他のページにも書きましたが、私は何年か前に35mm判カメラのほとんどを手放してしまいました。いま手元に残っている35mm判カメラは、CONTAX T2とフォクトレンダーBESSAMATICの2台のみです。BESSAMATICはすっかりディスプレイと化していて実際に使うことはほとんどありませんが、CONTAX T2はお散歩カメラとして、発売から四半世紀を過ぎた今でもバリバリの現役です。
CONTAX T2にもいろいろなバリエーションがありますが、私の持っているカメラは最終型のリミテッドブラックというモデルです。
CONTAX T2の主な仕様
このカメラの主な仕様は以下の通りです(CONTAX T2取扱説明書より引用)。
レンズ : Sonnar T*38mm F2.8 4群5枚
シャッター : レンズシャッター 1秒~1/500秒
絞り目盛り : F2.8~F16
最短撮影距離 : 0.7m
露出計 : SPD受光素子
ファインダー : 逆ガリレオ型採光式ブライトフレーム
AF方式 : 赤外線式アクティブオートフォーカス
フィルム感度 : ISO25~5000
フィルム装填 : オートローディング方式
電池 : CR123Aリチウム電池 1本
大きさ : 119mm x 66mm x 33mm
重量 : 295g(電池別)
初代のCONTAX T2が発売されたのは1990年ですが、リミテッドブラックが発売されたのは通常モデルの生産終了後の1998年で、2,000台の限定品でした。価格(メーカー希望小売価格)は他のCONTAX T2と同じく12万円という高額のカメラでした。
直方体の中にほとんど凹凸のない状態でレンズ(収納時)やダイヤル、ボタンなどが綺麗に納まっており、それまでのコンパクトカメラとは一線を画しているという印象がありました。
初代のCONTAX T2を目にしたとき、欲しくて欲しくてたまらなかったのですが、あまりの高額に手が出せずにいました。「いつかはT2」と思いながらも時は過ぎ、やがて生産終了を迎えてしまいましたが、その後まもなくして限定品が出るというアナウンスを耳にし、これを逃したらいつかは来ないと思い、予約して購入したのがついこの間のことのようです。
チタン製のボディに加えてファインダー窓にサファイアガラスが採用されていたり、多結晶サファイアのシャッターボタンやセラミック製のフィルム圧板、そして立派な化粧箱など、随所に高級感がちりばめられているというカメラでした。
その当時、他メーカーのコンパクトカメラも持っていたのですが、CONTAX T2を手にしたとたん、それまでのコンパクトカメラがとてもチープに見えてしまったことを覚えています。CONTAX T2を持ち出すと何だか写欲が湧いてくるように感じたのは、その高額な価格のせいだけではないと思います。
自動とマニュアルを兼ね備えた、優れた操作性
オートフォーカス(AF)、および自動露出(AE)に設定しておけば、あとはシャッターを押すだけで撮影ができるわけですが、マニュアル撮影もできるようになっており、この辺りもカメラ好きの心をくすぐるカメラと言えます。
カメラ上面のダイヤルをAFポジションから解除する方向に回すと、その瞬間からマニュアルフォーカスになります。レンズの絞りもAEポジションから回すとマニュアル露出になり、少ない操作で自動/マニュアルが切り替えられるようになっていて、操作性に優れていると思います。
また、ストロボ撮影もレンズの絞りリングで切り替えるようになっていて、いくつものスイッチやダイヤルをいじらなくても済むように考えられています。
もちろん、一眼レフカメラのように細かな設定はできませんが、通常の撮影には全く不便を感じません。コンパクトカメラというカテゴリーに入るようですが、使っているとそれを忘れてしまいます。「高級コンパクトカメラ」という分野を築いたと言われるのも頷けます。
オートフォーカス機能が弱い?
