PENTAX67 ペンタックス67の露出計駆動用チェーンの修理

 私はPENTAX67を数台持っているのですが、先日、いちばん古い機種を持ち出したところ、露出計が動作していないことに気がつきました。どうやら、露出計を駆動するチェーンが切れた模様です。
 私は、露出を測る際は単体露出計を使うので、内臓露出計が機能しなくてもほとんど支障はないのですが、無骨なTTLファインダーがカメラの上部に居座っているにもかかわらず、役に立っていないというのは気持ちが良くないので、修理することにしました。

PENTAX67の露出計駆動の仕組み

 PENTAX67には最初のモデルの「6×7」、次のモデルの「67」、そして最終モデルの「67Ⅱ」があり、さらに「6×7」のモデルは初期、中期、後期と三つに分類されています。最終モデルのPENTAX67Ⅱはそれまでの機種とは全く別物と言えますが、6×7と67は少しずつの改良が加えられてはいますが、基本的な機能や構造はほとんど同じです。
 私が持っているPENTAX67の中でいちばん古い機種が6×7後期モデルで、今回の修理対象機種です。ペンタプリズムのカバーの前頭部にAOCOマークが入っている年代物です。

 6×7、および67用のファインダーは交換式で、通常のペンタプリズムだけのアイレベルファインダーの他にTTLファインダーと呼ばれるものがあり、露出計はこのTTLファインダーに内蔵されています。シャッター速度やレンズの絞りの情報をカメラから露出計に伝える手段はすべて機械式で、構造自体は極めてシンプルです。
 このうち、レンズの絞りと露出計は細いチェーンで連動するようになっていて、絞りリングを回すことでチェーンが引っ張られ、露出計を駆動する仕組みです。

 この仕組みを簡略化したのが下の図です。

 このチェーンはカメラの中に隠れているので、通常の使用でチェーンに触れることはないのですが、構造上、レンズをカメラに装着した状態でTTLファインダーを外したり嵌めたりすると、露出計の爪と、それを動かす小さなパーツのかみ合わせがうまくいかずに切れてしまうこともあるようです。また、とても細いチェーンなので、長年使用していると劣化によって切れることもあるようです。
 今回、私のカメラのこのチェーンがいつ切れたのか、何故切れたのかは不明ですが、絞りリングを勢いよく回したりした際に切れたのかも知れません。

フォーカシングスクリーン上のカバーの取り外し

 露出計駆動用のチェーンを交換するために、まずはTTLファインダーの台座となっているフォーカシングスクリーン上のカバーを外します。

 TTLファインダーを取り外した状態が下の写真です。

 写真の下の方に「PENTAX」の文字があり、その下に細長い溝がありますが、本来であればこの中に細いチェーンが見えているはずです。何も見えていないので、切れてどこかに落ちていると思われます。

 台座(カバー)を外すためには赤い矢印の4本のネジを外します。
 写真上側の2つのネジは通常の+ドライバーで外せますが、下の2つのネジは先端が割れたフォークのような形をしたジャックドライバーが必要です。カニメレンチでも代用できると思いますが、ネジはとても小さいので操作性はあまりよくありません。

 ネジを外した後、台座は上に持ち上げれば簡単に外せますが、ネジ穴のところにワッシャーがあります。このワッシャーは、フォーカシングスクリーンとTTLファインダーを平行に保つための微調整用のもので、場所によって使われている枚数が異なります。1~3枚のことが多いと思いますが、この枚数を変えてしまうとTTLファインダーが傾いてしまうことになります。ワッシャーをなくさないように注意し、場所と枚数を記録しておくのが望ましいです。

レンズマウント部の取り外し

 次に、レンズがはまるマウント部分を取り外します。
 下の写真でわかるように、マウント部の周囲4か所に貼り革(赤い矢印の箇所)があるので、これを剥がします。ピンセットなどで端の方からゆっくりと持ち上げるようにすると簡単にはがせます。

