富士フイルムのリバーサルフィルム フジクロームの系譜に思うこと ~回顧~

#PROVIA #Velvia #プロビア #ベルビア #リバーサルフィルム #富士フイルム

エプソン EPSON GT-X970 フィルムホルダー 純正品と自作品のスキャン比較

 前回、エプソンのフラットベッドスキャナ EPSON GT-X970 のフィルムホルダーの作成について書きましたが、自作のホルダーと純正品のホルダーを用いて実際にスキャンをしてみましたのでご紹介します。
 厳密な比較はできませんので、画像を目視して違いがあるかどうかというレベルです。

67判ブローニーフィルムのスキャン画像の比較

 今回の比較用に使用したのは、カラーリバーサルフィルム PROVIA 100Fで撮影した67判のポジ原版です。顕著な差は出ないであろうという予測から、出来るだけ全面にピントが来ているコマを選んでみました。ボケている(アウトフォーカス)部分が多いコマでは、そもそも比較することが難しいだろうというのが理由です。
 実際に使用したポジ原版がこちらです。ライトボックスに乗せて撮影しているので、画質も色も良くありませんが。

 2年ほど前に撮影したものですが、大判カメラに67判のロールフィルムホルダーを装着し、出来るだけ全面にピントが来るよう、アオリを使って撮影しています。
 まずはこのポジ原版を、エプソン純正のフィルムホルダーと自作のフィルムホルダーを使ってスキャンします。スキャン解像度は4,800dpiで、エプソンのスキャナソフトウェアに装備されているアンシャープマスクやホコリ除去、DIGITAL ICE 等の機能は一切使っていません。

 下の2枚が実際にスキャンした画像です。1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この画像では良くわからないと思いますが、エプソン純正ホルダーでスキャンした画像はごくわずか、左下がりに傾いています。フィルムをホルダーに入れる際も、ホルダーをスキャナに乗せる際も傾きには十分注意したつもりですが、エプソン純正のホルダーでフィルムの傾きをなくすのは結構難しいです。エプソンのソフトウェアにはフィルムの傾きを補正する機能もありますが、これもフィルムホルダーにフィルムが傾いて装着されてしまえばあまり意味をなさなくなります。

 一方、自作のホルダーですが、フィルムの傾きはほとんど認識できませんでした。

 次に画質の違いですが、このように全体を表示した画像ではその違いはまったく分かりません。もちろん、掲載の画像は解像度を落としてありますが、落とす前の画像同士を比較してもその違いはわかりません。ちなみに、4,800dpiでスキャンした画像は、約13,500×10,900でおよそ1億4,700万画素になります。

画像中央部分の画質の比較

 画像全体を見ても違いはわからないので、中央部分を拡大して比較してみます。
 画像中央あたりの落ち葉が積もっている部分を拡大したのが下の画像です。同じく、1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この2枚の画像も違いはほとんどわかりませんが、エプソン純正ホルダーを使用した方が、ハイライト部分の滲みがごくわずかに大きいように見えます。理由はよくわかりませんが、気になるほどの違いではありません。
 また、2枚の解像度の違いは感じられません。

画像周辺部分の画質の比較

 次に、画像周辺部の比較ということで、画像右下の落ち葉の辺りを拡大して比較してみます。
 同じく、1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この2枚はわずかに違いが感じられると思います。自作ホルダーの方が全体的に画像がシャープな印象を受けます。落ち葉の縁などを見ても、輪郭というかエッジがはっきりとしています。
 これはフィルムの平面性が保たれていることが理由ではないかと思います。
 エプソン純正ホルダーの方は若干の遊びを持たせているため、ホルダーにフィルムを装着しても完全に固定されず、わずかに動くことができる余裕があります。
 また、67判の1コマだけをホルダーに装着した場合、フィルムの4辺のうちの1辺はホルダーで押さえられていないため、どうしてもフィルムがわずかに湾曲してしまいます。
 これが原因で周辺部の画質が若干低下してしまうのではないかと思われます。

 一方、自作のホルダーはマグネットシートでフィルムの4辺を押さえていますので、目視をする限り、フィルムの湾曲はほとんど見受けられません。

使い勝手の比較

 今回作成したのは67判のフィルム1コマ用ですので、使い勝手についてエプソン純正ホルダーと単純比較をすることはできませんが、実際に使ってみると使用感の違いがあります。

 まず、フィルムの装着ですが、自作ホルダーの方が簡単で、しかも短時間で装着することができます。前の方でも書きましたが、とにかくフィルムの傾きを気にすることなく、フィルムガイドの間にフィルムを置くだけで済むので圧倒的に楽です。
 また、フィルム装着後にブロアでシュッシュッとやるのですが、エプソン純正ホルダーの方は強くやり過ぎるとフィルムが動いたり湾曲したりしてしまいますが、自作ホルダーの方はそのようなこともありません。

 次に、ホルダーをスキャナに設置する際、エプソン純正ホルダーの方はホルダーについているガイドピンをスキャナ本体の所定の位置に差し込むのですが、その状態でもホルダーがわずかにカタカタと動きます。つまり、これによってフィルムが傾いてしまうということです。
 自作ホルダーの方はまずスペーサーを置き、そこにホルダーをピッタリと密着させれば良く、ホルダーがカタカタと動くこともありません。これでフィルムの傾きはなくなるのでやはり簡単です。

 このように書くと自作ホルダーの方が優れているように感じられると思いますが、唯一、エプソン純正ホルダーにかなわないのはその汎用性です。
 エプソン純正ホルダーは様々なコマサイズやコマ数に対応していて、66判であれば同時に6コマ、67判や69判であれば同時に4コマまで装着することができます。この利便性は、ホルダーをいくつも用意しなくても良いとか、大量のフィルムをスキャンするときなどは効率を上げることができるとか、やはり優れものであることは間違いありません。

 利便性や効率性を重視するか、ごくわずかであっても画質を重視するかによって見解は分かれると思いますが、私はそれほど大量のフィルムをスキャンするわけではないので、比べて初めて分かる程度の違いではあっても画質の良い方を使いたいと思います。

 この自作ホルダーを使用してスキャンしたフィルムはまだ5~6枚ほどですが、十分に使用に耐えられるものだと思います。あとは耐久性の問題で、長年使っているとヘタってくる可能性もあり、いつまで耐えられるかということです。
 また、66判1コマ用や67判2コマ用のホルダーもおいおい作っていきたいと思っています。ホルダーが増えてしまうのは好ましいことではありませんが、私の場合、ブローニーは66判と67判があればほぼ事足りるので、とりあえず4個は用意したいということになります。

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 EPSON GT-X970 の後継機はGT-X980 という機種ですが、私はまだ実際に使ったことがありません。今使っているGT-X970が壊れたら購入しようと思っているのですが、GT-X980はフィルムの平面性を高めるため、アンチニュートンリングのアクリル板の上にフィルムを乗せ、これを押さえる構造になっているようです。確かにフィルムの平面性は保たれるのでしょうが、スキャンの際に余計なものは入れたくないというのが個人的な正直な気持ちです。
 実は、今回の自作ホルダーでもガラス製のネガキャリアを使おうかとも考えたのですが、思いの他、平面性が保たれているようなので、まずは良しとしておきます。ネガキャリアを使用したホルダーについては、別途機会があれば検討してみたいと思います。

(2023年9月15日)

#EPSON #GT_X970 #エプソン #フィルムホルダー #スキャナ

エプソン EPSON GT-X970 スキャナ用フィルムホルダーの作成

 フィルムで撮影した写真をパソコンに表示したりWebで使用するためにはデータ化が必要ですが、私はエプソンのGT-X970というフラットベッドスキャナを用いてデータ化を行なっています。この機種自体はかなり古いのですが、民生用の機器としてはまずまずの性能ではないかと思っています。
 しかし、フィルムホルダーが安っぽくて、しかもあまり使い易くないというのが最大の難点です。特にブローニーフィルム用のホルダーはフィルムが傾かないようにセットするのが結構難しく、フィルムを押さえる機構がしっかりしていないのでフィルムも湾曲してしまい、なかなか平らになってくれません。
 また、長年使っているのでフィルムガイド用のピンが欠損してしていたり、あちこちに損傷も見られます。

 そこで、ブローニーフィルム用のホルダーを自作してみました。
 フィルムの傾きを出来るだけ起きないようにすること、フィルムの平面性を極力保つこと、この2点を満足するホルダーを安価で簡単に作れることを条件として作ってみました。

ブローニーフィルム用ホルダーの概要

 エプソン純正のブローニー用フィルムホルダーはサイズの異なるフィルムに対応できるように、幅約60mm、長さ約200mmの窓が二つ開いています。66判なら3コマ、67判や69判なら2コマ続いたスリーブをセットすることができるので便利ですが、窓枠よりも短いフィルムを装填した場合、フィルムの1辺が押さえられていない状態になってしまうので、どうしてもフィルムが湾曲しがちです。
 自由度が大きく適用範囲が広いのはありがたいですが、それよりも精度を高めることを重要視し、今回はフィルムサイズごとに作ることにしました。
 私はブローニーフィルムでは67判を最も多用していて、しかもフィルムを1コマごとにカットした状態で保管しているので、まずは67判一コマを2枚セットできるホルダーをつくります。

 構造はいたってシンプルで、イメージはこんな感じです。

 ベースとなるアクリル板の上にマグネットシートを2枚重ねて、このマグネットシートの間にフィルムを挟むというものです。アクリル板とマグネットシートには67判の画像サイズよりも若干大きめの窓を開けておきます。
 2枚のマグネットシートのうち、下側のマグネットシートはアクリル板に接着しておきますが、上側のマグネットシートは一端だけを両面テープで固定し、上側にめくりあげられるようにします。

エプソンGT-X970用フィルムホルダーの制約事項

 GT-X970はA4の原稿をスキャンすることができるガラス面を持っていますが、フィルムをスキャンする場合、これらすべての範囲を使うことができないようです。実測してみたところ、概ね、以下のような制約事項があることがわかりました。

 ガラス面全体は226mmx305mmの大きさがあり、A4サイズよりも少し大きくなっています。
 しかし、フィルムをスキャンできる範囲は上の図の青い部分、約160mmx約220mmの範囲に限られます。「約」となっているのは正確に測ることができず、ほぼこれくらいということです。ガラス面の周辺の30~40mmくらいの範囲はスキャンできません。
 また、スキャナを正面から見た時、ガラス面のいちばん奥(図では上側)、約12mmの範囲、および手前(図では下側)、約7mmの範囲はホルダーがかからないようにする必要があります。ここに遮光物がかかるとスキャンが正しく行われません。たぶん、遮光物がない状態の光源の明るさを測定するためのエリアではないかと思われます。

 このため、フィルムホルダーの窓がスキャン可能な範囲(上図の青い部分)に入るようにする必要があります。

67判用フィルムホルダーのサイズ

 ということで、GT-X970で正常にスキャンすることができるホルダーの図面を引いてみました。

 ホルダーの縦を100mmにしたのは特に大きな理由があるわけではなく、100円ショップで購入したマグネットシートのサイズに合わせただけです。これが実におあつらえ向きで、ホルダーを2枚並べて使うことができる寸法でもあります。
 購入したマグネットシートの長辺は300mmあるのですが、上で書いたように、GT-X970にホルダー設置禁止エリアがあるため、これに合わせて15mmカットして285mmとしました。

 67判用の窓の大きさは58mmx71mmで、これは67判の実画面サイズより縦横それぞれ2mmずつ大きくしてあります。つまり、フィルムの実画面の周囲に1mmの余黒が見えるサイズとなります。
 2枚の窓枠の位置はGT-X970のスキャン可能範囲からはみ出さないようにすれば特に問題はありませんが、フィルムをしっかり押さえられるよう、フィルム間の長さは30mm以上は確保したほうが良いと思います。

