わかるようでわからない、写真の「空気感」について思うこと

 どの業界にも、そこに携わる人以外にはなかなか理解しがたい「業界用語」なるものがあります。中にはすっかり市民権を得てしまった業界用語などもありますが、多くは一般の人が使うことは稀です。業界用語はその道の専門家が使ってこそ効果的であり、一般人が使っても浮いた感じに聞こえてしまいます。

 写真の世界にも業界用語なるものがあり、写真やカメラを職業にしている方々は日常的に使っていると思います。しかし、職業にしていなくても写真やカメラを趣味としている人は非常にたくさんいるわけで、こういった人たちの間にも業界用語、というよりも写真用語と言った方が適切かもしれませんが、それが良く使われています。この辺りが、他の業界用語とはちょっと違っているところではないかと思います。

 もちろん、写真業界の用語と言っても非常に多岐に渡っているわけですが、中でもわかりにくいのが写真そのものを表現する用語です。
 写真を見て、「抜けがいい」とか「甘い」とか、「透明感がある」、「シズル感に満ちている」などと表現する人は多いと思います。写真をやらない人からすると何言ってるのかほとんどわからないと思いますが、写真をかじったことのある人であればほぼ通じますし、わかりにくい中でも比較的わかり易い言葉だと思います。

 例えば、「抜けが良い」というのは「クリアですっきりとした描写の写真」という認識の人が多いでしょうし、「甘い」といえば「ピントが合っていない、なんとなくボケている」といった理解だろうと思います。
 これらはある程度、物理的に説明ができる(例えば、低周波のコントラストが高くなると抜けが良く感じるなど)ので、人によって認識が大きく異なるということがないと思われます。平たく言えば、説明がし易い、ゆえに理解し易いということでしょう。

 これに対して、非常にわかりにくいのが「空気感」という言葉です。
 この言葉の意味を調べてみると、圧倒的に多いのが「その場にいるような感じ」とか、「その場の雰囲気」という説明です。これらの説明からすると、「臨場感」のようなものを指しているように思ったりもします。

 しかし、私は常々、これらの説明には100%うなずけないものを感じています。

 同じく「空気」という単語が使われている言葉に、「空気までも写し取るような」という表現があります。カール・ツァイスのレンズを評価するときによく使われている印象があるのですが、これは「空気感」とは全く違うと思っています。「空気までも写し取る」とは、人間の目では見えないものまでも写すほどのレンズ、ということの例えであり、そのレンズの性能のすばらしさを表現しているのだと思います。

 しかし、「空気感」はレンズの性能を表現しているのとは少し違います。

 多くの説明にあるような「その場にいるような感じ」ということであるとすると、例えば、気持ちよく晴れ渡った広大な風景写真を見ると、爽やかな風や暖かな日差しを感じるとか、逆に、雨に煙る薄暗い森の中の写真を見ると、しっとりと湿った空気を感じるなど、写真を見ることで過去に似たような環境にいたことのある経験が思い起こされ、そういったことが感じられるということではないかと思います。

 一方、「その場の雰囲気」ということであるとすると、気温とか湿度とかではなく、結婚式やお祭りでたくさんの人の笑顔が写っている写真を見て、その場が非常に楽しそうであると感じるとか、逆に、夕暮れの街角にたたずむ人を写した写真を見て、寂しさのようなものを感じるということでしょう。「空気を読む」という表現がありますが、その「空気」の意味と似通っているかもしれません。

 前者は、物理的に感じ取れるもの(暖かいとか湿度が高いとか)であり、後者は心が感じるもの(楽しそうとか寂しそうとか)です。
 どちらも「感じる」という意味では共通しており、これらをいずれも「空気感」であるとするならば、次のようなシチュエーションの写真があったとしたら、その「空気感」というのは何と言ったらよいのでしょう?
  ・良く晴れた日に、
  ・どこまでも広がる草原で、
  ・鼠色のスーツを着たオジサンたちが、
  ・憂鬱な顔を突き合わせ、
  ・ぐったりした感じで、
  ・ミーティングをしている。

 このような例えは詭弁かも知れませんが、私が「空気感」に対する多くの説明に違和感を覚えるのはこのようなことが理由です。

 では、私にとっての「空気感」とは何かを説明してみろと言われてもうまく表現できず困ってしまうのですが、正直なところ、そもそも私自身が「空気感」という感覚なるものを明確に持っているかどうかも怪しいといったところです。

 「空気感」という表現をいつ、誰が用いたのかは知りませんし、当初、この言葉がどういうものを指して使われたのか、いろいろ調べてみましたが不明です。
 私自身、「空気感」というものが良くわかっていないので普段使うことはほとんどないのですが、かといって全く「空気感」の存在を否定しているわけではありません。だれが作った言葉かわかりませんが、「空気感」なるものがまったく荒唐無稽なものではなく、写真の中に何となく存在していると感じているのも事実です。

 うまく説明できないのですが、良くわからないながらも私が思う「空気感」というのは、その場の雰囲気とかではなく、「物理的に立体感のある空間が存在していることが感じられる」ということではないかと思っています。

