クマ除けグッズのあれこれ クマに出逢わないための効果的な方法はあるのか? 

 今年(2023年)は例年になくクマの出没やクマによる被害が多いとのことで、連日のようにこのニュースが流れています。本来、クマは警戒心も強く臆病な動物で、特に人間を怖がると言われていますが、人家の庭に来てくつろいでいたり、車がぶんぶん走る街中をスタスタと駆けていく映像などを見ると、本当に人間を怖がっているのだろうかと思ってしまいます。
 酷暑ともいえる今年の夏の暑さの影響で山の木の実が少ないため、食べ物の多い里に降りて来るという専門家の方の解説もよく聞きますが、どうもそれだけが理由ではないように感じてしまいます。
 本州に生息しているツキノワグマはどちらかというと草食系のようで、本来、クマは人間を襲ったり食べるために里に下りたり街中に出てくるわけではないと思いますが、食料を得るためにクマにとっても背に腹は代えられないということなのでしょうか?

 私が撮影する被写体は主に自然風景なので、どうしても一人で山に入ることが多くなります。もともと、クマだけでなくシカやイノシシ、サルなどが生息しているところに入っていくわけですから、そういった動物たちに出会っても不思議はないとは思いますが、これまでの数十年の間でクマを見かけたのは4~5回だけです。ですので、これまではそれほどクマに対する警戒心のようなものを強く持ち合わせてはいませんでした。とはいえ、クマには出逢いたくないので、山に入るときはクマ除けの鈴(ベアベル)程度は着けていました。
 しかし、近年のクマ目撃回数やクマによる被害件数の増加を見るとベアベルだけでは心もとなく感じるようになり、ここ数年でクマ対策のグッズをいろいろと揃えてきました。特に今年のようにその回数が急増しているという話しを聞くにつけ、対策を強化しなければいけないと思っています。

 ということで、以前はベアベルのみという状態だったのですが、徐々に持ち歩くクマ除けアイテムが増えていき、現在では山に入る際には下の写真のようなものを携行しています。

▲クマ除けグッズ:左からクマスプレー、電子ホイッスル、ベアベル、熊おどし、クマ除けピストル、下側中央がクマ忌避剤「熊をぼる」、その右が爆竹

 まず、いちばん基本的なアイテムのベアベルです。
 クマ除けグッズで最もポピュラーなのがこのベアベルですが、たくさんの製品が市販されています。形状や色も様々ですが、いちばん特徴的なのがその音色です。「カラカラ」というような乾いた音や「チリンチリン」という可愛らしい音のするもの、あるいは「カーンカーン」というような音のするものまで様々です。
 クマの生態に詳しい方の話だと音の大小はあまり関係ないらしいです。クマの聴覚はとても発達しているので、小さな音でもかなり遠くから聞き分けることができるようです。
 私が使っているベアベルは真鍮製で、「キーンキーン」というような甲高い音がします。音も大きめで、かなり遠くにいても聞こえるようです。これを腰に下げているので、歩いているときは常に「キーンキーン」と鳴り響いています。この音でクマの方から避けてくれればありがたいのですが、どの程度の効果があるのかはわかりません。
 一人で山の中を歩いていたり撮影しているときに遠くの方からこのベアベルの音が聞こえると、人が来るんだというのがわかってちょっとホッとしたりします。
 なお、このベアベルの音がうるさいと感じる人もいるようです。人が大勢いるような場所では鳴らさないようにしておくのもマナーかも知れません。

 ベアベルだけでは少し心もとないという思いと、歩いていないときは音がしないということもあり、4~5年ほど前に電子ホイッスルを購入しました。これはボタンを押すだけで、交通整理の警察官が吹いている笛のような音がします。しかもかなりの大音量で、取扱説明書には約120dbと書かれています。実際に近くで鳴らされると本当にうるさいと感じます。また、音量は3段階に切り替えが可能で、音色も3種類が用意されていますが、もちろん最大音量で使用しています。
 この電子ホイッスルはストラップで首から下げて携行していますが、歩きながら時どき鳴らしたり、撮影に入る前や撮影の合間に10秒ほど鳴らします。ベアベルに比べるとかなり遠くまで音が届くと思うのですが、これもクマに対して効果があるかどうかは不明です。
 ただし、近くに人がいる場所で鳴らすとかなり驚かせてしまうので、これを使用するときは近くに人がいないことを確認する必要があります。

 3つ目のアイテムはクマ除けピストルです。
 5~6年前に秋田県に撮影に行った際、地元の猟師の方から、「爆竹がいちばん効果がある」と教えていただき、その後、いろいろ探して見つけたものです。小学校の運動会などで使われるスターターを小型にしたようなもので、火薬を装填して引き金を引くと「パーン」という大きな音がします。価格は数百円だったと思います。おもちゃのようなものですが、円形に配置された8個の火薬を装填すると、8連発が可能になります。更に、撃った直後は辺りに火薬のにおいが漂います。
 山の中で撃つとこだまのように響き渡り、数百メートルくらい離れていても十分に聞こえるだろうという感じです。何の確証もないのですが、この音を聞けばクマも逃げてくれるだろうという都合の良い思い込みがあり、これを鳴らすと何だかとても心強くなります。
 もちろん、電子ホイッスルと同様で、周囲に人がいないことを確認してから使うのは言うまでもありません。

 クマ除けピストルに特に不満があったわけではありませんが、秋田の猟師さんの言葉が妙に頭の隅に残っていて、爆竹を使ったクマ除けを何とかできないかと考えていました。爆竹は子供の頃によく遊んだ記憶があり、身近に感じられたこともあるかも知れません。
 いろいろ調べていたところ、「熊おどし」というのがあることを知りました。これは北海道や東北では昔から使われてきたもののようです。片方のフシを切り落とした竹筒に爆竹を入れて火をつけるだけ、といういたってシンプルなものです。動画もいくつかアップされていたのでそれらを参考にしながら、2年ほど前に自作をしました。
 竹筒では強度的に不安があったので、金属素材で作ることにしました。直径20mmほどのステンレスパイプの切れ端があったので、これを長さ15cmほどにカットし、このパイプに、剪定で切り落とした庭の桜の枝を削ってはめ込むという簡単なものです。手で持って爆発させるので、その爆風が手にかからないようにステンレスパイプとの隙間がないようにするだけで、これといった難しさはありません。
 ステンレスパイプの先端内側に爆竹を引っかけ、ライターで導火線に火をつけると数秒後にはステンレスパイプの中で爆発します。その音はクマ除けピストルの比ではなく、感覚的には倍以上の音量ではないかと思うほどです。たまたま、道路脇にあるガードレールの近くで使ったことがあったのですが、爆発の衝撃波でガードレールが共鳴するくらいでした。爆竹を複数本入れて着火するとその威力はさらに増しますが、大量に詰め込めばよいというものでもなく、せいぜい2~3本くらいが限度かと思います。やはり空洞がないと音が良くないし、いくらステンレスと言えども同時に爆発させればダメージも大きいと思います。
 クマの生態に詳しい方によると、いきなり爆竹を鳴らすのではなく、笛(ホイッスル)を鳴らした後に熊おどしなどの爆竹を鳴らすと効果的だそうです。もし近くにクマがいた場合、いきなり爆竹の音が鳴り響くとクマもパニックを起こすかもしれないというのが理由のようです。
 爆竹を取り出し、ステンレスパイプの先端に引っ掛け、火をつけるという手間がかかるので、クマ除けピストルのような迅速性はないし連射も出来ませんが、効果はかなりあるように感じます。
 また、火をつけた爆竹を地面に放り出すわけでもないので、落ち葉に火が着くという心配もありません。
 私はステンレスパイプで自作しましたが、しっかりした素材で底のついた筒状のものであれば何でも代用可能だと思います。

 そして、今年の春に新たに手に入れたのがクマ忌避剤です。これは、「熊をぼる」という製品名で販売されているもので、1個2,300円ほどで購入しました。
 中身は木酢とカプサイシン(唐辛子成分)の混合液らしく、強烈な臭いでクマを寄せつけない効果があるらしいです。これをバックパックなどにぶら下げておくと、風下方向では1kmくらい離れていてもクマは感じ取るらしく、とても効果があると書かれていました。風上にいるクマに対しての効果は薄くなるのかもしれませんが、風の向きは常に一定ではないので、かなりの広範囲に匂いが広がるのではないかと思います。ただし、結構危険な液体のようで、直接手に触れると火傷をしたようになるらしく、取り扱いには注意が必要です。
 木酢なのでスモークのような強い臭いがします。家の中で袋から取り出すと強烈な臭いが立ち込め、半日くらいは臭いが残っています。これをつけて歩いていると風下にいる人にも臭いを浴びせることになってしまい、不快な思いをさせてしまう可能性があります。迷惑をかけたりトラブルになるのも困るので、人が多いところでは密閉袋に入れておくのが無難です。

 ここまで紹介したアイテムは、クマに人間の所在を知らせるとか、クマが嫌がる音や臭いを出すというもので、つまり、クマに出会わないようにすることを狙ったものです。たとえクマが生息していることがわかっていても、ソーシャルディスタンスをとってクマと出逢いさえしなければそれほど恐ろしさは感じません。ですから、クマと出くわさないのが最良なのですが、運悪く出くわしてしまったときには、たぶんこれらのアイテムでは役に立たないと思います。
 そこで、そのようなときのために「クマスプレー」を携行しています。

