500mlの現像液で4×5″シートフィルム4枚を処理する現像タンクの製作(1) 構想編

 以前、別のページでも書きましたが、私は4×5判のモノクロフィルムを自家現像する場合、主にパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。一度に最大で6枚のフィルムを処理することができるので便利ではありますが、使用する現像液の量も多いので、もう少し少ない量で処理できれば良いと常々思っていました。国内外の製品をいろいろ物色してみたところ、SP-445という製品があるようなのですがかなり高額なため、思い切って自作してみようと思い至りました。
 どのような現像タンクにするか、今回はその構想についてまとめてみました。

条件は、500mlの現像液で4×5″フィルム4枚を現像

 なぜ500mlかというと、それほど深い拘りがあるわけではないのですが、ブローニーフィルムの現像に使っている現像タンクに必要な現像液が500mlだからという程度のことです。500mlであれば作り置きした現像液を保管するにも場所をとらずに済みますし、ブローニーの現像液をそのまま4×5判にも使うことができるので便利です。
 また、時どきしかやらないのですが、モノクロフィルムのリバーサル現像に使う薬剤の中にはワンショットで作り置きのきかないものもあり、そういった点からも使う量は少ないに越したことはありません。

 しかし、現像液が500mlであっても、処理できるフィルムが1~2枚しかないというような状態ではあまり効率が良くないので、少ない現像液といえども一度に4枚くらいは処理できるようにしないとあまり意味がありません。何年か前に、パターソンのPTP115というブローニー用の現像タンクで2枚の4×5判フィルムを現像するためのホルダーを作ったことがありますが、これはあくまでも1枚とか2枚という現像をしなければならないという時のためであって、常用するためのものではありません。

筐体(タンク)を直方体にすることで内容積を削減

 現像液の量が最も少なくて済む方法は、たぶんバット(皿)に現像液を入れて処理する方法だと思われます。印画紙を現像するのと同じようなやり方です。
 ただし、この方法だと結構場所をとるし、暗室、もしくはかなり大型のダークボックスのようなものが必要になります。また、バットに複数枚のシートフィルムを入れることで、フィルム同士が重なってしまって現像ムラができないかという心配もあります。

 そこで、バットを立てたような形の現像タンク、すなわち、SP-445のような直方体の形状をした現像タンクにすれば液の量も少なくて済むだろうということで、あれこれと思案をしてみました。

 そうしてイメージしたのがこのような現像タンクです。

 現像タンク本体の上部に現像液の注入口、および排水口を設け、本体側面には水洗い時の排水口を設けます。そして 、本体内部にはシートフィルム用のホルダーを入れるという構造です。
 円筒形の現像タンクのようにフィルムを回転させる撹拌はできないので、倒立撹拌のみとなりますが、これはもう妥協するしかありません。もし、どうしても回転撹拌をしたいということであれば、現像タンク全体を回転させる治具を別途用意するしかありませんが、将来的に必要性を感じるようであれば、あらためて検討することとします。

 いま考えている現像タンクの内部構造(透視図)はこんな感じです。

 明るい場所で処理できることを前提としているため、注入口や排水口からの光が内部に入り込まないようにしなければなりません。
 本体上部にある注入口に注がれた現像液は、二つのすべり台を流れるようにして本体内部に入ります。向かい合わせに設置されたすべり台によって、注入口からの光の入り込みを防ごうという狙いです。

 また、本体側面の排水口からの光の入り込みを防ぐため、2枚の斜光板を設置しておきます。

 本体側面の排水口は水洗の時にしか使わない予定なので、キャップ(栓)をしておけば光が入ることもなく、斜光板はなくても良いと思ったのですが、リバーサル現像のときは第一現像や漂白の工程の後にも水洗いを行なうため、それを考慮して斜光板を設置することにしました。
 水洗の際は上部の注入口から水道水を流しっぱなしにすると、本体底部からの水が側面の排水口から流れ出ていくという想定で、水洗の効率を狙ったつもりです。

 そして、フィルムホルダーですが、下の図のようなものを考えています。

 フィルムの出し入れがやり易いように、ホルダーの側板にスリット(溝)をつけただけの簡単なものです。フィルムとフィルムの間隔は約5mmで、これだけの隙間があれば問題ないと思われますし、フィルムの裏表を気にする必要もありません。フィルムの間隔をもっと詰めれば、同じ寸法で6枚とか8枚も可能になると思いますが、工作が結構大変そうです。
 また、倒立撹拌によってフィルムやホルダー自体が動いてしまわないように、本体内に入れた後にホルダーを固定する押さえ板を設置する予定です。

 本体は上から1/3くらいの位置で上部と下部の二つの分離するようにする予定で、上部は蓋のような形で下部に被さるようにします。ここからの水漏れを防ぐため、ゴムパッキンのようなものが必要になるかも知れません。
 なお、フィルムを装填するときは暗室やダークバッグなどの中で行なう必要がありますが、中に入れた後は明所で処理できるのは他の現像タンクと同じです。

 さて、この現像タンクに必要な現像液の量ですが、4×5判フィルムを縦位置にした状態で、若干の余裕をもって現像液に浸る深さを140mmとして内容積を計算すると、504mlとなります。実際にはフィルムホルダーや斜光板なども浸ることになるので、たぶん、460mlくらいで足りるのではないかと思います。

 素材はすべてアクリル板で作ることを想定しています。そこそこの強度もありながら加工のし易さもあり、高度な工作機械がなくても比較的簡単に加工できますし、材料費も安く済むのが理由です。
 その他には注入口や排水口に取付けるブッシングのようなものと、それ用のキャップがあれば材料は事足りそうです。

排水をシミュレーション

 もう一つ、現像タンクの重要な機能として、排水がスムーズにできるかということがあります。出来るだけ短時間に排水でき、そして、内部に現像液が残らないようにしなければなりません。光が入り込まないように斜光板を何枚も設置しているため、これがスムーズな排水を妨げる可能性があります。

 そこで、うまく排水ができるかどうかを簡単な図で確認してみました。
 下の図は、現像タンクを正立させた状態から、注入口のある方向に徐々に回転させていったときに、内部の現像液がどのように動くかを簡単に示したものです。

 上の図でわかるように、正立状態から180度回転(図の⑤の状態)させた時点で、斜めに設置された斜光板(すべり台)のところにわずかに現像液が残ってしまうことになりそうです。
 この残った分を排出するためには、さらに45度ほど回転(図の⑥の状態)させたのち、135度くらいの位置(図の④の状態)まで戻す必要がありそうです。倒立すればすべて排水完了というのが望ましいのですが、余計にひと手間が必要になってしまい、このあたりは再検討の余地があるかも知れません。
 簡単なシミュレーションなので、実際にはこの通りにいくかどうかわかりません。正確な図面を描いたうえで再度、検討が必要になりそうです。

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 手作り感満載の現像タンクですが、この構想通りにいけば案外と使い物になるのではないかと楽観視しています。
 また、アクリル板やブッシングなど、すべて購入したとしても材料費は3,000円もかからないと思われますので、手間賃の方がはるかに高額になってしまいます。購入したほうが結果的には安く済むと思いますが、作る楽しみということで。
 作り始める前にはもっと正確な図面を起こさなければなりませんが、もうしばらくの間、練り直しも含めて構想を温め、頃合いを見計らって材料の調達を始めようと思っています。
 実際の製作についてはあらためてご紹介できればと思います。

(2023.2.21)

#現像タンク #大判フィルム #フィルムホルダー

67判のポジフィルムをカバーするライトボックス用ルーペの作成

 私が主に使っているフィルムはリバーサルフィルムの中判と大判です。現像が上がったリバーサルフィルムはライトボックスで確認をするわけですが、その際、ピントやブレなどの具合を調べるためにルーペを使います。
 そのためのルーペは数個持っていますが、いずれもルーペのレンズの直径があまり大きくないので一度に見ることのできる範囲は狭く、中判や大判のフィルムを確認するためにはルーペをあちこち移動させなければなりません。これが結構なストレスになります。もちろん、大口径のルーペも販売されてはいますが驚くほど高額です。
 そこで、大判フィルムはともかく、せめて67判フィルムをカバーできるルーペをということで、家にころがっているガラクタを集めて作ってみました。

