PENTAX67 ペンタックス67用 リアコンバータ2X

 PENTAX67用には2種類のコンバージョンレンズが用意されていました。いずれもレンズとボディの間に挿入するタイプで、「リアコンバータ REAR CONVERTER」という商品名で、1.4倍(1.4X)用と2倍(2X)用がありました。
 ズームレンズが主流になってからコンバージョンレンズが使われる頻度は急激に下がったように思いますが、これ1本でレンズの焦点距離を伸ばすことができるわけですから、結構重宝された時代もあったと思います。特にPENTAX67用にズームレンズが出たのは1990年代の後半で、それまでは単焦点レンズのみだったので、それなりの需要はあったのではないかと思います。
 私も2本のリアコンバータを持っていましたが、実のところ使用頻度はかなり低く、今でも新品のようにきれいな状態を保っています。

PENTAX67用リアコンバータ2Xの主な仕様

 最初のPENTAX67用リアコンバータは「T6-2X」という製品だったらしいのですが、私はそれを使ったことはもちろん、現物を見たこともありません。私の持っているリアコンバータは2代目ということだと思います。当時の製品カタログを見ると、110,000円(税別)という価格が記載されています。結構なお値段だと思います。
 取扱説明書等を放り込んである箱をあさったところ、リアコンバータの取説が出てきたので、そこから主な仕様を転載しておきます。

  ・倍率 : 2倍(2X)
  ・レンズ構成 : 4群6枚
  ・絞り方式 : 自動
  ・測光方式 : 開放
  ・大きさ : φ91 x 71.5mm
  ・重さ : 560g

 使用できるレンズはフィッシュアイ35mmから400mmまでで、500mm以上のレンズやシフト75mm、レンズシャッター内蔵のレンズ等は使用不可、もしくは推奨しないとなっています。レンズの構造上、取り付けができなかったり、画面周辺部で光量不足が生じることが理由のようです。
 PENTAX67用レンズのほとんどは外観が黒色に塗られていますが、リアコンバータはグレー(灰色)に塗装されています。
 コンバージョンレンズなので操作するような箇所はありませんが、レンズの絞りや開放測光に連動するための機構が組み込まれています。

リアコンバータの基本的なふるまいとレンズ構成

 コンバージョンレンズには大きく分けて倍率を下げるワイドコンバージョンレンズと倍率を上げるテレコンバージョンレンズ、そして、レンズの前に取り付けるフロントコンバージョンレンズとレンズ後端に取り付けるリアコンバージョンレンズがあります。
 PENTAX67用のコンバージョンレンズはテレタイプ、そしてリアタイプということになります。

 テレタイプのコンバージョンレンズの基本的なふるまいは、マスターレンズからの光を凹レンズで広げて、撮像面(フィルム)に入る光の範囲を狭く(小さく)するというものです。したがって、テレタイプのコンバージョンレンズは全体が凹レンズ、すなわちマイナスのパワーを持ったレンズということになります。

 下の図はテレコンバージョンレンズのふるまいを模式図にあらわしたものです。

 左側のマスターレンズからの光を凹レンズによっていったん広げることで、合焦面をマスターレンズよりもさらに後方に伸ばしています。
 マスターレンズからの光を広げるだけであれば凹レンズだけでも可能ですが、像面平坦性を確保するために凸群と凹群の組み合わせになっているものがほとんどのようです。

 PENTAX67用の2Xリアコンバータも同様の構成を採用していることは知っていたのですが、実際のレンズ構成が不明だったので分解してみました。
 その結果、上図の下側の図に示すようなレンズ構成であることがわかりました。

 取扱説明書には4群6枚構成となっているので、てっきり2群3枚構成のユニットが2つ存在しているものとばかり思っていましたが、実際には前側ユニットが1群3枚構成の凸群、後側ユニットが3群3枚構成の凹群となっていました。

 鏡胴から取り出したレンズユニットが下の写真です。

 写真の上側がマスターレンズ側、下側がボディ側になります。

 ここからレンズを取り出したのが下の写真です。

▲左から凹群の凸レンズ、凹レンズ、凹レンズ、右端が凸群のレンズ

 左から3枚が後側ユニット(凹群)のレンズ、いちばん右側が前側ユニット(凸群)のレンズです。
 後側ユニット(凹群)の3枚のレンズのうち、いちばん外側の1枚は凸レンズで残りの2枚は凹レンズです。そして、前側ユニット(凸群)は3枚のレンズが張り合わせてあるので詳しい構成は不明です。
 メーカーによっては前群ユニットを凹群、後群ユニットを凸群としているコンバージョンレンズもあるようで、それぞれ長所短所があるのかもしれませんが、詳しいことは私にはわかりません。いずれにしてもマスターレンズの特性を損なわないようにしながら倍率だけを変化させるということが求められるのだろうと思います。
 あらためて言うまでもありませんが、倍率が上がった分、暗くなるので露出の補正が必要になります。2倍のコンバージョンレンズの場合、露出は4倍(2段)にする必要があります。

 余談ですが、レンズユニットを分解していて思ったのですが、極めて高精度に加工されている感じです。冬場で室内の温度も若干低いことも影響しているのかも知れませんが、レンズを押さえているリングを外してもレンズがぴったりとはまっていて出てきません。ドライヤーで温めてようやく取り出せるといった状態です。
 レンズをはめる時もしかりで、ドライヤーで温めて枠を膨張させておかないとレンズがはまってくれません。

リアコンバータ2Xの写りについて

 では、リアコンバータ2Xを装着することで、マスターレンズの写りに影響があるのかどうかということで、いくつかのテストチャートを使って撮影をしてみました。
 実際に使ったレンズは「SMC TAKUMAR 6×7 105mm F2.4」という67判では標準レンズといわれている焦点距離のものです。

 まずは、自作のテストチャート用の目盛り板を撮影したものです。

▲左:105mm単体 右:105mm+リアコンバータ

 左側が105mmレンズ単体で撮影したもの、右側がリアコンバータを装着して焦点距離を210mm相当にして撮影したものです。いずれも約5mの距離から撮影しており、そこからほぼ同じ範囲を切り出して並べたものです。
 厳密にはわずかな違いがありますが、目盛り0を中心にして前後のボケ方はほとんど変わらないといってよいと思います。

 ちなみに、105mmレンズにリアコンバータを装着した場合とほぼ同じ焦点距離の200mmのレンズで撮影したものと比較したのが下の写真です。

▲左:105mm+リアコンバータ 右:200mm

 左側が105mmレンズにリアコンバータを装着して撮影、右側が200mmレンズ単体で撮影したもので、撮影距離は同じく約5mです。
 明らかに右側の200mmレンズで撮影した方がボケ方が大きくなっています。

 次に、ボケの具合を見るためにテストチャートを撮影・比較してみます。
 比較用に使用するテストチャートはこちらです。

 これを105mmレンズ単体とリアコンバータを装着した場合について、それぞれ前ボケ、後ボケになるような位置で撮影したのが以下の写真です。
 まず、105mmレンズ単体で、絞りF2.4(開放)で撮影した前ボケ、後ボケ状態のテストパターンです。

▲105mm単体 F2.4 前ボケ
▲105mm単体 F2.4 後ボケ

 1枚目が前ボケ状態、2枚目が後ボケ状態で、レンズからピント位置までの距離は約5m、そこから前後に30cmずらした状態で撮影したものです。

 そしてこちらが105mmレンズにリアコンバータを装着して撮影したものです。撮影条件は同じです。

▲105mm+リアコンバータ F2.4 前ボケ
▲105mm+リアコンバータ F2.4 後ボケ

 同様に1枚目が前ボケ状態、2枚目が後ボケ状態です。

 レンズ単体の方がボケの中にわずかに芯が残っているような印象を受けますが、極端に大きな違いは感じらません。

 次に絞りをF8にして撮影した写真の比較です。
 1枚目が105mmレンズ単体の前ボケ状態、2枚目が後ボケ状態、3枚目が105mmにリアコンバータを装着しての前ボケ状態、4枚目が後ボケ状態の写真です。

▲105mm単体 F8 前ボケ
▲105mm単体 F8 後ボケ
▲105mm+リアコンバータ F8 前ボケ
▲105mm+リアコンバータ F8 後ボケ

 こちらは絞り開放時よりもさらに似通っている感じで、ほとんど差がわかりません。
 リアコンバータは倍率を変えるだけでマスターレンズの特性を極力保持するという点からすると、それに十分に応えているように思います。倍率が上がったのは良いけれど、写りが大きく変わってしまったというのでは有難くありません。

 最後に、解像度用のテストチャートを撮影してみましたので、それも掲載しておきます。
 1枚目が105mmレンズ単体で撮影、2枚目がリアコンバータを装着しての撮影です。いずれも絞りはF4、撮影距離は約5mです。撮影範囲が異なるので、ほぼ同じ範囲を切り出しています。

▲105mm単体 F4
▲105mm+リアコンバータ F4

 コンバージョンレンズを入れると多少なりとも画質が落ちるというイメージがあったのですが、ほとんど影響がないのではないかと感じました。もっと厳密に計測すれば差は出るのでしょうが、実用上はほとんど問題のない範囲ではないかと思います。
 コンバージョンレンズとはいいながら6枚ものレンズで構成されていて、今回、マスターレンズとして使用したSMC TAKUMAR 6×7 105mm も5群6枚構成ですから、それと同等の枚数で構成されているということになります。性能が高くてもうなずける気がします。

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 冒頭でも書いたように、私はリアコンバータを使うことが非常に少なく、そのいちばんの理由は面倒くさいからということです。
 確かに、リアコンバータを1本持っていけばレンズの焦点距離のラインナップが2倍になるわけですから便利ではあります。しかし、リアコンバータをはめたり外したりという面倒くささが優先してしまい、つい敬遠しがちになってしまいます。
 なお、2倍のリアコンバータを使用する場合、露出を4倍かけなければなりませんが、私の場合、風景が主な被写体なのであまり気になることはありません。

 また、マスターレンズの画質を落としたり特性を変えたりしたくないという思いもあり、レンズはできるだけ素のままで使いたいという思いもあります。
 しかし、今回、非常に簡易的ではありますが比較撮影をしてみて、画質に関しては危惧するほどではないというのが実感です。あとは面倒くさいという気持ちが払しょくできれば、リアコンバータの活躍頻度も上がるかもしれません。

(2025.1.16)

#PENTAX67 #テストチャート #ペンタックス67 #ボケ #レンズ描写

アグファ AGFA のモノクロフィルム COPEX RAPID の使用感

 アグファ AGFA といえば世界で最初に内式のリバーサルフィルムを製造・販売した会社で有名ですが、いまから30年ほど前、アグファからはSCALA200というモノクロのリバーサルフィルムが販売されていました。個性的なフィルムを出す会社という印象がありました。今はADOXから若干のモデルチェンジをした製品がSCALAブランドで販売されているようです。
 実は、前々からAGFA COPEX RAPID というフィルムが気になっていたのですがなかなか使う機会がなく、ようやくそのフィルムを使って撮影が実現できましたのでご紹介します。

アグファのドキュメント用フィルム

 AGFA COPEX RAPID というフィルムはドキュメント撮影用というカテゴリーに分類されるようで、フィルムケースのラベルには「MICROFILM」と書かれています。すなわち、風景やポートレートなどを撮る一般的なモノクロフィルムではなく、本来は書類や図面などを記録するためのフィルムということのようです。
 ISO感度は50で、マイクロフィルムとしてみれば感度は高いと思いますが、一般的なフィルムからすると低感度です。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムで、通販で1本1,300円ほどで販売されていました。1本ずつプラスチックケースに入っており、そのキャップの上部には「Rollei」のロゴが入っています。
 また、ラベルには「MANUFACTURED BY AGFA GEVAERT N.V.」とあるので、フィルムの供給はドイツのマコという会社が行なっていますが、実際に製造しているのはベルギーにあるアグファ・ゲバルト社のようです。

 マイクロフィルムというとその用途から高い鮮明度と解像力が求められており、このフィルムも鮮明度や解像力は優れているようで、販売元のデータを見ると解像力は600本/mmとなっています。富士フイルムのモノクロフィルムACROSⅡの解像力はハイコントラスト時で200本/mmとのことですから、いかにCOPEX RAPIDの解像力が高いかがわかります。
 実際にウェブサイトなどに掲載されている作例を見ても、とてもハイコントラストで高解像度の写真に仕上がっていて、やはり、一般的なモノクロフィルムとは別物といった感じです。

 ドキュメント用フィルムだからといって風景が撮れないわけではないので、今回は神社仏閣と野草を対象に撮影をしてみました。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像は専用の現像液として販売されている「シュプール Dokuspeed SL-N」が推奨となっていますが、私は持ち合わせていないので、今回はSilverSalt現像液を使うことにしました。
 SilverSaltは比較的使う頻度が高く、使いかけのボトルが手元にあるのですが、COPEX RAPIDを現像する際のデータがありません。あちこち調べてみたのですが的確な情報を得ることが出来ず、環境的にいちばん似通っているであろうと思われるデータをもとに現像条件を決めました。

 ということで、今回の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : SilverSalt
  ・希釈 : 1 + 30 (原液1に対して水30)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 9分30秒
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルなので、必要な現像液の量は約500mlです。SilverSaltの原液17mlと水510mlを合わせて527mlの現像液を調合しました。

 因みに、135フィルムの場合、撹拌は1回で大丈夫なようです。

 先日までの猛暑もひと段落して室内温度もそれほど高くないので、現像液の温度を20度に保つにはありがたい気温になっていました。いったん20度になれば、20分ほどであればそのまま放っておいても液温はほとんど変わることはありません。

 現像後の現像液はピンク色に染まっていました。
 また、フィルムベースはほぼ透明ですが、非常にカールが強い傾向にあります。乾かしてもクリップを外すとくるんと丸まってしまい、スリーブに入れてもスリーブ自体が丸まってしまうほど強力です。