 貼り革を剥がした状態が下の写真です。

 貼り革の下に隠れていた4本のネジ(赤い矢印)を外し、マウントを上にゆっくりと持ち上げます。

 マウントを取り外すと、下の写真のような状態になります。

 まず注意が必要なのは、TTLファインダーの台座と同じように、ネジ穴のところにワッシャーがありますので、これをなくさないようにすることと、それぞれの場所で使われている枚数を間違えないようにすることです。これが変わってしまうと、フィルム面に対するレンズの光軸の垂直が保てなくなります。

 さて、レンズの絞りに連動して回転するリングを外すため、それを押さえている板(緑の太い矢印)が左右2枚あり、これを取り外すのですが、モルト(橙色の矢印)が貼られていて、とても邪魔です。
 このモルトは細いうえに円形をしているので、完全に剥ぎ取ってしまうと再利用がとても難しくなります。モルトが劣化していないようであれば、押さえ板の上にかかっている部分だけを端の方に避ける程度にして、完全に剥がしてしまわない方が無難です。

 押さえ板は左右それぞれ2か所のネジ(緑の細い矢印)を抜けば取り外すことができ、その下にある絞りに連動するリング(青い矢印)が取り出せます。

 取り出したリングが下の写真です。

 チェーンが途中で切れています。
 このチェーンは、リングに設けられている非常に細い針金で作られたフックに引っ掛けてあるだけです。

露出計駆動用チェーンのリペア

 いよいよ、切れたチェーンを作り直さなければならないのですが、使われているチェーンは太さ(幅)1mmほどというとても細いもので、なかなか代用品が見つかりません。根気よく探せばあるとは思うのですが、必要な長さは20cm程度なので、購入するとなるとかなり高くつきそうです。
 ここに金属のチェーンが使われている理由は、自由に曲がる柔軟性と、引っ張っても伸びないことが求められるからではないかと思います。

 そこで、チェーンの代用となる材質をいろいろ考えた結果、釣りに使う道糸を使用することにしました。道糸の素材もいろいろあるのですが、柔軟性があり、しかも丈夫で伸びないという条件を満たす「PEライン」を使います。この道糸はとても強くて、人間の力で引っ張ったくらいでは絶対に切れません。しかもほとんど伸びることがないので打ってつけです。海釣り用のリールから30cmほど切り取ってきました。

 この道糸を長さ(上の図参照)に合わせてカットし、各パーツに結びつけ、こんな感じに仕上げました。

 中央にある青い矢印のパーツがテンションを与えるためのバネで、太いバネと細いバネの二重構造になっています。
 右側の赤い矢印のパーツが、TTLファインダーの露出計の爪と嵌合して露出計を駆動するためのものです。
 道糸のもう一端は、レンズの絞りに連動して動くリングのフックに引っ掛けます。
 結び目があまり綺麗ではありませんが、大目に見てください。

 これをカメラに取付けたのが下の写真です。

 道糸の長さは出来るだけ寸法通りになるようにカットし、結びつけるのですが、なかなかミリ単位で正確にするのは難しいです。
 バネに結ばれている側(写真では上側)の糸の長さは若干前後してもバネが吸収してくれるので問題ありません。しかし、リングに結合する側(写真では下側)の糸は、長すぎるとリングに遊び(ガタ)ができてしまい、反対に短すぎるとリングが嵌まらなくなってしまいます。
 ちょうどよい長さにするのは難しいのですが、3~4mmの範囲であれば微調整することができます。

 マウントを外した左上にチェーンをかけるプーリーがありますが、これを左右に動かすことで微調整が可能になります(下の写真)。

 赤い矢印のネジを緩めるとプーリーの位置が左右に動きますので、これで道糸(チェーン)の緩みを取り除きます。

 念のため、レンズの絞りに連動して動くリングの押さえ板をはめて、リングがスムーズに動くことを確かめたら、TTLファインダーをはめて露出計が機能することを確認します。問題がないようであればマウント、TTLファインダーの台座を元通りに取付けます。その際、ワッシャーの位置と枚数を間違えないように注意します。
 レンズを装着して動作確認を行ない、正常であればマウントの周囲の貼り革を貼って完了です。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今回、チェーンの代わりに釣り用の道糸を使いましたが、道糸の方が組み込みが容易な印象を持ちました。チェーンの場合、捻じれを完全に取り除いておかないと、動かした際に露出計を駆動する爪との嵌合が外れてしまうという不具合が起きます。一方、道糸を使った場合は多少の捻じれがあっても全く影響はありません。

