ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラ ~撮影編~

 昨年(2023年)の暮れから今年の年始にかけ、思いついたようにピンホールカメラ(針穴写真機)を作成しましたが、そのカメラを使って実際に撮影をしてみました。ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使用した広角系固定焦点ピンホールカメラです。
 ピンホールレンズ自体は以前につくったものを若干改良しているだけなので、概ね問題なく撮影はできるだろうと思っていますが、今回、新たに作成したカメラ本体との相性も含めて試し撮りをしてみました。

 なお、ピンホールカメラの製作に関しては以下のページをご覧ください。

  「ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラの製作

モノクロフィルムでの試し撮り

 ホースマンの69判ロールフィルムホルダーにDELTA 100(120)フィルムを入れ、近所の公園で試し撮りをしました。天気は晴れ、撮影した時間帯は午前10時~11時です。

 1枚目は、木立に囲まれた公園の広場を撮影したものです。

 カメラから中央の立木までの距離は3mほど、右端に少しだけ写っている立木までは50~60cmほどだったと思います。また、立木の影でわかるように、太陽はほぼ右側にある撮影ポジションです。
 単体露出計での計測値はEV13(ISO100)だったので、露光時間は4秒としました(ちなみに、このピンホールレンズのF値は180になるように作ったつもりです)。露出に関しては概ね良好、ほぼ予定通りのF値になっている感じです。
 木立の枝の先端もおぼろげながら認識できるので、解像度もピンホールとしてはまずまずといったところでしょう。

 この写真のように近距離を写した場合、周辺部が引っ張られて、見るからに広角系の写真という感じがします。

 2枚目は、立木の枝の広がりを逆光で撮影したものです。

 太陽は中央の立木の幹に隠してありますが、全体にわたり逆光状態なので、立木はすべてシルエットになっています。ピンホールカメラは逆光に弱いのですが、太陽からの光を直接入れなければ、結構クリアな写真になるようです。さすがに太陽を隠している幹の辺りは滲んでいますが、それ以外は比較的綺麗なシルエットになっていると思います。
 1枚目の写真ではあまり気にならなかったのですが、こちらの写真では周辺部の光量不足が感じられます。多少、周辺光量の落ち込みがあった方がピンホール写真らしさがあるという見方もありますが、個人的にはこれ以上の落ち込みがあると失敗作となってしまうので、ギリギリ許容範囲といった感じです。

リバーサルフィルムでの試し撮り

 常々、ピンホール写真はモノクロが似合っていると思っているのですが、せっかくなのでカラーリバーサルフィルムでも撮影をしてみました。使用したフィルムは富士フイルムのVelvia 100(120)です。
 撮影日は異なりますが、撮影場所はモノクロと同じ近くの公園です。

 まず1枚目は紅梅の写真です。

 この日も晴天で、澄んだ青空と梅の花のコントラストがとても綺麗でした。
 中央の梅の花の位置まではおよそ1m。まだ咲き初めで花の数がそれほど多くないので、できるだけ花に近づいての撮影です。
 全体的な露出はほぼ適正な状態だと思われますが、やはり、周辺光量の落ち込みが目立ちます。周辺部が極端に暗くなっているわけではないのでそれほど違和感はありませんが、周辺部が引っ張られるのと相まって、若干気になります。
 ピンホール写真として見れば解像度は悪くはないと思うのですが、梅の花の鮮鋭度となると、正直、厳しいといった感じです。

 2枚目は同じ公園にある白梅を撮影したものです。

 いちばん手前の花まで50cmほどに近づいて撮影しています。上の方は切れてしまいましたが、左右に関しては8割方、フレーム内に収まっています。
 ピンホール写真は全体のピントが合うパンフォーカス写真になりますが、この写真のようにたくさんの花が重なった状態の被写体の場合、ボケた部分がないので雑然とした感じに仕上がってしまいます。撮影の仕方によるところが大きいのでしょうが、この写真ではピンホールらしさがあまり感じられません。ボケた梅の写真、といった方が適切かも知れません。