 私が撮る写真のほとんどはフィルム写真ですが、私がフィルムに拘っている理由の一つはデジタル写真にはない奥行き感とか立体感があるからです。写真は所詮、二次元の世界ですが、同じ二次元でも奥行きを感じる画像と感じない画像があります。個人的には「空気感」というのはこの奥行き感や立体感と密接に関わっているのではないかと思います。

 しかし、奥行き感や立体感があれば空気感が感じられるかというとそうではなく、似ていながらもこれらはまったく別物だと思っています。
 例えば、テーブルの上に置いたさいころだけを撮っても立体感は感じるかもしれませんが、空気感を感じるようには思えません。

 すなわち、お互いに距離が離れているものの間には当然のことながら「空間」が存在するわけですが、写真の中にこの「空間」を感じられるかどうかということではないかというのが私の「空気感」に関する勝手な持論です。
 空間を感じさせる要素というのは一つではなく、色とかボケとか解像度、あるいは位置関係など、いろいろあると思うのですが、そういう要素が組み合わさって二次元映像の中に空間が生み出されたように感ずるということではないかと思うのです。
 近景の色ははっきりとしているが遠景は全体的に淡い色合いをしているとか、近くの被写体はバリバリに写っているが、遠くはボヤっとしてるとか、そういうことが複数積み重なることで空気感なるものが生まれるのではないかと思っています。
 最初に「空気感」という表現をした方がどのような意図をもっておられたかは存じ上げませんが、私がその言葉から感じ、自分なりに理解するのは以上のようなことです。

 「空気感」に対する私の見解が正しいとも思っていませんし、人によって様々な意見やとらえ方があるだろうということも十分に認識していますので、あくまでも私の個人的、かつ、何の裏付けもない勝手な意見ということで軽く流してください。まったくもって自分自身の感覚的な話しであります。

 とは言いながら、常に頭のどこかで「空気感」に対するモヤモヤした感覚が存在していることも事実です。いろいろと情報を集め、感覚的ではなく科学的に説明ができるようであれば、あらためて投稿してみたいと思っています。

(2021年6月8日)

#写真観 #空気感

今度は「日本カメラ」が休刊!!

 先日、またもや衝撃的なニュースが流れました。月刊誌である「日本カメラ」が休刊するとのことです。昨年のアサヒカメラの休刊から一年を待たずしての日本カメラの休刊です。私はアサヒカメラよりも日本カメラを好んで購入していたので、このニュースには衝撃を受けました。

 これで、月刊のカメラ雑誌の御三家と言われた、カメラ毎日、アサヒカメラ、日本カメラのすべてがなくなってしまいました。月刊のカメラ雑誌は他にも刊行されていますが、やはり御三家と言われるだけあって他の雑誌とは一線を画しているという感じでした。

 雑誌は広告収入が重要だと言われていますが、いつごろからでしょうか、日本カメラに掲載される広告の数が徐々に減り始めました。
 全盛期の頃の日本カメラは紙質も良く、400ページ近くあったように記憶しており、かなり厚い雑誌でした。グラビアや記事の合間にメーカーの広告がカラーで掲載され、巻末の方には中古カメラ店などの広告がかなりのページを占めていました。全ページの3割くらいは広告ページではなかったかと思います。個人的には中古カメラ店の広告を見ている時間がいちばん長かったように思います。

 最近の日本カメラは紙質も薄くなり、広告も激減してしまい、経営的に大変なんだろうということは雑誌を見ていても想像がつきました。昨年のアサヒカメラの休刊の際にも、もしかしたらいずれ日本カメラも...ということが脳裏をかすめましたが、まさかこんなに早くにその日が来るとは思っていませんでした。

 前身となる「アマチュア写真叢書」が隔週刊の雑誌として創刊されたのが昭和23年とのことですので、実に足掛け73年にわたって続いてきたわけです。子供の頃、日本カメラという雑誌は特別な存在のように感じており、いつかは自分で購入し、読者になるということに憧れていたことを思い出します。

 また、同社からは日本カメラだけでなく、撮影のテクニックをまとめたシリーズや撮影機器、撮影地のガイドブックであったり、エッセイ集、写真集などなど、本当に多岐にわたる書籍が刊行されていて、私もずいぶんとお世話になったものです。いずれも「日本カメラ社」という名に恥じることのない、責任を持った書籍であったと思います。 

 書棚に2014年発行の日本カメラが残っていたのであらためて見てみましたが、この頃にはすでに広告の量がかなり減っているという感じです。しかし、記事は非常に多岐に渡っており、毎月、これだけの記事を書くのは大変なご苦労があっただろうということは想像に難くないと思います。掲載されている広告を見ると、ニコンからはDfが、ペンタックスからはK-3が発売された時期で、デジタルカメラにも勢いがあったという感じがします。


 アサヒカメラと違って日本カメラの場合は会社自体が解散してしまうようなので、再開の可能性に期待することは望めないかもしれませんが、このような格のある雑誌がまた一つ、なくなってしまうことは残念でなりません。

(2021年4月19日)

#カメラ業界 #日本カメラ

レンズやカメラの保管方法 防湿庫保管は完璧か?

