第205話 奥入瀬渓流 撮影のお役に立てる..かもしれない情報あれこれ その2

 前回は奥入瀬渓流全般や混雑具合等について書きましたが、今回は主な撮影スポットについて触れていきたいと思います。滝や流れ、瀬など、名前がついているだけでもかなりの数になり、名前がついていなくてもとても写真映えするスポットもたくさんありますが、すべてをご紹介するのは大変なので、その中から10ヵ所を抜粋してみました。
 奥入瀬渓流の下流の焼山から上流の十和田湖に向かって順にご紹介していきたいと思います。
 なお、前回ご紹介した場所は割愛させていただきますので、奥入瀬渓流の中でも特に人気の高い5ヵ所については前回のページをご覧ください。

 今回ご紹介する場所は下の図の通りです。青色で番号表記した10ヵ所を対象としました。

 番号がついていない場所については今回は触れませんでしたが、十分に写真映えのするスポットです。

①紫明渓(しめいけい)

 奥入瀬渓流の最下流、焼山に近い辺りにある紫明渓は川幅が広く、水深が比較的浅い流れです。かつては玉石を敷きつめたような河床に澄んだ水が流れる美しい場所だったようですが、今は土砂が堆積して昔の面影はなくなってしまったようです。
 この紫明渓、春から秋にかけては地味な場所ですが、雪のシーズンになると景色が一変します。
 川中に点在している石や岩の上に雪が積もり、まるで大福もちがたくさんあるような光景を見ることが出来ます。

 もともと水深が浅い上に冬は水量が少なくなるので、石や岩の上に雪が積もり易いのだと思います。特に夜中に大雪が降った次の日は特大の大福もちを見ることが出来ますが、地元の方ならともかく、遠方から訪れるものにとっては、なかなかそういうタイミングに出会うことが難しいです。
 雪のない時期はインパクトに欠けますが、天気の良い日は川面がキラキラと輝いて、私は好きな場所のひとつです。
 また、川の右岸にカエデの木があって、新緑や紅葉の時期にはとても美しい景色になります。たくさんの人が訪れて混雑することもないので、ゆっくりと撮影をすることが出来ます。
 道路脇に5~6台の駐車スペースがあります。

②屏風岩(びょうぶいわ)

 奥入瀬でいちばん混雑する石ヶ戸から少し上流に行ったところにある、まさに屏風のように垂直に切り立った崖です。
 この岩のすぐ下を川が流れていて、川が緩やかにカーブしていることもあり、静と動のコントラストが美しい場所です。

 上の写真は紅葉も終盤の頃のものですが、初夏から夏にかけての緑と清流との組み合わせもとてもいいものです。遊歩道脇にちょっとしたスペースがあるので、三脚を立てて撮影するにはありがたい場所です。
 また、冬もきれいな場所ですが、雪が降ると道路が除雪されて路肩に高い雪の壁が出来てしまうため、このようなアングルでの写真撮影をしようとなるとその雪の壁をよじ登らなければなりません。川に転落する危険もあるのでやめておいた方が良いでしょう。
 ここは近くに駐車スペースもないので、石ヶ戸などに車を置いて徒歩で訪れることになります。

③馬門岩(まかどいわ)

 屏風岩のすぐ先、屏風岩とは反対の右岸側にそびえているのが馬門岩です。
 国道102号線に沿って続いているので、場所によっては切り立った崖の真下まで行くことが出来ます。
 その昔、馬で往来していた時代に、ここより先は馬が通れないほどの植物が生い茂っており、ここで馬を降りてその先は徒歩で進んだと言われる、門のような岩だったことからこの名がつけられたようです。

 火山から噴出した火砕流堆積物で形成されているとのことで、何枚もの岩が積み重なって大きな岩になっているのがわかります。長年の間に岩に苔が付着したり草が生えたり、また、岩の間に根を下ろした樹木などの姿があったりして、原始の森を見ているような感じもします。
 冬になると緑はすっかりなくなってしまいますが、岩を流れ落ちる水が氷柱となり、それが徐々に成長して巨大な氷瀑のような姿になります。
 下の写真は今年(2026年)に撮影した馬門岩にできた氷柱です。

 雪のない時期はこれほど岩の近くまで行くことは困難ですが、道路の除雪によって路肩に雪の壁ができる冬は、その壁をよじ登って氷柱のすぐ下まで行くことが出来ます。

④九十九島(くじゅうくしま)

 阿修羅の流れのすぐ上流にある場所で、奥入瀬渓流のなかで川中の岩が最も多いことからこの名がつけられたそうです。

 ここは流れがほぼ直下に曲がっていて、上の写真の左側が下流に向かう流れで、このすぐ先が阿修羅の流れです。
 この写真は車道脇から見下ろすようなポジションで撮影していますが、遊歩道はこの真下にあり、遊歩道からは流れとほぼ同じ高さで見ることが出来ます。
 川中の大きな岩の上にはたくさんの樹木が育っていて、その間を縫うように水が流れています。変化に富んだ美しい場所だと思います。

 なお、すぐ上流のところには平成11年に発生した大規模な地滑りによって生じた「平成の流れ」という場所があって、大きな落差の豪快な流れを見ることが出来ます。全く変わらないようでも、日々その姿を変えているのだということを感じさせてくれます。

⑤白布の滝(しらぬののたき)

 雲井の滝から少し上流に行ったところ、遊歩道から川を挟んだ対岸にある落差およそ26mの滝です。滝の落口から白い布を垂らしたような、ほぼ直瀑に近い美しい滝です。

 水量も多く、真冬でも完全に凍ってしまうことはないようです。
 上の写真は3月の半ばごろに写したもので、まだ木々に葉っぱがない時期なので滝がよく見えますが、葉っぱが生い茂ってくる季節になると視界が遮られてしまい、滝がよく見えなくなってしまいます。
 この滝は見通しがきく撮影場所が非常に限られていて、しかも車道にも遊歩道にもスペースがないので撮影には苦労します。混雑する場所ではありませんが、遊歩道を散策している人の迷惑にならないよう、早朝の撮影がお勧めです。

⑥白銀の流れ(しろがねのながれ)

 白布の滝からさらに上流へ徒歩5分ほどのところにあります。流れの激しいところと比較的緩やかなところが混在した美しい景観を見せてくれる場所です。川中の岩にぶつかって生じる波しぶきがキラキラと輝いて、白銀という表現がぴったりだと思います。

Created with GIMP

 この写真は6月の初め頃、緑が鮮やかな時期に撮影したものです。
 石ヶ戸の瀬にも似たところがある美しい場所ですが、雲井の滝より上流に行くと人の数はぐっと少なくなり、この白銀の流れのあたりも散策する人が時どき通るくらいで混雑するようなことはありません。隠れた撮影スポットという感じです。

 この付近も駐車スペースがなく車道からも離れているので、ここを見るには徒歩で訪れることになります。

⑦雲井の流れ(くもいのながれ)

 白銀の流れのさらに上流に位置していますが、ここが雲井の流れというようなスポット的な感じではなく、比較的広い範囲を指しているようです。どちらかというと穏やかな流れのところが多い場所です。

 上の写真も6月上旬、天気が良い日の日中に撮影したものです。まばゆいくらいの日差しを感じますが、木々の葉っぱにさえぎられて川面には直接光があたっておらず、繊細な流れを撮ることが出来ます。このような場所は薄曇りの日の方がしっとりとした感じに写ると思います。
 流れが穏やかなのでこの辺りの遊歩道は平坦で足腰への負担は少ないですが、水はけがあまりよくないのか、いつもぬかるんでいるという印象があります。
 また、渓流沿いには休憩用のテーブルとベンチが用意されていて、気持ちの良い流れを眺めながらランチをしている人の姿もよく見かけます。

⑧白糸の滝(しらいとのたき)

 雲井の流れからさらに上流に向かうとトイレがあります。石ヶ戸休憩所のように売店が併設されているわけではなくトイレのみで、石ヶ戸休憩所から子ノ口までの約9kmの間にある唯一のトイレです。
 そこを過ぎて20分ほど歩くと白糸の滝があります。落差が約30mほどあるようで、糸を引いたように流れ落ちる美しい滝です。

Created with GIMP

 手前にたくさんの木々が生い茂っているので、滝の全貌を見ることが出来るのは冬のみということになりますが、木々の間に見え隠れする姿も風情があっていいものです。
 ここは奥入瀬川の流れが非常に穏やかなところで、広い河原も広がっているので撮影するにはありがたい場所です。目の前の道路には車2~3台分の駐車スペースもあります。
 冬になると流れ落ちる水が風で飛ばされ、周囲の岩はびっしりと氷で埋め尽くされてしまいますが、滝自体は完全に凍ることはなく糸のように流れる姿をみせてくれています。時おり、岩に張り付いた氷が割れて落ちる音が辺りに響き渡り、ちょっとぞくっとします。

 昨年(2025年)の8月、青森県に発生した線状降水帯による猛烈な豪雨に襲われ、ここ奥入瀬渓流も水浸しになってしまったようで、その際にこの滝の向かい側斜面で大規模な土砂崩れが発生しました。それによって、大量の土砂が奥入瀬川に流れ込み、ここから下流の水は長いこと茶色く濁ってしまいましたが、土砂崩れ現場の復旧作業のおかげで紅葉の時期には綺麗な奥入瀬川に戻っていました。

⑨九段の滝(くだんのたき)

 銚子大滝から少し下ったところにある滝です。層になったように積み重なった岩の上を何段にもなって流れ落ちています。見ようによっては10段にも11段にも見えるのですが、響きの良いところで九段となったのではないかと思います。

 この滝も滝つぼのすぐ近くまで行くことが出来る、数少ない滝のひとつです。
 水量は決して多くはありませんが、真っ黒な岩肌と白い水しぶきとのコントラストが美しい滝です。上の写真は10月の紅葉の時期に撮ったもので水量が少ない時期ですが、雪解けから深緑の頃にかけてはもっと水量が多くなり、向かって左側にも水の流れが生じます。
 落差は15mほどだそうですが、間近で見上げるようにして見るせいか、実際よりも高く感じます。
 なお、この滝は木々の葉っぱが生い茂っている季節は車道から見ろことはできませんが、冬になって木々が落葉すると車道からも見ることが出来ます。

⑩万両の流れ(まんりょうのながれ)

 奥入瀬渓流の最上流、子ノ口に近いところにある「万両の流れ」と呼ばれる場所です。光が流れに反射してキラキラと輝く様を大量の小判に例えた名前のようです。
 川幅はあまり広くありませんが、川中に岩があったり、そこに倒木が引っかかっていたりして、所どころで激しい水しぶきを上げています。

 上の写真は紅葉の時期、万両の流れの下側から上流に向かって撮影したものです。たくさんの倒木が川の中にあるのがわかると思いますが、この倒木にさらに木の枝などが引っかかって、訪れるたびに流れの様相が異なっているのを感じます。
 奥入瀬では倒木などがあっても道路などをふさがない限りは人の手が加えられることはなく、自然のなすがままにされています。
 また、この付近では野生の動物に出会う機会が多く、クマを見かけたのもこの近くですし、ここの遊歩道を歩いているときにはキツネ、ネズミ、ウサギなどにも出くわしました。特にネズミはたくさんいるようで、そこら辺りをチョロチョロと走り回っている姿をよく目にします。

 この近くに車2~3台が停められる駐車スペースがありますが、ここを訪れる人は少ないです。

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 今回は奥入瀬渓流の撮影したくなるスポット10ヵ所をご紹介しました。いずれも名前がつけられている場所ですが、これ以外にも名前がついている場所がありますし、名前がついていなくても素敵な場所がたくさんあります。
 奥入瀬渓流は車道も遊歩道もよく整備されていて、車で移動しながらポイントを見て回るということもできますが、やはり奥入瀬渓流の魅力を感じるのは歩いて回ることだと思っています。季節ごとに違った景色を見ることが出来るのは言うまでもありませんが、同じ季節でも訪れるたびに新たな発見があるのも歩いて回るからこそだと思います。

 ちなみに、私は渓流釣りはやりませんが、時どき釣りをしている人に出会うことがあります。イワナやヤマメが釣れるようで、確かに水の中に魚影を見ることが良くあります。
 秋に訪れると、奥入瀬川に流れ込む小さな支流で、イワナかヤマメだと思うのですが、産卵しているシーンに出くわすことがあります。

