エプソン EPSON GT-X970 フィルムホルダー 純正品と自作品のスキャン比較

 前回、エプソンのフラットベッドスキャナ EPSON GT-X970 のフィルムホルダーの作成について書きましたが、自作のホルダーと純正品のホルダーを用いて実際にスキャンをしてみましたのでご紹介します。
 厳密な比較はできませんので、画像を目視して違いがあるかどうかというレベルです。

67判ブローニーフィルムのスキャン画像の比較

 今回の比較用に使用したのは、カラーリバーサルフィルム PROVIA 100Fで撮影した67判のポジ原版です。顕著な差は出ないであろうという予測から、出来るだけ全面にピントが来ているコマを選んでみました。ボケている(アウトフォーカス)部分が多いコマでは、そもそも比較することが難しいだろうというのが理由です。
 実際に使用したポジ原版がこちらです。ライトボックスに乗せて撮影しているので、画質も色も良くありませんが。

 2年ほど前に撮影したものですが、大判カメラに67判のロールフィルムホルダーを装着し、出来るだけ全面にピントが来るよう、アオリを使って撮影しています。
 まずはこのポジ原版を、エプソン純正のフィルムホルダーと自作のフィルムホルダーを使ってスキャンします。スキャン解像度は4,800dpiで、エプソンのスキャナソフトウェアに装備されているアンシャープマスクやホコリ除去、DIGITAL ICE 等の機能は一切使っていません。

 下の2枚が実際にスキャンした画像です。1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この画像では良くわからないと思いますが、エプソン純正ホルダーでスキャンした画像はごくわずか、左下がりに傾いています。フィルムをホルダーに入れる際も、ホルダーをスキャナに乗せる際も傾きには十分注意したつもりですが、エプソン純正のホルダーでフィルムの傾きをなくすのは結構難しいです。エプソンのソフトウェアにはフィルムの傾きを補正する機能もありますが、これもフィルムホルダーにフィルムが傾いて装着されてしまえばあまり意味をなさなくなります。

 一方、自作のホルダーですが、フィルムの傾きはほとんど認識できませんでした。

 次に画質の違いですが、このように全体を表示した画像ではその違いはまったく分かりません。もちろん、掲載の画像は解像度を落としてありますが、落とす前の画像同士を比較してもその違いはわかりません。ちなみに、4,800dpiでスキャンした画像は、約13,500×10,900でおよそ1億4,700万画素になります。

画像中央部分の画質の比較

 画像全体を見ても違いはわからないので、中央部分を拡大して比較してみます。
 画像中央あたりの落ち葉が積もっている部分を拡大したのが下の画像です。同じく、1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この2枚の画像も違いはほとんどわかりませんが、エプソン純正ホルダーを使用した方が、ハイライト部分の滲みがごくわずかに大きいように見えます。理由はよくわかりませんが、気になるほどの違いではありません。
 また、2枚の解像度の違いは感じられません。

画像周辺部分の画質の比較

 次に、画像周辺部の比較ということで、画像右下の落ち葉の辺りを拡大して比較してみます。
 同じく、1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この2枚はわずかに違いが感じられると思います。自作ホルダーの方が全体的に画像がシャープな印象を受けます。落ち葉の縁などを見ても、輪郭というかエッジがはっきりとしています。
 これはフィルムの平面性が保たれていることが理由ではないかと思います。
 エプソン純正ホルダーの方は若干の遊びを持たせているため、ホルダーにフィルムを装着しても完全に固定されず、わずかに動くことができる余裕があります。
 また、67判の1コマだけをホルダーに装着した場合、フィルムの4辺のうちの1辺はホルダーで押さえられていないため、どうしてもフィルムがわずかに湾曲してしまいます。
 これが原因で周辺部の画質が若干低下してしまうのではないかと思われます。

 一方、自作のホルダーはマグネットシートでフィルムの4辺を押さえていますので、目視をする限り、フィルムの湾曲はほとんど見受けられません。

使い勝手の比較

 今回作成したのは67判のフィルム1コマ用ですので、使い勝手についてエプソン純正ホルダーと単純比較をすることはできませんが、実際に使ってみると使用感の違いがあります。

 まず、フィルムの装着ですが、自作ホルダーの方が簡単で、しかも短時間で装着することができます。前の方でも書きましたが、とにかくフィルムの傾きを気にすることなく、フィルムガイドの間にフィルムを置くだけで済むので圧倒的に楽です。
 また、フィルム装着後にブロアでシュッシュッとやるのですが、エプソン純正ホルダーの方は強くやり過ぎるとフィルムが動いたり湾曲したりしてしまいますが、自作ホルダーの方はそのようなこともありません。

 次に、ホルダーをスキャナに設置する際、エプソン純正ホルダーの方はホルダーについているガイドピンをスキャナ本体の所定の位置に差し込むのですが、その状態でもホルダーがわずかにカタカタと動きます。つまり、これによってフィルムが傾いてしまうということです。
 自作ホルダーの方はまずスペーサーを置き、そこにホルダーをピッタリと密着させれば良く、ホルダーがカタカタと動くこともありません。これでフィルムの傾きはなくなるのでやはり簡単です。

 このように書くと自作ホルダーの方が優れているように感じられると思いますが、唯一、エプソン純正ホルダーにかなわないのはその汎用性です。
 エプソン純正ホルダーは様々なコマサイズやコマ数に対応していて、66判であれば同時に6コマ、67判や69判であれば同時に4コマまで装着することができます。この利便性は、ホルダーをいくつも用意しなくても良いとか、大量のフィルムをスキャンするときなどは効率を上げることができるとか、やはり優れものであることは間違いありません。

 利便性や効率性を重視するか、ごくわずかであっても画質を重視するかによって見解は分かれると思いますが、私はそれほど大量のフィルムをスキャンするわけではないので、比べて初めて分かる程度の違いではあっても画質の良い方を使いたいと思います。

 この自作ホルダーを使用してスキャンしたフィルムはまだ5~6枚ほどですが、十分に使用に耐えられるものだと思います。あとは耐久性の問題で、長年使っているとヘタってくる可能性もあり、いつまで耐えられるかということです。
 また、66判1コマ用や67判2コマ用のホルダーもおいおい作っていきたいと思っています。ホルダーが増えてしまうのは好ましいことではありませんが、私の場合、ブローニーは66判と67判があればほぼ事足りるので、とりあえず4個は用意したいということになります。