 なお、停止液と定着液は富士フイルムの製品を使いました。

COPEX RAPID の作例

 現像が成功したのか、はたまたイマイチだったのか、正直なところ判断がつきませんが、まずまずの像が得られているようです。
 今回の撮影に使用したカメラはPENTAX67、使用したレンズは105mm、200mm、300mmの3本、そして一部に接写リングを使用しています。

 まず1枚目は、神社の参道の入口にある狛犬を撮ったものです。

▲PENTAX67 SMC PENTAX-M 67 300mm F5.6 1/250

 狛犬とその隣にある石灯籠などには陽が当たっていますが、背後の神社の森は日陰になっていて、コントラストの高い状態です。肉眼では背後の森もしっかりとわかる明るさなのですが、写真ではほとんど黒くつぶれています。
 こうしてみてみると、確かにハイコントラストに仕上がっているのがわかります。ローライのRPX25というフィルムもハイコントラストの傾向がありますが、それよりももっとシャープな印象があります。

 2枚目は、お寺の山門脇の草むらに置かれていた小さなお地蔵様です。

▲PENTAX67 SMC PENTAX67 200mm F5.6 1/500

 右側のお地蔵様にピントを合わせていますが、何と言ったらよいのか、お地蔵さまも着けている前掛けや帽子などの質感さえも変わってしまっているような感じを受けます。柔らかさのようなものはどこへやら失せてしまい、金属で作られたオブジェのようにも見えてきます。

 そして3枚目、神社の拝殿を撮影しました。

▲PENTAX67 smc TAKUMAR 67 105mm F16 1/8

 少しコントラストの低い被写体をということで、太陽に雲がかかっている状態で神社の拝殿を正面から写しました。画の下半分はだいぶ明るいのですが、上に行くに従って陰になっているので徐々に暗くなっています。
 前の2枚に比べると確かにコントラストは低いのですが、シャープさはしっかり残っているというか、とにかくエッジがしっかりと効いているといった感じの描写です。正面の格子戸や賽銭箱、壁板、回廊に張られた床板の木目など、まるで鋭い刃物の先で線を引いたような感じで写っています。

 次に、野草も何枚か写してみたのですが、はっきり言ってこちらの方が驚きました。

 まずは道端に咲いていた野菊、多分、柚香菊(ユウガギク)だと思います。

▲PENTAX67 smc PENTAX67 200mm F4+1/2 1/500

 順光状態での撮影なので背後の草むらももっと明るいのですが、花弁だけがひときわ白く、まるでたくさんの小さな花火が開いているようです。花の質感が失われており露出オーバー気味ですが、それを差し引いても驚くようなハイコントラストです。

 そしてこちらも野菊の仲間、野紺菊(ノコンギク)だと思われますが、数輪だけをアップにしてみました。

▲PENTAX67 smc PENTAX67 200mm F4+1/2 1/500 EX3

 前の写真に比べると光が弱いのと、こちらは露出オーバーにはなっていないのでコントラストは若干低めですが、作り物のような印象を受けます。やはり単に鮮明度が高いというだけでなく、エッジがピンと立っているという感じです。花特有の柔らかさなありませんが、これはこれで一つの表現方法かも知れません。

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 今回は120フィルム1本、10コマだけの撮影でしたが、COPEX RAPIDというフィルムの特性を垣間見るには十分すぎるくらいでした。特に花を撮った写真の描写にはびっくりといった感じです。
 確かに風景写真や花の写真には不向きなフィルムかも知れませんが、一般的なモノクロフィルムでは味わえない独特な描写はとても印象的です。
 ただし、初めて使ったフィルムなので現像の特性等もわかっておらず、希釈率や現像時間、温度などを変えて何度か試してみる必要はありそうです。

 推奨されている現像、シュプール Dokuspeed SL-Nを使えばもう少し違う描写になるかも知れませんし、普段よく使っているD-76とかID-11などを使って現像すれば全く違う感じに仕上がるかも知れません。何種類かの現像液で試してみたい気もしています。

(2024.10.5)

#AGFA #アグファ #PENTAX67 #ペンタックス67 #モノクロフィルム #COPEX_RAPID

野草撮影にあると便利な小物のあれこれ

 私が撮影対象としていちばん多いのは自然風景ですが、次いで多い対象物(被写体)が野草です。
 野草は背丈が低く、しかも、草むらの中などにひっそりと咲いていることが多いので、どうしてもローポジションでの撮影になりますし、マクロ撮影とまではいかなくてもかなりの近接撮影になるとこが多いです。また、光の具合を調整したりすることも多く、そのための小物類もいくつか持ち歩いています。
 私が野草撮影に使っているカメラは主にPENTAX67、およびPENTAX67Ⅱですが、今回はこれらのカメラでの撮影の際に用いている小物類をご紹介します。

クランプヘッド

 野草撮影で最も苦労するのが、カメラをいかに低いポジションに構えられるかということです。
 PENTAX67は言わずと知れた中判のフィルムカメラで、レンズも含めるとかなりの重量級となるため、三脚も大型のものを使っています。大型の三脚は、脚を目一杯広げて低くなるようにしても、カメラの位置は地上から40~50cmほどが精一杯という状況です。
 そこで、三脚の脚の部分にカメラを設置できるようなクランプヘッドを使用しています。

 私が使用しているこのクランプヘッドは改造品で、もともとはスリック製の「クランプヘッド38N」という製品と、マンフロット製の「スーパークランプ」という製品を組み合わせて作ったものです。これについては下記のページで紹介しています。

  「スリッククランプヘッドと超ローアングル撮影」

 この自作クランプヘッドを三脚の脚の最下部に取り付けると、最低地上高が数cmという高さでの撮影が可能になります。背丈が数cmしかないような小さな野草でも、ほぼ同じ目線で撮影することができます。
 このスリックのクランプヘッドの難点は、チルトとサイドチルトはできるのですがパンができないということです。つまり、カメラを上下に振ったり水平を調節したりはできるのですが、左右に振ることができません。
 これを解決するにはここに自由雲台のようなものを取付けるしかないのですが、そうすると最低地上高が高くなってしまい、地面すれすれでの撮影ができなくなってしまいます。

アングルファインダー

 クランプヘッドを用いることで低いポジションでの撮影が可能になりますが、そうすると、地面に腹ばいにでもならない限り、カメラのファインダーを覗くのがとても難儀になってしまいます。
 そこでカメラのファインダーを上から覗くことができるアングルファインダーを使用しています。

 ファインダーからの光を直角に曲げてくれるものですが、カメラのファインダーを中心に360°回転するようになっているので、上からも横からも覗くことができます。また、視度調整機能が備わっているので、自分の視力に合わせてくっきりとした像を見ることができます。
 カメラを地面すれすれに構えた状態であっても、しゃがみ込めばファインダー内を見ることができるのでとても便利です。
 私が使っているPENTAX67用のアングルファインダーは、カメラ背面のファインダー窓に嵌まっている視度調整レンズを外し、そこにアングルファインダーをねじ込むという方式なので、取り付け取外しが少々面倒です。野草を撮るときは付けっ放しにすることが多いのですが、そうするとアイレベルでの撮影の時に不便を感じます。取り付け取外しがもっと簡単だといいのですが。

接写リング

 レンズの最短撮影距離を更に短くして近接撮影を行なうためのものです。
 これについても下記のページで紹介しているので、詳細はこちらをご覧ください。

  「PENTAX67用 オート接写リング(エクステンションチューブ)」

 私が接写リングを使う理由は、近接撮影をするということもありますが、いちばんはボケを大きくしたいということです。なので、近くによってマクロ的な撮影をするというよりも、比較的焦点距離の長いレンズに接写リングを取り付けて、少し離れた位置から撮影するというスタイルが多いです。もちろん、3個の接写リングすべてを取付ければ、長焦点レンズでもその撮影距離はかなり短くなりますが、3個も同時に使うことはほとんどなく、なだらかできれいなボケが得られる範囲での使い方が多いです。

 接写リングを使用すると、レンズ側のピント調整リングで合わせることのできる範囲が非常に狭くなってしまうので、接写リングをとっかえひっかえしたり、三脚ごと撮影位置を前後したりしなくて済むように、あらかじめ撮影位置や撮影倍率のアタリをつけておくことが望ましいです。

レフ板

 前にも書いたように野草は背丈の低いものが多いので、うまい具合に光が回ってくれないことも多々あります。小さいがゆえに、光の状態が良くないと出来上がった写真はどことなく精彩を欠いてしまうことも少なくありません。
 光を調整するといっても限界があるのですが、比較的よく使うのがレフ板です。

 ポートレート撮影などでは畳半分くらいもあるような大きなレフ板を使うこともありますが、野草撮影ではそんな大きなものは必要なく、私が使っているのは25cmx40cmほどの大きさで、二つに折りたためば半分の大きさになります。
 このレフ板も自作品で、ボール紙にアルミホイルを張り付けただけのものです。できるだけコンパクトになるよう、真ん中から半分に折りたためるようにしています。
 アルミホイルは光沢のある表と光沢の少ない裏側とがあるので、反射率で使い分けられるようにレフ板の半分に表側、もう半分に裏側を出して貼っています。また、光が拡散(乱反射)するように、アルミホイルをしわくちゃに揉んだものを使用しています。

 草むらなどで光が十分に回っていないときなど、柔らかな光をあてて全体的に明るくするという目的で使用します。

 また、二つ折りにできるレフ板をくの字に折ることで地面に自立させることができます。レフ板を手で持っていなくても済むということと、本来のレフ板の使い方ではありませんが、被写体の脇に立てることで風よけにもなります。野外で撮影していると風で花が揺れてしまうということもよくありますが、この小さなレフ板でも被写体ブレを防ぐことに大いに役立ってくれます。

手鏡(ミラー)とストロボスポット光アダプタ

 レフ板は全体的に柔らかな光を回すために使いますが、部分的に強めの光を当てたいということもあります。周囲は暗めにして、花のところなど部分的に明るくしたいというような場合です。
 レフ板に比べると使う頻度は低いのですが、お目当ての野草を引きたたせるために、私は手鏡とストロボを使うことがります。

 まず手鏡ですが、カードサイズの小さな手鏡の中央部分だけを出して、周囲は黒い紙でマスクしたものを使います。

 カードサイズと言えども、そんな大きな反射光は必要なく、直径3~4cmほどの大きさの反射面があればほぼ用が足ります。
 手鏡と同じ大きさの黒い紙の中央をくり抜き、これを鏡に重ねて使うだけです。くり抜く大きさのものを数種類用意しておけば便利かもしれません。
 手鏡程度であれば荷物にもならなく便利ではありますが、光の調整ができません。太陽の光をもろに反射させるので、結構強い光が当たります。周囲が影になっているときだとコントラストがとても高くなってしまうので、使い方を誤ると失敗作をつくり出しかねません。

 手鏡に比べると荷物としてはかさばりますが、光の調整ができるのがストロボです。
 マクロ撮影などで影ができないリングストロボを使う方も多いと思いますが、全体を明るくするのではなく、あくまでもスポット光を手に入れたいということなので、私はごく普通のクリップオンストロボ(しかもかなり昔の製品)を使っています。
 ただし、ストロボそのままでは照射される光がかなり広範囲に広がってしまうので、ごく狭い範囲だけに照射できるようなアダプタを自作して使っています。

 アダプタというほど大層なものではないのですが、100均のお店で黒色のストローを買ってきて、これを半分の長さに切って束ねただけのものです。これをストロボの発光窓の前に被せて使います。
 ストローの直径が約5mm、長さが約90mmで、ストロボから発せられた光はここを通ることでほぼ直進成分の光だけに絞られます。斜め成分の光はストローの中を通る際に減衰してしまうので、照射される光は絞られたスポット光になります。

 正面から見るとこんな感じになります。

 これでもストロボの発光窓と同じくらいの大きさの照射光になってしまうので、さらに小さくするためにアダプタの先端に黒い紙で作ったマスクを取付けます。これで、直径3~4cmほどのスポット光になります。
 ストロボ側で光量を調整できるので、作画意図に合わせた光を得ることができます。

半透明ポリ袋

 手鏡やストロボとは反対に、光を拡散させて弱める目的で使用します。
 使っているのはスーパーなどのレジ近くに置いてあるタイミーパック、いわゆる半透明のポリ袋です。このポリ袋をボール紙で作った四角い枠に張り付けただけのものです。

 非常に薄い素材でできていて、光の透過率はかなり高いと思われるのですが、きれいに拡散されるので影になることなく柔らかな光にすることができます。ちょうど雲を通り抜けてきた光と同じような状態になります。
 直射日光が当たっていてコントラストが高すぎるときは、雲がかかってくれないかなぁと空を仰ぎ見ることがありますが、そういときに限って青空が広がっているものです。そんな時にこのポリ袋を被写体の上の方に置くだけで、雲がかかった時のような光の状態になります。

 サイズは大きい方が使い勝手は良いと思うのですが、大きすぎるとカメラバッグに入らなくなってしまうので、スーパーのレジに置いてある程度の大きさが手ごろではないかと思います。

洗濯ばさみ

 屋外で野草撮影していて以外に重宝するのが洗濯ばさみです。
 洗濯ばさみをそのまま使うのではなく、私は洗濯ばさみどうしを紐でつないだものと、菜箸の先端に洗濯ばさみを括り付けたものの2種類をカメラバッグに入れて持ち歩いています。

 これらをどう使うかというと、まず、洗濯ばさみどうしを紐でつないだ方ですが、これは撮影に際に邪魔になる枝や草などをちょっと脇に避けてもらうときなどに使います。枝を折ったり草を切ってしまうわけにはいかないので、これを洗濯ばさみでつまんで引っ張って、もう一方の洗濯ばさみをほかの木の枝なり三脚なりに挟みます。これで、撮影が終わるまでの暫時、邪魔になるものに避けてもらうことができます。

