大判カメラ撮影に必要な小道具、あると便利な小道具たち(1)

 大判カメラは極めてシンプルであるがゆえに、撮影の際にはいろいろな小道具(アクセサリ)が必要になります。カメラ本体とレンズとフィルムがあれば撮ることはできますが、その他、ないと非常に不便なものやあると便利なものなど、多岐に渡ります。
 今回はそんな小道具たちをご紹介したいと思います。中には大判カメラでの撮影に限らないものもありますが、私が撮影行の際に持ち歩いているものです。

ピント確認用ルーペ

 ピント合わせには必需品です。肉眼でフォーカシングスクリーンを見ながらある程度のピントは合わせられますが、合わせたいところにピッタリとあっていることを確認するためにはルーペが必要です。

 市販されているルーペは、携行に便利な小型のものから少し大きめなものまでいろいろありますが、小型のルーペは見える範囲が狭いのと、顔をフォーカシングスクリーンに着くくらい近づけないとならないのであまり使い易くありません。

 ある程度の広範囲が視野に入る方が使い易いので、私は自作のルーペを使っています。
 49mm径のクローズアップレンズを2枚使い、約6倍の倍率にしています。また、フォーカシングスクリーンに顔を近づけ過ぎなくても良いように、全長が90mmほどあります。ちょっと大きすぎる気もしますが、使い易さを優先しています。

▲ピント確認用ルーペ(自作)

 また、ルーペの径が小さいと、短焦点(広角系)レンズでの撮影の際、フォーカシングスクリーンの周辺部は斜めに光が入ってくるので、ルーペをスクリーンに垂直にあてても暗くて良く見えません。光の入射角と同じくらいにルーペを傾ければ明るくなりますが、そうするとルーペがスクリーンから浮いてしまい、ピントが合いません。
 これは、ある程度の口径の大きなルーペを使って、斜めから覗き込むことで回避することができます。

 こうした条件を満たすものは市販品にもありますが、かなり高額になってしまうので自作したというわけです。
 なお、クローズアップレンズを同じ向きに重ねるとディストーションが目立ちます。一枚を裏返して(向きを反対)重ねることでディストーションも随分改善されます。

冠布(カブリ)

 構図決めやピント合わせの際に外光が入るのを防ぐ目的で使用します。大きめの風呂敷のようなもので、120cmx120cmくらいの大きさのものが多いようです。片面が黒、もう片面が赤、もしくはグレーになっており、黒い面を内側にしてカメラと頭に被せて使います。私が使用しているのは片面グレーのタイプです。

▲冠布(カブリ)

 大判カメラのフォーカシングスクリーンに光が当たると像がとても見難くなります。特に太陽が後方にあるような場合、フォーカシングスクリーンにもろに光が入り込み、像がまったく見えなくなってしまいます。
 フィールドタイプの大判カメラにはスクリーンフードがついているものが多いですが、光のあたる方向によってはほとんど機能しません。
 外光をほとんど遮断できる袋状のフードを自作したりもしましたが、取り付けや取り外しに思いのほか手間がかかるので、あまり出番がありません。きわめて原始的ではありますが、自由度の高さで冠布の右に出るものはないと思います。

 冠布の使い方は人それぞれでしょうが、私はマントのように肩にかけておき、構図決めの時に頭の上に持ち上げ、カメラもろとも被ってしまうというやり方です。そして、構図決めやピント合わせが終わったら再び肩にかけておきます。

 一辺が120cmというのはずいぶん大きいと思われるかも知れませんが、下側(足元)からの光が邪魔に感じるときがあり、これを防ぐためにカメラの下側まで包んでしまうことがあるので、やはり最低でもこれくらいの大きさが必要になります。

 冠布の唯一の欠点は夏場の暑さです。長時間被っていると蒸し風呂にでも入っているようになってしまいます。

 因みに片面が赤やグレーになっているのは、森や林の中などでクマと間違えられないようにとの説がありますが、本当のところはよく知りません。ただし、片面がグレーになっていると太陽光が反射するので、夏場の暑さ対策には効果があるものと思われます。

