リバーサルフィルムのラチチュードは本当に狭いのか?

 一般にリバーサルフィルム(ポジフィルム)はラチチュード(適正露光域とか露出寛容度)が狭いので露出設定がシビアだと言われています。この「狭い」というのが何と比べて狭いのかというと、カラーネガフィルムと比べて狭いと思われているふしがあるようなのですが、ちょっと違うような気がしています。
 私は圧倒的にリバーサルフィルムを使う頻度が高く、確かに露出設定には神経を使いますが、特段、カラーネガに比べてラチチュードが狭いとは感じたことはありません。
 リバーサルフィルムを使った撮影はハードルが高いと言われることもありますが、決してそんなことはないと思っています。

カラーリバーサルとカラーネガのフィルム特性

 何故、リバーサルフィルムのラチチュードが狭いと言われているかというと、写真としてのそもそもの使い方の違いから来ているのではないかと思います。リバーサルは現像した時点で完成形ですが、カラーネガの場合は現像しただけでは完成しておらず、プリントが前提となっています。このため、プリントの段階で調整がきくので、カラーネガはラチチュードが広いと思われているのではないかということです。
 確かにプリントの段階で調整できるのはその通りですが、これはフィルム上に大きく圧縮された画像を、コントラストの高いペーパー上に伸長させて再現することで実現しているわけです。

 残念ながらずいぶん前に終了してしまいましたが、ダイレクトプリントというサービスがあり、リバーサルフィルムから直接プリントできました。ネガフィルムからのカラープリントに比べると、プリント時の調整幅は狭く、シャドー部がつぶれがちであったりしましたが、インターネガを介してプリントするとカラーネガフィルムからのプリントに引けを取らない調子が再現できていました。
 それを考えると、カラーネガフィルムに比べてリバーサルフィルムのラチチュードが狭いとは言い切れないのではないかと思います。

 富士フイルムから出ているデータシートからフィルムの特性グラフを参照してみました。フジカラーPRO 160 NHというネガフィルムと、フジクロームVelvia 100Fというリバーサルフィルムの比較です。

 ネガフィルムの場合、実際の被写体の明暗が反転した状態でフィルムに記録されるので、光が当たった部分が暗くなります。すなわち、グラフ上の濃度の数値が大きいということになります。逆に光が当たってない部分は明るくなるので、濃度の数値が小さくなります。
 一方、リバーサルフィルムはネガと反対ですから、光の当たった部分は濃度が低く、光の当たってない部分は濃度が高くなります。このため、グラフの傾きは、ネガとリバーサルで反対になります。

 上のグラフの横軸の相対露光量の範囲を見ると、ネガ(PRO 160 NH)はおよそ-3.6~+0.5、リバーサル(Velvia100F)はおよそ-3.4~+1.0となっていて、若干の違いはあるものの、露光量に対して画像として記録できる範囲に大きな差はありません。
 ただし、曲線の傾きがネガの方が緩やかで、リバーサルはネガに比べて傾きが大きいことがわかります。これは、ネガの方が広い露光範囲で露光量に応じた濃度が得られることを意味しています。

 また、曲線が示す最大濃度はネガが約2.7(青)に対して、リバーサルは約3.8(緑)ですから、リバーサルの方が高い濃度まで再現できることになります。しかし、リバーサルは相対露光量が-0.2くらいで曲線がフラットになってしまいますが、ネガは+0.5でもまだフラットになっていません。
 これが、ネガは露出をオーバー気味にした方が良く、リバーサルは露出をアンダー気味にした方が良いと言われている原因ではないかと思います。
 とはいえ、あくまでもフィルムの特性が示す傾向であって、意図を持った作品作りを除けば、再現性という点ではネガでもリバーサルでも適正露出で撮るのが望ましいはずです。

ポジ原版をライトボックスで見てみると..

 リバーサルフィルムの特性曲線のグラフで、相対露光量の多いところと少ないところでは曲線の傾きがなだらかになっています。これは、黒くつぶれてしまっていたり、白く飛んでしまっているように見える画像の中にもコントラストとして記録されてるということです。

 実際にリバーサルフィルムで撮影した中から、黒くつぶれているところが多いポジ原版を探してきました。ライトボックス上で撮影したのが下の写真です。

 肉眼で見たのと同じようにはいきませんが、画の右半分が真っ黒につぶれているのがわかると思います。
 まだ陽が十分に差し込む前の渓谷で撮影したものですが、黒くつぶれた右半分のさらに上半分はこの渓谷の左岸にある岩肌で、下半分は水面なのですが上の岩肌を映しこんでいて、結果、右半分が真っ黒といった状態です。肉眼で見た時には岩肌ももっと明るく見えたのですが、撮影するとこんな状態です。人間の眼のすばらしさをあらためて感じます。

 それはさておき、この写真ではほとんどわかりませんが、この黒くつぶれた中にも所どころ明るい箇所があり、何やら写っているというのが見てとれます。墨で塗りつぶしたように真っ黒というわけではなさそうです。特に右下の辺りは川底の石がぼんやりと見えるので、それなりの画像は記録されていると思われます。

黒つぶれしているポジ原版をスキャンしてみる

 では、このポジ原版をスキャンしてみます。
 特に画質調整などの加工はせず、スキャンした素のままの画像が下の写真です。

 ポジ原版をライトボックスの上に乗せて撮影したものに比べると、多少は細部も認識できるとは思いますが、アンダー部が黒くつぶれているのは変わりありません。画の左半分がほぼ適正露出なのに比べると明らかにアンダーです。
 それでも、ポジを肉眼で見たのに比べると画像が記録されている印象を受けるので、どの程度のまで認識できるかをレタッチソフトで明るくしてみます。画質をあまり犠牲にしないようにして、極端に劣化されない範囲で明るくしてみたのが下の写真です。右側上部の岩の部分です。

 一見、黒くつぶれているように見えますが、実はかなりのディテールまで画像として認識できるレベルに記録されています。もちろん、この著しくアンダーな部分を救済すれば、ほぼ適正露出である左半分は大きく露出オーバーになってしまいます。ですが、黒くつぶれているとはいえ全く画像が認識できないわけではなく、それどころかかなり鮮明に記録されているといえます。
 これが黒い中にも微妙なコントラストがある、リバーサルフィルムの表現力ではないかと思います。

 特性曲線のグラフでもわかるように、相対露光量に濃度が比例する範囲は狭いかも知れませんが、その前後が画像として記録されていないわけでなく、しっかりと記録されています。
 そういう視点からすると、一概にリバーサルフィルムのラチチュードが狭いと言い切ってしまうことはできないと思います。むしろ、露光量が少ない範囲においてもしっかりと記録できるパフォーマンスを持っていると言っても良いのではないかと思います。

 因みに、この写真の左半分にある木々の緑に対して、右側の黒くつぶれているように見える箇所の測光値は-3EV以上になります。

 なお、この写真の右半分があまり明るくなってしまうと重厚感がなくなり、この場の雰囲気が大きくそがれてしまいます。もう少し明るくても良かったとは思いますが、意図して撮影した範囲ではあります。

白飛びでも画像として認識できるか?