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 EPSON GT-X970 の後継機はGT-X980 という機種ですが、私はまだ実際に使ったことがありません。今使っているGT-X970が壊れたら購入しようと思っているのですが、GT-X980はフィルムの平面性を高めるため、アンチニュートンリングのアクリル板の上にフィルムを乗せ、これを押さえる構造になっているようです。確かにフィルムの平面性は保たれるのでしょうが、スキャンの際に余計なものは入れたくないというのが個人的な正直な気持ちです。
 実は、今回の自作ホルダーでもガラス製のネガキャリアを使おうかとも考えたのですが、思いの他、平面性が保たれているようなので、まずは良しとしておきます。ネガキャリアを使用したホルダーについては、別途機会があれば検討してみたいと思います。

(2023年9月15日)

#EPSON #GT_X970 #エプソン #フィルムホルダー #スキャナ

エプソン EPSON GT-X970 スキャナ用フィルムホルダーの作成

 フィルムで撮影した写真をパソコンに表示したりWebで使用するためにはデータ化が必要ですが、私はエプソンのGT-X970というフラットベッドスキャナを用いてデータ化を行なっています。この機種自体はかなり古いのですが、民生用の機器としてはまずまずの性能ではないかと思っています。
 しかし、フィルムホルダーが安っぽくて、しかもあまり使い易くないというのが最大の難点です。特にブローニーフィルム用のホルダーはフィルムが傾かないようにセットするのが結構難しく、フィルムを押さえる機構がしっかりしていないのでフィルムも湾曲してしまい、なかなか平らになってくれません。
 また、長年使っているのでフィルムガイド用のピンが欠損してしていたり、あちこちに損傷も見られます。

 そこで、ブローニーフィルム用のホルダーを自作してみました。
 フィルムの傾きを出来るだけ起きないようにすること、フィルムの平面性を極力保つこと、この2点を満足するホルダーを安価で簡単に作れることを条件として作ってみました。

ブローニーフィルム用ホルダーの概要

 エプソン純正のブローニー用フィルムホルダーはサイズの異なるフィルムに対応できるように、幅約60mm、長さ約200mmの窓が二つ開いています。66判なら3コマ、67判や69判なら2コマ続いたスリーブをセットすることができるので便利ですが、窓枠よりも短いフィルムを装填した場合、フィルムの1辺が押さえられていない状態になってしまうので、どうしてもフィルムが湾曲しがちです。
 自由度が大きく適用範囲が広いのはありがたいですが、それよりも精度を高めることを重要視し、今回はフィルムサイズごとに作ることにしました。
 私はブローニーフィルムでは67判を最も多用していて、しかもフィルムを1コマごとにカットした状態で保管しているので、まずは67判一コマを2枚セットできるホルダーをつくります。

 構造はいたってシンプルで、イメージはこんな感じです。

 ベースとなるアクリル板の上にマグネットシートを2枚重ねて、このマグネットシートの間にフィルムを挟むというものです。アクリル板とマグネットシートには67判の画像サイズよりも若干大きめの窓を開けておきます。
 2枚のマグネットシートのうち、下側のマグネットシートはアクリル板に接着しておきますが、上側のマグネットシートは一端だけを両面テープで固定し、上側にめくりあげられるようにします。

エプソンGT-X970用フィルムホルダーの制約事項

 GT-X970はA4の原稿をスキャンすることができるガラス面を持っていますが、フィルムをスキャンする場合、これらすべての範囲を使うことができないようです。実測してみたところ、概ね、以下のような制約事項があることがわかりました。

 ガラス面全体は226mmx305mmの大きさがあり、A4サイズよりも少し大きくなっています。
 しかし、フィルムをスキャンできる範囲は上の図の青い部分、約160mmx約220mmの範囲に限られます。「約」となっているのは正確に測ることができず、ほぼこれくらいということです。ガラス面の周辺の30~40mmくらいの範囲はスキャンできません。
 また、スキャナを正面から見た時、ガラス面のいちばん奥(図では上側)、約12mmの範囲、および手前(図では下側)、約7mmの範囲はホルダーがかからないようにする必要があります。ここに遮光物がかかるとスキャンが正しく行われません。たぶん、遮光物がない状態の光源の明るさを測定するためのエリアではないかと思われます。

 このため、フィルムホルダーの窓がスキャン可能な範囲(上図の青い部分)に入るようにする必要があります。

67判用フィルムホルダーのサイズ

 ということで、GT-X970で正常にスキャンすることができるホルダーの図面を引いてみました。

 ホルダーの縦を100mmにしたのは特に大きな理由があるわけではなく、100円ショップで購入したマグネットシートのサイズに合わせただけです。これが実におあつらえ向きで、ホルダーを2枚並べて使うことができる寸法でもあります。
 購入したマグネットシートの長辺は300mmあるのですが、上で書いたように、GT-X970にホルダー設置禁止エリアがあるため、これに合わせて15mmカットして285mmとしました。

 67判用の窓の大きさは58mmx71mmで、これは67判の実画面サイズより縦横それぞれ2mmずつ大きくしてあります。つまり、フィルムの実画面の周囲に1mmの余黒が見えるサイズとなります。
 2枚の窓枠の位置はGT-X970のスキャン可能範囲からはみ出さないようにすれば特に問題はありませんが、フィルムをしっかり押さえられるよう、フィルム間の長さは30mm以上は確保したほうが良いと思います。

 また、スキャナのガラス面からフィルム面までの高さはかなり重要で、この位置によって得られる画像の質がずいぶん異なります。
 私が使っているGT-X970は、ガラス面からフィルムの下面まで4.7mmというのが最も質の良い画像が得られることを実測済みなので、今回もこれに合わせます。この高さはスキャナによって個体差があるようで、実際に高さを変えてスキャンしてみて、最も良い状態の高さを確認しなければなりません。結構面倒くさいのですが、仕方ありません。

 今回使用するアクリル板の厚さは1.8mm、マグネットシートの厚さは0.8mmです。そのため、ホルダーの高さをかせぐために嵩上げが必要になりますが、これも1.8mm厚のアクリル板を使います。
 上の図でもわかるように、嵩上げ1.8mm、ホルダーベースが1.8mm、下側のマグネットシートが0.8mmなので、これで4.4mmになります。まだ0.3mm不足しているので、厚さ0.25mmのアルミ板を嵩上げの下側に貼ります。この状態で実測したところ、4.65mmから4.7mmの間にあることがわかりましたので、これで良しとします。アクリル板は有機溶剤で接着しますが、マグネットシートやアルミ板は両面テープを使っているので、その分の厚さが0.05mm弱あり、結果として4.7mmに近い値になったようです。