今回、作成するルーペの仕様

 私が使っている中判のサイズは圧倒的に67判が多いので 、作成するルーペの大きさとしては、このフィルムをカバーするサイズとします。「カバーする」というのは、フィルムの上にルーペを置いた状態で、ほぼフィルム全体が視野に入るということを意味します。67判の対角線長は約88mmありますから、理想は直径88mm以上のレンズということになりますが、それだとかなり大きくなってしまい、手の小さな私には持ちにくくなってしまいます。フィルムの四隅が少しカットされるのは我慢するとして、今回は直径80mm前後ということにします。

 次にルーペの高さですが、ライトボックス上にフィルムを置いたとき、どれくらいの位置から見るのが最も見易いのかをいろいろ試してみました。低すぎると上体を前に倒さなければならないので、あまり有り難くありません。かといって高すぎると、これまたルーペが巨大になってしまい、使い回しに手を焼いてしまいそうです。
 結局、ライトボックスの上面から10~15cmくらいが最も使い勝手がよろしいというのがわかったので、ルーペの高さとしてはおよそ10cmとすることにしました。

 さて、ルーペの倍率をどれくらいにするかですが、私が普段使っているルーペの倍率は約6倍と約8倍で、細部をしっかり確認するにはちょうど良いのですが、ポジ全体を見渡すには倍率が高すぎます。もう少し倍率を落とした、3~4倍あたりが使い易そうですので、今回は4倍を目安にすることにしました。

 これらの条件を満たすレンズを決めなければならないのですが、ルーペの高さから逆算すると、ライトボックス上面からレンズまでの距離が70~80mmが適当な感じです。中間値をとって75mmとして計算してみます。

 レンズの焦点距離(f)、レンズから物体(フィルム)までの距離(a)、およびレンズから虚像までの距離(b)の関係は下の図のようになります。

 ここで、a=75mm、倍率mは4倍と設定しているので、レンズから虚像までの距離(b)は、

  b = m・a

 で求められます。
 よって、

  b = 4 x 75 = 300mm

 となります。

 次に、これを満たすレンズの焦点距離(f)ですが、

  1 / a - 1 / b = 1 / f

 の関係式に各値を代入すると、

  1 / f = 1 / 75 - 1 / 300

 よって、f = 100mm となります。

 すなわち、焦点距離100mmのレンズが必要ということです。

ルーペの作成に必要なパーツ類

 焦点距離100mmのレンズというと、クローズアップレンズのNo.10がこれに相当しますが、残念ながらそんなものは持ち合わせておりません。ガラクタをあさってみたところ、直径82mmのクローズアップレンズ(No.2)が1枚と、直径77mmのクローズアップレンズ(No.2、No.3、No.3、No.4)が4枚、計5枚がでてきました。
 なぜこんなにクローズアップレンズがあるかというと、昔、35mm判カメラで接写にはまったことがあり、その時に買い集めたものが今も使われずに残っていたというものです。
 82mm径であれば大きさも問題ないのですが、No.2が1枚ではどうしようもないので、少し小さくなってしまいますが77mm径のクローズアップレンズを組み合わせて使うことにします。

 クローズアップレンズの焦点距離は以下のようになっています。

  No.2 : 500mm
  No.3 : 330mm
  No.4 : 250mm

 2枚のレンズを組み合わせた時の焦点距離は以下の式で求めることができます。

  1 / f = 1 / f₁ + 1 / f₂ - d / (f₁・f₂)

 この式で、f₁、f₂ はそれぞれのレンズの焦点距離、dはレンズ間の距離を表します。

 この式から、これらのクローズアップレンズを組み合わせて焦点距離100mmを作り出すには、No.3(330mm)を2枚とNo.4(250mm)を1枚、計3枚で100mmが作り出せることがわかります。厳密にはクローズアップレンズ同士の間隔ができるので少し変わってきますが、そんなに精度を求めているわけではないので良しとします。

▲今回使用したクローズアップレンズ (左からNo.4、No.3、No.3)

 また、クローズアップレンズを同じ向きで重ね合わせると像の歪みが大きくなるので、1枚をひっくり返して反対向きにする必要があります。反対向きにするとオネジ同士、またはメネジ同士が向かい合ってしまい、ネジ込みすることができなくなってしまいます。そこで、これらをつなぐアダプタを作らなければなりませんが、これは使わなくなった77mm径のフィルターの枠を2個、流用することにします。

▲アダプタ用に使用したフィルター(2枚)

 そして、ライトボックス上面からレンズまでの高さを稼ぐため、これも昔使っていた金属製のレンズフードを使うことにしました。おあつらえ向きに77mm用のフードがあったので、まさに復活という感じです。フード先端の内径が約80mmあるので67判の対角には少し足りませんが、まぁ、我慢することにしましょう。
 また、ライトブックスは下から光が照射されるのでルーペ内には外光が入らない方が望ましく、金属製のフードは打ってつけです。

▲77mmのレンズフード(金属製)

 後は、レンズまでの距離(高さ)が不足する場合、それを埋めるためのスペーサーとして、やはり使わなくなったフィルター枠を使います。

ルーペの組み立て

 組み立てと言ってもクローズアップレンズやフィルター枠をはめ込んでいくだけですが、作らなければならないのがクローズアップレンズ同士をつなぐアダプタと、レンズフード取り付けのためのアダプタです。
 まず、クローズアップレンズを向かい合わせにつなぐために、上にも書いたように77mm径のフィルターからガラスを取り外した枠を反対向きに接着剤でくっつけます。接着面は非常に狭くて接着剤だけでは強度的に心もとないので、内側にグルーガンで補強しておきます。
 接着剤がはみ出したりしてあまり綺麗でないので、表面に自動車用の絶縁テープを巻いておきます。

▲フィルター枠(2個)を貼り合わせたアダプタ

 それともう一つ、レンズフードを取付けるためにオネジをメネジに変換しなければならないので、不要になったフィルターの枠をひっくり返してレンズフードに接着しなければなりません。これも同じように接着剤でくっつけ、内側をグルーガンで補強しておきます。

 あとは下から順に、レンズフード、クローズアップレンズ(No.4)、アダプタ、クローズアップレンズ(No.3)、クローズアップレンズ(No.3)と重ねていけば完成です。
 今回使用したクローズアップレンズのNo.3のうちの1枚は枠が厚いタイプだったので問題ありませんでしたが、枠が薄いタイプだとレンズの中央部が枠よりも飛び出しているため、重ねると干渉してしまいます。その場合は、フィルター枠を1枚かませるなどして、干渉しないようにする必要があります。

 下の写真が組み上がったルーペです。

 大きさがわかるように隣にブローニーフィルムを置いてみました。
 いちばん上に乗っているのは保護用(プロテクター)フィルターですが、これもガラクタの中から出てきたので、上側のクローズアップレンズを保護するためにつけてみました。使用上はなくても何ら問題はありませんが、クローズアップレンズが傷ついたり汚れたりするのを防いでくれるという点では役に立っていると思います。
 また、ルーペの下に置いてあるのが67判のポジ原版です。四隅が少しはみ出しているのがわかると思います。

 No.10のクローズアップレンズがあれば1枚で済んだのですが、有り合わせのもので作ったのでちょっと不細工になってしまいました。フィルター名やレンズ名の刻印がたくさんあってにぎやかですが、気になるようであれば適当なクロスか何かを巻いておけば問題ないと思います。

ガラクタから作ったルーペの使い勝手

 こうして完成したルーペですが、大きさや重さは以下の通りです。

  高さ : 105.5mm
  外径 : 80mm(上側) 85mm(下側)
  重さ : 224g

 クローズアップレンズ3枚と保護フィルター1枚、金属製のフードやフィルター枠を使っているので、やはりちょっと重いという感じはします。
 また、もう少し外径が細い方が私には持ちやすいとは思いますが、十分に許容範囲内です。

 実際にライトボックス上でポジ原版を見てみると、若干、糸巻型の歪みが感じられますが気になるほどではありません。
 67判の四隅はフードによってカットされてしまいますが、それでもほぼ全体が視野に入ってくるのでルーペを移動させる必要もなく、とても便利です。
 倍率は正確にわからないのですが、たぶん4倍程度といった感じです。ピントの甘いところやブレているところなどもしっかりとわかりますから、十分な倍率だと思います。

 そして、いちばん驚いたのがポジ原版の画像がものすごく立体的に、浮き上がって見えることです。広い範囲が見えるのでそう感じるのかもしれませんが、肉眼で見たのとは別の写真を見ているような印象です。