 黒つぶれとは反対に、露出オーバーで白く飛んでしまった状態でも画像として記録されているのか気になるところです。
 ポジ原版のストックを探したのですが適当なものが見つかりません。唯一、露出設定を著しく間違えて撮影したポジがありましたので、これで検証してみます。

 このポジは滝を撮影したものです。NDフィルターを装着して撮影するつもりでしたが、ピント合わせなどをした後にNDフィルターをつけるのを忘れてたか、NDフィルターはつけたが絞り込むのを忘れてシャッターを切ってしまったかのどちらかですが、いずれにしろ実にお粗末な結果と言わざるを得ません。たぶん、これだけスケスケ状態になっているので、絞り込むのを忘れていたのだろうと想像しますが、そうすると5EVほどの露出オーバーということになります。
 ポジ原版を見ても何が写っているのかよくわかりません。撮影した本人でさえわからないのですから、他人からすれば全く認識不能といったところでしょう。

 この写真の中央付近を切り出して、無理矢理に画質調整をしてみたのが下の写真です。

 岩の質感などはわかる程度にはなりましたが色調はどうしようもなく崩れており、もはや写真として成り立たないレベルです。しかしながら、真っ白に近い中にこれだけの情報が残っているというのは驚きです。
 この例は極端すぎますが、3EVくらいのオーバーであればもう少しまともな画像が得られるのではないかと思います。

リバーサルフィルムのラチチュードは決して狭くない

 リバーサルの場合は現像が上がった時点で完成ですから、今回のようにレタッチソフトで画質調整をすることに意味があるとは思いませんが、真っ黒につぶれているように見えたり真っ白に飛んでしまっているような中にも、かなりしっかりと記録されているというのは事実であり、フィルムの力だと思います。
 また、露出オーバーよりも露出アンダーの方がよりしっかりと記録されており、特性曲線と一致しています。もっともこれは、露光量が増えれば増えるほど情報が消えていってしまうので、当たり前のことと言えますが。

 リバーサルフィルムは、特性曲線が傾いている範囲がカラーネガに比べて少ないのでラチチュードが狭いと言われているのかもしれませんが、決して狭いわけではないと思います。
 黒くつぶれたり白く飛んだりしている中にも情報が記録されていることでべったとした感じにならず、良くわからないけれど何やら写っている、というような印象を受けることで写真全体の雰囲気が変わってきます。ここにフィルム独特の味わいが醸し出されているのではないかと勝手に思い込んでいます。

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 モノクロプリントやカラープリントはもちろんですが、リバーサルフィルムからのダイレクトプリントでも覆い焼きや焼き込みといった作業で色を調整したりディテールを引き出したりしていたことを考えると、リバーサルフィルムの潜在能力の凄さをあらためて感じます。
 そして、特性の違いはありますがカラーネガフィルムに比べてハードルが高いということはなく、特に構えて使うフィルムでもないと思っています。むしろ、特性を知っておくことでいろいろな使い方ができる、そういったことに応えてくれるフィルムだと思います。
 ただし、お値段はお高めですが...

(2022.6.19)

#リバーサルフィルム #露出

写真撮影における測光と露出設定(3) 風景撮影における測光方式

 前回まで、露出や測光に関する基本的なことを説明してきましたが、3回目の今回は、風景写真を撮る際に用いる主な測光方式について進めていきます。風景撮影においては反射光式露出計を使って測光することが多く、入射光式露出計とは違った測光方式になります。そのあたりを、撮影事例を交えながら説明していきたいと思います。

リバーサルフィルムのラチチュード

 測光方式の前にフィルムの「ラチチュード」について簡単に触れておきます。
 ラチチュードとは「適正露光域」とか、「露出寛容度」とか訳されていますが、フィルム上で階調がなくならず、画像として成立する範囲のことをいいます。暗すぎると階調がつぶれて真っ黒になってしまい、明るすぎると階調が飛んでしまい真っ白になってしまい、いずれも画像として認識できなくなってしまいます。
 簡単に言うと、どのくらいの暗さから、そして、どのくらいの明るさまで再現できるか、その範囲のことを指します。

 リバーサルフィルの場合、このラチチュードは約5EVと言われています。モノクロのネガフィルムが約9EVといわれていますから、リバーサルフィルムのラチチュードが狭いことがわかります。
 5EVというのは輝度比でいうと1:32になります(いちばん暗いところの輝度を1としたとき、最も明るいところの輝度が32ということです)。

 ニュートラルグレーの輝度を基準にしたとき、フィルム上に再現できる最も明るいところ(白レベル)は基準から「+2・1/3EV」で、最も暗いところ(黒レベル)は基準から「-2・2/3EV」になります。この範囲を超えたところは真っ白に、または真っ黒になってしまいます。

 以下、風景撮影での測光方式について説明をしていきますが、カラーリバーサルフィルムでの撮影を前提としています。モノクロネガフィルムやカラーネガフィルムでは設定が異なりますのでご注意ください。

ハーフトーン測光

 ハーフトーン測光は、最も標準的な測光法であるいえると思います。被写体の中で、ニュートラルグレーに近い反射率(ハーフトーン)を持った部分を測光し、その測定値で絞り値とシャッター速度を設定して撮影します。
 この測光方式は簡単ですが、被写体の中のニュートラルグレーに近い反射率を持った部分が、写真を構成するうえで中心的な存在となっていることが必要です。
 ニュートラルグレーが実際にどのような色(被写体)かということについては、前回の記事をご覧いただくとわかり易いと思いますが、木々の葉っぱや草などの緑色が、比較的ニュートラルグレーに近い反射率を持っています。

 下の写真はハーフトーン方式で測光し、撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-TAKUMAR6x7 105mm 1:2.4 F16-22 1/8 PROVIA100F

 測光箇所は画面の多くを占めている木々の緑です。暗めの緑も少しありますが、大半は明るめの緑ですので、ここを測光しています。
 まだ新緑の色が残っている状態ですので、ニュートラルグレーよりも反射率は高いと思われます。そのため、測光値はEV12(ISO100)ですが、そのままだと木々の葉っぱが暗めに写ってしまうので、+0.5EVの補正をかけています。

 このように、被写体全体にわたって輝度差があまり大きくない場合はハーフトーン測光でも適正な露出設定をすることができます。

平均測光

 この測光方式は、被写体の中で最も明るい(ハイライト)部分と最も暗い(シャドー)部分を測光して、その平均値を出します。例えば、ハイライト部分がEV12(ISO100)、シャドー部がEV8(ISO100)の場合、平均値はEV10(ISO100)となります。
 ただし、ハイライト部分もシャドー部分もある程度の面積を占めている必要があります。それぞれが、ごくピンポイントでしか存在しておらず、しかも、それらが写真を構成するうえで重要な場合、この測光方式は適当ではありません。後で説明する別の測光方式を採用してください。

 平均測光方式で撮影した事例が下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX6x7 200mm 1:4 F16-22 1/4 PROVIA100F

 上の写真で、いちばん明るい手前の枯れ草の部分と、いちばん暗い上側の林の部分をそれぞれ測光しています。明るい部分がEV13・1/3(ISO100)、暗い部分がEV9(ISO100)でしたので、平均値としてEV11(ISO100)で撮影しています。
 このとき、木の幹の部分をピンポイントで測光するのではなく、林全体をカバーするように少し広い範囲を測光することが必要になります。