 菜箸の先端に括り付けたほうも目的は似たようなものですが、こちらは地面に刺して使うことが多いです。紐でつないだ洗濯ばさみの一方を止める場所がないときに、この菜箸を地面に刺してここに止めるとか、あるいは菜箸の先端の洗濯ばさみで避けたいものを挟み、菜箸を地面に刺すなどといった使い方です。もちろん、手で持っていることもできますが、地面に刺しておいた方が楽です。
 また、上で紹介した半透明のポリ袋の枠をこれで保持するといった使い方もします。
 なお、洗濯ばさみは挟む力が強すぎない木製のものを使用しています。

 自然のものはあるがままの状態で写すべきとも思いますが、時にはどうしてもフレームの中に入ってほしくないものがあるのも事実で、そういったときに使っています。

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 フィールドでの野草撮影は結構手間がかかります。被写体が小さいというのもありますが、光の状態などによって全く雰囲気が変わってしまうので、気に入った光、気に入ったアングルなどを決めるのに時間がかかります。その間にも状況はどんどん変わっていってしまいます。自然の状態にできるだけ手は加えたくないと思うのですが、最低限の処理で撮影をするようにしています。
 野草撮影といってもそうそう珍しい花に出会えるわけではありませんが、植物図鑑やネット上の記事でしか見たことのない野草に出会ったりするとやはり嬉しいものです。
 一方で、昨年ここに咲いていたはずなのに、今年はなくなっていたなんていうこともあり、環境の変化で生きていけなくなったのか、盗掘によるものなのかはわかりませんが、寂しい思いをすることもあります。
 どちらかというと華やかさはなく地味なものが多い野草ですが、野生で生きていく力強さも相まって何とも魅力のある存在です。

(2024.8.23)

#PENTAX67 #クランプ #ペンタックス67 #小道具 #接写リング

花を撮る(7) 晩秋に咲く花を撮る

 花が圧倒的に多いのは春から夏にかけてであり、秋になると咲く花の種類はぐっと減り、さらに晩秋ともなると園芸品種を除けばとても少なくなってしまいます。しかも、春や夏の花のようにエネルギーに満ち溢れているという感じではなく、どことなくうら寂しさが漂っているように思えてなりません。
 とはいえ、種類は少ないながらも晩秋ならではの魅力があるのも事実で、そんな花を探すのも楽しみの一つではあります。
 なお、今回掲載の写真はすべてPENTAX67Ⅱで撮影をしています。

キク(菊)

 菊というと春に咲く桜と同じくらい日本人にはなじみのある花ですが、いわゆる「菊」というのは、その昔、中国から入ってきたものらしく、日本には自生種の菊という植物は存在していないらしいです。皇室の御紋にも使われているので日本古来の花かと思っていましたが、どうもそうではないようです。
 キク科の植物には野菊と呼ばれるものがありますが、これらの多くは日本の在来種のようで、我々が「菊」と呼んでいるのものに比べるととても控えめな花です。
 外来種と言えども菊はすっかり日本の風景になじんでいて、栽培されている大輪の菊をはじめ、庭先や畑の隅の方で見かけることが多くあります。

 下の写真は農作物の収穫がすっかり終わり、さっぱりとした畑の隅の方に咲いていた菊です。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/30 PROVIA100F

 正式な名前はわかりませんが、山形県などで良く食べられている食用菊にも似ています。
 そぼ降る雨の中で健気に咲いてはいますが、何度か霜が降りたのか、一部の葉っぱや周囲の草もすっかり茶色くなっていて、哀愁を感じる景色です。キクというと上を向いて咲くイメージがありますが、この写真の花はすっかり俯いてしまっています。

 半円形のアーチのように並んでいる形が綺麗だったので、これらの花がいちばんきれいに見えるアングルを探して撮影しました。背景は紅葉している山ですが、キクの花が埋もれてしまわないように大きくぼかしました。
 雲が垂れ込めていて雨も降っているので薄暗いような状態でしたが、花を引き立てるために露出はオーバー気味にしています。

 そういえば、もともとは白っぽい色をした花弁が霜にあたって紫色に変わっていくキクを「移菊(うつろいぎく)」というらしいですが、もしかしたらこのキクもそうかもしれません。何とも風情のある呼び名です。

ノコンギク(野紺菊)

 秋も深まり、何度か霜が降りると野草の葉も赤く染まっていきます。木々の葉っぱが紅葉するのと同じ現象なのかどうかはわかりませんが、草も霜焼けになるという話しを聞いたことがあります。同じ辺りに生えていても赤く染まる葉っぱと染まらない葉っぱがあるのですが、専門的なことはともかく、一面に赤く染まった光景は何とも言えない美しさがあります。

 そんな草むらの中に、かろうじて咲いているノコンギクを見つけました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/15 EX2 PROVIA100F

 ノコンギクは日本にたくさんある野菊の仲間です。秋口になると薄紫の可憐な花を咲かせます。葉っぱはすっかり茶色になってしまっていますが、まだ数輪の花が残っています。しかし、花弁が落ちてしまったのか、ずいぶんを花が縮んでいる感じです。周囲に他の花は見当たらず、エノコログサの穂も茶色に変色しているような中で咲いている姿には心引きつけられるものがあります。
 ノコンギクの背丈は40~50cmほど。周囲の草と同じくらいの高さなのでそれらの草と重ならないように、バックに比較的広い空間がある場所で撮りました。

 二線ボケが出やすい状況なので接写リングをつけて撮影していますが、やはり二線ボケが少し気になります。もう少し長めのレンズで、離れた位置から撮影したほうが全体にすっきりした描写になったと思いますが、ぼかし過ぎると周囲にあるスーッと伸びた細い葉っぱの印象が薄れてしまうので悩ましいところです。

キバナコスモス(黄花秋桜)

 コスモスもすっかり日本の景色になじんだ外来種の一つですが、近年、キバナコスモスがとても増えてきたように感じています。もともとは園芸品種だったようですが、野生化してしまったものも多いと聞きます。コスモスという名前がついていますが、赤紫やピンク、白色をした一般的なコスモスとは同属ではあるが別種のようです。
 また、キバナコスモスは開花している期間がとても長い印象があり、普通のコスモスがすっかり枯れてしまった後でも咲き続けています。公園の花壇や道端などでもよく見かける花の一つです。

 近所の公園に行った際、キバナコスモスを撮ったのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 Macro 135mm F4 1/30 EX1+3 PROVIA100F

 さすがに花の数はずいぶんと少なくなっていますが、わずかに残っている花に蝶がとまったところを撮りました。蝶のことは詳しくないのですが、シジミチョウだと思われます。もう、花に蜜も残っていないのではないかと思うのですが、小春日和の中、数少ない花をめぐって蜜を吸っていました。

 135mmのマクロレンズに接写リングをつけての撮影です。キバナコスモスの花芯の辺りに置きピンをして、蝶の頭部がそこに来た時にシャッターを切っています。
 逆光に近い状態で撮っているのでキバナコスモスの花弁は硬調な感じになってしまいました。背後にある白っぽい大きな玉ボケのようなものは、公園の遊歩道に設置されたステンレス製の柵の反射です。この玉ボケの中に蝶が入ってくれる瞬間を待ち続けたのですが、時間の経過とともに太陽が動き、玉ボケも移動していってしまうのでなかなか思うようにいきません。

エゾリンドウ(蝦夷竜胆)

 エゾリンドウは日本原産の野草で、山地の湿ったところでよく見掛けることができる秋の花のひとつです。背丈は50cmくらいから、大きいものでは1m近くになるものもあり、大ぶりの花をつけるので見応えがあります。日本の伝統色(和色)に「竜胆色」というのがありますが、色の名前に採用されるほど親しまれてきた花なのかも知れません。

 下の写真は長野県で見つけたエゾリンドウです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/60 PROVIA100F

 群落というほどたくさんは咲いていませんが、ポツポツと点在しているといった感じです。周辺は茶色くなった葉っぱが目立っていますが、エゾリンドウの花はまだしっかりとしており、鮮やかな竜胆色が健在です。
 春に咲くハルリンドウやフデリンドウの花はラッパのように開きますが、このエゾリンドウの花は開くことはないらしく、この写真のような状態を開花していると言うようです。

 この写真を撮影した日は曇りだったのでコントラストが高くなりすぎず、花の色が綺麗に出ていると思います。秋の花は柔らかめの光が似合っていると思います。
 ちなみに、右側に写っている丸い玉のようなものはエゾリンドウではなく、ユウスゲかキスゲの種子ではないかと思われます。愛嬌があったので入れてみました。

セイタカアワダチソウ(背高泡立草)

 北アメリカ原産のセイタカアワダチソウは、切り花としての観賞用に導入されたらしいのですが、今では嫌われ者の代表格のようになっています。関東では9月ごろから咲き始め、あちこちで大群落をつくっています。花が咲いている時期は長く、12月になってもまだまだ咲いています。観賞用ということだけあって咲きはじめの頃は綺麗な黄色をしていますが、徐々に黒っぽく薄汚れたような花色になり、そうなるとお世辞にも綺麗とは言い難い状態になります。
 背丈は2mを超えるほど大きくなりますが、それほど大きくならない群落もあって、どういう違いなのかはわかりません。

 秋も深まった頃、背丈がさほど大きくない群落があったので撮ってみました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm F4 1/60 PROVIA100F

 この写真は、上で紹介した菊を撮った場所に近いところで撮影したものです。霜が降りるほど冷え込む時期であるにもかかわらず花の色は鮮やかで、葉っぱも青々としています。セイタカアワダチソウだけを見ればとても晩秋の景色とは思えません。
 根もとのごちゃごちゃした部分を隠すために鮮やかに赤く染まった草を配し、バックに紅葉した山を入れて晩秋の雰囲気を出してみました。また、前景と遠景をぼかし、セイタカアワダチソウだけにピントが来るよう、離れたところから300mmのレンズでの撮影です。

 嫌われ者のセイタカアワダチソウですが、このような鮮やかな色合いで、これくらい控えめに咲いているのであれば、観賞用として持ち込まれたのも頷けなくもないといったところでしょうか。

ボタンヅル(牡丹蔓)

 ボタンヅルは8月から9月頃にかけて花が咲きます。名前の通り蔓性の植物で、薄いクリーム色の可愛らしい花をたくさんつけますが、有毒植物で家畜も近寄らないと言われています。杉林などに入ると杉の幹に絡まりついて咲いている光景を目にすることができます。杉の木の茶褐色とのコントラストも綺麗で、写欲をそそられる被写体ではあります。
 このボタンヅルは花が終わった後に実をつけるのですが、晩秋になると真っ白な綿毛に覆われて、花とはまた違った美しさがあります。

 下の写真はボタンヅルの綿毛を撮ったものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/30 EX3 PROVIA100F

 ボタンヅルはたくさんの花をつけるので、ここにつけた実が綿毛に包まれるとかなり見応えがあるのですが、この写真では数個の実だけをクローズアップしてみました。被写界深度を浅くするために接写リングをつけ、綿毛以外のところは極力ぼかすようにしています。
 画の右端が黒くなっていますが、撮影位置をもう少し左側に移動し、背景を真っ黒にすることで綿毛の白さを引き立てることも出来ます。しかし、そうすると晩秋の雰囲気がなくなってしまうので、秋色の占める比率を多くしてみました。
 真っ白な綿毛は逆光で見るとキラキラと輝いてとても綺麗なのですが、少しの風でも揺れてしまうため、撮影は無風かそれに近い状態の時が望ましいです。

フユザクラ(冬桜)

 正式名称はコバザクラ(小葉桜)というらしいのですが、10月後半から12月頃に咲くのでフユザクラと呼ばれています。しかも、冬だけでなく春、4月頃にも花をつける二季咲きというとても珍しい桜です。ソメイヨシノなどは開花してから1週間ほどで散ってしまいますが、このフユザクラは1ヶ月以上の長い間、咲き続けます。
 関東では群馬県藤岡市にある桜山公園が有名で、今の時期に訪れると紅葉とフユザクラのコラボレーションを見ることができます。

 この写真も桜山公園で撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm F8 1/60 PROVIA100F

 桜山公園は小高い山になっていて、そこにおよそ7,000本ものフユザクラがあるそうです。花はとても小ぶりで、ソメイヨシノの半分くらいしかないと思えるような可愛らしい花です。
 紅葉とのコラボレーションもちょっとした違和感があって面白いですが、日陰になって暗く落ち込んだ山肌(たぶん、秩父の山並みと思われます)をバックに、真っ白な花だけを逆光で撮ってみました。ちょっと絞り過ぎた感じです。
 桜の撮影というと多くの場合は下から見上げるアングルが多くなってしまいますが、この桜山公園は斜面にたくさんの桜の木があるので、上から見下ろすようなアングルや高いところの枝先を目線のアングルで撮ることができます。

シオン(紫苑)

 この写真は道端で偶然に見つけたもので、たぶん、シオンの仲間、もしくはアスターの仲間、俗にいう宿根アスターではないかと思うのですが定かではありません。自生種なのか園芸種なのかもわかりません。シオンの仲間だとするともとは自生種だった可能性もありますが、シオンの自生種は絶滅危惧種らしいので、やはり園芸種の可能性が大でしょう。いずれにしろ、道祖神のような月待塔のような石塔の脇に植えられていましたので、毎年ここで花を咲かせるのだろうと思います。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 165mm F2.8 1/60 EX1 PROVIA100F

 葉っぱはだいぶ枯れてきていますが花はまだ元気に咲いています。花の色のせいなのか、葉っぱが茶色いせいなのか、写真では花がカサカサしたように感じられますが、実際にはみずみずしさを保っています。シオンの仲間は花の数が多いので見栄えがしますが、それだけを撮っても面白みに欠けてしまいます。傍らの石塔を入れることで里山のような感じが出せればとの想いで撮ってみました。
 実際にはもっと明るい感じだったのですが、明るすぎると晩秋の感じが出ないので露出は若干アンダー気味にしています。
 バックは畑ですが人工物などもあったため、大きくぼかして色だけがわかるようにしてみました。もう少しバックが暗くなってくれるとありがたかったのですが。