 もう一枚は、近くの神社の境内で撮影したものです。

 周囲が大きな木立に囲まれているため、ほとんど日陰で暗く落ち込んでいますが、中央の社殿だけは日が差し込んでいて、全体にコントラストが大きくなっている状態です。普通のカメラで撮れば固い感じになってしまいますが、ピンホール写真特有のボケでふわっとした感じに仕上がっています。どうってことのない風景も、ちょっとばかり雰囲気のある写真になっています。
 左側の赤い奉納のぼりに書かれている文字や、社殿の軒下にある注連縄、社殿の後ろにある消火器などのはっきりと認識できるくらいの解像度があります。

カメラの仕様と使い勝手

 今回製作したピンホールカメラは、焦点距離が54mm、F値が180ということで寸法取りをしたのですが、仕上がった写真を見る限り、ほぼ予定通りの仕様になっている感じです。もっとも、焦点距離が3mm長かったり短かったりしたところで、F値は190、もしくは170になる程度なので、実際の露出に与える影響はほとんど誤差の範囲です。つまり、F値が大きいので、多少の寸法の違いは影響がないということです。

 また、上で掲載した写真からも、周辺部がかなり引っ張られているのがわかると思います。これは短焦点になればなるほど顕著に現れますが、このカメラの場合、横位置に置いた時の左右両端で、およそ17%伸びる計算になります。この値は被写体によってはかなり影響が大きく、遠景ではあまり気になりませんが、近景を撮影した場合ははっきりとわかります。それに伴って光量の落ち込みも発生するので、うまく使えば味わいのある写真になるかも知れません。

 一般的に、写真は解像度が高くてくっきりと写っていた方が好ましいと思いますが、ピンホール写真に関しては必ずしもそうとは言えません。むしろ、ボヤっとしていた方が好ましいと感じる場合が多々あります。
 そういった視点からすると、今回使った直径0.3mm(にしたつもり)のピンホールは、解像度が少し高すぎるようにも思えます。ピンホール径をもう少し大きくして、全体的なボケを大きくした方がピンホール写真っぽくなるかも知れません。

 カメラの使い勝手という点では、二眼レフカメラを横にしたくらいの大きさなのでこじんまりとしていて持ち運びも苦にならいのですが、難点はホールド性がよろしくないということです。三脚に取り付けてしまえば何ら問題はないのですが、三脚に着けたり外したりする際、落としてしまいそうでちょっと不安になります。ストラップかグリップのようなものがあると安心感が高まるというのが率直な感想です。

 簡易的なスピードファインダーに関しては、もちろん、精度は良くありませんが、フレーミングした範囲と実際に写る範囲にそれほど大きな乖離はなく、実用レベルであると思います。
 ただし、スピードファインダーのフィルム側のアクリル板の取り付け位置が、フィルムホルダーの後端よりも前にあるため、のぞきにくいという欠点があります。前方のアクリル板との間隔を保ちながら、取り付け位置を全体的に30mmほど、後ろにずらした方が使いやすいことがわかりました。今から改造するのは大変なので、次回、また製作することがあれば反映したいと思います。

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 ピンホール写真というのはノスタルジックでもあり、また、そのボケ具合から独特な印象を持った写真になり、シンプルな仕組みでありながらなかなか奥の深いものだと思っています。
 しかしながら、何でもかんでもピンホールカメラで撮れば雰囲気のある写真になるかというとそうではなく、やはり、作品作りということを意識することも大事だと思います。
 普通のカメラでもいろいろとレンズが欲しくなるのと同じで、ピンホールカメラでもピンホール径や焦点距離の異なるもので撮影してみたくなります。何種類ものピンホールカメラを作って、自分のイメージにぴったりと合うものを見つけるのもピンホールカメラの面白さかも知れません。
 今年の年末にでも、仕様の違ったピンホールカメラを作ってみたいと思います。

(2024.2.29)