 また、明るいところと暗いところの輝度差が5EV以上ある場合は、ハイライト部分、シャドー部分のどちらか、もしくは両方の階調は表現できなくなってしまいます。

ハイライト基準測光

 ハイライト基準測光は、被写体の中で階調を残しておきたい最も明るい部分を測光する方式です。前回の記事でも説明しましたが、反射光式露出計は色に関係なく、中庸濃度に写るように測光しますので、測光値のままで撮影すると明るい白色などもニュートラルグレーになってしまいます。
 まず、最も明るい(ハイライト)部分を測光し、得られたEVの値をラチチュードのハイライト限界値までシフトします。上で説明したように、リバーサルフィルムのラチチュードのい白レベル側限界値は基準EVの値から+2・1/3ですから、例えば測光値がEV12(ISO100)の場合、シフトすることでEV9・2/3(ISO100)にするということになります。

 次に、被写体の最も暗い(シャドー)部分のを測光し、この値が白レベルの限界値から-5EVの範囲に収まっていれば、黒くつぶれることなく階調が表現できます。
 もし、シャドー部分が-5EVの範囲に収まっていない場合は黒くつぶれてしまいますので、黒の階調はあきらめるとか、ハイライト側の階調を若干犠牲にしてハイライト限界値を超えるところまでシフトするとか、被写体のコントラストが下がる光線状態になるのを待つとか、といった選択が必要になります。

 下の写真はハイライト基準で測光して撮影した例です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 1/4 PROVIA100F

 画像の下半分近くを占めている水の流れの部分が最も明るいわけですが、この波模様が白く飛んでしまわないギリギリのところを基準にしています。このハイライト部分の測光値は EV14.5(ISO100) でしたが、このままで撮影すると、全体に露出アンダーの写真になってしまいます。
 そこで、ハイライト部分の測光値をハイライト限界値までシフトし、EV12(ISO100)として露出設定しています。
 階調が残るギリギリまで白く(明るく)するのではなく、もう少し抑えたいというような場合は1/3EVとか2/3EV分、EVの値を大きくします。

 また、川の流れの明るい部分に比べて岩や林の部分の輝度は4EV以上低いので、岩や林は肉眼で見た以上に暗い感じになっています。しかし、岩に生えているコケや草などの緑の部分の反射率がニュートラルグレーに近いからということでここを測光すると、川の流れは真っ白に飛んでしまい、全体として重厚感に欠けた薄っぺらな感じの写真になってしまいます。

 なお、ハイライト基準として測光する箇所は、写真を構成するうえで階調を残しておきたい部分であり、例えば画面内に光源のように非常に明るい部分があっても、そこは白く飛んで構わないような場合は測光対象から外さなければなりません。

シャドー基準測光

 シャドー基準測光はハイライト基準測光の逆と考えても良く、被写体の中で階調を表現したい最も暗い部分を測光する方式です。
 最も暗い(シャドー)部分を測光し、得られたEVの値をラチチュードのシャドー限界値までシフトします。上で示した図の通り、シャドー限界値は基準EVの値からから-2・2/3ですので、測光値がEV9(ISO100)だとすると、EV11・2/3(ISO100)にすることになります。
 次に、被写体の最も明るい(ハイライト)部分を測光し、この値が黒レベルの限界値から+5EVの範囲に収まっていれば、白飛びすることなく階調が表現できます。

 シャドー基準測光で撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR6x7 105mm 1:2.4 F22 1/2 PROVIA100F

 山の稜線から朝日が昇ってくるので空はかなり明るくなり、その影響で下半分は真っ黒につぶれてしまいます。手前のなだらかな稜線と山肌が認識でき、かつ、明るくなりすぎないギリギリまで露出を詰めるため、手前側の稜線あたりをスポット測光した値がEV7.5(ISO100)で、黒レベル限界値までシフト(-2・2/3)して、EV10(ISO100)として露出値を決めています。
 このとき、朝日が昇る稜線の上側の空の部分は+5EVほども明るい状態です。
 また、階調が消える手前ギリギリまで黒く(暗く)するのではなく、もう少し明るめにしたいというような場合は、1/3EVとか2/3EV分、EVの値を小さくします。

 この状況も、肉眼ではもっとずっと明るく見えるのですが、明るくし過ぎると朝焼けの空の色や朝日の質感が損なわれてしまいます。このシチュエーションにおいて、日の出の瞬間の雰囲気を出すにはこれくらい露出を切り詰めた方が良いと思います。

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 適正露出という言葉がありますが、「適正」というのは厳格な基準があるわけではありません。露出計は測光するために照度や輝度の基準を決めていますが、その値によってどのような露出設定をするかは撮る側の判断です。どういうイメージの写真に仕上げるかは撮る側の主観の問題です。
 目の前の風景を自分の感性に沿った写真にするため、露出計は非常に効果的なツールであると思います。露出というのはなかなか奥が深いですが、思い通りの写真が撮れた時はやはり嬉しいものです。

(2021年9月19日)

#露出 #EV値

写真撮影における測光と露出設定(2) Ev表の使い方と測光方式

 前回は、露出を決める5つの要素について説明しましたが、今回は、実際に撮影におけるそれぞれの値の使い方や、露出計を用いた測光方式について進めたいと思います。

Evダイヤグラム(Ev表)

 露出を決める5つの要素(絞り値、露出時間、ISO感度、照度、輝度)は、APEXが定めた方式によってAv、Tv、Iv、Bv、Svという単純化された数値に置き換えられ、それぞれの間には3つの関係式が成り立つということを説明しました。

  Ev = Av + Tv …… 式(1)
  Ev = Iv + Sv …… 式(2)
  Ev = Bv + Sv …… 式(3)

 写真撮影するうえでなじみの深い「Ev」はこれらの要素から相対的に求まる値です。そしてこれは、下のような「Evダイヤグラム」という表で表すことができます。

 上の表で、横軸はTv、Iv、Bvの値を表しています(下から4行目)。そして、その下の3行はそれぞれの値に対応する露出時間、照度、輝度になります。
 縦軸はAv、Svの値を表しており(左から3列目)、その左側の2列はAvに対応した絞り値、Svに対応したISO感度になります。

 表の中の数値はEvの値を示しており、横軸(Tv、Iv、Bv)と縦軸(Av、Sv)の交点はそれぞれの値を加算した値であり、上の式(1)から(3)を表しています。

 例えば、Ev=12となるためには、Av=5(F5.6)とTv=7(1/125秒)のほかに、この表に表されているだけでも12通りの組み合わせがあることがわかります。
 また、同様にEv=12となるために、Sv=5(ISO100)とIv=7(照度800[fc])の組合せのほかに、やはりこの表内だけで12通りあることがわかります。

 露出計によって照度、または輝度を測定することでIv、またはBvの値が決まりますので、ここに使用するフィルムや撮像素子のISO感度に相当するSvの値を加えるとEv(露出値)がわかります。
 そして、そのEvの値をAvとTvに分解すると、絞り値と露出時間(シャッター速度)が求まります。

