ずっと欲しかったコンパクトフィルムカメラ コニカ KONICA C35 Flash matic をゲット

 半年ほど前(2023年4月)、「いま、とっても欲しいカメラ ~撮影の頻度が確実に増すと思われるカメラたち~」というタイトルのページを書きましたが、その中の一つ、コニカ KONICA C35 Flash matic というコンパクトフィルムカメラを手に入れました。小さくて、とても愛嬌のあるフォルムが気に入っていて、ずっと以前から欲しい欲しいと思っていたカメラでした。
 今回、フィルム2本(カラーネガとリバーサル各1本)で試し撮りをしてみましたので、その使い勝手とともにご紹介したいと思います。

大手ネットオークションサイトで購入

 このカメラをネットオークションサイトで検索すると、かなりの件数(台数)がヒットします。そのほとんどは5,000円~15,000円くらいの範囲におさまっています。まれに3,000円という安いものや、20,000円を超えるようなお高いものも出品されていますが、やはり安いものはそれなりに理由があるもので、正常に動作するかどうかわからなかったり、かなり傷みがあるものだったりしています。

 1ヶ月ほど前、ビールを飲みながらオークションサイトを物色していた際、このカメラが目に留まり、欲しいという欲望が再び頭を持ち上げてきました。レンズを探す目的でオークションサイトを見ていたのですが、それはどこへやら行ってしまい、ひたすら KONICA C35 を探す羽目に。
 結局、数ある中から私が選んだのは8,000円という値がついていたものです。当然、通常使用による細かな傷などはあるものの、全体的にはかなり綺麗な状態を保っている感じで、一通りの動作もすると書かれていました。掲載された写真だけではわからないこともたくさんありますが、ある程度の割り切りも必要と思い、アルコールが入っていた勢いもあり、ぽちっとしてしまいました。
 他に入札する人もいなかったようで、2時間ほど後に「落札」のメールが届きました。

 その翌々日、早くも宅配便で KONICA C35 が届きました。
 掲載されていた写真の通り、かなり綺麗な状態の個体です。汚れもほとんど見当たりませんが、念のため、アルコールで清掃をします。
 その後、一通りの動作確認を行ないましたが特に問題になるようなところは見当たらず、たぶん問題なく使えるだろうとの感触を得ました。

こんな仕様で、こんな使い勝手のカメラ

 ネットで検索したところ、当時の取扱説明書が見つかりましたので、そこから主な部分を抜粋したのが下の仕様です。

  ・レンズ : HEXANON 38mm 1:2.8 3郡4枚
  ・撮影距離 :約1m~∞
  ・露出調整 : CdSによる自動露出
  ・ファインダー : 採光式ブライトフレーム 0.46倍
  ・距離計 : 二重像合致式
  ・シャッター : B ・ 1/30~1/650
  ・セルフタイマー : 約10秒
  ・フィルム感度設定 : ASA25~ASA400 
  ・フラッシュ対応 : GN 7~56
  ・電池 : 1.3v 水銀電池
  ・サイズ : 112mm x 70mm x 52mm
  ・重さ : 380g

 電池とフィルムを入れ、フィルム感度を設定した後は、実際に操作するのは距離合わせのピントリングのみという、実にシンプルなカメラです。
 フィルム感度も「ISO」ではなく、今となっては懐かしい「ASA」となっているところが何ともレトロさを感じます。

 フィルムの巻き上げ角は約132度で、右手の親指がちょうどカメラの右側面に行ったところで止まるので、指に負担なく巻き上げができる感じです。しかも、巻き上げ後のレバーは約30度引き出された位置で停止するので、次の巻き上げがとても楽です。
 ピント合わせのヘリコイドの回転角は約48度。少ない回転角でピント合わせができるので、最短距離から無限遠までリングを持ち変える必要がありません。
 ファインダー内の二重像合致式は視認性も良く、ピント合わせはし易い方だと思いますが、縦のラインがないと使いにくいです。