 これは実際に一度も使ったことがないので効果のほどはわかりませんが、説明書によるとカプサイシンが大量に含まれた超危険な液体が8~10mほどの距離まで噴射されるようです。また、噴射できる時間はおよそ7~8秒とのことです。したがって、クマがかなり近くに来た時に噴射しなければ効果がないということになります。そのような近距離にクマがいる状態で落ち着いてスプレーを吹きかけることができるのか、また、風向きによっては自分の方に流れてくる可能性もあるわけで、そういったことに注意しながら対応できるのか、そちらの方がはなはだ心配ですが、最後の砦といったところでしょうか。
 クマスプレーは結構高額(私が購入したものは13,000円ほどしました)で、使用期限も4~5年しかないし、しかも、これを使わざるを得ないような状況では、たぶん1回で使い切ってしまうだろうということもあり、今までは購入を見送っていました。しかし、今年のクマの出没や被害の多さをきいて4か月ほど前に初めて購入してみました。
 なお、6,000~7,000円という格安の商品もありますが、使用期限が数ヶ月しかないというようなものであることが多いらしく、格安品を購入する場合は注意が必要なようです。
 近年はクマスプレーを携行している登山者を多く見かけます。実際にクマに遭遇し、使った経験のある方にお会いしたことはありませんが、お守り代わりに持っているという方が多いようです。

 運悪くクマに出逢ったらいきなりスプレーをかけるのではなく、刺激を与えないように静かに後ずさりしながらクマにさよならするのが良いみたいですが、そういうことも理解はしていても、実際にそのような場面に遭遇した時に体がそのように動くかどうか、はなはだ疑問ではあります。

 腰のベルトにベアベルとクマスプレーをつけ、首には電子ホイッスルをぶら下げ、ウエストポーチにクマ除けピストルや熊おどしを入れ、バックパックにはクマ忌避剤をぶら下げ、撮影機材よりもクマ除けグッズの方に力が入っている感じがしないでもありませんが、クマには出逢いたくないので仕方ありません。
 突然、藪からぬっと出てこられてはどうしようもありませんが、歩いているときはあちこちを見ることができるので、黒いものが動いていると気がつきやすいと思います。いちばん恐怖心が高まるのは撮影しているときです。周囲に目がいかないし、滝や渓流の近くに入れば音がかき消されてしまうし、そんなときにクマに近寄られても全く気がつきません。撮影に入る際には音と匂いでクマを遠ざけておくしかありません。
 これらのクマ除けグッズが、はたしてクマに対して効果があるかは不明ですが、クマも人間には出逢いたくないと思っているという言葉を信じて、注意しながら山に入りたいと思います。

(2023.10.24)

#クマ避け鈴 #小道具

エプソン EPSON GT-X970 フィルムホルダー 純正品と自作品のスキャン比較

 前回、エプソンのフラットベッドスキャナ EPSON GT-X970 のフィルムホルダーの作成について書きましたが、自作のホルダーと純正品のホルダーを用いて実際にスキャンをしてみましたのでご紹介します。
 厳密な比較はできませんので、画像を目視して違いがあるかどうかというレベルです。

67判ブローニーフィルムのスキャン画像の比較

 今回の比較用に使用したのは、カラーリバーサルフィルム PROVIA 100Fで撮影した67判のポジ原版です。顕著な差は出ないであろうという予測から、出来るだけ全面にピントが来ているコマを選んでみました。ボケている(アウトフォーカス)部分が多いコマでは、そもそも比較することが難しいだろうというのが理由です。
 実際に使用したポジ原版がこちらです。ライトボックスに乗せて撮影しているので、画質も色も良くありませんが。

 2年ほど前に撮影したものですが、大判カメラに67判のロールフィルムホルダーを装着し、出来るだけ全面にピントが来るよう、アオリを使って撮影しています。
 まずはこのポジ原版を、エプソン純正のフィルムホルダーと自作のフィルムホルダーを使ってスキャンします。スキャン解像度は4,800dpiで、エプソンのスキャナソフトウェアに装備されているアンシャープマスクやホコリ除去、DIGITAL ICE 等の機能は一切使っていません。

 下の2枚が実際にスキャンした画像です。1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この画像では良くわからないと思いますが、エプソン純正ホルダーでスキャンした画像はごくわずか、左下がりに傾いています。フィルムをホルダーに入れる際も、ホルダーをスキャナに乗せる際も傾きには十分注意したつもりですが、エプソン純正のホルダーでフィルムの傾きをなくすのは結構難しいです。エプソンのソフトウェアにはフィルムの傾きを補正する機能もありますが、これもフィルムホルダーにフィルムが傾いて装着されてしまえばあまり意味をなさなくなります。

 一方、自作のホルダーですが、フィルムの傾きはほとんど認識できませんでした。

 次に画質の違いですが、このように全体を表示した画像ではその違いはまったく分かりません。もちろん、掲載の画像は解像度を落としてありますが、落とす前の画像同士を比較してもその違いはわかりません。ちなみに、4,800dpiでスキャンした画像は、約13,500×10,900でおよそ1億4,700万画素になります。

画像中央部分の画質の比較

 画像全体を見ても違いはわからないので、中央部分を拡大して比較してみます。
 画像中央あたりの落ち葉が積もっている部分を拡大したのが下の画像です。同じく、1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この2枚の画像も違いはほとんどわかりませんが、エプソン純正ホルダーを使用した方が、ハイライト部分の滲みがごくわずかに大きいように見えます。理由はよくわかりませんが、気になるほどの違いではありません。
 また、2枚の解像度の違いは感じられません。

画像周辺部分の画質の比較

 次に、画像周辺部の比較ということで、画像右下の落ち葉の辺りを拡大して比較してみます。
 同じく、1枚目がエプソン純正ホルダーを使用、2枚目が自作ホルダーを使用したものです。

▲エプソン純正ホルダー使用
▲自作ホルダー使用

 この2枚はわずかに違いが感じられると思います。自作ホルダーの方が全体的に画像がシャープな印象を受けます。落ち葉の縁などを見ても、輪郭というかエッジがはっきりとしています。
 これはフィルムの平面性が保たれていることが理由ではないかと思います。
 エプソン純正ホルダーの方は若干の遊びを持たせているため、ホルダーにフィルムを装着しても完全に固定されず、わずかに動くことができる余裕があります。
 また、67判の1コマだけをホルダーに装着した場合、フィルムの4辺のうちの1辺はホルダーで押さえられていないため、どうしてもフィルムがわずかに湾曲してしまいます。
 これが原因で周辺部の画質が若干低下してしまうのではないかと思われます。

 一方、自作のホルダーはマグネットシートでフィルムの4辺を押さえていますので、目視をする限り、フィルムの湾曲はほとんど見受けられません。

使い勝手の比較

 今回作成したのは67判のフィルム1コマ用ですので、使い勝手についてエプソン純正ホルダーと単純比較をすることはできませんが、実際に使ってみると使用感の違いがあります。

 まず、フィルムの装着ですが、自作ホルダーの方が簡単で、しかも短時間で装着することができます。前の方でも書きましたが、とにかくフィルムの傾きを気にすることなく、フィルムガイドの間にフィルムを置くだけで済むので圧倒的に楽です。
 また、フィルム装着後にブロアでシュッシュッとやるのですが、エプソン純正ホルダーの方は強くやり過ぎるとフィルムが動いたり湾曲したりしてしまいますが、自作ホルダーの方はそのようなこともありません。

 次に、ホルダーをスキャナに設置する際、エプソン純正ホルダーの方はホルダーについているガイドピンをスキャナ本体の所定の位置に差し込むのですが、その状態でもホルダーがわずかにカタカタと動きます。つまり、これによってフィルムが傾いてしまうということです。
 自作ホルダーの方はまずスペーサーを置き、そこにホルダーをピッタリと密着させれば良く、ホルダーがカタカタと動くこともありません。これでフィルムの傾きはなくなるのでやはり簡単です。

 このように書くと自作ホルダーの方が優れているように感じられると思いますが、唯一、エプソン純正ホルダーにかなわないのはその汎用性です。
 エプソン純正ホルダーは様々なコマサイズやコマ数に対応していて、66判であれば同時に6コマ、67判や69判であれば同時に4コマまで装着することができます。この利便性は、ホルダーをいくつも用意しなくても良いとか、大量のフィルムをスキャンするときなどは効率を上げることができるとか、やはり優れものであることは間違いありません。

 利便性や効率性を重視するか、ごくわずかであっても画質を重視するかによって見解は分かれると思いますが、私はそれほど大量のフィルムをスキャンするわけではないので、比べて初めて分かる程度の違いではあっても画質の良い方を使いたいと思います。

 この自作ホルダーを使用してスキャンしたフィルムはまだ5~6枚ほどですが、十分に使用に耐えられるものだと思います。あとは耐久性の問題で、長年使っているとヘタってくる可能性もあり、いつまで耐えられるかということです。
 また、66判1コマ用や67判2コマ用のホルダーもおいおい作っていきたいと思っています。ホルダーが増えてしまうのは好ましいことではありませんが、私の場合、ブローニーは66判と67判があればほぼ事足りるので、とりあえず4個は用意したいということになります。