#Horseman #ピンホール写真 #ホースマン #白梅 #紅梅

ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラの製作

 年末にジャンク箱の中を漁っていたところ、下の方からホースマンの69判のロールフィルムホルダーが出てきました。しかも、大判(4×5判)用ではなく、中判カメラ用のホルダーです。私がこれを取付けられるような中判カメラを持っていたのは20年以上も前のことですから、多分、そのころに手に入れたものだと思うのですが全く記憶にありません。
 外観はそこそこ綺麗で、確認してみたところ、動作にも問題はなさそうでした。しかし、これが使えるカメラがないので、またジャンク箱の中に戻そうと思ったのですが、ふと、これを使ってピンホールカメラを作ってみたくなりました。なぜか、時々ピンホールカメラを作ってみたくなることがあります。
 ということで、69判のピンホールカメラを製作しました。

焦点距離54mm、絞り値 F180の広角系ピンホールカメラ

 以前、大判カメラを使ったピンホール写真を撮ろうと思い立ち、それ用のピンホールレンズを作ったことがありました。興味のある方は下のページをご覧ください。

  「ピンホールカメラ(針穴写真機)をつくる

 ただし、大判カメラを使ったピンホールカメラなので焦点距離などの自由度も大きいのですが機材が大げさになってしまい、気軽にピンホール写真を撮りに行くという感じではなありませんでした。最初のうちこそ結構使っていましたが、徐々にその頻度も減り、最近ではほとんど持ち出すことはなくなってしまいました。
 そんな経緯もあり、今回はもっとお手軽なピンホールカメラをつくることにしました。焦点距離なども固定にし、できるだけ小型軽量にするということを第一に、下の図のような仕様にすることにしました。

 ピンホールレンズは前回作ったものを使うこととし、それ以外は新規に作成します。
 ピンホールカメラなので広角系の方が使い勝手が良いだろうということで、画角は80度前後、35mm判のカメラにすると焦点距離28mmくらいのレンズに相当するカメラとします。
 厳密な焦点距離や画角は必要ありませんが、露出値の換算をする際にやり易いよう、F値は切れの良い数字にする必要があります。前回作ったピンホール径は0.3mmなので、これをベースに焦点距離が50~60mmで切れの良いF値ということで計算した結果、焦点距離54mmの時にF値が180になるので、これを採用することにしました。欲を言えば、F値は128、もしくは256の方が換算しやすいのですが、そうすると焦点距離が短すぎたり長すぎたりしてしまうので、F180で妥協することにしました。

 なお、今回作成するピンホールカメラに使用する部材等はすべて身近にある端材などを流用し、新規に購入せずに行なうこととします。

ピンホールレンズの改造

 まずはピンホールレンズの改造からです。
 前回作ったのは、シャッターNo.1の大判レンズから前玉と後玉を外し、シャッターの前面に自作のピンホールをはめ込むというものでしたが、これだとシャッター位置よりもだいぶ前にピンホールレンズがくることになります。そのため、焦点距離が長くなってしまい、画角を大きくすることができないという欠点がありました。
 そこで、今回はピンホールレンズをシャッター幕のすぐ前に設置することにしました。これを、前玉のレンズを全部外した枠だけを使ってシャッター幕の直前のピンホールレンズを固定するという方法をとります。

 シャッターにピンホールレンズを取付けたのが下の写真です。

 以前のものと比べ、これ単体でも焦点距離を15mmほど短くすることができました。
 また、前玉の枠がフードの役目をしてくれるので、直接ピンホールレンズに太陽光があたるのをある程度防ぐことができ、フレアのようなものが生じるのを軽減することができます。

ピンホールカメラ筐体の製作

 カメラの筐体はアクリル板か木板で作ろうと考えていたのですが、アクリル板だとなんとなく味気がないので、木板を使うことにしました。適当な端材がないか探したところ、厚さ9mmの合板があったのでこれを使用します。
 各部の寸法はホースマンのロールフィルムホルダーに合うようにしなければならないので、必要個所を採寸して筐体のサイズを算出します。

 実際に筐体の図面を引くとこのようになります。

 上の図で分かるように、端材で作った四角な枠の中にロールフィルムホルダーがすっぽりと嵌まり込む構造になります。光線漏れがないよう、内寸は正確にする必要があります。
 また、シャッターを取付けるフロントパネルは厚さ5mmの合板を使用しました。この板の中央に直径48mmの穴をあけ、ここにシャッターを取付けます。