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 晩秋から冬にかけて元気に咲く花というとサザンカ(山茶花)やツバキ(椿)を思い浮かべますが、それらの花とは対極にある寂しさや侘しささえ感じるような花もたくさんあります。その多くは最後の輝きを放っている花かも知れませんが、そういう花たちの持つ美しさというものも確かにあります。この時期は木々の葉っぱも落ちて殺風景な感じになってしまいますが、そんな時期だからこその被写体といえるのかも知れません。
 春や初夏のように積極的に花を撮りに行こうという思いになり難いのも事実ですが、晩秋の色合いというのもなかなか味わい深いものだと思います。

(2023.11.20)

#PENTAX67 #PROVIA #プロビア #ペンタックス67 #野草 #花の撮影

ローライ Rollei RPX100 モノクロフィルムの使用感 ACROSⅡの代替フィルム探し

 6月に富士フイルムの製品が大幅に値上げされ、私も愛用していたACROSⅡも信じられないくらいの価格になりました。新宿の大手カメラ量販店では、ブローニー(120)サイズのフィルムが1本2,310円で販売されています(2023年7月18日現在)。フィルム等を専門に扱っている通販サイトではそれよりもだいぶ安い価格で販売されていますが、それでも1本1,500円以上です。
 私の場合、ACROSⅡはイルフォードのDELTA100に次いで使用量が多いので、今回の大幅な値上げによるダメージはとても大きいです。そこで、もっと安い価格でACROSⅡの代替となるフィルムがないかということで探し始めました。ACROSⅡと同じような写りのフィルムはたぶんないだろうと思われますが、手始めにローライのRPX100を使って撮影をしてみました。

 誤解のないように追記しますが、ACROSⅡに対する絶対神話を持っているわけではありません。使い慣れてきたフィルムと同じような特性を持ったフィルムがあればということで、可能性のありそうなものを探してみたいというレベルです。

中庸感度ISO100のパンクロマチックモノクロフィルム

 RPX100フィルムに関していろいろなサイトを見てみると、概ね共通して書かれているのが、超微粒子とか素晴らしいシャープネス、あるいはなだらかな階調といった内容で、モノクロフィルムとしては優等生的な印象を受けます。実際にRPX100で撮影した作例を見ると、確かに黒の締まりもよさそうで、豊かな階調が表現されているという感じがします。
 また、フィルム感度はISO100ですから、いちばん使い易い感度であると言えますし、現像に関するデータを見てもEIは1000まで対応できるようなので、応用範囲の広いフィルムと言えると思います。

 私はローライのRPXシリーズというと黒いパッケージが思い浮かぶのですが、今回2本だけ購入した際のパッケージは白をベースに黄緑色を用いたデザインの箱でした。詳しくは知らないのですが、パッケージデザインが新しくなったのかも知れません。
 ちなみに、私が購入した時(2023年6月下旬)は通販サイトで1本1,280円(税込)でしたが、10本セットで購入すれば1本あたり1,199円(税込)ですので、割安感はあります。

 ローライのフィルムを製造しているのはイルフォード製品を製造している会社と同じハーマンテクノロジー社ですし、富士フイルムがOEMのような形でACROSⅡの製造を委託しているケントメアもハーマンテクノロジーに買収されているので、もしかしたらACROSⅡに似た写りになるかも知れないというかすかな期待が頭をよぎりましたが、ACROSⅡのレシピは富士フイルムがしっかり握っているでしょうから、製造会社が同じとはいえ、別物と思うべきでしょう。

イルフォード ILFORD のID-11で現像

 現像液は使う頻度が最も高いイルフォードのID-11を使用しました。使用する現像液で仕上がりはずいぶん変わってきますが、いろいろな現像液で試してみるよりは、使い慣れた現像液でACROSⅡと比較したほうが手っ取り早いだろうということで、まずはID-11で確認をしてみることにします。
 ID-11を使ってRPX100をEI100で現像する場合、現像時間は以下のように推奨されています。

  ・stock : 9分 (20℃)
  ・1+1 : 12分 (20℃)
  ・1+3 : 20分 (20℃)

 今回はstockで9分としました。

 このところの猛暑で室内温度もかなり上がっていて、液温を20℃に保つには冷やし続けなければなりません。深めのバットに氷水を入れて、この水温が18℃くらいになるように調整しながら現像液の温度管理を行ないます。大きめの氷をバットに入れてもあっという間に溶けてしまい、そのままにしておくと液温がどんどん上昇してしまいます。冬場、気温が低いときに温める方がはるかに楽です。

 イルフォードのID-11は何箱か買い置きしてあるのですが、これもご多分にもれず値上がりしていて、私が最後に購入した時に比べ、現在は1.5倍以上の価格になっています。
 同じくイルフォードからPERCEPTOLという現像液が販売されていて、こちらの方が1割ほど安く購入できるのですが、PERCEPTOLは低感度用ということになっています。ISO100フィルムであれば特に問題はないと思いますが、買い置きのID-11がなくなったらPERCEPTOLに変更するかもしれません。

風景撮影の作例

 さて、今回購入したRPX100を2本使って撮影をしてみましたので、何枚かご紹介します。今回の撮影に使用したカメラは、中判のPENTAX67Ⅱと大判のWISTA 45SPです。WISTA 45SPにはロールフィルムホルダーを装着しての撮影です。

 まずは、私が撮影対象としている被写体としていちばん多い自然風景の作例です。
 1枚目は山梨県で撮影した渓流の写真です。

▲WISTA 45SP APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 3s

 大きな岩の間を縫うように流れる渓流を撮影してみました。
 水の流れよりも岩の比率を多くして、岩の表情が良くわかるようにとの意図で露出を決めています。明るくなりすぎると岩の重厚感が薄れてしまうので、露出は若干抑え気味にしています。
 右下手前の岩までの距離は3mほどで、この岩から右上奥の木々までピントを合わせるため、カメラのフロント部でティルトアオリをかけています。
 どんよりとした曇り空のため、露光時間は長めになってしまいますが、流れの軌跡が残るギリギリのシャッター速度にしています。

 写真の印象としては、黒がとても綺麗に出ているという感じです。キリッと締まった黒というよりは、やわらかくて厚みのある黒と言ったら良いのかも知れません。そのため、平面的になり過ぎず、立体感のある画になっています。岩の表面の感じや奥行き感が良く出ていると思います。
 また、黒から白へのグラデーションや中間調も綺麗に出ているのではないかと思います。中間調が出過ぎるとインパクトの弱い写真になりがちですが、全体的に黒の比率が多いせいか、それほど気になりません。

 2枚目の写真は同じく山梨県で偶然見つけた滝です。

▲WISTA 45SP FUJINON CW105mm 1:5.6 F32 4s

 周囲はうっそうとした木々に囲まれていて、かなり薄暗い状態です。晴れていれば滝つぼに光が差し込むかもしれませんが、滝を撮るにはこのような曇天の方が向いていると思います。
 滝が流れ落ちている崖や滝つぼに転がっている岩、滝の両側の木々などのほとんどが黒く落ち込んでいて、滝とのコントラストがとても高くなっています。とはいえ、木々の葉っぱや岩の表面の凹凸など、ディテールにおける中間調はしっかりと表現されており、ベタッとした感じにならず、強いシャドー部の中にも柔らかさが感じられます。

 掲載写真ではわかりにくいと思いますが、滝の向かって左側のごつごつとした岩や、滝上部の木々の葉っぱなど、細部にわたってしっかりと認識できるだけの解像度もあると思います。
 また、流れ落ちる水のところのグラデーションもとてもなだらかで、ふわっとしたボリュームを感じる描写になっています。

街角スナップ撮影の作例

 次の作例はスナップ写真です。
 まず1枚目は路地裏のようなところで見つけた猫の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 105mm 1:2.4 F5.6 1/60

 毛並も綺麗だし、人相も悪くなく、目つきも優しげなので飼い猫だろうと思いますが、しっかりとこちらを警戒した顔つきになっています。
 猫の背後にある自転車は放置されたもののようで、強制撤去の紙が貼られています。
 あまり近づくと逃げられてしまうだろうと思い、猫が逃げ出す体制に入る前のほどほどの距離で撮影しました。

 この写真は黒や白の比率が少なく、全体的に中間調で占められていますが、締まりのある描写という印象です。同じ場所をACROSⅡで撮影していないので比較はできませんが、ACROSⅡはもう少し軟調な感じになると思われます。
 また、地面のコンクリートの質感や、自転車の背後にある鉄板で作られたと思われる箱のようなものの表面の凹凸なども良くわかるくらいの描写力は立派だと思います。
 建物の陰で直接の日差しが入り込んでいませんが、平面的にならず奥行き感があります。

 ちなみに、PENTAX67Ⅱのシャッターを切った瞬間、その音に驚いて猫はどこへやら行ってしまいました。

 スナップ写真の2枚目は、御茶ノ水駅の近くにある湯島聖堂で撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 55mm 1:4 F5.6 1/125

 湯島聖堂への入り口である入徳門の外から、大成殿とそこに上る石段を撮りました。
 門自体が黒く塗られていて光も当たっていないのに対して、門の内側は明るく、非常にコントラストの高い状態です。門の内側だけ見れば完全に露出オーバーです。
 散歩にでもいらしたのか、ご夫婦と思われる年配のお二人連れがいいポジションに立ち止まられたので撮らせていただきました。

 写真の上部と左右はかなり暗く落ち込んでいますが、つぶれることなく微妙な明暗差が写っています。やはり、この暗部の黒の出方は独特な感じです。硬くなりすぎず、やわらかさが感じられます。
 また、石段やその両側の木々は白く飛んでしまっていますが、大成殿の壁などは中間調で綺麗に表現されています。さすがに石畳のハイライト部分の中間調描写には無理がある感じですが、これくらいであれば石の質感は何とか読み取れます。

夜景撮影の作例

 長時間露光による夜景撮影がどんな感じに仕上がるかということで、隅田川の夜景を撮ってみました。
 まずは、アサヒビール本社ビル屋上のオブジェと吾妻橋を撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 105mm 1:2.4 F22 30s

 いちばん目を引くビル屋上のオブジェですが、下側からライトアップされているので上側に行くにつれて暗くなっています。このグラデーションがとても綺麗に描写されていると思います。照明が直接当たっている正面の部分は飽和してしまっていますが、滑らかな曲線で作られている立体感が良くわかります。
 一方、照明が落ちたビルの壁面や首都高の高架下などはこってりとした黒で描写されていますが、高い解像度によるものなのか、ディテールが残っていてベタッとした感じはありません。
 また、右側の高層マンションや首都高の高架壁など、暗い中にも中間調がしっかりと出ているのがわかります。

 さてもう一枚は同じく隅田川にかかる厩橋の夜景を撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 75mm 1:4.5 F22 30s

 空も真っ暗、橋の下も真っ暗といった状態で、一見するととてもハイコントラストな写真に感じます。確かに橋のアーチ部分の輝度が高いので明暗差がはっきりと分かれている写真ですが、アーチを支えている支柱の辺りを見るととても綺麗な中間調が出ています。白と黒だけで塗り分けられたのとは全く違う、鉄骨とは思えない柔らかさを感じます。
 黒の描写も「真っ黒」ではなく、わずかに光を含んだ黒という感じがします。うまく表現できないのですが、真っ黒に塗られた壁ではなく、真っ黒な煙幕とでも言えば良いのでしょうか。ハイライト部分もぎらついた感じではなく、やはり柔らかさを感じる描写です。

 風はほとんどなく水面も穏やかでしたが、長時間露光なので波による複雑な模様として写り込みます。この波頭一つひとつがわかるのではないかと思えるくらいの解像度ではないかと思います。

ACROSⅡに似ているところもあるが、ACROSⅡとは別物のフィルム

 今回、2本のRPX100で撮影してみていちばんの印象は黒の出方に特徴があるということです。
 前の方で何度も書きましたが、カチッとした真っ黒ではなく、わずかに光を含んだ黒であって、それが視覚的にどことなく柔らかさを感じさせてくれるのではないかと思います。これは裏返せば黒の締まりが弱いと言えるのかも知れませんが、それは好みにもよると思います。私はイルフォードのDELTA100のような締まりのある黒の出方が好きで多用していますが、それに比べると若干軟調気味に感じられるRPX100の描写ですが、これはこれでとても美しいと思いました。

 RPX100の特性がDELTA100とACROSⅡのどちらに似ているかというと、若干、ACROSⅡに近いと思います。ですが、明らかにACROSⅡとも異なる描写をするフィルムだと思います。解像度も申し分ない、階調も豊かでなだらかですが、ACROSⅡとは明らかに違う感じがします。何が違うのかと問われてもうまく答えられないのですが、パッと見た時にACROSⅡの方がすっきりとした描写に感じられる気がします。ACROSⅡに比べるとRPX100の方がこってりとしている感じです。理由はよくわかりませんが、やはり黒の出方が影響しているのではないかと思います。
 といっても、RPX100の描写が野暮ったいということではありません。むしろ、かなりレベルの高い描写性能を持ったフィルムではないかと思います。

 RPX100が硬調か軟調かと言われると、どちらかというと軟調寄りのフィルムではないかと思いますが、ACROSⅡの持っている描写特性とは違う軟調系という感じです。厳密に比較したわけではないのではっきりとは言えませんが、RPX100に比べてACROSⅡの方が、中間調の範囲が広いように思います。強いて個人的な見解をこじつければ、DELTA100とACROSⅡの中間的存在といった感じでしょうか。