照度の値と実際の明るさ

 絞り値や露出時間(シャッター速度)、ISO感度はカメラで設定したり、フィルムによって決まる値なのでわかり易いですが、照度が〇〇フィートカンデラとか、輝度が〇〇フィートルーメンとか言われても非常にわかりにくいです。この2つに関しては数値で覚えるよりは、Iv=5はこれくらいの明るさ、Bv=6はこれくらいの明るさというように、感覚的に覚えた方が現実的です。

 そこで、照度に関してIvの値と実際の明るさの関係をいくつか挙げてみます。

  Iv=0    夜の街灯の下
  Iv=1~2  室内
  Iv=3~4  オフィス内
  Iv=4~5  曇天の屋外
  Iv=5~6  晴天時の窓際
  Iv=8~9  晴天の屋外
  Iv=10~11 晴天の海辺やゲレンデ

 といった感じです。
 「曇天の屋外」と言っても雲の厚さや太陽の位置などによって明るさは変化しますので、おおよそこれくらいの範囲というあいまいさを残した表現になってしまいますが、仕方ありません。

 実際には露出計で測定するので、これらの関係を覚えても意味がないと思えるかもしれませんが、これくらいの明るさならIvの値はいくつくらい、ということが感覚的にわかっていると、測光しなくても絞りやシャッター速度の値がある程度わかるので、写真の仕上がり具合がイメージできます。

 因みに、フィルムの場合はISO100の感度のものを使うことが多いので、その場合はIvの値に5を加算するとEvの値になります。また、ISO400のフィルムの場合は、Ivの値に7を加算します。

入射光式露出計を用いての測光

 露出計には「入射光式露出計」と「反射光式露出計」があるということを前回も触れましたが、それぞれの測光方式と特徴について説明していきます。

 まず、「入射光式露出計」です。
 この露出計は、被写体にあたっている光、すなわち照度を測定します。いろいろな形状のものがありますが、外観上の特徴は白い半球状のカバーが見られることです。
 この半球状のカバーをカメラの方に向けて、被写体の前にかざして測光します。

▲入射光式露出計

 測定する前に、使用するフィルム(または撮像素子)のISO感度を設定しておきます。その状態で測定ボタンを押すと、測定した照度のIvの値と、設定されているISO感度のSvの値から、Evの値が表示されるというのが一般的な動作です。Evの値を針で示すアナログ式や、数値で表示されるデジタル式などがあります。

 実際に入射光式露出計で測光して撮影したのが下の写真です。
 わかり易いように色の異なる6色(白、黄、緑、赤、青、黒)のスケッチブック(黒だけはスケッチブックがなかったので、単なる厚紙です)を並べて、薄曇りの窓際の自然光で撮影しました。

▲入射光式露出計で測光して撮影 Ev=9 (ISO100)

 この時の入射光式露出計で測定した照度はIv=4でした。感度はISO100(Sv=5)にしていますので、Ev=9ということになります。
 この写真でもわかるように、赤、または青がニュートラルグレーに近いと思われ、紙の質感も良く出ています。一方、白や黄色は露出オーバー気味ですが、全体としては肉眼で見た感じに近いのではないかと思います。

 このように、入射光式露出計は被写体に入射する光の量(照度)を測定し、ニュートラルグレー(反射率18%)が中庸濃度に写るような値を返してきます。したがって、入射光式露出計で測定した値で撮影すると、ニュートラルグレーよりも反射率の高いものは白っぽく、反射率の低いものは黒っぽく写ることになります。すなわち、被写体の色によって測定した値が変わることはありません。
 反面、露出計を被写体の前にもっていかなければならないので、風景撮影などのように被写体がはるか遠方にある場合、そこまで出向いて測光するということは現実的ではありません。

反射光式露出計を用いての測光

 次に、「反射光式露出計」です。
 この露出計は、被写体に当たった光が反射することで、見かけ上の被写体の明るさ、つまり被写体の輝度を測定します。外観上の特徴は接眼部があることです。ここから被写体を覗き見て、被写体の輝度を測定します。受光角1度という非常に狭い範囲を測定するもの(スポット露出計と呼ばれることが多い)から、30度くらいの比較的広い範囲を測定するものまで、いろいろあります。

 下の写真はペンタックスのデジタルスポットメーターという受光角1度の反射光式露出計です。

▲反射光式露出計 PENTAXデジタルスポットメーター

 測定する前にISO感度を設定しておくのは入射光式と同じです。
 受光部を被写体の測定したい部分に向けて測定ボタンを押すと、測定した輝度のBvの値と、設定されているISO感度のSvの値から、露出値であるEvの値が返されます。

 では、入射光式と同じように6色の被写体を反射光式露出計で測定し、撮影してみます。
 被写体の輝度は色によって異なりますので、6色のそれぞれの色の部分を測定し、その結果の値で撮影したのが下の6枚の写真です。上から順番に、白、黄、緑、赤、青、黒を測定して撮影したものです。

▲反射光式露出計で測光して撮影 「白」を測光 Ev=11・2/3 (ISO100)
▲反射光式露出計で測光して撮影 「黄」を測光  Ev=10・2/3 (ISO100)
▲反射光式露出計で測光して撮影 「緑」を測光  Ev=9・2/3 (ISO100)
▲反射光式露出計で測光して撮影 「赤」を測光 Ev=9・1/3 (ISO100)
▲反射光式露出計で測光して撮影 「青」を測光 Ev=9 (ISO100)
▲反射光式露出計で測光して撮影 「黒」を測光  Ev=8 (ISO100)

 光の状態(照度)は同じですが、被写体の色によって写真の仕上がり具合がまったく違うのがわかると思います。
 反射光式露出計は、被写体の色に関係なく、すべてがニュートラルグレーと仮定して、それが中庸濃度に写るような値を返してきます。したがって、露出計の測光結果通りに撮影すると、白や黄色のように明るい色は暗めに、黒のように暗い色は明るめに写ります。

 わかり易くするために上の6枚の写真から色情報を抜いて、グレースケールに変換してみます。

▲反射光式露出計で測光して撮影 「白(左端)」を測光
▲反射光式露出計で測光して撮影 「黄(左から2番目)」を測光
▲反射光式露出計で測光して撮影 「緑(左から3番目)」を測光
▲反射光式露出計で測光して撮影 「赤(右から3番目)」を測光
▲反射光式露出計で測光して撮影 「青(右から2番目)」を測光
▲反射光式露出計で測光して撮影 「黒(右端)」を測光

 白を測定した1枚目の写真は全体的に露出アンダー気味に、黒を測定した6枚目の写真は露出オーバー気味になっていますが、それぞれ測定した色のところを見ると、ばらつきはありますが、ほぼ同じようなグレーになっているのがわかると思います。

 それぞれの写真の下に記載した実際の測定データを見ていただけるとわかりますが、白のEvの値は11・2/3、黒のEvの値は8ですので、曇天という比較的柔らかい光の条件下であっても、 4段近くの露出の差があります。コントラストが強い場合はもっと大きな差が出てしまいます。

 このように、反射光式露出計は被写体のごく一部を測光することができますが、同じ光の状態であっても被写体の色によって測定結果が異なりますので、色と輝度の関係をある程度把握しておく必要があります。