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 EPSON GT-X970 の後継機はGT-X980 という機種ですが、私はまだ実際に使ったことがありません。今使っているGT-X970が壊れたら購入しようと思っているのですが、GT-X980はフィルムの平面性を高めるため、アンチニュートンリングのアクリル板の上にフィルムを乗せ、これを押さえる構造になっているようです。確かにフィルムの平面性は保たれるのでしょうが、スキャンの際に余計なものは入れたくないというのが個人的な正直な気持ちです。
 実は、今回の自作ホルダーでもガラス製のネガキャリアを使おうかとも考えたのですが、思いの他、平面性が保たれているようなので、まずは良しとしておきます。ネガキャリアを使用したホルダーについては、別途機会があれば検討してみたいと思います。

(2023年9月15日)

#EPSON #GT_X970 #エプソン #フィルムホルダー #スキャナ

エプソン EPSON GT-X970 スキャナ用フィルムホルダーの作成

 フィルムで撮影した写真をパソコンに表示したりWebで使用するためにはデータ化が必要ですが、私はエプソンのGT-X970というフラットベッドスキャナを用いてデータ化を行なっています。この機種自体はかなり古いのですが、民生用の機器としてはまずまずの性能ではないかと思っています。
 しかし、フィルムホルダーが安っぽくて、しかもあまり使い易くないというのが最大の難点です。特にブローニーフィルム用のホルダーはフィルムが傾かないようにセットするのが結構難しく、フィルムを押さえる機構がしっかりしていないのでフィルムも湾曲してしまい、なかなか平らになってくれません。
 また、長年使っているのでフィルムガイド用のピンが欠損してしていたり、あちこちに損傷も見られます。

 そこで、ブローニーフィルム用のホルダーを自作してみました。
 フィルムの傾きを出来るだけ起きないようにすること、フィルムの平面性を極力保つこと、この2点を満足するホルダーを安価で簡単に作れることを条件として作ってみました。

ブローニーフィルム用ホルダーの概要

 エプソン純正のブローニー用フィルムホルダーはサイズの異なるフィルムに対応できるように、幅約60mm、長さ約200mmの窓が二つ開いています。66判なら3コマ、67判や69判なら2コマ続いたスリーブをセットすることができるので便利ですが、窓枠よりも短いフィルムを装填した場合、フィルムの1辺が押さえられていない状態になってしまうので、どうしてもフィルムが湾曲しがちです。
 自由度が大きく適用範囲が広いのはありがたいですが、それよりも精度を高めることを重要視し、今回はフィルムサイズごとに作ることにしました。
 私はブローニーフィルムでは67判を最も多用していて、しかもフィルムを1コマごとにカットした状態で保管しているので、まずは67判一コマを2枚セットできるホルダーをつくります。

 構造はいたってシンプルで、イメージはこんな感じです。

 ベースとなるアクリル板の上にマグネットシートを2枚重ねて、このマグネットシートの間にフィルムを挟むというものです。アクリル板とマグネットシートには67判の画像サイズよりも若干大きめの窓を開けておきます。
 2枚のマグネットシートのうち、下側のマグネットシートはアクリル板に接着しておきますが、上側のマグネットシートは一端だけを両面テープで固定し、上側にめくりあげられるようにします。

エプソンGT-X970用フィルムホルダーの制約事項

 GT-X970はA4の原稿をスキャンすることができるガラス面を持っていますが、フィルムをスキャンする場合、これらすべての範囲を使うことができないようです。実測してみたところ、概ね、以下のような制約事項があることがわかりました。

 ガラス面全体は226mmx305mmの大きさがあり、A4サイズよりも少し大きくなっています。
 しかし、フィルムをスキャンできる範囲は上の図の青い部分、約160mmx約220mmの範囲に限られます。「約」となっているのは正確に測ることができず、ほぼこれくらいということです。ガラス面の周辺の30~40mmくらいの範囲はスキャンできません。
 また、スキャナを正面から見た時、ガラス面のいちばん奥(図では上側)、約12mmの範囲、および手前(図では下側)、約7mmの範囲はホルダーがかからないようにする必要があります。ここに遮光物がかかるとスキャンが正しく行われません。たぶん、遮光物がない状態の光源の明るさを測定するためのエリアではないかと思われます。

 このため、フィルムホルダーの窓がスキャン可能な範囲(上図の青い部分)に入るようにする必要があります。

67判用フィルムホルダーのサイズ

 ということで、GT-X970で正常にスキャンすることができるホルダーの図面を引いてみました。

 ホルダーの縦を100mmにしたのは特に大きな理由があるわけではなく、100円ショップで購入したマグネットシートのサイズに合わせただけです。これが実におあつらえ向きで、ホルダーを2枚並べて使うことができる寸法でもあります。
 購入したマグネットシートの長辺は300mmあるのですが、上で書いたように、GT-X970にホルダー設置禁止エリアがあるため、これに合わせて15mmカットして285mmとしました。

 67判用の窓の大きさは58mmx71mmで、これは67判の実画面サイズより縦横それぞれ2mmずつ大きくしてあります。つまり、フィルムの実画面の周囲に1mmの余黒が見えるサイズとなります。
 2枚の窓枠の位置はGT-X970のスキャン可能範囲からはみ出さないようにすれば特に問題はありませんが、フィルムをしっかり押さえられるよう、フィルム間の長さは30mm以上は確保したほうが良いと思います。

 また、スキャナのガラス面からフィルム面までの高さはかなり重要で、この位置によって得られる画像の質がずいぶん異なります。
 私が使っているGT-X970は、ガラス面からフィルムの下面まで4.7mmというのが最も質の良い画像が得られることを実測済みなので、今回もこれに合わせます。この高さはスキャナによって個体差があるようで、実際に高さを変えてスキャンしてみて、最も良い状態の高さを確認しなければなりません。結構面倒くさいのですが、仕方ありません。

 今回使用するアクリル板の厚さは1.8mm、マグネットシートの厚さは0.8mmです。そのため、ホルダーの高さをかせぐために嵩上げが必要になりますが、これも1.8mm厚のアクリル板を使います。
 上の図でもわかるように、嵩上げ1.8mm、ホルダーベースが1.8mm、下側のマグネットシートが0.8mmなので、これで4.4mmになります。まだ0.3mm不足しているので、厚さ0.25mmのアルミ板を嵩上げの下側に貼ります。この状態で実測したところ、4.65mmから4.7mmの間にあることがわかりましたので、これで良しとします。アクリル板は有機溶剤で接着しますが、マグネットシートやアルミ板は両面テープを使っているので、その分の厚さが0.05mm弱あり、結果として4.7mmに近い値になったようです。

67判用フィルムホルダーの作成

 まず、フィルムホルダーのベースをアクリル板で作ります。100mmx285mmにカットしたアクリル板に、58mmx71mmの窓を2ヵ所に開けます。位置は前出の図面の通りです。

 窓枠を開けたアクリル板が下の写真です。

 このホルダーベースの裏側に嵩上げ用のアクリル板(板厚1.8mm)とアルミ板(板厚0.25mm)を貼りつけます。

 嵩上げの部分をわかり易くするために画像をいじっていますので変な色になっていますが、ベースの両端に幅10mmのアクリル板を張り付け、その上にアルミ板(白い箇所)を貼りつけています。アルミ板は薄いので、ハサミやカッターナイフで簡単に切ることができます。ハサミで切った場合は少し反ってしまうので、滑らかなヘラなどを使って平らにします。

 次に、マグネットシートに窓を開けます。ホルダーベースと同じサイズにカットし、やはり同じ位置に同じ大きさで窓を開けます。

 上側の黒色のマグネットシートがホルダーベースに貼り付ける側で、この上にフィルムを乗せるようにします。そして、下側の白いマグネットシートがフィルムを上から押さえるためのカバーです。

 黒い方のマグネットシートにフィルムを乗せるので、ここにフィルムガイドを取付けます。

 フィルムガイドを貼りつけた状態はこんな感じです。

 フィルムガイドの高さはフィルム上面と同じになるように、ブローニーフィルムを7mm幅に切って両面テープで貼りつけています。スキャンするためのフィルムが傾かないよう、このフィルムガイドがマグネットシートの長辺と平行になるように注意します。
 また、フィルムガイドとフィルムガイドの間はブローニーフィルムがピッタリ入るようにします。ガイド間がフィルムの幅よりも大きすぎるとフィルムが動いてしまい、平行が保てなくなりますのでやはり注意して行ないます。
 そして、このマグネットシートをホルダーベースの表面に貼り付けます。窓の位置がぴったり重なるように仮止めして、慎重に貼っていきます。今回購入した黒色のマグネットシートの片面には両面テープがついています。

 最後に、この上にフィルム押さえカバーとなるマグネットシートを貼るのですが、もちろん、全面を貼ってしまうわけではなく、一方の短辺側だけ、両面テープで固定します。この時も窓の位置がぴったり重なるようにします。
 なお、マグネットシートは極性の関係でピッタリと重ならない場合もありますので、その場合は極性が合った位置で重ねるようにします。

 下の写真が完成したホルダーです。いちばん上のフィルム押さえカバーをめくった状態を写しています。

 このホルダーに実際にフィルムを挟んでみるとこんな感じです。ライトボックスに乗せて撮影しています。

 フィルムの実画面の周囲に1mmほどの幅で余黒が見えると思いますが、これでフィルム全面をスキャンすることができます。
 フィルムをホルダーに挟んだ状態はかなり平面性が保たれていて、エプソン純正のホルダーのように湾曲することもありません。ホコリを飛ばすためにブロアで吹いても、フィルムの位置がずれるようなことはありません。