 レンズやカメラの保管に気を遣う方は多いと思います。特に日本のように湿気の多い国では、レンズにカビが生えてしまうのではないかと心配になります。防湿庫を購入して、そこに大切な機材を保管している方もいらっしゃるでしょうし、もう少しお手軽に、ドライボックスの中にシリカゲルなどの乾燥剤を入れて保管している方もいらっしゃるでしょう。

 私も中型の防湿庫を1台持っていますが、すべての機材がその中に納まりきるわけではありません。むしろ、入りきらない機材の方がはるかにたくさんあります。それでも、数年前に35mm判のカメラとレンズのほとんどを処分してしまったので、機材の量は半分以下になりましたが、まだその辺りにゴロゴロしています。
 防湿庫で保管する機材とそうでない機材を区別してるかというと、実は特にそういうことをしているわけではありません。正直なところ、防湿庫に入れたり出したりするのが面倒くさいので、すべて手の届くあたりに転がしておきたいというのが本音です。

 もちろん、レンズにとってカビは大敵なので、湿気の少ないところで保管するに越したことはありません。防湿庫には湿度計がついており、大体、30~40%に保たれています。湿気を取りながらも乾燥しすぎない、適度な状態にしてくれています。

防湿庫内を湿度30~40%に保ってくれる

 しかし、どんなに快適な温度や湿度であっても、レンズをカビから完全に守ることはできないと思っています。そもそも、空気中には常にカビが浮遊しており、それがレンズ内に入り込んで腰を落ち着けてしまうのが問題なわけです。ですから、レンズ内に空気の流れをつくり、入り込んだカビが腰を落ち着けないようにすることが最も効果的だと思っています。

 そういう視点で考えると、防湿庫の中は空気の流れが皆無に等しいので、長期間そのままにしておくとレンズ内に入り込んだカビが増殖し、固着してしまう可能性が高いのではないかと想像するわけであります。もちろん、防湿庫内はカビが繁殖しにくい環境なので、すぐにカビが生えるわけではなく、長期間にわたって触らないのであれば、その辺りに転がしておくよりも防湿庫に入れておいた方が望ましいのは言うまでもありません。しかし、防湿庫に入れてさえおけば絶対に安心というわけではないということです。

 あらためて自分の持っている機材を見てみると、非常に出番の少ないレンズというのがあります。例えば、PENTAX67用のフィッシュアイ 35mmレンズなどは、実際に持ち出すのは1年に数回程度です。こういうレンズがいちばんカビに襲われやすいのだと思います。

 前置きが長くなりましたが、私は毎日のようにカメラやレンズを手に取っており、どのカメラやレンズでも最低、4~5日に1回は可動部分を動かすようにしています(カメラは空シャッターを切ったり、レンズはヘリコイドや絞りを動かしたり)。毎日、すべての機材を構ってはいられないので、4~5日ですべての機材が一回りするという感じです。
 こうすることでレンズ内に空気の流れをつくり、カビが付着するのを防いでいます。なので、防湿庫に入れておくよりも、手の届くところに置いてあった方が出し入れの手間が省け、実は都合が良いのです。

 また、大判レンズにはシャッターが組み込まれていますが、ここに使われているスローガバナーという部品(低速シャッターを司る重要なパーツです)は、長期間動かさないでおくと動きが鈍くなってしまうことがあります。そうなると、分解して清掃・修理をしなくてはならなくなります。カビだけでなく、可動部分の故障対策という意味でも、ときどき動かすことがカメラやレンズのためには好ましいということです。
 もちろん、そのうえで防湿庫等で保管すれば最高であることは言うまでもありません。

 ちょっと自慢げに聞こえたら申し訳ないのですが、私はレンズに目視で確認できるようなカビを生やしたことはありません。特別なことをしなくても、週に1~2回、可動部を動かすことでカビの発生はかなり防げると思っています。わかり易く言うと、カメラやレンズはいつもかまってあげることが大切ではないかということです。頻繁に使うレンズにカビが生えたという話しはあまり聞いたことがありません。

カメラやレンズは時々かまってやることが大切

 一方、空気の流れをつくると、小さなホコリもレンズ内に舞い込んでしまいます。しかし、微細なホコリも定期的に空気の流れをつくることで出たり入ったりするので、長期的に見ればホコリも増えるでしょうが、いきなりレンズ内にどんどん蓄積されてしまうというわけではありません。微細なホコリは着地するのにかなりの時間がかかるらしいので、やはり空気の流れをつくることは効果があると思います。

 誤解のないように付け加えますが、決して防湿庫を否定しているわけではありませんし、効果がないと言っているわけでもありません。防湿庫の効果は十分認めておりますが、防湿庫に入れてさえおけば安心ということではなく、防湿庫を使ったうえで、ときどき機材を動かしてあげることで防カビ効果は倍増するであろうし、何よりも、機材を健全な状態で長く使うことができるであろうということです。

 カビも小さなうちであれば割と簡単に落とすことができますが、レンズに深く入り込んでしまったカビは拭いた程度では取れません。カビの発生を完璧に防ぐことができないのであれば、カビを早期に発見することがやはり重要になります。