被写体の輝度の値と実際の明るさ

 照度と同じように輝度も「〇〇フィートルーメン」とか言われてもピンときません。
 そこで、被写体の輝度を示すBvの値と、実際の被写体の見た目の明るさの関係について、主なものを挙げてみます。

  Bv=1~2  雨が降り出しそうな曇天下の木々の葉
  Bv=4~5  曇天下のクリーム色の家の外壁
  Bv=5~6  曇天下の黒っぽい瓦屋根
  Bv=5~6  晴天下、日陰になっている木々の葉
  Bv=6~7  晴天下の赤いチューリップ
  Bv=7~8  晴天下、日が当たっている木々の葉
  Bv=9~10  青空
  Bv=10~11 曇天の空(雲)

 これらの値にISO感度のSvの値(ISO100だとSv=5)を加算すると、露出値であるEvになります。

 一般には草や木々の葉の緑、あるいは人の肌などがニュートラルグレーに近いと言われています(上の写真では緑がかなり明るめですが、このスケッチブックの色は黄緑に近いので、草や木々の葉よりもだいぶ明るいです)。ニュートラルグレーの反射板を持ち歩いていれば基準がわかり易いですが、それも面倒なので、ニュートラルグレーに近い自分の手のひらなどを基準にする人もいます。

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 実際の被写体というのは色や光の状態によって見た目の明るさにずいぶんと差があります。写真というのは、すべてが中庸濃度になるように写せば良いというものでもなく、撮影する人の意図によって露出をコントロールするということになります。
 デジカメの場合は露出値を変えて何枚も撮影し、モニタで確認することで自分の感覚に合ったものを選ぶことができます。しかし、ピンポイントでここの色を出したいとか、この部分は飛ばないようにぎりぎりまで明るくしたいとか、そういった場合はスポット露出計があると思い通りの露出設定ができます。

 次回は具体的な事例を交えてご紹介したいと思います。

(2021年9月11日)

#露出 #EV値

写真撮影における測光と露出設定(1) 露出を決める要素

 最近のカメラは自動露出計が内蔵されており、様々なシチュエーションに合わせた適正露出を自動で決定してくれますが、大判カメラなど、露出計が内蔵されていない場合は露出計を使って測光するなどして露出値を決める必要があります。経験を積むことである程度の露出は露出計がなくても決めることができるようになりますが、精度を高めるためには露出計が必要になります。
 写真撮影において露出の設定はとても重要な要素ですが、そもそも測光とはどういうことなのか、そして、測光した結果を露出設定にどのように反映するのか、というようなことを説明していきたいと思います。

光の表現の仕方と単位

 まず、測光や露出設定に最低限必要な光の定量的な表現の仕方(とらえ方)について触れておきたいと思います。
 写真というのは、光源から発せられた光が被写体に当たり、被写体面で反射した光がカメラ(撮像面)に入射することで像が記録されるわけです。

 光源(太陽とか電球など)から発せられる単位時間当たりの光の量を「光束」といい、単位は「ルーメン[lm]」で表します。そして、ある方向への光の強さを「光度」といい、単位は「カンデラ[cd]」です。
 そして、この光が被写体に入射するわけですが、被写体の単位面積あたりに入射する光束を「照度」といい、記号は「I」、単位は「ルーメン毎平方メートル[lm/m²]」、または「ルーメン毎平方フィート[lm/ft²]」で表されます。

  【照度】
    定義:単位面積あたりに入射する光束
    記号:I
    単位:[lm/m²]、または[lm/ft²]

 また、1[ft²]あたりの光束[lm]を、1[fc](フィートカンデラ)という単位で表すこともあります。
 すなわち、1[fc] = 1[lm/ft²]になります。

 光度が1[cd]の点光源から1[sr]内に放射される光束が1[lm]となります。
 (ステラジアン[sr]とは、半径rの球体の表面を、表面積がr²となる円で切り取ったときの錐面と球の中心との立体角になります。球の表面積は4πr²ですので、光度1[cd]の光源が全方向に放射する光束は4π[lm]となります。)

 照度Iが入射した被写体面は反射率ρの反射面となり、観測者(カメラ)からは見かけ上の単位面積当たりの明るさとして認識されます。これを「輝度」といい、記号は「B」、単位は「カンデラ毎平方メートル[cd/m²]」、または「カンデラ毎平方フィート[cd/ft²]」で表されます。
 これは、反射面によって照度が輝度に変換されたことを意味し、反射面は照度を受けて光る二次光源と言えます。

  【輝度】
    定義:見かけ上の単位面積あたりの明るさ
    記号:B
    単位:[cd/m²]、または[cd/ft²]

 また、[fL](フィートランバート)という単位が用いられることがあり、1[fL] = 1/π[cd/ft²]になります。

 写真撮影における測光とは、この「照度」、または「輝度」を測定することをいいます。

露出を決める要素とその関係

 実際に測光した照度、または輝度をもとに露出値を決めることになるわけですが、その要素は照度、輝度を含めて5つあります。

  (1)絞り値(F値)
  (2)露出時間(シャッター速度)
  (3)被写体の照度
  (4)被写体の輝度
  (5)感材の感度(ISO感度)

 照度と輝度は必ずしも両方必要ではなく、どちらか一方だけで露出値を決めることができます。

 この5要素の関係は、被写体の照度もしくは輝度と、感材の感度から露出量が決定され、それを絞り値と露出時間の組合せに換算するということになります。
 そして、これらを簡易に計算するため、APEXシステムという方法(仕組み)によってそれぞれの要素が以下のような数値に置き換えられています。

  絞り値  –> Av
  露出時間 –> Tv
  照度   –> Iv
  輝度   –> Bv
  感度   –> Sv

 これらの値から導き出される露出値はEvで表されます。

  露出値  –> Ev

 これによって、これらの数値の関係は以下のような非常に簡単な式によって表すことができます。

  Ev = Av + Tv …… 式(1)
  Ev = Iv + Sv …… 式(2)
  Ev = Bv + Sv …… 式(3)

 では、これらの数値について、順番に説明していきます。

絞り値(F値)とAvの関係

 絞り値というのはF5.6とかF8とか、カメラを扱う方であれば非常になじみの深い数値ですが、この値はレンズの焦点距離と有効径によって決まり、以下のような関係式が成り立っています。

  F値 = 焦点距離/有効径 …… 式(4)

 例えば、焦点距離50mm、有効径25mmのレンズの場合、F値は2になります。
 F2から1段絞るとF2.8、さらに1段絞るとF4となり、1段絞るとF値は√2倍(約1.4倍)になっていきます。

 しかし、これだと計算がしにくいので、1段絞ったら1だけ上がる数値に置き換えたのが「Av」です。
 F値をAとすると、AとAvは以下のような関係になります。

  Av = 2log₂ A …… 式(5)

 この式にF値(A)をあてはめると、以下のようになります。

   <F値>  <Av> 
   0.7   -1
   1    0
   1.4   1
   2    2
   2.8   3
   4    4
   5.6   5
   8    6
   11    7

 Avとは、絞りF1.0をAv=0として、絞りの段数を表していると言い換えることができます。Avの値が1増えると露出量は1/2倍(半分)になります。
 F1.4とF5.6を例にとると、それぞれのAvは1と5ですから、その差となる4がF1.4からF5.6までの段数ということになります。そして露出量は1/2 ^ 4 = 1/16となります。