単体露出計

 大判カメラには露出計が内蔵されていないので、単体露出計が必要になります。
 目測でも露出値はほぼわかりますが、露出に対する許容範囲が狭いリバーサルフィルムを使うことが多いので、正確な露出値が求められます。また、コントラストが高い被写体やピンポイントで表現したい部分がある被写体の場合などは、単体露出計で正確に測って露出を決めます。

 私が撮る被写体は風景が多いので、使う露出計も反射光式のスポット露出計がほとんどですが、花などを撮るときには入射光式の露出計を使うこともあるので両方持ち歩いています。

▲単体露出計 左:入射光式露出計  右:反射光式露出計

 入射光式の露出計は手のひらにすっぽりと納まるくらいの小型のものを使っていますが、反射光式の露出計は結構大きいです。昔は反射光式のスポット露出計もいろいろなメーカーが出していましたが、今はほとんど選択肢がなくなってしまいました。私が使っているペンタックスのデジタルスポットメーターも生産終了品となっており、新品を手に入れることはできません。

水準器

 カメラの水平を測るためのもので、いろいろなタイプの製品が販売されていますが、私が使っているのはオーソドックスな円筒形のタイプです。
 三脚や雲台に付いている製品もありますが、そういったものはかなり小型の水準器なので、正確に水平を測りたいときにはちょっと心もとない感じです。工事現場で使うような大きなものは必要ありませんが、長さが6~7cmくらいのものが使い易いと思います。
 価格は安価なものを探せばいくらでもありますが、安いのは精度が心配です。

▲水準器

 円筒形の水準器は、2本の線の間に気泡が収まれば水平が保たれているということですが、大量生産品なので一点ずつ検査しているとも思えません。
 私の使っている水準器も高価なものではありませんが、自分なりにキャリブレーションをして使っています。

 カメラを水平線に向けて構え、フォーカシングスクリーンの横罫線と水平線が重なるようにした状態(この時、カメラは水平を保っていることになります)にして水準器をカメラに取付けます。この状態で、水準器の気泡が2本の線の間に入っていれば問題ありませんが、左右どちらかにずれているようであれば、気泡の位置に合わせて新たに線を書き込みます。この線がこの水準器の基準線になります。
 なお、水準器を取付ける場所によって微妙に傾斜が異なる可能性がありますので、正確に測りたい場合は同じ場所に取付ける必要があります。

ケーブルレリーズ

 レンズのシャッターレバーのところにねじ込んで使います。長さは30cmから1mくらいまで何種類かありますが、最近はケーブルレリーズを使うカメラが非常に少なくなってきたので、レリーズの種類もずいぶん減ってしまいました。

 個人的には長さ60cmあたりがいちばん使い易いと思うのですが、残念ながらこの長さのものはとんと見かけなくなりました。1mのレリーズを使うことは多くありませんが、長焦点レンズで撮影する時はカメラの蛇腹がかなり繰出されるので、長いレリーズが必要になります。

▲ケーブルレリーズ 左:100cm  右:50cm

 ケーブルレリーズがなくてもシャッターのレバーを指でチョンと押せばシャッターは切れますが、指で押したことによるカメラブレを防ぐためにもレリーズは必要ですし、何よりもシャッターのレバーを直接押すのはとても操作しにくいです。
 また、長時間露光する場合などもレリーズがないと、これまたやりにくいです。

 ケーブルレリーズにはストッパー付きのものとついていないものがあります。ストッパー付きのものはストッパーを有効にして押し込むと、ストッパーが解除されるまで押された状態を保っています。バルブ撮影の時などには便利かもしれませんが、私はストッパー自体をほとんど使ったことがありません。数秒程度であればレリーズを押しっぱなしにしていますし、数分というような長い時間の露光の時はレンズのT(タイム)ポジションを使うので、ストッパーがなくても問題ありません。

 ほとんど壊れることもありませんが、撮影に行った際に落としてなくしてしまうこともあるので、常に2~3本を持ち歩いています。

ハレ切り

 大判カメラはアオリを使うことがあるので、35mm判のレンズに着けるような円筒形のレンズフードは使わずに、余計な光をカットしたい時はハレ切りを使います。レンズの先端に着けてあおった場合、レンズフードによってケラレてしまうことがあり、それを防ぐのが理由です。