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 RPX100がACROSⅡの代替フィルムになるかというと、無条件にそういうわけにはいかないと思いますが、比較的近い特性を持っているようにも感じます。
 もちろん、撮影対象とする被写体によっても描写特性は違って見えるので、安易に結論を出すつもりはありませんが、RPX100のポテンシャルは十分に高いという印象を持ちました。また、現像液や現像条件を変えれば見た目も変わってくるであろうことは想像に難くありません。
 そして何よりもフィルムの描写特性は好みのよるところが大きいので、一概に良し悪しをつけることも出来ません。

 ACROSⅡと同じような特性を持ったフィルムが存在しないことがACROSⅡのアイデンティティかも知れませんが、そう考えると富士フイルムの存在意義はやはり大きいと言わざるを得ません。
 ACROSⅡの代わりに別のフィルムを使うか、その結論が出るのはもう少し先になりそうです。ただし、RPX100のポテンシャルの高さは十分に認識しましたし、今後も使ってみたいフィルムであると実感したのも事実です。

(2023.7.20)

#RPX100 #ACROS #PENTAX67 #WISTA45 #ウイスタ45

なぜフィルム写真に心がときめくのか? 不思議な魅力を持ったフィルムという存在

 写真フィルムの出荷量がピークだったと言われている西暦2000年から23年が経過し、その量は1/100にまで減少したというデータもあるようですが正確なところは良くわかりません。しかし、減少していることは間違いのないことだと思われ、フィルム価格の相次ぐ値上げや製品の生産終了などを受け、フィルム写真を断念してしまう人も多いという話しも聞きます。
 ネット上のいろいろなサイトを拝見すると、いまどきフィルム写真をやるなんて何の意味があるのかとか、愚の骨頂とか書かれている記事もたくさんありますが、私はいまだにフィルム写真をやめられずにいます。今の時代からすると化石のような存在かも知れません。

 デジタルカメラやデジタル写真の進歩にはすさまじいものがあります。しかし、フィルム写真と比較するようなものでもないし、また、比較しても特段意味があるとも思えませんが、解像度や見た目の綺麗さなどではデジタルの方がはるかに勝っていると思えることもたくさんあります。また、フィルムカメラではとても難しいとか、たぶん無理と思えるようなもの(被写体)であっても、今のデジタルカメラであれば容易に写すことができるということがたくさんあります。

 私が住んでいる近くに大きな公園があり、そこにオオタカが営巣している木があります。時どき、散歩がてらその木の近くを通ることがありますが、たくさんの人がまるでバズーカ砲のようなレンズを装着したカメラを三脚に据えて、全員が同じ方向を向けて撮影をしている光景を見ることができます。
 私は野鳥を撮るようなことはありませんし、そのような機材も持ち合わせていないので、皆さんの邪魔にならないように後ろの方に立ってレンズが向いている方向の木の上に目を凝らし、肉眼でオオタカの姿を探しています。
 オオタカに限らず野鳥というのは常に我々の目の前に姿を現してくれるわけではないし、運よく飛んできても長居はしてくれないので撮影チャンスはごく短い時間に限られてしまいます。私などは鳥の姿が見えなければ10分もしないうちに飽きてしまいますが、野鳥を撮られる方は何時間でもじっとチャンスを待っています。そう考えると、野鳥撮影をする皆さんの忍耐力には頭が下がります。
 そして、待ちに待ったオオタカが姿を現すと一斉にシャッターが切られ、その音があたりに響き渡ります。しかも、1秒間に10コマ以上は切られているのではないかと思えるほどの高速連射です。
 このような写真は私が持っている半世紀も前のフィルムカメラでは絶対に撮れません。まさにデジタルカメラならではです。

 野鳥の撮影は一つの例ですが、そんなデジタルカメラの凄さや便利さを承知しながらも、私はフィルム写真から離れられずにいます。
 では、なぜフィルム写真に拘っているのかと問われても、正直なところ、うまく答えを返すことができません。それは、理由が一つではないこともありますし、言葉でうまく表現できないということもあります。

 私が使用しているフィルムの7~8割はカラーリバーサルフィルムです。リバーサルフィルムはネガフィルムと違い、現像が上がった時点で完成となります。ですので、現像後のポジをライトボックスで観賞できるわけですが、これが最高に美しいと思っています。
 昔はポジ原版から直接プリントするダイレクトプリントと呼ばれるサービスもありましたし、今はスキャナで読み込んでプリントすることも出来ます。しかし、どんなに熟練したプロの職人さんがプリントしたものであっても、ライトボックス上の透過光で見た時の美しさにはかないません。また、プリントした写真よりもポジ原版を直接見た方がはるかに立体感のある写真、そして透明感のある写真に見えます。
 私が初めてリバーサルフィルムで撮影したのは今から何十年も前のことですが、初めてポジ原版を見た時の感動は忘れることがなく、今もポジ原版を見ると胸が高鳴ります。
 実際には常にポジ原版を鑑賞しているなんていうことはなく、プリントしたものを額装しているわけですが、見ようと思えばいつでもライトボックス上でポジを鑑賞できるということは何ものにも代えがたい魅力であることは間違いありません。

 では、モノクロネガフィルムの場合はどうかというと、もちろん、リバーサル現像でもしない限りは白黒が反転したネガ原版ですから、ライトボックス上で見てもリバーサルフィルムのように完成形を見ることはできません。しかし、立体感のようなものはネガ原版であっても十分に感じられますし、白黒反転していても脳がさらにそれを反転してくれるというか、普通に肉眼で見た時と同じように感じられるから不思議です。

 そして、カラーリバーサルにしてもモノクロネガにしても、フィルムという物理的な媒体を直接見るとまるでその場にいるかのような錯覚を憶えます。臨場感というのともちょっと違うのですが、撮影した空間をそっくりそのまま持ってきたという感じです。これもプリントしたものやパソコンのモニタに映した画像では味わえない感覚です。

 フィルム写真は、デジタルカメラのように撮影したその場で出来具合を確認するということはできません。これは、デジタルカメラに慣れてしまうと何とも不便なことに思えるかもしれませんが、シャッターを切った瞬間に自分の思い描いた映像がフィルムに記録されているかと思うと、ワクワクともドキドキともつかない不思議な感覚に包まれます。常に思い通りに撮れるわけではなく、予想に反した写真になってしまうこともあるわけですが、それも含めたワクワクやドキドキだと思います。
 失敗したら高いフィルムが1枚無駄になってしまうということもありますが、何よりも、今と同じ写真は二度と撮ることができないという緊張感のようなものが高揚感となって頭を持ち上げてくるように思います。特に自然相手の風景写真の場合、明日、また同じ場所に来ても同じ写真は絶対に撮れないわけで、余計にそれが強いのかもしれません。
 デジタルカメラのように、撮ったその場で確認できればどんなに便利かと思うこともありますが、現像が上がるまでの間、出来具合をあれこれ思いめぐらす時間、焦らされるような時間があるというのもフィルムならではです。
 二度と同じ写真が撮れないのであれば、失敗してもすぐに撮り直しのきくデジタルカメラの方に100%の分があるというのは承知しているのですが、フィルムに記録されるという物理的な現象には媚薬のような効き目があり、これに抗うことはできません。
 以前、この話を友人にしたところ、「お前、変わってるな」と言われたことがありました。自分ではそんなに変わっているとは思っていないのですが...

 フィルムの価格が今のように高額でないときはカラーリバーサルフィルムの現像も自分で行なうこともありました。しかし、なかなか発色が思うようにいかず、いまはプロラボに依頼をしています。一方、モノクロフィルムは自分で現像していますが、リバーサルにしてもネガにしても、現像工程を終えて現像タンクからフィルムを取り出したときに像が形成されているのを見るとやはり感激します。無から有が生成されるマジックを見ているような感じで、しっかりと説明のつく化学変化だとわかってはいても感動の瞬間です。
 撮影の時にイメージしたものがしばらくの時間をおいた後、像となって表われ、それを手に取ることができる不思議な感覚、私にとって心をときめかせるには十分すぎる事象だと思っています。

 さて、上でも書いたように、最近のデジタルカメラは驚くほど高精細で綺麗な写真が撮れます。写真は解像度がすべてではないと思いますが、それでも高解像度で綺麗であることを否定する理由は何もありません。そのようなデジタルカメラで撮った高解像度の写真に比べると、フィルム写真はちょっとざらついた感じがします。整然と並んだ撮像素子と、ランダムに配置された乳剤粒子(ハロゲン化銀粒子)の違いによるものが主な理由だと思いますが、私はフィルムのちょっとざらついた感じが好きです。

 ざらついていると言ってもかなり拡大しないとわからないので、デジタルカメラとフィルムカメラそれぞれで、同じ被写体を同じレンズを使って、同じ位置関係で撮影してたものを比較してみます。
 私が1台だけ持っているデジタルカメラはだいぶ前のもので、撮像素子はAPS-Cサイズ、約1,600万画素という、今ではかなり見劣りのするカメラです。そして、比較用に使ったのは中判のPENTAX67です。これらのカメラにPENTAX67用の135mmレンズを装着し、同じ位置から同じ被写体(桜)を撮影しました。
 そして、67判のポジ原版をデジタルカメラの1画素とほぼ同じ大きさになるような解像度(約5,420dpi)でスキャンします。写る範囲が67判の方が圧倒的に広いので、その画像データからデジタルカメラで撮影できるのとほぼ同じ範囲を切り出してみました。

 1枚目がデジタルカメラで撮影したもの、2枚目がフィルムカメラで撮影後、スキャンして切り出したものです。

▲デジタルカメラで撮影
▲フィルムカメラで撮影後、スキャンして切り出し

 画像処理のアルゴリズムなどの影響を受けていると思いますので2枚の写真に色調の違いはありますが、それを無視してもこうして比較すると、デジタルカメラで撮影した写真の方が滑らかな感じがすると思います。

 では、拡大してみるとどうかということで、画中央のまだ開ききっていない花の辺りを拡大したものが下の写真です。同じく1枚目がデジタルカメラで撮影したもの、2枚目がフィルムカメラで撮影したものです。

▲部分拡大 デジタルカメラ
▲部分拡大 フィルムカメラ

 明らかに違いが判ると思います。デジタルカメラ(1枚目)の方が全体に滑らかで、細部までくっきりと描写されているのがわかります。
 一方、フィルム(2枚目)の方は全体的にざらついた感じがしますが、これはフィルムに塗布された色ごとの乳剤粒子が重なっているため、それによって複雑な色の組合せが生まれていることが理由だと思われます。デジタルに比べてはるかにたくさんの色数が表現されていますが、これがざらついた感じに見えるのだと思います。
 デジタルの撮像素子とフィルムの性能比較をするつもりはなく、生成される画の違いを見ていただければと思います。

 ざらついていると言っても、中判フィルムから全紙くらいの大きさに引き伸ばしプリントした程度ではざらつきはほとんど感じられません。超高感度のフィルムを使ったときの粒子の粗さによるざらつきとは全く別物で、豊かな色調からなる画の奥深さのようなものを感じます。 
 個人的にはこのフィルムのざらついた感じが好きで、それがフィルムの魅力の一つでもあります。

 このように、私はいろいろなところでフィルムの魅力を感じていて、しかも、それらが相乗効果で押し寄せてくるので、そう簡単にフィルムに踏ん切りをつけることができないというのが正直なところです。もちろん、フィルム価格や現像料の高騰は大打撃ですが、ごくごく些細な工夫をしながらでも、フィルムを使い続けたいという気持ちがあります。
 私はフィルムと日本酒の保管専用に小型の冷蔵庫を使っていますが、扉を開けた時にフィルムと日本酒が並んでいるのを見ると幸せな気持ちになります(なぜ、フィルムと日本酒が同居しているのかという突っ込みはしないでください)。使用前のフィルムのパッケージを眺めていると、それだけでどこかに出かけて撮影しているときの映像が頭の中に浮かんできます。まるで、うなぎを焼くときの煙でご飯を食べることができるおっさんみたいですが、私にとってはそれくらい魅力的な存在です。

 現在、冷蔵庫に保管されているフィルムは1年~1年半ほどで使い切ってしまいそうな量です。今の品薄状態と高額には閉口しますが、切らさないように何とか補充し続けていきたいと思っています。

(2023.6.5)

#PENTAX67 #ペンタックス67 #リバーサルフィルム #ライトボックス

山笑う 初夏の輝く新緑を撮る

 俳句の春の季語に「山笑う」というのがあります。山の草木が一斉に若芽を吹いて、山全体が明るい景色になる様子を表現した言葉と言われています。それまでは幹や枝ばかりで寂しげだった山が一変する様子を見事に表現していると思います。
 確かに初夏の山の色合いは鮮やかでやわらかで、何ともいえない美しさがあります。日を追うごとにその色合いは濃さを増していき、若葉の色を愛でることのできる期間は長くはありません。秋の紅葉のような華やかさはありませんが、新緑を見ていると生命のエネルギーを感じます。
 そんな初夏の新緑を撮ってみました。

 ちなみに、夏の山を形容する季語は「山滴る」と言うそうです。あらためて、日本語の豊かな表現に感じ入ってしまいます。

芽吹きを撮る

 木の種類によって若干の違いはあるものの、まるで申し合わせたように一斉に芽吹いて、森全体が淡い黄緑色に染まっていきます。硬かった芽が膨らんで芽吹きが始まると、わずか数日ですべての葉っぱが開ききってしまいます。
 下の写真はカエデが芽吹いて間もないころに撮影したものですが、まだ開ききっておらず、畳んだ傘のような恰好をしています。少し前までは茶色っぽい硬い芽だったにもかかわらず、そこからこんなに大きな葉っぱが出てくるのですから、まったくもって自然の力は偉大で不思議です。見ようによってはさなぎから羽化したばかりの蝶のようにも見えます。