 逆に、AvからF値を求める場合は、下の式になります。

  F値 = √2 ^ Av …… 式(6)

露出時間(シャッター速度)とTvの関係

 次に露出時間についてですが、露出時間をTとすると、TとTvの間は下のような関係になっています。

  Tv = -log₂ T …… 式(7)

 この式にあてはめると、露出時間1秒をTv=0とし、露出時間が半分(シャッター速度が2倍)になるとTvの値が1増え、露出時間が2倍(シャッター速度が半分)になるとTvの値が1減ることがわかります。

  <露出時間[s]> <tv>
    2     -1
    1      0
    1/2     1
    1/4     2
    1/8     3
    1/15    4
    1/30    5
    1/60    6
    1/125    7

 Avと同様に、Tvは露出時間(シャッター速度)の段数を表していることになります。Tvの値が1増えると露出時間は1/2倍(半分)になります。
 Tvを求める式でlogの逆数をとっているのは、露出時間が小さく(短く)なるほど、Tvの値を大きくする必要があるからです。

 また、下の式により、Tvから露出時間(T)を求めることができます。

  T = 1 / (2^Tv) …… 式(8)

AvとTvの関係

 絞りを1段絞ったら露出時間を2倍にすれば同じ露出が得られるというのは経験則で理解していると思いますが、これを式で表したのが式(1)です。

  Ev = Av + Tv …… 式(1)

 例えば、絞り値F2.8(Av=3)、露出時間1/60秒(Tv=6)の時と、 絞り値F5.6(Av=5)、露出時間1/15秒(Tv=4)の時はいずれも Evの値が9になるので、同じ露出値であることがわかります。
 つまり、AvとTvを足して9になる組合せのすべてが同じ露出値になる、ということを表した式であることがわかると思います。

 このように、絞り値と露出時間をそれぞれAv、Tvという値で表すことで、露出値の扱い(計算)が簡単になります。見慣れたEvの値がこのような構造になっていることも理解いただけるのではないかと思います。

被写体の照度とIvの関係

 露出値を決める5つの要素のうち、実際に測光対象となるのが被写体の照度、もしくは輝度ですが、まずは照度についてです。
 APEXの定義にあてはめると、被写体の照度IとIvには以下の関係式が成り立ちます。

  Iv = log₂(2^4/100)・I = log₂(I/6.25) …… 式(9)

 APEXの定義では、照度の単位に[fc](フィートカンデラ)が用いられているようです。6.25[fc]をIv=0としていますが、なぜこの値が用いられたのか、その理由は良くわかりません。下の表でわかるように、照度[fc]の値が切れの良い数字になるということで決められたのかもしれません(例えば、100[fc]をIv4にしたとか)。

 上の式に照度IとIvをあてはめると以下のようになります。

  <照度[fc]> <Iv> 
   3.125   -1
   6.25   0
   12.5   1
   25    2
   50    3
   100    4
   200    5
   400    6
   800    7

 照度が2倍になるとIvの値が1増え、照度が1/2倍(半分)になるとIvの値が1減るのはAvやTvと同様です。

 ちなみに、Iv=0のときの照度6.25[fc]を、なじみのある単位[lx](ルクス)に置き換えると約67ルクスになります(1[fc]=10.764[lx])。これは、夜の街灯下に近い感じです。蛍光灯照明されたオフィス内は6~700ルクスと言われていますので、かなり暗いことがわかると思います。

 一般に、照度は「入射光式露出計」で測光します。被写体に当たる光の量を測定するので被写体の色などの影響は受けませんが、被写体のある場所で測定しなければならず、風景などのように被写体が遠方にある場合は測定が困難です。

被写体の輝度とBvの関係

 輝度は[fL](フィートランバート)という単位を用いています(1[fL] = 1/π[cd/ft²])。
 被写体の輝度BとBvをAPEXの定義にあてはめると、以下のようになります。

  Bv = log₂B …… 式(10)

 これは、輝度1[fL]がBv=0となります。

 上の式に輝度BとBvをあてはめると以下のようになります。

  <輝度[fL]> <Bv> <輝度[cd/ft²]>
   0.5    -1   0.16
   1     0   0.32
   2     1   0.64
   4     2   1.27
   8     3   2.55
   16     4   5.09
   32     5   10.2
   64     6   20.4
   128    7   40.7

 輝度が2倍になるとBvの値が1増え、輝度が半分になるとBvの値が1減るのは他の要素と同様です。

 さて、照度Iで照らされた被写体の見かけ上の明るさを輝度というのは上で説明しましたが、光源が理想的な均等拡散反射面を照らしているとき、照度と輝度の間には以下のような関係が成り立ちます。

  輝度B = (反射率ρ/π)・照度I …… 式(11)

 この式に照度[fc]と輝度[cd/ft²]をあてはめると、反射率ρは16%となります。
 例えば、上の表から、Iv=4の照度は100[fc]、Bv=4の輝度は5.09[cd/ft²]ですので、これらの値を、上の式をもとに反射率を求めるように変形した式にあてはめてみます。

  反射率ρ = 輝度B/照度I× π
       = 5.09 / 100 x 3.14
       = 0.16

 一般に被写体の反射率は18%(ニュートラルグレー)という値が採用されていますが、この定義式からするとAPEXでは16%としているようです。その理由は定かではありませんが、16%とすることで輝度[fL]の値が切れの良い数字(1、2、4、8…)になるからではないかと勝手に思ってます。

 因みに、一般に使われる反射率18%という値は、白と黒の中間の反射率だという理由で採用されているようです。
 かなり反射率が低い黒色でも3%ほどは反射され、また、かなり反射率の高い白色でも100%の反射はなく、96%程度といわれており、この値を3%を起点に反射率が2倍ごとの数列で表現すると、

  3 - 6 - 12 - 24 - 48 - 96

 となります。
 ここに、各数値の中間の値を追加すると以下のようになります。

  3 - 6 - 12 - 24 - 48 - 96
   4.5 - 9 - 18 - 36 - 72

 この数列でわかるように、18%がちょうど中間の値ということになります。

 なお、被写体の輝度は「反射光式露出計」で測光しますが、同じ照度であっても被写体の色や表面の状態などによって輝度は異なりますので、測光値も変わってきます。一方、風景など遠方の被写体でも測定できるというメリットがあります。

感材の感度(ISO感度)とSvの関係

 露出を決める要素の5番目は感材の感度です。
 一般に「ISO感度」と呼ばれており、ISO100とかISO200などと表現されています。絞り値やシャッター速度と同様にカメラ側(またはフィルム)で設定するものなので、なじみ深い数値です。

 感度SとSvをAPEXの定義にあてはめると以下のようになります。

  Sv = log₂(2^5/100)・S = log₂(S/3.125) …… 式(12)

 これは、ISO3.125をSv=0とし、ISO感度が2倍になるとSvの値が1増えます。

 上の式にISO感度SとSvをあてはめると以下のようになります。

   <ISO感度> <Sv>
    1.5625  -1 
    3.125   0
    6.25    1
    12.5    2
    25     3
    50     4
    100    5
    200    6
    400    7