(2026.3.24)

#奥入瀬渓流 #渓流渓谷

第204話 奥入瀬渓流 撮影のお役に立てる..かもしれない情報あれこれ その1

 今から1万5千年ほど前、十和田火山の噴火で形成されたカルデラ湖(現在の十和田湖)の東側外輪山が決壊し、流れ出した大量の水が火砕流台地を侵食しながら太平洋まで達したのが奥入瀬川だそうです。
 この奥入瀬川の起点となる子ノ口から焼山までのおよそ14kmほどが奥入瀬渓流と呼ばれていて、四季を通じて風光明媚な景色を見せてくれます。日本国内はもとより、今では海外からの観光客も増え、新緑や紅葉の季節にはたくさんの人で賑わっています。
 奥入瀬渓流の最大の特徴は、渓流沿いに整備されている遊歩道が川面とほぼ同じ高さにあるため、人の目線の高さで渓流を見ることができるということだと思います。

 奥入瀬渓流に関してはガイドブックが出版されていたりSNSなどに投稿された動画や写真がたくさんあるので情報を得るには事欠かないと思いますが、今回は奥入瀬渓流を訪れる方のお役に立てるかもしれない情報をご紹介したいと思います。
 私が奥入瀬渓流を訪れるのはもっぱら写真撮影が目的ですので、そういった内容に偏ってしまうと思いますのでご承知おきください。

奥入瀬渓流のシーズンごとの混雑具合

 奥入瀬渓流は青森県の中でも一、二を争う人気の観光地で訪れる人も多いのは確かですが、年間を通じて常に観光客がいるかというとそういうわけでもありません。わかり易いように月ごとの混雑具合をグラフにしてみるとこんな感じになると思います。なお、正確に人数を計測したわけではなく私の感覚ですので、あくまでも参考程度にご覧ください。

 何と言ってもいちばん混雑するのは紅葉の時期です。10月に入ってから色づき始め、11月の上旬にはほとんどの樹が落葉してしまいます。紅葉のピークは10月20日頃から10月末頃までの10日間ほどといったところでしょうか。
 ただし、混雑すると言っても京都のように人で埋め尽くされるような状態になるわけではありません。
 例年、この紅葉ピークの間で1週間ほどはマイカー規制がかかり、一般車の立ち入りは禁止されてしまいます。この間に奥入瀬渓流を訪れる場合はバスを使うかレンタル自転車、または徒歩ということになります。ただし、規制がかかるのは平日の10:00~16:00、土日の9:00~16:00なので、この時間帯を外した朝早くと夕方であれば自家用車を乗り入れることが出来ます。ちなみに私はこの規制がかかっている期間に撮影する場合は、早朝6時ごろには現地に入り、9時前に奥入瀬を出るというスタイルをとっています。

 紅葉シーズンほどではありませんがやはり混雑するのが新緑の季節で、5月中旬頃から梅雨に入る前の6月中旬頃までです。紅葉シーズンのようなマイカー規制はかかりませんので、車の乗り入れが可能です。
 新緑の季節が終わり、紅葉を迎えるまでのいわゆる夏の期間は訪れる人も少し減る感じで、落ち着いた静かな奥入瀬渓流を味わうことが出来ます。

 そして、ほとんど人の姿を見かけることがないのが冬の奥入瀬で、12月から翌年の3月くらいまでは雪に埋もれた静かな奥入瀬になります。私も1月~2月に雪景色を撮りに行きますが、車道を走る車には時々出会いますが、歩き回っている人を見かけることはほとんどありません。

奥入瀬渓流での移動手段

 奥入瀬渓流は川と遊歩道と車道(国道102号)がほぼ並行しているので、車での移動がいちばん便利であることは間違いないのですが、駐車場が潤沢にあるわけではないので混雑するシーズンは車を止める場所に苦労する可能性があります。
 比較的広い駐車場があるのは最下流の焼山と最上流の子ノ口、そしてその中ほどにある石ヶ戸の3ヶ所で、そのほかは路肩に2~3台分の駐車スペースが所々にある程度です。しかも、先客で埋まっていることが多いです。

 また、奥入瀬渓流沿いを通っている国道102号にはJRの路線バスとシャトルバスが走っています。上り下りとも30分に1本くらいの間隔ですが、これを有効に使うと効率よく回ることが出来ます。
 バス停はおよそ1.5kmごとに設置されています。

 車やバスも便利ですが、やはり奥入瀬渓流は歩くのがいちばんだと思います。比較的大きな駐車場が3ヶ所あると書きましたが、そこに車を止めて、後は徒歩で回るというスタイルです。
 ただし、およそ14kmある奥入瀬渓流のすべてを歩くのは結構しんどいので、時間との兼ね合いで途中まで歩いて戻りはバスを使うなどして、無理のないようにするのがお勧めです。

 なお、レンタサイクルもあるので、暖かな季節は自転車で回っている人も良く見かけます。

奥入瀬渓流の混雑スポットベスト5

 混雑するシーズンと言えども、およそ14kmの奥入瀬渓流のすべてで混雑するわけではなく、スポット的であるというのが実情です。その理由は、車やバスで人気の場所を訪れて、限られた時間で周辺を散策して、またすぐに移動してしまうというパターンの人が大半を占めているからです。
 では、どのあたりが混雑するのか、混雑する上位5ヵ所をご紹介します。簡単な地図にその5ヵ所を書き入れてみましたので参考にしてください。

 まず1番目は、奥入瀬渓流のちょうど中ほどにある「石ヶ戸」です。
 ここには渓流内で唯一の休憩所があって、一般車数十台分の駐車場や大型観光バス用の駐車場が整備されています。休憩所にはトイレや売店もあり、売店ではうどんやそばなどの軽食も用意されています。
 ここに車やバスを停めて散策するという人が多いのと、この休憩所から徒歩で5~6分のところに「石ヶ戸の瀬」と呼ばれる人気の場所があるため、初夏から秋までは終日賑わっています。特に混雑する季節の週末は駐車場もすぐに埋まってしまうので、確実に車を停めたいという場合は午前8時前には到着するのが望ましいと思います。
 大型観光バスもひっきりなしに来るので、そうするとバスからたくさんの人が降りてきて、休憩所は大変な混雑になります。

 近くの「石ヶ戸の瀬」は私も好きな場所のひとつで、よくここで写真を撮ります。

 ここを通るほとんどの人が写真を撮っていきますし、遊歩道脇にキャンバスを立てて絵を描いている人も見かけます。川中の岩の間を縫うように白波を立てて流れるさまは本当に美しいと思います。

 2番に混雑する場所は「阿修羅の流れ」です。
 ガイドブックなどでは必ずと言ってよいほど紹介されている場所で、たぶん、奥入瀬渓流の中でも一番人気の場所だと思います。2つに分かれた流れが再び合流し、激しく岩の間を流れ落ちていく迫力のある場所です。

 この場所は石ヶ戸のように広い駐車場があるわけではなく、路肩に数台分の駐車スペースがあるだけですので、ここを訪れるのは石ヶ戸から歩いて来た人か、もしくは石ヶ戸に戻っていく人がほとんどです。石ヶ戸からは徒歩で30~40分といったところです。
 観光バスもここには停まらないので、たくさんの人が一気に押し寄せるわけではありませんが、常に人がいるという感じです。

 3番目に混雑する場所は「銚子大滝」です。
 奥入瀬渓流の本流にかかる唯一の滝で、奥入瀬川の上流、十和田湖に近いところにあります。落差はおよそ7m、幅は約20mの滝で、水量の多いときは豪快に流れ落ちる水で辺りに水煙が立ち込めます。

 この滝のすぐ近くに車10台ほどと観光バス数台分が停められる駐車場が整備されています。駐車場から徒歩1分というロケーションの良さもあり、観光バスはまず間違いなく立ち寄る人気スポットです。観光バスが到着すると滝の周辺は大変な賑わいになり、写真撮影するにはあまり有難くない状態になりますが、20分もすると移動してしまうので、そうすると比較的静かな銚子大滝に戻ります。

 混雑する場所の4番目は「雲井の滝」です。
 阿修羅の流れから上流に向かって車なら数分、徒歩でも20分ほどのところにある滝で、落差がおよそ20m、水量も豊富で渓流沿いのある滝の中では一番大きな滝ではないかと思います。車道から少し奥まったところにある滝ですが、滝つぼまで歩いていくことが出来るのでそれも人気の理由の一つかもしれません。

 滝の入り口のところの車道の幅が若干広くなっていて、本来は駐車スペースではないと思うのですが、車2~3台なら停めることが出来ます。ただし、ここに車を停めてしまうと大型観光バスや大型トラックが来たときにすれ違いできなくなってしまうことがあります。迷惑になるのでここでの駐車は避けた方が良いと思います。シャトルバスのバス停も設置されているので、バス、もしくは徒歩で訪れるのが望ましいです。

 そして混雑する場所の5番目は「三乱(さみだれ)の流れ」です。
 ここは石ヶ戸から下流に向かって徒歩で20分ほどのところにあります。流れが三つに分岐することからこの名がつけられたそうです。初夏にはツツジが咲いて、緑と赤の美しいコントラストを見せてくれます。また、流れ自体がとても優美な感じがして、奥入瀬に来たらぜひ撮影したくなる場所でもあります。

 ここには駐車スペースはありません。少し下流に行ったところに1~2台が停められる場所があるだけです。しかし、路肩に停めている車を結構見かけることがあり、交通量が多いときはとても迷惑な存在です。観光バスもここには停まりませんが、車内から美しい景色を見ることが出来るよう、ゆっくりと通過していきます。
 ですので、混雑すると言っても他の場所に比べると圧倒的に人の数は少ないです。
 なお、この付近は車道と遊歩道が完全に分離されておらず、車道の端が遊歩道になっている状態なので、三脚を立てての撮影はとても危険ですし、他の人の迷惑にもなります。道路から河原に降りて撮影する人もいますが、足場も良くないので注意が必要です。

 以上が奥入瀬渓流で混雑する場所のベスト5ですが、これ以外の場所が激しく混雑するということは見たことがありません。冬以外、遊歩道には常に人の姿はありますが、列をなすような状態になるわけではありません。

 補足ですが、奥入瀬渓流は十和田湖の子ノ口にある水門で水量の調節をしており、この水門が開くのが午前7時ごろです。それ前は水量が少なく、あちこちで川底が露出していますが、7時を過ぎると一気に水量が増えます。流れを撮影するのであれば、水量の増える午前7時以降をお勧めします。

季節ごとの服装について

 夏の日中はTシャツ一枚でも問題ありませんが、朝のうちはヒンヤリするので羽織るものか薄手の長袖があった方が良いです。
 また、渓流沿いはたくさんの木々が生い茂っているので、どちらかというと木陰の方が多い環境です。真夏でも汗がダラダラ流れるというようなことはないので、長袖は持参した方が良いと思います。
 奥入瀬渓流の遊歩道は上流、すなわち十和田湖方面に向かってゆっくりと登っていて、登山のような急登があるわけではありません。所々に石段がある程度ですので、靴はスニーカーでも大丈夫だと思いますが、長時間歩く場合はトレッキングシューズが望ましいです。
 遊歩道はぬかるんでいたり水たまりがあったりするので、底が滑りにくく、水がしみ込みにくく、多少汚れても構わないものが良いと思います。ちなみに、私はライトトレッキング用の長靴を履いていくことが多いです。

 春から初夏、そして秋は気温もだいぶ低くなるので長袖は必要で、さらにウィンドブレーカーもあった方が良いと思います。春先と晩秋はかなり冷えるので、薄手のダウンジャケットのようなものが必要になります。

 そして冬ですが、大量の雪、風も強い上に、毎日大型の除雪車が通るので路面はスケートリンクのようにカチカチつるつるです。完全な防寒対策が必要です。
 私の場合、上はヒートテックのインナーシャツ、ハイネックのアンダーシャツ、その上にセーターを着て、登山等の裏ボア付きジャケットを着こみます。
 下はアンダーパンツ、いわゆる股引のようなものを履いて、ズボンの上にはオーバーパンツを履き、足元は防寒用のトレッキング長靴です。
 これで寒さはほとんど防げますが、手の指先がどうしても冷たくなるので、手袋は二重にしています。
 冷え性の方はホッカイロのようなものをあちこちにペタペタ張っておくとよいと思います。