 ピントの位置も特に問題なく、ルーペをライトボックス上に置いた状態でフィルムにピントが来ています。
 もし、ピント位置が合わないようであればフィルター枠をかませようかと思っていましたが、その必要もなさそうです。

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 ガラクタを集めて作ったので見てくれは良くありませんが、クローズアップレンズを交換したり減らしたりすれば倍率も変えることができますし、ピント位置の調整もフィルター枠などを使うことで容易に行なうことができます。実際にクローズアップレンズを1枚外し、2枚構成にしてポジ原版を見てみましたが、倍率は少し下がるものの、十分に使用できるレベルでした。
 細部をシビアに点検するときは6倍以上のルーペが必要ですが、67判をほぼ視野に入れることができるメリットは大きく、今後、活躍してくれそうです。

(2023.1.12)

#ルーペ #クローズアップレンズ #リバーサルフィルム #ライトボックス

35mmフィルムケースを使って、ブローニー用フィルムケースの作成

 最近は35mm判フィルムを使うことが少なくなったのですが、10年くらい前までは中判や大判よりも、使用量が圧倒的に多かったのが35mm判フィルムです。35mmフィルムは一本ずつケースに入っているため、このケースがどんどんたまっていきます。捨てるには忍びないと思い、段ボール箱に放り込んであるのですが、ほとんど使われることはありません。小さなネジなどを入れるのに使うこともありますが、そんなことで使われる数はたかが知れています。
 そこで、この空ケースを使って、ブローニーフィルムを入れるケースを作ってみました。

35mmフィルムケース2個を使い、ブローニー用フィルムケースを1個作る

 昔はブローニーフィルムを現像に出すと、5本用のフィルムケースがおまけのようについてくることがありました。いま私が使っているフィルムケースも無料でいただいたものです。
 しかし、長年使っているため、あちこちにひびが入ったり欠けたりしているので、新しいものと交換したいと思うのですが、今は無償で手に入れることができません。ブローニーフィルムが5本入る専用のケースは市販されていますが、1,600円ほどと驚くほど高額です。
 作る手間を考えれば買った方が安上がりかもしれませんが、使い道のない35mmフィルムケースの再利用という点では一役買ってくれそうです。

 35mmフィルムのパトローネの径とブローニーフィルムの巻き径に大きな差はないので、35mm用フィルムケースにうまい具合に納まります。しかし、そのままでは長さ(高さ)が足りないので、35mm用フィルムケースを少し継ぎ足して、ブローニーフィルムが入るようにします。
 
 下の写真を見ていただくとわかり易いと思いますが、フィルムケース2本のうち1本を、下から25mmくらいの位置でカットします。カットする位置に目印となる線を入れておきます(写真①)。
 カットする寸法は1mmくらい前後しても問題ありませんが、複数個つくるときに同じ長さになるようにしなければならないので、正確に決めておく必要があります。

 実際にカットした状態が写真②です。

 カットする際は目印の線に合わせてガムテープなどを巻き付けて、それに沿ってカットしていくと曲がらずに綺麗に切ることができます。
 カットしたケースの下側(底の部分)はフィルムケースのキャップになります。
 また、カットした上側の部分はケース内側の立ち上がりに使用します。そのままだと直径が同じで中に入らないので、約5mmの幅でスリットを入れます(写真③)。

 この立ち上がりをもう1本のフィルムケースの中にはめ込み、接着します。
 今回使用したフィルムケースは富士フィルムのものですが、材質はHDPE(高密度ポリエチレン)製のため、通常の接着剤は使えません。ポリエチレンやポリプロピレンを貼り合わせることができる接着剤が必要です。セメダイン製のPPXやスーパーXハイパーワイド、コニシ製のボンドGPクリヤーなどが使えますが、今回は手元にあったボンドGPクリヤーを使いました。硬化するまでに若干時間はかかりますが、接着直後であれば張り合わせ位置の修正ができるので便利です。

 接着する部分の長さが11mm、立ち上がりとして上に飛び出す部分が14mmとなるようにしました。
 実際に立ち上がり部分を接着した状態が写真④です。

 なお、立ち上がり部分は5mmほどの幅で切り取ってあるので、ケースの中にはめ込んだ際に若干の隙間ができます。この隙間はグルーガンで埋めておきます。

 切り取った下側の部分をキャップとして被せると、ケースの高さは約75mmになります。
 ブローニーフィルムの高さは約65mmなので余裕があり過ぎるように思いますが、フィルムがラッピングされた状態で入れるにはちょうど良い高さになります。

 接着した立ち上がりですが、無理やり剥がそうと力を入れて引っ張れば取れてしまいますが、通常の使用では問題ないくらいの強度はありそうです。

フィルムケース5個をつないで、5本用のフィルムケースにする

 こうして出来上がったフィルムケースをそのまま使っても問題ないのですが、1本ずつのケースでは使い勝手があまりよくないので、このケース5個を横につないでフィルムが5本入るケースにします(もちろん、4本用でも6本用でも構いませんが)。
 5個のケースをどのように配置するかは自由ですが、使い勝手が良くて、カメラバッグの中に入れても納まりの良い良い配置というと、やはり横一列という配置だと思います。

 しかし、円筒形(正確には富士フィルム製のケースは完全な円筒形ではなく、わずかに上が広いテーパになっています)の接着面は非常に細い線状でしかないので、接着しても強度がなく、少し力を加えると簡単にとれてしまいます。
 そこで、5個のケースを横一列に接着した後、片面に薄いアクリル板を貼りつけることにします。

 5個のケースを接着した状態が下の写真です。

 貼りつけるのは板厚が1.6mmの透明なアクリル板です。フィルムケースと同じ色合いにするため、両面にサンドペーパーをかけてすりガラス状にします。
 アクリル板は切断や切削などの加工も比較的簡単にできますし、接着も通常のプラスチック用の接着剤が使用できますが、接着する片方がポリエチレンなので、やはりGPクリヤーを使います。

 アクリル板を貼りつけた状態はこんな感じです。

 ポリエチレンは塗装もできませんが、アクリル板であれば塗料も問題なく乗るので、お気に入りの色を塗ることも可能です。
 また、アクリル板の左右両端は、できるだけ段差が出ないように斜めに削っておきます。

 なお、補強の目的で、底面に厚さ0.3mmのプラバンを貼りました。アクリル板を貼れば強度的には問題ないと思いますが、念のためということで。

キャップは接着せずにバラの状態で

 キャップとして使用するケースの下側の部分ですが、カッターナイフでカットした場合、小口(断面)の角が鋭利になっているので、軽くヤスリをかけて角をとっておきます。
 キャップはスカスカでもなく、かといってきつい感じもなく、程よい抵抗感で嵌めたり外したりできます。グルーガンで埋めたところが滑り止めのような効果を発揮しています。

 さて、このキャップをどうするかですが、ケースの入れ物と同じように5個を横一列に並べて接着し、アクリル板を貼りつけて一体化することも考えましたが、とりあえずそのまま、バラの状態で使用してみることにしました。
 5個をつないでしまうと、キャップの開け閉めがし難くなるのではないかという懸念と、実際に使う際は5個のうちのどれか一つだけなので、バラ状態の方が使い易いだろうという思いからです。
 ただし、バラだとキャプをなくしてしまう可能性が高まりますが、その場合はキャップだけ新たに作ればよいので、大きな問題ではないでしょう。
 なお、キャップ側も連結したほうがケース全体の強度は増すと思います。

 しばらく使ってみて、使いにくいとか問題があるようであれば、キャップの連結も試みてみようと思います。

 また、フィルムケースは乳白色なので、中がぼんやりと見えます。撮影前のフィルムなのか撮影済みなのかが一目でわかるので、意外と便利かもしれません。市販のケースは遮光性を保つため、色付きの素材を使っていますが、通常はカメラバッグの中に入れておくので、それほど遮光性に神経質にならなくても大丈夫かと思います。

 これまで使っていたフィルムケースと比べると、横の長さが約5mmほど長くなっていますが、使う上で特に支障はないと思われます。

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 フィルムケースというのは、フィルムを2~3本しか持っていかないときはなくてもそれほど支障のあるものではありませんが、長期間の撮影行で20本、30本と使うときは必要なものです。フィルムの種類を分けたり、撮影前と撮影後のフィルムを分けたり、また、カメラバッグの中でフィルムが行方不明になるのを防ぐということにも役立ちます。
 今回のケースの自作で35mmフィルムのケース10個を使いましたが、もともとついていたケースの蓋が10個残ってしまい、これの使い道は思いつきませんので廃棄しました。