このカメラの唯一の弱点と言えるのかも知れませんが、オートフォーカスが弱いというか、クセがあるというか、そんな印象があります。
狙ったところにピントが合わない、ということが時々起きます。特に、近景にピントを合わせようとしたときに起きる傾向が強いように感じます。ただし、これは個体差があるのかもしれません。
また、マニュアルフォーカスでピント合わせをしようとしても、フォーカシングダイヤルの目盛りは非常にラフな状態だし、ファインダー内にフォーカシングインジケータがありますが、どの程度の精度があるのか良くわからないし、ということでマニュアルフォーカスはほとんど使ったことがありません。
36枚撮りのフィルム1本の中で1~2コマのピンボケが生まれることがありますが、フレーミングの際に少し気をつけて慎重に行なえば回避できるレベルです。
カールツァイス ゾナー Sonnarレンズの描写力
CONTAX T2に採用されているレンズはカールツァイスのSonnar T* 38mm F2.8ですが、焦点距離38mmに対して開放F値が2.8というのは特に明るいわけでもなく、レンズ構成の4群5枚を見ても特に目を引く仕様というわけではありません。
これは個人的な感想ですが、カールツァイスのSonnarというと色ノリが良いという印象があります。当時、一眼レフ用のレンズでも何本かのSonnarを持っていましたが、Planarなどと比べるとこってりとした色合いになるように感じていました。
実際にCONTAX T2で撮影してみた時に、やはり色のりはSonnarだと感じたのを覚えています。
下の写真は、CONTAX T2で撮ったスリーブをライトボックスに乗せた状態で撮影したものです。
良く晴れた日だったので、近所を散歩しながら青の景色を撮り歩いた写真ですが、色のりの良さがわかると思います。使用しているフィルムはVelvia100というリバーサルフィルムなので、もともとが鮮やかな色合いになる傾向ではありますが、Sonnarっぽさが感じられます。
もちろん解像度も素晴らしく、一眼レフカメラで撮影したものと比べても遜色ないといった感じです。
スリーブの中の1コマをスキャンしたのが下の写真です。
中央の高圧線の鉄塔やケーブルはもちろんですが、手前の木々の葉っぱも非常に良く解像していると思います。順光に近い状況ということもあり、空の青や下の方の葉っぱの緑がとても鮮やかな色になっています。
もう一枚、福島県の大内宿で撮ったものです。
大きな民家の軒下にたくさんのお土産品が並べられており、直射日光は当たっていないので光が柔らかく回り込んでいる状況ではありますが、やはり解像度は立派だと思います。
赤が鮮やかに発色するという噂
CONTAX T2に搭載されたSonnarは、特に赤の発色が極めて鮮やかだという話しは有名です。
私自身はそのように感じたことはほとんどなく、どちらかというと青とか緑の発色が鮮やかだと思っていたのですが、あらためてCONTAX T2で撮影したポジを見てみると確かに赤の発色の鮮やかさは感じられます。ただし、極めて鮮やかかというと、それほどでもないというのが正直なところです。ですが、これは撮影した被写体によるところも大きいのではないかと思います。
CONTAX T2で撮影したコマの中から、赤が鮮やかに発色しているものを物色してみました。
日光東照宮で撮影したものですが、建物の周囲に設置されている柵がとても鮮やかに出ています。雨上がりの早朝ということで全体が落ち着いた色合いになっているのですが、確かに赤い柵だけが妙に鮮やかに感じられます。
全体のトーンが低いので赤が目立っているのかもしれませんが、光の具合や他の被写体との組み合わせで見え方も変わってくるわけで、この噂に関する真偽のほどはわかりません。
むしろ、私は赤よりもピンクというか肌色というか、赤よりも少し淡い色の方が綺麗に発色すると感じていました。
ポートレートだとわかり易いと思うのですが、CONTAX T2で撮影したポートレートがないので、比較的色合いが近いと思われるものを見つけてきました。
どこの神社でもよく見ることができる狛犬です。
色のトーンがニュートラルグレーに近い感じだと思うのですが、とても自然な感じに描写されていると思います。赤の鮮やかな発色とは対極にあるような印象さえ受けます。
このように、CONTAX T2の赤の発色に対して私が持っているイメージはそれほど派手なものではありません。
いま、CONTAX T2の中古価格が異常に高騰している
ところで、昨今、中古カメラ価格が全般的に上昇しているように感じているのですが、中でもCONTAX T2の中古価格の高騰ぶりには驚かされます。
もともとの価格(12万円)を超える中古品はざらで、中には20万円以上するものまで出回っています。もちろん、そういった価格がついているものは程度も非常に良い個体だし、金ぴかのゴールドモデルだったりするわけですが、それにしても異常とも思える状況です。
いったい、20万円も30万円も出して誰が買うのだろうと考えてしまいます。個人で購入する方もいらっしゃるだろうし、中古カメラ販売をビジネスにしている方もいらっしゃるとは思うのですが、そのカメラの行き先が妙に気になってしまいます。
ネットオークションなどを見ると、CONTAX T2やT3はとても綺麗で程度の良いものがたくさん出品されています。四半世紀も前のカメラが綺麗な状態でこれほどたくさん出品されているということは、大事に保管されていてあまり使われてこなかったということなのかとも思ってしまいます。
CONTAX T2にしてもT3にしても、これまで実際に持ち歩いている人を見かけたことは非常に少ないです。もしかしたら、箱入り娘のようなカメラなのかも知れません。
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私はこのカメラを散歩や旅行などの時に良く持ち出して他愛もないものを撮っています。購入してから24年が経ちますが、四半世紀も前のカメラということを全く感じさせません。もちろん、人によって好みがあると思いますが、私はすっきりとしたデザインがとても気に入っています。
(2022.6.12)