クマは...います クマ以外の動物もいます

 昨年(2025年)、私は奥入瀬渓流でクマを2回見かけました。いずれも十和田湖に近い上流域で、100m以上離れたところから走っている姿を見かけました。
 奥入瀬渓流入り口辺りに設置されている道路情報の電光掲示板には「ツキノワグマ出没警報」が常に表示されていますし、石ヶ戸休憩所にも「クマ出没注意」の張り紙があるので、やはりクマは普通にいるのだと思います。
 車道は常に車が走っているし、遊歩道にも人が歩いているので、そうそう人前に出てくることはないと思いますが、クマはいるということを忘れないようにしたいです。
 効果があるかどうかわかりませんが、私はクマ避けの鈴(ベアベル)を2個とクマ避けスプレーを腰につけています。

 クマ以外にもいろいろな動物に出会うことがあり、私がこれまで出会ったのはカモシカ、キツネ、シカ、ウサギ、テン、ネズミです。
 いずれも人の姿を見ると逃げてしまうのですが、一度だけ、全く逃げないネズミに出会ったことがあり、スマホで撮影することが出来ました。

 渓流に架けられた橋の上を歩いていると何やら動くものが目に入り、見てみると可愛らしいネズミが走り回っていました。何か小さな石ころのようなものを手に持ってカリカリとかじっているようにも見えましたが、近寄っても逃げるわけでもなくカリカリし続けていたので撮影することが出来ました。大きさは7~8cmほどの小さなネズミです。

 動物のほかに野鳥もたくさんいますが、私は野鳥を撮ることがないので写真は全くありません。

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 訪れるたびに違う表情を見せてくれる奥入瀬渓流で、季節ごとに魅力がありますが、個人的には初夏の奥入瀬渓流がいちばん好きです。長い冬が終わり、すべての命が目覚めて躍動しているような、本当に気持ちの良い季節だと思います。
 今回は奥入瀬渓流の混雑具合を中心に紹介しましたが、次回は撮影ポイントをできる限り紹介したいと思います。

(2026.3.19)

#奥入瀬渓流 #渓流渓谷

第151話 奥入瀬渓流の初夏 色めく新緑と千変万化の流れ

 5月の中旬から末にかけて青森・岩手方面に撮影に行ってきました。今年は全国的に桜の開花が早かったですが、やはり、季節の進み方も例年に比べて早い感じがします。それでも八甲田山の上の方にはまだ雪が残っていて、十和田湖の周囲など標高の少し高いところに行くと木々の葉っぱはまだ淡い黄緑色をしていました。
 奥入瀬渓流一帯の標高は300~400mほどらしいので芽吹きの時期はとうに過ぎていますが、鮮やかな新緑が見ごろを迎えていて、清々しいという表現がピッタリの季節感です。6月に入ると緑は日増しに濃くなっていくので、5月の下旬ごろがいちばん鮮やかな緑を見ることができる時期かも知れません。

 今回は、子ノ口から焼山までおよそ14kmに渡って続いている奥入瀬渓流のうち、主に中流域と上流域で撮影をしてきました。

自然の造形美が連なる瀬

 奥入瀬渓流は上流域、中流域、下流域とでずいぶんと景観が異なっていますが、最も流れに変化が見られるのは中流域だと思います。概ね、奥入瀬バイパスとの分岐あたりから、雲井の流れあたりまでの6kmほどの範囲を中流域と呼んでいるようです。
 奥入瀬渓流に流れる水は十和田湖から流れ出ていますが、子ノ口にある水門で流れ出る水量を調節しています。朝7時ごろに水門が開かれるらしく、それよりも早い時間帯に行くと水量が少ししかありません。そして、7時を過ぎると渓流に流れる水量が急激に増えていきます。それまで川底が出ていたようなところもたちまち水底になり、奥入瀬らしい景色に変わります。

 奥入瀬渓流のほぼ中間に石ヶ戸と呼ばれる場所があります。駐車場や休憩所があって、いちばん人出で賑わう場所ですが、そこから500mほど下った場所にあるのが三乱(さみだれ)の流れです。三つに分かれた流れが再び合流することからこの名前がつけられたようです。
 流れも綺麗ですが、今の時期はツツジが咲いていて、個人的にはいちばん奥入瀬を感じる場所の一つだと思っています。車道から見下ろせる位置にあり、路肩に車を停めて見入っている人もたくさんいます。

 下の写真は道路脇からツツジと流れを入れて撮影した1枚です。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F32+1/3 5s Velvia100F

 この辺りは奥入瀬渓流のなかでも最もたくさんのツツジを見ることができる場所です。対岸にあるツツジの中でいちばん花付きの良い樹が入る場所を選んで撮りました。種類はヤマツツジだと思うのですが、ここのヤマツツジの花色はピンクに近い色をしています。
 川の水深は30cmほどではないかと思うのですが、岩の上をすべるように流れていて、いたるところにある岩の凹凸によって変化のある流れが生まれています。

 この写真は焦点距離210mmのレンズで撮っています。フィルムは4×5判ですので画角は35mm判カメラの60mmくらいの焦点距離のレンズに相当します。標準と中望遠の中間くらい焦点距離なのであまり広い範囲は写りませんが、ツツジと流れを強調しようという意図でこのレンズを使っています。
 被写界深度は深くないので、手前の岩から奥のツツジまで前面にピントを合わせるため、カメラのフロント部のアオリをかけています。

 流れの柔らかさを出しつつも表情(変化)が消えてしまわないようにということで、露光時間は5秒にしています。5秒というとわずかな風で葉っぱがブレてしまうには十分すぎる時間ですが、ほぼ無風状態だったのでほとんどブレがわからないくらいに写ってくれました。
 また、早朝の感じが損なわれないように、露出は若干切り詰め気味にしています。

 三乱の流れから少し上流に行くと石ヶ戸の瀬と呼ばれる場所があります。三乱の流れに比べて傾斜があり、川幅も狭いので流れに激しさがあります。川中に大きな岩がゴロゴロしていてその間を縫うように流れているので、立つ場所が少し違うだけで見える景色はずいぶんと異なります。奥入瀬渓流でいちばん撮影ポイントが多い一帯かも知れません。

 この一帯はツツジよりもタニウツギが多く見られます。タニウツギはツツジに比べるとずいぶん小さな花で地味な感じですが、花数が多いので新緑に色どりを添えてくれています。

 石ヶ戸の瀬の上流に近い場所で撮影した一枚が下の写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 150mm 1:5.6 F22+1/2 2s Velvia100F

 左上にある大きな岩の後方から流れて来ているのが良くわかるポジションから撮りました。画の中央奥から左に、そして右に流れていくように変化をつけてみました。流れの面積が大きくなりすぎないように、適度に岩や草を配置しました。
 森の上の方は木々の密度が低く、かなり明るい状態になっていて、そこが画に入ってくると全体的に軽い感じになってしまうのでその部分はフレームアウトしています。
 また、川中の岩の上にタニウツギが咲いていて、大きな木ではありませんがしっかりと点景になってくれました。

 流れが作り出す波が真っ白に飛びきってしまわないギリギリのところ、そして、背後の森が明るくなりすぎないところで露出を決めています。
 この写真も1枚目と同じようにフロント部でアオリをかけています。

優美さと豪快さが融合した滝

 奥入瀬渓流で滝が多く見られるのは上流域です。上流域になると本流の流れは中流域に比べて単調な感じになりますが、川の両側が切り立った崖になっていて、そこに幾筋もの滝を見ることができます。、落差の大きな滝は見応えが十分にあります。いくつかの滝を除いては近くまで行くことができないので、この季節は木々の葉っぱの合間から見るような状態です。

 そんな滝の中で滝つぼの前まで行くことのできるのがこの雲井の滝です。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 180mm 1:5.6 F45 4s Velvia100F

 落差は25mほどあるらしいですが、三段になって流れ落ちていて、水量も多いので迫力があります。風向きにもよりますが、滝つぼの前まで行かなくても近づいただけで飛沫の洗礼を受けます。
 近づきすぎると滝の上部が見えなくなってしまうので、全景を撮るのであれば飛沫のかからない辺りまで引いて撮影することになります。
 また、この滝は上の2段は右岸側に、下の段はわずかに左岸を向いて落ちているので、直瀑に比べるといろいろなバリエーションで撮ることができます。

 この写真は滝つぼまで20~30mの位置から撮っていますが、焦点距離180mmのレンズを使っているのでカメラを上に向けています。そのため、そのままでは滝の上部が小さくなり迫力がなくなってしまうのでフロント部のライズアオリをかけています。

 雲井の滝は車道からすぐのところにあるのでアクセスも良くて訪れる人も多いですが、ここから上流に行くと人の数はぐっと減ります。滝の見えるところでは車や観光バスが停まっていたりしますが、上流にある銚子大滝までの間、遊歩道を歩いている人はまばらになります。

 その銚子大滝は本流にかかる唯一の滝で、落差約7m、幅はおよそ20mもある豪快な滝です。6月ごろはいちばん水量の多い時期で、滝からかなり離れても飛沫を浴びます。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6 F22 6s Velvia100F

 この写真を撮ったのは雨が降り出しそうに曇った日の早朝で、辺りはかなり薄暗い状況です。滝の周囲を暗く落とし、秘境っぽい感じを出そうと思って撮りました(実際にはすぐ近くに駐車場があり、全く秘境らしくないのですが)。
 画手前(下側)の倒木の上に生えている植物はシルエット気味に写し込みたかったのですが、8秒という露光時間のため、ブレが目立ってしまいました。また、あちこちで木の葉もブレています。

 早朝は訪れる人もほとんどなく、ゆっくり撮影することができます。日中、大型観光バスが着くとどっと人が降りてきて、つかの間、滝の周辺はとても賑わいますが、バスが行ってしまうと滝の音だけが聞こえる空間に戻ります。

岩上に根を下ろした植物たち

 奥入瀬渓流は流れと岩や植物によってつくられる造形美が魅力ですが、そんな景色をつくり出しているのに欠かせないのが岩上の植物です。
 奥入瀬渓流は火山活動によって形成された火砕流台地だったらしいのですが、数万年前に十和田湖の子ノ口が決壊し、大洪水が発生して侵食されたという生い立ちがあるようです。そのため、渓流の中には大小たくさんの岩が転がっていて、その上に植物が根を下ろした光景はとても風情があります。中には大木にまで育っているものもありますが、シダなどの野草類が自生している姿にはつい立ち止まり見入ってしまいます。

 下の写真は流れがとても穏やかなところで見つけたものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F16 1s Velvia100F

 生えているのは主にフキだと思いますが、下の方にはカエデのような形をした葉っぱも見られます。周囲は深い緑に囲まれているため、それが水面に映り込んで全体が黄緑色に染まっています。
 上流から流れてきたと思われるのですが、川底にひっかかって先の方だけが水面に出ている木の枝があり、これがとても良いアクセントになってくれました。背景の木々の映り込みだけでは単調になってしまいがちですが、この枝のおかげで川面に波がつくられ、動きが感じられます。
 露光時間が長すぎて水面が白くなってしまわないように、また、適度に流れが感じられるようにということで1秒の露光をしています。

 フキの葉っぱが反射で白くなっているところがあります。これを取り除こうと思いPLフィルターを弱くかけてみましたが、全体がベッタリとした感じになってしまうのと、水面の反射も弱くなってしまうので、結局、使うのをやめました。

 もう一枚、前の写真とは反対に流れの激しいところで撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F11+1/3 1/4 Velvia100F

 ウマノミツバではないかと思うのですが違うかも知れません。奥入瀬の岩上植物ではいちばん多いのではないかと思えるほどよく見かけます。三つ葉のような形をした葉っぱがとても涼しげです。
 白波を立てている流れに対して、微動だにしない野草の凛とした感じを出したくて撮った一枚ですが、背景はぼかし過ぎず、この場の環境が良くわかる程度にぼかしました。大雨などで水量が増えれば流されてしまいそうなところに根を下ろした偶然。しかし、そんな杞憂はまったく関係ない、今を力の限り生きている姿に感動します。

悠久の時を経た手つかずの森

 奥入瀬の渓流沿いを歩いていると、両側に広がる森の植生が場所によって異なっているのがわかります。下流域は比較的明るい感じのする森ですが、上流域に行くにしたがって原始の森といった雰囲気が漂ってきます。林床はシダで覆われ、岩や倒木にはびっしりと苔が生えていて、恐竜が出てきそうな様相です。
 木が倒れたりしても、それが道路などにかかってさえいなければ一切手を加えられることはなく、自然の営みに任された森といった感じです。

