出回っている多くの現像液で問題なくできるようで、今回はSilverSalt現像液を使用しました。
 実際の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : SilverSalt
  ・希釈 : 1 + 25 (原液1に対して水25)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 12分
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌
  ・停止 : 60秒
  ・定着 : 7分
  ・水洗 : 10分

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルで、必要な現像液の量は約500mlです。SilverSaltの原液20mlと水500mlを合わせて520mlの現像液を調合しました。

 液温が下がらないようにバットに20℃の水を張り、その中に電熱器を入れて20℃を保つようにして、そこに現像タンクを入れておきました。

 なお、停止液と定着液は富士フイルムの製品を使いました。

ローライ SUPER PAN 200 の作例

 今回の撮影に使用したカメラはMamiya 6 MF、使用したレンズは55mmと75mmの2本です。撮影した中から5枚の写真をご紹介します。

 まず1枚目は、都庁の都民広場で撮影したものです。

 右側から日差しが差し込んでいるので画の中央部分と右端の部分がかなり明るくなっています。地面に貼られているタイルの様子がかろうじてわかりますが、この画の中ではいちばんのハイライト箇所でしょう。
 一方、極端なアンダーという箇所はなく、全体的には比較的中間調で構成されていると言えると思います。確かに解像力は高いという印象を受け、特に柱の石の質感は良く出ているのではないかと思います。
 また、白から黒へのグラデーションも滑らかで、高い解像度を持ちながらも硬すぎることのない描写といった感じです。掲載した写真ではわかりにくいと思いますが、粒状感もほとんど気になりません。
 
 2枚目は近所の公園で撮影した写真です。

Created with GIMP

 だいぶ日が傾いてきている時間帯で、木々の影も落ちていて、薄暗いというほどではありませんが光量の少ないシチュエーションです。
 この写真は明らかに露出不足です。作画意図を持ってアンダー気味にしたのではなく、もう少し明るく撮影したつもりだったのですが、結果的にはだいぶ暗い仕上がりになってしまいました。たぶん、意図した露出よりも1/2~2/3段ほどアンダーだと思います。1枚目の写真に比べるとディテールの描写が明らかに甘い感じですが、黒くつぶれてしまうほどではなく、写真全体の雰囲気はこの方が良かったかも知れません。

 そして3枚目ですが、公園内の雑木林を撮ってみました。

 この季節は木々に葉っぱがないので林の中まで光が差し込んでおり、結構明るい感じがします。日の当たっていない木の幹とのコントラストがかなり高い状態です。
 木の根元にある枯草が鮮明に写っているので解像度の高さは感じますが、画の上半分、折り重なる枝で白と黒のメッシュのようなパターンが構成されているあたりを見ると、何となく描写が甘い感じです。解像度が低いというわけではなさそうで、白く輝いている細い枝の部分のディテールがうまく表現されていないように見えます。
 また、左側の2本の大きな木の幹は黒くつぶれてしまっており、幹の質感はほとんどわからない状態です。コントラストが高い状態はあまり得意ではないのかもしれません。

 それでは、さらにコントラストの高い状態をということで4枚目の写真がこちらです。

Created with GIMP

 これは、公園内の池の中に自生している葦の仲間だと思います。もちろん、この時期なのですっかり枯れています。そこに光があたっているのですが、背後の林や池は日陰になっているのでコントラストの高い状態です。
 光があたっている枯れた葦の茎は白く輝き、かなり硬い感じの描写になっています。白飛びしすぎないようにと露出を抑え気味にしているのですが、それでもこの状態で、金属の棒でも写したのではないかと思えるほどです。
 一方、背後はかなり暗く落ち込んでおり、かろうじて木があることはわかりますが、それ以上の細部は判別不能といった感じです。

 最後、5枚目はコントラストの低い状態をということで、海岸から突き出ているごつごつした岩場を撮影したものです。

 この日は曇り空で、まんべんなく光が回っているという状況です。海も何となくさえない色をしていて、岩場も黒い岩と白い岩が層をなしているような場所ですが、コントラストは低めです。
 解像力も申し分のない状態で、全体としてなだらかな階調の変化が見られます。
 また、白飛びしている箇所や極端に黒くつぶれているところもなく、豊かな再現性という印象です。

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 解像力も高く粒状感も気になることもなく、描写性能としては高いフィルムだと思うのですが、シャドー部の描写はあまり得意ではないように感じます。ハイライト基準で露出を決めるとシャドー部は本当に黒くつぶれてしまいます。確かに黒はきれいに出ていますが、ディテールがほとんどわからなという状態です。
 また、ISO-200となっていますが、実効感度は125~160くらいではないかと思われ、特に低照度状態で撮影する場合はさらに実効感度は下がる(たぶん、100とか80)感じです。
 逆に露出をかけすぎるとハイライト部がとても硬調な感じになってしまい、写真全体の印象が変わってしまいます。
 極端にコントラストの高い状態を避け、1/2~2/3段ほど露出を多めにかけると、なだらかできれいな描写が得られるように思います。

 なお、今回はsilverSalt現像液を使いましたが、別の現像液だと様子も変わってくるかも知れません。

(2025.3.30)

#モノクロフィルム #ローライ #Rollei

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