 交換後、まだ使用回数は少ないですが、今のところは問題なく機能しているようです。

(2022.8.27)

#PENTAX67 #ペンタックス67

ローデンシュトック シロナーN Rodenstock Sironar-N 210mm 1:5.6 シャッター修理

 先日、久しぶりに新宿の中古カメラ屋さんをはしごしていたところ、とある一軒の中古カメラ屋さんでローデンシュトックの大判レンズ、シロナーN 210mmを見つけました。このお店にはこれまで何度も立ち寄っていますが、ここでローデンシュトックの大判レンズを見たのは初めてです。
 見たところ、外観は非常にきれいです。にもかかわらず、驚くほど安い価格の値札がついていました。しかも、リンホフ規格のレンズボード付きです。

安いのには安いなりの理由がある

 諭吉一枚で足りるどころか、かなりのお釣りがくる価格のローデンシュトックのシロナーN 210mm 1:5.6、訳ありに違いないとは思いましたが、目が釘付けにでもなったようにその場から離れられません。見るだけならタダだと思い、お店の方にお願いして棚から出してもらいました。
 お店の方が、「シャッターが不良なんですよね。修理に出すと4~5万かかってしまうので、仕方なくこんな価格にせざるを得ないんです。」とおっしゃいながらレンズを渡してくれました。よく見ると、値札の下の方に小さな文字で「シャッター不良」と書かれています。

 しかし、外観はとても綺麗です。新品とは言いませんが限りなくそれに近いくらい、よーく見ると細かな傷がほんのちょっとある程度です。
 そして、外観にもまして綺麗なのがレンズです。強い光にかざしてみると微細なチリはありますが、キズや曇り、カビ、コバ落ちなどはまったく見当たりません。レンズだけ見ればまさに新品のような美しさです。もちろん、絞り羽根もシャッター膜もとても綺麗です。

▲Rodenstock Sironar-N 210mm 1:5.6

 シャッター不良とはいえ、ずいぶん安いなと思いながら動作確認をしたところ、低速側のシャッター速度が正常に動作しません。1秒~1/8秒はかなりの高速で切れている感じです。ただし、1/15秒より高速になると概ね、正常な感じです。
 大判レンズの場合、高速シャッターよりも低速シャッターを使う頻度の方が多いので、これは致命的です。

 それと、T(タイム)ポジションがうまく機能しません。シャッターを開くときは問題ないのですが、閉じるときにはシャッターレバーを2~3回押さないとシャッターが閉じてくれません。B(バルブ)ポジションは問題なく動作しているので、長時間露光時もBを使えば支障はないのですが、せっかくついている機能が使えないというのはあまり気持ちの良いものではありません。

 低速側のシャッターが正しく動作しないのは、多分スローガバナーの問題だろうと想像がつきます。しかし、Tポジションの動作については原因が思い当たりません。
 焦点距離210mmのレンズを持っていないわけではないし、修理しなければ使えないレンズを買うこともないとも思いましたが、外観とレンズの美しさにどうしてもあきらめきれません。しかも、修理が必要とはいえ、こんなに安い金額でゲットできる機会はそうそうあるとも思えません。

 で、いろいろ悩んだ末に結局のところ、「ローデンシュトック シロナーN 210mm 1:5.6 お持ち帰り!」となりました。

まずはスローガバナーの修理から

 レンズを購入した翌日、早速修理に取り掛かりました。
 前玉を外して、シャッター速度ダイヤルの円盤を外すと内臓(シャッター機構)がむき出しになります。この状態で何度もシャッター切りながら内部の動作を調べます。因みに、シャッターはCOPAL-No.1です。
 すると、低速の時に、スローガバナー内にうまく動いてくれない歯車が2枚あることがわかりました。下の写真の赤い矢印の歯車が患部のようです。