 銚子大滝から少し下った森の中に、ゾウが歩いている姿にそっくりな大きな岩があります。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F11+1/2 1s Velvia100F

 岩の上に木が倒れていて、それがまるでゾウの鼻のように見えます。ゾウの正面(写真では左方向)の方に行くとゾウには見えないのですが、この写真の位置から見ると、鼻を持ち上げたゾウがゆっくりと向こうに歩いて行っているように見えます。この倒木がいつからこのような状態になったのかは知りませんが、自然というのは時に面白いものを見せてくれます。
 奥深い森の感じを出すために、手前にできるだけたくさんのシダを入れてみました。そして、露出はアンダー気味にしています。

 春の山菜としても有名なゼンマイや、少し森に入れば普通に見ることができるオシダなど、シダの仲間の風貌は独特で、それが生えているだけで太古の森といった感じがします。シダの仲間は種子を持たず胞子で増えるというのを小学校の理科の授業で教えてもらったときに、ちょっと不気味な印象を持った記憶がありますが、それを今でも引きずっていてそんな風に感じるのかも知れません。ですが、今はとても魅力のある被写体だと感じています。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 150mm 1:5.6 F5.6 1/125 Velvia100F

 上の写真は苔むした樹の幹とシダの取り合わせが面白いと感じて撮った1枚です。
 背後は川ですが大半を幹で隠し、ちょっとだけ見えるようにしました。絞りは開放にして背景はできるだけぼかしています。
 雲が切れて森の中に光が差し込んでおり、画全体が緑被りしているように見えます。深い森の新緑の季節ならではの光の演出といった感じがします。

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 コロナがだいぶ落ち着いてきたからなのか、今年の奥入瀬の人出は少し増えたように感じました。とはいえ、人気のポイント以外のところは人の数も少なく、静かなたたずまいです。
 今回、主に中流域と上流域を撮影しましたが、片道およそ9kmあります。散策するだけなら1日でも十分ですが、撮影しながらだととても1日では回りきることができません。天気は毎日変わるので、昨日撮影した場所に今日行くと全く別の景色に見えたりして、なかなか前に進めません。同じ場所であっても毎回違った発見があるということなので、それはそれで良しとしておきますが、一方でまだ撮影できていない場所もたくさんあります。

 なお、余談ですが、今回の撮影行でクマを2度見かけました(奥入瀬ではありません)。いずれもかなり離れていたので恐怖感はありませんでしたが、今年は各地でクマの出没が多いようです。

(2023年6月8日)

#奥入瀬渓流 #新緑 #渓流渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

第132話 秋の福島・山形 ~大信不動滝・裏磐梯・湯川・朝日渓谷・慈光滝・地蔵沼~

 10月末から福島、山形に紅葉の撮影行に行ってきました。今年は秋の訪れが早いのではと思っていたのですが、紅葉の盛りまではもう4~5日後の方が良さそうな感じでした。また、今年は夏が暑かったからなのかわかりませんが、色づきもイマイチという印象を受けました。
 最低気温が8度を下回ると紅葉が始まるらしいのですが、私が訪れた時は結構暖かくて、紅葉も足踏みをしていたのではないかという感じです。それでも東北の紅葉はやっぱり綺麗です。

 今回は、福島県の南側県境にある白河を起点に下郷、会津若松、裏磐梯、山形県の米沢、上山、山形、新庄、酒井、鶴岡を回ってきました。
 持参したのは大判カメラ(リンホフマスターテヒニカ45)です。

大信不動滝(福島県)

 白河の市街地から国道294号線を北上し、県道58号矢吹天栄線をひたすら西に向かうと聖ヶ岩ふるさとの森キャンプ場があります。シーズンにはキャンプする人で賑わうのか、広い駐車場が完備されています。ここに車を停めて、隈戸川に沿った遊歩道を歩くこと7~8分で大信不動滝の前に出ます。
 落差は5mほどでそれほど高くありませんが、横幅が30m以上はあると思われ、黒い岩肌を滑るように流れ落ちる滝です。

▲大信不動滝 : Linhof MasterTechnika 45 SuperAngulon 90mm 1:8 F32 4s PROVIA100F

 6月に訪れた時は水量がとても多く、滝の前に立っていると飛沫でびしょ濡れになってしまうくらいでしたが、今回は水量が少なく、6月の迫力とは別物のような滝でした。水量が多いと岩肌はほとんど見えないくらいで、日差しが強いときは真っ白に飛んでしまいますが、水量が少なくて 迫力に欠ける分、しっとりとした感じがします。
 まだ色づき始めたところで緑がたくさん残っていますが、岩に貼りついたたくさんの落ち葉が深まる秋を感じさせてくれる景色です。

 周囲は木立に囲まれており、まだ太陽高度が低い時間帯だったので薄暗いような場所です。露出をかけすぎると重厚感がなくなってしまうので少し切り詰めています。
 また、左上を見ていただくとわかるように、ところどころ日が差し込んでいます。これが滝に差し込むとしっとり感がなくなってしまうので、雲がかかったタイミングを見計らってシャッターを切っています。

 農繁期も過ぎ、上流にあるダムで絞っているのかもしれませんが、それにしても水量が少なすぎます。
 なお、この辺りはマムシが出るらしく、「マムシ注意!」の看板がいくつもあります。クマのような恐ろしさはありませんが、気持ちの良いものではありません。

湯川渓谷(福島県)

 会津若松の市街地から県道325号線に入り有名な東山温泉街を抜け、さらに山道を十数キロ進むと湯川が作る渓谷を見ることができます。湯川に沿って県道が走っているため、道路脇の斜面をちょっと下ると渓谷に降りることができます。特に遊歩道のようなものが整備されているわけではありませんが、渓谷美が広がっていて撮影ポイントだらけといった感じです。

 川が蛇行していて見通しがきかないところも多いのですが、緩やかにS字を描きながら流れている場所で撮影したのが下の写真です。

▲湯川渓谷 : Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F22 4s PROVIA100F

 この辺りの木々はほとんどが黄葉で、紅く色づく木はとても少ない印象です。しかし、黄緑から黄色へのグラデーションがとても綺麗で、地味ではありますがたくさんの紅葉がある景色とは違った趣があります。渓谷の岩の上に積もった落ち葉が黒い岩肌を隠していて、全体的に柔らかな感じの風景になっています。
 水量が少なめなので、流れよりも黄葉の方に重きをおいて撮りました。白い波の部分が少ないので、静けさが漂うような描写になったのではないかと思っています。

 この近くに大滝という滝があるのですが、ロープを伝いながら崖のようなところを降りていかなければならず、重い機材を背負っていくにはもっとしっかりとした装備がいると思い、大判カメラでの撮影は断念しました。

裏磐梯 曲沢沼(福島県)

 9月にも裏磐梯に行きましたが、あれから2か月足らず、すっかり秋が深まっていました。ほとんど落葉してしまっている木もあり、あっという間に秋が進んでいくのを感じます。
 裏磐梯の桧原湖、小野川湖、曽原湖に囲まれた一帯は小さな沼が無数に点在していますが、曽原湖の東側に位置する大沢沼や曲沢沼の紅葉は裏磐梯の中でも鮮やかな感じがします。

 下の写真は曲沢沼で撮影したものです。

▲曲沢沼 : Linhof MasterTechnika 45 FUJINON T400mm 1:8 F32 1/2 PROVIA100F

 小さな沼ですが周囲がこんもりとした森に囲まれていて、紅葉の密度が高い場所です。
 朝の7時過ぎ、一部の木々だけに陽が差し込み、紅葉が輝いていますが、背後は日陰になっているので黒く落ち込んでいます。ほとんど無風状態だったので水鏡のようになっています。
 ほぼ逆光の位置で撮っているためコントラストがとても高く、陽のあたっている葉っぱは若干飛び気味ですが、光の強さを出すために葉っぱの輝きが損なわれないよう、オーバー目の露出にしています。

 もう一枚、曲沢沼の近くで見つけたカエデです。

▲カエデ紅葉 : Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F5.6 1/30 PROVIA100F

 大きな木ではありませんが、羽を広げたような枝っぷりと、何と言っても鮮やかなオレンジ色の紅葉が目を引きました。背後にも赤く染まったカエデがありますが、それとは違った輝くような色が印象的でした。
 背景があまりくっきりしないように絞りは開放に近い状態にしているので、主被写体となるカエデの葉っぱのピントが甘いところがあります。もう少し焦点距離の長いレンズで、離れたところから撮影したほうが良かったように思います。

裏磐梯 レンゲ沼(福島県)

 レンゲ沼はジュンサイが採れることでも有名ですが、冬には3,000本ものキャンドルが灯される雪まつりでも有名です。沼の周囲には探勝路があり、およそ15分もあれば一周できるくらいの小さな沼です。
 特に紅葉が多いというわけではありませんが、色づいた木々と沼とのコラボレーションが綺麗な場所です。曲沢沼のような派手さはありませんが、落ち着いた秋の景色を見ることができます。

 下の写真は水面に映る景色を主に撮った一枚です。

▲レンゲ沼 : Linhof MasterTechnika 45 SuperAngulon 90mm 1:8 F22 1/4 PROVIA100F

 手前と奥の方に浮いている楕円形の葉っぱがジュンサイではないかと思います。夏はもっと緑色をしているのですが、だいぶ黄色くなっています。
 この日は良く晴れて青空が広がっており、紅葉とのコラボが綺麗でしたが、空を直接写し込まずに水面の中に入れました。青の濃度が増してコクのある色合いになっています。
 この沼ではカモと思われる水鳥をよく見かけるのですが、この日は一羽も来ませんでした。水鳥がいるとそれはそれで絵になるのですが 、そうすると水面が波立ってしまい、綺麗な水鏡を撮ることができなくなってしまいます。

朝日川渓谷(山形県)

 山形県の中央部に近いあたりに、最上川の支流の一つの朝日川があります。この朝日川に沿って県道289号線が走っているのですが、この一帯が朝日川渓谷で磐梯朝日国立公園に指定されているようです。
 水がとても綺麗であちこちに渓谷美が見られるのですが、車道の道幅が狭くてすれ違いができないような箇所もあり、車の運転は緊張します。国道287号線から分岐しておよそ10kmほど走ったあたりが最も渓谷美を感じる場所だと思います。

 渓谷の両岸は険しく切り立っていて、車道から降りていくことのできる場所は少ないのですが、偶然、河原まで降りることのできる場所を見つけて撮影したのが下の写真です。

▲朝日川渓谷 : Linhof MasterTechnika 45 APO-SYMMAR 180mm 1:5.6 F45 2s PROVIA100F

 ここも水量はかなり少なめでした。川の中に入って向こう岸まで歩いて行けるのではないかと思えるほどです。
 木々もいい感じに色づいており、右上にある紅葉がとても綺麗でした。薄曇りのためコントラストが高くなりすぎることもなく、落ち着いた感じになりました。
 水面の反射や岩の反射を取り除き、紅葉を濃くするためにPLフィルターを使うことも考えましたが、ベッタリとした感じに仕上がるのが嫌で結局使いませんでした。

 撮影したくなる場所があちこちにあるのですが、車を停める場所がほとんどありません。すれ違いのための待避所は結構あるのですが、そこに停めてしまうとすれ違いの車の迷惑になってしまいます。広いスペースのところに駐車して、歩いて撮影するのお勧めの場所です。

慈光滝(山形県)

 真室川町から酒田市に通じる国道344号線沿いにある滝です。道路のすぐ脇にある滝で、すぐ近くの駐車スペースに車を停めてサンダル履きでもOKという、ロケーション的にはとっても恵まれています。
 この滝のある川の名前はわからないのですが、流れ落ちた水は車道の下をくぐり、大俣川に流れ込んでいます。

 落差は6mくらいで小ぶりな滝ですが、岩肌を糸状に落ちる優美な感じのする滝です。

▲慈光滝 : Linhof MasterTechnika 45 APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 8s PROVIA100F