 さて、こうして完成したフィルムホルダーをGT-X970のガラス面に乗せるわけですが、この時、ホルダーの長辺とガラス面の右縁が平行になるようにしなければなりません。フィルムがGT-X970のスキャン可能範囲内に入るよう、ホルダーの位置を少し内側に寄せなければならないので、ホルダーが平行になるようにスペーサーを入れてホルダーの位置を決めています。

 上の写真で白いフィルムホルダーの右側にあるのがスペーサーです。幅20mmにカットした板で、これをスキャナのガラス面の右縁にピッタリと合わせ、ここにフィルムホルダーの右縁を密着させます。これでホルダーの平行が保たれるはずです。
 また、スキャナのガラス面の上端と下端にホルダーがかからないようにしなければなりません。これは、スキャナのガラス面の右縁のところに原稿サイズの目盛りが刻んであるので、その「A4」の目盛りのところにフィルムホルダーの端を合わせると、上端に約12mmのスペースができます。これで、ホルダー設置禁止領域にかかることはありません。

 ちなみに、今回のフィルムホルダー作成にかかった費用ですが、実際に購入したのはマグネットシート2枚(税込220円)だけです。アクリル板とアルミ板は家に転がっていたものを使ったので、これらの実費としては0円ですが、新たに購入してもアクリル板が500円ほど、アルミ板は200円ほどだと思います。

実際にフィルムをスキャンしてみて

 今回作成したフィルムホルダーで実際にスキャンしてみました。
 エプソンから提供されているソフトウェア「EPSON Scan」でも問題なく画像認識され、サムネール画像の作成も出来ました。
 もし、サムネール画像の認識ができない場合でも、通常表示にしてスキャンする範囲を指定する機能があるので、これを使えば問題なくスキャンすることが可能です。

 また、実際にスキャンした画像ですが、その画質には全く問題がないと思われます。詳細に比較したわけではありませんが、エプソン純正のフィルムホルダーよりも画質は良いように感じます。ガラス面からフィルム面までの高さが適切だったのと、フィルムの平面性が保たれているのも要因かも知れません。
 フィルムの傾きに関しても十分に満足のいくものだと思います。ホルダーに貼ったフィルムガイドの間にフィルムを入れて、そのホルダーをスペーサーに密着するように置くことで、スキャンした画像が傾くことはほとんどありませんでした。純正のホルダーを使えば傾き補正もできるのですが、そのような機能がなくても問題のない状態の画像を得ることができます。

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 今回作成したのは67判のフィルム1コマを2枚設置できるホルダーですが、同じやり方で67判が2コマ連続したスリーブ状態のフィルム用のホルダーも作成する予定です。窓の大きさが変わるだけで、その他の作り方は同じです。
 このサイズのホルダーであれば、スキャナのガラス面に2枚並べて置くことができ、一度に4枚のフィルムをスキャンすることができます。
 何種類ものフィルムサイズ(66判とか67判、69判など)を使う場合は、それに合わせてフィルムホルダーを何種類も用意しなければならないのは難点ですが、私の場合、主に67判なので、今回作成したものと2枚続きのスリーブ用があればほとんど対応可能です。

(2023年9月8日)

#EPSON #エプソン #フィルムホルダー #GT_X970 #スキャナ

67判のポジフィルムをカバーするライトボックス用ルーペの作成

 私が主に使っているフィルムはリバーサルフィルムの中判と大判です。現像が上がったリバーサルフィルムはライトボックスで確認をするわけですが、その際、ピントやブレなどの具合を調べるためにルーペを使います。
 そのためのルーペは数個持っていますが、いずれもルーペのレンズの直径があまり大きくないので一度に見ることのできる範囲は狭く、中判や大判のフィルムを確認するためにはルーペをあちこち移動させなければなりません。これが結構なストレスになります。もちろん、大口径のルーペも販売されてはいますが驚くほど高額です。
 そこで、大判フィルムはともかく、せめて67判フィルムをカバーできるルーペをということで、家にころがっているガラクタを集めて作ってみました。

今回、作成するルーペの仕様

 私が使っている中判のサイズは圧倒的に67判が多いので 、作成するルーペの大きさとしては、このフィルムをカバーするサイズとします。「カバーする」というのは、フィルムの上にルーペを置いた状態で、ほぼフィルム全体が視野に入るということを意味します。67判の対角線長は約88mmありますから、理想は直径88mm以上のレンズということになりますが、それだとかなり大きくなってしまい、手の小さな私には持ちにくくなってしまいます。フィルムの四隅が少しカットされるのは我慢するとして、今回は直径80mm前後ということにします。

 次にルーペの高さですが、ライトボックス上にフィルムを置いたとき、どれくらいの位置から見るのが最も見易いのかをいろいろ試してみました。低すぎると上体を前に倒さなければならないので、あまり有り難くありません。かといって高すぎると、これまたルーペが巨大になってしまい、使い回しに手を焼いてしまいそうです。
 結局、ライトボックスの上面から10~15cmくらいが最も使い勝手がよろしいというのがわかったので、ルーペの高さとしてはおよそ10cmとすることにしました。

 さて、ルーペの倍率をどれくらいにするかですが、私が普段使っているルーペの倍率は約6倍と約8倍で、細部をしっかり確認するにはちょうど良いのですが、ポジ全体を見渡すには倍率が高すぎます。もう少し倍率を落とした、3~4倍あたりが使い易そうですので、今回は4倍を目安にすることにしました。

 これらの条件を満たすレンズを決めなければならないのですが、ルーペの高さから逆算すると、ライトボックス上面からレンズまでの距離が70~80mmが適当な感じです。中間値をとって75mmとして計算してみます。

 レンズの焦点距離(f)、レンズから物体(フィルム)までの距離(a)、およびレンズから虚像までの距離(b)の関係は下の図のようになります。

 ここで、a=75mm、倍率mは4倍と設定しているので、レンズから虚像までの距離(b)は、

  b = m・a

 で求められます。
 よって、

  b = 4 x 75 = 300mm

 となります。

 次に、これを満たすレンズの焦点距離(f)ですが、

  1 / a - 1 / b = 1 / f

 の関係式に各値を代入すると、

  1 / f = 1 / 75 - 1 / 300

 よって、f = 100mm となります。

 すなわち、焦点距離100mmのレンズが必要ということです。

ルーペの作成に必要なパーツ類

 焦点距離100mmのレンズというと、クローズアップレンズのNo.10がこれに相当しますが、残念ながらそんなものは持ち合わせておりません。ガラクタをあさってみたところ、直径82mmのクローズアップレンズ(No.2)が1枚と、直径77mmのクローズアップレンズ(No.2、No.3、No.3、No.4)が4枚、計5枚がでてきました。
 なぜこんなにクローズアップレンズがあるかというと、昔、35mm判カメラで接写にはまったことがあり、その時に買い集めたものが今も使われずに残っていたというものです。
 82mm径であれば大きさも問題ないのですが、No.2が1枚ではどうしようもないので、少し小さくなってしまいますが77mm径のクローズアップレンズを組み合わせて使うことにします。

 クローズアップレンズの焦点距離は以下のようになっています。

  No.2 : 500mm
  No.3 : 330mm
  No.4 : 250mm

 2枚のレンズを組み合わせた時の焦点距離は以下の式で求めることができます。

  1 / f = 1 / f₁ + 1 / f₂ - d / (f₁・f₂)

 この式で、f₁、f₂ はそれぞれのレンズの焦点距離、dはレンズ間の距離を表します。

 この式から、これらのクローズアップレンズを組み合わせて焦点距離100mmを作り出すには、No.3(330mm)を2枚とNo.4(250mm)を1枚、計3枚で100mmが作り出せることがわかります。厳密にはクローズアップレンズ同士の間隔ができるので少し変わってきますが、そんなに精度を求めているわけではないので良しとします。

▲今回使用したクローズアップレンズ (左からNo.4、No.3、No.3)

 また、クローズアップレンズを同じ向きで重ね合わせると像の歪みが大きくなるので、1枚をひっくり返して反対向きにする必要があります。反対向きにするとオネジ同士、またはメネジ同士が向かい合ってしまい、ネジ込みすることができなくなってしまいます。そこで、これらをつなぐアダプタを作らなければなりませんが、これは使わなくなった77mm径のフィルターの枠を2個、流用することにします。

▲アダプタ用に使用したフィルター(2枚)

 そして、ライトボックス上面からレンズまでの高さを稼ぐため、これも昔使っていた金属製のレンズフードを使うことにしました。おあつらえ向きに77mm用のフードがあったので、まさに復活という感じです。フード先端の内径が約80mmあるので67判の対角には少し足りませんが、まぁ、我慢することにしましょう。
 また、ライトブックスは下から光が照射されるのでルーペ内には外光が入らない方が望ましく、金属製のフードは打ってつけです。

▲77mmのレンズフード(金属製)

 後は、レンズまでの距離(高さ)が不足する場合、それを埋めるためのスペーサーとして、やはり使わなくなったフィルター枠を使います。

ルーペの組み立て

 組み立てと言ってもクローズアップレンズやフィルター枠をはめ込んでいくだけですが、作らなければならないのがクローズアップレンズ同士をつなぐアダプタと、レンズフード取り付けのためのアダプタです。
 まず、クローズアップレンズを向かい合わせにつなぐために、上にも書いたように77mm径のフィルターからガラスを取り外した枠を反対向きに接着剤でくっつけます。接着面は非常に狭くて接着剤だけでは強度的に心もとないので、内側にグルーガンで補強しておきます。
 接着剤がはみ出したりしてあまり綺麗でないので、表面に自動車用の絶縁テープを巻いておきます。