 なじみの深いISO100はSv=5となります。

IvとSv、BvとSvの関係

 感材の感度(ISO感度)が高ければ多少暗くても写りますし、また、明るい場所であればISO感度が低くても問題ないわけですが、これを式で表したのが式(2)、および式(3)になります。

  Ev = Iv + Sv …… 式(2)
  Ev = Bv + Sv …… 式(3)

 例えば、輝度128[fl](Bv=7)の被写体をISO100の感度(Sv=5)で撮影する場合と、輝度32[fl](Bv=5)の被写体をISO400の感度(Sv=7)で撮影する場合、いずれもEvの値は12であり、同じ露出値になることを示しています。
 このように、被写体の照度、輝度、感材の感度をそれぞれ、Iv、Bv、Svという値で表すことで、露出値の計算が容易になります。

 なお、感材の感度をどのような基準で決めたのかはわからないのですが、例えば、輝度が1[fL](Bv=0)の被写体を、絞り値F1.0(Av=0)、露出時間1秒(Tv=0)で撮影した時、被写体が中庸濃度で写る感材の感度をISO3.125(Sv=0)としたのではないかと思います。式(1)から式(3)を成り立たせるためにはそうする必要があるように思います。

露出値の式が意味すること

 露出値Evを求める3つの式のうち、式(1)は絞り値と露出時間と露出値の関係を表していますが、Av、およびTvの値が大きくなるほど、入射する光の量は少なくなることを意味します。
 一方、式(2)、および式(3)は照度、輝度、感材の感度と露出値の関係を表していますが、Iv、Bv、およびSvの値が大きくなるほど、より多くの光の影響を受けることを意味しています。

 式(1)から式(3)は等価ですから、以下のようになります。

  Ev = Av+Tv = Iv+Sv = Bv+Sv

 すなわち、同じ露出値を得るためには、より多くの光の影響を受ける状態(Iv、Bv、Svが大きい)のときは入射する光の量を少なく(Av、Tvを大きく)するということを示しており、逆に、光の影響が少ない状態 (Iv、Bv、Svが小さい)のときは入射する光の量を多く(Av、Tvを小さく)するということを示しており、 3つの式が等価であることがわかると思います。
 写真撮影ではごく当たり前に行なわれていることですが、式で表すとこのようになります。

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 今回は露出を決める5つの要素とそれらの関係について説明をしましたが、次回以降はこれらの値の具体的な使い方や測光の仕方等について触れていきたいと思います。

(2021年9月4日)

#露出 #EV値

大判カメラによるマクロ撮影(1) 露出補正値を求める

 35mm判カメラや中判カメラ用のレンズには「マクロレンズ」というカテゴリーがあり、ほとんどのメーカーから複数本のレンズが出ています。大判カメラ用にも近接用レンズがありますが、種類は少ないです。大判カメラでは蛇腹を繰出すことで、すべてのレンズがマクロレンズとして使えるといっても過言ではありません。
 もちろん、35mm判カメラや中判カメラのレンズでもベローズや接写リングをかませることで近接撮影ができますが、遠距離にピントが合わなくなってしまいます。

レンズの最短撮影距離

 マクロレンズの定義は明確に決まっていないようですが、被写体に近づいて撮影でき、概ね、1/2倍以上の倍率で撮影できるレンズを一般的にはマクロレンズと呼んでいるようです。
 これに対して、マクロの名がついていない普通のレンズは被写体に極端に近づくことはできず、最短撮影距離はレンズの焦点距離の10倍くらいのものが多いのではないかと思います。焦点距離が50mmのレンズであれば50cm前後、100mmのレンズであれば1m前後といった感じです。当然、撮影倍率も自ずと限界があります。

 一方、大判カメラはレンズの種類に関係なく、蛇腹の許す範囲までレンズを繰出すことができます。

  

 何故、一般のレンズが焦点距離の10倍くらいを最短撮影距離にしているかというと、多分、画質の低下が顕著にならない距離であることと、それくらいの距離までは露出補正をしなくても影響がないことが理由かと思われます。
 カメラのレンズは無限遠にピントを合わせた時がレンズと撮像面の距離が最短になり、より近くの被写体にピントを合わせるためにはレンズを繰出す必要があります。その結果、レンズと撮像面の距離が長くなり、撮像面に入る光の量が減少してしまうため、露出を多めにしなければならなくなります(下図を参照)。

 上の図のように、レンズと撮像面の距離が長くなればなるほど撮像面に入る光の量が減少するのがわかります。例えば、レンズと撮像面の距離が2倍になるとレンズからの光が描く円の直径も2倍になるため、この円の面積は4倍になります。すなわち、撮像面に入る光の量が1/4に減少してしまうことになります。したがって、適正露出にするためには露出を4倍にする必要があります(絞りで2段開く、もしくはシャッター速度を2段分遅くする)。

撮影距離とレンズ繰出し量の計算

 近い被写体にピントを合わせる際、レンズをどれだけ繰出さなければならないかを計算で求めることができます。
 レンズから被写体までの距離をa、レンズから撮像面までの距離をb、レンズの焦点距離をfとしたとき、これらの間には下のような式が成り立ちます。

  1/a + 1/b = 1/f

 手元に「フジノンCM Wide 105mm 1:5.6」という大判カメラ用のレンズがありますので、このレンズで焦点距離の10倍にあたる1050mmに位置する被写体を撮影することを想定してみます。
 上の式に、被写体までの距離 a=1050mm、レンズの焦点距離 f=105mmを当てはめてレンズと撮像面の距離 bを計算すると、

  1/b = 1/f - 1/a
     = 1/105 - 1/1050
     = 9/1050
 
 よって、b = 116.7mm となります。
 すなわち、無限遠にピントを合わせた状態(105mm)から11.7mm、繰出すことになります。

 では、実際にレンズがどれくらい繰出されるかということで、フジノンCM Wide 105mmのレンズで実測してみました。
 無限遠にピントを合わせた時のシャッター位置から撮像面までの長さは104mmでした。ここから、焦点距離の10倍となる1050mm先の被写体にピントを合わせ、同じようにシャッター位置から撮像面までの長さを測ったところ、115mmでした。すなわち、レンズの繰出し量は11mmということです。
 上の計算式で求めた値と若干の差がありますが、実測値の測定精度はあまり高くないと思われますので、以後は理論値を使って話を進めます。

レンズを繰出すことによる露出補正値を求める

 しかしながら、たとえ11.7mmと言えどもレンズから撮像面までの距離が長くなれば、撮像面に入る光の量が減少するのは上の図からも明らかです。では、実際にどれくらいの影響があるのかを計算してみます。

 レンズを繰出すことによる露出補正量は下の式で求められます。レンズ繰出し量とは撮像面からレンズまでの距離をいいます。

  露出補正倍数 = (レンズ繰出し量/焦点距離)^2

 この式に、レンズ繰出し量の116.7mmとレンズ焦点距離の105mmをあてはめてみます。

  露出補正倍数 = (116.7/105) ^ 2
         = 1.235

 となり、レンズを無限遠の状態からさらに11.7mm繰出すことで、1.235倍の露出補正が必要ということになります。

 1.235倍という補正量を絞り値にあてはめると、√1.235 = 1.111 ですので、

  5.6 * 1.111 = 6.222 となります。

 よって、フジノンCM Wide 105mm 開放f値5.6のレンズが、116.7mmまで繰出されることで実効f値が6.2になるということを意味します。これは、絞りでおよそ1/4段に相当します。