 夜な夜な愛しいレンズを手に取り、酒でも飲みながら、このレンズでこんなものを撮影したいとか想像するのも楽しいものです。すべてを吸い込んでしまうのではないかと思われるような美しいレンズを眺めながら、撮影のイメージングとレンズのカビ防止とカビの早期発見が同時にできるのであれば、これを一石二鳥と言わずに何というのでしょう?
 くれぐれも、レンズに酒をこぼさないように注意は必要ですが。

(2021.3.15)

#保管

ケーブルレリーズの長さが中途半端

 最近の一眼レフカメラは電子レリーズ(リモートコントローラ)が標準対応ですが、私が使っている中判カメラや大判カメラは電子レリーズが使えないので、昔ながらのケーブルレリーズを使っています。簡単に壊れるものではありませんが、長年使っていると動きが渋くなってきたりしますし、撮影に行った際にどこかに落としてきてしまったなんてこともあるので、カメラバッグの中には常に3本くらいが入っています。

 このケーブルレリーズ、なかなかしっくりくる長さのものがなく、私にとって結構なストレスになっています。というのも、シャッターのところにレリーズの先端をねじ込み、手元まで持ってきたときに、押し込むノブが雲台の下あたりにくるのが最も使い易いのですが、これが短すぎたり長すぎたりすると、レリーズの位置を目で確認しなければならないからです。
 昔は種類も豊富で、いろいろな長さのものがあったのですが、いま市販されている製品のほとんどは30cm、50cm、1mの3種類くらいではないでしょうか?

ケーブルレリーズ

 私は主に中判カメラや大判カメラを使っているので、35mm判カメラで使うよりも長めのレリーズが必要になります。手元にあるレリーズは全部で9本ありますが、そのうち50cmが6本、1mが2本、そして60cmが1本です。
 50cmがいちばん多いのですが、これは購入の選択肢がないから仕方なく使っているというのが正直なところです。私にとって50cmのレリーズでは短すぎて、特に大判カメラで長い玉を使うときはレンズが前に繰り出されるので、その不便さを一層感じてしまいます。
 かといって、1mのレリーズは長すぎて、だらしなく垂れ下がってしまい、これまた不便なのです。
 私にとって最適な長さは60cm前後なのですが、今はこの長さのものが手に入りません。私の知る限り、70cmのレリーズが販売されていますが、ちょっと長すぎるかなという感じです。実際に使ったことがないので、一度、使ってみようと思っていますが...

 数年前にネットオークションで60cmのレリーズ(もちろん中古)をやっと見つけました。今時、ケーブルレリーズを買う人などいないらしく、私以外の入札者はおらず、簡単にゲットできました。
 この60cmというのは私にとって非常にしっくりとくる長さで、大判カメラで撮影するときはこれを使っています。
 しかし、虎の子のような1本なので、壊れたり落してなくしたりしたら大変です。予備でもう2~3本欲しいところですが、以来、ネットオークションでもお目にかかったことがありません。

 1mのレリーズを40cmほどカットして短くしてみようと試みたこともありましたが、ケーブルレリーズというのは分解してまた組み立てができるような構造ではなく、分解=オシャカということがわかり、結局諦めました。分解して、また組立てる方法をご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

 今でも販売されているかどうかわかりませんが、かつて、リモートレリーズというのがありました。これは、レンズなどを掃除するときに使うブロアのようなものの先に細いチューブが取り付けられており、ブロアをギュッと握ると空気の力でレリーズが押し出されるという仕組みでした。
 このチューブを60cmくらいにしてみようかとも思いましたが、それこそブロアがだらしなく垂れ下がってしまい、写欲も薄れてしまいそうなので実現していません。

 改造が無理なら自作できないかとも考えていますが、なかなか良いアイディアが浮かんできません。もしかしたら、ネットオークションや中古カメラ屋さんで遭遇することがあるかもしれないという淡い期待を抱き続ける日が続きそうです。

(2021.2.20)

#撮影小道具 #レリーズ

富士フィルム カラーネガ「PRO400H」販売終了

 2021年1月15日付で富士フィルムから、カラーネガフィルム「PRO400H」の販売終了の発表がありました。いつかは来るだろうとは思っていましたが、正直、「またか!」と思いました。私はカラーネガを使うことは少ないのですが、それでも数少ないフィルムのラインナップからまた一つ、姿を消してしまうということはとても寂しいことです(135は2021年3月、120は2022年3月で終了予定とのこと)。
 同社のカラーネガフィルムが完全になくなってしまうわけではありませんが、フィルムの将来はどうなってしまうのだろうと思わずにいられません。

富士フィルム PRO400H  (富士フィルム株式会社 公式HPより引用)

 最近はフィルム回帰する人が増えているとか、若い人でもフィルムカメラに興味を持つ人が増えているとかいうことを良く耳にします。確かに増えていることは事実なのかもしれませんが、実際のところどれくらい増えているのか、定量的なことは全くわかりませんし、富士フィルムという大企業のフィルム事業を支えられるほど増えているとは到底思えません。
 フィルム事業もビジネスである以上、採算が見込めなければ事業縮小や撤退というのは致し方のないことです。フィルム小売価格の値上げや現像料金の値上げなどをおこなっても製造販売終了の製品が出るということは、多少のユーザーが増えても焼け石に水といった状況なのでしょう。