 ここも紅葉真っ盛りというタイミングで、滝の美しさが一層引き立っている感じです。夏に訪れた時は木々が生い茂っていて、その中に滝が埋もれているようでしたが、この時期になると滝の全貌も見えて、夏とは全く違う景色になります。
 滝の真上にある紅葉、たぶんハウチワカエデではないかと思うのですが、このオレンジ色が個人的にはとても気に入っています。この滝には赤よりもこの色の方がお似合いな感じです。

 この写真を撮影しているとき、ちょうど通りかかった地元の方が「イワナがいる」と教えてくれました。滝つぼをのぞき込んでみると確かにいました。20cm以上はあるのではないかと思われる大きなイワナでした。

地蔵沼(山形県)

 月山の南山麓、標高およそ750mにあるこじんまりとした沼です。周囲はブナ林に囲まれていて、とても神秘的な雰囲気が漂っています。
 沼の中ほどにある島に歩いて渡るための橋がかけられていたり、沼の周囲には運動広場や野営場などがあるのですが、沼からは見えないこともあり、そういったものを感じさせない静かなたたずまいです。

 下の写真は早朝、沼に陽が差し込み始めたころに撮ったものです。

▲地蔵沼 : Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F32 1/2 PROVIA100F

 標高が高いこともあり、紅葉のピークは少し過ぎてしまっている感じです。対岸にある木々は落葉してしまっていますが、幹や枝が朝日に白く輝いて晩秋の雰囲気があります。
 沼の中ほどにある島をもう少し広く入れたかったのですが、カメラを右に振ると島に渡る橋が写り込んでしまうのでこれがギリギリでした。
 沼の西側から東を向いて撮影しているので半逆光状態ですが、夕方になって西日が差し込むと、対岸のブナ林が真っ赤に染まるのではないかと思います。青森県にある蔦沼の紅葉を思い浮かべてしまいました。

 今回、私は初めて訪れたのですが、ここは紅葉の人気撮影スポットらしく、ピーク時には三脚がずらっと並ぶそうです。私が撮影していた1時間ほどの間、他に訪れる人は一人もいませんでした。

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 紅葉のピークにはちょっと早い感じもしましたが、少し高いところに行くと落葉が始まっており、紅葉の時期は本当に短いと感じます。時間が許せば、緯度の高いところから紅葉前線とともに南下しながら撮影していくのが理想かも知れませんが、自然相手なので、その年その時の状況が同じでないところが良いのだと思います。
 いつも感じることですが、撮影していると予想以上に時間が早く過ぎてしまい、予定していた場所を回り切れないことばかりです。特に秋は日が短いので。

(2022.12.5)

#大信不動滝 #曲沢沼 #レンゲ沼 #朝日川渓谷 #慈光滝 #地蔵沼 #リンホフマスターテヒニカ #渓流渓谷

第121話 夏の浅間大滝 美しい緑と天然の涼しさはまさに別世界

 今年(2022年)の夏は本当に暑くて、東京でも連日、猛暑日の記録更新というあまり有り難くない話題が飛び交っていました。熱中症にならないように適度に冷房をと言われていますが、冷房の効いた室内にばかり居るのもよろしくないと思い、涼を求めて群馬県にある浅間大滝に行ってきました。
 都心からは高速道路を使えば2時間半ほどで行くことができます。アクセスも比較的容易で、美しい自然と涼しさを満喫でき、夏の撮影にはもってこいのスポットです。

深い木立に囲まれた美しい滝

 群馬県を東西に流れる吾妻川の支流の一つ、鼻曲山を源流とする熊川にある滝で、北軽井沢周辺では最大の滝だそうです。落差はおよそ15m、水量も豊かで勢いよく流れ落ちる迫力のある滝です。
 浅間大滝に行くルートはいくつかありますが、今回は高崎から県道54号線(長野原倉渕線)を西に向かい、浅間山が正面に見える二度上峠を越えて行きました。峠を下り、しばらく走ると浅間大滝の入り口があります。駐車場に車を停めて、川沿いに10分ほど歩くと滝が見えてきます。

 2019年の台風による土砂崩れでしばらく立ち入りができなかったのですが、今は復旧して滝を見ることができるようになりました。以前は対岸に渡る太鼓橋が架かっていたのですが、その橋も流されてしまったようです。橋はなくなりましたが滝つぼから下流は水深も浅いので、長靴を履いていれば川に入って対岸に行くことも滝つぼに入ることもできます。
 川の両側はかなり急峻な崖になっており、大きな木々が覆いかぶさるようになっているので、昼間でも薄暗くヒンヤリとしています。

 滝の少し下流側から全景を撮影したのが下の写真です。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5 F22 2s PROVIA100F

 覆いかぶさる木立を強調するよう、広角レンズを使ってみました。薄曇りの天気で、しかも木々に光が遮られて渓谷はずいぶん暗く感じます。一方、上半分の木立の部分はかなり明るいので、下半分との明暗差は結構大きい状態です。
 ハーフNDフィルターをかければ明暗差が緩和され、流れを明るめにすることができますが、深い森の中の薄暗い雰囲気を出すためにハーフNDフィルターは使っていません。
 また、木の枝が重なることで葉っぱの濃淡が描く模様が綺麗で、個人的には気に入っています。

 この写真のように、広角レンズで見上げるアングルで撮ると、滝は実際の見た目よりも小さく写ってしまいます。滝はずいぶん遠くにあるように見えるかもしれませんが、写真から受ける印象よりもかなり近い場所から撮影しています。滝の迫力を出来るだけ損なわないようにということで、画全体の中での滝の配分には結構悩みます。

天然のミストシャワーが涼しい

 落差15mというのは、滝の真下にでも行かない限り、見上げるほどの高さではありませんが、それでも滝つぼの近くまで行くとかなりの量の飛沫があります。陽が差し込んでいないうえに天然のミストシャワーを浴びるので肌寒いくらいです。東京のうだるような暑さと比べると別世界で、まさに生返るという言葉がぴったりです。
 マイナスイオンというものがあるのかどうか、目に見えないし、肌でも感じられないので私には良くわかりませんが、こんな環境に一週間もいたら、さぞかし体も元気になるだろうと思います。

 滝の迫力が感じられるカットをと思い、滝の正面にまわって撮ってみました。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 200mm 1:4 F32 4s PROVIA100F

 あまり滝に近づくと、飛沫でカメラも体も濡れてしまうので、すこし離れたところから長めのレンズで撮っています。
 滝の上部の川幅はあまり広くないように見えますが、一段落ちた後、手を広げたように落ちる流れがとても綺麗です。直瀑と違い横幅があるので、落差の割には迫力が感じられます。

 滝のほぼ正面から撮っていますが、写真としてはわずかに右向きという感じです。ですので、カメラを少しだけ右に振って、右側を広く入れた方が窮屈な感じがなくなったように思います。もしくは、若干右側に寄って、左向きの写真として写した方が良かったかもしれません。
 撮影時と出来上がった写真を見た時で違った印象になるのは珍しいことではありませんが、この写真もその一例です。

 下の写真は滝の右側の方から、上部の流れ落ちるところを撮影した一枚です。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 200mm 1:4 F32 2s PROVIA100F

 放物線を描いて落ちる滝のボリューム感を出すため、滝の占める割合を多めにしてみました。
 風はほとんどなかったのですが、やはり滝の正面は風があるので、左側の木の枝がブレてしまっています。これによって、写真全体のシャープさが損なわれてしまった感じです。
 この枝が止まっていてくれたらと思うのですが、自然相手に長時間露光する場合は、いつ風が吹くかわからないのでなかなかうまくいきません。

黒い岩と流れの美しいコントラスト

 浅間大滝周辺の岩は溶岩流が固まったものだそうですが、黒っぽいものが多く、岩と水の流れだけを写すとコントラストがとても綺麗で、モノトーンの写真のようになります。

 滝つぼのところをクローズアップしたのが下の写真です。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 200mm 1:4 F22 4s PROVIA100F

 ほぼ滝の中央の、いちばん水量の多いところを撮りました。
 滝の全景ももちろん魅力的ですが、部分的なカットも写真としては面白いと思います。場所によって繊細さであったり、あるいは力強さであったり、いろいろな表情があるので飽きることがありません。
 この写真では流れ落ちる水が線状に見えていますが、もっと長時間露光すれば雲のようにふんわりとした感じになり、全くイメージの異なる写真になると思います。

 この滝では滝行をする人がいるらしく、まさにこの場所に立って落ちる水に打たれるようですが、私は見たことがありません。この水に打たれたらかなり痛そうです。

 なお、浅間大滝のちょっと下流に行ったところに、滝というほどではありませんが小さな段差になっているところがあります。絵になるスポットだと思います。

三段の岩を流れ落ちる魚止めの滝

 浅間大滝の駐車場から浅間大滝とは反対方向に少し下ると魚止めの滝があります。浅間大滝の下流にある滝ですが、ナメのように岩を滑り落ちていくという感じの滝で、渓流瀑という部類に入ります。大きく三段になった岩を流れ落ちるため、魚も登ることができないということでつけられた名前のようです。
 落差は10mほどですが滝の全長が長いため、浅間大滝とは違った迫力があります。

 滝のところまで降りていくと全景が見えるのですが、その途中から撮影してみました。

▲魚止めの滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 165mm 1:2.8 F22 2s PROVIA100F

 前景に木や草を入れて、滝を少し隠すように構成しています。若干高い位置から俯瞰気味に撮ることで、下から全景を写すよりも滝の迫力を出そうとしたのが狙いですが、手前の草はちょっと多すぎた感じです。また、左上の木々が暗く落ち込んでくれたので、流れの白さが際立っています。
 ごつごつとした岩の上を流れる水の軌跡は得も言われぬ美しさがあります。実際に見たよりも、写真では水量がかなり多いように感じますが、長時間露光のなせる業といったところです。

 この滝は、水量が少ないときであれば注意しながら登っていくことができますが、降りるときは登るときの何十倍も恐怖を覚えるので要注意です。一度だけ滝滑りをしている人を見かけたことがありますが、私には無理です。

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 駐車場から徒歩10分の範囲に浅間大滝と魚止めの滝という2つの素晴らしいスポットがあるにもかかわらず、訪れる人がとても少ない感じです。私もこれまで何度も訪れていますが、駐車場が満車になったとか、人が多くて撮影ができないというようなことは一度もありません。地の利も悪くないと思うのですが、近くにある、観光バスが列をなす白糸の滝とはずいぶん違います。

 私がこの滝を訪れる一ヶ月ほど前、近くの路上で熊が目撃されたそうです。日本各地でクマの目撃情報が増えている気がして、以前は気にも留めなかったところでも、最近はクマが出るんじゃないかと妙に気になったりします。切り立った崖を降りて来ることはないとは思うのですが、滝の音にかき消されて他の音が聞こえない状態だと、やっぱり不安な気持ちになります。

(2022.8.24)

#PENTAX67 #ペンタックス67 #浅間大滝 #渓流渓谷 #魚止めの滝

第115話 緑鮮やかな山形・秋田の滝巡り くぐり滝/慈光滝/玉簾の滝/奈曽の白滝/元滝伏流水/止滝/銚子の滝

 日本は山が多いので各地でたくさんの滝を見ることができますが、やはり、東北地方と中部地方は滝が多いイメージがあります。滝の明確な定義はあいまいなようで、どれくらいの高さ(大きさ)から滝というのかはわかりませんが、山形県のホームページを見ると、「日本一の滝王国 山形」と書かれていますし、地図を見ても滝の記号が多いと感じるのは東北地方です。
 比較的水量も多く、緑が鮮やかな梅雨の時期に、山形県から秋田県にかけて滝巡りをしてみました。たどり着くのまでに時間のかかる滝もあるので、一日に訪れることのできる滝の数は限られてしまいますが、実際に行った滝の中からいくつかをご紹介します。

くぐり滝(山形県)

 南陽市を走る国道348号線から分岐する細い道があり、2~3kmほど進むと駐車場に着きます。訪れる人は多くありませんが、車のすれ違いができない狭い道なので注意が必要です。
 駐車場からは歩きになりますが、2~3分歩くと滝が見え、さらに2~3分で滝に到着します。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W 125mm 1:5.6 F45 8s PROVIA 100F

 落差は14mほど、雪解けの頃は水量も多いようですが、訪れた時は少なめでした。
 この滝の特徴は何と言っても、岩にぽっかりと開いた大きな穴から流れ落ちていることです。なぜこのような穴があいたのかわかりませんが、穴の直径は5mほどもあるそうなので、かなり大きな穴です。
 また、この滝は三方がこのような絶壁に囲まれていて、滝つぼに立つととても圧迫感があります。