 また、スキャナのガラス面からフィルム面までの高さはかなり重要で、この位置によって得られる画像の質がずいぶん異なります。
 私が使っているGT-X970は、ガラス面からフィルムの下面まで4.7mmというのが最も質の良い画像が得られることを実測済みなので、今回もこれに合わせます。この高さはスキャナによって個体差があるようで、実際に高さを変えてスキャンしてみて、最も良い状態の高さを確認しなければなりません。結構面倒くさいのですが、仕方ありません。

 今回使用するアクリル板の厚さは1.8mm、マグネットシートの厚さは0.8mmです。そのため、ホルダーの高さをかせぐために嵩上げが必要になりますが、これも1.8mm厚のアクリル板を使います。
 上の図でもわかるように、嵩上げ1.8mm、ホルダーベースが1.8mm、下側のマグネットシートが0.8mmなので、これで4.4mmになります。まだ0.3mm不足しているので、厚さ0.25mmのアルミ板を嵩上げの下側に貼ります。この状態で実測したところ、4.65mmから4.7mmの間にあることがわかりましたので、これで良しとします。アクリル板は有機溶剤で接着しますが、マグネットシートやアルミ板は両面テープを使っているので、その分の厚さが0.05mm弱あり、結果として4.7mmに近い値になったようです。

67判用フィルムホルダーの作成

 まず、フィルムホルダーのベースをアクリル板で作ります。100mmx285mmにカットしたアクリル板に、58mmx71mmの窓を2ヵ所に開けます。位置は前出の図面の通りです。

 窓枠を開けたアクリル板が下の写真です。

 このホルダーベースの裏側に嵩上げ用のアクリル板(板厚1.8mm)とアルミ板(板厚0.25mm)を貼りつけます。

 嵩上げの部分をわかり易くするために画像をいじっていますので変な色になっていますが、ベースの両端に幅10mmのアクリル板を張り付け、その上にアルミ板(白い箇所)を貼りつけています。アルミ板は薄いので、ハサミやカッターナイフで簡単に切ることができます。ハサミで切った場合は少し反ってしまうので、滑らかなヘラなどを使って平らにします。

 次に、マグネットシートに窓を開けます。ホルダーベースと同じサイズにカットし、やはり同じ位置に同じ大きさで窓を開けます。

 上側の黒色のマグネットシートがホルダーベースに貼り付ける側で、この上にフィルムを乗せるようにします。そして、下側の白いマグネットシートがフィルムを上から押さえるためのカバーです。

 黒い方のマグネットシートにフィルムを乗せるので、ここにフィルムガイドを取付けます。

 フィルムガイドを貼りつけた状態はこんな感じです。

 フィルムガイドの高さはフィルム上面と同じになるように、ブローニーフィルムを7mm幅に切って両面テープで貼りつけています。スキャンするためのフィルムが傾かないよう、このフィルムガイドがマグネットシートの長辺と平行になるように注意します。
 また、フィルムガイドとフィルムガイドの間はブローニーフィルムがピッタリ入るようにします。ガイド間がフィルムの幅よりも大きすぎるとフィルムが動いてしまい、平行が保てなくなりますのでやはり注意して行ないます。
 そして、このマグネットシートをホルダーベースの表面に貼り付けます。窓の位置がぴったり重なるように仮止めして、慎重に貼っていきます。今回購入した黒色のマグネットシートの片面には両面テープがついています。

 最後に、この上にフィルム押さえカバーとなるマグネットシートを貼るのですが、もちろん、全面を貼ってしまうわけではなく、一方の短辺側だけ、両面テープで固定します。この時も窓の位置がぴったり重なるようにします。
 なお、マグネットシートは極性の関係でピッタリと重ならない場合もありますので、その場合は極性が合った位置で重ねるようにします。

 下の写真が完成したホルダーです。いちばん上のフィルム押さえカバーをめくった状態を写しています。

 このホルダーに実際にフィルムを挟んでみるとこんな感じです。ライトボックスに乗せて撮影しています。

 フィルムの実画面の周囲に1mmほどの幅で余黒が見えると思いますが、これでフィルム全面をスキャンすることができます。
 フィルムをホルダーに挟んだ状態はかなり平面性が保たれていて、エプソン純正のホルダーのように湾曲することもありません。ホコリを飛ばすためにブロアで吹いても、フィルムの位置がずれるようなことはありません。

 さて、こうして完成したフィルムホルダーをGT-X970のガラス面に乗せるわけですが、この時、ホルダーの長辺とガラス面の右縁が平行になるようにしなければなりません。フィルムがGT-X970のスキャン可能範囲内に入るよう、ホルダーの位置を少し内側に寄せなければならないので、ホルダーが平行になるようにスペーサーを入れてホルダーの位置を決めています。

 上の写真で白いフィルムホルダーの右側にあるのがスペーサーです。幅20mmにカットした板で、これをスキャナのガラス面の右縁にピッタリと合わせ、ここにフィルムホルダーの右縁を密着させます。これでホルダーの平行が保たれるはずです。
 また、スキャナのガラス面の上端と下端にホルダーがかからないようにしなければなりません。これは、スキャナのガラス面の右縁のところに原稿サイズの目盛りが刻んであるので、その「A4」の目盛りのところにフィルムホルダーの端を合わせると、上端に約12mmのスペースができます。これで、ホルダー設置禁止領域にかかることはありません。

 ちなみに、今回のフィルムホルダー作成にかかった費用ですが、実際に購入したのはマグネットシート2枚(税込220円)だけです。アクリル板とアルミ板は家に転がっていたものを使ったので、これらの実費としては0円ですが、新たに購入してもアクリル板が500円ほど、アルミ板は200円ほどだと思います。

実際にフィルムをスキャンしてみて

 今回作成したフィルムホルダーで実際にスキャンしてみました。
 エプソンから提供されているソフトウェア「EPSON Scan」でも問題なく画像認識され、サムネール画像の作成も出来ました。
 もし、サムネール画像の認識ができない場合でも、通常表示にしてスキャンする範囲を指定する機能があるので、これを使えば問題なくスキャンすることが可能です。

 また、実際にスキャンした画像ですが、その画質には全く問題がないと思われます。詳細に比較したわけではありませんが、エプソン純正のフィルムホルダーよりも画質は良いように感じます。ガラス面からフィルム面までの高さが適切だったのと、フィルムの平面性が保たれているのも要因かも知れません。
 フィルムの傾きに関しても十分に満足のいくものだと思います。ホルダーに貼ったフィルムガイドの間にフィルムを入れて、そのホルダーをスペーサーに密着するように置くことで、スキャンした画像が傾くことはほとんどありませんでした。純正のホルダーを使えば傾き補正もできるのですが、そのような機能がなくても問題のない状態の画像を得ることができます。

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 今回作成したのは67判のフィルム1コマを2枚設置できるホルダーですが、同じやり方で67判が2コマ連続したスリーブ状態のフィルム用のホルダーも作成する予定です。窓の大きさが変わるだけで、その他の作り方は同じです。
 このサイズのホルダーであれば、スキャナのガラス面に2枚並べて置くことができ、一度に4枚のフィルムをスキャンすることができます。
 何種類ものフィルムサイズ(66判とか67判、69判など)を使う場合は、それに合わせてフィルムホルダーを何種類も用意しなければならないのは難点ですが、私の場合、主に67判なので、今回作成したものと2枚続きのスリーブ用があればほとんど対応可能です。

(2023年9月8日)

#EPSON #エプソン #フィルムホルダー #GT_X970 #スキャナ

ローライ Rollei のモノクロフィルム RPX25を現像したら謎の白い斑点が大量に出現!

 私はローライのモノクロフィルムRPX25が好きで時々使っています。ISO25と低感度で使いにくいところもありますが、引き締まった黒や高コントラストが気に入っています。使用頻度の多いイルフォードのDELTA100と比べるとずっと少ないのですが、陰陽を表現したいときにはやっぱりRPX25といった感じです。
 先日、久しぶりにマミヤの中判カメラ Mamiya 6 MFを持ち出し、RPX25とイルフォードのDELTA100を1本ずつ持って都内に撮影に出かけました。日中なので低感度フィルムでもそこそこのシャッター速度を切ることができ、何か月ぶりかで街角スナップを撮ってきました。

 翌日、撮影済みの2本のフィルムの現像を行ないました。
 いつもの通り現像処理を行ない、乾燥を終えたネガをスリーブに入れるため、カットしようとライトボックスに乗せた時でした。何やら小さな白い斑点のようなものが一面に付着しているのに気がつきました。まさに、「なんじゃ、こりゃ!?」といった感じです。他のコマも見てみましたが、12コマすべてにポツポツとした白い斑点のようなものがびっしりとついています。ネガ上で白い斑点なので、プリントしたりネガスキャンすれば黒い斑点となって現れることになります。

 それが下の画像です。モノクロネガを反転させず、そのままスキャンしてありますので、ネガを見ているのと同じ状態です。

 わかり易いのは空の部分で、ネガ上では黒っぽいところなので白い斑点状のものがはっきりと見えます。白っぽいところには出ていないように見えますが、わかりにくいだけで、ルーペで見るとはっきりと出現しています。

 白枠で囲った辺りを拡大したのが下の画像です。

 びっしりと斑点状になっているのがわかると思います。

 最初にこれを見た時は現像の失敗かと思いました。現像液内に気泡のようなものができて、それによるものなのかとも思いましたが、どう見ても気泡によるものではなさそうです。
 また、私は現像液を調合する際は水道水を5分ほど煮沸し、それを冷ましたものを使いますので、水道水の中に含まれている不純物等による影響も考えにくいです。
 フィルムの結露かも知れないとも考えましたが、結露には十分注意しているのでたぶんあり得ません。

 掲載画像だとわかりにくいかも知れませんが、フィルムの上に何かが付着しているという感じではなく、画像として写り込んでいるといった方が適切かもしれません。
 しかし解せないのは、白っぽくなっているということはほとんど露光されていないということになります。つまり、光が当たっていない、もしくはごく弱い光しか当たっていないということになります。

 自家現像は何十年もやってきましたが、こんな現象は初めてのことです。ちなみに、もう一本のフィルム、DELTA100の方は何ともありません。今回使用した現像液はイルフォードのID-11で、1+1の希釈にしています。2本とも現像液は同じものを使っています。
 液温管理も20℃±1℃くらいの範囲でやりましたので、特に問題になるとは思えません。

 しかし、見れば見るほど不気味でおぞましい画像です。失敗作として廃棄してしまおうかとも思いましたが、何だかとても気になるのも事実であり、どういった現象で何が原因なのかを知りたくなり、いろいろ検索してみました。
 その結果、似たような経験をされた方の記事をいくつか見つけることができました。私の経験した現象と同じかどうかわかりませんが、斑点が出るという現象は似ているようです。

 その方々の記事によると、「カビ説」と「静電気説」の二つがあるようです。
 まず「カビ説」ですが、使用前のフィルムにカビが繁殖してしまうというものです。現像済みのフィルムが長年経つ間にカビが付着するというのはよく聞く話しですが、使用前のフィルムにカビがつくことなどあるのかと思ってしまいます。そもそも、使用前のフィルムは遮光性のポリ袋のような中に入れられて密閉されているので、外からカビが入り込むなどということは考えにくいです。もし、カビが入り込んだとしたら、工場での製造工程中がいちばん怪しいということになってしまいますが、フィルムをつくるような工場がそんなずさんな管理をしているとも思えません。
 また、このフィルムは購入してから半年くらいしか経っておらず、もちろん使用期限内であり、しかも冷蔵庫で保管していたので、仮にカビであったとしてもこんなにすさまじく繁殖するのも考えにくいです。

 二つ目の「静電気説」ですが、摩擦などによってまれにフィルム全体が静電気をあびてしまうことがあるとのことです。冬場の乾燥した時期とか、自分の着ている衣類の材質等によって静電気が発生する可能性は十分あるわけですが、このフィルムをそのような環境にさらした記憶はありません。
 フィルムが静電気を浴びるとどのようなダメージを受けるのか、私は良く知りませんが、もし静電気によって露光したのと同じような症状になるとしたら、現像したネガ上では、そこは白ではなく黒っぽく出るのではないかと思います。白い斑点状ということは未露光に近い状態なので、つじつまが合わない気がします。
 それに、静電気によるものだとしたら、このようにゴマをまき散らしたような感じになるのかという疑問も湧いてきます。スタティックマーク、いわゆる静電気によるフィルム上の傷跡というのを見たことがありますが、もっとシャープな感じでした。