 フィルム写真全盛期の頃は、カラーネガの現像&同時プリントが60分とか45分とかいう看板があちこちで見られました。撮影済みのフィルムを写真屋さんにもっていけば、1時間後にはプリントが仕上がっているというサービスで、しかもおまけにフィルムがついてくるなんていう状況もありました。最初に1本のフィルムを買えば、あとは一生買わなくても写真が撮り続けられるという、いまから思えば夢のような時代でした。

 すこし調べてみたところ、2000年をピークに写真フィルムの生産量は下がり続け、2010年には6割ほどにまで減ってしまったようです。カラーフィルムに限っては10年間で1/10にまで落ち込んだというデータもありました。その後も減り続けていたようですが、2013年以降のデータを見つけることができませんでした。
 写真フィルム全体では2011年、2012年と前年比で20~30%ずつ減少していたようですから、もしこの状態が10年続いたとすると、昨年2020年にはさらに1/10にまで落ち込んだことになり、2000年と比べると1/16になってしまったということになります。ピーク時の6%ほどにまで落ち込んでしまったところに多少ユーザーが増えたところで、誤差の範囲といったところでしょう。
 また、フィルム代も現像料金も高いので、やたらに撮ることができないという声も良くききます。もっとたくさんフィルムで撮りたいけどコストがかかりすぎて...というのが本音かもしれません。

 PRO 400Hの製造販売終了で、富士フィルムのプロ用と言われるネガフィルムはPRO160NSだけになってしまいます。複数の製品を供給し続けるにはコストがかかりますから、企業としては製品を一本化していこうという方針なのかもしれませんが、それでもフィルムを作り続けてもらえることに感謝です。
 
 とはいえ、2018年に製造販売を終了したモノクロフィルムのACROSも、およそ一年後にACROSⅡとして復活した事例もあります。海外に製造委託をしているとはいえ、富士フィルムのブランドを冠しているわけですから、ACROS復活といっても間違いではないと思います。
 コダックのリバーサルフィルムE100も最初は135だけでしたが、その後、ブローニー(120)、シートフィルム(4×5)が発売されました。
 同じようにPRO400Hも、OEMでもODMでも構いませんので、いつの日か復活してくれることを願ってます。

(2021.1.19)

#カラーネガフィルム #富士フイルム

オリジナルカレンダーを作る

 毎年この時期になると、年賀状とともに来年のカレンダーのことが気になり始めます。というのも、20年ほど前からオリジナルカレンダーを毎年作っており、仕事関係の方や個人的なお付き合いの方にお渡ししているからです。来年のテーマは何にしようかと一年も前から気にはなっているのですが、具体的に行動に出るのはいつもこの時期になってしまいます。たぶん、こういう性分は一生治らないと思います。
 来年こそはカレンダーのテーマを事前に決めて、一年かけて季節ごとの撮影をしようと思うのですが、表紙用の写真も含めて13枚を撮るというのは困難を極め、結局、何枚かはこれまでに撮りためた写真の中から選ぶということになってしまいます。

 そんな状況は今年も相変わらずですが、何とか出来上がりました。今回は滝のシリーズです。

2021年カレンダー

 滝には不思議な魅力があります。水が落ちることでつくられる美しい景観に惹かれるのももちろんですが、同じ水であっても単なる川の流れとは全く別物として感じられます。古来から日本人は滝に神が宿るとして、滝をご神体として崇めているところもたくさんありますが、そういったことも滝に引き付けられる理由かもしれません。

 滝に限らず、撮影に行くのは関東、中部、東北が圧倒的に多く、今回の滝の写真も長野県、群馬県、栃木県、山形県に偏っています。
 カレンダーなので出来るだけその季節に合った写真にしたいのと、似たような雰囲気の写真ばかりにならないようにしたいのとで、写真選びは結構苦労します。どんなに美しい写真であっても、1月とか2月に燃えるような紅葉と滝の写真をもってくると、やはり違和感があります。

 昔はオリジナルカレンダーを作ろうとすると、専門の業者さんにお願いしてオフセット印刷で作ってもらうしかなく、手間も時間もかかり、かつ、少ない部数では極めて割高になってしまいましたが、いまはデジタル印刷が進化したおかげで部数の自由度も高く、しかも短期間で作ってもらえるようになりました。もちろん、品質はオフセット印刷にかないませんが、カレンダーは一過性のものなので、デジタル印刷でも十分にきれいで全く支障がないと思います。
 ちなみにフィルムのスキャンは自分で行ないます。

 カレンダーは写真なり絵画なりの部分に重きを置いたものと、写真や絵画は控えめにしてカレンダーとしての機能を追求したものとがあると思っています。前者は装飾的な意味合いが強く、カレンダーの部分は下の方に申し訳程度にあるといった感じです。一方、後者は離れたところからでも見えるように文字が大きかったり、いろいろ書き込めるように日付の周囲に余白があったりと、まさに機能重点主義のカレンダーです。
 これら装飾性と機能性の両方を程よく取り込もうとすると中途半端な感じになってしまうようにも思いますが、いちばんカレンダーらしいカレンダーかも知れません。