 15cm四方程度の黒いボードをフレキシブルアームに挟んで使うという、いたってシンプルなものです。フレキシブルアームの一方をカメラのアクセサリーシューなどに挟んで、レンズに光があたらないように黒いボードの向きを調整するだけです。
 レンズの先端に取付けるわけではないので、レンズの径に影響されることもなく、1セット用意しておけば大概のレンズに対応できます。

▲ハレ切り

 黒いボードの代わりに白やシルバーのボードを使えばレフ版としても使えます。大きなボードを取り付けることはできませんが、花を撮影するくらいであれば十分に機能してくれます。

撮影データ記録用のメモ帳

 デジタルカメラは撮影データ(EXIF)を自動で記録してくれますが、大判カメラにはそんな便利な機能はないので、一枚ごとに撮影データを手書きで記録していきます。
 私が記録しているデータは、使用したカメラ、レンズ、シャッター速度、絞り、使用したフィルター、フィルム、撮影日時、撮影場所、天気などです。

 使用するメモ帳は自分の使い易いものを選べば良いですが、私は100円ショップで購入した縦開きのメモ帳を使っています。縦開きのタイプを使う理由は、使用したところまでを見つけるのがやり易いからです。

▲撮影データ記録用のメモ帳

 あらかじめ、撮影当日に持ち出すフィルムホルダーの番号をメモ帳に書き込んでおき、撮影後、該当する番号のところに撮影データを書き込んでいます。
 一枚ごとに撮影データを記録することで、自分自身の露出値に対する感覚が正確になっていきます。もちろん、正確さを期すために露出計で測光しますが、測光前にある程度の精度で露出値がわかればシャッター速度や絞りをどれくらいにすればよいかがわかるので、どのような作風に仕上げるかをイメージしやすくなります。

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 今回は大判カメラを使った撮影の際、最低限必要と感じている小道具たちについて紹介しました。これらの他に、あれば便利という小道具をいろいろと持ち歩いていますので、それらについては次回にご紹介したいと思います。
 なお、フィルターも小道具と言えますが種類も多いので、フィルターについては別の機会に回したいと思います。

(2021.11.8)

#撮影小道具

構図決めに便利なプアマンズフレームの作成

 世の中にはフレーミングを決める際に便利なズームファインダーなるものがあります。大判カメラ用のズームファインダーは、大体65~400mmくらいのレンズの画角をカバーしますので、通常の撮影領域ではこのファインダーひとつで事足りてしまいますが、非常に高価な代物です。
 そこで、ほとんどコストをかけずに同等の機能をもつ「プアマンズフレーム」をつくってみました。

 まず、厚紙などで使用するフィルムと同じ大きさの枠をつくります。例えば、4×5判のフィルム用の場合は、150×130mmくらいの大きさの厚紙の中央に120×96mmの窓をくり抜きます(120×96mmが4×5判フィルムの有効サイズです)。
 次に、この厚紙の下の端に紐を取り付けます。そしてその紐に目盛りを振れば完成です。目盛りは取り付けたところを起点(0cm)として、使用するレンズの焦点距離を少し上回るくらいまで振ります(例えば、400mmまでのレンズを使うのであれば、45cmくらいまで)。

 こうしてできたのが下の写真です。

4×5判用プアマンズフレーム(目盛りは5cmの位置から1cm刻みで50cmまで)

 これの使い方はいたって簡単で、窓枠をくり抜いたボードを片手で持ち、もう片方の手で紐を持ちます。そして、片方の目でこの窓枠を覗き、写したい範囲が窓枠内に納まるようにボードを前後に動かします。フレーミングが決まったらボードを動かさないようにして、もう片方の手で持った紐をピンと張った状態で目の下にあてます。
 そのとき、目の下にあたった紐の目盛りを読み取れば、使用するレンズの焦点距離がわかるという優れものです。例えば、目盛りが15cmだったとすると、焦点距離150mmのレンズを使えばよいということがわかります。
 もちろん、ミリ単位の精度は望むべくもありませんが、レンズを決めるには全く問題ありません。

 また、使うレンズの焦点距離があらかじめ決めっている場合は、焦点距離に等しい目盛りの部分を目のところに当て、紐をピンと張った状態で窓枠を覗くと、その焦点距離のフレーミングになります。