 「カビ説」も「静電気説」も、私にはどうも納得がいきません。

 それと、もう一つ気になる点があります。空の辺りがわかり易いのですが、横方向に縞模様が見えると思いますが、これは斑点が鎖のように横方向に連なっている状態です。縦方向に連なっているのは見られず、横方向だけというのがとても気になります。カメラの中でのフィルムの送り方向と何らかの関係があるのかとも考えてみましたが、もしそうだとしたら他のフィルムでも発生するだろうと思います。
 また、縞模様というとレチキュレーションという疑いも捨てきれないわけですが、何年も経過したフィルムではないし、特に高温状態で保管されていたわけでもなく、フィルムに過度の力を加えてもいないわけで、やはり原因は違うのではないかと思います。

 ネットでいろいろ検索していたところ、何年か前にイルフォードのフィルムでもこのような現象が出たことがあったらしいのですが、画像や詳細な情報を見つけられず、今回のこの現象と同様のものだったのかどうかはわかりませんでした。

 ということで原因はまったくわからないままですが、試しにネガを顕微鏡で覗いてみました。白い斑点のところはフィルムに何かが付着しているという感じではなく、明らかにフィルムの中に記録された像の一部になっていて、あまり露光されていない白い部分と同じような状態でした。何かが付着しているのであれば盛り上がって見えるのですが、フィルムのどちらの面を見てもそのようなことはありません。
 また、輪郭はボヤっとしていて、倍率を上げ過ぎると境界がわからなくなってしまうくらいです。斑点の大きさはまちまちですが、比較的大きめのものでもフィルム上での直径が0.05~0.1mmといったところです。

 今回使用したRPX25は10本まとめて購入したもので、念のため確認してみましたがエマルジョン番号はすべて同じでした。

 いろいろ調べたり、購入から現像までの経緯を疑ってみたりしてみましたが、今のところ原因はまったくわかりません。上でも書いたように、ネガ上で白くなるということは光が十分に当たっていないということなので、何か光を遮る原因があったのではないかというのがいちばん理にかなっているように思えます。カビのように物理的に何かが付着して光を遮ったのかとか、あるいはフィルムの平面性が保てずに光が拡散してしまったのかとか、あれこれ思いめぐらしてはみてもどれも決定打にはなりえない感じです。

 購入した10本のRPX25のうち、今回のフィルムが6本目なので未使用フィルムがあと4本あります。残りの4本の中にも白い斑点が出現するのか、あるいはRPX25以外のフィルムでも発生することがあるのか、原因がわからないというのは精神衛生上、とてもよろしくない状態です。
 フィルム価格が高騰している昨今、120フィルム1本を駄目にしてしまったというのは少なからずダメージがありますが、大判フィルムで気合を入れて撮ったものでなかったというのがせめてもの救いです。今回は気軽に出かけられる都内だったのも幸いしましたが、これが遠方で何日もかけて撮影してきたものだったりすると目も当てられません。

 しかし、原因不明のこんなことがあると、モノクロフィルムを使うのをためらってしまいます。原因がわかれば対処のし様もありますが、今のところは起きないように神頼みしかないといった情けない状況です。原因がはっきりするまでモノクロの大判フィルムの使用は控えようかと思いますが、いろいろ試してみないと原因はつかめないままですし...
 同様の事例がないか、もう少し時間をかけて調べてみようと思いますので、何かわかればあらためてご報告したいと思います。

(2023年8月16日)

#Rollei_RPX25

ローライ Rollei RPX100 モノクロフィルムの使用感 ACROSⅡの代替フィルム探し

 6月に富士フイルムの製品が大幅に値上げされ、私も愛用していたACROSⅡも信じられないくらいの価格になりました。新宿の大手カメラ量販店では、ブローニー(120)サイズのフィルムが1本2,310円で販売されています(2023年7月18日現在)。フィルム等を専門に扱っている通販サイトではそれよりもだいぶ安い価格で販売されていますが、それでも1本1,500円以上です。
 私の場合、ACROSⅡはイルフォードのDELTA100に次いで使用量が多いので、今回の大幅な値上げによるダメージはとても大きいです。そこで、もっと安い価格でACROSⅡの代替となるフィルムがないかということで探し始めました。ACROSⅡと同じような写りのフィルムはたぶんないだろうと思われますが、手始めにローライのRPX100を使って撮影をしてみました。

 誤解のないように追記しますが、ACROSⅡに対する絶対神話を持っているわけではありません。使い慣れてきたフィルムと同じような特性を持ったフィルムがあればということで、可能性のありそうなものを探してみたいというレベルです。

中庸感度ISO100のパンクロマチックモノクロフィルム

 RPX100フィルムに関していろいろなサイトを見てみると、概ね共通して書かれているのが、超微粒子とか素晴らしいシャープネス、あるいはなだらかな階調といった内容で、モノクロフィルムとしては優等生的な印象を受けます。実際にRPX100で撮影した作例を見ると、確かに黒の締まりもよさそうで、豊かな階調が表現されているという感じがします。
 また、フィルム感度はISO100ですから、いちばん使い易い感度であると言えますし、現像に関するデータを見てもEIは1000まで対応できるようなので、応用範囲の広いフィルムと言えると思います。

 私はローライのRPXシリーズというと黒いパッケージが思い浮かぶのですが、今回2本だけ購入した際のパッケージは白をベースに黄緑色を用いたデザインの箱でした。詳しくは知らないのですが、パッケージデザインが新しくなったのかも知れません。
 ちなみに、私が購入した時(2023年6月下旬)は通販サイトで1本1,280円(税込)でしたが、10本セットで購入すれば1本あたり1,199円(税込)ですので、割安感はあります。

 ローライのフィルムを製造しているのはイルフォード製品を製造している会社と同じハーマンテクノロジー社ですし、富士フイルムがOEMのような形でACROSⅡの製造を委託しているケントメアもハーマンテクノロジーに買収されているので、もしかしたらACROSⅡに似た写りになるかも知れないというかすかな期待が頭をよぎりましたが、ACROSⅡのレシピは富士フイルムがしっかり握っているでしょうから、製造会社が同じとはいえ、別物と思うべきでしょう。

イルフォード ILFORD のID-11で現像

 現像液は使う頻度が最も高いイルフォードのID-11を使用しました。使用する現像液で仕上がりはずいぶん変わってきますが、いろいろな現像液で試してみるよりは、使い慣れた現像液でACROSⅡと比較したほうが手っ取り早いだろうということで、まずはID-11で確認をしてみることにします。
 ID-11を使ってRPX100をEI100で現像する場合、現像時間は以下のように推奨されています。

  ・stock : 9分 (20℃)
  ・1+1 : 12分 (20℃)
  ・1+3 : 20分 (20℃)

 今回はstockで9分としました。

 このところの猛暑で室内温度もかなり上がっていて、液温を20℃に保つには冷やし続けなければなりません。深めのバットに氷水を入れて、この水温が18℃くらいになるように調整しながら現像液の温度管理を行ないます。大きめの氷をバットに入れてもあっという間に溶けてしまい、そのままにしておくと液温がどんどん上昇してしまいます。冬場、気温が低いときに温める方がはるかに楽です。

 イルフォードのID-11は何箱か買い置きしてあるのですが、これもご多分にもれず値上がりしていて、私が最後に購入した時に比べ、現在は1.5倍以上の価格になっています。
 同じくイルフォードからPERCEPTOLという現像液が販売されていて、こちらの方が1割ほど安く購入できるのですが、PERCEPTOLは低感度用ということになっています。ISO100フィルムであれば特に問題はないと思いますが、買い置きのID-11がなくなったらPERCEPTOLに変更するかもしれません。

風景撮影の作例

 さて、今回購入したRPX100を2本使って撮影をしてみましたので、何枚かご紹介します。今回の撮影に使用したカメラは、中判のPENTAX67Ⅱと大判のWISTA 45SPです。WISTA 45SPにはロールフィルムホルダーを装着しての撮影です。

 まずは、私が撮影対象としている被写体としていちばん多い自然風景の作例です。
 1枚目は山梨県で撮影した渓流の写真です。

▲WISTA 45SP APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 3s

 大きな岩の間を縫うように流れる渓流を撮影してみました。
 水の流れよりも岩の比率を多くして、岩の表情が良くわかるようにとの意図で露出を決めています。明るくなりすぎると岩の重厚感が薄れてしまうので、露出は若干抑え気味にしています。
 右下手前の岩までの距離は3mほどで、この岩から右上奥の木々までピントを合わせるため、カメラのフロント部でティルトアオリをかけています。
 どんよりとした曇り空のため、露光時間は長めになってしまいますが、流れの軌跡が残るギリギリのシャッター速度にしています。

 写真の印象としては、黒がとても綺麗に出ているという感じです。キリッと締まった黒というよりは、やわらかくて厚みのある黒と言ったら良いのかも知れません。そのため、平面的になり過ぎず、立体感のある画になっています。岩の表面の感じや奥行き感が良く出ていると思います。
 また、黒から白へのグラデーションや中間調も綺麗に出ているのではないかと思います。中間調が出過ぎるとインパクトの弱い写真になりがちですが、全体的に黒の比率が多いせいか、それほど気になりません。

 2枚目の写真は同じく山梨県で偶然見つけた滝です。

▲WISTA 45SP FUJINON CW105mm 1:5.6 F32 4s

 周囲はうっそうとした木々に囲まれていて、かなり薄暗い状態です。晴れていれば滝つぼに光が差し込むかもしれませんが、滝を撮るにはこのような曇天の方が向いていると思います。
 滝が流れ落ちている崖や滝つぼに転がっている岩、滝の両側の木々などのほとんどが黒く落ち込んでいて、滝とのコントラストがとても高くなっています。とはいえ、木々の葉っぱや岩の表面の凹凸など、ディテールにおける中間調はしっかりと表現されており、ベタッとした感じにならず、強いシャドー部の中にも柔らかさが感じられます。

 掲載写真ではわかりにくいと思いますが、滝の向かって左側のごつごつとした岩や、滝上部の木々の葉っぱなど、細部にわたってしっかりと認識できるだけの解像度もあると思います。
 また、流れ落ちる水のところのグラデーションもとてもなだらかで、ふわっとしたボリュームを感じる描写になっています。

街角スナップ撮影の作例

 次の作例はスナップ写真です。
 まず1枚目は路地裏のようなところで見つけた猫の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 105mm 1:2.4 F5.6 1/60

 毛並も綺麗だし、人相も悪くなく、目つきも優しげなので飼い猫だろうと思いますが、しっかりとこちらを警戒した顔つきになっています。
 猫の背後にある自転車は放置されたもののようで、強制撤去の紙が貼られています。
 あまり近づくと逃げられてしまうだろうと思い、猫が逃げ出す体制に入る前のほどほどの距離で撮影しました。

 この写真は黒や白の比率が少なく、全体的に中間調で占められていますが、締まりのある描写という印象です。同じ場所をACROSⅡで撮影していないので比較はできませんが、ACROSⅡはもう少し軟調な感じになると思われます。
 また、地面のコンクリートの質感や、自転車の背後にある鉄板で作られたと思われる箱のようなものの表面の凹凸なども良くわかるくらいの描写力は立派だと思います。
 建物の陰で直接の日差しが入り込んでいませんが、平面的にならず奥行き感があります。

 ちなみに、PENTAX67Ⅱのシャッターを切った瞬間、その音に驚いて猫はどこへやら行ってしまいました。

 スナップ写真の2枚目は、御茶ノ水駅の近くにある湯島聖堂で撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 55mm 1:4 F5.6 1/125