▲スローガバナー

 上の写真で、シャッター速度ダイヤルを動かすと、黄色の矢印をつけたパーツが溝の中を動きます(写真では上下方向)。これによってスローガバナーの動きを切り替えているわけですが、いちばん外周側にあるときが低速シャッターを司っています。
 ドライバーの先で歯車を軽くつつくと動くので、汚れ等で粘っているのかもしれません。
 高速側は全く問題なく動いています。

 スローガバナーの内側は見えないので外してみましたが、特に汚れているようには見えません。念のため、ベンジンで洗浄して、歯車のシャフトに注油を行ない、動作確認してみると快調に動いてくれました。
 筐体内に取付けても問題なく動いてくれるので、これで低速側シャッターの問題は解消です。

Tポジションの動作不良の原因

 次にTポジションの動作ですが、こちらはどこに問題があるのかよくわかりません。シャッターをチャージし、開くときは問題ないのですが、閉じようと思ってシャッターレバーを押しても閉じてくれません。2回、3回押すとようやく閉じてくれます。
 何十回と動きを確認しているうちに気がついたのですが、シャッターレバーを押したときに動くカムのようなパーツの動きに問題があるようです。ここには髪の毛よりも細いのではないかと思われるバネが使われており、これがヘタってきているのかと思い外してみましたが、そうでもなさそうです。
 カムの下のパーツをドライバーの先でちょっと押すとシャッターが閉じてくれるので、どうやらこのパーツの動きが鈍いと思われます。

 下の写真の赤い矢印が問題のパーツです。

▲Tポジションの動作機構

 赤丸の中の右側にある階段状になっているカムと、その左側にある白っぽく見える爪のようなものがかみ合って、最初の動作でシャッター開、2回目の動作でシャッター閉となるのですが、2回目(シャッター閉)の時がうまくいっていないようでした。
 こちらは取り外さずに、シャフトのところをベンジンで軽く洗浄し、注油したところ、Tポジションでの動作が正常に行なわれるようになりました。やはり、少し粘っていたようです。

念のため、シャッター速度を計測

 これで低速側シャッターもTポジションの動作も正常になりましたが、シャッター速度がどのくらいの精度があるのか気になったので、念のため、実測してみました。
 他のページで紹介しました自作のシャッター速度計測用治具が、こんなに早く役立つとは思ってもいませんでした。
 各ポジションで3回ずつ計測してみたところ、基準値から最もずれていたのが1/400秒ですが、それでも-8%以下でした。1/400秒などほとんど使うことはないし、他のポジションのずれはそれ以下でしたので、全く問題ないと思います。

 このレンズ、あまり使われてこなかったのかも知れません。もしそうだとすると、外観やレンズに傷がなく、とても綺麗なのも頷けます。しかし、機械ものなので、長期間使われないことで動きに支障が出てきてしまったのかも知れません。
 念のため、修理後は毎日シャッターを切って動きを確認していますが、今のところ快調です。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 動作不良のレンズとはいえ、驚くほど安い値段で購入しましたが症状は軽症だったため、ほぼ丸一日かけた修理で正常に動くようになりました。残念ながらまだ実際の撮影では使っていませんが、近いうちに使ってみたいと思います。
 しばらく使っているうちにまた不具合が出るかもしれませんが、当面は問題なく使えそうです。

 また新たにレンズが増えてしまいました。

(2022年2月26日)

#ローデンシュトック #Rodenstock #中古カメラ

1950年代のカメラ Beauty MODEL1 ビューティーモデル1の分解・清掃・修理

 先日、友人から「かなり昔のカメラが手に入ったんだけど、使える?」という要領のまったく得ないメールが来ました。現物を見てみないとわからないと返信すると、「では送る」という短い回答があり、後日、宅配便でカメラが送られてきました。
 開けてみると「Beauty MODEL1」というカメラでした。この週末にこのカメラを分解・清掃・修理をしてみましたのでご紹介します。

Beauty MODEL1の状態を調べてみると..