 窓枠の縦横中央に糸などで十字線を張れば、フレーミングの際の目安になって便利かもしれませんが、余計なものがない方が使い易いだろうと思い、私は何もつけていません。
 また、ボードそのものを透明なアクリル板などにすれば窓をくり抜く必要はなく、逆に周囲をマスクすれば済むのでこの方が簡単に作れると思いますが、かなり透明度が高いものを使わないと像がくっきりとしないので、使いにくくなってしまうかもしれません。1円でも安くしたいというのであれば、やはり厚紙をくり抜く方法がお勧めです。

 このプアマンズフレームを覗いた時の目の位置は、使用するレンズの前側焦点の位置になります。したがって、そのフレーミングで撮影する際のレンズの中心は、目の位置から焦点距離分後方に置くことになります。このレンズの位置をあまり大きく変えてしまうと、無限遠の被写体の場合はさほど気にすることもありませんが、近接撮影の場合はフレーミングにずれが生じてきますので注意が必要です。
 とはいえ、もともとがかなり大雑把なものなので、レンズを選択する際の目安として使う程度であり、これにあまり高い精度を求めない方がよろしいかと思います。

 今回は4×5判を例にとりましたが、67判のフィルム用であればくり抜く窓枠の大きさは69×56mm、35mm判フィルム用であれば36×24mmの大きさになりますので、使用するフィルムに合わせて用意しておけば便利です。

(2021.2.23)

#フレーミング #構図 #撮影小道具

ケーブルレリーズの長さが中途半端

 最近の一眼レフカメラは電子レリーズ(リモートコントローラ)が標準対応ですが、私が使っている中判カメラや大判カメラは電子レリーズが使えないので、昔ながらのケーブルレリーズを使っています。簡単に壊れるものではありませんが、長年使っていると動きが渋くなってきたりしますし、撮影に行った際にどこかに落としてきてしまったなんてこともあるので、カメラバッグの中には常に3本くらいが入っています。

 このケーブルレリーズ、なかなかしっくりくる長さのものがなく、私にとって結構なストレスになっています。というのも、シャッターのところにレリーズの先端をねじ込み、手元まで持ってきたときに、押し込むノブが雲台の下あたりにくるのが最も使い易いのですが、これが短すぎたり長すぎたりすると、レリーズの位置を目で確認しなければならないからです。
 昔は種類も豊富で、いろいろな長さのものがあったのですが、いま市販されている製品のほとんどは30cm、50cm、1mの3種類くらいではないでしょうか?

ケーブルレリーズ

 私は主に中判カメラや大判カメラを使っているので、35mm判カメラで使うよりも長めのレリーズが必要になります。手元にあるレリーズは全部で9本ありますが、そのうち50cmが6本、1mが2本、そして60cmが1本です。
 50cmがいちばん多いのですが、これは購入の選択肢がないから仕方なく使っているというのが正直なところです。私にとって50cmのレリーズでは短すぎて、特に大判カメラで長い玉を使うときはレンズが前に繰り出されるので、その不便さを一層感じてしまいます。
 かといって、1mのレリーズは長すぎて、だらしなく垂れ下がってしまい、これまた不便なのです。
 私にとって最適な長さは60cm前後なのですが、今はこの長さのものが手に入りません。私の知る限り、70cmのレリーズが販売されていますが、ちょっと長すぎるかなという感じです。実際に使ったことがないので、一度、使ってみようと思っていますが...

 数年前にネットオークションで60cmのレリーズ(もちろん中古)をやっと見つけました。今時、ケーブルレリーズを買う人などいないらしく、私以外の入札者はおらず、簡単にゲットできました。
 この60cmというのは私にとって非常にしっくりとくる長さで、大判カメラで撮影するときはこれを使っています。
 しかし、虎の子のような1本なので、壊れたり落してなくしたりしたら大変です。予備でもう2~3本欲しいところですが、以来、ネットオークションでもお目にかかったことがありません。

 1mのレリーズを40cmほどカットして短くしてみようと試みたこともありましたが、ケーブルレリーズというのは分解してまた組み立てができるような構造ではなく、分解=オシャカということがわかり、結局諦めました。分解して、また組立てる方法をご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