 来年のカレンダーが出来上がると、年末の仕事の一つが終わったという感じで、肩の荷が少し軽くなります。
 余談ですが、来年のカレンダーを見ていて、来年は連休が少ないなと感じました。

(2020.12.13)

リバーサルフィルの使用期限

 私はフィルムや現像液などの保管専用に小型の冷蔵庫を使っています。フィルムは適当な量に小分けしてビニール袋に入れ、袋に使用期限を書き込んで保管しており、古いものから使用していくためにときどき冷蔵庫の中のフィルム位置の入れ替えをおこなっています。
 先日、フィルム位置の入れ替えをおこなっていたところ、7年ほど前の日付が書き込まれたフィルムが出てきました。日付の書き間違いかと思って袋を開けて確認しましたが、やはり7年ほど前に使用期限が切れているブローニーのリバーサルフィルムでした。5本入りが4箱(20本)、すでに製造販売が終了して久しいVelbia50の220フィルムでした。何故こんなことが起きてしまったのかわかりませんが、多分、フィルム位置の入れ替えの際に埋もれてしまったのでしょう。まるでセミの幼虫のように7年もの間、暗く冷たいところでひっそりと過ごしていたのかと思うと、なんだかいじらしくなります。もしかして冬虫夏草のようなものが生えていないかと思い確認しましたが大丈夫でした。
 ちなみに、箱には5,480円の値札ラベルが張られたままになっており、いまは220フィルムがなくなってしまったので単純比較はできませんが、現在の120フィルムの5本パックと同じくらいの価格ですから、この7年でフィルムの価格が約2倍になったという感じでしょうか。

Velbia50 220

 フィルムは生ものですので使用期限内に使ってしまうのが望ましいのですが、賞味期限を1~2日過ぎた牛乳を飲んでも何の問題もないのと一緒で、フィルムも保管状況が良ければ使用期限を数か月くらい過ぎたところで大した影響はないと思っています。しかし7年ともなると話しは変わってきます。そんなフィルムを今まで使った経験はありませんし、ネット上には10年、20年と使用期限を過ぎたフィルムを使ってみたというような投稿を見かけることがありますが、やはりあまり古いと色が綺麗に出ないようです。
 7年でどの程度の影響があるのかわかりませんが、現像してみたら駄目でしたということがあると恐ろしいので、きちんとした撮影に使うのはリスクがありすぎます。しかし、20本ものフィルムを捨ててしまうのはもったいないので、1本を使って試し撮りしてみることにしました。

 近所の公園で晴れた日、曇りの日、そして日没間近の夕方と条件を変えて撮影をし、現像に出しました。

 数日後、現像から上がってきたポジを見てびっくり。目視する限り、色に影響が出ているようには見えません。ルーペでも確認しましたが、使用期限内に撮影したポジとの違いはわかりませんでした。Velbia50は超高彩度で鮮やかな色乗りが特徴のフィルムですが、見るからにVelbia50という感じで写っていました。冷蔵庫で保管していたことが良かったのかどうかはわかりませんが、残りの19本のフィルムも多分問題なく使えるものと思われます。この調子だと、10年くらい過ぎても問題なさそうにさえ思えます。
 フィルムが非常にお高い昨今、このような出来事はとてもありがたい(?)ことです。私の脳は自分に都合の良いように考えるらしく、7年前にお金を払って購入したことなどすっかり忘れてしまい、今回の「棚から牡丹餅」のことだけに脳みそが使われているようです。

 私は大量のフィルムを一度に購入してストックして、それを何年も使い続けるということはなく、だいたい1年ほどの間には使い切ってしまいますので、今回のようなことは初めてです。使用期限を7年も過ぎたフィルムでも問題がなさそうというのはあくまでも私の個人的な感覚であって、厳密には乳剤の劣化とかが進んでいるのではないかと思います。また、メーカーが使用期限を設定しているのにはそれなりの理由があるのでしょうから、使用期限内に使ってしまうほうが良いのは当然ですが、それほどシビアな描写を求めるのでなければ、期限切れだからと言って捨ててしまうほどではないと思います。
 今回はリバーサルフィルムでしたので、カラーネガやモノクロフィルムが同じようになるかどうかは不明です。

 ちょっと話がそれますが、フィルムを長期保管する場合は冷凍保存が好ましいといわれています。「長期」というのがどれくらいの期間なのかわかりませんが、私の場合、保存期間は概ね1年程度ですので、冷凍保存は使ったことがありません。フィルムの劣化を防ぐためには冷凍保存のほうが良いのでしょうが、使う際に常温に戻すのに時間がかかってしまうので、お手軽な冷蔵保存にしています。

 7年の眠りから覚めた棚ボタのVelbia50で、2020年の紅葉を撮りに行きたいと思っています。

(2020.10.24)