 ファインダー内には露出を示す目盛りと指針があり、露出オーバーなのか露出アンダーなのかがわかるようになっています。これを見て不思議に思ったのですが、シャッター速度と絞りの値が互いに固定されており、明るさに応じて露出計の針は動くものの、これではシャッター速度と絞り値の組合せが変化しないということです。
 どうやらこのカメラは、シャッター速度と絞りの組合せがあらかじめ決まっていて、その範囲だけで露光しているようです。
 シャッター速度が変化しているのかどうか気になったので、シャッター速度を計測してみました。
 その結果、露出計の受光部分を指で覆った場合、約1/30秒で切れていました。また、受光部分にLEDライトをあてて計測したところ、最速で約1/500秒という値が得られました。1/650秒という高速シャッターは確認できませんでしたが、たぶん、もっと強い光を当てればその速度で切れるのでしょう。ということで、精度はわかりませんが、明るさに応じてシャッター速度が変化しているのは確実なようです。

 また、ファインダー内の指標によると、このカメラの露出範囲はF2.8 1/30秒から、概ねF14 1/650秒までと読み取れます。これをEV値にするとEV8(ISO100)~約EV17(ISO100)に相当します。つまり、約9段分の露出範囲を持っていることになります。シャッター速度の変化で約4.5段分を対応し、絞りの変化で残りの約4.5段に対応していることになります。今のカメラのように複雑な露出の組合せをすることなく、極めてシンプルな方法で露出調整を行っているカメラという印象です。

 試しに電池を抜いて確認してみました。電池がなくてもシャッターは切れますが、シャッター速度は1/30秒固定のままです。また、絞り羽も開放のまま変化しません。

カラーネガフィルムでの撮影例

 実際にカラーネガフィルムを装填して撮影した写真を何枚かご紹介します。
 使用したフィルムは富士フイルムのフジカラー SUPERIA PREMIUM 400です。
 なお、カラーネガフィルムで撮影したものをスキャナで読み取っているので、フィルム上に記録された状態が比較的忠実に再現されていると思います。同時プリントしてもらうとプリントの段階でかなり補正がかかるので、ここで掲載した写真よりもかなり綺麗に仕上がると思います。 

 まず1枚目は地下鉄丸ノ内線の車両基地の写真です。

 この車両基地は道路から見下ろせる場所にあり、道路脇にはフェンスが張られていますが、その網の間にレンズを置いて撮ったものです。
 薄曇りの日なので全体に光が回っていて、コントラストはあまり高くない状態です。露出は1段くらいオーバー気味の感じです。
 ピントは画の中央部付近にある赤い車両の丸窓の辺りに合わせています。画の下側に写っている有刺鉄線や金網もはっきりとわかる状態ですし、線路に敷かれた砕石の質感も良くわかるので、解像度はまずまずといったところでしょうか。
 全体にマゼンタ系に寄っている印象があり、これはカメラというよりはフィルムによるものと思われますが、私はカラーネガフィルムを使うことがほとんどないのでその特性については疎いのではっきりとはわかりません。ですが、カラーネガの場合、この程度のカラーバランスはプリント時にいくらでも調整が効くので、特に問題になるほどではないと思います。

 2枚目は近所の公園で撮影した紅葉の写真です。

 紅葉したカエデの木の下から、頭上に伸びる枝を逆光になる位置から撮影しています。
 光が葉っぱを透過することで紅葉はとても綺麗ですが、これもやはり露出オーバーといった感じです。飽和してしまっているようにも見受けられ、葉っぱの質感も損なわれてしまっています。やはり、このようなシチュエーションでは少し厳しいのかも知れません。
 とはいえ、すべてカメラ任せでシャッターを押すだけでここまで撮れるのですから、良しとせねばなりません。

 次は、散歩の途中で見つけた河童のオブジェです。

 今にも雨が降り出しそうなどんよりとした日だったので、実際にはこの写真よりももっと暗い感じです。そのため、絞りは開放かそれに近い状態だったのではないかと思われ、歩道脇の石垣や奥の方はピントから外れています。
 画全体が低コントラストの中で河童の下の石だけがかなり明るい状態で白飛びしてしまっていますが、河童とのコントラストという点では効果的に働いているようにも思えます。
 この写真もわずかにマゼンタに寄っている感じを受けます。

 さて、4枚目の写真は近所の公園で日向ぼっこしている野良猫です。

 太陽に背中を向けて、気持ちよさそうにしています。
 周囲は枯葉があったり木の影が落ちていたりして、野良猫の白い毛の部分とのコントラストが大きすぎ、さすがにこのような状態をカメラ任せというのは厳しい感じです。それでも、カラーネガフィルムならではの柔らかさで救われているところもありますが、やはり硬調気味に仕上がっています。
 白い毛の部分は飛んでいますが、背中の茶色い毛の部分は毛並もはっきりとわかるくらいに解像しています。さすが、ヘキサノンという感じです。