67判用フィルムホルダーの作成

 まず、フィルムホルダーのベースをアクリル板で作ります。100mmx285mmにカットしたアクリル板に、58mmx71mmの窓を2ヵ所に開けます。位置は前出の図面の通りです。

 窓枠を開けたアクリル板が下の写真です。

 このホルダーベースの裏側に嵩上げ用のアクリル板(板厚1.8mm)とアルミ板(板厚0.25mm)を貼りつけます。

 嵩上げの部分をわかり易くするために画像をいじっていますので変な色になっていますが、ベースの両端に幅10mmのアクリル板を張り付け、その上にアルミ板(白い箇所)を貼りつけています。アルミ板は薄いので、ハサミやカッターナイフで簡単に切ることができます。ハサミで切った場合は少し反ってしまうので、滑らかなヘラなどを使って平らにします。

 次に、マグネットシートに窓を開けます。ホルダーベースと同じサイズにカットし、やはり同じ位置に同じ大きさで窓を開けます。

 上側の黒色のマグネットシートがホルダーベースに貼り付ける側で、この上にフィルムを乗せるようにします。そして、下側の白いマグネットシートがフィルムを上から押さえるためのカバーです。

 黒い方のマグネットシートにフィルムを乗せるので、ここにフィルムガイドを取付けます。

 フィルムガイドを貼りつけた状態はこんな感じです。

 フィルムガイドの高さはフィルム上面と同じになるように、ブローニーフィルムを7mm幅に切って両面テープで貼りつけています。スキャンするためのフィルムが傾かないよう、このフィルムガイドがマグネットシートの長辺と平行になるように注意します。
 また、フィルムガイドとフィルムガイドの間はブローニーフィルムがピッタリ入るようにします。ガイド間がフィルムの幅よりも大きすぎるとフィルムが動いてしまい、平行が保てなくなりますのでやはり注意して行ないます。
 そして、このマグネットシートをホルダーベースの表面に貼り付けます。窓の位置がぴったり重なるように仮止めして、慎重に貼っていきます。今回購入した黒色のマグネットシートの片面には両面テープがついています。

 最後に、この上にフィルム押さえカバーとなるマグネットシートを貼るのですが、もちろん、全面を貼ってしまうわけではなく、一方の短辺側だけ、両面テープで固定します。この時も窓の位置がぴったり重なるようにします。
 なお、マグネットシートは極性の関係でピッタリと重ならない場合もありますので、その場合は極性が合った位置で重ねるようにします。

 下の写真が完成したホルダーです。いちばん上のフィルム押さえカバーをめくった状態を写しています。

 このホルダーに実際にフィルムを挟んでみるとこんな感じです。ライトボックスに乗せて撮影しています。

 フィルムの実画面の周囲に1mmほどの幅で余黒が見えると思いますが、これでフィルム全面をスキャンすることができます。
 フィルムをホルダーに挟んだ状態はかなり平面性が保たれていて、エプソン純正のホルダーのように湾曲することもありません。ホコリを飛ばすためにブロアで吹いても、フィルムの位置がずれるようなことはありません。

 さて、こうして完成したフィルムホルダーをGT-X970のガラス面に乗せるわけですが、この時、ホルダーの長辺とガラス面の右縁が平行になるようにしなければなりません。フィルムがGT-X970のスキャン可能範囲内に入るよう、ホルダーの位置を少し内側に寄せなければならないので、ホルダーが平行になるようにスペーサーを入れてホルダーの位置を決めています。

 上の写真で白いフィルムホルダーの右側にあるのがスペーサーです。幅20mmにカットした板で、これをスキャナのガラス面の右縁にピッタリと合わせ、ここにフィルムホルダーの右縁を密着させます。これでホルダーの平行が保たれるはずです。
 また、スキャナのガラス面の上端と下端にホルダーがかからないようにしなければなりません。これは、スキャナのガラス面の右縁のところに原稿サイズの目盛りが刻んであるので、その「A4」の目盛りのところにフィルムホルダーの端を合わせると、上端に約12mmのスペースができます。これで、ホルダー設置禁止領域にかかることはありません。

 ちなみに、今回のフィルムホルダー作成にかかった費用ですが、実際に購入したのはマグネットシート2枚(税込220円)だけです。アクリル板とアルミ板は家に転がっていたものを使ったので、これらの実費としては0円ですが、新たに購入してもアクリル板が500円ほど、アルミ板は200円ほどだと思います。

実際にフィルムをスキャンしてみて

 今回作成したフィルムホルダーで実際にスキャンしてみました。
 エプソンから提供されているソフトウェア「EPSON Scan」でも問題なく画像認識され、サムネール画像の作成も出来ました。
 もし、サムネール画像の認識ができない場合でも、通常表示にしてスキャンする範囲を指定する機能があるので、これを使えば問題なくスキャンすることが可能です。

 また、実際にスキャンした画像ですが、その画質には全く問題がないと思われます。詳細に比較したわけではありませんが、エプソン純正のフィルムホルダーよりも画質は良いように感じます。ガラス面からフィルム面までの高さが適切だったのと、フィルムの平面性が保たれているのも要因かも知れません。
 フィルムの傾きに関しても十分に満足のいくものだと思います。ホルダーに貼ったフィルムガイドの間にフィルムを入れて、そのホルダーをスペーサーに密着するように置くことで、スキャンした画像が傾くことはほとんどありませんでした。純正のホルダーを使えば傾き補正もできるのですが、そのような機能がなくても問題のない状態の画像を得ることができます。

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 今回作成したのは67判のフィルム1コマを2枚設置できるホルダーですが、同じやり方で67判が2コマ連続したスリーブ状態のフィルム用のホルダーも作成する予定です。窓の大きさが変わるだけで、その他の作り方は同じです。
 このサイズのホルダーであれば、スキャナのガラス面に2枚並べて置くことができ、一度に4枚のフィルムをスキャンすることができます。
 何種類ものフィルムサイズ(66判とか67判、69判など)を使う場合は、それに合わせてフィルムホルダーを何種類も用意しなければならないのは難点ですが、私の場合、主に67判なので、今回作成したものと2枚続きのスリーブ用があればほとんど対応可能です。