 今でも販売されているかどうかわかりませんが、かつて、リモートレリーズというのがありました。これは、レンズなどを掃除するときに使うブロアのようなものの先に細いチューブが取り付けられており、ブロアをギュッと握ると空気の力でレリーズが押し出されるという仕組みでした。
 このチューブを60cmくらいにしてみようかとも思いましたが、それこそブロアがだらしなく垂れ下がってしまい、写欲も薄れてしまいそうなので実現していません。

 改造が無理なら自作できないかとも考えていますが、なかなか良いアイディアが浮かんできません。もしかしたら、ネットオークションや中古カメラ屋さんで遭遇することがあるかもしれないという淡い期待を抱き続ける日が続きそうです。

(2021.2.20)

#撮影小道具 #レリーズ

大判カメラ用の袋型ピントグラスフード

 大判カメラでのピント合わせは、カメラ後部についているピントグラス(フォーカシングスクリーン)で行ないます。この時、ピントグラスを暗くしないと像が見にくいので、多くの場合、冠布(カンプ)を頭からすっぽりとかぶり、周囲からの光を遮断して行ないます。光を通さないように2枚の布を張り合わせた大き目な風呂敷のようなもので、単純がゆえに自由度が高くて便利ではありますが、特に夏場は暑くて大変です。
 カメラにもちょっとしたフードがついていますが、小さいので遮光効果は十分とは言えず、特に順光での撮影時には後方からもろに光が入り込んできますので、ほとんど役に立ちません。

 そこで、ピントグラス全体を覆うことのできる袋型のフードを作ってみました。

袋型ピントグラスフード(リンホフマスターテヒニカに取付け)

 光を通さない黒い布(今回はナップサックに使われるようなナイロン素材を使用)を、カメラがちょうど入るくらいの筒状(直径28cmくらい)にします。一方の端はゴムひもが通るように加工し、ここにゴムひもを通して少し絞っておきます。これをぎゅっと広げて、カメラに被せることになります。

袋型フード(カメラ取付側)

 もう一方の端は、55mm径のレンズ用の金属製フード(長さが20mmほど)を用意し、この外周に巻き付けます。こうすると全体がボールのような袋状になります。

袋型フードのルーペ取付け側(レンズフード使用)

 次に、このレンズフードにはめ込むルーペを作ります。私は55mm径のNo.3クローズアップレンズを使用しましたが、No.5とかを使えばルーペの倍率を高くすることができます。そして、クローズアップレンズの前側にステップアップリングをはめ込みます(私は55-67のステップアップリングを使用しました)。
 これを先ほどのレンズフードにはめ込めばルーペになるのですが、このままだと若干緩くてするっと抜けてしまいます。そのため、クローズアップレンズの外周にパーマセルテープを巻き、ちょうど入るくらいの太さにします。

フードにはめるルーペ(クローズアップレンズ+ステップアップリング)

 こうしてできたフードはこんな感じになります。

袋型フード

 これを大判カメラに取付ければ、ピントグラスに当たる光をほぼ遮断することができます。
 ルーペ(クローズアップレンズ)を外した状態だとピントグラス全体を見ることができるので構図の確認がし易く、また、ルーペをはめるとピントの確認がし易くなります。

 ただし、正確なピント合わせはこのフードを外して、倍率の高いルーペで行なう必要があると思います。

 なお、今回作成した袋型フードの長さは約20cmですが、私の場合、若干老眼が来ているために、これ以上短くするとぼやけてしまいます。ですので、このフードの長さは目の状態に合わせて、いちばん使い易い長さにするのが良いと思います。

 実際に使用した感想ですが、遮光に関しては合格点だと思います。冠布を使っても下側からの光が入りやすいのですが、このフードは全方位遮光してくれます。それと、広角レンズや超広角レンズを使った撮影の際、ピントグラス周辺ではとても像が見にくいのですが、この袋状フードだと斜めからピントグラスを覗き込むことができるので、像が見やすくなります。また、非常に軽いですし、折りたためば小さくなるので持ち運びにも便利です。
 一方、正確なピント合わせはこのフードを外して行なわなければなりません。その点、冠布は構図確認から正確なピント合わせまですべてこれをかぶった状態で出来ますので、やはり冠布に勝るものはないといったところでしょう。