▲PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F5.6 1/60 Velvia100F

 背後にはブナやクヌギなどの木があり、いずれも芽吹きが進んでいて、褐色の木の幹や枝ととても美しいコントラストをつくり出しています。どれも同じような淡い黄緑色ではありますが、種類によって微妙に色合いが異なっていて、そのグラデーションもとても綺麗です。

 このような写真を撮る場合、被写界深度を深めにして出来るだけ多くの若葉にピントを合わせるか、逆に被写界深度を浅くして、ごく一部の若葉だけにピントを合わせるか、悩むところです。前者の場合は状況がわかる写真になりますが、若葉が背景に埋もれ易くなってしまいます。また、後者の場合、若葉は浮かび上がってきますがその場の状況はわかりにくくなってしまいます。
 新緑の風景として撮るのであれば、ある程度の広範囲を写す必要がありますので、森全体が芽吹きの時期を迎えているということがわかりつつも、出来るだけ多くのカエデの若葉にピントを合わせたいということで撮りましたが、もう少し背景をぼかしたかったというところです。

 もっと広い範囲で森の芽吹きの様子を撮ろうと思い、撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC PENTAC67 55mm 1:4 F16 1/15 Velvia100F

 この写真は露出をかなりオーバー気味(+2段ほど)にしています。実際の森の中はこの写真ほど明るくはないのですが、若葉を明るく写したかったので思い切って露出をかけてみました。木々の幹の色も白っぽくなり重厚さが失われておりますが、この時期の爽やかな感じを狙ってみました。しかし、やはり全体に飛び気味です。

新緑の大樹を撮る

 大樹というのはそれだけで存在感に溢れていて、四季を通じて魅力のある被写体の一つです。
 このような大きな木の全体を撮ろうとすると、被写体からかなり離れなければなりません。しかしそうすると、ぽつんと生えている一本桜のようなものでもない限り、周囲の木々も写り込んでしまい、焦点の定まらない写真になってしまいます。
 ですが、周囲を大きな木に囲まれていてもまさに紅一点の例えのように、その一本だけが異彩を放っていると遠くからでもとてもよく目立ちます。

 これはケヤキの大木ではないかと思うのですが、周囲を杉などの針葉樹に囲まれている中でとても目立った存在でした。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON T400mm 1:8 F32 1/30 PROVAI100F

 逆光に近い状態であり、ほぼ真上方向から太陽の光が差し込んでいて、開いたばかりの若葉が黄色く輝いています。周囲が黒っぽく落ち込んだ色調なので一層目立っています。
 隣にある若干赤っぽく見える木は山桜ではないかと思うのですが、定かではありません。

 この木がある場所は山の北側の急斜面です。それを数百メートル離れた場所から望遠レンズで撮りました。若干短めのレンズを使って、もう少し広い範囲を写した方が窮屈さがなくてよかったかもしれませんが、大樹の存在感を出すにはこれくらいの大きさの方が望ましいようにも思います。
 周囲の杉は植樹されたものだと思いますが、このケヤキや桜だけは伐採されずに昔からここにあったのでしょう。神が宿っているのではないかと思える大樹です。

川面への映り込みを撮る

 渓流や滝などに限らず、水の流れを見るとなぜか無性に撮りたくなります。何故そう思うのか、うまく説明できないのですが、水は命をはぐくむためになくてはならないものだということがそう思わせるのかも知れません。
 もちろん、植物にとっても水は欠かせない存在であり、水と植物の組合せというのは不思議な魅力があります。雨上がりの生き生きとした植物の姿はその代表格かも知れません。
 また、湖面などに写り込んだ景色も素敵で、単に樹だけを見ているよりも趣を感じるから不思議なものです。

 下の写真は清流の上に張り出している木の枝ですが、そこにに光が差し込み、川面に写り込んでいる状態です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W250mm 1:6.3 F22 1/60 Velvia100F

 この川は水がとても綺麗で、川底の石の一つひとつがわかるくらいです。水深も浅いうえに流れが穏やかなので、まるで湖面のように新緑を映し込んでいます。若葉を透過してきた黄緑色の光が川面に降り注いでいるため、水が黄緑色に染まっているように見えます。それどころか、この渓流全体の空気までも黄緑色に染まっているような錯覚を覚えます。
 黄緑色の光の感じを損なわないように露出はオーバー目にしていますので、若葉はかなり飛び気味です。少々、葉っぱの質感が失われてしまっていますが、葉っぱを適正露出にすると全体が暗くなってしまい、全く雰囲気の異なる写真になると思います。

 夏になり、葉っぱも濃い緑になるとこのような輝きは見られなくなてしまいます。それはそれで違った美しさがありますが、葉っぱ自体が発光しているような輝きを見ることができるのも新緑ならではです。

多重露光で撮る

 一口に多重露光と言ってもその表現方法は様々で、全く違う画像を重ね合わせるアート的なものもありますが、私が時々撮るのは、同じ場所で複数回の露光をするという最も簡単な方法です。もちろん、同じ場所で複数回の露光をするだけでは露光時間を長くしたのと変わらないので、1回目と2回目の露光でピント位置を変えて行ないます。ピントを外して露光するとぼやけるので、これを重ね合わせるとソフトフォースレンズで撮ったような雰囲気の写真になります。

 新緑の中にツツジ(たぶんミツバツツジではないかと思います)が一株だけ咲いていたので、これを多重露光で撮ってみました。

▲KLinhof MasterTechnika 45 FUJINON W150mm 1:5.6 F32 1/60、F8 1/250

 1回目は被写界深度をかせぐために出来るだけ絞り込んで撮影し、2回目は少しピントを外し、絞りも開いて撮影しています。
 2回とも適正露出で撮影すると結果的には2倍の露出をかけたことになり、若干露出オーバーになりますが、この新緑の鮮やかさを出すためにその方が望ましいだろうということで補正はしていません。
 また、2回目は前ピン(近接側)に外しているので、周辺部の方が画のずれが大きくなり、大きくボケているような印象になりますし、暗いところよりも明るいところのボケの方が大きく感じられます。

 このような多重露光の方法の場合、ぼかし具合と露出のかけ方によってずいぶんと印象が変わってきますが、全体的に柔らかな感じになるのと、メルヘンチックな描写になる傾向があります。被写体によっても印象が変わりますので、いろいろ試行錯誤してみるのも面白いかも知れません。

マクロで撮る

 マクロ写真はまったく違った世界を見せてくれるので、その魅力に取りつかれてしまうことも多いのではないかと思います。だいぶ前になりますが私もマクロ撮影にはまってしまい、一時期はマクロ撮影ばかりやっていたことがあります。私の場合、その被写体のほとんどは花でしたが、単に小さな世界を写し取るというだけでなく、たくさんの表現手法を使うことができるのも魅力の一つかも知れません。

▲PENTAC67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 EX3 PROVIA100F

 上の写真は初夏に小さな白い花をつけるドウダンツツジです。公園の生け垣などにもよく使われているので身近な被写体といえると思います。
 朝方まで降っていた雨のため、葉っぱや花のあちこちに水滴が残っており、とてもいいアクセントになっています。また、水滴のおかげで玉ボケもできて、画に変化を与えてくれています。

 マクロ撮影の場合、被写界深度が非常に浅く、ピントの合う位置は一点のみといっても良いくらいですが、写り込む要素が多すぎると画全体がうるさくなってしまうので、主要被写体以外は出来るだけ大きくぼかしておいた方がすっきりとした写真になります。
 ドウダンツツジはたくさんの花をつけるので、画がゴチャゴチャしないように一輪だけひょんと飛び出した花を狙って撮りました。もちろん、前後に葉っぱもたくさんあるのですが、これらは大きくぼかして初夏の印象的な色合いになるようにしました。真っ白で清楚な感じのする花も綺麗ですが、新緑の鮮やかな色あいが爽やかさを感じさせてくれます。

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 新緑だからといって特別な撮影方法があるわけではなく、自分なりの表現手法で撮ればよいわけですが、いざ撮ろうとすると意外と難しいと感じるのも事実です。その美しさに自分の気持ちばかりが先走っているのかも知れません。
 自分の腕はともかく、新緑の美しさが格別なのは言うまでもありません。一年のうちのわずかの期間だけしか見ることのできない新緑の芽吹きは代えがたいものがあります。秋の紅葉も綺麗ですが、刹那の美しさという点では新緑は群を抜いているように思います。

 標高の低いところでは新緑の季節はすっかり終わってしまいましたが、高山に行けばまだ見ることができます。行くまでが大変ですが、高山の新緑はまた格別です。

(2023.5.15)

#PENTAX67 #Linhof_MasterTechnika #新緑 #ペンタックス67 #リンホフマスターテヒニカ

現像済みリバーサルフィルム(ポジフィルム)に付着する汚れと洗浄

 私はリバーサルフィルムの使用頻度が最も高く、現像済みのリバーサルフィルム(ポジ原版)はスリーブやOP袋に入れて保管してあるのですが、長年保管しておくとフィルム表面に汚れが付着してきます。これはリバーサルフィルムに限ったことではないのですが、ポジ原版をライトボックスに乗せてルーペで見ると目立ってしまうのでとても気になります。
 昔のようにポジ原版から直接プリントすることがなくなってしまったので、少々の汚れであればレタッチソフトで修正できるのですが、一枚しかないポジ原版に汚れが付着してしまうということが精神衛生上よろしくありません。

フィルムに付着する汚れ

 フィルムに付着する汚れの類いはいろいろあります。ホコリ、指先などの脂、カビ等々、汚れの原因は多岐に渡っています。
 ポジ原版を裸で放置しておけば当然のことながらホコリが積もってしまいます。通常、ポジ原版を裸で放置するということはないのですが、仮にホコリが付着したとしてもブロアなどでシュッシュッとやれば除去できるので、それほど目くじら立てるほどのことではないと思います。
 ただし、あまりたくさんのホコリが積もってしまうと取れにくくなってしまうこともありますが、しっかりと保管しておけば防げる問題です。

 また、ポジ原版を取り扱うときは専用のピンセット等を使いますが、つい、指で触ってしまうこともあり、そうすると指先の脂がついてしまいます。これはブロアでは取れないのと、そのままにしておくとカビが繁殖したりする可能性があるので、誤ってつけてしまった場合はフィルムクリーナーやアルコールで拭いておく必要があります。
 高温多湿などの環境で保管するとカビが生えることもあるという話しを聞きますが、私は自分が保管しているフィルムでカビを確認したことはありません。もちろん、すべてのコマをルーペで確認したわけではないので、もしかしたらカビが発生しているものがあるかも知れません。

 そして、私が最も厄介だと感じているのが、長期保管してあるポジ原版に黒い小さなポツポツとした汚れが付着してしまうことです。これはポジ原版を肉眼で見てもよくわからないことが多く、ルーペで見たりスキャナで読み取ったりするとしっかりと確認できます。
 ただし、長期保管してあるポジ原版のすべてにこのような汚れが付着するわけではなく、付着する方が極めて少数派なのですが、フィルム全面に渡って無数のポツポツが存在しているのを見るとため息が出ます。しかも、この黒いポツポツはブロアでは決して取れません。 

 実際に黒いポツポツが発生したポジ原版(67判)をスキャンした画像です。

▲PENTAX67 smc TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F22 1/125 RDP

 この写真を撮影したのは今から約30年前です。1コマずつカットしてOP袋に入れて保管していたものです。記憶が定かではありませんが、この30年の間にOP袋から取り出したのは数回だと思います。
 余談ですが、撮影から30年経って若干の退色はあると思うのですが、それでもこれだけの色調を保っているというのは、リバーサルフィルムのポテンシャルの高さだと思います。これはフジクローム(RDP)というフィルムで、現行品のPROVIAやVelviaと比べると非常にあっさり系の色合いをしたフィルムでした。

 上の画像は解像度を落としてあるのでよくわからないかも知れませんが、一部を拡大してみるとこんな感じです。

▲部分拡大

 明るくて無地の背景のところ(上の画像では空の部分)に発生しているのが良く目立ちます。空以外のところにも生じているのですが、被写体の中に埋もれてしまってわからないだけです。

 この写真と同じ日、同じ場所で、少しアングルを変えて撮影したものがあと5コマあるのですが、それらのコマにはこのような黒いポツポツの付着はごくわずかです。保管期間も同じ、保管条件も同じ、にもかかわらず、なぜこのように差が出ているのか、まったくもってわかりません。わずかな違いと言えばOP袋からフィルムを取り出した回数くらいのものでしょう。とはいえ、6コマのうちこのコマだけ、取り出した回数が特別に多かったとも思えません。たかだか数回の違いです。

 そもそも、この黒いポツポツとした汚れはいったい何なのか、どこから来たのか、ということが良くわかりません。カビではなさそうですし、指先でつけてしまった脂とも違います。ましてや、長期間保管されている間にフィルムの中から浮き出てきたとも思えません。

 正体を突き止めようと思い、この黒いポツポツを顕微鏡で覗いてみました。
 その写真がこちらです(わかり易いようにモノクロにしてあります)。

▲付着したごみの顕微鏡写真(200倍)

 顕微鏡の倍率は200倍です。ホコリともカビとも違う、微細なゴミのようなものがフィルムの上に貼りついている感じです。ゴミのようなものに焦点を合わせているので、バックのフィルム面にはピントが合っていません。このことからも、こいつはフィルムの上に乗っかっているのがわかります。
 また、フィルムの光沢面、乳剤面のどちらか一方だけということはなく、どちらの面にも存在しています。
 フィルム面に付着しているとなれば外部から入り込んだものに違いないと思うのですが、現像後、OP袋等に入れて以来、一度も取り出したことがないフィルムにも付着していることがあります。となると、OP袋に入れる際に付着した何かが、長年の間にフィルム面に貼りついてしまったと考えるのが自然かもしれません。
 いずれにしろ、この黒いポツポツをきれいにしないと気になって仕方がりません。何年後かに見てみたら増殖していたなんてことになったら最悪です。