 このカメラは1950年代の半ばに、東京の神田にあった太陽堂光機という会社が発売した国産のフォールディング(折り畳み式)カメラです。
 Beautyというブランドは「BEAUTY FLEX」という二眼レフカメラの方が有名で、今でも中古カメラ店で見かけることがありますが、今回のようなシックス判のフォールディングカメラはほとんど見かけることはありません。二眼レフカメラが大成したので、フォールディングカメラからは手を引いてしまったのかも知れません。

▲太陽堂光機製 Beauty MODEL1 かなり汚い
▲太陽堂光機製 Beauty MODEL1

 120フィルムを使用するカメラで、Doimer(ドイマー)という焦点距離80mm 1:3.5のレンズがついています。土居さんという社長の苗字からとった名称らしいですが、洒落っ気が感じられます。シャッター速度はB・1~1/200秒、最小絞りはF22、距離合わせは目測です。

 送られてきたカメラを一通り見てみると、以下のような状態でした。

 1) 全体に汚い
 2) ファインダーが曇っていてほとんど見えない
 3) 折りたたんだ時に前蓋がしっかりと閉まらない
 4) シャッターをチャージすると、シャッター膜が半開きになってしまう
 5) レンズが汚れている カビ、クモリもある
 6) 蛇腹が破れている

 果たして使えるようになるのかどうか、分解してみることにしました。

レンズの清掃とシャッターの修理

 まずはレンズが使えるようにならないと撮影はできないので、レンズを取り外してばらしていきます。

▲Doimer 80mm 1:3.5

 レンズは3枚構成で、前玉と後玉は激しく汚れています。カビが取れるかどうかわかりませんが、しばらくエタノールに浸しておき、その後、清掃しました。わずかにカビの跡が残っていますが、かなり綺麗になりました。

▲前玉を外したところ
▲後玉を外したところ

 問題はシャッター膜が半開きになってしまう現象ですが、ばらして調べたところ、シャッターをチャージした時にロックされる爪の位置がずれているようです。なぜそのようなことが発生したのかは不明ですが、しっかりロックされる位置になるよう、調整しました。

▲シャッターをチャージすると半開き状態になってしまう

 シャッター速度はバルブも含め、変化していますが、絞り羽根もシャッター膜も粘っている感じがあったので分解して洗浄しました。

 また、ピント合わせをする前玉のヘリコイドがかなり重かったので、少しグリスを塗り込んでおきます。

▲清掃・修理後のレンズ

 シャッターとレンズを組み立てて動作確認してみましたが、粘った感じもなくなり快調に動いているようです。念のため、シャッター速度を計測してみたところ、以下のような状況でした。

 <速度目盛り> <実測値>
  1      1.083秒
  1/2     0.458秒
  1/5     0.185秒
  1/10     0.109秒
  1/25     0.048秒
  1/50     0.023秒
  1/100    0.013秒
  1/200    0.006秒

 それぞれ3回計測した平均値です。ばらつきはありますが、まずまずといったところでしょう。

ファインダーの清掃

 軍幹部の中央に可愛らしい覗き穴のようなファインダーがあります。真っ白に曇っていてほとんど視界はゼロといった感じです。軍幹部を取り外してファインダーレンズを清掃します。
 このカメラは66判と645判が使えるのですが、それに合わせて接眼部を回すとファインダー内のマスクが切り替わるようになっています。このカメラの中で最もセンスが輝いている構造のように感じました。

▲ファインダー(軍幹部のカバーの内側)

 ファインダーのレンズは取り外してエタノールで拭くと、驚くほどクリアになりました。

蛇腹の修理

 蛇腹には棒状のもので突いたような破れがあります。ピンホールもあるかと思い、LEDライトを照射して確認しましたが大丈夫そうです。蛇腹自体もヨレヨレした感じはなく、しっかりとしているので破れたところを塞げばまだ使えそうです。

 蛇腹をカメラ本体から取り外すためには、カメラ前面の張り革を剥がさなければならないようです。先の薄いヘラを張り革の下に差し込んだところ、張り革が5mmほどの大きさでボロッと欠けてしまいました。60年以上も経っているのですっかり劣化しているようです。
 うまく剥がせれば再利用しようと思っていたのですが、それはあきらめて前面の張り革を全部削り取ってしまいました。