▲フィルター枠(2個)を貼り合わせたアダプタ

 それともう一つ、レンズフードを取付けるためにオネジをメネジに変換しなければならないので、不要になったフィルターの枠をひっくり返してレンズフードに接着しなければなりません。これも同じように接着剤でくっつけ、内側をグルーガンで補強しておきます。

 あとは下から順に、レンズフード、クローズアップレンズ(No.4)、アダプタ、クローズアップレンズ(No.3)、クローズアップレンズ(No.3)と重ねていけば完成です。
 今回使用したクローズアップレンズのNo.3のうちの1枚は枠が厚いタイプだったので問題ありませんでしたが、枠が薄いタイプだとレンズの中央部が枠よりも飛び出しているため、重ねると干渉してしまいます。その場合は、フィルター枠を1枚かませるなどして、干渉しないようにする必要があります。

 下の写真が組み上がったルーペです。

 大きさがわかるように隣にブローニーフィルムを置いてみました。
 いちばん上に乗っているのは保護用(プロテクター)フィルターですが、これもガラクタの中から出てきたので、上側のクローズアップレンズを保護するためにつけてみました。使用上はなくても何ら問題はありませんが、クローズアップレンズが傷ついたり汚れたりするのを防いでくれるという点では役に立っていると思います。
 また、ルーペの下に置いてあるのが67判のポジ原版です。四隅が少しはみ出しているのがわかると思います。

 No.10のクローズアップレンズがあれば1枚で済んだのですが、有り合わせのもので作ったのでちょっと不細工になってしまいました。フィルター名やレンズ名の刻印がたくさんあってにぎやかですが、気になるようであれば適当なクロスか何かを巻いておけば問題ないと思います。

ガラクタから作ったルーペの使い勝手

 こうして完成したルーペですが、大きさや重さは以下の通りです。

  高さ : 105.5mm
  外径 : 80mm(上側) 85mm(下側)
  重さ : 224g

 クローズアップレンズ3枚と保護フィルター1枚、金属製のフードやフィルター枠を使っているので、やはりちょっと重いという感じはします。
 また、もう少し外径が細い方が私には持ちやすいとは思いますが、十分に許容範囲内です。

 実際にライトボックス上でポジ原版を見てみると、若干、糸巻型の歪みが感じられますが気になるほどではありません。
 67判の四隅はフードによってカットされてしまいますが、それでもほぼ全体が視野に入ってくるのでルーペを移動させる必要もなく、とても便利です。
 倍率は正確にわからないのですが、たぶん4倍程度といった感じです。ピントの甘いところやブレているところなどもしっかりとわかりますから、十分な倍率だと思います。

 そして、いちばん驚いたのがポジ原版の画像がものすごく立体的に、浮き上がって見えることです。広い範囲が見えるのでそう感じるのかもしれませんが、肉眼で見たのとは別の写真を見ているような印象です。

 ピントの位置も特に問題なく、ルーペをライトボックス上に置いた状態でフィルムにピントが来ています。
 もし、ピント位置が合わないようであればフィルター枠をかませようかと思っていましたが、その必要もなさそうです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ガラクタを集めて作ったので見てくれは良くありませんが、クローズアップレンズを交換したり減らしたりすれば倍率も変えることができますし、ピント位置の調整もフィルター枠などを使うことで容易に行なうことができます。実際にクローズアップレンズを1枚外し、2枚構成にしてポジ原版を見てみましたが、倍率は少し下がるものの、十分に使用できるレベルでした。
 細部をシビアに点検するときは6倍以上のルーペが必要ですが、67判をほぼ視野に入れることができるメリットは大きく、今後、活躍してくれそうです。

(2023.1.12)

#ルーペ #クローズアップレンズ #リバーサルフィルム #ライトボックス

大判カメラ撮影に必要な小道具、あると便利な小道具たち(3)

 前回(およそ1年前)に続いて、大判カメラで撮影する際に、あると便利な小道具たちの紹介の3回目です。
 これらがなければ撮影ができないというような切実なものではありませんが、日ごろ、私が撮影の際に持ち歩いているものです。中には必ずしも大判カメラでの撮影に限らないものもありますが、大判カメラ使用時に出番が多いものを選定してみました。

ストーンバッグ

 ウェイトストーンバッグと呼ばれることもあります。もともとは三脚を安定させるための重しを載せるためのもので、三脚の3本の脚のつけ根辺りに紐で縛りつける、ハンモックのようなものです。
 風が強いときに三脚のブレを防ぐためであったり、そもそも重い三脚を持ち歩くのは大変なので、軽めの三脚であっても現地調達した石などを載せて安定させようという目的で作られたようです。確かに、その辺りに転がっている手ごろな石を載せれば、三脚の重心も下がるので安定度は増すと思います。
 ですが、私はもっぱら撮影時に使用する小道具置き場として使っています。

 大判カメラで撮影する際には意外とたくさんの小道具、小物類を使います。単体露出計、ルーペ、ブロア、フィルター、フィルムホルダーなどは常に使用しますが、撮影条件によってはさらにいくつもの小道具が必要になることがあります。
 これらをカメラバッグから取り出し、使い終わったらカメラバッグに入れる、というようなことはとても面倒くさいので、三脚の股の間に取付けたストーンバッグを仮置き場として使っています。もちろん、その場での撮影を終えて移動する際にはカメラバッグにしまわなければなりませんが、撮影時は必要なものが手の届くところにあるのでとても便利です。
 また、私はこの中に、常時ウェスを入れていて、三脚が濡れたり泥で汚れたりしたときにこれでふき取っています。

 私の使っているストーンバッグはナイロン製(たぶん)の安物なのでとても軽く、移動の際にも負担にならないので三脚に着けっぱなしです。安物なので、本来の使い方をしようとして大き目の石を入れると破れてしまうかも知れません。

手鏡(ミラー)

 クレジットカードと同じ大きさの鏡です。AMEX(アメリカン・エクスプレス)からもらったもので、金属製の鏡です。ガラス製ではないので、落としても割れる心配がありません。

 これを何に使うかというと、時々身だしなみを整えるためではなく、主に絞りやシャッター速度の設定の際に使用します。

 大判カメラは後部にあるフォーカシングスクリーンで構図の確認やピント合わせをするので、これが目の高さにあると腰をかがめる必要がないのでとても楽です。
 ですが、そうするとレンズも同じ高さになり、シャッターの外周につけられた絞り値やシャッター速度値がとても見難くなってしまいます。レンズ正面に回れば前面につけられた目盛りは見えますが、カメラの前後を行ったり来たりしなければならないので極めて面倒です。

 そこで、カメラ後部にいながらレンズの指標を確認できるよう、この鏡を使います。

 鏡なので左右反転して写りますが、見たいところを映すことができるのと、半絞りや1/3絞りなどの細かな設定も鏡を見ながらできるのでとても便利です。
 もちろん、強い風に吹かれたり、冠布を被ったことで乱れたヘアーを直すのにも使えることは言うまでもありません。

露出計用PLフィルター

 大判カメラには露出計がついていないので、単体露出計が必須になります。
 通常の撮影であれば、単体露出計の測光値を使う、もしくは、撮影意図によって露出を変える場合でも単体露出計の測光値をもとに補正をかけます。
 ところが、PLフィルターを使用する場合は、単体露出計の測光値をそのまま使うというわけにはいきません。NDフィルターなどは露出補正値がフィルターによってほぼ決まっていますが、PLフィルターは光の具合や偏光をかける度合いによって露出補正値が異なるからです。

 PLフィルターはレンズに装着した状態で、ファインダーやフォーカシングスクリーンを見ながら偏光の効き具合を確認しますが、この時の露出補正値が正確にわかりません。明るさの変化を見て、概ねこれくらいだろうということで露出補正値を決めてしまうこともありますが、正確さを期すためには単体露出計で測光することが望ましいわけです。

 そのためには単体露出計にもPLフィルターを装着し、その状態で測光する必要がありますが、レンズにつけたPLフィルターを外して単体露出計につけるのは面倒です。
 そこで、単体露出計用の小さなPLフィルターをあらかじめ用意しておきます。

 PLフィルターの枠には変更度合いの基準となる位置にマークがついています。レンズに装着したPLフィルターで偏光度合いを確認した後、その時のマーク位置と同じになるよう単体露出計のPLフィルターも回転させ、その状態で測光すれば、偏光のかかり度合いに応じた正確な露出値を得ることができます。

 最近のPLフィルターは、カメラに内蔵されたハーフミラーやローパスフィルターに干渉しないよう、サーキュラPLというものがほとんどですが、大判カメラにはどちらも内蔵されていませんし、単体露出計に影響がなければ普通のPLフィルターでも問題ありません。

フォーカシングスクリーンマスク

 大判カメラのフォーカシングスクリーンは、そのカメラで使用するフィルムとほぼ同じ大きさになっています。つまり、視野率はほぼ100%ということです。
 ですが、大判カメラにロールフィルムホルダーを装着して撮影する場合、使用するのはフォーカシングスクリーンの中央部だけ、67判であれば約55mmx69mmの範囲だけです。
 フォーカシングスクリーンによっては67判や69判の枠が引かれているものもありますが、視野率が300%ほどにもなってしまうので周囲が見えすぎてしまい、正直、使い易いとはいえません。これを改善するため、使用するフィルムの大きさに合わせたマスクを用意しておくと便利です。