 しかし、撮影状況によっては冠布を使っても漏れてくる光で像が見にくく、それが結構なストレスになったりもしますので、それを回避してくれるという点ではこのフードを使う価値があるように思います。着けたり外したりが面倒かも知れませんが、あると便利かもしれません。

 余談ですが、冠布は片面が黒、もう片面が赤とか銀色をしています。銀色の理由は日差しを反射して少しでも暑さを防ぐためらしいですが、赤い理由は、森の中でクマなどと間違えられて猟銃で撃たれないようにということのようです。私が使っている冠布は片面が銀色のタイプですが、銃で撃たれるのは怖いので赤いタイプに変えようかなと思ってます。

(2021.1.2)

#撮影小道具 #フレーミング #フード

エプソン EPSON GT-X970 フラットベッドスキャナ

 もっぱらフィルムでの撮影をしている私にとって、スキャナはなくてはならない存在です。現像からあがってきたフィルムをパソコンに取りむためには、スキャナを使わざるを得ません。

GT-X970

 私が使っているスキャナはEPSON GT-X970というフラットベッド型のスキャナで、もう10年以上使っています。筐体は結構でかいです。フィルム専用のスキャナというわけではありませんが、私はフィルムスキャン以外にはほとんど使ったことがありません。フィルム専用のほうが性能的にも優れているとは思いますが、私が使っているフィルムはブローニーやシートフィルムが主体であるため、それ用のフィルム専用スキャナなどは高額すぎて手が出せません。

EPSON GT-X970

ブローニー用フィルムホルダー

 GT-X970はすでに製造が終了し、現在は後継機のGT-X980になっています。光源がLEDになったりアンチニュートンリングガラスを採用したり、随所でバージョンアップされているようですが、一度にスキャンできるフィルムの枚数が減ってしまっているのが残念な点です。GT-X970はフィルムサイズに応じて専用のフィルムホルダーが用意されており、1回のスキャンで66判で6コマ、67判~69判だと4コマ、4×5だと2コマまで可能です。私は35mmフィルムはあまり使いませんが、35mmのスリーブだと1回で24コマのスキャンができるので、大量に取り込む方にとってはありがたいと思います。

EPSON GT-X970 ブローニーフィルムホルダー

フィルムスキャンを依頼した場合の費用

 撮影したフィルムのすべてをスキャンしてデジタル化しているわけではありません。額装するために大きくプリントするものや、経年劣化させたくないものなどをデジタル化して保存しています。専門の業者さんにお願いした方が機器も技術も格段に優れているのでしょうが、いかんせんコストがかかりすぎます。例えば、富士フィルムが提供しているスキャンサービスだと、ブローニーを1,000万画素でお願いした場合、1コマ550円もかかってしまいます。ブローニー(67判)を1,000万画素ということは1,280dpiほどであり、大伸ばしする際には解像度が低すぎます。
 67判のポジから半切(356mmx432mm)サイズにプリントする場合、印刷時の解像度を600ppiにしようとすると約8,700万画素必要であり、これはフィルムを約4,000dpiでスキャンしなければならないということです。プリントには半分の300ppiでも印刷品質の違いは多分わからないのではないかと思いますが、仮に300ppiで印刷するにしても、約2,000dpiでのスキャンが必要になります。

GT-X970のスキャン時間

 というような事情で、とにかく手間がかかるのですが自分でスキャンしているわけです。保存用には6,400dpiでスキャンし、TIFF形式でファイリングしています。そんな解像度は必要ないと思われるかもしれませんが、いろいろ加工したり、また将来どのような使い方をするかわからないからということと、何といっても6,400dpiでスキャンしたポジは細部に至るまで見事に再現されているということが理由です。
 しかし、67判1コマを6,400dpiでスキャンすると、その画素数は約2億5,000万画素になり、これをTIFF形式にするとファイルサイズは1.4GBを越えてしまいます。3,200dpiと6,400dpiの比較をしてみると以下の通りです。
            <3,200dpi>   <6,400dpi>
  スキャン時間     3分10秒    5分40秒    ※DIGITAL ICE はオフ
  画素数        6,200万    2億4,700万
  ファイルサイズ(TIFF) 350MB     1.48GB