 湯島聖堂への入り口である入徳門の外から、大成殿とそこに上る石段を撮りました。
 門自体が黒く塗られていて光も当たっていないのに対して、門の内側は明るく、非常にコントラストの高い状態です。門の内側だけ見れば完全に露出オーバーです。
 散歩にでもいらしたのか、ご夫婦と思われる年配のお二人連れがいいポジションに立ち止まられたので撮らせていただきました。

 写真の上部と左右はかなり暗く落ち込んでいますが、つぶれることなく微妙な明暗差が写っています。やはり、この暗部の黒の出方は独特な感じです。硬くなりすぎず、やわらかさが感じられます。
 また、石段やその両側の木々は白く飛んでしまっていますが、大成殿の壁などは中間調で綺麗に表現されています。さすがに石畳のハイライト部分の中間調描写には無理がある感じですが、これくらいであれば石の質感は何とか読み取れます。

夜景撮影の作例

 長時間露光による夜景撮影がどんな感じに仕上がるかということで、隅田川の夜景を撮ってみました。
 まずは、アサヒビール本社ビル屋上のオブジェと吾妻橋を撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 105mm 1:2.4 F22 30s

 いちばん目を引くビル屋上のオブジェですが、下側からライトアップされているので上側に行くにつれて暗くなっています。このグラデーションがとても綺麗に描写されていると思います。照明が直接当たっている正面の部分は飽和してしまっていますが、滑らかな曲線で作られている立体感が良くわかります。
 一方、照明が落ちたビルの壁面や首都高の高架下などはこってりとした黒で描写されていますが、高い解像度によるものなのか、ディテールが残っていてベタッとした感じはありません。
 また、右側の高層マンションや首都高の高架壁など、暗い中にも中間調がしっかりと出ているのがわかります。

 さてもう一枚は同じく隅田川にかかる厩橋の夜景を撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 75mm 1:4.5 F22 30s

 空も真っ暗、橋の下も真っ暗といった状態で、一見するととてもハイコントラストな写真に感じます。確かに橋のアーチ部分の輝度が高いので明暗差がはっきりと分かれている写真ですが、アーチを支えている支柱の辺りを見るととても綺麗な中間調が出ています。白と黒だけで塗り分けられたのとは全く違う、鉄骨とは思えない柔らかさを感じます。
 黒の描写も「真っ黒」ではなく、わずかに光を含んだ黒という感じがします。うまく表現できないのですが、真っ黒に塗られた壁ではなく、真っ黒な煙幕とでも言えば良いのでしょうか。ハイライト部分もぎらついた感じではなく、やはり柔らかさを感じる描写です。

 風はほとんどなく水面も穏やかでしたが、長時間露光なので波による複雑な模様として写り込みます。この波頭一つひとつがわかるのではないかと思えるくらいの解像度ではないかと思います。

ACROSⅡに似ているところもあるが、ACROSⅡとは別物のフィルム

 今回、2本のRPX100で撮影してみていちばんの印象は黒の出方に特徴があるということです。
 前の方で何度も書きましたが、カチッとした真っ黒ではなく、わずかに光を含んだ黒であって、それが視覚的にどことなく柔らかさを感じさせてくれるのではないかと思います。これは裏返せば黒の締まりが弱いと言えるのかも知れませんが、それは好みにもよると思います。私はイルフォードのDELTA100のような締まりのある黒の出方が好きで多用していますが、それに比べると若干軟調気味に感じられるRPX100の描写ですが、これはこれでとても美しいと思いました。

 RPX100の特性がDELTA100とACROSⅡのどちらに似ているかというと、若干、ACROSⅡに近いと思います。ですが、明らかにACROSⅡとも異なる描写をするフィルムだと思います。解像度も申し分ない、階調も豊かでなだらかですが、ACROSⅡとは明らかに違う感じがします。何が違うのかと問われてもうまく答えられないのですが、パッと見た時にACROSⅡの方がすっきりとした描写に感じられる気がします。ACROSⅡに比べるとRPX100の方がこってりとしている感じです。理由はよくわかりませんが、やはり黒の出方が影響しているのではないかと思います。
 といっても、RPX100の描写が野暮ったいということではありません。むしろ、かなりレベルの高い描写性能を持ったフィルムではないかと思います。

 RPX100が硬調か軟調かと言われると、どちらかというと軟調寄りのフィルムではないかと思いますが、ACROSⅡの持っている描写特性とは違う軟調系という感じです。厳密に比較したわけではないのではっきりとは言えませんが、RPX100に比べてACROSⅡの方が、中間調の範囲が広いように思います。強いて個人的な見解をこじつければ、DELTA100とACROSⅡの中間的存在といった感じでしょうか。

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 RPX100がACROSⅡの代替フィルムになるかというと、無条件にそういうわけにはいかないと思いますが、比較的近い特性を持っているようにも感じます。
 もちろん、撮影対象とする被写体によっても描写特性は違って見えるので、安易に結論を出すつもりはありませんが、RPX100のポテンシャルは十分に高いという印象を持ちました。また、現像液や現像条件を変えれば見た目も変わってくるであろうことは想像に難くありません。
 そして何よりもフィルムの描写特性は好みのよるところが大きいので、一概に良し悪しをつけることも出来ません。

 ACROSⅡと同じような特性を持ったフィルムが存在しないことがACROSⅡのアイデンティティかも知れませんが、そう考えると富士フイルムの存在意義はやはり大きいと言わざるを得ません。
 ACROSⅡの代わりに別のフィルムを使うか、その結論が出るのはもう少し先になりそうです。ただし、RPX100のポテンシャルの高さは十分に認識しましたし、今後も使ってみたいフィルムであると実感したのも事実です。

(2023.7.20)

#RPX100 #ACROS #PENTAX67 #WISTA45 #ウイスタ45

撮影済みフィルムのデータ化と保存について思うこと  ~フィルムの保存は永遠の課題~

 「フィルムは生もの」という表現を聞くことがありますが、これはどちらかというと使用前のフィルムのことを指していることが多いと思われます。フィルムには使用期限が決められており、それを過ぎるとどんどん劣化していってしまうという意味で「生もの」という表現をしているのだろうと思います。確かに、使用期限を大幅に過ぎてしまうと感度の低下や発色不良などが生じてしまうことがあります。
 同様に、撮影済み、現像済みのフィルム(ポジやネガ)も経年劣化は避けられません。特に東京のように高温多湿の時期が長い地域では劣化が進む度合いが速いと思います。

 冷暗所など、保管場所に気をつけることで劣化の速度を遅らせることはできても、劣化をとめることはできません。冷凍保存でもすれば良いのかもしれませんが、何百年も未来の人類に残すための写真であるならともかく、自分が撮影したフィルムを冷凍保存しようものなら、自分が生きている間に二度とその写真を見ることはかなわず、非現実的であるのは言うまでもありません。永久凍土に閉じ込められたマンモスのようにしても意味があるとも思えません。

 これといった画期的な手立てがなかなか思いつかないフィルムの保存ですが、有効な保存方法の選択肢の一つとして写真のデータ化があります。完ぺきな方法とはいえませんし、物理的なポジやネガのフィルムと同じような状態で保存できるわけではありませんが、私も大事な写真はデータ化をして保存しています。

 フィルムのデータ化そのものは比較的単純な作業であり、自分で行なう場合はパソコンとスキャナがあればとりあえず可能になります。しかし、民生用の機器では時間もかかるし、フィルムの枚数が多いと大変な作業量になります。
 私がこれまでに撮影したフィルム写真のうち、現在も保管されているのは20数万コマあります。フィルムの種類は35mm判、ブローニー判、大判などいろいろですが、これらをすべてデータ化しようとしたら、私の余生のすべてを注ぎ込んでも時間が足りないと思われます。
 今はフィルムからデータ化してくれるサービスもたくさんありますから、そういったところにお願いする手もありますが、全部やろうとしたら半端ない費用がかかります。

 近年、フィルム価格が高騰しているとはいえ、今もフィルムを使っているので撮影済みのフィルムは増え続てけいるわけです。過去のものも含めてすべてをデータ化しようなどとはまったく思っていません。自分にとって大切で、残しておきたいと思うコマに限って少しずつスキャンしているという状況です。

 私がデータ化に使っているスキャナはエプソンのGT-X970というフラットベッド型のスキャナです。購入してから15~6年は経過しており、製品自体はかなり古いのですが、35mm判から大判(8×10)シートフィルムまで対応できるスキャナとなると選択肢が他にありません。現行機種は後継機のGT-X980ですが、私のGT-X970はまだ問題なく動いているので使い続けています。

 私はこのスキャナを使って、読取り解像度6,400dpiでスキャンしています(6,400dpiはこのスキャナの主走査方向の最高解像度です)。
 6,400dpiなどという高解像度でスキャンしてもそのままの解像度で使うことはないのですが、6,400dpiというとピッチが約3.97μmで、これはリバーサルフィルムの乳剤粒子の大きさにほぼ近い値です。値が近いからと言ってフィルムと同じようになるわけではありませんが、保存用なので出来るだけフィルムの状態に近づけておきたいという思いです。実際にプリントしたりするときには、品質を損なわないところまで解像度を落として使用するのは言うまでもありません。

 6,400dpiでフィルムをスキャンした場合の画像の画素数は以下のようになります。計算上の値であり、実際には若干前後します。

  ・35mm判 : 6,047 x 9,070 (約5,480万画素)
  ・67判   : 14,110 x 17,386 (約2億4,530万画素)
  ・4×5判  : 25,700 x 32,000 (約8億2,240万画素)

 ちなみに、GT-X970の副走査方向は9,600dpiと12,800dpiも対応していますが、実際にその解像度でスキャンしても画質が良くなるわけではなく、むしろ悪くなる感じなので、私は使用していません。
 また、スキャナ用のソフトウェアにはエプソン自慢のDigital ICEやホコリ除去、退色復元などの機能がついていますが、フィルムに忠実なデータを残すということから、私はこれらの機能も一切使用していません。

 このようにスキャンして得られたデータを保存するわけですが、私は2種類のデータを用意しています。
 まず一つ目のデータはスキャンしたままのデータ、つまり、一切加工を加えていない状態のデータです。厳密にいえばスキャナのドライバやソフトウェアによって何某かの加工が加えられているわけですが、さすがにどのようなアルゴリズムで機能しているかまでは知ることはできないので、出来るだけ加工の少ない状態で読み取ったデータを素の状態とせざるを得ません。
 また、細かなゴミやホコリが着いていたりしますが、それも含めて読み取ったままの状態としておきます。これをオリジナルデータとしています。

 二つ目のデータですが、こちらはゴミの除去と色調の調整を行ないます。
 レタッチソフトを使ってオリジナルデータからゴミなどを除去していきます。ゴミ以外のところは極力いじらないようにするため、とにかく手間のかかる作業です。ゴミの付着度合いにもよりますが、67判のフィルムの場合、1コマあたり20~30分はかかります。青空のようなフラット状態のところに着いたゴミは比較的簡単に除去できますが、花とか木の枝葉など、ゴチャゴチャしているところに着いたゴミを取り除くのは手間がかかります。

 ごみを取り除いた後にポジ原版に限って行なうのが色調の調整で、ライトボックスで見たポジ原版とスキャンしたデータの色調を出来るだけ合わせるというのが目的です。
 スキャンデータはスキャナのハードウェアやソフトウェアによって色が作り出されているわけで、ライトボックス上のポジ原版と同じ色調になるはずもないのですが、出来るだけフィルムに近づけておきたいという理由です。そのため、パソコンのモニタもキャリブレーションしたものを使い、モニタによる色の影響を出来るだけ受けないようにします。
 エプソンGT-X970の場合、それほどポジ原版から偏った色調になることはないというのが私の印象ですが、若干、マゼンタが強く出る傾向があると感じています。ただし、これは私が使っている機器だけ、つまり個体差によるものかも知れません。

 なぜ、何の加工も施さないオリジナルデータと、そこに若干の加工を加えたデュプリケートデータの2種類を用意するかというと、ポジ原版が経年劣化で退色していった場合、元の色がわからなくなってしまうのを防ぐためです。全く同じ色をデータで残すことは無理ですが、少しでも撮影直後の色を残しておきたいということです。