 マスクと言っても黒い厚紙の中央部に、フィルムの大きさに合わせた窓をくり抜いただけのものです。これを、大判カメラのフォーカシングスクリーンのところにはめ込むという単純なものです。単純ではありますが、これで視野率が約100%となり、周囲の余計なものが見えなくなるので構図決めは格段にやり易くなります。

 フォーカシングスクリーンが嵌まっている枠の大きさはカメラによって異なるので、このマスクはカメラごとに用意しておく必要があります。
 また、フィールドタイプの大判カメラの場合、フォーカシングスクリーンにフードがついているものが多く、マスクを嵌めたままでもこのフードを畳めるよう、マスクの紙厚が厚くなりすぎないように考慮する必要があります。

色温度補正フィルター

 大判カメラでの撮影は長時間露光になることも多く、特にリバーサルフィルムを使用した撮影の場合、相反則不軌によってカラーバランスが崩れることがあります。
 この影響が出る露光時間はフィルムによって異なりますが、富士フイルムのデータシートによると、PROVIA100Fで4分以上の露光、Velvia100Fで2分以上の露光、Velvia50で4秒以上の露光となっています。
 2分以上の露光をすることはそれほど多くはありませんが、4秒以上の露光はかなりの頻度で発生します。つまり、Velvia50を使う場合はカラーバランス補正が必要になる頻度も高いということです。
 また、Velvia50の場合はマゼンタ系による色温度補正フィルターとされています。

 これに対応するため、マゼンタのポリエステルフィルターセットを使用しています。

 5Mから30Mまで5種類の濃度のフィルターがセットになっているものです。フィルター枠の大きさは100mmx100mmで、角型フィルターを使うときのホルダーに嵌まるサイズです。

 多少の色補正はレタッチソフトで修正できますが、やはりフィルムで撮る以上、ポジの状態でも適正なカラーバランスにしておきたいと思い、Velvia50を使うときは持ち歩くようにしています。

ケミカルライト

 フィールドタイプの大判カメラはその構造上、Uアーム(レンズスタンダード)を移動させるためのベッドがレンズよりも前にせり出しているものが多く、特に短焦点レンズを使う場合、このベッドが写り込んでしまうことがあります。WISTA 45 SPやタチハラフィルスタンド45では問題になりませんが、私がメインで使っているリンホフマスターテヒニカは、焦点距離が105mmのレンズでも縦位置だとベッドが写り込んでしまいます。
 カメラによって、焦点距離が概ね何ミリ以上のレンズであれば写り込みはないという自分なりの目安はありますが、それはカメラをニュートラル状態で使ったときの話しであって、アオリを使えばその基準は崩れてしまいます。

 ベッドが写り込まないよう、短焦点レンズを使うときは特に注意をしながらフレーミングや構図決めを行ないますが、夜景の撮影であったり、被写体が黒っぽいものであったりすると、ベッドの写り込みに気づかずにシャッターを切ってしまうこともあります。そうなると、大判で最も小さな4×5判であっても、リバーサルフィルムを使っていると千数百円(現像代含む)が飛んで行ってしまいます。

 このミスを防ぐため、夜景や暗い被写体の撮影の際にはベッドの先端にケミカルライトを着けるようにしています。

 これは本来、釣りに使うものです。2~3ヵ所をパキッと折ると緑色に発光し、約10時間くらい発光し続けます。光は蛍光色でかなり明るいです。サイズはいろいろあるのですが、私が使っているのは長さが37mm、直径が4.5mmという比較的小さなものです。価格は10本で400円ほどです。

 発光させたケミカルライトを、長さ50mmほどに切った黒いストローの中に入れます。ストローの中央にはキリで小さな穴を開けておきます。

 これを大判カメラのベッドの先端に貼りつければOKです。貼りつけは両面テープでも何でも良いのですが、私は「ひっつき虫」という粘土のようなものを使っています。つけたりとったりが何度でもできるので便利です。

 この状態で構図決めを行なうわけですが、もしベッドが写り込むとフォーカシングスクリーンの上部に緑色の光が見えるのですぐにわかります。
 10時間以上も発光し続けるので、一日の撮影でも1本あれば間に合います。数十円で高価なフィルムが無駄になるのを防げるのであれば安いものです。

マスキングテープ、ハーネステープ

 これは特に用途が決まっているわけではなく、持ち歩いていると何かと便利といった類のものです。どちらも手で簡単に切れますし、剥がしても痕が残りません。

 私がこれらをどのように使っているかというと、

  ・シートフィルムホルダーの引き蓋が抜けないようにとめておく
  ・長いケーブルレリーズ使用時、写り込まないようにカメラや三脚などにとめておく
  ・角型フィルターの隙間からの光線漏れを塞ぐ
  ・野草撮影の時、邪魔になる草や枝をまとめておく
  ・夜景撮影のため、明るいときにピントを合わせた位置をマーキングしておく

 といったようなところです。

 過去には、指を切ってしまったときに傷口にティッシュペーパーをあてて、その上からマスキングテープを巻いて包帯代わりにしたなんていうこともありました。
 とにかく持っていると重宝します。

折り畳み椅子

 大判カメラに限って必要というわけではありませんが、特に大判カメラの場合、じっくり腰を落ち着けて撮ることが多く、そんなときに椅子があると楽ちんです。レジャーシートなどを地面に広げて、そこに腰を下ろしても良いのですが、やはり椅子の方が何かと便利です。
 私は出来るだけ軽いものをということで、かろうじてお尻が乗るくらいの小さなものを持ち歩いています。長時間座るのには向いていませんが、地面に座るよりはずっと楽です。

 ただし、他の小物に比べると大きいので荷物になります。荷物の少ない方をとるか、多少荷物が増えても待機時の体の負担軽減をとるか、といったところでしょうか。

 いちばん自由度が高いのはレジャーシートだと思い、常時持ち歩いているのですが、立ったり座ったりが結構しんどいので、レジャーシートはもっぱら荷物置き用として使っています。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 あれば便利というものはなかなかキリがなくて、撮影対象が異なればその内容も変わるでしょうし、年齢を重ねることで変わってくるものあると思います。しかし、持てる量には自ずと限りがあるので、荷物にならず手間もいらず、という小道具がいちばんありがたいです。

 また、今回は色補正フィルターについても触れましたが、その他にもカメラバッグには何種類かのフィルターが入っています。しかし、それらのフィルターは大判カメラに限ったものではないので言及しませんでしたが、フィルターについては別の機会にあらためて書いてみたいと思います。

(2022.10.18)

#撮影小道具 #ストーンバッグ #ケミカルライト #色温度補正フィルター

35mmフィルムケースを使って、ブローニー用フィルムケースの作成

 最近は35mm判フィルムを使うことが少なくなったのですが、10年くらい前までは中判や大判よりも、使用量が圧倒的に多かったのが35mm判フィルムです。35mmフィルムは一本ずつケースに入っているため、このケースがどんどんたまっていきます。捨てるには忍びないと思い、段ボール箱に放り込んであるのですが、ほとんど使われることはありません。小さなネジなどを入れるのに使うこともありますが、そんなことで使われる数はたかが知れています。
 そこで、この空ケースを使って、ブローニーフィルムを入れるケースを作ってみました。

35mmフィルムケース2個を使い、ブローニー用フィルムケースを1個作る

 昔はブローニーフィルムを現像に出すと、5本用のフィルムケースがおまけのようについてくることがありました。いま私が使っているフィルムケースも無料でいただいたものです。
 しかし、長年使っているため、あちこちにひびが入ったり欠けたりしているので、新しいものと交換したいと思うのですが、今は無償で手に入れることができません。ブローニーフィルムが5本入る専用のケースは市販されていますが、1,600円ほどと驚くほど高額です。
 作る手間を考えれば買った方が安上がりかもしれませんが、使い道のない35mmフィルムケースの再利用という点では一役買ってくれそうです。

 35mmフィルムのパトローネの径とブローニーフィルムの巻き径に大きな差はないので、35mm用フィルムケースにうまい具合に納まります。しかし、そのままでは長さ(高さ)が足りないので、35mm用フィルムケースを少し継ぎ足して、ブローニーフィルムが入るようにします。
 
 下の写真を見ていただくとわかり易いと思いますが、フィルムケース2本のうち1本を、下から25mmくらいの位置でカットします。カットする位置に目印となる線を入れておきます(写真①)。
 カットする寸法は1mmくらい前後しても問題ありませんが、複数個つくるときに同じ長さになるようにしなければならないので、正確に決めておく必要があります。

 実際にカットした状態が写真②です。

 カットする際は目印の線に合わせてガムテープなどを巻き付けて、それに沿ってカットしていくと曲がらずに綺麗に切ることができます。
 カットしたケースの下側(底の部分)はフィルムケースのキャップになります。
 また、カットした上側の部分はケース内側の立ち上がりに使用します。そのままだと直径が同じで中に入らないので、約5mmの幅でスリットを入れます(写真③)。