 カラーネガフィルムで撮影した5枚目は居酒屋で撮影した写真です。

 店内の鴨居につるされた提灯や、天井から下がっている電球がとても印象的でした。壁に貼ってあるポスターも、レプリカかも知れませんが時代を感じさせるようなものばかりで、思わずシャッター切った一枚です。提灯がたくさんあるといえ、昼間の屋外のように明るい状態ではないので、果たしてうまく写るかどうか気にはなりましたし、全体が暗いので提灯や電球が真っ白に飛んでしまうかとも思いましたが、予想以上に良く写ってくれました。レンズの上側についている小さな露出計ですが、良い働きをしてくれています。
 左下のメニューの文字も何となく読めるのは、ISO400のフィルムのお陰でしょう。

カラーリバーサルフィルムでの撮影例

 せっかくの試し撮りなのでリバーサルフィルムでもということで、冷蔵庫に残っていた富士フイルムのPROVIA 100F で撮影してみました。ちなみに、このフィルムは使用期限を1年ほど過ぎていました。

 まず1枚目は、日本民家園で撮影したものです。

 さすがリバーサル、といった色合いです。
 緑やグレー、茶といった色合いが多いので露出合わせはし易い状況だと思いますが、露出は1段以上オーバーという感じです。マニュアル露出で撮影するときのことを考えると、合掌造りの屋根の質感をもっと出すために1.3段、もしくは1.5段くらいは露出を切り詰めると思います。そうすると、手前のススキももっと落ち着いた色合いになるはずですが、自動露出なのであまり文句は言えません。
 解像度も概ね良好で、掲載した画像ではわかりにくいですが、ススキの穂先や合掌造り背後の木の葉先もはっきりとわかるくらいです。

 もう一枚は、散歩の途中で通りかかった神社で撮影した写真です。

 最短撮影距離に近い位置から撮影しています。ピント位置が適切ではありませんが、この被写体の場合、これくらい露出がオーバーになってもさほど気にならない感じです。実際にはもっと薄暗い感じでしたが、明るめに写ることで良い感じに仕上がったかも知れません。左側からの光に金色に輝く柄杓がやはり飛び気味ですが、かろうじて木の質感も残っています。
 かなり近寄って撮影しているので被写界深度も浅くなっており、ボケ具合も大きくはありませんが、クセのない素直なボケ方だと思います。もう少しボケて欲しいと思いますが、38mmという焦点距離を考えるとこんなところでしょうか。
 ポイントとなる柄杓の色をもっと落ち着かせたいというのが本音ですが、マニュアル設定できないカメラの限界かも知れません。

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 ずっと以前から欲しいと思っていたカメラで、その理由は性能とか写りとかではなく、その可愛らしいフォルムが魅力だったのですが、実際に使ってみて想像以上に素晴らしいカメラだというのが正直な感想です。もちろん、最近の高性能のカメラやレンズと比べるのは酷ですが、50年以上経った今でも十分に使えるカメラです。

 今回、カラーネガフィルムとリバーサルフィルムをそれぞれ1本ずつ使ってみましたが、露出は1段、もしくは1.3段くらいオーバーになる傾向のようです。しかしながら、露出条件のかなり厳しい状況でなければ問題なく使えると思いますし、カラーネガフィルムを使うのであればプリントの段階で補正が効くので全く問題のないレベルだと思います。露出計の精度や露出コントロールも優れているという印象です。微妙な露出調整はできませんが、面倒なことは考えず、お手軽に撮影できるカメラとしても十分に使えると思います。

 それにしても、見れば見るほど可愛らしいカメラです。撮ることが楽しくなるカメラ、眺めているだけで何だか笑みがこぼれてくるカメラというのはこういうカメラのことかも知れません。

 (2023.11.27)

#KONICA_C35 #コニカ #カラーネガフィルム #リバーサルフィルム

1950年代のカメラBeauty MODEL1 ビューティーモデル1で撮影してみました

 友人から送り付けられた1950年代のフォールディングカメラ「Beauty MODEL1」、修理をして一通りの動作確認はしましたが、ちゃんと撮れるのかどうか確認するため、フィルムを入れて実際に撮影してみました。最初はモノクロフィルムでと思ったのですが、色のノリ、絞りやシャッター速度等の露出精度も確認するため、ちょっともったいないと思いましたがリバーサルフィルム使うことにしました。
 結果は予想外でした。