 これを組み上げたのが下の写真です。

 木工用の接着剤で貼り付けているのでそのままでも強度的には問題ありませんが、デザイン性を考慮して真鍮製の釘を打ってみました。

 ピンホールカメラは長時間露光が必要なので、三脚使用が前提となります。そこで、筐体の底面に三脚用の台座を取付けます。
 厚さ9mmの合板を適当な大きさ(ここでは35mmx70mm)にカットし、その中央にメネジを埋め込みます。直径8.5mmの下穴をあけ、そこにねじ込めば完成です。ネジの径の方が若干大きいので、ねじ込むにはかなり力が要りますが、雲台プレートのネジを締め付けるときに動いてしまうと使い物にならないので、固いくらいが丁度良いです。もし、緩いようであれば、メネジの周囲に瞬間接着剤を少し流し込んでおけば心配ありません。

 この三脚台座を筐体の底板に接着します。

 次に、筐体天板の加工を行います。
 後ほど触れますが、今回は簡易型のスピードファインダーのようなものを取付けられるようにするのと、フィルムホルダーを固定するため、天板に若干の加工を施します。

 加工内容は下の図の通りです。

 まず、スピードファインダーを取付けるための磁石を埋め込みます。これは、レンズ側に2個、フィルムホルダー側に1個です。
 今回使用した磁石は、約9mmx14mm、厚さが約2mmのネオジム磁石です。小さいですがとても強力な磁石です。これを天板につけるのですが、天板の表面が平らになるように磁石を埋める穴を掘ります。

 こんな感じです。

 この穴に接着剤を流し込み、磁石をしっかりと固定します。

 さてもう一つ、ロールフィルムホルダーを筐体に固定しなければならないのですが、固定ピンを筐体側から差し込み、フィルムホルダーの溝に嵌合させるという簡単な方法です。
 固定ピンは大型のゼムクリップを利用して自作しました。サイズは適当で構いませんが、ピンの長さはある程度、正確にする必要があります。今回、筐体に使用した端材の板厚が9mmなので、この板を貫通してフィルムホルダーの溝に届かせるには13mmの長さが必要です。短すぎるとフィルムホルダーがしっかり固定できませんし、長すぎると固定ピンが浮いてしまいます。
 この固定ピンは筐体の底板にも取り付けます。

 これで筐体の組み立ては完了ですので、内側に反射防止のため、艶消し黒で塗装をします。
 外側はそのままでも問題はありませんが、少しでも見栄えをよくするため、透明のラッカーを数回塗りました。
 なお、隙間からの光線漏れはないと思いますが、もし心配なようであればモルトを貼っておけば心配ないと思います。

 ちなみに、ロールフィルムホルダーを取り付ける際は、固定ピンを浮かせた状態でフィルムホルダーを筐体にはめ込み、その後、固定ピンを奥まで押し込みます。これで、フィルムホルダーが外れることはありません。

簡易型スピードファインダーの製作

 ピンホールカメラの撮影でいちばん苦労するのがフレーミングです。ピンホールはその名の通りとても小さいので、フォーカシングスクリーンのようなものに投影しても暗くてほとんど像を認識することができません。
 そこで今回は、簡易型のスピードファインダーなるものを取付けることにしました。

 仕組みはいたって簡単です。

 上の図でお分かりいただけると思いますが、フィルム面と同じ大きさのブライトフレームを書き込んだ透明の板を焦点距離と同じだけ離れた位置から見ることで、フィルムに写る範囲を確認するというものです。

 レンズ側に取り付けるのは、フィルム面よりも一回り大きな透明の板です。今回は、厚さ1.8mmの透明のアクリル板を使いました。これをL字型に曲げ、そこにブライトフレームを書き込みます。使用するフィルムのサイズが69判で実寸が56mmx83mmなので、それに合わせて白いペンキで線を引いています。
 もう一つ、フィルム側に取り付けるものも同じように透明のアクリル板をL字型に曲げますが、こちらはずっと小さなもので大丈夫です。