 スキャンしたデータは48bitのTIFF形式で保存します。データサイズは大きくなりますが、圧縮などによる劣化が起きないようにするためにTIFF形式を用いています。

 さて、こうしてできた保存用のデータですが、最も頭の痛いのがその保存方法です。
 画素数も大きく、データ形式もTIFFのため、データサーズがバカになりません。1コマあたりのおおよそのデータサイズを計算すると以下のようになります。

  ・35mm判 : 約320MB
  ・67判   : 約1.4GB
  ・4×5判  : 約4.6GB

 データ保管してくれるサービスもありますが、このようにバカでかいデータをポンポンとアップロードしようものならあっという間に容量の上限を超えてしまい、課金対象の超優良顧客になってしまいます。
 ということで、私はハードディスクを用意して、そこに保存しています。

 一過性のデータを保存するのであればあまり神経質になることもありませんが、あくまでも保存用ということですので、ある程度の信頼性も必要という判断から、RAID-5構成のハードディスクを使用しています。4台のディスクドライブで構成されており、4台あっても1台分はパリティ用として使われてしまうので実効容量は3/4に減ってしまいますが、障害に対する信頼性が高いのと、ドライブ故障時のリカバリ(交換)が簡単にできるというメリットがあります。
 現在、私が使用しているハードディスクの実効容量は9TB(RAID-5)です。このハードディスクに、上で書いたような方法で作成した画像データを保存する場合、67判だと約3,290コマ分、4×5判だと約1,001コマ分の保存ができます。かなりの枚数が保存できるように感じますが、今あるフィルム全体の数パーセントにも満たない量です。

 すべてのコマをデータ化して保存するつもりはないとはいえ、保存するデータは徐々に増えていくので、ハードディスクに入りきらなくなったら新たにハードディスクを追加するしかありません。しかし、いくら小型化しているとはいえ、そこそこの場所をとります。今は1台だけなので何とかなっていますが、これが2台、3台と増えていったら大変なことになります。それこそデータセンターとかホスティングを検討しなければならない状態になってしまいますが、そこまでして保存しようという気にはなりません。用意できる設備に保存可能な範囲の中で運用していくというのが現実的だと思っています。

 そして、最大の悩みが保存媒体(ハードディスク)の劣化対応です。
 データ自体は経年劣化しませんが、それを入れておく記憶媒体は機械ものなので、やはり経年劣化していきます。一般的にハードディスクの場合、3~5年が寿命と言われています。もちろん使用頻度によって寿命も大きく変わるので、業務用で使っているのでなければもう少し長くもつとは思いますが、いずれにしても交換しなければならない時期が定期的にやってくるということです。
 また、仮にクラッシュしてもバックアップがあれば何とかリカバリが可能ですが、もし、それもなければ救済不可能ということにもなりかねません。
 私もこれまでに、使用していたハードディスクがクラッシュしたという経験は何度もありますが、壊れてしまうとリカバリがとにかく大変です。壊れる前に新しい機器に交換しておくのが望ましいのでしょうが、交換するとなると出費もかさむことだし、まだ変な音がしていないからしばらくは大丈夫だろうなどと、何の根拠もない理由をこじつけて先延ばししてきたことも数えきれません。

 RAID-5構成の場合、このような最悪の事態のいくつかは軽減してくれますが、その製品自体が販売終了などということになると、いずれは総入れ替えが必要になってきます。そうなると、新しい代替の機器を購入してきても膨大な量のデータ移行という作業が待っていて、これも結構時間がかかります。
 データによる保存というのは便利で効果的にも思えますが、確実に保存していくための運用を考えるととても大変で、キリがないということです。
 例えば、フィルムは火事などで燃えてしまえば何も残りませんが、データは複数個所に分散保存しておけば完全消失は防げます。しかし、保存場所が1ヵ所しかなければデータと言えどもすべて消失してしまうことに変わりはありません。

 こうして、あらためて撮影済みのフィルムの保存について考えてみると、データ化というのは効果的な面もありますが、より確実性の高いものを求めると、時間とお金がいくらあっても足りないという気がしてきます。むしろ、フィルム自体の経年劣化を出来るだけ遅らせるところに時間とお金をかけた方が良いのではないかと思えてきたりもします。
 フィルムの経年劣化は防げないとはいえ、私のささやかな経験からすると、ポジ原版(リバーサルフィルム)は経年劣化に対する耐性が優れていると思っています。常温保管の場合、カラーネガだと6~7年で黄変やビネガーシンドロームが出始めますが、ポジ原版は30年近く経っても健在です。もちろん、劣化は進んでいるのでしょうが、目視で明確にわかるほどひどくはなりません。そして、モノクロネガははるかに耐性があります。
 であるならば、撮影済みのフィルム保管用に冷蔵庫を調達したほうが良いのでないかと思ってしまいます。

 私は、撮影済みのフィルムについては光が入らないキャビネットの中で保管していますが、特に温度管理をしているわけではなく常温保管です。それでも20年、30年経過してもまずまずの状態を維持しているわけですから、冷蔵保管すればもっと良い状態を保つことができるのではないかと思います。冷凍保存と違い、冷蔵保存であれば出し入れもし易いので、いつでも使うことができますし、冷蔵庫はハードディスクに比べて何倍も寿命が長いのもメリットに思えます。また、冷蔵庫が壊れても中のフィルムがなくなるわけではないというのが素晴らしいです(当たり前ですが)。
 ただし、全てのフィルムを冷蔵保管するとなると容量600L並みの大型冷蔵庫が必要となり、置き場所など考えるとそれはそれで頭の痛い問題です。

 自分にとって大切な写真、残しておきたい写真のデータ化は今後も地道にやろうと思いますが、完璧を求めすぎず、ほどほどにしておくのが良いと感じています。
 私の場合、何といっても撮っている写真がアナログなわけですから、保存もアナログが適しているのかも知れません。

(2023年7月9日)

#リバーサルフィルム #スキャナ #エプソン #EPSON #保管

カラーリバーサルフィルムを使った撮影時のカラーバランスの崩れ

 フィルムカメラで特にカラーリバーサルフィルムを使って撮影をしていると、光の状態や撮影の条件などでカラーバランスが崩れてしまうことがあります。デジタルカメラのようにホワイトバランスの調整機能があれば便利なのですが、そういうわけにもいかないので、カラーバランスを崩したくないときは補正をかけるなどの対策が必要になります。もちろん、敢えてカラーバランスが崩れたままにしておくこともありますが、補正をするにしてもしないにしても、現像が完了するまでは崩れ具合を確認することはできません。
 カラーバランスの崩れ方はフィルムによって違いがありますが、代表的なカラーバランスの崩れについて触れてみたいと思います。

長時間露光によるカラーバランスの崩れ

 フィルムというのは光が当たることで、表面に塗られている乳剤(感光材料)の中のハロゲン化銀が化学反応を起こすことで像(潜像)がつくられるわけですが、このとき、フィルムにあたる光の量とハロゲン化銀が起こす化学反応の度合いの間には「相反則」という関係があります。簡単に言うと、フィルムにあたる光の量が2倍になれば化学反応の度合いも2倍になるということです。
 カメラの場合、フィルムにあたる光の量というのは絞りとシャッター速度、つまり光が当たる時間によって決まりますが、この時間が極端に短いとか、逆に極端に長い場合はこの相反則が成り立たなくなってしまいます。この現象を「相反則不軌」と言い、これが発生するとカラーバランスが崩れてしまいます。

 相反則不軌が生じる短い時間、および長い時間というのがどれくらいの時間なのか、富士フイルムから公開されているデータシートを見ると以下のように記載されています。

  PROVIA 100F : 1/4000~128秒  補正不要
  Velvia 100F  : 1/4000~1分  補正不要
  Velvia 50  : 1/4000~1秒  補正不要

 また、上記の時間を超える長時間露光の場合は色温度補正フィルター等による補正の方法も記載されていますが、上記の時間よりも短い場合の補正方法に関しては記載されていません。一般的なフィルム一眼レフカメラの最高速シャッター程度では補正するほど顕著には生じないということかもしれません。

 これを見ると、PROVIA 100FやVelvia 100Fでは一般的な撮影条件の範囲において、相反則不軌が起きることはほとんどないと思われますが、Velvia 50の場合は数秒の露光時間でも発生してしまうことになります。
 私が主に使っているフィルムはPROVIA 100FとVelvia 100Fですが、確かに長時間露光をしても相反則不軌が生じたことはほとんどありません。星の撮影などをする場合は補正が必要になると思いますが、私のように一般的な風景撮影の場合は補正不要の範囲内におさまってしまいます。
 一方、ごくまれにVelvia 50を使うことがありますが、こちらは数秒の露光でもカラーバランスが崩れてしまい、数十秒の長時間露光をすると顕著に表れてきます。

 実際にVelvia 50で長時間露光撮影した例がこちらです。

▲PENTAX 67Ⅱ SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5 F22 64s Velvia50

 埼玉県にある三十槌の氷柱で撮影したものですが、早朝のため太陽光が山で遮られており、辺りは日陰になった状態です。露光時間は64秒です。
 カラーバランスが大きく崩れて、全体的にかなり青みがかっているのがわかると思います。氷柱や石の上に積もった雪の影の部分なども青くなっていますし、河原の石も黒というよりは群青色といった感じで、相反則不軌がしっかり生じています。
 このような色合いの方が冷たさや寒さが感じられるという見方もあろうかと思いますが、実際に肉眼で見た印象とはかなり異なっています。
 相反則不軌によって色合いが青になるのは、長時間露光すると赤感光層の感度が大きく低下することが理由のようです。

 富士フイルムのデータシートによると、このカラーバランスの崩れを補正するために下記のようなフィルターの使用を推奨しています。

  PROVIA 100F : 2.5G
  Velvia 100F  : 2.5B
  Velvia 50  : 5M~12.5M

 なお、長時間露光による相反則不軌は全体的に露出が不足しているわけではないので、露光時間を長くしても改善はしません。むしろ増長してしまいます。光の強い箇所(ハイライト部分)は相反則不軌はほとんど起きませんが、光の弱い箇所(シャドー部分)は相反則不軌の度合いが高いため、露光時間を長くするほどコントラストが高まっていきます。

タングステン電球や水銀ランプ等の照明によるカラーバランスの崩れ

 現在、一般に市販されているカラーリバーサルフィルムはすべてデーライト(昼光)用フィルムです。これは昼間の太陽光のもとで撮影するとバランスのとれた綺麗な発色がされるというもので、色温度がおよそ5,500Kで正しい発色をするように作られているようです。
 かつては3,200Kあたりで正しい発色をするタングステンタイプと呼ばれるフィルムも販売されていましたが、ずいぶん昔に廃盤になってしまいました。

 光の色温度が異なれば、その違いは人間の眼でもある程度はわかりますが、フィルムはこれをとても敏感に感じ取ってしまいます。タングステン電球や水銀ランプ、あるいは蛍光灯などの人工照明のもとでデーライトフィルムを使って撮影すると、それらの光の特性の影響をもろに受けます。
 例えば、タングステン電球のもとではオレンジっぽい色に、水銀ランプのもとでは緑っぽい色の写真になります。縁日などの夜景を撮ると全体に赤っぽく写ってしまうのは典型的な例です。

 下の写真は京王線の若葉台車両基地の夜景を撮影したものです(別のページで掲載したものを使用しています)。

▲PENTAX 67Ⅱ SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5 F4.5 4s PROVIA100F

 鉄道の施設で使用する照明については細かな決まりがあるらしく、詳しくは知りませんが車両基地やヤードなどでは主に水銀灯が用いられています。車両の入れ替えを安全に行なうため、作業される方が構内の施設物や車両などを確実に認識できるようにということで採用されているようです。
 この水銀灯の光は人間の眼には若干青みがかった白に見えますが、色温度が太陽光よりも低く(だいたい4,500K~5,000Kらしい)、赤色の成分が低いため、デーライトフィルムで撮ると青緑というような色に写ります。肉眼で見たのとは全く違います。
 しかし、これはこれで夜の雰囲気が出ているし、幻想的というのとはちょっと違いますがSFの世界を見ているような、秘密基地を見ているような感じがします。