#富士フイルム #リバーサルフィルム #ベルビア #Velvia

Velbonベルボンの事業譲渡

 8月に日本の代表的な三脚メーカーであるベルボンが、その事業をハクバ写真産業に譲渡するというニュースが流れました。譲渡されても事業はそのまま継承され、Velbonのブランドも残っていくとのことですが、私もベルボン三脚の一ユーザーであるため、ちょっと複雑な思いでこのニュースを読んでいました。

 三脚に限らずカメラ事業はどこも経営状態は決して楽ではないようで、この手のニュースは珍しくはありません。三脚といえば、同じく大手メーカーのスリックも今はケンコートキナーの子会社になっています。事業は継承されるとはいえ、経営者が変われば経営方針も変わる可能性がある一方で、譲受した側はそれまでの事業との相乗効果によってさらに事業が拡大する可能性もあるわけで、今後どうなっていくのか、先のことは全く分かりません。

 上でも書きましたように私はベルボンのユーザーで、現在、同社の三脚を大小合わせて5台持っています(出番が多いのは5台のうちの2台ですが)。用途によって揃えていたらいつの間にか5台になってしまったのですが、ベルボン以外の三脚も含めて、これまでに三脚が壊れたという経験は一度もありません。普通に使っていれば壊れるようなものではないので、これはユーザーからするととてもありがたいことです。しかし、メーカーにとってはリピートの可能性が読めないということがあるのかも知れません。
 例えばパソコンなどは5~6年で買い替えています。壊れてしまうということもありますが、むしろOSを含めたソフトウェアに起因する理由の方が大きいのではないかと思います。一方三脚はというと、現在使っているベルボンの三脚の中で最も古いのは25年くらい前に購入したものです。普通に使っていれば一生もの、というのは決して大げさではないと思います。

 最近のデジタルカメラには手振れ補正機能が備わっており、5段、6段程度の補正は難なくこなしてしまうため、三脚を使う必要性が減ってきているということもあると思いますし、画質の問題は多少あるにしろ、ISO感度を大きくできるのも同じように三脚の必要性を下げているのではないかと思います。
 また、常々感じていたことですが、ベルボンにしてもスリックにしても三脚や一脚のラインナップの多さには驚きです。例えばベルボンのカタログを見ると、三脚の現行機種だけで70種類近く存在しています。一社で70機種ものカメラを出しているメーカーなどありませんから、三脚というのはいかに多様性に応えなければならないものなのかということを考えさせられます。日本国内にカメラ人口がどれくらいいるのかは知りませんが、すべての人が三脚を持っているとは思えませんし、発売しているすべての機種が同じように売れているとも思えません。
 そんな事情を考えると、三脚事業が決して楽ではないだろうということが想像できます。

 私は中判や大判のフィルムカメラをメインで使っていますので三脚は必需品です。スナップなど、中判であれば手持ちで撮影することもありますが、手振れ補正もなければISO感度の変更もできません(フィルムで決まってしまいます)ので、薄暗いところなどでは三脚がなければお手上げです。
 三脚によって写りが変わるわけではないので、どこの三脚でも同じだろうという意見もあろうかと思いますが、私の場合、その使い易さで長年、ベルボンの三脚を使い続けてきました。
 事業譲渡によってVelbonブランドがすぐになくなってしまうことはないと思いますが、決して多くの台数が売れることはないだろうと思われる大型三脚などがラインナップから消えてしまうのではないかという懸念も少しあります。
 幸いにもほとんど壊れることのない三脚ですので、いま使っているものが壊れなければこれといった支障はありませんが、経営者が変わろうともVelbonが日本の三脚のトップブランドであり続けてほしいという思いは変わらずに強くあります。

(2020.9.2)

#ベルボン #Velbon #カメラ業界

ヴィンテージカメラの魅力

 例年になく長い梅雨がやっと明けたと思ったら耐え難いくらいの猛暑が押し寄せ、しかも今年は新型コロナの影響で遠出もままならない状態です。撮影も思うようにできず、悶々とした日を過ごしています。
 そんなわけで、たまには中古カメラ店にでも行ってみようかと思い、新宿と中野にある中古カメラ店を何件かはしごしてきました。

 近年、中古カメラ店に行って感じるのは、若い女性客が多いということです。しかも、デジカメではなくフィルムカメラを探している女性を多く見かけます。聞くともなく、店員さんとの会話が耳に入ってくるのですが、これからフィルムカメラを始めようと思っている女性が多いことに驚きです。
 食べ物にしてもいろいろなお店にしても、若い女性から支持されることが売上の伸びる大きな要因らしいです。フィルムカメラも若い女性に支持されて、市場が大きくなってほしいものです。

 さて、私はカメラのコレクターではありませんので、実際に使いもしないカメラやレンズを買うことはほとんどありません。ですが、中古カメラ店に並んでいる年代物のカメラを見ると、「いいなぁ」「ほしいなぁ」という気持ちが湧いてくるのも事実です。買っても実際に撮影に使うことはほとんどないだろうということがわかっていながらも、欲しいと思うのは何故なんでしょう?月並みな言い方をすると、カメラの持つオーラのようなものに引き付けられるのだということになると思うのですが、本当の心理状態はちょっと違う気もします。