フィルムの洗浄

 カビのようにフィルムの中の方まで侵食している感じはないので、洗浄すれば除去できるのではないかということで、汚れの付着が多いフィルムを5コマほど洗浄してみました。
 市販されているフィルムクリーナーの多くはアルコールが主成分のようなので、今回は消毒用アルコールを50%くらいに希釈して使用します。

 まずは、洗浄するフィルム(今回は67判)を20度くらいの水に10分ほど浸しておきます。
 流水でフィルムの両面を洗った後、フィルムの片面にアルコールを数滴たらします。数秒でフィルム全面にアルコールが広がっていくので、その状態のまま10秒ほど置きます。このとき、スポンジ等で軽くこすった方が汚れが落ちるかもしれませんが、フィルム面に傷をつけたくないのでそのままにしておきます。その後、流水でアルコールを流します。
 フィルムの反対の面も同様に行ないます。

 洗浄後は水滴防止液(今回は富士フイルムのドライウェルを使用しました)に30秒ほど浸し、フィルムの端をクリップ等で挟んでつるして乾燥させます。水滴防止液は少し粘度が高く、わずかにドロッとした感じのする液体のため、ホコリが付着しやすい性質があります。出来るだけホコリが立ちにくい浴室などにつるしておくのが望ましいと思います。
 なお、水滴防止液は規定の濃度の半分くらいでもまったく問題ありません。

 また、水滴防止液を使いたくないという場合は、水切り用のスポンジでそっとふき取る方法でも問題ないと思います。

 洗浄後のフィルムは乾燥過程でかなりカールしますが、乾燥が進むにつれて元通りの平らな状態に戻ります。

洗浄後のフィルムの状態

 こうして洗浄・乾燥させたフィルムですが、まずはライトボックスに乗せ、ルーペで確認してみたところ、黒いポツポツはほとんど消えていました。
 また、フィルムをスキャナで読み取ってみましたが、洗浄前と比べると見違えるほどきれいな画像が得られました。確認できた黒いポツポツはごくわずかで、それもルーペでは見えない非常に小さな点のような汚れで、この程度であればレタッチソフトで簡単に修正できます。アルコールに浸しておく時間をもう少し長くすれば、残ってしまった小さな汚れも落とせるかもしれません。
 付着した汚れはブロアでは吹き飛ばせないもののアルコールできれいに落とせるということは、カビのように中まで入り込んでいるものではないと思われます。

 洗浄前の部分拡大した画像とほぼ同じあたりを切り出したのが下の画像です。

▲部分拡大

 たくさんあった黒いポツポツがきれいさっぱりとなくなっています。洗浄による色調の変化等も感じられません。乳剤面に剥離など、何らかの影響が出ているかと思いましたがその心配もなさそうです。
 洗浄前と洗浄後のスキャン画像も拡大比較してみましたが、黒いポツポツを除けばどちらが洗浄前でどちらが洗浄後か、その区別はつきませんでした。

 念のため、桜の花のあたりを顕微鏡で覗いてみました。倍率は200倍です。

▲顕微鏡写真(200倍)

 特にフィルム面や乳剤面に劣化したような痕跡はないと思われます。
 フィルムを洗浄してから一週間ほど経過しましたが、肉眼で見る限りフィルム面に異常は感じられません。また、同じタイミングで撮影したコマのうちの未洗浄のものと比べてみましたが、フィルムの状態や色調に違いは見られませんでした。むしろ、全体的にクリアな感じになったのではないかと思いましたが、残念ながらそれは全くの勘違いでした。
 ただし、もっと長期間が経過した時に、この洗浄の影響が出るのかどうかは今のところ不明です。

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 保管してあるすべてのポジ原版の汚れの付着状態を確認するのは困難であり、洗浄したほうが良いと思われるコマがどれくらいあるのかは不明です。
 また、汚れの付着度合いに差がある理由もわかりませんが、やはり、スリーブやOP袋からの出し入れの回数が多いコマの方が汚れの付着度合いも多いのではないかと想像しています。スリーブやOP袋に入れるときは必ずブロアでホコリを飛ばしているのですが、どうしても100%取り除くというわけにはいかないので、回数を重ねるうちに増えていくのかもしれません。
 まだ汚れが付着していないコマをいくつか選んで、定期的にOP袋から出し入れするのと、全く出し入れしないのをモニタリングしてみる価値はありそうです。

 なお、今回のフィルムの洗浄は素人がやっていることであり、フィルムに与えるダメージがないという保証はありませんのでご承知おきください。

(2023.4.12)

#リバーサルフィルム #PENTAX67 #ペンタックス67 #保管

隅田川に架かる橋 ライトアップ夜景 -吾妻橋・隅田川橋梁・駒形橋・厩橋・蔵前橋-

 隅田川は岩淵水門で荒川から分岐して東京湾にそそぐ川ですが、たくさんの橋が架かっています。東京オリンピックの開催に向けてライトアップの整備も行われたため、それぞれ、個性的な景観を見ることができます。ライトアップは日没の15分後から夜11時ごろまで行われており、今の時期は午後6時を少し回った頃からライトアップが始まります。長時間ライトアップされているので、ゆっくりと撮影することができます。
 また、川の両岸は整備された広い遊歩道が続いており、フットライトも設置されているので足元も安心です。散歩をする人、ジョギングをする人、撮影をする人等々、多くの人がいらっしゃいますが、私のようにフィルムカメラを持ち込んでも安心して撮影できる場所です。

 今回、特に橋が密集している浅草界隈でライトアップされた橋の撮影をしてきました。
 なお、今回の撮影はISO100のリバーサルフィルムを使用しました。

赤色のライトアップ 吾妻橋

 吾妻橋は、浅草駅の入り口あたりから対岸のアサヒビール本社ビルの手前あたりに架かっている橋で、隅田川に架かる橋の中では最初の鉄橋らしいです。現在の橋は1931年の開通とのことですので、90年以上が経っていることになります。
 3つの径間をもった綺麗なアーチ橋です。橋の上部に構造物がないため、明るいときに見るととてもさっぱりとしたというか、簡素な感じがしますが、品格のある美しさを感じる橋です。

 ライトアップされた吾妻橋を浅草側から撮影したのが下の写真です。

▲吾妻橋:PENTAX67 smc TAKUMAR6x7 75mm 1:4.5 F22 16s PROVIA100F

 アーチ部分の鉄骨も赤色で塗装されていますし、昔は灰色だったらしいのですが、欄干部分も赤系になっていることもあり、ライトアップされると橋全体がとても華やかな印象になります。欄干の部分の照明色は季節によって変わるようで、今は桜色というかピンク色に照明されていました。
 アサヒビール本社ビルの屋上に設置されている金色のオブジェもライトアップされていて、不思議な景観を作り出しています。もう少し引いて撮ると、左の方に東京スカイツリーがあります。

 少し風のある日でしたが水面が大きく波立つほどではなく、長時間露光にもかかわらず水面に映る照明の色合いがしっかりと残ってくれました。
 いちばん手前のアーチの下が暗くなっているのがわかると思いますが、何故かここだけ照明がされていないようでした。ここも赤い鉄骨が浮かび上がると、もっと華やかな感じになったと思うのですが。

白色のライトアップ 隅田川橋梁

 吾妻橋の少し上流側にある東武伊勢崎線の隅田川橋梁と、そこに併設されているすみだリバーウォーク(遊歩道)です。
 すみだリバーウォークは朝7時から夜10時までが通行可能で、浅草の浅草寺と東京スカイツリーの間を行き来するのにとても便利です。遊歩道の床板にはガラスがはめ込まれていて、隅田川を真上から見ることができます。

▲隅田川橋梁:PENTAX67 smc PENTAX67 200mm 1:4 F32 60s PROVIA100F

 隅田川橋梁は電車が通る橋なので重量級の建造物という感じがしますが、架線柱がお洒落なデザインになっていて、隅田川の風景にマッチしているように思います。
 また、この橋を渡るとすぐに浅草駅がある関係で、電車はこの橋を通るときとてもゆっくりとしたスピードになり、時には橋の上でしばらく停車していることもあります。この橋を電車が通過する景色はとても絵になります。

 橋の上部や架線柱は季節によって照明色が変わるようですし、また、イベントがあったりすると特別照明がされるようです。一方、下部の方は白い照明ですが、太い鉄骨を一層無機質な感じに照らし出します。何だか、未来都市の一部を見ているような気になります。
 架線柱の真下に見える薄緑色の光は通過する電車の窓の明かりです。右方向からゆっくりした速度で来て、左の方にある浅草駅に入っていきました。高速で通過してしまうとこんなに明るく写らないのですが、これもこの橋梁ならではの景色かも知れません。

 白い鉄骨の部分の質感が損なわれないようにするため、露出のかけ過ぎに気をつけたのですが、水面が思ったほど明るくなってくれませんでした。もう半段くらい、露出を多めにしても良かったと思います。

青色のライトアップ 駒形橋

 上野から東に延びている浅草通りに架かっている橋です。浅草側の橋のたもとに「駒形堂」というこじんまりとした観音堂がありますが、これが名前の由来のようです。橋が架かる前は渡し舟で川を渡っていたらしいです。
 橋脚の上にはバルコニーのようなものが設けられていて、中世のお城のようなデザインです。このバルコニーからは東京スカイツリーや隅田川に沿って走る首都高が良く見え、絶好の撮影スポットです。

 ちょっとレトロ感の漂う橋ですが、夜になってライトアップされると雰囲気が一変します。

▲駒形橋:PENTAX67 smc TAKUMAR6x7 105mm 1:2.4 F22 16s PROVIA100F

 橋の両端のアーチは下側にありますが、中央のアーチは橋の上部に設置されていて、三つのアーチがとても綺麗な弧を描いています。橋の下側には照明がありませんが、欄干やアーチを照らす明かりがかなり明るいので、水面への映り込みもとても見事です。青系で統一された色合いはちょっと冷たい感じがするかも知れませんが、暗い背景とのコントラストは抜群に綺麗だと思います。

 隅田川は屋形船や観光船などがたくさん往来しているので、船が来るのを待ってその光跡を入れたものも撮ってみました。右から左にオレンジ色の線がスーッと入って温かみを感じるような画にはなりますが、この橋には余計な光がない方がお似合いだと思います。

薄緑色のライトアップ 厩橋

 厩橋は、駒形橋から少し下流に行ったところにある3連のアーチ橋です。「厩」という名前が示すように、この橋にはいたるところに馬のレリーフやステンドグラスなどが埋め込まれています。
 流れるような優美な曲線で構成されたアーチが特徴的で、太い鉄骨で組み上げられているにもかかわらず、柔らかな感じのする橋です。アーチ部分に大量に打ち込まれているリベットさえも景色になっているように思えます。
 橋の上を車で走ってしまうと、その橋の形などはなかなかわからないものですが、この厩橋は特徴的な3連アーチが車の中からも良くわかります。

 そんな3連アーチ橋ですが、ライトアップで優美さは更に増します。

▲厩橋:PENTAX67 smc PENTAX67 55mm 1:4 F22 12s PROVIA100F

 薄緑を基調に、全体的に淡い色合いの照明がなされています。橋の形が柔らかな感じなので、あまり強い色調の照明よりもこのくらいの方が似合っていると思います。
 この写真を撮ったとき、欄干部分はパステル調の青と紫色で照明されていましたが、季節によって変えているようです。

 橋の上部に大きなアーチが三つあることで、ライトアップされると遠くからでもいちばん目を引く橋です。この写真は橋の北側(上流側)から撮っていますが、橋の下をくぐって反対側に行くと東京スカイツリーとアーチがちょうど重なる位置関係になります。
 駒形橋と同じでこの橋も橋脚部分を除いて、橋の下部の照明はありません。肉眼だともっと明るい感じなので、もう少し露光時間を長くしても良かったかもしれません。

黄色のライトアップ 蔵前橋

 厩橋から数百メートル下流に架かっている橋で、形状は吾妻橋によく似ています。稲のもみ殻をイメージさせるということで、淡黄色というか黄檗色というか、そんな感じの色で塗装されています。
 大相撲の国技館、今は両国にありますが、その前は蔵前にあったことから、橋の高欄には力士のレリーフが施されています。橋の上は障害物もなくとてもすっきりとしていて、高速道路を走っているような錯覚を感じてしまう橋です。

▲蔵前橋:PENTAX67 smc TAKUMAR6x7 75mm 1:4.5 F22 24s PROVIA100F

 黄色系の照明はとても明るく感じるせいか、ライトアップされると圧倒的な存在感があります。
 アーチの下側に整然と並んで組まれている鉄骨が浮かび上がり、とても綺麗です。無機質な鉄骨の建造物でありながら、周囲の景観と見事に調和している感じです。石造りの橋脚も趣があって、控えめな照明が作り出す陰影が美しいです。

 黄色は見た目以上に明るいので、露出計任せにすると暗く写ってしまい、濁った色合いになってしまいます。特にこのような夜景では思い切って多めに露出をかけた方が綺麗に仕上がります。
 上の写真でも、弧を描いているアーチの部分はほとんど白飛びしてしまっています。中央のアーチの上部には橋の名前が書かれているのですが、これが読めるように適正な明るさにすると鉄骨の部分はかなり暗くなってしまい、橋の優美さが損なわれてしまいます。

 今回使用したISO100のフィルムは常用感度(と言っても、リバーサルフィルムで現在手に入るのはISO100とISO50の2種類しかないのですが)といえるフィルムですが、決して感度が高いというわけではありません。夜景のような撮影の際、露光時間を長くしても弱い光をとらえきることは難しく、硬い感じの写真に仕上がってしまいます。
 それはそれで気持ちの良い描写ですが、明るく表現するか、暗く表現するかは撮り手の作画意図や伝えたいものによって異なります。ですが、出来るだけたくさんの光をとらえつつも、過度な露出オーバーにならないように露出を決めたいという思いもあり、そのような写真を撮るには神経を使います。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今回撮影した橋のうち、吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋は関東大震災の復興橋梁として架けられた9橋に含まれ、いずれも建設から90年以上が経っていますが、古臭さはまったく感じられません。むしろ、近年の建造物よりもずっとセンスがあると思います。
 さらに下流に行くといくつもの個性的な橋が架かっているので、そちらの撮影にも出かけてみたいと思っています。