 なお、このカメラの分解・修理についてご興味のある方はこちらの記事をご覧ください。

 「1950年代のカメラ Beauty MODEL1 ビューティーモデル1の分解・清掃・修理

撮影の前に結像することを確認

 いきなり撮影してもなにがしかの映像は写ると思いますが、フィルムを無駄にしたくないので、きちんと結像することを確認します。
 カメラの裏蓋を開け、フィルムがあたるところに乳白色のシートを貼って、レンズのシャッターを開いたときに像ができれば一応合格ということになります。
 実際に確認したのが下の写真です。

▲結像を確認するため、乳白色のシートに投影

 正確なピントまではわかりませんが、概ね、ピントは合っているようです。念のため近景でも確認しましたが、レンズの距離指標と合っているように見えますので、それほどピンボケになることはないと思われます。

 また、このカメラのピント合わせは目測で、しかもレンズの距離指標は「フィート」です。被写体までの距離を目測(もちろんメートル)で決め、およそ3倍するとフィートになりますが、目測で距離を測るということに慣れていないのでピント合わせに手間がかかりそうです。

▲ピント合わせは目測 距離目盛りは「フィート」

 フィルムの巻き上げとシャッターのチャージは独立しているので、今のカメラのようにフィルムを巻き上げないとシャッターが切れないというロック機構がありません。フィルムを巻かなくても何回でもシャッターが切れてしまうので、多重露光にならないように注意が必要です。

 フィルムの巻き上げは、裏蓋の小さな窓からフィルムの裏紙に記載されている番号(1~12)を確認して行ないます。
 因みに、このカメラは645判での撮影もできるので、その際は上側の窓を使い、1~16の番号を確認しながら巻き上げを行ないます。

▲カメラの裏蓋 66判の時は下側の窓からコマ数を確認する

予想に反してしっかりとした写りをするカメラ

 下の写真が実際に撮影したポジ原版(全12枚中の9枚)です。

▲ポジ原版 ライトボックス上で撮影

 ポジ原版をライトボックスの上に乗せて撮影しているので画質は良くありませんが、意外としっかり写っているのがわかると思います。何枚か抜粋した写真はこのあと紹介しますが、まずまずのコントラストや解像度が保たれているようです。ただし、レンズのイメージサークルが小さいのでしょうか、周辺光量の落ち込みが目立ちます。

 使用したフィルムは富士フイルムのベルビア100ですので、本来であればもっとくっきりとした鮮やかな発色になるのですが、60年以上前のカメラということを考慮すると健気に頑張っているという感じです。
 正直なところ、写りに関してはまったく期待をしておらず、酷い写真しか撮れないのではないかと思っていたのですが、予想に反した仕上がりに驚きです。

 ただし、ファインダーの精度は決して良くはありません。ファインダー自体は非常に単純な構造なので、覗き込む目の位置によって見える範囲がずれますし、ファインダーで見える範囲よりもだいぶ広く写るようです。写したと思ったのに周囲が欠けてしまったというよりは、多少広く写しておいた方が救済できるという判断からかも知れません。

最近のレンズと比較するのは酷だが、及第点の写り

 では、撮影したうちの何枚かをスキャンしてみましたのでご紹介します。いずれもスキャンしたままの状態で、画像の加工はしていません。

 まずは、晴天時に斜め後ろからの順光に近い状態で撮影したのが下の写真です。

▲F8 1/200

 このような条件下だと少々難ありのレンズでも比較的良好に写りますが、遊具に塗られた赤青黄の色や地面の土、生け垣の緑なども自然な感じの発色です。黄色が褪せて見えるかもしれませんが、実際にこんな感じでした。また、桜の小枝の先端も識別できるくらいですから、解像度も及第点でしょう。

 次に、近景から遠景までということで、手前に木を入れて新宿の高層ビルを撮ってみました。

▲F22 1/50

 このような構図だと周辺光量の低下が目立ちます。しかも画の中央部が最も明るいという状況なので、手前の木が黒くつぶれないようにすると新宿の高層ビルが露出オーバーになってしまいます。
 最小絞りであるF22まで絞っていますが、パンフォーカスにするには若干無理がある感じです。手前の木のディテールは損なわれますが、ピントの位置をもう少し先にもっていくと遠景がくっきりとした写真になると思います。