 他のフラットベッド型スキャナでフィルムスキャンを行なったことがないので比較して論ずることはできませんが、私ような使い方をしている限りにおいて、このGT-X970は十分な性能があると思います。ただし、スキャンの解像度を上げた場合、ピントのズレが目立ってきます。これに関してはたくさんの方が投稿されております。機器により個体差があるようですが、スキャナのガラス面からフィルム面までの距離によってピントの合い方が異なるということは共通しているようです。

フィルムホルダーの嵩上げで画像がシャープに

 私も自分のスキャナで試してみましたが、ブローニー用のフィルムホルダーの場合、1.2mm嵩上げした時に最もシャープな画像が得られました。一方、4×5用のフィルムホルダーの場合は全く嵩上げしない状態で最もシャープになりました。3mmくらい嵩上げした時が最もシャープになるというような記事もありますので、かなり個体差があるのかもしれません。
 ちなみに、フィルムホルダーのスペーサーの向きを変えることで若干の嵩上げはできるのですが、スペーサーだけで1.2mmは上げられないため、私は1.2mmの板を張り付けて嵩上げしています。

EPSON GT-X970 ブローニーフィルムホルダー 1.2mm 嵩上げ

 このスキャナはお手軽にスキャンができる全自動モードやホームモードと、細かな設定ができるプロフェッショナルモードがありますが、フィルムのスキャンにはプロフェッショナルモードを使います。カラーバランスやカラーパレット、ヒストグラムの調整などができます。標準の設定から大きく変更することはあまりありませんが、フィルムをスキャンする時点では可能な限り、ポジ原版に忠実な状態にしたいと思っていますので、若干の調整を行なうことはあります。私のスキャナはマゼンタ系が強くでる傾向がありますので、カラーバランスを調整することが比較的多いです。できるだけポジをライトボックスで見たときに近い状態でスキャンしたいという理由です。

フィルムスキャナの将来は?

 フィルムスキャンに限らず、今の時代、スキャナの需要はかなり低いと思われます。私のようなフィルムに拘っている輩からすると、フィルムスキャナがなくなってしまうと、モノクロは自分でプリントできますが、ポジのプリントやデジタル化はお店にもっていかざるを得なくなります。ポジやネガをデジカメでデュープする方法もありますが、やはり画質が落ちてしまいますし、スキャナ並みの画質を得ようとするとかなりの手間がかかってしまうので積極的になれません。
 そんなマイノリティーにとって、今でもフィルムスキャナが製造販売されているということは言葉では言い表せないくらいありがたいことです。メーカーさんにとって、マイノリティーのためにスキャナを製造販売したところで、採算は取れていないのではないかと思いますが、継続していただけることを願うばかりです。

(2020.8.7)

#スキャナ #エプソン #EPSON

ホースマン Horseman パノラマフィルムホルダー

 ときどき、無性にパノラマ写真を撮りたくなることがあります。今はスマホやデジカメで複数枚の写真を合成して簡単にパノラマ写真を作ることができますが、私の場合、フィルム上にパノラマ写真を残したいという欲望です。世の中には昔からいろいろなパノラマカメラが存在していますが、それらはどれも高価で簡単に手を出せるものではありません。

パノラマ写真の火付け役

 1990年代、コンパクトカメラに「パノラマモード」なるものが装備され、パノラマ写真がブームになったことがありました。最初にどのメーカーが始めたのかはわかりませんが、35mmフィルムの上下をそれぞれ5mmほどマスクすることで、14mm×36mmほどのパノラマ写真(アスペクト比は1:2.5)にするというものでした。しかし、もともと決して大きくはない35mmフィルム1コマの約4割を使わないわけですから、プリントすると画像の粗さが目立ってしまいます。ですが当時としては横長の写真が目新しく感じたせいか、各メーカーからがパノラマ用の額縁やアルバムがたくさん発売されていました。
 残念ながら私は実際に使ったことがないので、ネガや写真がありません。