 そして、レンズ側のブライトフレームの中心に小さなマーキングをします。私は、同じように白のペンキを使いましたが、何でも構いません。
 一方、フィルム側に取り付けるファインダーには、レンズ側フレームの中心のマーキングと同じ高さのところに小さな穴をあけます。

 次に、スピードファインダーをカメラの筐体に取り付けるため、L字型に曲げたところに磁石を取付けます。
 これは、両面テープや接着剤などで貼り付けても良いのですが、私はアクリル板に磁石がはまるサイズの穴をあけ、そこに円形の磁石をはめ込み、瞬間接着剤で固定しました。
 ここで重要なのが磁石の向きと固定する位置です。
 まず磁石の向き(極性)ですが、筐体の天板につけた磁石とくっつくようにしなければなりません。これを間違えると磁石の反発力でファインダーがぶっ飛んでしまいます。
 次に磁石を固定する位置ですが、レンズ側のファインダー面が、概ねレンズの位置に来るように磁石を固定すること、フィルム側のファインダー面が、概ねフィルムの位置に来るように磁石を固定することです。つまり、2枚のファインダーの間隔が、焦点距離にほぼ等しくなるようにします。

 こうして出来上がった簡易型スピードファインダーが下の写真です。

 使い方は簡単で、フィルム側のファインダーの小さな穴からレンズ側ファインダーの中心点が重なるように覗きます。その時のブライトフレームの内側がフィルムに写り込む範囲になります。それほど精度の高いものではありませんが、フレーミングをする上ではまずまず使い物になるレベルだと思います。
 後は、これをカメラに取り付けるだけです。強力な磁石を使用しているため、取り付け位置を気にしなくても2枚の磁石がほぼ中心でくっつきます。
 取り外す時もファインダーの上の方を持って、前後どちらかに押せば簡単に外すことができます。使わないときは取り外しておけば、よりコンパクトなカメラになります。

 磁石を固定するための瞬間接着剤の量が多すぎたようで、アクリル板が白くなってしまいました。後日、白いペンキか何かを吹き付けて綺麗にしてやろうと思います。

 実際にカメラに取り付けるとこのようになります。

 フィルムホルダー側(後側)から見た写真がこちらです。

作例...は、まだありません。

 まだ撮影に行っていないので、残念ながら作例はご紹介できません。近いうちに実際に撮影をしてみようと思います。

 このカメラを実際に操作した時の感触ですが、剛性はそこそこ保たれているようで、三脚に固定すれば安定しています。フィルムの巻き上げやシャッターチャージなどの際にもぐらついたりきしんだりすることがありません。ここで使用したシャッターはSEIKO製ですが、シャッターチャージレバーがとても重く、動かすのに力が要るのですが、特に問題なく使用に耐えられます。
 また、ストラップは着けてありませんが、やはりストラップがあった方が扱い易いように思います。適当な金具があれば、筐体の両サイドに取り付けてみたいと思います。

 なお、撮影の際にはフィルムホルダーの引き蓋を外すのを忘れないようにする必要があります。シャッターがついているので、フィルムホルダーの引き蓋は外したままでも問題ないと思いますが、万が一のため、引き蓋は着けておく方が安心です。

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 20年以上も暗いジャンク箱の中で眠っていた69判のロールフィルムホルダーですが、やっと日の当たる場所に出ることができたという感じです。
 また、今回は家にあった端材や部材などを利用して作ったので見てくれはイマイチですが、ちゃんとした材料を使えばもっときれいなカメラに仕上がると思います。

 ピンホールカメラは簡単に作ることができるということも手伝ってか、根強い人気があるようです。世界に1台しかない自分だけのカメラということにも愛着が湧くのかも知れません。銘板なんぞを取付ければ、一層カメラらしくなると思います。

(2024.1.5)

#ピンホール写真 #Horseman #ホースマン

東京ゲートブリッジでピンホールカメラ試し撮り

 耐え難い暑さもやっとおさまったので、自粛中に作ったピンホールレンズの写りを確認するため、東京ゲートブリッジの定番撮影ポイントである若洲海浜公園に行ってきました。しばらく雨降りが続いていましたが久しぶりに青空が広がり、若洲海浜公園の駐車場は満車状態です。多くの方は釣りをしに来ているようです。ほぼ快晴で日差しは強いですが風がとても気持ち良いです。

WISTA 45SP でゲートブリッジ撮影

 2か月ほど前に作ったピンホールレンズでどの程度の写真が撮れるのか、4×5フィルムとブローニーフィルム(67判)で実際に撮影をしてきました。持ち出したカメラはWISTA 45SPとHorsemanのロールフィルムホルダーです。あとはピンホールレンズや単体露出計、メジャーなどの小物ばかりですので、レンズがないと本当に機材が軽いと実感しました。これで超広角から望遠まで無段階に対応できるのですから、ピンホールカメラ恐るべしです。

 まずは橋の南側からゲートブリッジ全体の形が綺麗に見えるポイントに行き、4×5フィルムで撮ったのが下の写真です。

東京ゲートブリッジ  WISTA 45SP Pin-hole Lens F330 7s (4×5判)

ピンホール径を逆算してみると

 撮影データですが、焦点距離は100mm(35mm判カメラに換算すると28mmくらいのレンズの画角に相当します)、F330でシャッター速度は7秒です。
 単体露出計で手前の草の部分と海面を計測し、ピンホール径が0.3mmということで計算した露出ですが、若干、露出オーバー気味です。ということはピンホール径が0.3mmよりもわずかに大きいようです。現像が仕上がったポジの状態からピンホール径を逆算すると、0.33mmくらいあることになります。ルーペを覗きながらマチ針で開けた穴ですので決して高い精度は望めず、まぁ、こんなものかなと思います。次回の撮影からはピンホール径が0.33mmということで露出を決めれば良いので、仕上がりはもう少し良くなることを期待したいです。

 周辺部の落ち込み(光量不足)がもう少しあるかと予想していたのですが、思ったほどではありませんでした。この写真のほかにもう一枚、焦点距離85mmで撮影したポジは四隅が若干暗くなっており、光量不足の影響が出始めているのがわかりました。計算上、最短撮影距離の68mmでは周辺部で2EVほど暗くなると思っていましたが、実際には1~1.5EVくらいでおさまりそうです。

画質は及第点

 画質は予想以上に解像しており、及第点といったところでしょう。さすがに草の一本いっぽんまでは識別できませんが、穂が伸びているところや左端にある時計の目盛りなどは十分わかります。少しボヤっとしていたほうが針穴写真らしいと思いますが、どこで折り合いをつけるかが悩ましいところです。機会があればもう少し径の大きなピンホールを作って試してみたいところです。
 この写真では太陽が左側にあるのですが、フレアが起きています。これを避けたい場合はフードやハレ切りを使えば防げますが、このように晴れた日の写真ではフレアがあることで降り注ぐ太陽の光を感じられるかも知れません。

ブローニーフィルムで撮影

 下の写真はブローニーフィルム(ロールフィルムホルダーを使用)で釣りをしているところを撮ってみました。

東京ゲートブリッジ  WISTA 45SP Pin-hole Lens F276 4s (67判)

 焦点距離が80mm(35mm判カメラ換算で40mmくらいのレンズの画角に相当)、F267、シャッター速度は4秒です。1枚目の写真同様、露出は若干オーバー気味です。
 手前の岩を大きく入れてみました。このような構図の場合、パンフォーカスにしようとするとレンズを使った通常の撮影ではかなり大きなアオリが必要になりますが、当然のことながらピンホールカメラでは全く気にせずにパンフォーカスになるのがすごいところです。
 また、シャッター速度が4秒くらいだと人の動きも極端に大きくブレることなく、ぎりぎりそれとわかるくらいには写し止めることができます。