 この立ち上がりをもう1本のフィルムケースの中にはめ込み、接着します。
 今回使用したフィルムケースは富士フィルムのものですが、材質はHDPE(高密度ポリエチレン)製のため、通常の接着剤は使えません。ポリエチレンやポリプロピレンを貼り合わせることができる接着剤が必要です。セメダイン製のPPXやスーパーXハイパーワイド、コニシ製のボンドGPクリヤーなどが使えますが、今回は手元にあったボンドGPクリヤーを使いました。硬化するまでに若干時間はかかりますが、接着直後であれば張り合わせ位置の修正ができるので便利です。

 接着する部分の長さが11mm、立ち上がりとして上に飛び出す部分が14mmとなるようにしました。
 実際に立ち上がり部分を接着した状態が写真④です。

 なお、立ち上がり部分は5mmほどの幅で切り取ってあるので、ケースの中にはめ込んだ際に若干の隙間ができます。この隙間はグルーガンで埋めておきます。

 切り取った下側の部分をキャップとして被せると、ケースの高さは約75mmになります。
 ブローニーフィルムの高さは約65mmなので余裕があり過ぎるように思いますが、フィルムがラッピングされた状態で入れるにはちょうど良い高さになります。

 接着した立ち上がりですが、無理やり剥がそうと力を入れて引っ張れば取れてしまいますが、通常の使用では問題ないくらいの強度はありそうです。

フィルムケース5個をつないで、5本用のフィルムケースにする

 こうして出来上がったフィルムケースをそのまま使っても問題ないのですが、1本ずつのケースでは使い勝手があまりよくないので、このケース5個を横につないでフィルムが5本入るケースにします(もちろん、4本用でも6本用でも構いませんが)。
 5個のケースをどのように配置するかは自由ですが、使い勝手が良くて、カメラバッグの中に入れても納まりの良い良い配置というと、やはり横一列という配置だと思います。

 しかし、円筒形(正確には富士フィルム製のケースは完全な円筒形ではなく、わずかに上が広いテーパになっています)の接着面は非常に細い線状でしかないので、接着しても強度がなく、少し力を加えると簡単にとれてしまいます。
 そこで、5個のケースを横一列に接着した後、片面に薄いアクリル板を貼りつけることにします。

 5個のケースを接着した状態が下の写真です。

 貼りつけるのは板厚が1.6mmの透明なアクリル板です。フィルムケースと同じ色合いにするため、両面にサンドペーパーをかけてすりガラス状にします。
 アクリル板は切断や切削などの加工も比較的簡単にできますし、接着も通常のプラスチック用の接着剤が使用できますが、接着する片方がポリエチレンなので、やはりGPクリヤーを使います。

 アクリル板を貼りつけた状態はこんな感じです。

 ポリエチレンは塗装もできませんが、アクリル板であれば塗料も問題なく乗るので、お気に入りの色を塗ることも可能です。
 また、アクリル板の左右両端は、できるだけ段差が出ないように斜めに削っておきます。

 なお、補強の目的で、底面に厚さ0.3mmのプラバンを貼りました。アクリル板を貼れば強度的には問題ないと思いますが、念のためということで。

キャップは接着せずにバラの状態で

 キャップとして使用するケースの下側の部分ですが、カッターナイフでカットした場合、小口(断面)の角が鋭利になっているので、軽くヤスリをかけて角をとっておきます。
 キャップはスカスカでもなく、かといってきつい感じもなく、程よい抵抗感で嵌めたり外したりできます。グルーガンで埋めたところが滑り止めのような効果を発揮しています。

 さて、このキャップをどうするかですが、ケースの入れ物と同じように5個を横一列に並べて接着し、アクリル板を貼りつけて一体化することも考えましたが、とりあえずそのまま、バラの状態で使用してみることにしました。
 5個をつないでしまうと、キャップの開け閉めがし難くなるのではないかという懸念と、実際に使う際は5個のうちのどれか一つだけなので、バラ状態の方が使い易いだろうという思いからです。
 ただし、バラだとキャプをなくしてしまう可能性が高まりますが、その場合はキャップだけ新たに作ればよいので、大きな問題ではないでしょう。
 なお、キャップ側も連結したほうがケース全体の強度は増すと思います。

 しばらく使ってみて、使いにくいとか問題があるようであれば、キャップの連結も試みてみようと思います。

 また、フィルムケースは乳白色なので、中がぼんやりと見えます。撮影前のフィルムなのか撮影済みなのかが一目でわかるので、意外と便利かもしれません。市販のケースは遮光性を保つため、色付きの素材を使っていますが、通常はカメラバッグの中に入れておくので、それほど遮光性に神経質にならなくても大丈夫かと思います。

 これまで使っていたフィルムケースと比べると、横の長さが約5mmほど長くなっていますが、使う上で特に支障はないと思われます。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 フィルムケースというのは、フィルムを2~3本しか持っていかないときはなくてもそれほど支障のあるものではありませんが、長期間の撮影行で20本、30本と使うときは必要なものです。フィルムの種類を分けたり、撮影前と撮影後のフィルムを分けたり、また、カメラバッグの中でフィルムが行方不明になるのを防ぐということにも役立ちます。
 今回のケースの自作で35mmフィルムのケース10個を使いましたが、もともとついていたケースの蓋が10個残ってしまい、これの使い道は思いつきませんので廃棄しました。

(2022.8.11)

#フィルムケース

PENTAX67用 オート接写リング(エクステンションチューブ)

 PENTAX67には2本のマクロレンズ(焦点距離が100mmと135mm)がありますが、それとは別に接写リングが用意されています。
 マクロレンズと比べて接写リングは撮影の自由度が落ちるのですが、オート接写リングの場合、PENTAX67用の内爪式レンズのすべてに装着可能で、近接撮影を行なうことができるので結構重宝します(焦点距離600mm以上の超望遠レンズはバヨネットが外爪式になっており、それ用には外爪接写リングが用意されています)。
 今回は内爪式のオート接写リングをご紹介します。

3つのリングで7通りの組み合わせが可能

 一般的に接写リングは3個がセットになっているものが多く、PENTAX67用もNo.1~No.3までの3個で構成されています。いちばん薄いNo.1が厚さ14mm、次がNo.2で厚さ28mm、最も厚いのがNo.3で厚さ56mmです。厚さの比が1:2:4になっており、組み合わせを変えた時の厚さの変化が14mmステップになります。
 これら3個のリングは自由に組み合わせることができ、その組み合わせは7通りあります。

▲PENTAX67用 オート接写リング

   <組合せ>  <厚さ>
    1     14mm
    2     28mm
    1+2    42mm
    3     56mm
    1+3    70mm
    2+3    84mm
    1+2+3   98mm

 カメラ用のレンズは無限遠の時のレンズ繰出し量が最も少なく、被写体との距離が近くなるにつれてレンズの繰出し量も多くなるわけですが、最短撮影距離まで繰出すとそれ以上はヘリコイドが動かないようになっています。
 カメラとレンズの間に接写リングを挿入することで、さらにレンズを繰出すことができるようになります。つまり、この接写リングの場合、最短撮影距離の状態からさらに14mmステップで最大で98mmまでレンズを繰出すことができるということです。

撮影距離の制約

 では、接写リングを挿入することでどれくらいまで近接撮影ができるのか、PENTAX67用の標準レンズと言われている焦点距離105mmのレンズに接写リング3個を挿入した場合を例に計算してみます。

 レンズから被写体までの距離a、レンズから撮像面(フィルム)までの距離b、およびレンズの焦点距離fの間には以下のような関係があります。

   1/a + 1/b = 1/f ...式(1)

 この式から、

   1/a = 1/f - 1/b ...式(2)

 となります。

詳細は下のページをご覧ください。

  「大判カメラによるマクロ撮影(1) 露出補正値を求める

 まずはレンズの距離指標を無限遠にした状態のときですが、接写リング3個重ねた時の厚さは98mmなので、
  bは 105mm+98mm で203mm
  fは焦点距離なので105mm

 これらの値を上の式(2)にあてはめてみます。

  1/a = 1 / 105 - 1 / 203
   よって、a = 217.5

 レンズから被写体までの距離aは217.5mmになります。
 これにレンズから撮像面までの距離 105mm+98mm を加えた420.5mmが撮影距離になります。

 次に、レンズのヘリコイドを目いっぱい繰出し、最短撮影距離である1mの指標に合わせた場合を計算してみます。

 無限遠の状態から最短撮影距離の指標までヘリコイドを回すと、このレンズの繰出し量は14mmです。
 すなわち、上の式のbの値は 105mm+14mm+98mm で、217mmとなります。
 同様に上の式(2)にあてはめると、

  1/a = 1 / 105 - 1 / 217
   よって、a = 203.4

 aは203.4mmとなり、これにレンズの繰出し量の217mmを加えた420.4mmが撮影距離になります。

 つまり、焦点距離105mmのレンズに接写リング3個を挿入すると、ピントが合わせられる範囲は420.4mm~420.5mmということで、わずか0.1mm足らずの範囲しかないということになります。これは許容範囲がないに等しく、これが接写リングの自由度の低さだと思います。

 参考までに、7通りの接写リングの組合せ時の撮影可能範囲を計算すると以下のようになります。

   <組合せ>  <撮影可能範囲>
     1     631.8~1011.5mm
     2     514.5~631.8mm
     1+2    462.9~514.5mm
     3     437.5~462.9mm
     1+3    425.3~437.5mm
     2+3    420.5~425.4mm
     1+2+3   420.4~420.5mm