 この滝を近い距離(滝つぼの辺り)から撮ろうとすると、カメラを上に振ってかなり見上げるようなアングルでの撮影になります。大きな岩の穴を入れようとすると短焦点(広角)のレンズでの撮影になり、上方が小さくなってしまいます。それを防ぐため、目いっぱいのアオリ(フロントライズ)をかけています。
 滝の下流方向は開けていますので、滝から離れたところまで移動すれば長焦点レンズでも全貌を撮ることができます。

 また、この日は曇り空だったこともあり、空は入れたくなかったので、上辺はギリギリのところでカットしています。そのため、岩穴の上部が少し切れています。岩穴の上部もすべて入れたい場合は、やはり少し離れたところから長めのレンズで撮る必要があります。

 撮影していた時間はおよそ一時間ですが、その間、訪れる人は誰もいませんでした。

慈光滝(山形県)

 この滝は真室川町から酒田市に向かう国道344号線沿いにあります。道路のすぐ脇にあるので、車で走っていても目に入ってきます。すぐ近くに車2台分ほどの駐車スペースがあり、アクセスは非常に良いのですが、あまりにも道路に近いため、三脚を立てるには道路反対側の草むらということになってしまいます(滝の前で三脚を立てようとすると車にはねられる危険ありです)。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 4s PROVIA 100F

 黒い岩肌を滑り落ちるような、とても優美な感じのする滝です。だいぶ散ってしまっていますが、わずかに赤いヤマツツジの花が見えます。
 落差は6mほどあるようなのですが、この写真に写っているのは4mほどです。全景を入れようとすると道路の脇に立って覗き込むような位置で撮らねばならず、手持ち撮影しかできません。ということで、この写真は道路反対側からガードレール等が入らないギリギリの範囲で構成しています。
 雨が上がった直後で全体に柔らかな光が回り込んでいますが、画左側の木がちょっと明るすぎる感じです。

 また、この滝の反対側の路肩から河原に降りて滝の前まで行くことができるのですが、流木や木の枝、枯れ草などが雑然としていたので撮影はあきらめました。

 数年前、紅葉の時期に訪れたことがあり、華やかに色づいた中に黒と白のコントラストの滝がとても綺麗でした。その時は縦構図で紅葉を上に多く入れたのですが、今回は上方が明るすぎたので横構図にしてみました。
 露光時間は4秒ですが、時々、車が目の前を通るので、運が悪いと車の屋根が写り込んでしまい、高いフィルムが一枚、無駄になってしまいます。

玉簾の滝(山形県)

 弘法大師が神のお告げによって発見したと伝えられている落差63m、山形県随一の高さを誇る見事な滝です。広い駐車場が完備されており、駐車場から滝まで徒歩10分ほどです。滝の前には御嶽神社のお社があり、かつては山岳宗教の修験場だったようです。
 太陽の光によって滝の飛沫が玉簾のように見えることからついた名前らしいです。

 水量も多く、豪快に流れ落ちるので、滝からかなり離れていても飛沫が飛んできます。滝つぼの前まで行くことができますが、びしょ濡れになる覚悟が必要です。
 この写真を撮影した神社の裏手に当たる場所は昼間でも薄暗く、滝の飛沫の影響もあるのか、とてもひんやりとしています。長時間、一人きりでいると何だか心細くなってきます。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM105mm 1:5.6 F45 4s PROVIA 100F

 本当は曇っていてほしかったのですが、ご覧のように見事に晴れ渡ってしまいました。周囲には大きな木があるので、晴れてしまうとコントラストがつきすぎてしまいます。全体に光りの回り込んだ状態を撮りたかったのですが、自然はこちらの思うようにはなってくれません。
 周りの木や斜面をシルエットになるようにして、滝を取り囲むような構図にしてみました。偶然のタイミングですが、滝の背後の右側の崖に木の影が落ち込んでいるのがいいアクセントになってくれました。

 滝を撮るときは人工物は入れないようにすることがほとんどですが、敢えて今回は滝つぼの前に設置されている柵と立て看板のようなものを小さく入れてみました。

 なお、この滝はゴールデンウィーク期間と夏休み期間、夜になるとライトアップされるようです。

奈曽の白滝(秋田県)

 日本海沿いに北上する国道7号線から鳥海山方面に分岐する道路に入り、10分ほど走ると到着します。広い駐車場があり、一帯は奈曽の白滝公園になっています。
 滝に行くにはこの公園内を抜けるか、金峯神社の境内を通るかのどちらかですが、滝が見える観瀑台のようなところまでは徒歩で15分ほどです。金峯神社は鳥海山の修験の拠点だったらしく、境内はかなり急な石段が続いています。
 観瀑台は金峯神社の本殿の近くにあるのですが、障害物がなく滝の全貌が見えるのはここと、長い石段を下りた先の滝つぼの前だけです。

 下の写真は観瀑台からではなく、奈曽川にかかっている吊り橋の上から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F45 8s PROVIA 100F

 奥に見えるのが奈曽の白滝の滝つぼで、そこからの流れを撮ってみました。滝は落差26m、幅11mの豪快な滝ですが、滝そのものよりもその先の流れがとても綺麗でした。
 雨が降ったり止んだりという天気でしたが、滝を撮るには最高です。水が少し濁っていましたが、長時間露光で撮影すれば波が白くなるので、濁りをごまかすことができます。

 濡れた岩のテカリを抑えるためにPLフィルターを使おうかと思いましたが、岩がそれほど多くないのと、緑が不自然にな色になってしまうのを避けるため、PLフィルターは使用していません。
 下側(手前側)をもう少し広く入れたかったのですが、すぐ下に吊り橋を支えているワイヤーがあり、それが写り込んでしまうので手前で止めています。

 吊り橋の上に三脚を立てているので、人が吊り橋に入ると大きく揺れます。しかも全長75mの橋を渡りきるまで揺れ続けるので、この場所で撮影するのは人の少ない早朝がお勧めです。

元滝伏流水(秋田県)

 奈曽の白滝から車で数分も走ると元滝伏流水の駐車場に着きます。駐車場からは整備された遊歩道があり、15分ほどで伏流水が見えてきます。
 元滝はさらに上流になるらしいのですが、がけ崩れで立ち入り禁止になっていました。

 元滝伏流水は鳥海山の溶岩の末端から流れ出ている湧き水で、水温は年間を通じてほぼ変わらず、10度くらいとのことです。とてもきれいな水で、イワナやヤマメがいるらしく、撮影に行った時も釣りをしている人を見かけましたが、釣れたところは見られませんでした。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F32 8s PROVIA 100F

 岩の間から流れ落ちる水と苔むした岩、うっそうとした森がつくる景観は、形容しがたい、ぞくっとするような空間です。
 川の中ほどに草が根を下ろした小さな岩があったので、これを手前に入れて撮影しました。ほとんど無風状態だったので、草もブレずに写ってくれました。
 画左側は上部に大きな岩があり、その陰になっているので、右の方に比べるとかなり暗い状況です。右半分に弱いハーフNDフィルターをかけても良いのですが、これくらいの明暗差があった方が奥行きが感じられると思います。
 全体にあまり明るくしてしまうと、ぞくっとするような感じが薄れてしまうので、露出は切り詰め気味にしています。

 もう少し下流(写真の左方向)に行くと川の中に苔むした大きな岩がゴロゴロしており、また違った美しさを見ることができます。

止滝(秋田県)

 十和田湖に向かう国道103号線、青森県との県境に近いところにある滝です。103号線に沿って流れる大湯川にある滝で、道路のすぐ脇にあります。大湯川の水量はあまり多くないのですが、この止滝のところは川幅が狭くなっているので、大きな滝ではありませんが迫力があります。
 滝つぼのすぐ上(道路脇)には小さな神社のお社があり、滝が祀られているのかも知れません。
 滝の下流すぐのところに駐車場があるので、滝へのアクセスはとても便利です。

 下の写真は、滝つぼの少し下流にある橋の上から撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C 300mm 1:8.5 F45 2s PROVIA 100F

 川の流れを多く入れたかったのですが、水量が少なく、あまり風情がなかったので、上の緑を多く入れました。また、滝の手前に伸びている枝が滝にかかり過ぎないポジションから撮影しています。
 折り重なる木々が平面的にならないように近くにある枝を大きく入れてみましたが、風でブレてしまい、ちょっと中途半端な感じです。これが止まってくれていると、全体がもっとすっきりとした印象になると思うのですが。

 この写真ではよくわかりませんが、カエデの木が何本もありましたので、秋の紅葉の季節はとても美しい景色になるのではないかと思います。

銚子の滝(秋田県)

 止滝から少し上流に行き、国道103号と104号が分岐している少し先にある滝です。滝のすぐ前まで車で行くことができます。
 江戸時代の紀行家、菅江真澄が訪れたらしく、「菅江真澄の道」と書かれた案内柱が立っています。

 銚子の滝とか銚子滝という名前の滝はあちこちにあり、滝の形が銚子に似ていることからつけられたものが多いですが、この滝も昔は銚子の形をしていたようです。
 落差は20mほど、季節によってはかなりの水量があるようです。

 滝は北西を向いて流れ落ちているので、晴れた日の日中は逆光になってしまうのと、晴れているとコントラストが強すぎて滝が目立たなくなってしまいます。やはり曇りとか雨の日がお勧めです。
 滝つぼは左右にかなり広がっているので、立つ位置によって滝の形や見え方がずいぶん変わってきます。

 下の写真はほぼ正面から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 8s PROVIA 100F

 滝の上部にヤマツツジが咲いていたので、これをできるだけ入るように、かつ、空は入れないようにというフレーミングです。
 画左側の柱状節理がとても綺麗だったので、ここの質感が出るように露出を決めています。
 水量はさほど多くないので、迫力というよりは繊細な美しさを感じますが、滝の下半分と左側の柱状節理の部分を切り取ると、美しさに加えて滝の迫力が感じられる写真になると思います。

 この滝の少し手間に「錦見の滝」があり、林の中にたたずむ美しい滝です。この辺りは滝が密集しています。

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 山形県と秋田県の滝、およそ20ヵ所を巡ってきましたが、訪れたにもかかわらず光の具合が良くなくて撮影しなかった滝もあります。そういう滝は、「また、出直してきなさい」と言われているのだと思い、再度、訪れてみたいと思っています。
 今回、紹介できなかった他の滝については、別の機会にご紹介できればと思っています。

 それにしても、滝というのは魅力があります。

(2022.7.9)

#渓流渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_mastertechnika

第86話 紅葉の奥入瀬渓流を大判カメラで撮る

 奥入瀬渓流は十和田湖の子ノ口から焼山まで、およそ14kmに渡って美しい流れが続いています。両岸には豊かな樹木やたくさんの滝があり、変化に富んだ景観は見飽きることがありません。流れとほぼ同じ高さに遊歩道が整備されているので、高いところから見下ろす渓谷とは違う景色を見ることができます。
 例年の紅葉は10月中旬から11月上旬と言われていますが、今年(2021年)は10月24日の週がいちばんの見ごろだった感じです。紅葉の奥入瀬渓流を大判カメラで撮ってきました。

三乱(さみだれ)の流れ

 個人的には奥入瀬渓流の中でいちばん好きな場所です。
 流れは比較的穏やかで、その中に点在している大小の岩と、その上の着生植物が作り出す景観は得も言われぬ美しさがあります。すぐ脇を車道が走っているので、車の中からもその美しい景観を見ることができます。

 下の写真は早朝に撮った一枚です。

▲三乱の流れ Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON W125mm 1:5.6 F45 8s PROVIA100F

 流れのすぐ手前まで降りて行って撮影しています。渓流に太陽の光が差し込む前で、しかも前の夜に雨が降ったようで、しっとりとした色合いになってくれました。ほとんど無風状態でしたので、少々長めの露光をしても被写体ブレは気にならないだろうと思い、8秒の露光をしています。
 手前にある岩から奥のl紅葉までピントを合わせたかったので、フロントティルトのアオリをかけています。
 また、流れの奥行き感と広さを出すために、カメラの位置を水面から60cmほどの高さでの撮影です。

 木々はとても綺麗に色づいていますが、紅葉をあまりたくさん入れると画の締まりがなくなってしまうので、切り詰めています。その分、流れを広く入れて、点在する岩をアクセントにしました。
 早朝のしっとり感が損なわれないように露出は気持ちアンダー気味にしています。