遠景を望遠で撮影

 さて、長い焦点距離(望遠)ではどのように写るかということで撮影したのが下の写真です。

東京ゲートブリッジ  WISTA 45SP Pin-hole Lens F900 50s (67判)

 撮影データは、焦点距離270mm(35mm判カメラ換算で135mmレンズの画角に相当)、F900、シャッター速度は50秒です。露出オーバー気味も手伝ってか、やはりボヤっとした感じが強まっている印象ですが、ここまで写ってくれれば良しということにしましょう。

 今回は試し撮りということで4×5フィルム2枚、ブローニー(220)フィルム1本(20カット)を撮影してきましたが、構図確認用のピンホールレンズの穴径が大きすぎて、フォーカシングスクリーンに映る像がぼやけすぎてしまうということが判明しました。穴径が大きければ明るい像が得られますがボケも大きくなってしまい、構図を決めるのに手間がかかってしまいます。ここは改善の余地のあるところです。
 また、ピンホールレンズが計算通りに作ることができているか確認するため、今回は露出がシビアなリバーサルフィルムで撮影しましたが、針穴写真はモノクロやネガフィルムのほうが雰囲気があると思いますので、若干の改善をした後、次回は本格的な撮影に臨みたいと思います。

(2020.10.5)

#東京ゲートブリッジ #ピンホール写真 #ウイスタ45 #WISTA45 #リバーサルフィルム

ピンホールカメラ(針穴写真機)をつくる

 初めて針穴写真機を作ったのは、確か小学校の夏休みの自由研究だったと思います。フィルムの代わりにポラロイド印画紙を使用することで、その場で写真を見ることができました。ぼんやりといえども、レンズもないのに像が焼き付けられることをとても不思議に思ったものでした。

PENTAX67を使ったピンホールカメラ

 以来、何台ものピンホールカメラを作っては壊ししてきましたが、いま手元に残っているピンホールカメラは一台もありません。唯一、針穴写真を撮ることができるのは、PENTAX67のボディキャップにピンホールを加工(ビールの空き缶に針で穴をあける)したものだけです。
 これは10年ほど前に作ったものですが、針穴写真といえどもそれなりに画質を追求したく、ピンホールの大きさ(直径)を何種類も作りました。その中で最もシャープに写るピンホール(レンズ)だけが手元に残っています。
 直径0.2mm~0.6mmまで、0.1mm間隔で5枚のピンホールを作りましたが、直径0.3mmのピンホールがいちばんきれいに写りました。直径が小さければ小さいほど画像はシャープになると思っていたのですが、小さくなると光の回析によって像がぼけてくるようです。
 調べたところ、最適なピンホール径はd=√2fλで求められるとのこと(fは焦点距離、λは光の波長)。PENTAX67のフランジバックは約85mmですので、これをこの式に当てはめると約0.3mmとなります。

PENTAX67 ピンホールカメラ

 PENTAX67による針穴写真は思いのほか綺麗に写り、我ながら感激したものです。しかし、焦点距離が固定になってしまいますので、接写リングをかませることで85mmから197mmまで、14mm刻みで焦点距離を変えることが出来ました。

ピンホールレンズを自作

 今回、大判フィルムやブローニーのパノラマで針穴写真を撮ってみようと思い、ピンホールレンズを作成してみました。手元にあるリンホフマスターテヒニカにピンホールレンズを着けることで、約50mm~370mmの焦点距離を実現することができます。
 PENTAX67を使ったときは、カメラ自体にシャッターがついていたので問題はなかったのですが、大判カメラにはシャッターがついていないので、シャッターを何とかしなければなりません。最初はレンズキャップを外したり着けたりでいいだろうと思っていたのですが、それだと日中の明るいときの撮影時など、シビアなことがわかりました。
 ピンホール径を0.3mmにした場合、最も焦点距離の短いときでf168くらいになり、太陽の光の強いところでは1/2秒とか1/3秒のシャッターを切らなければなりません。これをレンズキャップで行なうのは結構無理があると思い、ちゃんとしたシャッターをつけることにしました。 

