初めてのARISTA EDU ULTRA 200 モノクロフィルムの使用感

 日頃、私が使用しているフィルムのおよそ8割はリバーサルで、残りの2割ほどがモノクロフィルムになります。いまやリバーサルフィルムは種類が激減し、選択肢がないに等しいですが、モノクロフィルムはこのデジタル全盛の時代においても海外製品を中心に種類も比較的多くそろっています。
 私はいろいろなフィルムをあれこれ使うことはあまりなく、気に入ったものを使い続けるタイプです。モノクロフィルムも常用しているのはイルフォードのDELTA100、富士フィルムのACROS Ⅱ、ローライのRPX25など、3種類ほどですが、今回、ARISTA EDU ULTRA 200を初めて使ってみました。

前々から、ちょっと気になっていたモノクロフィルム

 ARISTA EDUはチェコ製のモノクロフィルムで、もともとULTRA 400という製品が発売されており、今から数年前にULTRA 100とULTRA 200が追加されたようです。写真学校の学生など向けに価格を抑えるという戦略をとっていたらしく、「EDU」という名前はそこから来ているとのことです。私が購入した時も120サイズが930円くらいだったので、イルフォードのDELTA100や富士フィルムのACROSⅡに比べると、確かに安いという印象があります。

 私がいろいろなフィルムに浮気をしないのは、リバーサルフィルムは選択肢がないということも理由の一つですが、モノクルフィルムの場合はちょっと違って、フィルムによって特性が違い過ぎるのと、それに相まって現像の仕方で仕上がりがずいぶん変わってくるため、自分が気に入る仕上がりにたどり着くまでにかなりの時間と手間とお金がかかってしまいます。そのため、一度気に入ったフィルムと現像を見つけると、それを使い続けるということになります。

 そんな背景はありながら、ISO100やISO400に比べると種類が少ないISO200という感度が気になったからかも知れません。
 新宿のカメラ店にいそいそと出向き、120サイズのフィルムを2本だけ購入してきました。

現像はイルフォードのID-11を使用

 ARISTA EDU ULTRAシリーズの3種類のうち、ULTRA 100とULTRA 400はトラディショナルタイプですが、ULTRA 200はT粒子タイプらしいです。そのため、推奨現像液は「T-MAX」となっていますが、手元に持ち合わせがなかったので、今回はイルフォードのID-11を使用しました。
 希釈は1:1、現像時間は20℃で9分としました。

 現像しようと思い、リールにフィルムを巻きつけるときにはじめて気がついたのですが、フィルムがすごく薄い感じがしました。35mm判フィルムやシートフィルムと違ってブローニーフィルムの場合は裏紙がついているので、現像のときまで直接フィルムを触ることはありません。
 私が使い慣れているフィルムはパリパリした硬い感じがしますが、このフィルムはフニフニとした感じです。
 イルフォードDELTA100はフィルムベースの厚さが0.11mm(データシートより)らしいですが、このフィルムの厚さを測ってみたところ0.1mmを下回っています。マイクロメータがないので正確な厚さはわかりませんが、DELTA100に比べると薄いのは確かなようです。

 そして、現像後の現像液をみてビックリ、現像液がメロンソーダというか、バスクリンを入れ過ぎたお風呂のような見事なエメラルドグリーン色になっていました。
 現像液はワンショットで廃棄ということはほとんどなく何度か使い回しをしますが、この色を見ると次回も使えるのかしらと思ってしまうくらいです。

 もう一つ驚いたのがフィルムがクリンクリンにカールすることです。乾けばフラットになるかと思ったのですがそんなことはなく、2コマずつカットしてスリーブに入れるにも苦労するくらいです。フィルムを入れたスリーブ全体が湾曲するくらいですから、かなり強力にカールしているのがわかります。

 そんな驚きの連続ではありましたが、何とか無事に現像ができました。

コントラストは低めだが、なだらかな階調

 今回、撮影に使用したカメラはPENTAX67、レンズはSMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 です。

 まず一枚目は、新宿中央公園で撮影した「絆」像です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F5.6 1/125 ARISTA EDU 200

 順光に近い右側からの斜光状態での撮影です。バックのビルの壁面にも光が当たっているため、全体的にフラットになりがちな状況です。
 微粒子をうたっているだけあって、まずまずの解像度が得られているのではないかと思います。
 また、シャドー部もベタッとした感じはなく、ディテールも残っています。

 一方、コントラストは若干低い印象を受けます。被写体や光の状況によって異なりますが、個人的にはメリハリが不足しているように感じます。しかしこれは、現像液や現像時間によって変わってくるかも知れません。

 昼休みの時間帯ということもあり、芝生の上には多くの人がいたので急いで撮影したため、像に角が生えてしまったのはご愛嬌ということで。

 次の写真は公園脇の交差点を撮影したものです。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F11 1/250 ARISTA EDU 200

 一枚目の写真に比べると斜光の度合いが強いのと陰になっている部分が多いので、全体としてコントラストが高めに見えます。
 しかし、ビル(都庁)の壁面や路面、木々の枝などを見るとわかりますが、コントラストは決して高くはありません。

 この写真は画素数を落としているのでわからないと思いますが、ネガ原版をルーペで見ると木々の枝先も認識できるので合格点とは思いますが、特別に解像度が高い印象は受けません。

 もう一枚、公園内の雑木林を撮影した写真です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F11 1/125 ARISTA EDU 200

 画面左側から光が差し込んでいる状況です。
 中央左にある2本の木の幹や、直接光が当たっていない地面なども黒くつぶれることなく表現されていますが、やはり全体の印象はコントラストが低めといった感じです。

 まったく同じ場所ではありませんが、この雑木林をイルフォードのDELTA100で撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F11 1/30 ILFORD DELTA100

 ULTRA 200と比べると明らかにコントラストが高いのがわかると思います。全体的に黒の締まった、メリハリが感じられる描写です。
 黒がくっきりと出る分、ディテールは若干犠牲になっていますが、とはいえ、墨を塗ったようなベタッとした黒ではなく、階調も出ているので立体感も損なわれていません。

 因みに、こちらのフィルムもイルフォードID-11(希釈1:1)を使用し、20℃で11分の現像をしています。

 ARISTA EDU ULTRA 200、イルフォードのDELTA100と比べるとその違いが明確にわかりますが、なだらかな階調表現ができるフィルムではないかと思います。パキッとしたメリハリの利いた画にはなりませんが、ディテールを犠牲にすることなく、柔らかな表現ができるフィルムといったところでしょうか。
 ポートレートとか花とか、あるいは、のどかな風景の撮影などには向いているかも知れません。

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 このフィルムを使った撮影を終えてから10日ほど経ったある日、フィルムを購入した新宿のカメラ店に立ち寄ったところ、何と、このフィルムの価格が1,300円に値上がりしていました。もちろん、ULTRA 100もULTRA 400も同じ1,300円です。イルフォードのDELTA100をはるかに超えて、ローライのRPX400と同じ価格になってしまいました。驚きです。
 もはや、学生向けのフィルムとはいえなくなってしまった感じです。

(2022年4月4日)

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