(2022.8.11)

#フィルムケース

4×5判シートフィルムをブローニーフィルム用現像タンクで現像する

 私はモノクロフィルムを使う頻度はリバーサルに比べるとそれほど高くありませんが、それでも時どき、ブローニー判や4×5判のモノクロフィルムで撮影を行ないます。撮影後のモノクロフィルムは自家現像をしており、4×5判のシートフィルムの現像にはパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。このPTP116という現像タンクは現像液が大量に必要なので、フィルムの枚数が少ないときにはもったいない気がします。
 そこで、フィルム枚数が少ない(1~2枚)ときには、ブローニーフィルム用のパターソンのPTP115という、少し小ぶりの現像タンクで4×5判シートフィルムを現像していますので、今回はそれをご紹介したいと思います。
 なお、実際に作成したのは何年も前のことであり、製作過程の画像がありませんのでご了承ください。

パターソンのPTP115で4×5判シートフィルム2枚を現像

 パターソンのPTP115という製品は、35mm判フィルム、およびブローニーフィルム用の現像タンクで、ブローニーフィルム用のリールは1本しか入りませんが35mm判用であれば一度に2本のリールを処理することができます。一回に使用する現像液の量は500mlなので、比較的少なくて済みます。

▲パターソン PTP115 現像タンク

 PTP115は4×5判シートフィルムを横置きにしたときにちょうど収まる深さがありますので、フィルムを適当にタンクの中に放り込んでおいても現像はできるかもしれません。しかし、フィルムは水分を含むと腰が弱くなって現像タンクの内壁に張り付いてしまう可能性があります。
 また、フィルムを何らかの方法で固定しておかないと現像タンクの中を自由に泳ぎ回ってしまうため、フィルム同士がくっついてしまう可能性も考えられ、あまり好ましくありません。

 フィルムをくるんと丸めて輪ゴムで止めて、それを現像タンクに入れて処理するという方もいらっしゃるようですが、撹拌の勢いで輪ゴムが外れてしまうのではないかという心配があり、私は試したことがありません。

 私は2枚のシートフィルムを固定するための簡単なホルダー(治具)を自作し、それを用いています。
 現像タンク内のスペースとしては4枚くらいは入れられると思うのですが、一度に4枚を処理するのであればPTP116を使った方が楽です。あくまでも1枚とか2枚の現像をするとき用です。
 また、フィルムを4枚入れてしまうと現像タンク内がぎゅうぎゅう詰め状態になり、回転攪拌ができなくなってしまいます。パターソンの製品は回転撹拌ができるようになっているので、それを活かすためにあえて2枚の処理用としています。

シートフィルムを固定するホルダー

 4×5判のシートフィルムは現像タンク内の内壁に沿って湾曲させなければなりません。手でフィルムの両端を挟んで内側に押すとフィルムが湾曲しますが、その状態を保持するようなホルダーがあればよいので、下の図、および写真のような簡単なものを自作しました。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー
▲PTP115用 シートフィルムホルダー

 素材は厚さ0.15mm、サイズは100mmx200mmのステンレス板です。1枚400円ほどだったと思います。
 この厚さであれば切ったり曲げたりも簡単にできますし、いったん曲げてしまえば自然にもとに戻ることはありません。0.15mmというとペラペラな感じに思われるかもしれませんが、ステンレスなのでかなりしっかりしています。

 現像タンクの内壁に沿うように全体を湾曲させるのですが、直径3~4cmくらいの丸棒に巻き付けるようにして、急激な力を加えずゆっくりと転がすように曲げていくと割ときれいにできます。もちろん、金型で成形したようにはいきませんが、多少の凹凸があった方が現像液の流れる隙間になって良いかも知れません。

 ホルダー両端の折り返してあるところにフィルムの端を入れると、フィルムが元に戻ろうとする力でホルダーに固定されます。ホルダーの中央部を内側に山折りしてあるのは、水分を含んだフィルムが柔らかくなってホルダーに張り付いてしまうのを防ぐためです。
 また、ステンレス板の下側を若干短くして、両端を折り返したときに斜めになるようにしていますが、これはパターソンの現像タンクが上にいくにしたがって内径がわずかに大きくなっており、それに合わせるためです。
 とはいえ、それほど精密に加工する必要はないので、現物合わせといった感じです。

 実際に4×5判シートフィルムを入れるとこんな感じになります。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー(フィルムを入れた状態)

 フィルムの乳剤面が内側になるようにホルダーにはめ込みます。

 このホルダーを2枚作って、現像タンクの中に向かい合わせに入れます。
 その状態が下の写真です。

▲PTP115とシートフィルムホルダー

 ホルダー自体は現像タンク内でどこにも固定されていませんので、倒立撹拌を行なえば多少は動くと思いますが、特に問題はないと思います。また、2枚のホルダーの折り返した両端同士が接しているので、動くとしても円周方向であり、現像タンクの中心方向に動くことはありません。

 なお、ステンレス板の表面はとても滑らかですが端面や角はざらついていたり尖っているので、フィルムを傷めないためにも、サンドペーパーなどで出来るだけ滑らかにしておきます。
 また、油などを落とすためにアルコールや中性洗剤できれいに洗っておきます。

回転撹拌用の羽根

 パターソンの現像タンクは、中央にセンターコラムと呼ばれる回転撹拌用のパイプ(筒)を入れないと光が入り込んでしまうのですが、通常はこのセンターコラムにリールを差し込み、回転撹拌を行ないます。つまり、リール(フィルム)を回転させる仕組みになってるわけです。
 しかし、今回のようにリールを使わずにフィルムがホルダーとともにほぼ固定状態ですので、ここにセンターコラムだけを入れて回転させてもほとんど意味がありません。倒立撹拌を行なえば何の問題もありませんが、せっかく回転撹拌できるようになっているので使えるようにしてあります。

 上の写真でわかると思いますが、2枚のフィルムを入れると現像タンクの中央にレモン型の空間ができます。この空間を利用して撹拌用の羽根を回転させるようにしています。
 羽根の部分は35mmフィルムのケースとアクリル板、そしてそれを固定するステンレス板で自作しています。

▲PTP115用センターコラム(右)と撹拌用の羽根(左)

 フィルムケースの素材は弾力があるので、回転撹拌用のセンターコラムに抜き差しできるようにするためにはうってつけです。
 この羽根をセンターコラムに装着して、通常の回転撹拌のようにすれば現像タンク内で羽根が回転して水流が発生します。フィルムを回転させるのではなく、現像液を撹拌するという方式です。
 もちろん、倒立撹拌でも全く問題はありません。

▲センターコラムに撹拌用の羽根を取付けた状態

現像上のトラブルもなく、問題なく使える

 実際にこれを作ったのは4~5年前で、現像するフィルム枚数が少ないときはこれを使っていますが、これまでに現像ムラなどのトラブルは一度もおきたことがありません。
 最初は、フィルムがホルダーから外れてしまうのではないかと心配もしましたがそんなこともなく、回転撹拌しても倒立撹拌してもしっかりと保持されていました。

 また、実際に使ってみて感じたのは、フィルムをホルダーにはめ込むのが実に簡単ということです。ホルダーにはめる際は暗室やダークバッグの中などの真っ暗闇で行なうわけですが、構造が単純なだけに変なところにはまってしまうこともなく、手探りでも簡単に行なえます。
 唯一、注意をするとしたら、フィルムの裏表を間違えないようにするということぐらいでしょうか。実際に裏表を反対にした状態で試したことはありませんが、乳剤面の水流が不十分で現像ムラが起きる可能性は考えられます。

 なお、一回に必要な現像液の量は500mlです。

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 回転撹拌をあきらめれば、4枚を同時に現像できるようなホルダーも考えられますが、形状が複雑になるので加工精度が求められ、手作業で製作するのは難しいかも知れません。一度に多くの枚数を処理できるのは効率的ですが、少しずつ現像の条件を変えたいというときにはこのほうが無駄がなくて便利かもしれません。

(2022.5.14)