 人工照明下で撮影した場合、単なる色温度の違いだけでなく色の成分の度合いも違うため、使用されている照明によって全く異なる発色をします。現像するまで発色の状態がわからないという不便さはありますが、予想外の色合いのポジが仕上がってきたときは新たな発見です。

晴天時の日陰におけるカラーバランスの崩れ

 晴天の日中、太陽光が潤沢に降り注いでいるときがデーライトフィルムにとって最も綺麗に発色するというのは上にも書いた通りですが、晴天の日中でも日陰に入ると状況はまったく異なります。
 晴天時の日陰は太陽からの直接の光が遮られるため、上空で乱反射した波長の短い光、すなわち青い成分の光の度合いが高く、それによって青っぽく写るらしいですが、難しい理由はともかく、晴天時の日陰は見た目以上に青く写ります。
 晴天時の日陰の色温度はおよそ7,000~7,500Kらしいので、直接の太陽光と比べるとかなり高い値です。

 晴天時に日陰で撮影するということは少なからずありますが、部分的に日陰になっている程度であればほとんど影響はありません。ただし、撮影している周辺一帯が日陰になっているような場合は影響が大きく、写真は青被りを起こしてしまいます。

 青被りがはっきりと出ている例が下の写真です(別のページで掲載したものを使用しています)。

▲PENTAX 67Ⅱ smc PENTAX67 55mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 東京都の御岳渓谷で撮影したものですが、太陽の光が正面の山に遮られており、この一帯は日陰になっている状態です。そして、上空は雲一つない青空です。
 このようなシチュエーションのときが最もカラーバランスが崩れやすく、まるでレンズに青いフィルターでも着けたかのようです。

 同じ青被りでも、長時間露光による相反則不軌が発生した時とは根本的に異なっています。相反則不軌の場合は赤の感光度合いが著しく低下することで青が強く出てしまうような状態になるわけですが、こちらは露光不足ではなく、全体に青い方にシフトしているという感じです。ですので、相反則不軌のようにコントラストが高まるということはありません。

 このようなカラーバランスの崩れは、色温度補正(変換)フィルターを使うことで補正することができます。一般的にはW2とかW4というフィルターをつけることで色温度を下げ、正常なカラーバランスにすることができます。
 色温度補正フィルターは、変換することのできる色温度によって名称がつけられていて、例えば、W2フィルターの場合は20ミレッド、W4フィルターの場合は40ミレッドの変換ができることを示しています。
 色温度変換の詳細についてはここでは触れませんが、ごく簡単にいうと、オリジナルの光源の色温度(K₁)と、フィルターを通った光の色温度(K₂)の関係を表したもので、次のような式になります。

  変換ミレッド = 1/K₂ * 10⁶ - 1/K₁ * 10⁶

 上の式にあてはめると、例えば色温度5,000Kのオリジナル光源が、W2フィルターを通ることで約4,545Kに色温度が下がることになります。

朝夕の撮影時におけるカラーバランスの崩れ

 日の出や日の入りの時間帯の光というのは見た目にも赤っぽいとわかるので、このような光の状態で撮影をすれば赤っぽく写るのはごく当たり前というか、とてもわかり易いと思います。
 しかし、この朝方や夕方の赤っぽく写る現象は人間の眼が感じているよりも長い時間続いていて、日中の光とほとんど変わらないと思っても、実際に撮影してみると赤っぽく色被りをしていたなんていうことはよくあります。
 赤っぽいからこそ朝方や夕方の感じが出るのであって、私の場合、敢えてこれを補正することはあまりありません。むしろ、風景写真などの場合、赤みを強くしたいということの方が多いのですが、時には、被写体や撮影意図によっては赤みを取り除きたいという場合もあります。

 下の写真は小海線の小淵沢大カーブと呼ばれるところで撮影したものです。

▲PENTAX 67Ⅱ SMC PENTAX 200mm 1:4 F16 1/125 PROVIA100F

 全体に赤っぽく色被りをしたようになっています。
 撮影したのは朝です。太陽はだいぶ高い位置まで登っており、肉眼では日中の光とほとんど同じに感じたのですが、実際に撮影してみるとかなり赤みがかってしまいました。

 この程度の赤みを補正するのであれば色温度補正フィルターのC2くらいをつければ、日中の光で撮影したと同じようなカラーバランスになります。補正せずそのままにしておくか、補正して正常なカラーバランスにするかは好みや撮影意図に合わせて選択ということになります。

 ちなみにC2とかC4フィルターはW2やW4フィルターとは逆に、色温度を高い方に変換します。変換の度合いはC2で20ミレッド、C4で40ミレッドです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 富士フイルムが異常とも思える値上げを発表したり、MARIXマリックスから新たにリバーサルフィルム(中身はエクタクロームとのことですが)が発売されたりと、日ごろ、リバーサルフィルムを使っている私にとっては心穏やかならぬ6月でした。
 リバーサルをやめなければならない日もそう遠くないのでは、という思いもありながら、買い置きしてあるフィルムであと1年半くらいは持ちこたえられそうなので、あまり外乱に惑わされないようにしようと思ってはいます。しかし、イマイチ、気持ちが晴ればれとしないのも事実です。
 それでも、虎の子のようなフィルムを持っていそいそと撮影に出かけると、この先もフィルムの価格がどんどん上昇して、いずれ購入することができなくなるかも知れないという沈鬱な気持ちもどこへやら吹っ飛んでしまいます。

 光の状態や撮影条件によってカラーバランスが大きく変わるリバーサルフィルムですが、非現実的な発色に出会えたりするのもリバーサルフィルムならではかも知れません。

(2023年6月30日)

#リバーサルフィルム #色温度補正フィルター #カラーバランス #相反則不軌 #Velvia #PROVIA

なぜフィルム写真に心がときめくのか? 不思議な魅力を持ったフィルムという存在

 写真フィルムの出荷量がピークだったと言われている西暦2000年から23年が経過し、その量は1/100にまで減少したというデータもあるようですが正確なところは良くわかりません。しかし、減少していることは間違いのないことだと思われ、フィルム価格の相次ぐ値上げや製品の生産終了などを受け、フィルム写真を断念してしまう人も多いという話しも聞きます。
 ネット上のいろいろなサイトを拝見すると、いまどきフィルム写真をやるなんて何の意味があるのかとか、愚の骨頂とか書かれている記事もたくさんありますが、私はいまだにフィルム写真をやめられずにいます。今の時代からすると化石のような存在かも知れません。

 デジタルカメラやデジタル写真の進歩にはすさまじいものがあります。しかし、フィルム写真と比較するようなものでもないし、また、比較しても特段意味があるとも思えませんが、解像度や見た目の綺麗さなどではデジタルの方がはるかに勝っていると思えることもたくさんあります。また、フィルムカメラではとても難しいとか、たぶん無理と思えるようなもの(被写体)であっても、今のデジタルカメラであれば容易に写すことができるということがたくさんあります。

 私が住んでいる近くに大きな公園があり、そこにオオタカが営巣している木があります。時どき、散歩がてらその木の近くを通ることがありますが、たくさんの人がまるでバズーカ砲のようなレンズを装着したカメラを三脚に据えて、全員が同じ方向を向けて撮影をしている光景を見ることができます。
 私は野鳥を撮るようなことはありませんし、そのような機材も持ち合わせていないので、皆さんの邪魔にならないように後ろの方に立ってレンズが向いている方向の木の上に目を凝らし、肉眼でオオタカの姿を探しています。
 オオタカに限らず野鳥というのは常に我々の目の前に姿を現してくれるわけではないし、運よく飛んできても長居はしてくれないので撮影チャンスはごく短い時間に限られてしまいます。私などは鳥の姿が見えなければ10分もしないうちに飽きてしまいますが、野鳥を撮られる方は何時間でもじっとチャンスを待っています。そう考えると、野鳥撮影をする皆さんの忍耐力には頭が下がります。
 そして、待ちに待ったオオタカが姿を現すと一斉にシャッターが切られ、その音があたりに響き渡ります。しかも、1秒間に10コマ以上は切られているのではないかと思えるほどの高速連射です。
 このような写真は私が持っている半世紀も前のフィルムカメラでは絶対に撮れません。まさにデジタルカメラならではです。

 野鳥の撮影は一つの例ですが、そんなデジタルカメラの凄さや便利さを承知しながらも、私はフィルム写真から離れられずにいます。
 では、なぜフィルム写真に拘っているのかと問われても、正直なところ、うまく答えを返すことができません。それは、理由が一つではないこともありますし、言葉でうまく表現できないということもあります。

 私が使用しているフィルムの7~8割はカラーリバーサルフィルムです。リバーサルフィルムはネガフィルムと違い、現像が上がった時点で完成となります。ですので、現像後のポジをライトボックスで観賞できるわけですが、これが最高に美しいと思っています。
 昔はポジ原版から直接プリントするダイレクトプリントと呼ばれるサービスもありましたし、今はスキャナで読み込んでプリントすることも出来ます。しかし、どんなに熟練したプロの職人さんがプリントしたものであっても、ライトボックス上の透過光で見た時の美しさにはかないません。また、プリントした写真よりもポジ原版を直接見た方がはるかに立体感のある写真、そして透明感のある写真に見えます。
 私が初めてリバーサルフィルムで撮影したのは今から何十年も前のことですが、初めてポジ原版を見た時の感動は忘れることがなく、今もポジ原版を見ると胸が高鳴ります。
 実際には常にポジ原版を鑑賞しているなんていうことはなく、プリントしたものを額装しているわけですが、見ようと思えばいつでもライトボックス上でポジを鑑賞できるということは何ものにも代えがたい魅力であることは間違いありません。

 では、モノクロネガフィルムの場合はどうかというと、もちろん、リバーサル現像でもしない限りは白黒が反転したネガ原版ですから、ライトボックス上で見てもリバーサルフィルムのように完成形を見ることはできません。しかし、立体感のようなものはネガ原版であっても十分に感じられますし、白黒反転していても脳がさらにそれを反転してくれるというか、普通に肉眼で見た時と同じように感じられるから不思議です。

 そして、カラーリバーサルにしてもモノクロネガにしても、フィルムという物理的な媒体を直接見るとまるでその場にいるかのような錯覚を憶えます。臨場感というのともちょっと違うのですが、撮影した空間をそっくりそのまま持ってきたという感じです。これもプリントしたものやパソコンのモニタに映した画像では味わえない感覚です。

 フィルム写真は、デジタルカメラのように撮影したその場で出来具合を確認するということはできません。これは、デジタルカメラに慣れてしまうと何とも不便なことに思えるかもしれませんが、シャッターを切った瞬間に自分の思い描いた映像がフィルムに記録されているかと思うと、ワクワクともドキドキともつかない不思議な感覚に包まれます。常に思い通りに撮れるわけではなく、予想に反した写真になってしまうこともあるわけですが、それも含めたワクワクやドキドキだと思います。
 失敗したら高いフィルムが1枚無駄になってしまうということもありますが、何よりも、今と同じ写真は二度と撮ることができないという緊張感のようなものが高揚感となって頭を持ち上げてくるように思います。特に自然相手の風景写真の場合、明日、また同じ場所に来ても同じ写真は絶対に撮れないわけで、余計にそれが強いのかもしれません。
 デジタルカメラのように、撮ったその場で確認できればどんなに便利かと思うこともありますが、現像が上がるまでの間、出来具合をあれこれ思いめぐらす時間、焦らされるような時間があるというのもフィルムならではです。
 二度と同じ写真が撮れないのであれば、失敗してもすぐに撮り直しのきくデジタルカメラの方に100%の分があるというのは承知しているのですが、フィルムに記録されるという物理的な現象には媚薬のような効き目があり、これに抗うことはできません。
 以前、この話を友人にしたところ、「お前、変わってるな」と言われたことがありました。自分ではそんなに変わっているとは思っていないのですが...