 もう一枚、少し上流側で見つけた、岩の上に根を下ろしている黄葉です。

▲三乱の流れ Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 1s PROVIA100F

 背景を広く入れ過ぎると岩の上の黄葉が目立たなくなってしまうので、流れとの対比で黄葉が引き立つようにしました。もう少し下流側から流れを多く入れようとも思いましたが、そうすると背景も広く入ってしまいゴチャゴチャしてしまうので、流れに対して真横から撮っています。
 また、岩の上から伸びている2本の幹がとてもいいアクセントになっていたので、これがはっきり見えるアングルを選んでいます。
 こちらもほぼ無風状態だったのですが、ところどころ、わずかに葉っぱがブレています。

 まだ完全に黄葉しきっておらず緑が残っていますが、そのグラデーションがとても綺麗です。露出アンダーになるとこのグラデーションが濁ってしまうので、葉っぱの部分を何ヵ所か測光して露出を決めています。

石ヶ戸(いしけど)の瀬

 石ヶ戸休憩所がある辺りを石ヶ戸の瀬と呼ぶようです。石ヶ戸休憩所は広い駐車スペースもあり、観光バスも多く来るのでたくさんの観光客でにぎわっています。
 すぐ近くに、カツラの大木で支えられた巨大な一枚岩があり、それを石ヶ戸と呼ぶようですが、その岩の下はまるで小屋のような空間になっています。
 石ヶ戸の瀬の辺りは流れが大きなカーブを描いており、そのためか変化に富んだ景観を見ることができます。

 下の写真は石ヶ戸の瀬の中でも流れが激しい場所です。橋のようになった倒木が何とも言えぬ景色を作り出しています。

▲石ヶ戸の瀬 Linhof MasterTechnika 2000 APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 4s PROVIA100F

 奥入瀬はどちらかというと紅葉よりも黄葉のイメージが強いのですが、この辺りは紅葉が点在しており、そのコントラストが綺麗です。
 奥行き感を出すために、手前の岩を多めに入れています。手前から奥までピントが合うようにフロントティルトのアオリをかけています。ほぼ無風状態だったので、岩の上の草もほとんどブレずにすみました。
 一方、上部中央にある黄緑色の葉っぱがアウトフォーカスになってしまい、ちょっと気になります。撮影位置をもう少し前にできればよかったのですが足場が悪く、このあたりが自然相手の難しいところです。

 上の写真より少し下流の、流れが極めて穏やかになっている場所で撮影したのが下の写真です。

▲石ヶ戸の瀬 Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON CM105mm 1:5.6 F22 1/2 PROVIA100F

 傾斜がほとんどなく、波も全くというほど立っていません。ここも、苔むした倒木がとても良いアクセントになっていると思います。
 前の写真のときと比べて陽が高くなっているので林全体が明るくなっていますが、若干暗めの方がこの場の雰囲気には合うと思い、露出は少し切り詰めています。

 波を立てて激しく流れる景色も素晴らしいですが、このように音もなく静かに流れる、まるで時が止まったような景色を見られるのも奥入瀬渓流の魅力だと思います。

 もう一枚、近くでとても綺麗に色づいた木を見つけたので撮ってみました。

▲石ヶ戸の瀬 Linhof MasterTechnika 2000  FUJINON CM105mm 1:5.6 F22 1/2 PROVIA100F

 上の方の葉っぱが赤くなってきており、そのグラデーションがとても綺麗です。
 ここの流れもとても穏やかで、波音もほとんど聞こえません。長時間露光しても波の軌跡はほとんど写らないので、川面を流れる落ち葉が線を描く程度のシャッター速度で撮影しています。欲を言うと、もう少し流れる落ち葉がたくさん欲しかったところです。

 カメラをもう少し上に振ると、切り立った崖の上の方に赤く色づいた木々が点々とあったのですが、このオレンジ色の葉っぱを引き立たせるため、敢えて上の方の紅葉は入れませんでした。もう少し引いた場所から短めのレンズで広い範囲を撮ると、これとは違った美しい渓谷美の写真になるのではないかと思います。

阿修羅(あしゅら)の流れ

 奥入瀬渓流の中でいちばん人気の場所ではないかと思います。ガイドブックや雑誌などでも紹介される回数が最も多いのが、ここ、阿修羅の流れだそうです。
 近くにわずかながら駐車スペースもあり、ここを目当てに来る方も多いようです。写真撮影する人、絵を描く人など、人が耐えることがありません。
 それでも早朝は人の数がとても少なく、ゆっくりと撮影することができます。

 下の写真は流れのすぐ近くの遊歩道から、できるだけ低いポジションで撮ったものです。

▲阿修羅の流れ Linhof MasterTechnika 2000 SUPER-ANGULON 90mm 1:8 F45 8s PROVIA100F

 岩の間を縫うように流れる姿はとても豪快です。焦点距離90mmの短焦点レンズを使っていますが、流れを強調するために林の上部はあまり入れないようにしています。
 早朝で岩に光が回り込む前の時間帯なので、岩の重みのようなものが感じられます。8秒の露光をしていますが、風がなく葉っぱもピタッと止まってくれたのは運が良かったです。
 蛇行した激しい流れと川中の岩、着生植物のバランスは本当に美しく、奥入瀬渓流の中でいちばん人気というのも頷けます。

 右上の林に光が差し込んでいるのがわかると思いますが、林を切り詰めた分、流れが奥の方に続いている感じを出そうと思い、この辺りが少し明るくなるのを待っての撮影です。

 上の写真の少し上流から縦位置で撮ったのが下の写真です。

▲阿修羅の流れ Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON W125mm 1:5.6 F22 4s ND8 PROVIA100F

 一枚目の写真の場所と比べると流れは穏やかで激しさはありません。しかし、左奥から大きくカーブしながら流れ落ち、テーブル状になったところに波が描く模様は、激しさと穏やかさが同居している感じが表わされているように思います。

 林全体に光が回り込んで黄葉が鮮やかになってきたので、黄葉を多めに入れてみました。紅葉や黄葉は光が入り込むと鮮やかに発色しますが、光が強すぎると白っぽくなってしまいます。太陽に雲がかかって光が柔らかくなったところを狙って撮影しました。

 この写真のすぐ右側と正面の奥には道路が走っています。何気なくシャッターを切ったら車が写り込んでいた、なんてこともあるので撮影の際は注意が必要です。

白銀(しろがね)の流れ

 奥入瀬渓流の数ある滝の中でも人気の高い雲井の滝、その少し上流にあるのが白銀の流れです。轟々と音を立ててダイナミックに流れるところは高い位置から見下ろすしかありませんが、その下流はとても穏やかな流れになっています。ここは、阿修羅の流れと銚子大滝の中間あたりで、それが理由かどうかわかりませんが、訪れる人も比較的少ない感じがします。

 下の写真は白銀の流れのいちばん下流にあたるところです。

▲白銀の流れ Linhof MasterTechnika 2000  SUPER-ANGULON 90mm 1:8 F22 4s ND8 PROVIA100F

 左端にちょっと見えている階段を上ると白銀の流れを見下ろせる場所に出ます。
 この写真の場所は川幅が急に広くなるので、水深も浅く、穏やかな流れです。この時期は落葉が進んで葉っぱの数も少ないので、開けた感じのする場所です。

 流れの中に横一列に整然と並んだ岩が何とも言えません。穏やかな流れでありながら適度な波があるので、長時間露光するとまるで雲が流れているような描写になります。
 対岸にある巨木がとても印象的で、このおかげで画全体が締まっている感じです。

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 美しさもその規模も他に類を見ない奥入瀬渓流です。今回は石ヶ戸から子ノ口の間を撮影しましたが、石ヶ戸から焼山までの間の紅葉も素晴らしいです。範囲が広いので短い期間ですべてを撮るには無理があります。限られた時間の中である程度狙いを絞り込んでおかないと、被写体に振り回されてしまいそうです。
 新緑の美しさも格別で、来年、新緑の頃に訪れることができたらいいなと思ってます。

(2021年11月16日)

#奥入瀬渓流 #紅葉 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika #渓流渓谷

第71話 緑深い夏の桐生川源流林を大判カメラで撮る

 桐生川は群馬県桐生市の北東にある根本山を源に、桐生市街地を通って渡良瀬川に合流する、延長約57kmの川で、美しい景観の中をとてもきれいな水が流れています。釣り人にも人気のある渓流のようですが、今回は緑に包まれた夏の桐生川の景観を撮影してみました。

木々の緑と苔むした岩がつくる見事な景観

 桐生市街地を通る桐生田沼線(66号線)を北上していくと、やがて、桐生川と並行するようになります。さらに北上すると桐生川ダムが見えてきます。発電も行なっている貯水ダムとのことで、ダム湖にかかる梅田大橋から見るとかなりの貯水量があるように見えます。

 このダムの上流側一帯が「桐生川源流林」と呼ばれており、森林浴の森 日本100選に選ばれているようです。ほとんど護岸工事がされていない手つかずの状態で残っている美しい渓流です。
 川幅は10メートルくらいでしょうか、決して大きな川ではありませんが、両岸の木々や岩とともに織りなされる景観がどこまでも続いており、一日中いても飽きることがありません。

 下の写真は、比較的見通しのきくところから撮った桐生川の景観です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W250mm 1:5.6 F32 1/2 PROVIA100F

 昨日までの雨のせいか、水量も多めで水も若干濁っていますが、それでも透明度の高い水が流れています。空全体はどんよりと曇っていますが、コントラストが強くなりすぎず柔らかな描写になってくれました。
 釣り人のような装備をして行けば、川を遡上して撮影ができそうです。機材を水没させないように注意が必要ですが、次回は挑戦してみたいと思います。

たくさんの民話が残る梅田地区

 桐生川源流林一帯は梅田町に属するようですが、ここにはたくさんの民話が言い伝えられているようです。川沿いの道路を走っていると、所々にそんな言い伝えが書かれた看板を目にします。
 そんな伝説の一つ、村の家畜を襲ったり田畑を荒らす大蛇が済んでいたという「蛇瑠淵(じゃるぶち)」は、岩の間を縫うように流れる景観を見ることができ、そんな伝説に真実味を感じさせてくれます。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 8s PROVIA100F

 上の写真は蛇瑠淵付近を撮ったものですが、どこか妖気漂う雰囲気を出そうと思い、左上の林がアンダー目になるよう、露出を切り詰めて撮影してみました。
 一昔前は水量もずっと多く、青く渦巻くように流れていたらしいですが、いまはかなり水量が減ってしまったようです。それでも十分に魅力的な流れだと思います。

 蛇瑠淵の少し下流に「千代の滝・千代が渕」があります。ここも、山賊から村を救った若い娘が足を滑らせて滝に落ちたという悲しい伝説があるようです。
 この滝は落差が5mほどで、滝を真上から見下ろすことができます。滝のところだけ極端に川幅が狭くなっているため、かなり激しい音を立てて流れ落ちています。
 岩の間をうねるように落ちているので、滝を正面から見ることはできません。

 下の写真は千代の滝に落ち込む手前(上流側)の流れを撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 24s PROVIA100F C4フィルター

 薄暗い滝壺に落ちていく雰囲気を出すため、C4色温度変換フィルターをつけての撮影です。青と緑の中間の色、「碧」という感じの色を出そうと思ってフィルターを使いました。非現実的な色ですが、この場の雰囲気には合っているのではないかと思います。

 もう一枚、下の写真は千代の滝の滝つぼに降りて撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6 F11 2m50s PROVIA100F C4フィルター

 こちらも同様にC4フィルターを使っています。
 周囲を木々に囲まれていてかなり暗い状態だったので、空が少し明るくなったところを狙っての撮影です。滝から射し込む光で正面の岩が光っているのがわかると思います。
 この滝壺の水深は30~40cmくらいなので、水に入っていけば滝の落ち口を見ることができます。夏場は子供たちの格好の水遊びの場になるようです。

ひたすら優美な流れも魅力的

 上で紹介した蛇瑠淵のような流れとは対照的に、滑(ナメ)のような優美な流れも随所で見ることができます。傾斜が緩やかなところは流れも穏やかで、両岸を木々に囲まれた薄暗い中を流れる様もいいものです。