#パターソン #PATERSON #フィルムホルダー #大判フィルム #現像タンク

大判レンズのシャッター速度と絞りを実測

 大判カメラ用のレンズにはシャッターが組み込まれていて、絞り羽根もシャッターも電子制御とかではなく、すべて機械的に動くようになっています。バネや歯車、カムなどの組合せでこれらを正確に動かしているわけですから本当にすごいと思います。
 この機械式シャッターがどの程度の精度で機能しているのかを実測してみました。
 高精度の測定器を用いたわけではありません。あくまでも簡易的な測定ですので精度はそれほど高くないことをあらかじめお断りしておきます。

シャッター速度の測定方法

 シャッター速度の計測は下の図のような方法で行なうことにしました。

 シャッターが開いたり閉じたりする際に、光が透過、遮断される状態を感知するための装置(治具)が必要になりますが、これは自作します。この治具をレンズの下部に置き、レンズ上方から光をあてて、シャッターを切ったときの波形をオシロスコープでつかまえようというものです。
 治具の他に必要な機器類は安定化電源、オシロスコープ、LED照明、そして外光を遮断するための暗箱(これも自作)だけという簡単なものです。

 まず、シャッターの開閉を感知するための治具ですが、これはフォトトランジスタを使って実現することにしました。電子パーツの箱をかき回したところ、東芝製のフォトトランジスタ(すでに生産終了品)があったのでこれを使います。
 あとは抵抗器、端子台くらいがあれば何とかなりそうです。

 作成する治具は下の図のようなものです。

 細かな説明は省きますが、フォトトランジスタは光があたると電流が流れるというスイッチのような役目を果たしてくれます。このフォトトランジスタと抵抗器を上の回路図のように接続して、小さなケースに収めれば治具は完成です。フォトトランジスタの受光部に光があたるよう、ケースの上側に小さな穴を開け、ここにフォトトランジスタを差し込みます。
 上図右側の写真がケースに収めた状態ですが、ケースから出ている3本の電線のうち、赤と黒の線は電源に、黄色の線はオシロスコープに接続します。

 シャッターの開閉によりフォトトランジスタから流れる電流の波形は、角が取れた台形のような形をしています。

 台形波形の底辺の位置がシャッターが閉じている状態、上辺の位置が開いている状態になります。シャッターが開き始めてから開くまでの立ち上がり波形の1/2の位置、および、閉じ始めてから閉じきるまでの立下り波形の1/2の位置の間をシャッターが開いている時間(露光時間)とします。

シャッター速度の測定結果

 今回、計測対象としたレンズは、フジノンの大判レンズ「FUJINON W180mm 1:5.6」です。このレンズのシャッターにはコパルNo.1が使われており、シャッター速度は1~1/400秒まで、10段階あります。
 治具に外光があたらないようレンズを自作の暗箱に乗せ、上からLED照明をあてて計測します。

 実際に計測した結果は下記の通りです。
 それぞれのシャッター速度の位置で5回ずつ計測し、平均値、分散、偏差を求めてみました。

 オシロスコープの限界があるので、シャッター速度によって分解能(最小計測時間)を以下のように変えています。
  1~1/2秒   10ms
  1/4秒     5ms
  1/8秒     2ms
  1/15~1/30秒  200μs
  1/60~1/400秒 100μs

 この結果からもわかるように、低速側(1~1/8秒)では規格値よりも若干速め(開いている時間が短い)、高速側(1/15~1/400秒)では規格値よりも若干遅め(開いている時間が長い)という傾向があります。規格値に対して最もずれが大きいのが1/30秒の時ですが、それでも5.6%のずれですからかなり正確ではないかと思います。
 メーカーが規定している許容範囲がどのように設定されているのか詳しくは知りませんが、何年か前にこのレンズとは別のレンズを修理に出したことがありました。修理から戻ってきた際に検査結果表を見たら、シャッター速度は+30%~-20%くらいの許容値が書かれていたように記憶しています。
 規格値に対して30%のずれということは、大雑把に言うと絞りにして1/3段くらいに相当します。それくらいは許容範囲ということなのでしょう。

 それにしても、機械仕掛けだけでこれだけの精度を出すわけですから驚きです。

絞り開口部の測定方法

 次に、絞り羽根による開口部の測定です。
 これは開口部をデジカメで撮影し、その画像から開口部を多角形として近似的に面積を求めます。考え方を下の図に示します。

 任意の多角形(上の図では五角形)の頂点(P1~P5)と、任意の原点(P0)をプロットし、隣り合った2点ごとに原点からのベクトルの外積を求め、これを積算していくという方法です。
 この方法で任意の多角形の面積は以下の一般式で求めることができます。

 実際にレンズの開口部を撮影し、各頂点をプロットしたのが下の写真です。

 ここでは28点をプロットしています。絞り羽根の内縁は弧を描いているので、厳密にはもっと多くの頂点をプロットすべきですが、そこまでやっても有効値は得られないだろうということで28点にしました。
 各頂点の座標は、原点からの画像の画素数で求めています。
 上の写真は約1,600万画素のデジカメで撮影したものを若干トリミングしています。トリミング後の長辺が約4,480画素あり、この画素数で写している長さは約210mmですので、計算上の分解能は約0.047mmということになります。

 そして、この画像から各頂点間の長さを求めるため、基準として外側ジョウを40mmに開いたノギスを写し込んでいます。このノギスのジョウ間の画素数をもとに各頂点間の長さ(ベクトル)を求め、上の計算式にあてはめて開口部の面積を算出します。

絞り開口部の測定結果

 測定に用いたレンズはシャッター速度の計測に使ったのと同じ「FUJINON W180mm 1:5.6」です。このレンズの絞り羽根枚数は7枚です。測定対象はF5.6~F45までの7点です。なお、レンズの後玉を外して撮影しています。

 測定結果は以下の通りです。

 絞りは1段絞るごとに開口部の面積が半分になるので、F5.6のときの開口部面積を基準にして、各絞り値の時の比率を出してみました。いずれも基準値に対して±6%以内におさまっています。シャッター速度と同様に、この程度のずれに納まっているというのはやはり驚きです。
 最小絞りあたりになると開口部の形状が崩れてしまうレンズを見かけることがありますが、このレンズはF45まで絞っても、元の形と同様に比較的綺麗な7角形を保っていました。 

 露出はシャッター速度と絞りの組合せで決まるので、今回の測定結果からすると、それらの組み合わせで最もずれが大きくなるのが絞りF45、シャッター速度1/30秒の時で、露出がおよそ10%増えてしまうことになります。10%というのは通常の撮影ではほとんど気にならない誤差の範囲だと思います。
 シャッター速度や絞りが正常に機能せず、規格値から大きくずれてしまうと露出オーバーや露出アンダーの写真になってしまうわけですが、出来上がった写真を見てそれがわかるというのは、それぞれ50%以上のずれが生じている状態だと思われます。

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 今回、大判カメラ用のレンズのシャッター速度と絞りを実測してみましたが、素人が簡易的に計測しているので計測誤差はかなりあると思います。ですが、それを差し引いても傾向はつかめたのではないかと思います。
 手持ちのレンズすべてを計測するのは時間もかかり大変ですが、レンズを修理したり清掃した後に確認の意味で計測してみるのは価値があると思います。

(2022年1月25日)

#フジノン #FUJINON #シャッター速度 #絞り

マグネット式 角型フィルターホルダーの作成

 風景撮影には欠かせないフィルターの一つに「ハーフNDフィルター」があります。例えば、画面の上半分と下半分の明暗差が大きいとき、明るい方にNDがかかるようにして使うわけですが、そのため、通常のフィルターのように円形ではなく、上下(もしくは左右)に移動できるよう、主に長方形をしています。
 円形のフィルターのように直接レンズの前枠にねじ込むというわけにはいかず、まずはフィルターホルダーをレンズに取付け、フィルターホルダーに設けられている溝にこの角型フィルターを差し込みます。
 これが結構面倒くさく、少しでも手間が省けるようにということで、マグネットでフィルターを保持するホルダーを作ってみました。

角型フィルターの両側面を磁石の力で保持

 角型フィルターをより簡単に取付けができるよう、マグネット式やバネ式などのホルダーがいろいろ市販されていますので、そういったものを購入すれば済むのですが、現在保有している角型フィルターに専用のアダプターを取付けたり何かと費用が嵩んでしまいます。そこで、できるだけ低コストで保有しているフィルターを使えるようにということで、マグネット式を採用することにしました。

 今回作成する角型フィルターホルダーのイメージはこんな感じです。

 ホルダー自体はアクリル板とプラスチック板で自作しますが、レンズの前枠にはめ込むところはケンコー製のアダプターリング(82mm)を使います。これは、今まで使ってきたフィルターホルダー用のもので、それをそのまま流用します。
 私が使っている角型フィルターは100mmx150mmサイズのものがほとんどで、前枠径が大きなレンズや画角の大きなレンズでも対応できますが、非常に短焦点のレンズでフィルターを使うというような場合、フィルターホルダーにケラレてしまうことがあります。
 そのため、フィルターホルダーの厚みはできるだけ薄いのが理想的で、2枚重ねるときでもフィルターが密着する方が望ましいので、マグネット式にしました。さすがに角型フィルターを3枚重ねることはないと思われるので、2枚まで対応できるものとしました。

 角型フィルターの厚さは2mmしかないので、これを両側面からマグネットで支えるために、磁力が強いネオジム磁石を使用することにしました。

フィルターホルダー本体の構造

 フィルターホルダー本体はできるだけ薄く、かつ軽くしたいため、厚さ2mmのアクリル板を組み合わせて作ります。

 厚さ2mmのアダプターリングを差し込むための溝を持った構造になっています。アダプターリングを差し込んだ状態で、ホルダー本体は自由に回転させることができます。
 今回使用するアダプターリングの外形は108mmですので、これを受けるホルダー本体の溝幅も108mmということになりますが、0.5~1mmくらい広めにしておいた方がアダプターリングの差込みがスムーズにできます。

 各パーツはアクリル樹脂用接着剤(有機溶剤)で接着します。
 ホルダー本体をくみ上げ、艶消し黒の塗装をした状態が下の写真です。上側がフィルムホルダー、下側がアダプターリングです。

▲角型フィルターホルダー本体とアダプターリング

 ホルダーの手前側の左右に溝(スリット)が見えると思いますが、ここにアダプターリングが入ります。

 ホルダー本体にアダプターリングを差し込むとこんな感じです。

▲フィルターホルダー本体にアダプターリングを挿入した状態

 因みに、裏側はこのようになっています。

▲フィルターホルダー本体の裏側

 アダプターリングには82mm径のオネジが切ってあり、これをレンズの前枠にねじ込みます。

フィルターを支えるマグネットの取付け

 ホルダー本体の左右の内側にフィルターを支えるためのマグネットを取付けるのですが、今回使用するマグネットは直径5mm、厚さ2mmのネオジムマグネットです。左右それぞれ18個ずつをアクリル板に接着します。
 アクリル板の厚さは2mmありますが、このままだとフィルターをはめ込む幅が100mmになってしまいますので、アクリル板を0.1mmほど削ります。平ヤスリの上にアクリル板をのせて、20~30回ほど擦ると板厚が1.9mmほどになります。1.9mmを若干下回るくらいの厚さが望ましいです。

 マグネットをアクリル板に接着した状態が下の写真です。

▲ネオジムマグネットをアクリル板に接着

 このパーツをホルダー本体に仮止めして、マグネット間の幅をノギスで測ってみて、100.2~100.3mmに納まっていればOKです。これよりも狭い場合は、アクリル板をもう少し削ります。削りすぎるとマグネット間の幅が広くなって、磁力の影響が弱まってしまいますので要注意です。

 これをホルダー本体の内側に取付ける(仮止め)とこのようになります。

▲フィルターホルダー本体にマグネットを取付け(仮止め)た状態

 この段階では仮止めにしておきます。ホルダーに接着してしまうと、あとで微調整ができなくなってしまいます。

角型フィルター側面にステンレス板を接着

 次に、角型フィルターをホルダーのマグネットで保持するため、フィルター側面にステンレス板を張り付けます。使用するのは厚さ0.1mmのステンレス板、というよりステンレスシートです。裏面に粘着シールがついているタイプであれば、あらためて両面テープを張らなくても済むので便利です。
 また、磁石に着く材質でなければならないので、「SUS430」という素材のステンレスを使います。「SUS304」というステンレスも出回っていますが、こちらは磁石に着きません。

 ご存じのようにステンレスは硬いですが、厚さが0.1mmですのでハサミやカッターナイフで簡単に切れます。ただし、ハサミで切るとステンレスが反ってしまいますので、カッターナイフで切るのがお勧めです。
 角型フィルターの厚さと同じ2mm幅、長さはフィルターより10mmほど短かく切ります。そして、このステンレス板を角型フィルターの側面に張り付けます。

 実際に張り付けた状態が下の写真です。

▲角型フィルターの側面に、厚さ0.1mmのステンレス板を張り付けた状態

 この状態で角型フィルターの幅を測ってみます。計算上は100.2mmをわずかに上回ることになります。
 そして、この値と、前で測定したマグネット間の幅を比較して、マグネット間の幅の方がわずかに(0.05~0.1mm)広いことを確認します。もし、マグネット間の幅の方が狭い場合は、マグネットを接着したアクリル板を少し削ります。

 ステンレス板を着けた角型フィルターをホルダーに嵌め、ホルダーを立てた時に角型フィルターがずり落ちないことを確認します。また、ピッタリしすぎているとはめ込みや取り外しの際に力がかかり過ぎてしまいますので、適度な力で取り外しできる状態であることも確認します。

マグネットをホルダーに接着

 以上の確認が済んだら、マグネットを着けたアクリル板をホルダーに接着します。これで完成です。
 
 実際にレンズに取付けるとこんな感じです。

▲PENTAX67に角型フィルターホルダーを取付けた状態

 マグネットはかなり強力なので、少々の風や振動などでフィルターが外れてしまうというような心配はなさそうです。
 ハーフNDフィルターのようにファインダーを覗きながらフィルターの位置を動かす場合も、フィルターの片側を少し持ち上げることで簡単に上下することができるので便利です。

 私が保有している角型フィルターはすべてアクリル製なので非常に軽いですが、重いガラス製の角型フィルターでも問題なく保持できそうです。
 ただし、万が一、落ちてしまって割れたり傷がついたりということが心配であれば、マグネットを少し大型(強力)なものにすれば問題ないと思いますが、そうするとホルダー自体も少し大きく、重くなってしまいます。

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 今回、このホルダーを作成するのにかかったコストですが、アクリル板は以前使った端切れなのでコストはかかっていませんが、新たに購入しても300~400円くらいです。ネオジムマグネットは100個で550円でした。そして、いちばんお高かったのがステンレスシートですが、30cmx90cmサイズで1,400円ほどでした。実際に使うのは端の方のほんのわずかな部分です。
 年末年始で家にいる時間が長かったので作ってみましたが、近いうちに撮影で使ってみたいと思います。実際に使ってみるといろいろな問題も出てくるかもしれませんが、使用レポートは別の機会にしたいと思います。

(2022.1.3)

#フィルター

大判カメラにPENTAX67を取り付けるアダプタの作成

 通常、大判カメラは1枚ごとにカットされたシートフィルムを使いますが、ロールフィルムホルダーを使うことでブローニーフィルム(120、220)での撮影が可能になります。1本のフィルムで10枚とか20枚の撮影ができるので荷物がかさばらなくてありがたいのですが、構図を決め、ピントを合わせた後、カメラのフォーカシングスクリーンを外してロールフィルムホルダーを取り付けなければならず、結構面倒くさいです。
 そこで、中判カメラ(PENTAX67)を直接取り付けられるようなアダプタを作ってみました。

必要なパーツはたったこれだけ

 アダプタといっても非常に単純なもので、アクリル板にPENTAX67用のレンズのマウント金具を取り付けるだけのシンプルな構造です。
 まずは板厚3mmの黒いアクリル板です。

板厚3mmのアクリル板(黒)

 このアクリル板はアマゾンで400円ほどで購入できます。もちろんアクリル板でなくても構いませんが、そこそこの剛性があり、加工がし易いということからアクリル板がお勧めです。

 そして、もう一つ必要なパーツがPENTAX67用レンズのマウント部の金具です。これはさすがに作成するというわけにはいかないので、レンズから取り外して使います。

PENTAX67用レンズから取り外したマウント金具

 大手ネットオークションサイトで1円で落札したジャンクレンズから取り外しました。
 PENTAX67用レンズのマウント金具は6本のネジで止めてあります。古いレンズの場合、このネジが異常に硬いことがありますので、ネジ山を舐めないように注意して取り外します。

 その他、作成に必要な工具類は、アクリルカッター、ドリル、ヤスリ、アクリル用接着剤、ノギス、コンパスなどです。

アクリル板の加工

 今回作成するアダプタは、ホースマンなどのロールフィルムホルダのボードと同じ寸法なので、上下幅を121.5mmにします。左右幅はフィルムホルダよりも若干余裕を持たせ、180mmとします。
 ここに、PENTAX67用レンズのマウント金具をはめ込むための穴をあけます。寸法は下図の通りです。

 実際に穴をあけたアクリル板はこんな感じです。

マウント金具をはめ込む穴をあけたアクリル板

 この板をカメラ側に取付ける際、カメラ側で押さえ込める板厚は約5.6mmほどなので、この板の周囲に幅6~8mmにカットしたアクリル板を張り付けます。

周囲にアクリル板を張り付けた状態

 一方、カメラ側のフィルムホルダーを受けるところには幅3mm、深さ2mmほどの溝があり、ここにフィルムホルダの突起がはまり込むようになっています。これは、フィルムホルダのずれ防止と光が入り込むのを防ぐためかと思われます。ですので、今回作成するアダプタボードの内側にも、この溝にはまるような突起を張り付けます。これは、幅2.5mmにカットしたアクリル板を接着しています。

アダプタボードの裏側(カメラの溝にはまる突起を取り付け済み)

 これでアダプタボードはほぼ完成です。

PENTAX67用レンズマウント金具の取付け

 さて、次はPENTAX67用レンズのマウント金具をアダプタボードに取付けます。
 カメラ(PENTAX67)を取り付けた際に、カメラが水平にならなければならないので、マウント金具の位置決めは慎重に行なう必要があります。PENTAX67の場合、レンズの距離・絞り指標が真上に来た時、レンズのロックピンが左に90°の位置に来ますので、この位置がずれないように位置決めを行ないます。
 テープなどで仮止めし、マウント金具を固定するためのネジ穴をあけます。

 実際にマウント金具を取り付けるとこんな感じです。

アダプタボードにPENTAX67用レンズのマウント金具を取り付けた状態

 今回使用したアクリル板は表面が光沢面だったので、艶消しのラッカー塗装をしました。
 ボードの上下の縁に削った跡が見えると思いますが、これはカメラのボード押さえ金具がスムーズに入るようにするためのものです。

大判カメラへの取付け

 こうして作成したアダプタボードを大判カメラ(リンホフマスターテヒニカ)に取付けるとこのようになります。

リンホフマスターテヒニカ45にマウントボードを取り付けた状態

 そして、ここにPENTAX67を取り付けるとこんな感じです。

PENTAX67を取り付けた状態

 では、このアダプタボードを実際に使って撮影する際に使用可能なレンズについてですが、PENTAX67のフランジバックは85mm(正確には84.95mm)、今回作成したアダプタボードの厚さは5mm(アクリルボード+マウント金具の厚さ)、リンホフマスターテヒニカの蛇腹の最短繰出し量は約50mm(これは私のカメラの場合)で、これらを合算するとフランジバックは約140mmということになります。
 すなわち、無限遠を出すためには焦点距離が140mm以上のレンズが必要ということになります。これは中判の場合、中望遠に近い値であり、これより短焦点のレンズでは無限遠の撮影は不可能ということになります。

 一方、近接(マクロ)撮影においては自由度が広がります。

 また、PENTAX67というかなり重量級のカメラを取り付けることに加え、シャッターを切るときのミラーショックが大きいので、PENTAX67側でシャッターを切るとカメラブレを起こす可能性が高いと思われます。
 そのため、PENTAX67側はバルブにしてシャッターを開いておき、大判カメラに取付けたレンズでシャッターを切るのが望ましいと思います。

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 短焦点(広角)のレンズでの無限遠撮影には使えませんが、フォーカシングスクリーンで構図決めやピント合わせをした後に、ロールフィルムホルダに付け替えるという煩雑さからは解放されます。
 使い勝手がどの程度のものか、実際に撮影で使った時の状況については別途、掲載したいと思います。

(2021.6.26)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

PENTAX67用レンズ - PENTAX-K マウントアダプタの作成

 私が使うカメラはもっぱらフィルム用ですが、デジカメを全く使わないというわけではありません。一応、コンパクトデジカメとデジタル一眼レフをそれぞれ1台ずつ持っています。一眼レフは何年か前に中古で購入したPENTAX K-5というカメラですが、ほとんど出番がありません。作品作りはフィルムでということがデジカメの出番のない大きな理由ですが、レンズを1本しか持ち合わせていないということもあります。
 追加でレンズを購入しようと思ったことも何度かありましたが、あまり使うことのないカメラにお金をかけてももったいないということで、結局、踏ん切りがつかずに過ぎてしまいました。

 出番がかなり少ないとはいえ、レンズが1本しかないのは不便なので、PENTAX67用のレンズをマウントアダプタを介して使おうと思い、調べてみましたが、これがかなりお高いことが判明しました。
 それならば作ってしまえということで、家に転がっているパーツを使って作ってみました。
 使用するパーツは下の写真の通りです。

マウントアダプタに使う主なパーツ

 まず、PENTAX67用のレンズをはめ込むマウントとして使用する、1号の接写リング(写真左上)です。
 次に、マウントアダプタの長さを稼ぐために使うPENTAX67用レンズのリアキャップ(写真右上)。
 そして、PENTAX K-5のマウントにはめ込むための金具(写真右下)です。この金具をレンズのリアキャップに取付ければよいのですが、そのまま取付けたのでは長さが足りず無限遠が出ないので、スペーサーとしてPENTAX用のボディキャップ(写真左下)を使います。

 調べてみたところ、PENTAX K マウントのフランジバックは45.46mm。一方、PENTAX67のフランジバックは84.95mmで、マウントアダプタとしては、39.49mmの長さが必要ということがわかりました。1/100mmの精度の加工は無理なので、39.5mmとすることにしました。
 1号の接写リングの厚さは14mm、レンズのリアキャップの厚さは19.5mm、マウント金具の厚さが2mmでしたので、これらを重ねると35.5mmになります。あと4mmはスペーサーでカバーすることになります。

 接写リングは特に加工する必要がないので、そのまま使います。

 次に、レンズのリアキャップですが、PENTAXのボディキャップが入るように、中央に直径45mmの穴をあけます(下の写真)。

PENTAX67用レンズ リアキャップ

 PENTAX K-5のマウントにはめ込む金具は、ネットオークションで1円で落札したジャンクレンズから外して使います。金具を止めている小さなネジが5本ありますので、なくさないように要注意です。

 スペーサーとして使うボディキャップの加工には少し手間がかかりますが、まず、キャップの中央に直径42mmの穴をあけます。次に、キャップ裏側にカメラのマウントと嵌合する爪があるので、これをやすりで削り取ってしまいます。プラスチックなので簡単に取れます。
 そして、キャップの表面をやすりで削って、全体を薄くしていきます。削り取る厚さは2.5mmほどですが、厚みに偏りができるとレンズの光軸が傾いてしまうので、ノギスで厚さを測りながら慎重に行ないます。

 さて、ボディキャップの厚さが4mmほどになったら、これら4点のパーツを仮組して、PENTAX K-5にはめてみます。無限遠が出ていればOKです。もし、無限遠が出ていなければボディキャップがまだ厚すぎるので、もう少し削る必要があります。
 スペーサーとして完成したのが下の写真です。

PENTAX用ボディキャップを加工したスペーサー

 こうして、無限遠が出るようになったら、4点のパーツを組み上げます。マウント金具はスペーサーにネジ止め、スペーサーとレンズリアキャップは強力接着剤で固定します。レンズをカメラに取付けた時に、レンズの距離・絞り指標(赤い菱形のマーク)が真上になるよう、位置関係を確認して取り付けます。
 最後に、接写リングへの取付けですが、レンズのリアキャップは簡単に外れてしまうので、動かないように3か所からネジで締め付けるようにして固定します。
 少々不格好ですが、出来上がったマウントアダプタが下の写真です。

PENTAX6 - PENTAX-K マウントアダプタ

 そして、カメラに取付けるとこんな感じになります。つけているレンズはPENTAX67 MACRO 135mmです。

PENTAX K-5 + PENTAX67 MACRO 135mm

 一通り確認してみましたが、特に問題はなさそうです。
 ただし、光軸が撮像面に対して直角になっているかどうかまでは確認できていません。精密な工作機械で加工したわけではないので、間違いなく傾いていると思います。
 しかし、これでPENTAX67用のレンズ、35mmフィッシュアイから500mm望遠まで11本のレンズがPENTAX K-5で使えるようになりました。ジャンク箱の中から拾い集めたパーツで作ったので、新規購入コストは0円でした。

(2021.2.28)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #マウントアダプター

構図決めに便利なプアマンズフレームの作成

 世の中にはフレーミングを決める際に便利なズームファインダーなるものがあります。大判カメラ用のズームファインダーは、大体65~400mmくらいのレンズの画角をカバーしますので、通常の撮影領域ではこのファインダーひとつで事足りてしまいますが、非常に高価な代物です。
 そこで、ほとんどコストをかけずに同等の機能をもつ「プアマンズフレーム」をつくってみました。

 まず、厚紙などで使用するフィルムと同じ大きさの枠をつくります。例えば、4×5判のフィルム用の場合は、150×130mmくらいの大きさの厚紙の中央に120×96mmの窓をくり抜きます(120×96mmが4×5判フィルムの有効サイズです)。
 次に、この厚紙の下の端に紐を取り付けます。そしてその紐に目盛りを振れば完成です。目盛りは取り付けたところを起点(0cm)として、使用するレンズの焦点距離を少し上回るくらいまで振ります(例えば、400mmまでのレンズを使うのであれば、45cmくらいまで)。

 こうしてできたのが下の写真です。

4×5判用プアマンズフレーム(目盛りは5cmの位置から1cm刻みで50cmまで)

 これの使い方はいたって簡単で、窓枠をくり抜いたボードを片手で持ち、もう片方の手で紐を持ちます。そして、片方の目でこの窓枠を覗き、写したい範囲が窓枠内に納まるようにボードを前後に動かします。フレーミングが決まったらボードを動かさないようにして、もう片方の手で持った紐をピンと張った状態で目の下にあてます。
 そのとき、目の下にあたった紐の目盛りを読み取れば、使用するレンズの焦点距離がわかるという優れものです。例えば、目盛りが15cmだったとすると、焦点距離150mmのレンズを使えばよいということがわかります。
 もちろん、ミリ単位の精度は望むべくもありませんが、レンズを決めるには全く問題ありません。

 また、使うレンズの焦点距離があらかじめ決めっている場合は、焦点距離に等しい目盛りの部分を目のところに当て、紐をピンと張った状態で窓枠を覗くと、その焦点距離のフレーミングになります。

 窓枠の縦横中央に糸などで十字線を張れば、フレーミングの際の目安になって便利かもしれませんが、余計なものがない方が使い易いだろうと思い、私は何もつけていません。
 また、ボードそのものを透明なアクリル板などにすれば窓をくり抜く必要はなく、逆に周囲をマスクすれば済むのでこの方が簡単に作れると思いますが、かなり透明度が高いものを使わないと像がくっきりとしないので、使いにくくなってしまうかもしれません。1円でも安くしたいというのであれば、やはり厚紙をくり抜く方法がお勧めです。

 このプアマンズフレームを覗いた時の目の位置は、使用するレンズの前側焦点の位置になります。したがって、そのフレーミングで撮影する際のレンズの中心は、目の位置から焦点距離分後方に置くことになります。このレンズの位置をあまり大きく変えてしまうと、無限遠の被写体の場合はさほど気にすることもありませんが、近接撮影の場合はフレーミングにずれが生じてきますので注意が必要です。
 とはいえ、もともとがかなり大雑把なものなので、レンズを選択する際の目安として使う程度であり、これにあまり高い精度を求めない方がよろしいかと思います。

 今回は4×5判を例にとりましたが、67判のフィルム用であればくり抜く窓枠の大きさは69×56mm、35mm判フィルム用であれば36×24mmの大きさになりますので、使用するフィルムに合わせて用意しておけば便利です。

(2021.2.23)

#フレーミング #構図 #撮影小道具

大判カメラ用の袋型ピントグラスフード

 大判カメラでのピント合わせは、カメラ後部についているピントグラス(フォーカシングスクリーン)で行ないます。この時、ピントグラスを暗くしないと像が見にくいので、多くの場合、冠布(カンプ)を頭からすっぽりとかぶり、周囲からの光を遮断して行ないます。光を通さないように2枚の布を張り合わせた大き目な風呂敷のようなもので、単純がゆえに自由度が高くて便利ではありますが、特に夏場は暑くて大変です。
 カメラにもちょっとしたフードがついていますが、小さいので遮光効果は十分とは言えず、特に順光での撮影時には後方からもろに光が入り込んできますので、ほとんど役に立ちません。

 そこで、ピントグラス全体を覆うことのできる袋型のフードを作ってみました。

袋型ピントグラスフード(リンホフマスターテヒニカに取付け)

 光を通さない黒い布(今回はナップサックに使われるようなナイロン素材を使用)を、カメラがちょうど入るくらいの筒状(直径28cmくらい)にします。一方の端はゴムひもが通るように加工し、ここにゴムひもを通して少し絞っておきます。これをぎゅっと広げて、カメラに被せることになります。

袋型フード(カメラ取付側)

 もう一方の端は、55mm径のレンズ用の金属製フード(長さが20mmほど)を用意し、この外周に巻き付けます。こうすると全体がボールのような袋状になります。

袋型フードのルーペ取付け側(レンズフード使用)

 次に、このレンズフードにはめ込むルーペを作ります。私は55mm径のNo.3クローズアップレンズを使用しましたが、No.5とかを使えばルーペの倍率を高くすることができます。そして、クローズアップレンズの前側にステップアップリングをはめ込みます(私は55-67のステップアップリングを使用しました)。
 これを先ほどのレンズフードにはめ込めばルーペになるのですが、このままだと若干緩くてするっと抜けてしまいます。そのため、クローズアップレンズの外周にパーマセルテープを巻き、ちょうど入るくらいの太さにします。

フードにはめるルーペ(クローズアップレンズ+ステップアップリング)

 こうしてできたフードはこんな感じになります。

袋型フード

 これを大判カメラに取付ければ、ピントグラスに当たる光をほぼ遮断することができます。
 ルーペ(クローズアップレンズ)を外した状態だとピントグラス全体を見ることができるので構図の確認がし易く、また、ルーペをはめるとピントの確認がし易くなります。

 ただし、正確なピント合わせはこのフードを外して、倍率の高いルーペで行なう必要があると思います。

 なお、今回作成した袋型フードの長さは約20cmですが、私の場合、若干老眼が来ているために、これ以上短くするとぼやけてしまいます。ですので、このフードの長さは目の状態に合わせて、いちばん使い易い長さにするのが良いと思います。

 実際に使用した感想ですが、遮光に関しては合格点だと思います。冠布を使っても下側からの光が入りやすいのですが、このフードは全方位遮光してくれます。それと、広角レンズや超広角レンズを使った撮影の際、ピントグラス周辺ではとても像が見にくいのですが、この袋状フードだと斜めからピントグラスを覗き込むことができるので、像が見やすくなります。また、非常に軽いですし、折りたためば小さくなるので持ち運びにも便利です。
 一方、正確なピント合わせはこのフードを外して行なわなければなりません。その点、冠布は構図確認から正確なピント合わせまですべてこれをかぶった状態で出来ますので、やはり冠布に勝るものはないといったところでしょう。

 しかし、撮影状況によっては冠布を使っても漏れてくる光で像が見にくく、それが結構なストレスになったりもしますので、それを回避してくれるという点ではこのフードを使う価値があるように思います。着けたり外したりが面倒かも知れませんが、あると便利かもしれません。

 余談ですが、冠布は片面が黒、もう片面が赤とか銀色をしています。銀色の理由は日差しを反射して少しでも暑さを防ぐためらしいですが、赤い理由は、森の中でクマなどと間違えられて猟銃で撃たれないようにということのようです。私が使っている冠布は片面が銀色のタイプですが、銃で撃たれるのは怖いので赤いタイプに変えようかなと思ってます。

(2021.1.2)

#撮影小道具 #フレーミング #フード