 まず、インターネットオークションでジャンクの大判レンズ探しからです。できるだけピンホールの包括角度を大きく取れるようにするため、#1か#3のシャッターのついたレンズで、希望は1,000円くらい。レンズはカビがあろうが腐っていようが構いません。シャッターさえ動けば問題はないので根気よく探します。

 そんなある日、運よく#1シャッターのついたレンズが1,200円で出ていましたのでゲット。数日後、品物が届きました。「ジャンク品によりNCNRで」とありましたが、程度が良いので驚きました。レンズもきれいですが今回は不要ですので、前玉と後玉を外してシャッター部だけを使います(外した前玉と後玉は防湿庫で保管してあります)。

 厚さ0.1mmの銅板に直径0.3mmの穴をあけ、これを中央をくりぬいたレンズキャップに取り付けます。そして、大判レンズのシャッター部にピタッとはめ込めばピンホールレンズは完成です。

SEIKO #1 シャッターを利用したピンホールレンズ

 今回使用したシャッターですが、ピンホールレンズ取り付け位置がレンズボードから18mm前方にあります、また、シャッター部後端の内径が42mmですので、これらから計算すると包括角度は約100度ということになります。したがって、4×5フィルムを使用してもケラれない最短の焦点距離は約65mmになります。カメラの最短フランジバックが約50mmですから、この状態でピンホールレンズを取り付けると、ピンホールからフィルムまでの距離が68mmとなり、ぎりぎりケラれずに済みそうです(あくまで計算上ですが)。
 ということで、リンホフマスターテヒニカに取り付けた場合、実際には68mm~388mmの焦点距離を持ったピンホールカメラということになります。

構図確認用ピンホールレンズの作成

 しかしこのピンホールレンズのままでは暗くて、大判カメラのピントグラスでは何が投影されているかわからず、構図の確認ができません。ファインダーがあれば問題ないのですが、無段階に変化する焦点距離に対応できるファインダーを自作するのは困難なので、ピンホール径を2.5mmまで大きくした構図確認用のピンホールを作成しました。構図を決めるときにはこれを使い、撮影の際には撮影用のピンホールレンズに交換します。

構図確認用ピンホールレンズ (中央の穴径が約2.5mm)

 こうして出来上がったピンホールレンズは最短の焦点距離68mmでf226、最長の焦点距離388mmでf1293というとてつもなく暗いレンズです。焦点距離388mmで撮影することはまずないと思われますが、f1293がどれくらい暗いかというと、真夏の日中でf16-1/250秒というときに、約30秒の露光が必要ということになります。

露出換算用のツールが必要

 当然のことながら、こんな値は単体露出計の目盛りの範囲を超えていますので、露出計で測った後に換算しなければなりません。これが結構面倒で、計算を間違えると露出オーバーやアンダーになってしまいますので、簡単に換算できるためのツールを作りました。

 古くなって変色してきたPLフィルターのガラスを外し、透明なガラスと交換します。そして、枠のベース部分の円周上にシャッター速度を書き込みます。一方、くるくる回転する枠のガラスには絞り値を書き込みます。露出計で測定した絞りとシャッタースピードの目盛りを合わせると、ピンホールレンズのf値の時のシャッタースピードがすぐにわかるという仕組みです。

露出換算用のツール(PLフィルター利用)

大判カメラによるピンホールカメラ

 今回作成したピンホールレンズをリンホフマスターテヒニカに装着するとこんな感じです。

Linhof MasterTechnika 45 ピンホールカメラ

 さて、このピンホールレンズ、4×5フィルムを使って焦点距離100mmで撮影すると、計算上、周辺部では約1EV(1段)の光量の落ち込みがあると思われます。フランジバックを最も短くした焦点距離68mmでは、2EV強の光量の落ち込みになりそうです。周辺光量の落ち込みが気にならなくなるのは150mm以上かと思います。
 周辺光量の落ち込み、それもまた針穴写真の面白さかもしれませんが、実はまだ撮影に行くことができておらず、作例をご紹介することができません。近々、撮影日記のページでご紹介できればと思っています。

(2020.8.10)

#ピンホール写真 #中古カメラ