フルパノラマカメラ 富士フイルム TX-1

 1998年に富士フィルムから「TX-1」というカメラが発売されました。35mmフィルム用のレンジファインダーカメラですが、通常の写真のほかにフルパノラマの写真が撮れる、しかも1コマごとにノーマルとフルパノラマを自由に切り替えられるという画期的なカメラでした。私はこのカメラがどうしても欲しくなり、2000年だったと思いますが欲望に抗いきれずに買ってしまいました。レンズは30mm、45mm、90mmの3本がラインナップされていましたが、45mmと90mmのレンズも一緒に購入しました。
 下の写真は実際にTX-1の45mmレンズで撮ったポジです。1コマの大きさは24mm×65mmで、アスペクト比は1:2.7です。

「富士見高原 花の里」 Fujifilm TX-1 45mm 1:4

 35mmフィルムとはいえ、通常の1コマの2倍近くの面積があるので見応えもありますし、解像度やコントラストもさすがFujinonという感じです。しかしながら、1コマの対角が70mm近くもあるので、レンズは中判をカバーするほどのイメージサークルを持っているとはいえ、やはり周辺光量の落ち込みが目立ちます。

 1年、2年とTX-1を使っているうちに、レンズのバリエーションに不足を感じるようになりました。かといって30mmレンズは高額すぎて手が出せません。ある日、PENTAX67に35mmフィルムを入れればフルパノラマ写真が撮れるではないかと思い、手元にあったPENTAX67を少しいじってみました(PENTAX67のパノラマ改造については、別途ご紹介したいと思います)。

PENTAX67をパノラマ仕様に改造

 下の写真がPENTAX67改で撮ったフルパノラマのポジです。1コマのサイズが24mm×70mmで、アスペクト比は1:2.9、TX-1よりも5mmほど横長です。そして何よりも手元にある35mmフィッシュアイから500mm望遠まで10本のレンズが使えることと、周辺光量の落ち込みが全くないので、不満は一気に解消しました。

「石舟橋」 PENTAX67 smcPENTAX 55mm 1:4

ホースマン ロールフィルムホルダー

 しかし欲望とは限りがないもので、35mmフィルムでのパノラマでは飽き足らなくなり、中判フィルムでのパノラマ写真が撮りたくなってきました。前にも書いたように市販されているカメラはとても高価で買えないので、大判カメラ用のロールフィルムホルダーを手に入れることにしました。連日オークションサイトで探し、程度が良くて価格も手頃なホースマン製の6×12ロールフィルムホルダーをやっとゲットすることができました。
 このフィルムホルダーはブローニーフィルム(120)1本で6枚の撮影ができます。220フィルム用があるとうれしいので調べてみましたが、そもそも生産されていないようです。
 構図を決め、ピントを合わせた後、大判カメラのバック部(フォーカシングスクリーン)を外し、このフィルムホルダーを装着しなければならないので結構手間です。

Horseman 612 Film Holder
Linhof MasterTechnika45 + Horseman Film Holder

ブローニーフィルムでパノラマ撮影

 下の写真が6×12ホルダーで撮ったパノラマのポジです。1コマのサイズは56mm×118mmです。アスペクト比は1:2.1で、TX-1やPENTAX67改に比べると縦横比は控えめですが、十分見ごたえがあります。

「津軽海峡」 Linhof MasterTechnika45 Fujinon W150mm 1:5.6 Horseman 612 Holder

 世の中には6×17というパノラマ専用のカメラもあります。いつかは6×17に挑戦したいと考えていますが、いつになることやら...

 ところで、パノラマ写真は圧倒的に横位置での撮影が多いのですが、個人的には縦位置のパノラマ写真が好きです(縦長をパノラマというのが適切かどうかわかりませんが)。もちろん横長の画も迫力ありますが、縦長の掛け軸のような画は格別のものがあると感じています。
 下の写真は6×12の縦位置での写真です。横位置のパノラマは比較的絵にしやすいのですが、縦位置のパノラマは結構難しいです。はたして、この風景を超縦長の6×17で撮ることができるだろうかと思います。

「安久津八幡神社」 Linhof MasterTechnika
            Fujinon W125mm 1:5.6
            Horseman 612 Holder

(2020.7.11)

#パノラマ写真 #ホースマン #Horseman #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika