近所の公園で初春に咲く花の撮影

 東京では1月の終り頃になるとロウバイや早咲きの梅がちらほらと咲き始め、2月の半ばを過ぎると梅も見ごろを迎えます。それまでは枯れ木ばかりが目立った公園も急に華やかな感じになります。陽あたりの良い場所ではるり色のオオイヌノフグリも咲き始め、本格的な春の訪れが近いことを感じるようになります。
 私が住んでいる近くには大きな公園がいくつかあっていろいろな花を見ることができるので、この時期には貴重な撮影場所の一つです。
 そんな公園をのんびりと歩きながら、また、いくつかの公園をはしごしながら初春に咲く花を撮影してきました。

ロウバイ(蝋梅)

 名前に「梅」の字がありますが植物学的には梅の仲間、すなわちバラ科の植物ではなく、ロウバイ科に属するようです。中国原産の植物らしいですが、近年は公園や庭木などでよく見かけます。種類の違いなのか場所によるものなのか、早いものでは12月末ごろから咲き始める個体もあります。
 どちらかというと地味な花ですが、この時期には数少ない花の一つでもあり、まるっとした黄色の花を見るとなんだか心が和みます。

 公園などで見られる木は植樹されたものですが、成長が遅いのかあまり大木にならず、目線の高さにもたくさんの花をつけているので撮影向きと言えます。

 下の写真は地面から2mほどの高さに咲いていた二輪の花を撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider Tele-Xenar 360mm 1:5.5 F5.6 1/30 Velvia100F 

 ロウバイは房のような形の果実をつけるのですが、これが冬を越しても落ちずに真っ黒になって枝に残っています。花が咲いても花の数に負けないくらいのたくさんの真っ黒な果実がついていて、撮影しようとするとこれが結構気になります。なので、あまり枝が込み合っておらず、真っ黒な果実がないところに咲いている花を見つけるのが意外に大変です。
 たくさんの花が咲いているところも素敵ですが、数輪だけにして余計なものはあまり入れない方が花の素朴さや愛らしさを出すことができます。

 天気が良くて日差しがあるときに逆光で撮ると、まるで花自体が発光しているように見えますが、そのように撮るときは出来るだけ背景を暗く落とし込んだ方が効果的です。バックに大きな木などがあって日陰になっている場所で、木漏れ日が花に差し込んでいる状態であれば、ぼんぼりのようなロウバイを撮ることができます。
 上の写真では右下にもぼかした状態で花を入れましたが、入れる分量を若干少なめにした方が良かったかもしれません。

 この写真は「ソシンロウバイ」ですが、種類によって花の形状も異なるようです。個人的には花が開ききる前のこのようにまるっとした状態がいちばん好きです。

白梅

 梅の種類は本当にたくさんあって、一口に白梅と言っても真っ白なもの、ごくわずかにピンクっぽく見えるもの、あるいは黄緑色っぽく見えるものなど多岐に渡っています。実際には花弁の色というよりも、花芯の色が赤っぽかったり緑色っぽかったりすることで、花全体の色合いが変わって見えるのだと思います。
 また、それぞれに名前がついているようですが、私はほとんど知りません。

 神社仏閣に行くと必ずと言ってよいくらい梅の木がありますが、梅の木のある公園もたくさんあります。花が咲くとメジロやシジュウカラなどの小鳥がたくさん来ており、見飽きることのない景色です。

 梅は桜と同じように一本の木にたくさんの花を咲かせるので、とても華やかで豪華な感じがします。風景として撮るのであればとても映えますが、公園などの人工物が多い場所で風景として撮るのは結構苦労します。とはいえ、華やかに咲いた梅の木全体を撮ると、焦点の定まらない写真になってしまいがちです。写り込んでほしくないものがたくさんある場所では一枝だけとか、数輪だけを対象にした方が撮り易いかも知れません。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider Tele-Xenar 360mm 1:5.5 F5.6 1/60 Velvia100F

 上の写真はかなり早咲きの白梅で、私が良く訪れる近くの公園にある梅の中では最も早く咲き始めます。八重咲の花で花芯部分が赤っぽいのが特徴です。花も大きくてとても豪華な感じがします。
 名前がわからないので少し調べてみたところ、「月宮殿」という梅かも知れませんが定かではありません。

 一枝に咲いている花の数がとても多い木ですが、数が少なめで形の良い枝を探して撮影しました。
 画の左上から太陽光が差し込んでいる状態ですが、透過した光で乳白色からクリーム色へのグラデーションがとても綺麗です。
 背景は真っ黒にならないように明るい部分を少し入れてみました。画の上部にある黒いボヤっとした線は背後にある枝です。背景がうるさくなりすぎないように、花に近づいて撮影しています。

 さて、もう一枚は順光で撮影した白梅です。上の写真とは種類が違うのではないかと思います。

▲Linhof MasterTechnika 45 Fujinon T400mm 1:8 F8 1/125 Velvia100F

 バックに青空が入るように見上げるアングルで撮影しています。背景には枝や幹、花などがたくさん入り込んでいてちょっとにぎやかです。右上から左下に通っている枝がとても気になったのですが、切ってしまうわけにもいかず、出来るだけぼかそうとしたのですがこれが精いっぱいという感じです。
 トップライトに近い状態なので梅の花が平坦になり過ぎないよう、上にある枝で少し陰ができるタイミングで撮りました。光が透過した梅も綺麗ですが、青空との組み合わせも春らしさが感じられます。青と白というのはとても清潔感のある組み合わせだと思います。

紅梅

 紅梅は白梅に比べると遅咲きというイメージがありますが、近くの神社には早くも1月中旬に咲き始める大きな紅梅の木があり、必ずしも遅咲きではないようです。また、花の色も緋色をしたものから淡いピンク色のものまで多岐に渡っていますが、やはり紅梅は遠くからでもよく目立ちます。
 日本には数えきれないくらいたくさんの色の名前がありますが、「紅梅色」という色もあり、少し紫がかった紅色をしています。よく見かける紅梅の色とは違う感じで、こんな色をした紅梅があるのだろうかと思ったりもします。

 下の写真は紅というより、ピンク色をした紅梅です。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider Tele-Xenar 360mm 1:5.5 F5.6 1/125 Velvia100F

 まだ一分咲きといった感じで、ほとんどが蕾の状態です。所どころの枝先にこのように数輪から十数輪の花が咲き始めたばかりです。花は八重咲のようでボリューム感があります。びっしりとつぼみがついているので、満開になるとかなり見応えがあると思います。
 撮影した木は背丈が大きく、下の方には枝がほとんどないので、どうしても見上げるようなアングルでの撮影になってしまいます。そのため、背景に空が入ってしまい、花が綺麗に見えません。木の周りをグルグルしながらバックに生け垣が入る位置にある枝をやっと見つけて撮った一枚です。

 正午近くの撮影だったので、正面上方から太陽の光が当たっています。逆光状態です。
 画右側に白っぽい光が見えますが、これは生け垣の隙間からの木漏れ日です。これが少し強すぎて、梅の花よりもこちらに目が行ってしまうのですが、これがないと単調になってしまうのであえて入れてみました。

 これを撮影したのは2月の半ば頃だったので、今頃は満開になっていると思います。

スイセン(水仙)

 スイセンは寒い時期から咲く花のひとつですが、日当たりの良い場所では次々と咲き始めています。
 野性のニホンズイセンには一重咲きと八重咲がありますが、個人的には素朴な一重咲きの方が好きです。一本の茎にたくさんの花をつけ、それがほぼ同じ方向を向いているので何とも微笑ましい光景になります。寒い時期から咲くので寒さに強いのかと思っていましたが耐寒性はあまりないようで、温暖な地域を好むようです。

▲Linhof MasterTechnika 45 Fujinon W250mm 1:5.6 F5.6 1/60 Velvia100F

 背丈は30cmほどとあまり大きくないので、花と同じ目線で撮影するのは思いのほか苦労します。上から俯瞰するようなアングルで撮ると楽ですが、地面にある雑多なものが入り込んでしまい、これに花が埋もれてしまいます。
 上の写真も花と同じ高さにカメラを構え、バックに余計なものが入らない位置から撮影しました。

 スイセンには明るくて陽気なというイメージがあるのですが、この写真は露出を少し切り詰めて落ち着いた感じにしてみました。背景の色も濃い緑と濃い青と、比較的同系色だけで占められているので単純化できていると思います。
 この時期はあちこちでよく見かけるスイセンですが、いざ撮影しようとするとなかなか良いアングルが見つけられない花でもあります。

フクジュソウ(福寿草)

 フクジュソウは何といっても雪とのコラボが最高なのですが、残念ながら東京ではそのような光景を見ることはできません。そもそも、東京ではフクジュソウ自体、それほど容易にみられるものではなく、野生のものとなると山奥にでも行かなければ目にすることはないと思われます。
 また、フクジュソウの開花は傾熱性によるらしいので、曇天の日や日暮れ時は花が閉じてしまいます。開いた花を撮影するには晴れた日ということになります。

 下の写真は公園の片隅に咲いていたフクジュソウですが、木漏れ日があたっている花は開いていますが、その他の花は十分に開いていません。

▲Linhof MasterTechnika 45 Fujinon C300mm 1:8.5 F8.5 1/15 Velvia100F

 すぐ近くに松の木があり、地面は松の落ち葉で埋め尽くされています。周囲にある樹木で太陽の光は遮られていて全体に薄暗い環境ですが、かえってそれがフクジュソウの黄色を引き立ててくれています。特に光が当たっているところは黄色というよりも黄金色といった感じで輝いています。

 黄色は肉眼で感じるよりもずっと明るくて、露出オーバーになると質感が一気に失せてしまいます。かといってアンダー気味にすると色が濁ってしまい、撮影するには難しい色の代表格ではないかと思っています。感覚的にはほんのちょっとだけオーバー気味にするといった感じでしょうか。

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 まだまだ、咲いている花の種類は決して多くはありませんし、人間の手で植えられた樹木や草花がほとんどですが、この時期に一つの公園内で何種類もの花を見ることができるのはありがたいことです。公園なので人工物が多かったり人通りがあったりしますが、じっくり腰を落ち着けて撮影するにはもってこいの場所かも知れません。時には人工物や人物も良い被写体になることもありますし。
 また、今のところ、野草はオオイヌノフグリくらいしか咲いていませんが、これからどんどん野草の数も増えていきます。徒歩で行って一日中撮影していられるという地の利も近所の公園ならではです。

(2023.3.4)

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