(2023年9月8日)

#EPSON #エプソン #フィルムホルダー #GT_X970 #スキャナ

500mlの現像液で4×5″シートフィルム4枚を処理する現像タンクの製作(1) 構想編

 以前、別のページでも書きましたが、私は4×5判のモノクロフィルムを自家現像する場合、主にパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。一度に最大で6枚のフィルムを処理することができるので便利ではありますが、使用する現像液の量も多いので、もう少し少ない量で処理できれば良いと常々思っていました。国内外の製品をいろいろ物色してみたところ、SP-445という製品があるようなのですがかなり高額なため、思い切って自作してみようと思い至りました。
 どのような現像タンクにするか、今回はその構想についてまとめてみました。

条件は、500mlの現像液で4×5″フィルム4枚を現像

 なぜ500mlかというと、それほど深い拘りがあるわけではないのですが、ブローニーフィルムの現像に使っている現像タンクに必要な現像液が500mlだからという程度のことです。500mlであれば作り置きした現像液を保管するにも場所をとらずに済みますし、ブローニーの現像液をそのまま4×5判にも使うことができるので便利です。
 また、時どきしかやらないのですが、モノクロフィルムのリバーサル現像に使う薬剤の中にはワンショットで作り置きのきかないものもあり、そういった点からも使う量は少ないに越したことはありません。

 しかし、現像液が500mlであっても、処理できるフィルムが1~2枚しかないというような状態ではあまり効率が良くないので、少ない現像液といえども一度に4枚くらいは処理できるようにしないとあまり意味がありません。何年か前に、パターソンのPTP115というブローニー用の現像タンクで2枚の4×5判フィルムを現像するためのホルダーを作ったことがありますが、これはあくまでも1枚とか2枚という現像をしなければならないという時のためであって、常用するためのものではありません。

筐体(タンク)を直方体にすることで内容積を削減

 現像液の量が最も少なくて済む方法は、たぶんバット(皿)に現像液を入れて処理する方法だと思われます。印画紙を現像するのと同じようなやり方です。
 ただし、この方法だと結構場所をとるし、暗室、もしくはかなり大型のダークボックスのようなものが必要になります。また、バットに複数枚のシートフィルムを入れることで、フィルム同士が重なってしまって現像ムラができないかという心配もあります。

 そこで、バットを立てたような形の現像タンク、すなわち、SP-445のような直方体の形状をした現像タンクにすれば液の量も少なくて済むだろうということで、あれこれと思案をしてみました。

 そうしてイメージしたのがこのような現像タンクです。

 現像タンク本体の上部に現像液の注入口、および排水口を設け、本体側面には水洗い時の排水口を設けます。そして 、本体内部にはシートフィルム用のホルダーを入れるという構造です。
 円筒形の現像タンクのようにフィルムを回転させる撹拌はできないので、倒立撹拌のみとなりますが、これはもう妥協するしかありません。もし、どうしても回転撹拌をしたいということであれば、現像タンク全体を回転させる治具を別途用意するしかありませんが、将来的に必要性を感じるようであれば、あらためて検討することとします。

 いま考えている現像タンクの内部構造(透視図)はこんな感じです。

 明るい場所で処理できることを前提としているため、注入口や排水口からの光が内部に入り込まないようにしなければなりません。
 本体上部にある注入口に注がれた現像液は、二つのすべり台を流れるようにして本体内部に入ります。向かい合わせに設置されたすべり台によって、注入口からの光の入り込みを防ごうという狙いです。

 また、本体側面の排水口からの光の入り込みを防ぐため、2枚の斜光板を設置しておきます。

 本体側面の排水口は水洗の時にしか使わない予定なので、キャップ(栓)をしておけば光が入ることもなく、斜光板はなくても良いと思ったのですが、リバーサル現像のときは第一現像や漂白の工程の後にも水洗いを行なうため、それを考慮して斜光板を設置することにしました。
 水洗の際は上部の注入口から水道水を流しっぱなしにすると、本体底部からの水が側面の排水口から流れ出ていくという想定で、水洗の効率を狙ったつもりです。

 そして、フィルムホルダーですが、下の図のようなものを考えています。

 フィルムの出し入れがやり易いように、ホルダーの側板にスリット(溝)をつけただけの簡単なものです。フィルムとフィルムの間隔は約5mmで、これだけの隙間があれば問題ないと思われますし、フィルムの裏表を気にする必要もありません。フィルムの間隔をもっと詰めれば、同じ寸法で6枚とか8枚も可能になると思いますが、工作が結構大変そうです。
 また、倒立撹拌によってフィルムやホルダー自体が動いてしまわないように、本体内に入れた後にホルダーを固定する押さえ板を設置する予定です。

 本体は上から1/3くらいの位置で上部と下部の二つの分離するようにする予定で、上部は蓋のような形で下部に被さるようにします。ここからの水漏れを防ぐため、ゴムパッキンのようなものが必要になるかも知れません。
 なお、フィルムを装填するときは暗室やダークバッグなどの中で行なう必要がありますが、中に入れた後は明所で処理できるのは他の現像タンクと同じです。

 さて、この現像タンクに必要な現像液の量ですが、4×5判フィルムを縦位置にした状態で、若干の余裕をもって現像液に浸る深さを140mmとして内容積を計算すると、504mlとなります。実際にはフィルムホルダーや斜光板なども浸ることになるので、たぶん、460mlくらいで足りるのではないかと思います。

 素材はすべてアクリル板で作ることを想定しています。そこそこの強度もありながら加工のし易さもあり、高度な工作機械がなくても比較的簡単に加工できますし、材料費も安く済むのが理由です。
 その他には注入口や排水口に取付けるブッシングのようなものと、それ用のキャップがあれば材料は事足りそうです。

排水をシミュレーション

 もう一つ、現像タンクの重要な機能として、排水がスムーズにできるかということがあります。出来るだけ短時間に排水でき、そして、内部に現像液が残らないようにしなければなりません。光が入り込まないように斜光板を何枚も設置しているため、これがスムーズな排水を妨げる可能性があります。

 そこで、うまく排水ができるかどうかを簡単な図で確認してみました。
 下の図は、現像タンクを正立させた状態から、注入口のある方向に徐々に回転させていったときに、内部の現像液がどのように動くかを簡単に示したものです。

 上の図でわかるように、正立状態から180度回転(図の⑤の状態)させた時点で、斜めに設置された斜光板(すべり台)のところにわずかに現像液が残ってしまうことになりそうです。
 この残った分を排出するためには、さらに45度ほど回転(図の⑥の状態)させたのち、135度くらいの位置(図の④の状態)まで戻す必要がありそうです。倒立すればすべて排水完了というのが望ましいのですが、余計にひと手間が必要になってしまい、このあたりは再検討の余地があるかも知れません。
 簡単なシミュレーションなので、実際にはこの通りにいくかどうかわかりません。正確な図面を描いたうえで再度、検討が必要になりそうです。

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 手作り感満載の現像タンクですが、この構想通りにいけば案外と使い物になるのではないかと楽観視しています。
 また、アクリル板やブッシングなど、すべて購入したとしても材料費は3,000円もかからないと思われますので、手間賃の方がはるかに高額になってしまいます。購入したほうが結果的には安く済むと思いますが、作る楽しみということで。
 作り始める前にはもっと正確な図面を起こさなければなりませんが、もうしばらくの間、練り直しも含めて構想を温め、頃合いを見計らって材料の調達を始めようと思っています。
 実際の製作についてはあらためてご紹介できればと思います。

(2023.2.21)

#現像タンク #大判フィルム #フィルムホルダー

大判カメラ とっても珍しくて、とっても恥ずかしい失敗のあれこれ

 大判カメラは構造も機能もシンプル、かつ、極めてアナログ的であり、撮影には手順を踏んでやらなければならないことがたくさんあります。そのため、ちょっとしたミスが失敗作を生んでしまうこともあるわけですが、以前、そんなミスや失敗について書いたことがあります。興味ある方は下のページをご覧ください。

  「大判カメラの撮影時における失敗のあれこれ」

 この時に書いた内容は比較的起こり易い失敗についてでしたが、今回は、「えっ、こんなことが起こるの!?」と思われるような失敗について書いてみたいと思います。
 いずれも私自身が実際に経験したことで、これまでに1度きりの経験という内容です。本来であれば恥ずかしくてお披露目できるような内容ではないのですが、こんなこともあるんだという参考になればと思います。

レンズキャップを外し忘れて撮影

 レンジファインダーカメラの場合、レンズキャップをつけたままであってもファインダーを覗けば向こうの景色がくっきりと見えるわけですから、レンズキャップを外し忘れて撮影なんていうことが起きても、「あ~、やっちまったな」というくらいで、そのこと自体はそれほど不思議なことだと思いません。
 しかし、大判カメラとなると話は違います。大判カメラは後部のフォーカシングスクリーンで構図決めやピント合わせを行なうので、そもそもレンズキャップをつけたままの状態で行なうことはできません。にもかかわらず、レンズキャップをつけたままで撮影、という不可解なことをしでかしてしまいました。

 とある東北地方の海岸で、夕日を撮影しようとしていた時にその事件は起きました。

 いつものように構図を決めたりピントを合わせたり、シャッターを切るための準備は滞りなく進んでいました。左手方向から形の良い雲がゆっくりと流れてきていたので、フレーミングの中に入ってくるまでしばらく待つことにしました。
 太陽高度は低くなってきているとはいえ真夏の太陽の光は強いので、レンズのシャッター膜にダメージがないよう、保護のためにレンズキャップを被せて待っていました。
 およそ5分後、お目当ての位置に雲が流れてきたのでシャッターを切りました。手応えのようなものを感じていたのを憶えています。

 撮影行から帰り、フィルムを現像に出してさらに数日後、現像の上がったフィルムを受け取りに行ったところ、「露光されていないフィルムがあったようです」という店員さん。「そんなはずは...」と思いながら袋から紙のフォルダーを取り出してみると、中から皆既日食の観測にも使えそうな真っ黒なフィルムが出てきました。

 何故こんなことになったのか、必死に撮影当時の記憶を巻き戻しながら、「あっ!」と思ったのがレンズキャップを外すのを忘れたまま撮影したことでした。
 もしかて、シャッターを切った後に感じた手応えのようなものはこれだったのかと、自分の感じた手応えとはなんと当てにならないものだと痛感しました。

空っぽのシートフィルムホルダーで撮影

 大判カメラで撮影に行く前には、シートフィルムホルダーにフィルムを1枚ずつ詰めておきます。フィルムホルダーは両面に1枚ずつのフィルムが入るので、一つのホルダーで2枚の撮影ができることになります。そうして、撮影目的や撮影期間などに応じて、必要と思われる数のフィルムホルダーを携行します。

 ある日、日帰りで紅葉の撮影に行きました。
 数日後、現像のあがったフィルムを受け取りに行くと、「フィルムが入っていないホルダーがあったようです」とのこと。フィルムホルダーの引き蓋を抜いてみると確かに中は空っぽです。しかも両面とも。

 大判カメラを使うほとんどの人がしているのと同じように、私もフィルムホルダーに番号を振っておき、撮影後はその番号と撮影データを記録しておきます。撮影メモを確認してみると、確かにその番号のホルダーで撮影したことになっています。なぜフィルムが入っていないのか、さっぱりわかりません。
 フィルムホルダーに振ってある番号はユニークにしてあるので、どの番号のホルダーを使っても問題はありません。ですが、私は必ず連番のホルダーを持ち出すようにしています。ばらばらの番号や飛び番で持ち出すことはありません。
 単にフィルムの装填忘れかとも思いましたが、だとしたら未装填のフィルムが残っていなければなりません。

 原因不明のまま忘れかけていた頃、新たにフィルムを装填しようとしたところ、引っかかってうまく入らないホルダーがありました。もしやと思い調べてみると、案の定、中には既にフィルムが入っていました。
 どこで取り違えたのかいまだに良くわからないのですが、たぶん、連番のホルダーの最初の一つを持たず、代わりにフィルムの入っていない連番のホルダーを持ち出してしまったようです。

 フィルムの入っていないホルダーで真剣に撮影していたのかと思うと、とても惨めな気持ちになります。逃した魚は大きい...という太公望と一緒かも知れません。

ロールフィルムホルダーの引き蓋の入れ忘れ

 大判カメラでの撮影といっても必ずしも大判フィルムだけを使うわけではありません。ロールフィルムホルダーにブローニー(120)フィルムを詰めて、それで撮影することもあります。
 ロールフィルムホルダーは67判や69判、パノラマの612判など、何種類ものサイズが用意されているので、撮影意図によってホルダーを変えるということができるのも便利なところです。

 こういった機材を使った場合の撮影手順などは人によって決まったやり方、その人なりの習慣のようなものがあるもので、私の場合、ロールフィルムホルダーの引き蓋は完全に引き抜いてしまわずに、アパーチャー(フィルム開口部)から外れたところで止めておくという使い方をします。

 ところが、過去に一度だけ、引き蓋を全部抜き取って撮影したことがありました。

 房総半島の海岸で4分とか5分という長時間露光撮影をしていた時です。
 たまたま風が強い日でしたので、途中まで抜いた状態の引き蓋が風にあおられてバタバタするため、全部引き抜いて三脚のストーンバッグに入れておきました。

 そして撮影後、その引き蓋を元に戻さずにロールフィルムホルダーをカメラから外してしまいました。
 その時はまったく気がつかず、次のコマを撮影しようとしてロールフィルムホルダーを手に取ったときのことです。いつもならアパーチャーのところはステンレス製の引き蓋があり、銀色に光っているのですが、その時は薄茶色のような鈍い色をしたフィルムがむき出しになっているではありませんか。なんか、とってもいけないものを見てしまったときのような後味の悪さです。

 現像後のポジを見て驚きました。むき出しにしてしまったコマがスケスケなのは当然ですが、その前後のコマの半分くらいまで光が回ってスケスケ状態になっていました。都合、3コマ分のフィルムを駄目にしてしまったということです。

NDフィルターをつけ忘れて撮影

 私は滝や渓谷、海など、水のある被写体を撮ることが多く、そのため、NDフィルターを使用する機会も多くなります。3段分の減光効果のあるND8を使うことが多いのですが、長時間露光をするためにND64とかND400を使うこともあります。
 NDフィルターをつけたままだとピント合わせができないので 、構図決めやピント合わせの際は外して行なうことになります。そして、ピント合わせ後にNDフィルターを装着して撮影という手順になります。

 このNDフィルターの装着を忘れるということは普通では考えられないのですが、ある時、測光して露出設定をした直後に光の具合が変わったので測光し直しました。そして、再度、絞りやシャッター速度を設定したことで、NDフィルターの装着をすっかり忘れてしまったことがあります。何ともお粗末な結果です。
 この時に使おうとしていたフィルターはND400という真っ黒なもので、約8.5段分の減光効果があります。ですので、このフィルターをつけ忘れた状態でシャッターを切ると、約8.5段分もの露出オーバーになってしまいます。

 NDフィルターの装着忘れに気がついたのは現像が上がってきた後です。ポジ原版はスケスケ状態でした。撮影直後に気がつけば現像に出すことはなく、フィルムを無駄にするだけで済んだのですが、現像代までも無駄にしてしまいました。

 同じようなことは中判カメラでも起こりうる可能性は考えられるのですが、中判カメラの場合、大判カメラほどやることが多くないので忘れることもないのだと思われます。
 それにしても、スケスケのポジを見た時の、心の中を冷たい風が吹き抜けていくような何とも言えない無力感は忘れられません。

ティルトロックのネジ締め不足でレンズが動いた

 大判カメラはアオリ機構がついてるため可動部分がたくさんあります。当然、それらの可動部にはロックするためのネジがついているのですが、これをしっかり締めておかないとあちこちが簡単に動いてしまいます。とはいえ、何らかの力がかからなければ、勝手に動くことはありません。

 木製の大判カメラを使って撮影していた時のことです。
 手前から奥までパンフォーカスにするため、フロント部をティルトダウンしてピント合わせを終え、フィルムホルダーを差し込み、4秒のシャッターを切った直後のことです。蛇腹がゆっくり伸びていくのが目に飛び込んできました。目を疑いましたが、もはやどうすることも出来ません。

 この時使っていたレンズはフジノンのW 250mm 1:6.3 というレンズです。このレンズ、かなり重いうえに重量バランスが前玉側に大きく偏っています。つまり、レンズボードのところを手で持つと、前玉側が異常に重く感じます。
 このレンズをカメラに取付け、フロントティルトのロックネジを緩めてティルトダウンすると、自身の重さでレンズが前に首を振ってしまいます。もちろん、ロックネジをしっかり締めればそんなことは防げるのですが、どうやらこの時はロックネジの締め方が足りなかったようです。

 1/125秒とか1/250秒という高速シャッターであれば救えたかもしれませんが、4秒の間、ゆっくりと首を振っていったとなると、流し撮りのような写真になってしまうことは容易に想像できます。
 ということで、この時のフィルムはボツになりました。

フィルムホルダーを取り外すときに引き蓋が抜けた

 大判カメラのフォーカシングスクリーンがついている部分はフィルムホルダーを押さえる機能も兼ねています。フィルムホルダーが簡単に動いたり外れたりしては困るので、かなり強いバネの力で押さえつけています。
 フィルムホルダーを装着するときも取り外すときも、このバック部の片側を持ち上げるようにして行ないます。慣れればどうってことはないのですが、そのカメラのクセのようなものがあって、持ち上げる角度が悪かったりすると引っかかってうまく外れないことがあります。

 私の場合、左手でカメラのバック部を持ち上げ、右手でフィルムホルダーの端を持って取り外します。
 以前、冬の景色を撮影していた時、撮影後のフィルムホルダーを取り外そうとした際に指が滑って引き蓋の引手のところに引っかかり、引き蓋が1/3ほど抜けてしまったことがあります。引き蓋が抜けた側のフィルムは撮影前でしたが、当然、使い物にならなくなってしまいました。

 冬で湿度が低く、お肌が乾燥していたため指先の摩擦力が低下し、滑ってしまったのではないかと思っています。
 このようにちょっとしたミスで引き蓋が簡単に抜けないようにロックする爪がついているのですが、ロックし忘れていたか、フィルムホルダーを触っているうちにロックが外れてしまったと思われます。
 撮影中に引き蓋が抜けてしまうなんて、後にも先にもこの時だけです。

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 どれもこれも注意していれば防ぐことのできることばかりですが、注意が散漫になっていたりするとこのような信じられない失敗をしでかしてしまいます。大判カメラでリバーサルフィルムを使ってこのような失敗をすると、フィルム代も現像代も高額な昨今、ダメージが大きいです。
 当事者でなければ笑える内容かも知れませんが、本人にとってはかなり深刻な問題です。

 いずれもずいぶん昔の失敗で、以来、同じ失敗を繰り返したことは今のところありませんが、いつまた起きるとも知れない可能性を含んでいるおバカな失敗談でした。

(2022.11.12)

#フィルムホルダー #NDフィルター #ロックネジ #レンズキャップ

4×5判シートフィルムをブローニーフィルム用現像タンクで現像する

 私はモノクロフィルムを使う頻度はリバーサルに比べるとそれほど高くありませんが、それでも時どき、ブローニー判や4×5判のモノクロフィルムで撮影を行ないます。撮影後のモノクロフィルムは自家現像をしており、4×5判のシートフィルムの現像にはパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。このPTP116という現像タンクは現像液が大量に必要なので、フィルムの枚数が少ないときにはもったいない気がします。
 そこで、フィルム枚数が少ない(1~2枚)ときには、ブローニーフィルム用のパターソンのPTP115という、少し小ぶりの現像タンクで4×5判シートフィルムを現像していますので、今回はそれをご紹介したいと思います。
 なお、実際に作成したのは何年も前のことであり、製作過程の画像がありませんのでご了承ください。

パターソンのPTP115で4×5判シートフィルム2枚を現像

 パターソンのPTP115という製品は、35mm判フィルム、およびブローニーフィルム用の現像タンクで、ブローニーフィルム用のリールは1本しか入りませんが35mm判用であれば一度に2本のリールを処理することができます。一回に使用する現像液の量は500mlなので、比較的少なくて済みます。

▲パターソン PTP115 現像タンク

 PTP115は4×5判シートフィルムを横置きにしたときにちょうど収まる深さがありますので、フィルムを適当にタンクの中に放り込んでおいても現像はできるかもしれません。しかし、フィルムは水分を含むと腰が弱くなって現像タンクの内壁に張り付いてしまう可能性があります。
 また、フィルムを何らかの方法で固定しておかないと現像タンクの中を自由に泳ぎ回ってしまうため、フィルム同士がくっついてしまう可能性も考えられ、あまり好ましくありません。

 フィルムをくるんと丸めて輪ゴムで止めて、それを現像タンクに入れて処理するという方もいらっしゃるようですが、撹拌の勢いで輪ゴムが外れてしまうのではないかという心配があり、私は試したことがありません。

 私は2枚のシートフィルムを固定するための簡単なホルダー(治具)を自作し、それを用いています。
 現像タンク内のスペースとしては4枚くらいは入れられると思うのですが、一度に4枚を処理するのであればPTP116を使った方が楽です。あくまでも1枚とか2枚の現像をするとき用です。
 また、フィルムを4枚入れてしまうと現像タンク内がぎゅうぎゅう詰め状態になり、回転攪拌ができなくなってしまいます。パターソンの製品は回転撹拌ができるようになっているので、それを活かすためにあえて2枚の処理用としています。

シートフィルムを固定するホルダー

 4×5判のシートフィルムは現像タンク内の内壁に沿って湾曲させなければなりません。手でフィルムの両端を挟んで内側に押すとフィルムが湾曲しますが、その状態を保持するようなホルダーがあればよいので、下の図、および写真のような簡単なものを自作しました。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー
▲PTP115用 シートフィルムホルダー

 素材は厚さ0.15mm、サイズは100mmx200mmのステンレス板です。1枚400円ほどだったと思います。
 この厚さであれば切ったり曲げたりも簡単にできますし、いったん曲げてしまえば自然にもとに戻ることはありません。0.15mmというとペラペラな感じに思われるかもしれませんが、ステンレスなのでかなりしっかりしています。

 現像タンクの内壁に沿うように全体を湾曲させるのですが、直径3~4cmくらいの丸棒に巻き付けるようにして、急激な力を加えずゆっくりと転がすように曲げていくと割ときれいにできます。もちろん、金型で成形したようにはいきませんが、多少の凹凸があった方が現像液の流れる隙間になって良いかも知れません。

 ホルダー両端の折り返してあるところにフィルムの端を入れると、フィルムが元に戻ろうとする力でホルダーに固定されます。ホルダーの中央部を内側に山折りしてあるのは、水分を含んだフィルムが柔らかくなってホルダーに張り付いてしまうのを防ぐためです。
 また、ステンレス板の下側を若干短くして、両端を折り返したときに斜めになるようにしていますが、これはパターソンの現像タンクが上にいくにしたがって内径がわずかに大きくなっており、それに合わせるためです。
 とはいえ、それほど精密に加工する必要はないので、現物合わせといった感じです。

 実際に4×5判シートフィルムを入れるとこんな感じになります。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー(フィルムを入れた状態)

 フィルムの乳剤面が内側になるようにホルダーにはめ込みます。

 このホルダーを2枚作って、現像タンクの中に向かい合わせに入れます。
 その状態が下の写真です。

▲PTP115とシートフィルムホルダー

 ホルダー自体は現像タンク内でどこにも固定されていませんので、倒立撹拌を行なえば多少は動くと思いますが、特に問題はないと思います。また、2枚のホルダーの折り返した両端同士が接しているので、動くとしても円周方向であり、現像タンクの中心方向に動くことはありません。

 なお、ステンレス板の表面はとても滑らかですが端面や角はざらついていたり尖っているので、フィルムを傷めないためにも、サンドペーパーなどで出来るだけ滑らかにしておきます。
 また、油などを落とすためにアルコールや中性洗剤できれいに洗っておきます。

回転撹拌用の羽根

 パターソンの現像タンクは、中央にセンターコラムと呼ばれる回転撹拌用のパイプ(筒)を入れないと光が入り込んでしまうのですが、通常はこのセンターコラムにリールを差し込み、回転撹拌を行ないます。つまり、リール(フィルム)を回転させる仕組みになってるわけです。
 しかし、今回のようにリールを使わずにフィルムがホルダーとともにほぼ固定状態ですので、ここにセンターコラムだけを入れて回転させてもほとんど意味がありません。倒立撹拌を行なえば何の問題もありませんが、せっかく回転撹拌できるようになっているので使えるようにしてあります。

 上の写真でわかると思いますが、2枚のフィルムを入れると現像タンクの中央にレモン型の空間ができます。この空間を利用して撹拌用の羽根を回転させるようにしています。
 羽根の部分は35mmフィルムのケースとアクリル板、そしてそれを固定するステンレス板で自作しています。