 正面奥の木々の上部が開けており、鮮やかな緑と褐色の川面のコントラストがとても綺麗だったので撮ったのが下の写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 2s PROVIA100F ハーフNDフィルター

 正面の木々がかなり明るかったのでハーフNDフィルターを使っています。
 晴天時に陽が射し込んでいると全く違った感じになると思いますが、このような幽玄な感じは曇天ならではだと思います。

 さらに少し下流で撮影したのが下の写真です。この辺りも流れは穏やかで、滑のような状態が続いています。

▲Linhof MasterTechnika 45 SUPER-ANGULON 90mm 1:8 F32 16s PROVIA100F

 手前の流れを大きく取り入れ、かつ、S字を描くように蛇行している流れがわかるポジションから撮影しました。
 また、この写真では色温度変換フィルターは使用していませんが、C4フィルターを装着して碧い色を出しても似合うのではないかと思います。

あちこちにユキノシタの群落が

 ちょうどユキノシタが満開の時期で、林床のあちこちで見ることができます。薄暗い林の中でひっそりと咲く姿は妖艶ささえ感じます。花の色が白いので、そこだけ明かりが灯っているようです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F11 1/2 PROVIA100F

 この花は明るい日差しの下よりも、このような薄暗いところの方が似合うと思います。谷川べりなどの湿った場所や半日陰地の岩場などに自生するようなので、それももっともだと思いますが。
 このような小さな花の群落を撮る場合、被写界深度を浅くしないと花が背景に埋もれてしまいますが、浅くしすぎるとピントの合う花がほんの一部になってしまうため、レンズの焦点距離と絞りの選択には悩みます。

 桐生川源流林に咲く花の種類は決して多くはないので、花を見かけるとなんだか癒される感じがします。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 被写体が豊富で様々な撮り方ができる桐生川源流林ですが、あまり欲張りすぎると被写体に振り回されてしまいそうです。それくらい魅力があるということですが、ある程度、的を絞って撮影に臨んだほうが良いかもしれません。
 楓の木がたくさんありましたので、秋の紅葉の時期は美しい光景が見られると思います。

 桐生川源流林は桐生川に沿って車道が通っていて、桐生川ダムから清風園という割烹旅館の辺りまでは道幅も比較的広いですが、その先に行くとすれ違いもできないくらいの狭い道路が続きます。たくさんの車が行き交うわけではありませんが、運転は注意が必要です。
 また、車を止める場所も非常に少ないので、他の車や地元の方などの迷惑にならないように心掛けることも忘れないようにしたいものです。

(2021年7月19日)

#桐生川源流林 #渓流渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

第63話 檜原村 初夏の風景を大判カメラで撮る

 4月の後半、檜原村(東京都)に行ってきました。檜原村は都心から車で2時間ほどですが、東京都とはいえ、さすがに標高も高いので、都心よりも季節の進み方はずいぶん遅いようです。まさに新緑真っ盛りといった感じで、大判カメラで初夏の風景を撮ってみました。
 今回持ち出したカメラは、リンホフマスターテヒニカ2000です。

新緑と山桜のコラボレーション

 あきる野市を抜け、檜原街道を西(檜原都民の森方面)に行くと徐々に山深くなってきます。それでも道の両側には民家が見られますが、南郷の駐在所を過ぎたあたりから民家はめっきり減り、東京とは思えない豊かな自然が続きます。山々はまだ淡い色をしており、ところどころに桜(山桜と思われます)も咲いています。

 下の写真は走っている途中で見つけた山桜です。それほど大きな木ではありませんが、隣のオオモミジと思われる新緑とのコラボレーションがきれいだったので撮ってみました。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 FUJINON CM 105mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 この日は曇り空でしたが、強い日差しが当たっているよりは全体的に柔らかな描写になるので、このような被写体を撮るにはむいています。
 道路脇から撮っており、ワーキングディスタンスが制限されてしまうので、若干、広角寄り(105mm)のレンズでの撮影です。大きな木ではないので、あえて左右を切り詰めてみました。
 オオモミジの新緑の色が濁らないように、露出は少し明るめにしています。
 ほとんど無風状態でしたので、1/4秒の低速シャッターでもブレることなく写ってくれました。

矢沢を彩る新録

 檜原街道は南秋川に沿って走っていますが、この南秋川にはいくつもの支流が流れ込んでいます。矢沢もそんな支流の一つで、神奈川県との県境にある生藤山の山麓がその源流です。小さな沢ですが景観が美しく、被写体に富んでいます。矢沢に沿って林道があるのですが、残念ながら途中で通行止めになっていました。

 南秋川に合流する手前の橋の上から撮ったのが下の写真です。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 FUJINON W 210mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 水量は決して多くありませんが、とてもきれいな水が流れています。河原の白い石と木々の緑のコントラストが美しい景観をつくりだしています。
 渓谷の深さを表現しようと思い、川を左下に寄せ、急峻な右岸を多めに入れてみました。沢に張り出す左右の枝が重なりすぎないアングルから撮っています。

 また、全体をパンフォーカスにしたかったのでカメラのフロント部を少しだけ下にあおっていますが、左上の奥の木々は被写界深度を外れてしまっている感じです。

 この矢沢はこのような景観が上流まで続いているので、林道の通行止めが解除されたら源流まで行ってみたいと思っています。

山萌える

 この時期の檜原村は木々が芽吹いて間もない頃で、山全体が淡い色彩に覆われています。少し山の上の方に目をやると、緑というよりは「白緑(びゃくろく)」とか「薄萌葱(うすもえぎ)」といった名前がぴったりの色をしています。
 しかし、このような色は長くは続かず、日増しに濃くなっていきます。

 白緑というにふさわしい色合いをした景色に出会いました。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 Schneider APO-SYMMAR 180mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 木によって色合いが微妙に異なり、何とも言えない美しさが作り出されています。所どころに桜が咲いており、淡い色を一層引き立てているように感じます。

 このような景観が広がっているので、どこを切り取るか非常に迷いますが、木々が最もこんもりと見えるアングルと、全体が単調なパターンにならないように所どころにアクセントとなるものが配置されるような構図を選びました。
 露出を切り詰めてしまうと、この淡い感じが消えてしまうし、露出をかけすぎると飛んでしまうし、非常に悩むところです。

 この色合い、ポジ原版をライトボックスで見ると息をのむ美しさですが、画面ではお伝え出来ないのが残念です。

ひっそりと佇む龍神の滝

 檜原村にはたくさんの滝がありますが、個人的に気に入っているのが「龍神の滝」です。檜原街道からすぐのところにあり、斜面に設けられた遊歩道を下っていくと容易に訪れることができます。
 落差が18mほどの滝で、かつてはかなりの水量があったようですが、いまはずいぶんと減ってしまい、一筋の糸のような滝です。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 8s PROVIA100F

 周囲は大きな木々でおおわれているため、昼間でも薄暗い状態です。時おり木漏れ日が差し込み、岩や水面に模様を描き出していたので、滝つぼのところだけを撮ってみました。
 昼なお薄暗いところにたたずむ雰囲気が壊れないよう、ごつごつした岩が黒くつぶれないぎりぎりのところまで露出を切り詰め、水が白く飛びすぎないようにしました。

 滝の全景を撮るには対岸からか、もしくは滝つぼから広角で見上げる構図になるかと思いますが、綺麗な滝なのでいろいろな撮り方ができると思います。
 水量は多くありませんが近づくと飛沫が飛んできますので、風の強い日などは要注意かも知れません。

 なお、この滝では滝行が行なわれ、それに訪れる人も多いらしいのですが、一度もお目にかかったことはありません。

 村域の9割以上が山林という檜原村ですが、それゆえにたくさんの自然に恵まれており、森林、渓谷、滝など、四季を通じていろいろな景色に出会うことができます。

(2021.6.4)

#檜原村 #渓流渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika #新緑

第37話 御岳渓谷 2020年最後の紅葉をPENTAX67Ⅱで撮影

 御岳渓谷は多摩川の上流、東京都青梅市にある渓谷です。多摩川は、山梨県にある笠取山の山頂直下を源として、東京都、神奈川県を経由して東京湾に注ぎこむ一級河川ですが、上流の方は護岸工事をされていないところも多く、きれいな水が流れています。御岳渓谷のあたりはカヌーの聖地とも呼ばれているらしく、カヌーで川下りをしている人をたくさん見かけます。
 11月中旬あたりから綺麗な紅葉が見られるので、2020年最後の紅葉撮りに行ってきました。

 電車だとJR青梅線の御嶽駅からすぐ、車だと近くに有料駐車場があり、そこから歩いて10分ほどで御岳渓谷に着きます。夏の暑い時期やカヌーの大会があるときは賑わいますが、普段はそれほど人出が多いわけでもなく、ゆっくりと撮影をすることができます。

玉堂美術館前の大イチョウが輝いて

 紅葉の時期、何と言ってもひときわ目を引くのが玉堂美術館の前にある大イチョウの黄葉です。下の写真は対岸(左岸側)から撮ったものです。

玉堂美術館前の大イチョウ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 この辺りは南側がすぐ山になっているため、朝のうちは日陰になっていますが、日が回り込んでくると黄色く色づいたイチョウがまさに黄金色に輝きます。樹高が30mほどもあるらしく、自ら光を放っているような姿は圧巻です。
 イチョウの葉っぱは枝についている間は綺麗な黄色を保っており、この色のまま一気に落葉していきます。他の黄葉のように葉っぱが茶色くならないので、綺麗な状態のまま散っていく潔さのようなものがあって好きです。少し強い風が吹いたときなどに一気に散る姿も見事です。

名水百選の蒼い流れ

 御岳渓谷一帯の流れは御岳渓流とも呼ばれており、名水百選に選ばれているようです。水深はあまり深くなさそうですが、大きな岩がごろごろしており、綺麗な景観をつくってくれています(下の写真)。

御岳渓谷 PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 55mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 1/2段ほど露出を抑えめにして、渓谷の蒼然たる感じを狙ってみました。まだ渓谷に陽が差し込む前なので、全体に青っぽく色かぶりをしています。
 それにしてもこんなところをカヌーで下っていくのですから凄いです。

燃えるようなイロハモミジの紅葉

 左岸側にはカエデ(イロハモミジ)がたくさんあり、日が差し込むと燃えるような色を見せてくれます。

イロハモミジ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX-M67 300mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 対岸は日が当たっていないので黒く落ち込み、そこに真っ赤に色づいたカエデが浮かび上がります。薄曇りくらいの光の方が柔らかな感じになって個人的にはその方が好きですが、この日は快晴のため光が強すぎたのと、ほぼ正面からの光で撮ってしまったために全体的に硬く、ぎらついた感じになってしまいました。

落ち着いた色合いのトウカエデの黄葉

 下の写真は御岳小橋の脇で見つけた黄葉です。たぶん、トウカエデではないかと思います。

トウカエデ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 PROVIA100F

 だいぶ落葉してしまってスカスカしてますが、まだ綺麗な色を保っていました。太陽の位置もだいぶ高くなっているので、前のカエデの写真に比べると落ち着いた感じになりました。葉っぱが落ちた後の枝も白く輝いて、晩秋らしさが出ているのではないかと勝手に思ってます。

やはりイロハモミジの紅葉は第一級品

 午後2時過ぎ、御岳渓谷での撮影を切り上げ、帰路を車で移動している際に偶然に綺麗な紅葉を見つけました。まさに今が盛りと真っ赤に色づいた何とも美しいイロハモミジです。

イロハモミジ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 300mm 1:4 F8 1/4 PROVIA100F

 左サイドからの光で撮っていますが、背景の方が日が当たっていて明るかったので、背景があまり映り込まないようにカエデの木をフレームいっぱいに入れてみました。紅葉が濁らないように露出は少しオーバー目にしています。同じ赤でも色の濃淡があるのと、光が当たって白く光っているところがあり、平坦になりすぎずに済んだと思っています。
 まだほとんど落葉しておらず、葉っぱが密集しているためにこのような撮り方ができますが、落葉してスカスカ状態だとこのような感じは出せないと思います。

 東京都心の紅葉はあまり鮮やかに色づかないものが多いですが、標高230mmほどの御岳渓谷のあたりは気温の寒暖差が大きいためか、色がとても鮮やかです。同じ東京とは思えない豊かな自然が残されており、近くにある御岳山にはレンゲショウマの群生地があるようです。一度、訪れてみたいものです。

(2021.1.13)

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