 そんな葛藤をしながら何のことはない、カメラの放つオーラに負けてしまい、買ってしまいました。それが下の写真のドイツ製カメラ、Voigtlander BESSAMATICです。調べたところ、発売は1959年とのことですので60年以上前のカメラですが、傷や汚れは全くと言ってよいほどなく、とてもきれいな状態を保っています。しかも、昔懐かしい茶色の革製のケースまでついています。
 これでお値段9,000円。どこか壊れているんじゃないかと思いましたが、全く問題なく動作している感じです。

Voigtlander BESSAMATIC + COLOR-SKOPAR X 1:2.8/50

 このカメラについてはたくさんの方が記事を書いていらっしゃいますので詳細はそちらをご覧いただくとして、私の心を動かしたのは何といってもそのフォルムです。昔のカメラはどれもそうですが、金属製のボディは重厚感がありますし、デザインも機能美に満ちていると思います。60年を経ても全く古臭さを感じさせません。それどころか、個人的には最近のカメラのデザインよりもはるかにセンスがあると思います。

 しかし、金属製であれば何でも良いというわけではなく、やはりデザインはとても重要な要素です。金属製であっても心動かされないデザインのカメラもあります。もちろん個人の好みですから人それぞれですが、うっとりと眺めていられる美しさを持ったカメラというのは、中古カメラ店の棚の中でも輝いていると感じるのは贔屓目でしょうか?

 職人のこだわりが随所に感じられるこのカメラ、60年前にどういう人が手にして、どういう経路をたどって今、私の手元にあるのか、そんなことを想像させるのもこういったカメラの魅力かもしれません。
 このカメラがヴィンテージカメラに属するのかどうかよくわかりませんが(なにしろ9,000円ですから)、撮影に行く回数が激減している昨今、こんなヴィンテージカメラを探してみるのも悪くないなと思っています。

 このカメラでバシバシ撮影することはないと思われますが、一度は撮影をしてみたいと思います。どんな写りをするのか、楽しみです。

(2020.8.16)

#ベッサマチック #BESSAMATIC #中古カメラ

中古の大判カメラ&レンズの価格

 私が使っているカメラやレンズはすでに生産終了品であるばかりかメーカーサポートも終了しており、壊れた場合は自分で修理するか、手に負えない場合はカメラ修理専門店にお願いすることになります。しかし、修理不可能な場合はもう使うことができなくなってしまいます。そんな最悪の事態にならないよう、修理が難しそうな機材については予備を用意しています(丸ごと使うというよりはパーツをとるため)。当然新品が手に入るわけではないので、中古カメラ店に行ったりネットオークションなどを使ってお目当ての品を探すことになります。

 そんな中で最近気がついたことがあります。それは、中古のフィルムカメラやレンズの価格が高くなっているということです。数年前は程度の良いレンズなどでも市場に出回っている数の多いものは捨て値同然で売られていたものですが、ここ最近は価格が高騰している感じがします。ネットオークションなどでも結構高い値がつけられており、時たま安い値で出品されていても、あっという間に値が吊り上がっていってしまいます。特に大判カメラや大判レンズにその傾向が強いように思います。

 大判カメラや中判カメラを使う人がそんなに多いとは思えないのですが、ここ数年は中判や大判の売れる台数が伸びているという話を中古カメラ店の方から伺ったことがあります。しかし、私もあちこち撮影に出かけますが、中判や大判のカメラで撮影している人に出会うことは一年に一回あるかどうかといった感じで、ほとんど出会うことはありません。いったいどこで何を撮影しているのだろうと不思議にさえ思います。

 そういえば、私は新宿の大手カメラ店でフィルムを購入することが多いのですが、ここ数年、大判フィルムが売り切れという状況に遭遇したことが数回あります。フィルムを使う人が減る一方なので、お店も仕入れる数量を減らしているのだろうと思っていたのですが、どうやらそれだけの理由ではないかもしれません。昔は大判フィルムを購入するのはほとんどがプロでしたが、最近はプロではなくアマチュアの購入が圧倒的に多いという話を聞いたことがあります。

 そんな状況を鑑みると、中古市場でフィルムカメラやレンズの価格が上昇しているのもうなずける気がします。フィルムを使う人がどんどん減り、フィルムの種類も減り、価格がどんどん上がっていく中で、フィルムカメラを使う人が増えているとしたら、それはとても喜ばしいことです。私の愛機でもあるPENTAX67が若いカメラ女子にとても人気があるらしく、あの重いカメラを女性が使っている姿を妙にカッコ良く思えるのは私だけではないと思います。

 私がカメラやレンズを購入するのは予備機やパーツ取りが主な目的だというのは前にも書いた通りですが、価格は安いに越したことはありません。かつて、大判カメラや大判レンズは高価で簡単に購入できるものではありませんでした。中古の価格が上がったとはいえ、新品の価格の何分の一という金額で購入できるので、機材の面で今はとても恵まれているのかもしれません。これでフィルムの価格がもう少し下がってくれれば言うことはないのですが。

(2020.7.24)

#中古カメラ