 フィルムの価格が今のように高額でないときはカラーリバーサルフィルムの現像も自分で行なうこともありました。しかし、なかなか発色が思うようにいかず、いまはプロラボに依頼をしています。一方、モノクロフィルムは自分で現像していますが、リバーサルにしてもネガにしても、現像工程を終えて現像タンクからフィルムを取り出したときに像が形成されているのを見るとやはり感激します。無から有が生成されるマジックを見ているような感じで、しっかりと説明のつく化学変化だとわかってはいても感動の瞬間です。
 撮影の時にイメージしたものがしばらくの時間をおいた後、像となって表われ、それを手に取ることができる不思議な感覚、私にとって心をときめかせるには十分すぎる事象だと思っています。

 さて、上でも書いたように、最近のデジタルカメラは驚くほど高精細で綺麗な写真が撮れます。写真は解像度がすべてではないと思いますが、それでも高解像度で綺麗であることを否定する理由は何もありません。そのようなデジタルカメラで撮った高解像度の写真に比べると、フィルム写真はちょっとざらついた感じがします。整然と並んだ撮像素子と、ランダムに配置された乳剤粒子(ハロゲン化銀粒子)の違いによるものが主な理由だと思いますが、私はフィルムのちょっとざらついた感じが好きです。

 ざらついていると言ってもかなり拡大しないとわからないので、デジタルカメラとフィルムカメラそれぞれで、同じ被写体を同じレンズを使って、同じ位置関係で撮影してたものを比較してみます。
 私が1台だけ持っているデジタルカメラはだいぶ前のもので、撮像素子はAPS-Cサイズ、約1,600万画素という、今ではかなり見劣りのするカメラです。そして、比較用に使ったのは中判のPENTAX67です。これらのカメラにPENTAX67用の135mmレンズを装着し、同じ位置から同じ被写体(桜)を撮影しました。
 そして、67判のポジ原版をデジタルカメラの1画素とほぼ同じ大きさになるような解像度(約5,420dpi)でスキャンします。写る範囲が67判の方が圧倒的に広いので、その画像データからデジタルカメラで撮影できるのとほぼ同じ範囲を切り出してみました。

 1枚目がデジタルカメラで撮影したもの、2枚目がフィルムカメラで撮影後、スキャンして切り出したものです。

▲デジタルカメラで撮影
▲フィルムカメラで撮影後、スキャンして切り出し

 画像処理のアルゴリズムなどの影響を受けていると思いますので2枚の写真に色調の違いはありますが、それを無視してもこうして比較すると、デジタルカメラで撮影した写真の方が滑らかな感じがすると思います。

 では、拡大してみるとどうかということで、画中央のまだ開ききっていない花の辺りを拡大したものが下の写真です。同じく1枚目がデジタルカメラで撮影したもの、2枚目がフィルムカメラで撮影したものです。

▲部分拡大 デジタルカメラ
▲部分拡大 フィルムカメラ

 明らかに違いが判ると思います。デジタルカメラ(1枚目)の方が全体に滑らかで、細部までくっきりと描写されているのがわかります。
 一方、フィルム(2枚目)の方は全体的にざらついた感じがしますが、これはフィルムに塗布された色ごとの乳剤粒子が重なっているため、それによって複雑な色の組合せが生まれていることが理由だと思われます。デジタルに比べてはるかにたくさんの色数が表現されていますが、これがざらついた感じに見えるのだと思います。
 デジタルの撮像素子とフィルムの性能比較をするつもりはなく、生成される画の違いを見ていただければと思います。

 ざらついていると言っても、中判フィルムから全紙くらいの大きさに引き伸ばしプリントした程度ではざらつきはほとんど感じられません。超高感度のフィルムを使ったときの粒子の粗さによるざらつきとは全く別物で、豊かな色調からなる画の奥深さのようなものを感じます。 
 個人的にはこのフィルムのざらついた感じが好きで、それがフィルムの魅力の一つでもあります。

 このように、私はいろいろなところでフィルムの魅力を感じていて、しかも、それらが相乗効果で押し寄せてくるので、そう簡単にフィルムに踏ん切りをつけることができないというのが正直なところです。もちろん、フィルム価格や現像料の高騰は大打撃ですが、ごくごく些細な工夫をしながらでも、フィルムを使い続けたいという気持ちがあります。
 私はフィルムと日本酒の保管専用に小型の冷蔵庫を使っていますが、扉を開けた時にフィルムと日本酒が並んでいるのを見ると幸せな気持ちになります(なぜ、フィルムと日本酒が同居しているのかという突っ込みはしないでください)。使用前のフィルムのパッケージを眺めていると、それだけでどこかに出かけて撮影しているときの映像が頭の中に浮かんできます。まるで、うなぎを焼くときの煙でご飯を食べることができるおっさんみたいですが、私にとってはそれくらい魅力的な存在です。

 現在、冷蔵庫に保管されているフィルムは1年~1年半ほどで使い切ってしまいそうな量です。今の品薄状態と高額には閉口しますが、切らさないように何とか補充し続けていきたいと思っています。

(2023.6.5)

#PENTAX67 #ペンタックス67 #リバーサルフィルム #ライトボックス

現像済みリバーサルフィルム(ポジフィルム)に付着する汚れと洗浄

 私はリバーサルフィルムの使用頻度が最も高く、現像済みのリバーサルフィルム(ポジ原版)はスリーブやOP袋に入れて保管してあるのですが、長年保管しておくとフィルム表面に汚れが付着してきます。これはリバーサルフィルムに限ったことではないのですが、ポジ原版をライトボックスに乗せてルーペで見ると目立ってしまうのでとても気になります。
 昔のようにポジ原版から直接プリントすることがなくなってしまったので、少々の汚れであればレタッチソフトで修正できるのですが、一枚しかないポジ原版に汚れが付着してしまうということが精神衛生上よろしくありません。

フィルムに付着する汚れ

 フィルムに付着する汚れの類いはいろいろあります。ホコリ、指先などの脂、カビ等々、汚れの原因は多岐に渡っています。
 ポジ原版を裸で放置しておけば当然のことながらホコリが積もってしまいます。通常、ポジ原版を裸で放置するということはないのですが、仮にホコリが付着したとしてもブロアなどでシュッシュッとやれば除去できるので、それほど目くじら立てるほどのことではないと思います。
 ただし、あまりたくさんのホコリが積もってしまうと取れにくくなってしまうこともありますが、しっかりと保管しておけば防げる問題です。

 また、ポジ原版を取り扱うときは専用のピンセット等を使いますが、つい、指で触ってしまうこともあり、そうすると指先の脂がついてしまいます。これはブロアでは取れないのと、そのままにしておくとカビが繁殖したりする可能性があるので、誤ってつけてしまった場合はフィルムクリーナーやアルコールで拭いておく必要があります。
 高温多湿などの環境で保管するとカビが生えることもあるという話しを聞きますが、私は自分が保管しているフィルムでカビを確認したことはありません。もちろん、すべてのコマをルーペで確認したわけではないので、もしかしたらカビが発生しているものがあるかも知れません。

 そして、私が最も厄介だと感じているのが、長期保管してあるポジ原版に黒い小さなポツポツとした汚れが付着してしまうことです。これはポジ原版を肉眼で見てもよくわからないことが多く、ルーペで見たりスキャナで読み取ったりするとしっかりと確認できます。
 ただし、長期保管してあるポジ原版のすべてにこのような汚れが付着するわけではなく、付着する方が極めて少数派なのですが、フィルム全面に渡って無数のポツポツが存在しているのを見るとため息が出ます。しかも、この黒いポツポツはブロアでは決して取れません。 

 実際に黒いポツポツが発生したポジ原版(67判)をスキャンした画像です。

▲PENTAX67 smc TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F22 1/125 RDP

 この写真を撮影したのは今から約30年前です。1コマずつカットしてOP袋に入れて保管していたものです。記憶が定かではありませんが、この30年の間にOP袋から取り出したのは数回だと思います。
 余談ですが、撮影から30年経って若干の退色はあると思うのですが、それでもこれだけの色調を保っているというのは、リバーサルフィルムのポテンシャルの高さだと思います。これはフジクローム(RDP)というフィルムで、現行品のPROVIAやVelviaと比べると非常にあっさり系の色合いをしたフィルムでした。

 上の画像は解像度を落としてあるのでよくわからないかも知れませんが、一部を拡大してみるとこんな感じです。

▲部分拡大

 明るくて無地の背景のところ(上の画像では空の部分)に発生しているのが良く目立ちます。空以外のところにも生じているのですが、被写体の中に埋もれてしまってわからないだけです。

 この写真と同じ日、同じ場所で、少しアングルを変えて撮影したものがあと5コマあるのですが、それらのコマにはこのような黒いポツポツの付着はごくわずかです。保管期間も同じ、保管条件も同じ、にもかかわらず、なぜこのように差が出ているのか、まったくもってわかりません。わずかな違いと言えばOP袋からフィルムを取り出した回数くらいのものでしょう。とはいえ、6コマのうちこのコマだけ、取り出した回数が特別に多かったとも思えません。たかだか数回の違いです。

 そもそも、この黒いポツポツとした汚れはいったい何なのか、どこから来たのか、ということが良くわかりません。カビではなさそうですし、指先でつけてしまった脂とも違います。ましてや、長期間保管されている間にフィルムの中から浮き出てきたとも思えません。

 正体を突き止めようと思い、この黒いポツポツを顕微鏡で覗いてみました。
 その写真がこちらです(わかり易いようにモノクロにしてあります)。

▲付着したごみの顕微鏡写真(200倍)

 顕微鏡の倍率は200倍です。ホコリともカビとも違う、微細なゴミのようなものがフィルムの上に貼りついている感じです。ゴミのようなものに焦点を合わせているので、バックのフィルム面にはピントが合っていません。このことからも、こいつはフィルムの上に乗っかっているのがわかります。
 また、フィルムの光沢面、乳剤面のどちらか一方だけということはなく、どちらの面にも存在しています。
 フィルム面に付着しているとなれば外部から入り込んだものに違いないと思うのですが、現像後、OP袋等に入れて以来、一度も取り出したことがないフィルムにも付着していることがあります。となると、OP袋に入れる際に付着した何かが、長年の間にフィルム面に貼りついてしまったと考えるのが自然かもしれません。
 いずれにしろ、この黒いポツポツをきれいにしないと気になって仕方がりません。何年後かに見てみたら増殖していたなんてことになったら最悪です。

フィルムの洗浄

 カビのようにフィルムの中の方まで侵食している感じはないので、洗浄すれば除去できるのではないかということで、汚れの付着が多いフィルムを5コマほど洗浄してみました。
 市販されているフィルムクリーナーの多くはアルコールが主成分のようなので、今回は消毒用アルコールを50%くらいに希釈して使用します。

 まずは、洗浄するフィルム(今回は67判)を20度くらいの水に10分ほど浸しておきます。
 流水でフィルムの両面を洗った後、フィルムの片面にアルコールを数滴たらします。数秒でフィルム全面にアルコールが広がっていくので、その状態のまま10秒ほど置きます。このとき、スポンジ等で軽くこすった方が汚れが落ちるかもしれませんが、フィルム面に傷をつけたくないのでそのままにしておきます。その後、流水でアルコールを流します。
 フィルムの反対の面も同様に行ないます。

 洗浄後は水滴防止液(今回は富士フイルムのドライウェルを使用しました)に30秒ほど浸し、フィルムの端をクリップ等で挟んでつるして乾燥させます。水滴防止液は少し粘度が高く、わずかにドロッとした感じのする液体のため、ホコリが付着しやすい性質があります。出来るだけホコリが立ちにくい浴室などにつるしておくのが望ましいと思います。
 なお、水滴防止液は規定の濃度の半分くらいでもまったく問題ありません。