 例年だと今の時期は夜になると肌寒いのですが、今年は暖かくなるのが早く、重い機材を担いで川べりを歩いていると汗ばむくらいでした。季節によって違った景観を見せてくれますが、撮影するにはいまがいちばん体への負担が少ない季節です。

(2023.3.31)

#PENTAX67 #吾妻橋 #駒形橋 #厩橋 #蔵前橋 #リバーサルフィルム #ペンタックス67

PENTAX 67用 中望遠レンズ smc PENTAX 67 200mm 1:4

 PENTAX 67用の中望遠レンズです。35mm判カメラ用の焦点距離100mmくらいのレンズと同じ画角になります。
 この焦点距離は望遠というにはちょっと物足りないし、スナップなどを撮るには少し長すぎるといった感じで、それが理由なのか、あまり人気のないレンズのようです。中古市場やネットオークションなどでもよく見かけるし、何よりも他のレンズに比べて驚くほど安い価格が設定されています。にもかかわらず、商品の動きはあまりないようです。
 巷では不人気(?)なレンズですが、私は結構気に入っていて、持ち出す頻度もそこそこ高いレンズです。

smc PENTAX 67 200mm レンズの主な仕様

 レンズの主な仕様は以下の通りです(smcPENTAX 67交換レンズ使用説明書より引用)。

   レンズ構成 : 4群5枚
   絞り目盛り : F4~F32
   画角  : 25度(67判カメラ使用時)
   最短撮影距離 : 1.5m
   測光方式 : 開放測光
   フィルター径 : 77mm
   全長  : 135mm
   重量  : 795g

 このレンズは初代のスーパータクマー6×7、2代目のSMCタクマー6×7、そして3代目のSMCペンタックス67と、3つのモデルがあります。初代と2代目のレンズ構成は4群4枚でしたが、3代目のSMCペンタックス67になって4群5枚構成に変更されています。
 最短撮影距離もそれまでの2.5mから1.5mへと短くなり、だいぶ使い易くなった感じがします。欲を言えばもう少し短くしてほしいとも思いますが、200mmという焦点距離を考えればこんなものかもしれません。
 また、SMCペンタックス67になってからは、それまでのモデルに比べると重さも随分軽くなりました。カタログデータ上では100g以上軽くなっており、実際に手に持った時もズシッとした感じはなく、見た目以上に軽く感じます。プラスチックが多用されているせいもあり、デザイン的な重厚感もなくなり、どことなく安っぽさが漂っているように思えてなりません。もしかしたら、その辺りも人気がない理由の一つかもしれません。

 絞りリングはF5.6からF22の間で中間位置にクリックがありますが、F4とF5.6の間、およびF22とF32の間にはクリックがありません。絞り羽根は8枚で、最小絞りのF32まで絞り込んでも綺麗な正8角形を保っています。
 ピントリングの回転角は300度くらいはあると思われ、最短撮影距離(1.5m)まで回すと鏡筒が約37mm繰出されます。ピントリングは適度な重さがあり、200mmという焦点距離でピント合わせをする際、ほんのわずか動かしたいという場合でも難なく動かすことができます。

 F32まで絞り込んだ時のレンズの被写界深度目盛りを見ると、遠景側でおよそ12m~∞までが被写界深度内、近景側でおよそ1.5~1.6mが被写界深度内となっています。一方、絞り開放時の被写界深度は極端に浅くなり、レンズの指標からは読み取れませんが、近景側だと数cmといったところでしょう。

 因みに、このレンズの最短撮影距離、絞り開放での被写界深度の理論値を計算してみると以下のようになります。

  前側被写界深度 = a²・ε・F/f²+a・ε・F
  後側被写界深度 = a²・ε・F/f²-a・ε・F

 ここで、aは撮影距離、εは許容錯乱円、FはF値、fはレンズの焦点距離です。
 上の式に、a = 1,500mm(最短撮影距離)、ε= 0.03mmとし、F = 4、f = 200mmをあてはめて計算すると、

  前側被写界深度 = 約6.72mm
  後側被写界深度 = 約6.78mm

 となり、前後を合わせた時の被写界深度は約13.5mmとなります。
 67判で使った場合、画角的には中望遠ですが焦点距離は200mmなので、やはり被写界深度の浅いことが良くわかると思います。

 また、このレンズをPENTAX67に装着した際のバランスはとてもよく、レンズ自体に適度の長さがあるので手持ち撮影でもホールドのし易さが感じられます。

絞りを開き、ボケを活かした写真を撮る

 上でも触れたように、200mmという焦点距離と絞り開放、もしくはそれに近い絞りを用いることで、浅い被写界深度を活かした写真に仕上げることができます。被写体までの距離が近ければ近いほどボケの効果は大きくなりますし、25度という画角は限られた比較的狭い範囲だけを切り取るので、被写体を強調し易いと言えます。フレーム内に入れたくないようなものも、撮影位置をちょっと移動するだけで簡単にフレームアウトすることができるので、画面の整理のし易さもあると思います。

 下の写真は昨年(2022年)の秋、田圃の畦に群生していたチカラシバを撮ったものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/125 PROVIA100F

 この写真を撮影する少し前まで霧雨が舞っているような天気だったため、穂に水滴がついてとても綺麗な状態でした。まるで霧吹きで水を吹きかけたかのようです。たくさんのチカラシバの中から形の良いものを探し、全体のバランスや重なり具合のよさそうなアングルを選んで撮りました。
 バックには田んぼがあり、その向こうには大きな木が何本か立っている環境です。画の上部中央にある木までの距離は100m前後ではないかと思われます。
 主被写体であるチカラシバまでの距離は1.6mほどで、このレンズの最短撮影距離に近い位置からの撮影です。絞りは開放(F4)で、三脚をいちばん低くしてチカラシバとほぼ同じ高さで撮っています。

 被写界深度が浅いため、ピントが合っているのは中央の穂と左下にある小さめの穂、そして、中央の穂の下の方にある黄色く色づいた葉っぱの一部だけです。
 奥の方の穂はその形を残しながらも緩やかにボケていますし、下の方の葉っぱや茎も素直なボケ方をしていると思います。所どころに二線ボケが見られますがそれほど顕著というわけではなく、許容範囲内ではないかといった感じです。

 手前の穂といちばん奥にある穂との距離は40~50cmくらいだと思うのですが、200mmの焦点距離と近距離での撮影なのでこれだけのボケ方をしてくれます。背景など、この場の環境をもう少し説明的に写したい場合は、もう1段くらい絞り込めばかなり明確になってくると思いますが、画全体はうるさく感じられるようになってしまうと思います。
 また、これ以上ボケを大きくするには接写リング等が必要になります。

 次の写真はやはり昨年の秋に、近所の公園で撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/500 PROVIA100

 画全体に写っている茶色く枯れたようなものはトウカエデの木の種子(実)だと思います。まるでドライフラワーのように鈴なりになっていて、この季節ならではの被写体です。このトウカエデの種子だけでは寂しいので、紅葉した葉っぱを前ボケに配置しました。
 主被写体のトウカエデの種子までの距離はおよそ7~8m、手前にある紅葉した葉っぱまでの距離は2~3mほどです。1枚目の写真に比べると被写体までの距離が長いので、背景の木の形もわかるくらいに写っていますが、主被写体を埋めてしまうほどではありません。むしろ、左側の種子にはピントが合っていませんので、もう1段くらい絞り込んでも良かったかもしれません。
 また、紅葉した葉っぱの前ボケは、暗い背景との対比で鮮やかな色が出ていますが、柔らかにボケているので邪魔になるほどではないと思います。

 この撮影距離(7~8m)における絞りF4の時の被写界深度を計算してみると290~300mmくらいなので、ワーキングディスタンスをこれだけとっても大きなボケを活かすことができます。もちろん、主被写体に近いところに何かがある場合はこれほど大きくボケることはないので、主被写体の前後は出来るだけ大きな空間があった方が望ましいのは言うまでもありません。

 画の隅の方を見ると、わずかにコマ収差のようなものが感じられますが、さほど気になるほどのものではありません。

 なお、この写真は画の左前方から陽が差していて、半逆光に近い状態です。そのため、トウカエデの種子がぎらついた感じになってしまいました。もう少し陽ざしが弱い方が柔らかな感じに仕上がったと思います。

 さて、3枚目の写真は長野県にある奈良井宿の夕景を写したものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F5.6 30s PROVIA100

 陽が沈んで 家々の街灯が灯り始めたころで、まだ西の空に青さが残っています。
 このような撮影では目いっぱい絞り込んで、通りの奥までピントを合わせることが多いのですが、この写真ではいちばん手前の民宿の明かりのところだけにピントを合わせ、それ以外はぼかしています。絞りを開放にすると、いちばん手前の民宿にもピントから外れてしまう部分が出るため、絞りはF5.6で撮影しています。
 手前の民宿まで20~30mほど離れた位置からの撮影ですが、2件目の民宿辺りから徐々にボケはじめ、3件目より奥はかなりボケているのがわかります。ただし、何が写っているのかわからないほどのボケではなく、ある程度の原形をとどめながら緩やかにボケています。綺麗なボケ方ではないかと思います。

 また、ピントが合ったところの解像度は高く、左上に写っている民宿の2階に設置されている柵の木目などもしっかりと認識できます。

絞り込んでパンフォーカスの写真を撮る

 被写体に寄ったり絞りを開いたりすることでボケを活かした写真に仕上げるのとは反対に、全面にピントの合ったパンフォーカスに近い写真にすることもできます。
 遠景だけを対象にするのであれば、焦点距離が多少長くても全面にピントを合わせることができますが、中景と遠景が同居しているような場合でも、パンフォーカスにすることができるのは200mmという焦点距離ならではという感じもします。

 長野県小諸市で晩秋の風景として、うっすらと冠雪した浅間山と残り柿を撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F32 1/15 PROVIA100

 柿の木までの距離は20mほどだったと思います。中央の浅間山までの距離は無限遠と言ってもよいので、20mから無限遠まで被写界深度内に入れるために最小絞りのF32まで絞り込んでいます。
 ピントの位置は柿の木の向こうにある雑木の辺りに置いていますが、これで無限遠まで被写界深度内に入ります。レンズの指標でも確認できますが、実際に絞り込んだ状態(プレビュー)でもピントの確認をしています。

 早朝の撮影ですが、晴天のため太陽の光が強くてコントラストがつきすぎてしまい、柿の葉っぱが黒くつぶれ気味ですが、ほぼ全面にピントが合っているのと、柿の木を見上げるようなアングルで入れているので、焦点距離100mmとか120mmくらいのレンズで写したような印象を受けます。柿の木の全体を入れず、枝先だけを配した構図にすると望遠レンズで撮った感じが出てくると思います。

 掲載した写真は解像度を落としてあるのでわかりにくいと思いますが、浅間山の手前にある山の稜線の木々や柿の木の向こうにある雑木の枝先などもしっかり描写されているので、十分な解像度があると思います。
 朝の色温度の低い時間帯なので赤みが強く出ていますが、特に発色のクセのようなものは感じられず、自然な発色をしていると思います。

 もう一枚、青森県の薬研渓流で撮影した写真です。渓流を俯瞰できる橋の上から撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F32 1/2 PROVIA100

 この写真の左側には車道が走っているため、画角の大きなレンズだと写したくないものがたくさん入り込んでしまいます。渓流の雰囲気を壊さないようにするには焦点距離200mmのレンズで縦位置にするのが適当だったのですが、若干、右側が窮屈になってしまいました。カメラを右側に振ると左側が窮屈になってしまうので、たぶん、180mmくらいのレンズが最適だと思います。

 画の下側にある右岸の岩から、画の上部の奥の木までピントを合わせるため、最小絞りで撮影しています。このようなアングルの場合、大判カメラであればティルトアオリをかけることで簡単に全面にピントを合わせることができますが、PENTAX67ではそういうわけにいかないので、絞りで稼ぐしかありません。
 手前の岩までは10mくらいで、いちばん奥の木までは150m以上はあると思います。左下の岩に生えているシダ(?)の葉っぱにも、奥の木の葉っぱにもピントを合わせたかったのですが、やはり若干無理があったようで、奥の木の葉っぱのピントは甘めです。それでも、奥の木の占める面積が少ないので、ボケているという感じはあまりしません。

 また、手前の岩にもピントが合っているとはいえ、もっと焦点距離の短いレンズで撮影したものと比べるとパースペクティブに強さがありませんが、実際に使用したレンズよりは短焦点レンズで写したような印象があります。

 この写真を見ながら、カメラを横位置に構え、上1/3をカットするフレーミングも有りだと感じ、もしかしたらその方が左右の窮屈感は薄れるのではないかと思いました。残念ながら、そのように写真は撮っていませんでした。撮影の時は気がつかなくとも、後になって感じることはたくさんあるものです。

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 画角的には中望遠レンズかもしれませんが、焦点距離は200mmなのでそれなりの大きなボケを出すことができますし、絞り込むことで被写界深度を稼ぐこともでき、いろいろな使い方のできるレンズだと思っています。若干、二線ボケの傾向が見られますが、それ以外の写りに関してはこれといった難点が感じられません。
 私はこのレンズと接写リングを組み合わせて、野草などのマクロ撮影にも使っています。応用性の広いレンズだと思うのですが、人気のない理由がいまひとつわかりません。
 このレンズ1本だけを持って撮影に行ってみるのも面白いかも知れません。

(2023.2.8)

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