▲カメラ前面の張り革を剥がしたところ

 張り革の下のネジを外すと、カメラの筐体から蛇腹部分を取り出すことができます。

▲カメラ筐体から蛇腹機構を取り出す

 蛇腹の破れたところは、外側と内側の両方から補修テープで塞ぎます。両面にテープを貼ると厚みが増して、蛇腹の折り畳みに影響が出るかと思いましたが問題ななそうです。念のため、補修テープの周囲に黒のタッチアップペンを塗っておきます。

 蛇腹を外したついでに、前蓋のロック機構も修理しておきます。
 前蓋を閉めた際に、カチッと爪が引っかかるようになっているのですが、この爪が歪んでいてロックされません。ラジオペンチで歪みを直してロックされるようにしましたが、前蓋自体も少し歪んでいるようで、隙間ができてしまいます。カメラを落としたか、どこかにぶつけたかして歪んでしまったのでしょう。とりあえず閉まるようになったので良しとします。

カメラ前面の張り革

 取り外した蛇腹やレンズ、軍幹部をもとのように組み上げ、ボロボロになってしまったカメラ前面の張り革は新しく張り替えます。全面張り替えたいところですが、他は剝がれたり傷んだりはしていないので、とりあえずそのままにしておきます。

▲清掃・修理後のBeauty MODEL1

 前面だけとはいえ張り革も新しくなり、長年の汚れも落としたので、見違えるほどきれいなカメラになりました。ファインダーもくっきりと見えるし、絞りやシャッターも問題なく動作しているようです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 とりあえず正常に動作しているようには見えますが、実際に撮影をしてないので、きちんと写るのかどうかは不明です。後日、実際に撮影をしてみたいと思います。

(2021年12月5日)

#ビューティー #Beauty #スプリングカメラ #中古カメラ

ギア雲台 Manfrotto マンフロット410の分解・調整

 私は主にマンフロットの410というギア雲台を使用しています。構図決めの際、微妙な調整がし易いのが愛用している主な理由です。3軸(パン、ティルト、ロール)が、それぞれ独立したノブを回すことで動くのですが、長年使っているとこのノブが重く(固く)なってきます。重くなると動かす際にとても力がいるので、分解して調整することにしました。

分解の手順

 マンフロット410雲台の外見は複雑な形をしていますが、構造は比較的シンプルです。

▲マンフロット410 ギア雲台

 分解は1軸ごとにやっていきます。どの軸も構造は同じです。
 まずはロール軸からですが、マンフロットのロゴと角度目盛りが書かれたラベルを剝がします。これはかなり強力な両面テープで張り付けてあるので、ラベルの端を剥がし、強く持ち上げるとラベルにキズ(折り目)がついてしまいます。ラベルの周囲から細めのマイナスドライバを差し込み、少しずつ持ち上げていくと綺麗に剥がれます。

▲オレンジ色の矢印のラベルを剥がす

 クッション性のある厚めの両面テープが使われており、剥がすとラベルの裏側と雲台本体の両方にテープが残ってしまいます。これを再利用することは難しいので、綺麗に剝ぎ取ってしまいます。
 ラベルを剥がした状態が下の写真です。

▲ロール軸のラベルを剥がした状態

 ラベルを剥がすとギアをおさえている丸い金属板(押さえ板)があり、その中央にネジ(オレンジ色の矢印)がありますので、4mmの6角レンチを使ってこのネジを緩めます。
 中央のネジを抜くと丸い押さえ板も外れますので、ロール軸の可動部も外れます。
下の写真でもわかるように、中は空洞です。

▲押さえ板を外した状態

 この状態で、ロール軸のギアのかみ合わせをリリースするノブ(下の写真の黄色の矢印)をいっぱいに回し、押さえ板がはまっていた反対側(オレンジ色の矢印の箇所)を軽く押すと、中にはまっている円筒形のギアがポロっと外れます。これで分解完了です。