▲PTP115用センターコラム(右)と撹拌用の羽根(左)

 フィルムケースの素材は弾力があるので、回転撹拌用のセンターコラムに抜き差しできるようにするためにはうってつけです。
 この羽根をセンターコラムに装着して、通常の回転撹拌のようにすれば現像タンク内で羽根が回転して水流が発生します。フィルムを回転させるのではなく、現像液を撹拌するという方式です。
 もちろん、倒立撹拌でも全く問題はありません。

▲センターコラムに撹拌用の羽根を取付けた状態

現像上のトラブルもなく、問題なく使える

 実際にこれを作ったのは4~5年前で、現像するフィルム枚数が少ないときはこれを使っていますが、これまでに現像ムラなどのトラブルは一度もおきたことがありません。
 最初は、フィルムがホルダーから外れてしまうのではないかと心配もしましたがそんなこともなく、回転撹拌しても倒立撹拌してもしっかりと保持されていました。

 また、実際に使ってみて感じたのは、フィルムをホルダーにはめ込むのが実に簡単ということです。ホルダーにはめる際は暗室やダークバッグの中などの真っ暗闇で行なうわけですが、構造が単純なだけに変なところにはまってしまうこともなく、手探りでも簡単に行なえます。
 唯一、注意をするとしたら、フィルムの裏表を間違えないようにするということぐらいでしょうか。実際に裏表を反対にした状態で試したことはありませんが、乳剤面の水流が不十分で現像ムラが起きる可能性は考えられます。

 なお、一回に必要な現像液の量は500mlです。

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 回転撹拌をあきらめれば、4枚を同時に現像できるようなホルダーも考えられますが、形状が複雑になるので加工精度が求められ、手作業で製作するのは難しいかも知れません。一度に多くの枚数を処理できるのは効率的ですが、少しずつ現像の条件を変えたいというときにはこのほうが無駄がなくて便利かもしれません。

(2022.5.14)

#パターソン #PATERSON #フィルムホルダー #大判フィルム #現像タンク

シートフィルムをフィルムホルダーに装填する際のミス防止

 大判カメラで撮影する場合は、まずシートフィルムを専用のフィルムホルダーに装填しなければなりません。この装填の仕方についてはたくさんの方が投稿されていらっしゃいますので、そちらを見ていただいた方が良いと思います。ここでは装填時のミスを防ぐちょっとしたコツのようなものをご紹介します。

シートフィルム挿入時に発生しやすいミス

 シートフィルムを装填するのは真っ暗闇で行なわなければなりません。暗室がいちばん作業しやすいのですが、暗室がない場合はダークバッグやダークボックスの中で行なうことになります。私も家でフィルムの装填をおこなうときは暗室にこもりますが、撮影先でフィルムが不足した時は暗室がありませんので、ダークバッグを使います。ダークバッグは中が狭くて、決して作業性が良いとは言えませんが仕方ありません。

 シートフィルムの装填は慣れてしまえばどうってことないですが、慣れないうちはミスってしまうこともあります。多分、いちばん多いミスはフィルムホルダーの引き蓋用のスリットに入ってしまうことではないかと思います。フィルムの表裏を間違えるというミスも可能性としてはゼロではありませんが、右側から挿入する場合はフィルムについているノッチコードを右手前に来るように確認さえすれば、表裏が逆になることはまずありません。
 ということで、フィルムが正しくない位置に入ってしまうミスの防止について触れたいと思います。

フィルムホルダーの構造

 下の写真は4×5判フィルムホルダーの全景(写真左)と、ホルダーの引き蓋を引いた状態(写真右)です。

4×5判 フィルムホルダー

 ここにシートフィルムを1枚ずつ入れていくわけですが、挿入する箇所を拡大したのが下の写真です。

4×5判 フィルムホルダー

 引き蓋を引くとレールのようなものが2本あることがわかります。上側のレール(黄色の矢印)と下側のレール(赤色の矢印)です。上側のレールと下側のレールの間のスリット(溝)は引き蓋が通るところで、フィルムは下側のレールの下のスリットに入れなければなりません。
 ところが、引き蓋が通るスリットにフィルムが入ってしまうことがあります。そうなるとフィルムが浮いた状態になりますので、どんなにピントを合わせても実際に撮影するとピントがずれた写真になってしまいます。また、最悪の場合、撮影後に引き蓋を挿入するときに引き蓋でフィルムが押されて、フィルムが折れ曲がってしまうという事態になりかねません。

フィルムを正しい位置に入れるために

 フィルムが正しい位置に入った状態(写真左)と、引き蓋が通る溝に入ってしまった状態(写真右)が下の写真です。

4×5判 フィルムホルダー フィルムの挿入位置

 正しい位置に入ったかどうか確認するために、挿入後に指でこの2本のレールを触ってみるという方法があります。上側と下側のレール端が5mm程ずれていますので、2つのレールの端が確認できれば、フィルムが正しい位置に入っていることになります。
 また、もし引き蓋が通るスリットに入ってしまっている状態で引き蓋を閉めると、引き蓋の動きが重くなるので、注意しているとわかります。

 ですが、そもそも引き蓋が通るスリットに入らないようにするのが理想です。そのために、引き蓋を全部引き抜てしまうのではなく、下側のレールと同じくらいの位置まで開いた状態でフィルムを挿入することで、このミスを防ぐことができます(下の写真)。

4×5判 フィルムホルダー

 赤色の矢印が下側のレールの端で、これと同じくらいの位置で引き蓋を止めておきます。この状態だと、引き蓋が通るスリットに入れる方が至難の業です。
 真っ暗闇の中、手探りでこの状態にするのが難しい場合は、暗室やダークバックに入れる前にこの状態にしておきます。

 フィルムが正しい位置に入ると、フィルムの後端を指で軽く押すだけでスーッと入っていきます。もし、引っかかるような感触があったり動きが重いようであれば、正しくない場所に入っている可能性が高いので、再度入れ直しを行なった方が無難です。

 なお、フィルムホルダーを振り回したり強く振ったりすることなく、普通に扱っていれば引き蓋が勝手に抜けてしまうようなことは起こりませんが、もし心配な場合はマスキングテープとかパーマセルテープで止めておけば振り回しても安心です。

(2020.11.26)

#フィルムホルダー