 もう一枚、周辺光量の落ち込みによる影響を受けている写真です。高圧線の鉄塔を見上げるアングルで撮ったものです。

▲F11 1/200

 中央の鉄塔が白く飛び気味です。もう一段絞ると鉄塔は落ち着いた色になると思いますが、手前の山茶花などはアンダーになってしまいます。やはり、このようなシチュエーションは難しいというのが正直なところですが、半世紀以上も前のカメラならではの写りと思えば、それはそれで味わい深いものです。

 下の写真は明暗差の大きな被写体ということで撮ってみました。

▲F11 1/200

 神社に奉納されたお酒の樽に陽が当たっており、そのお堂の軒下が暗く落ち込んでいる状態です。軒下はつぶれてしまうかと思いましたが、かろうじて梁のようなものが認識できます。
 やはり最も明るい酒樽のところの解像度は低下しているように見えます。

 さて、次は道路沿いにある公園にたむろしていた鳩たちです。寒いので縮こまっています。

▲F11 1/100

 中央にいる鳩までの距離は1.5mほどです。掲載した写真ではわかりにくいと思いますが、近距離ということもあり、まずまずの解像度が感じられます。
 また、上の1/3は暗く落ち込んでいるためにわかりませんが、下の両端を見ると光量が低下していることがわかります。

 下の写真は東京都庁の都民広場にある彫像「アダムとエヴァ」です。都民広場には全部で8体の彫像がありますが、そのうちの一つです。

▲F11 1/200

 順光ですので、彫像のディテールも結構よく出ていると思います。アダムの顔の辺りとその後方のリンゴの部分を拡大してみるとこんな感じです。

▲上の写真の部分拡大

 やはりエッジのシャープさはイマイチですが、ここまで写れば文句なしというところでしょう。

 同じく都民広場の彫像の「早蕨」を背後から撮影したのが次の写真です。

▲F5.6 1/50

 彫像に直接の日差しはあたっていませんが、都庁の窓ガラスに反射した光で彫像の輪郭が青く輝いています。彫像の表情がわかるくらいまで露出をかけているので背景が非常に明るくなり、このカメラのレンズにとっては苦手な状況です。都庁にピントは合っていませんが、全体的に霞がかかったようなモヤっとした感じの描写です。

 最近のレンズと比較すると解像度は低く、エッジがシャープになっていないので画全体がふわっとした感じに写りますが、十分に撮影に使えると思います。逆光気味の条件下では厳しい感じですが、その辺りを理解して光の入り方に注意すればひどい状態になるのは避けられます。
 また、レンズのコーティングも今のレンズと全く違うのは明らかで、前玉をのぞき込んだ時、深みのある吸い込まれそうな色合いがありませんので、その影響も大きいと思います。

 なお、距離合わせが目測のため、ピントが甘くなっている可能性もありますのでご承知おきください。

60年以上経っているが十分に使えるカメラ

 今回の試し撮りでは単体露出計を使って露出を設定しました。特に露出オーバーとか露出アンダーということもなく、ほぼ設定どおりの露出で撮影できているので、シャッター速度も絞りも問題なく、正常に機能していると思います。
 また、蛇腹を修復していますが、蛇腹からの光線漏れや裏蓋周辺からの光線漏れも生じていないようです。このカメラ、裏蓋の周辺にはモルトはまったく使われていません。モルトをべたべたと貼り付けて光線漏れを防いでいるよりも個人的には好ましく思います。

 発売から60年以上が経っていますが、手入れをしていけばまだまだ十分に使えそうです。

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 疑心暗鬼で行なった試し撮りですが予想もしていない結果となり、ささやかな満足感とともにほっとした気持ちです。スローな写真ライフを楽しむにはうってつけのカメラかも知れません。
 きちんと写ることも確認もできたので、カメラは本来の持ち主のところに戻っていきました。

(2022年1月19日)

#スプリングカメラ #中古カメラ #リバーサルフィルム

谷根千 Mamiya 6 でお散歩写真(東京都台東区・文京区)

 少し前になりますが今年の6月の長かった梅雨の最中、県境を越えずに近場でお手軽に撮影ということで、東京の下町風情が今も漂う「谷根千」に行ってきました。谷根千とは、台東区谷中、文京区根津、千駄木の一帯を指す総称です。持ち出したカメラはMamiya 6 MF、レンズは55mmと75mmの2本という軽装です。