 また、レンズの焦点距離、有効径、そして開放f値には以下の関係式が成り立ちます。

  開放f値 = 焦点距離/有効径

 この式にフジノンCM Wide 105mm の値をあてはめてレンズの有効径を求めると、

  有効径 = 105mm/5.6
      = 18.75mm となります。

 この有効径で116.7mmまで繰出した場合の実効f値は、

  実効f値 = 116.7mm/18.75mm
       = 6.22

 となり、上で計算した値とほぼ同じになり、実態が正しいことがわかります。

 これらのことから、1/4段程度であれば露出補正を必要としない許容範囲内という判断がされ、一般的なレンズの最短撮影距離が焦点距離の10倍前後になっているのではないかと思われます。
 1/4段を大きいとみるか小さいとみるかは意見の分かれるところかもしれませんが、一般的な一眼レフカメラなどに備わっている露出補正は1/2ステップ、もしくは1/3ステップであり、これに比べて50~75%の値ですから、許容範囲と言っても差し支えないのではないかと思います。

 最近のカメラではレンズから入ってきた光を測定して露出を決めているので、レンズの実効f値が暗くなったところで何ら気にすることはありませんが、大判カメラなどのように自動露出計が内蔵されていない場合はそういうわけにいきません。上の検証結果から分かるように、レンズの焦点距離の10倍より遠い距離にある被写体を撮影する場合は特に補正なしで問題ありませんが、それより近い被写体を撮影する場合は、実際のレンズの繰出し量を測定して露出補正値を計算しなければならず、面倒であることは間違いありません。

 繰り返しになりますが近接撮影をする場合は、レンズ繰出し量と焦点距離を下の式に当てはめて、露出補正量を計算します。

  露出補正倍数 = (レンズ繰出し量/焦点距離)^2

 実際にレンズ繰出し量によってどの程度の露出補正が必要になるか、焦点距離105mmのレンズについて計算して表にしてみました。レンズ繰出し量は、レンズから撮像面までの距離になります。

 大判カメラ用のレンズはどれもがマクロレンズとして使用できますが、露出補正というひと手間を加えなければならないということです。
 前置きが長くなってしまいましたが、次回は撮影倍率と実際の撮影について触れたいと思います。

(2021年1月31日)

#マクロ撮影 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika #露出

反射光式単体露出計:PENTAXデジタルスポットメーター

 私が使っているカメラは一部を除いて露出計が内蔵されていません。ですので、撮影の際には腰巾着のように単体露出計も連れていきます。そこで、日ごろ愛用しているPENTAXデジタルスポットメーターについてご紹介したいと思います。

デジタルスポットメーターとは

 スナップ撮影の時など、単体露出計を使わず目測だけで露出を決めて撮ることもありますが、風景撮影、特に大判カメラでの撮影時には必ず使用します。大体は目測でもわかりますが、フィルム代も現像代も高い大判で失敗するとダメージが大きいので、必ず単体露出計で確認をします。

 数台ある単体露出計の中でも最も出番の多いのが下の写真の「ペンタックス デジタルスポットメーター」です。

PENTAX DIGITAL SPOTMETER

 発売は1980年代の中頃らしく、かれこれ35年くらいは経っていることになります。もちろん、いまは製造されていません。ときどきネットオークションに出品されているのを見かけますが、程度の良いものは4万円近くの値がつけられています。
 露出計は測光方式によって大きく分けると入射光式と反射光式がありますが、この露出計は反射光式です。測光する範囲(受光角)は1度で、非常に狭い範囲の測光が可能です。受光角1度がどれくらいの範囲かというと、10m先にいる人の手のひらだけを測ることができるくらいの狭さです。35mm判カメラの2400mmくらいのレンズの画角になります。
 測光範囲はISO100でEV1~20、最小目盛りが1/3段ですので通常の撮影では全く問題ありません。

デジタルスポットメーターのファインダー内表示

 この露出計は機能が極めてシンプルで、基本的には被写体の輝度を測る輝度計といったところです。その輝度(Bv)をもとにISO感度に対応したEVの値が表示されるので、あとはダイヤルを回して絞りやシャッタースピードを求めるという、非常に単純な操作のみです。これのどこがデジタルなのかと思われるかもしれませんが、測光した値がファインダー内に数字(デジタル)で表示されるからだと思います。古き良きアナログ時代の匂いがする露出計です。

ファインダー内表示 (EV8+1/3 を意味します)
  中央の黒っぽい丸が受光角1度の測光範囲です

露出設定のための目盛りリング

 「測光(被写体の輝度)だけは責任をもって行なうから、あとは自分で決めてね。」と言わんばかりの潔さというかシンプルさが私はとても気に入っています。
 下の写真ではわかりにくいかも知れませんが、測光した値(EV)をオレンジ色の三角マークに合わせ、白で書かれたシャッター速度と青で書かれた絞りの組み合わせを読み取ると、露出値がわかるという仕組みです。

上からISO目盛り、シャッタースピード目盛り、絞り目盛り、EV目盛り

スポット露出計を使う理由

 風景撮影の場合、被写体が遠く離れたところにあることがほとんどですので、そこまで出向いて行って測光するというわけにはいきません。そのため、反射光式の露出計という選択になるわけですが、反射光式の中でもスポット露出計を使っている理由はそれだけではありません。フィルムに写し込まれる広い範囲の中には当然ですが明るいところも暗いところもあります。全体がなんとなく適正露出で写っているというのも大事ですが、ここだけはきちんと表現したいという場所があり、そこをピンポイントで測って、自分のイメージ通りの露出を決めるということができるのが最大の理由です。
 また、リバーサルフィルムを使用する場合、露出設定がシビアなので、明暗差が大きいと黒くつぶれたり白飛びしたりしてしてしまうことがありますが、それを把握できるのもスポット露出計ならではです。

 重さは250gほどで負担になるほどの重さではありません。もう一回り小さいとかさばらなくてありがたいとも思いますが、持った時に手になじむ感じと操作性は抜群で、これくらいの大きさが必要なのかも知れません。

 最近のカメラは露出計が内蔵されており、しかもいくつもの測光方式を使えるとあって、単体露出計の需要がガタ落ちです。それでもスタジオ撮影には使われることが多いのか、入射光式の単体露出計は複数のメーカーから何種類かの製品が出ていますが、反射光式の単体露出計は本当に少ないです。さらに、受光角が1度というような露出計は1~2機種といった状態ではないでしょうか。

 デジタルカメラを露出計の代わりに使うという方法もあり、全体の仕上がり具合を見るには便利ですが、1度というような狭い範囲の測光は難しく、なかなか単体露出計の代用というわけにはいきません。

 なお、単体露出計を使った測光法や露出設定について書き出すと長くなるので、別途、「How to」のページに掲載したいと思います。

(2020.11.24)

#露出 #ペンタックス #PENTAX