 また、水滴防止液を使いたくないという場合は、水切り用のスポンジでそっとふき取る方法でも問題ないと思います。

 洗浄後のフィルムは乾燥過程でかなりカールしますが、乾燥が進むにつれて元通りの平らな状態に戻ります。

洗浄後のフィルムの状態

 こうして洗浄・乾燥させたフィルムですが、まずはライトボックスに乗せ、ルーペで確認してみたところ、黒いポツポツはほとんど消えていました。
 また、フィルムをスキャナで読み取ってみましたが、洗浄前と比べると見違えるほどきれいな画像が得られました。確認できた黒いポツポツはごくわずかで、それもルーペでは見えない非常に小さな点のような汚れで、この程度であればレタッチソフトで簡単に修正できます。アルコールに浸しておく時間をもう少し長くすれば、残ってしまった小さな汚れも落とせるかもしれません。
 付着した汚れはブロアでは吹き飛ばせないもののアルコールできれいに落とせるということは、カビのように中まで入り込んでいるものではないと思われます。

 洗浄前の部分拡大した画像とほぼ同じあたりを切り出したのが下の画像です。

▲部分拡大

 たくさんあった黒いポツポツがきれいさっぱりとなくなっています。洗浄による色調の変化等も感じられません。乳剤面に剥離など、何らかの影響が出ているかと思いましたがその心配もなさそうです。
 洗浄前と洗浄後のスキャン画像も拡大比較してみましたが、黒いポツポツを除けばどちらが洗浄前でどちらが洗浄後か、その区別はつきませんでした。

 念のため、桜の花のあたりを顕微鏡で覗いてみました。倍率は200倍です。

▲顕微鏡写真(200倍)

 特にフィルム面や乳剤面に劣化したような痕跡はないと思われます。
 フィルムを洗浄してから一週間ほど経過しましたが、肉眼で見る限りフィルム面に異常は感じられません。また、同じタイミングで撮影したコマのうちの未洗浄のものと比べてみましたが、フィルムの状態や色調に違いは見られませんでした。むしろ、全体的にクリアな感じになったのではないかと思いましたが、残念ながらそれは全くの勘違いでした。
 ただし、もっと長期間が経過した時に、この洗浄の影響が出るのかどうかは今のところ不明です。

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 保管してあるすべてのポジ原版の汚れの付着状態を確認するのは困難であり、洗浄したほうが良いと思われるコマがどれくらいあるのかは不明です。
 また、汚れの付着度合いに差がある理由もわかりませんが、やはり、スリーブやOP袋からの出し入れの回数が多いコマの方が汚れの付着度合いも多いのではないかと想像しています。スリーブやOP袋に入れるときは必ずブロアでホコリを飛ばしているのですが、どうしても100%取り除くというわけにはいかないので、回数を重ねるうちに増えていくのかもしれません。
 まだ汚れが付着していないコマをいくつか選んで、定期的にOP袋から出し入れするのと、全く出し入れしないのをモニタリングしてみる価値はありそうです。

 なお、今回のフィルムの洗浄は素人がやっていることであり、フィルムに与えるダメージがないという保証はありませんのでご承知おきください。

(2023.4.12)

#リバーサルフィルム #PENTAX67 #ペンタックス67 #保管

ローライ Rollei RPX25 超微粒子、高解像度、高コントラストのモノクロフィルム

 私が使っているモノクロフィルムの中でいちばん使用頻度が高いのがイルフォードのDELTA100、次いで富士フィルムのACROSⅡ、そして、ローライのRPX25です。それ以外のフィルムはお試しに使ってみる程度で、常用しているのはこの3種類です。
 RPX25はDELTA100やACROSⅡに比べると使用頻度は低いのですが、カリッと締まった描写が気に入っています。ISO感度が低いので使いにくいところもありますが、他のフィルムとは一線を画したようなところがあるフィルムだと思っています。

低感度のパンクロマチックモノクロフィルム

 ISO25という低感度フィルムです。世の中にはISO6とかISO12とかの超低感度フィルムも存在するようですが、ブローニーサイズの現行品で普通に手に入るフィルムとしては、このRPX25が最も低感度ではないかと思います。かつて、コダックからISO25のコダクロームKMとPKMという低感度リバーサルフィルムが販売されていましたが、RPX25を見ているとそれを思い出します。
 本来が低感度フィルムなのでEI25として使用するのが一般的だと思いますが、現像液によってはEI320にも対応可能なようです。私はEI320どころかEI50としても使ったことがないので、どのような写りになるのか知りませんが、のっぴきならない事情があったり、あるいは特別な表現を求めるとき以外は不必要にEIを高くすることもないと思います。

 このフィルムを使って私が撮影するのはほとんどが風景です。晴天時の日中に絞りを開いての撮影であれば手持ちでもいけますが、少し薄暗いときや絞り込んでの撮影、または夜景の撮影時などは三脚が必須です。シャッター速度はどうしても遅くなりがちなので、被写体ブレを起こしたくないようなときは気を使います。

 ちなみに、RPX25の120サイズのフィルム、ヨドバシカメラでは1本1,900円ですが、通販のかわうそ商店では1本1,090円です。さらに10本セットだと9,900円なので、1本あたり990円となります(いずれも2023年3月24日時点の税込み価格です)。フィルムが高騰している現在、10本セットはいえ、1本あたりが1,000円を切っているというのはお安いのではないかと思います。

コダック Kodak のD-76でネガ現像

 現像液はローライのスーパーグレイン SUPER GRAIN が望ましいのかもしれませんが、普段使っているコダックのD-76を使用しました。EI25の場合、1+1の希釈で20℃、8分となっていますので、それに従っています。このところ、暖かさを通り越して初夏のような陽気になっており、気温も20度近くまで上がっているので、現像液を温めたり冷やしたりという手間が省け、現像するにはありがたい気候です。

 コダックの薬品の国内販売が終了してしまったようですが、アマゾンなどではまだ在庫があるのか、購入ができるようです。私は販売終了のアナウンスがあった際に5袋ほど買い置きしておきましたが、そろそろ底をつきそうです。海外では販売されているようなので個人輸入という手もありますが、私の場合、それほどD-76に拘っているわけではないので、なくなったら別の現像液を使うことになりそうです。

黒が締まった硬調な描写が特徴

 先日、隅田川に架かる橋を撮りに出かけた際、RPX25を2本だけ持って行きました。その時に撮った写真を何枚かご紹介します。
 いずれも大判カメラに67判のロールフィルムホルダーを着けて撮影しています。

 まず1枚目の写真ですが、蔵前橋の下から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD65mm 1:5.6 F22 2s

 この日は良く晴れていて、橋の下から見ると川面に反射した光が橋げたを照らしていて、無機質の鉄骨ならではのコントラストになっていました。日中なので外はかなり明るく、背景はほとんど白飛びしています。
 橋脚からアーチ型に伸びた鉄骨が放射状に広がって見えるように短焦点レンズを使っています。もちろん、実際にはこんな風に放射状になっているわけではなく、同じ間隔を保ちながら平行に並んでいます。もう少し短めのレンズを使って真上まで入れた方が迫力が出たかも知れません。

 橋げたの下の部分は反射した光で明るいのですが奥の方までは光が届いていません。しかし、奥の方が黒くつぶれているかというとそういうわけでもなく、橋げたの構造がわかるような画像が記録されています。黒に対しての許容度が高い感じを受けます。
 また、中間調も綺麗に表現されていて、黒か白かに二分されてしまうのではなく、なだらかなグラデーションになっています。全体としてはカリッとした感じを受ける描写ですが、豊かな階調も損なわれることなく表現されていて、硬調な中にも柔らかさを感じます。

 次は、橋の下から係留されている釣船を撮影した写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F8 1/250

 太陽の位置はほぼ正面上方にあり逆光状態ですが、上部に橋げたの一部を入れることで明るい空をカットして、光が直接入るのを防いでいます。また、遠くにある釣船を注視しているような効果を狙ってみました。
 川面は光の反射でとても明るいので、陽があたっていない釣船とのコントラストが高く、長めの焦点距離のレンズで撮っていることもあり、立体感が出ていると思います。釣船の右舷側はかなり暗いのですが、つぶれてしまうことなく描写されています。

 個人的には水面の反射で輝いている左舷の金属の質感が気にいっています。

 3枚目の写真は、橋げたの一部だけを撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F16 2s

 水面の反射によって、橋げたの鉄骨の一部だけが明るく照らされている状況です。塗装がされているので、実際にはこんなに輝いては見えないのですが、光が当たっていないところとのコントラストと相まってモノクロならではの描写です。大量に打たれたリベットの頭部がわずかに光っているところなどに構造物の重厚感が感じられます。
 何度も塗料の塗り重ねがされてきたのだと思いますが、白く輝いている中にも表面の凹凸がわかりますし、暗部のディテールも良く出ていて、このフィルムのポテンシャルの高さを感じます。

 この日は隅田川に架かる橋の夜景を撮るのが目的で出かけたので、このフィルムでも数枚、夜景を撮影してみました。
 そのうちの1枚が下の写真です。

 日没して1時間ほど経った午後7時ごろに撮影したものです。いわゆるマジックアワーと呼ばれる時間帯は過ぎて、既に空は真っ暗です。
 このような状況において、低感度のフィルムで撮影しても弱い光はなかなか写り込んでくれません。いくら長時間露光をしても弱い光には反応してれないので、極端な言い方をすると、明るいところと暗いところだけで構成された画になってしまいがちです。
 ライトアップされた橋の欄干やアーチ、および水面への映り込みは明るいのですが、それ以外はほぼ黒といった状態で、まるで二値化された画像のようです。非常に硬い感じの描写になっていますが、これはこれで独特の趣が感じられます。

見事にヌケの良いポジが得られるリバーサル現像

 フィルム2本を撮影してきたので、1本をリバーサル現像してみました。
 RPX25は長年使ってきましたが、これまでこのフィルムでリバーサル現像をしたことは一度もなく、今回、初の試みです。
 RPX25のリバーサル現像に関するデータがないので、通常のネガ現像のデータをもとに現像時間を換算してみました。
 実際の現像時間については以下の通りです。

  第1現像 : 8分45秒
  漂白 : 5分
  洗浄 : 3分
  露光 : 片面1分
  第2現像 : 3分
  定着 : 7分

 現像液はイルフォードのシルバークロームデベロッパーを1:4(水)に希釈して使用しました。

 現像後のポジ原版が下の写真です。

 スリーブに入れたポジをライトボックス上で撮影したものなので画質が良くありませんが、黒の締まり具合、ヌケの良さ、解像度の高さなどは感じていただけるのではないかと思います。

 右上のコマをスキャンしたのが下の写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F22 1s

 こうしてスキャンして画像にしてしまうとネガ現像したものなのか、リバーサル現像したものなのかは判断がつきません。全体的に硬調な描写やしっかりと締まった黒、右の奥に見えるビルの中間調など、豊かな描写をしていると思います。金属の質感も良く出ていますが、橋脚の石の質感も見事です。

 現像の過程で大きな失敗をしなければ、ネガ現像だろうがリバーサル現像だろうが、解像度やコントラストの出方に違いはないと思われますが、リバーサル現像の方が工程が多い分、わずかな失敗でも積み重なって画質に影響を与える可能性はあります。ですので、あえてリバーサル現像をする理由もないのですが、やはり、現像後のポジをライトボックスで見た時の感動はひとしおです。
 イルフォードのDELTA100もヌケの良いポジを得られますが、もしかしたらRPX25の方が上を行っているかも知れません。

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 低感度フィルムなので多少の制約を受けることもありますが、高い解像度やコントラスト、超微粒子による緻密な描写など、魅力のあるフィルムであることは確かです。硬調な描写は見ていて気持ちの良いものですが、硬いだけではないのがこのフィルムの特性かも知れません。
 もともとコントラストの高いフィルムですが、モノクロ用のフィルター(Y2、YA3など)を装着するとさらに高コントラストになります。被写体によっては不自然になってしまうかも知れませんが、一つの表現手法でもあると思います。

 また、このフィルムは冷蔵庫などに入れておくことで長期保存も可能らしいので、買い置き向きかも知れません。

(2023.3.24)

#Rollei_RPX25 #Linhof_MasterTechnika #FUJINON #リバーサル現像 #蔵前橋