旧都電停留場跡

 東京メトロ千代田線の根津駅を出て不忍通りを南に少し歩くと旧都電停留場跡があり、2008年まで都電荒川線を走っていた都電7500形の車両が展示されています。ここにはかつて、池之端七軒町という停留場があったそうですが、いまはこじんまりとした公園になっています。

臨江寺 国指定の史跡

 裏通りを谷中方面に向かいます。根津駅前から北東に延びている言問い通りを横断し、さらに進むと、ちょっとそそられる感じの居酒屋を発見。もちろん時間が早いのでまだ開店前ですが、ぜひ来てみたいと思わせるたたずまいです。
 このあたりにはたくさんのお寺が集まっており、その中の一つ、臨江寺に立ち寄ってみました。道路からお寺の山門まで結構な距離があり、その奥に緑が鮮やかに映える境内があります。このお寺、蒲生君平のお墓があり、国指定の史跡になっているようです(勉強不足で蒲生君平なる御仁を存じ上げませんでした)。

臨江寺

赤字坂 かつての財閥のお屋敷跡

 臨江寺の少し先の交差点を右折して赤字坂に向かいます。澤の屋という旅館を過ぎた先から急に上り坂になります。急に雨脚が強くなってきたので、坂の途中にある真島町会詰所の軒下をお借りして雨宿りです。
 赤字坂とは妙な名前だと思って調べてみたところ、明治のころ、渡辺治右衛門という財閥がここに住んでおり、日本橋で「明石屋」という乾物屋を営んでいたことから、「明治坂(あかじざか)」と呼ばれていたらしいです。ところが昭和の大恐慌によって破産してしまい、以後、皮肉をもって「赤字坂」となったとのことです。坂を上る左手に立派な石垣がありますが、この上が渡辺治右衛門の邸宅だったのかもしれません。

初音六地蔵

 赤字坂を上りきったところを左折、しばらく行くと神田白山線(都道452号)に出ます。この通りを少し行ったところにお地蔵様(初音六地蔵)が祀られていました。初音とはこの辺りの昔の地名らしく、初音の森という鶯がたくさん集まる場所だったらしいです、昔の地名は風情がありますね。

初音六地蔵

おしゃれなお店が多い

 初音六地蔵の先の交差点を左に、細い通りに入ります。両側は住宅が軒を連ねる通りなんですが、そこに様々なお店があってついつい立ち寄ってみたくなります。昔からあったと思われるお店もありますが、どちらかというと最近になって民家を改装して営業を始めたという感じのおしゃれなお店が多いです。

和の器 韋駄天

観音寺の築地塀

 下の写真は有名な観音寺の築地塀です。国の有形文化財にもなっているとのことで、なんだか江戸時代にタイムスリップしたような感じになります。映画やドラマのロケに使われることもあるらしく、ぜひ撮影現場を見てみたいものです。

観音寺 築地塀

 日暮里駅に近づくにつれお店の数の増えてきます。うなぎ料理のお店、薬膳カレーのお店、あにまるデザイン雑貨のお店、ミシンのお店等々。軒先に藍色に染め抜いた暖簾がかかっている古民家風の建物があり、暖簾をよく見ると「未来定番研究所」と書かれています。なんでも、5年後の未来の生活を創造するというコンセプトで大丸松坂屋百貨店が運営しているとのこと。
 朝倉文夫の作品が展示されている朝倉彫塑館に立ち寄ろうと思いましたが、残念ながら休館日でした。

谷中銀座商店街

 御殿坂に出て夕やけだんだんを下ると谷中銀座です。昔ながらの総菜屋さんや魚屋さんもあれば、今風のこじゃれたお店があったりで、商店街というのは歩いているだけで楽しい場所です。

谷中銀座商店街

 谷中銀座を通り抜け、本駒込駅方面に向かいます。細い路地が入り組んだ一帯ですが、高村光太郎の旧居跡があったり、ファーブル昆虫館があったり、見どころの多い場所です。有名な和モダン銭湯の「ふくの湯」さんもこの一角にあります。

重厚感のある東京大学農正門

 本駒込の駅前から本郷通りに出て、本郷三丁目方面に向かいます。左手は東京大学の広大なキャンパスです。東大といえば赤門が有名ですが、この農正門も趣があります。さすが東大といった感じです。

東大 農正門

(2020.12.15)

#谷根千 #マミヤ #Mamiya #リバーサルフィルム