▲押さえ板がはまっていたのと反対側の状態

ノブが重くなる原因

 このギア雲台は、上で外した円筒形のパーツの外側に付けられたギアに、ウォームギアがかみ合い、ウォームギアを回すことでそれぞれの軸が回転する仕組みになっています。そして、遊び(ガタ)が出ないように、強力なバネでウォームギアを円筒形のギアに押し付けています。
 ところが、長年使っていると円筒形のギアが徐々に摩耗して、歯高が低くなってしまいます。ここにウォームギアが押し付けられるので、ウォームギアの歯先が円筒形のギアの歯の底に当たってしまい、摩擦抵抗が大きくなり、ノブが非常に重くなるということになってしまいます。

▲円筒形のギア

 上の写真で、黒く汚れている辺りの歯が摩耗しているのがわかるでしょうか?
 一方、ウォームギアの方は特に摩耗しているようには見えません(下の写真)。

▲ウォームギア

 円筒形のギアはアルミ製で、ウォームギアは真鍮製です。真鍮はブリネル硬さでアルミの3倍ほどありますから、アルミ製のギアの方が摩耗してしまうのだと思います。

ギアのかみ合う位置を変える

 摩耗してしまったパーツは新しいものに交換するのが望ましいのですが、パーツ代も結構高額のようですので、まだ摩耗していないところを使うようにします。

▲未使用で歯が摩耗していない箇所

 この雲台のティルト軸とロール軸の可動範囲はそれぞれ120°です。この範囲を行ったり来たりしているので、円筒形のパーツは全周のおよそ1/3しか使っていません。残りの2/3は未使用状態ですので、この未使用部分とウォームギアがかみ合うようにすれば、ノブが重いという問題は解消されます。

 なお、ウォームギアのところにはグリスが塗ってありますが劣化してきているので、ウエスなどで綺麗にふき取り、新しいグリスを塗り込んでおきます。

 また、円筒形のギアも汚れていますので、こちらも綺麗にふき取り、グリスを塗っておきます。

組み上げの手順

 組み上げは、まずロール軸のギアのかみ合わせをリリースするノブをいっぱいに回した状態で、円筒形のギアをはめ込みます。この時、ギアが摩耗していない未使用の箇所がウォームギアがとかみ合うように、はめ込む位置を確認します。120°可動しても、摩耗した部分がウォームギアとかみ合うことがないようにします。

 次に、ロール軸を雲台に嵌合させ、押さえ板をはめてネジを締め込めば組み上げは完了です。

 この状態でロール軸の可動範囲いっぱいまでノブを回してみて、重くなることがなければ大丈夫です。もし途中で重くなるようであれば、摩耗している歯の部分にかみ合っているので、再度分解してギアの位置を移動させる必要があります。

 また、丸い押さえ板を止めるネジですが、これが緩んでくるとギア雲台にガタが生じますので、このネジはかなり強く締めておいた方がよろしいと思います。

 動作確認をして問題がなければ、最初に剥がしたラベルを張り付けます。何年後かにまた調整をすることを考慮すると、両面テープで張り付けるのが良いのではないかと思います。

ティルト軸の調整

 ティルト軸もロール軸と同様の手順で行ないます。
 ティルト軸の可動範囲もロール軸と同じ120°で、全周の2/3は未使用の状態ですので、そことウォームギアがかみ合うようにすればOKです。

パン軸の調整 

 パン軸も分解の手順は同じですが、状況が若干異なっています。パン軸の可動範囲は360°あり、このため、円筒形のギアの全周に渡って歯が摩耗している可能性があります。その場合は、ウォームギアとのかみ合い位置を変えても改善は見込めません。
 また、摩耗箇所が部分的であったとしても、使用している途中で摩耗箇所とウォームギアがかみ合う位置に来る可能性は十分にあるので、完全に問題解消というわけにはいきません。もし、パン軸のノブが重くて支障があるようでしたら、パーツを新しいものに交換するか、もしくは、雲台そのものを新しくするかしかありません。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 この調整で、ノブが快調に動くのがどれくらいの期間かというのは使用頻度によって異なるので一概に言えませんが、いずれノブが重くなったとしても、ティルト軸とロール軸の円筒形ギアに関してはまだ1/3が未使用なので、さらにもう一度、調整できる余裕が残っています。それまでパン軸が耐えられればですが。

(2021.7.1)

#マンフロット #Manfrotto #ギア雲台