 この値を見ていただくとわかるように、焦点距離105mmのレンズの場合、使用する接写リングの7通りの組合せによって、420.4~1011.5mmの範囲であれば無段階にピント合わせができるようになっています。

 これをグラフに表すとこのようになります。

 このようなグラフを使用するレンズごとに用意しておくと、撮影の際にどのような接写リングの組合せにすれば良いかがすぐにわかるので便利です。

接写リングによる撮影倍率

 次に、接写リングを使用した場合の撮影倍率についても計算してみます。
 撮影倍率Mは以下の式で求めることができます。

   M = z’/f ...式(3)

 ここで、z’はレンズの後側焦点から撮像面までの距離、fはレンズの焦点距離です。

 詳細は下のページをご覧ください。

  「大判カメラによるマクロ撮影(2) 撮影倍率

 焦点距離105mmのレンズに、接写リング3個をつけた場合の撮影倍率を上の式(3)にあてはめて計算してみます。
 まず、レンズを無限遠の指標に合わせた場合ですが、z’は接写リングの厚さに等しいので、No.1~No.3を装着した場合は98mm、fは焦点距離なので105mmです。

   M = 98 / 105 = 0.93倍

 となります。

 また、レンズを最短撮影距離の1mの指標に合わせた場合、レンズの繰出し量は14mmなので、z’は 14mm+98mm で112mmとなります。
 したがって、この時の撮影倍率は、

  M = 112 / 105 = 1.07倍

 となり、焦点距離105mmのレンズに3個の接写リングをつけると、およそ等倍の撮影ができるということです。

 同様に、7通りの組合せ時の撮影倍率の計算を行なうと以下のようになります。

   <組合せ>  <撮影倍率>
    1     0.12~0.27倍
    2     0.27~0.40倍
    1+2    0.40~0.53倍
    3     0.53~0.67倍
    1+3    0.67~0.80倍
    2+3    0.80~0.93倍
    1+2+3   0.93~1.07倍

接写リング使用時は露出補正が必要

 レンズが前に繰り出されると撮像面の単位面積あたりに届く光の量が減少し、レンズの実効F値が暗くなるため、露出補正が必要になります。レンズのヘリコイド可動範囲内であれば露出補正量もわずかで誤差の範囲と言えますが、接写リングを挿入するとそういうわけにもいかず、露出補正しなければなりません。

 露出補正倍数は下の式で求めることができます。

   露出補正倍数 = (レンズ繰出し量/焦点距離) ^ 2 ...式(4)

 焦点距離105mmのレンズにNo.1~No.3の接写リングをつけた場合の露出補正量を計算してみます。

 まず、レンズの距離指標を無限遠に合わせた場合、レンズ繰出し量は焦点距離に接写リングの厚さを加えた値なので、105mm+98mm で203mmとなり、

   露出補正倍数 = (203 / 105) ^ 2 = 3.74倍

 の露出補正が必要ということです。
 これは2段(EV)弱のプラス補正ということになります。

 また、レンズの距離指標を最短撮影距離の1mに合わせた場合、レンズ繰出し量はさらに14mm加算されるので217mmになります。
 同様に露出補正倍数を計算すると、

   露出補正倍数 = (217 / 105) ^ 2 = 4.27倍

 となり、これは2段(EV)強のプラス補正ということになります。

 7通りの接写リングの組合せ時の露出補正倍数は以下のようになります。

   <組合せ>  <露出補正倍数>
    1     1.28~1.60倍
    2     1.60~1.96倍
    1+2    1.96~2.35倍
    3     2.35~2.78倍
    1+3    2.78~3.24倍
    2+3    3.24~3.74倍
    1+2+3   3.74~4.27倍

自由度は低いがマクロ撮影のバリエーションは広い

 接写リングをつけると無限遠などの遠景撮影ができなくなったり、一つの組合せで撮影できる範囲が非常に限定されたりしますが、マクロレンズ単体で使用するのに比べると撮影倍率ははるかに高くできます。
 また、様々な焦点距離のレンズでの使用が可能なので、撮影のバリエーションも広がります。

 とにかく撮影倍率を高くしたいのであれば、できるだけ焦点距離の短いレンズを使うことで実現できます。PENTAX67用で、フィッシュアイレンズを除く最も焦点距離の短いレンズは45mmですが、このレンズにNo.1~No.3の接写リングをつけた場合の撮影倍率は約2.27倍になります。
 また、焦点距離の長いレンズにつけると前後のボケが非常に大きくなり、背景を簡略化したり、美しいグラデーションの中に被写体を浮かび上がらせたりすることができます。

 下の写真は、焦点距離165mmのレンズにNo.3の接写リングをつけて撮影したものです。

▲smc-PENTAX67 165mm 1:2.8 接写リングNo.3使用

 撮影倍率は約0.5倍です。ピントが合っている部分はごくわずかで、画のほとんどがアウトフォーカスになっています。長めの焦点距離のレンズを使っているので、ボケも綺麗です。

 一方で、ピントを合わせられる範囲も被写界深度も著しく浅くなるので、ピント合わせは慎重に行なわなければなりません。接写リングを3つも重ねるとピントの山がつかみにくくなるので、ピント合わせにも苦労します。

 私は持っていませんが、接写リングの厚さを可変できるヘリコイド接写リングというものがあります。可変量はそれほど大きくありませんが、接写リングと組み合わせて使うと撮影可能範囲が広くなるので便利だと思います。

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 マクロレンズがあれば接写リングを持ち出すこともないかも知れませんが、マクロレンズだけでは撮れないような写真を撮ることができるので、私は常にカメラバッグの中に入れています。
 はめたり外したりが少々面倒くさいですが、それもまた手間をかけて撮影している実感があるということで、良しとしておきましょう。

(2022年3月20日)

#接写リング #マクロ撮影 #ペンタックス67 #PENTAX67

マグネット式 角型フィルターホルダーの作成

 風景撮影には欠かせないフィルターの一つに「ハーフNDフィルター」があります。例えば、画面の上半分と下半分の明暗差が大きいとき、明るい方にNDがかかるようにして使うわけですが、そのため、通常のフィルターのように円形ではなく、上下(もしくは左右)に移動できるよう、主に長方形をしています。
 円形のフィルターのように直接レンズの前枠にねじ込むというわけにはいかず、まずはフィルターホルダーをレンズに取付け、フィルターホルダーに設けられている溝にこの角型フィルターを差し込みます。
 これが結構面倒くさく、少しでも手間が省けるようにということで、マグネットでフィルターを保持するホルダーを作ってみました。

角型フィルターの両側面を磁石の力で保持

 角型フィルターをより簡単に取付けができるよう、マグネット式やバネ式などのホルダーがいろいろ市販されていますので、そういったものを購入すれば済むのですが、現在保有している角型フィルターに専用のアダプターを取付けたり何かと費用が嵩んでしまいます。そこで、できるだけ低コストで保有しているフィルターを使えるようにということで、マグネット式を採用することにしました。

 今回作成する角型フィルターホルダーのイメージはこんな感じです。

 ホルダー自体はアクリル板とプラスチック板で自作しますが、レンズの前枠にはめ込むところはケンコー製のアダプターリング(82mm)を使います。これは、今まで使ってきたフィルターホルダー用のもので、それをそのまま流用します。
 私が使っている角型フィルターは100mmx150mmサイズのものがほとんどで、前枠径が大きなレンズや画角の大きなレンズでも対応できますが、非常に短焦点のレンズでフィルターを使うというような場合、フィルターホルダーにケラレてしまうことがあります。
 そのため、フィルターホルダーの厚みはできるだけ薄いのが理想的で、2枚重ねるときでもフィルターが密着する方が望ましいので、マグネット式にしました。さすがに角型フィルターを3枚重ねることはないと思われるので、2枚まで対応できるものとしました。

 角型フィルターの厚さは2mmしかないので、これを両側面からマグネットで支えるために、磁力が強いネオジム磁石を使用することにしました。

フィルターホルダー本体の構造

 フィルターホルダー本体はできるだけ薄く、かつ軽くしたいため、厚さ2mmのアクリル板を組み合わせて作ります。

 厚さ2mmのアダプターリングを差し込むための溝を持った構造になっています。アダプターリングを差し込んだ状態で、ホルダー本体は自由に回転させることができます。
 今回使用するアダプターリングの外形は108mmですので、これを受けるホルダー本体の溝幅も108mmということになりますが、0.5~1mmくらい広めにしておいた方がアダプターリングの差込みがスムーズにできます。

 各パーツはアクリル樹脂用接着剤(有機溶剤)で接着します。
 ホルダー本体をくみ上げ、艶消し黒の塗装をした状態が下の写真です。上側がフィルムホルダー、下側がアダプターリングです。

▲角型フィルターホルダー本体とアダプターリング

 ホルダーの手前側の左右に溝(スリット)が見えると思いますが、ここにアダプターリングが入ります。

 ホルダー本体にアダプターリングを差し込むとこんな感じです。

▲フィルターホルダー本体にアダプターリングを挿入した状態

 因みに、裏側はこのようになっています。

▲フィルターホルダー本体の裏側

 アダプターリングには82mm径のオネジが切ってあり、これをレンズの前枠にねじ込みます。

フィルターを支えるマグネットの取付け

 ホルダー本体の左右の内側にフィルターを支えるためのマグネットを取付けるのですが、今回使用するマグネットは直径5mm、厚さ2mmのネオジムマグネットです。左右それぞれ18個ずつをアクリル板に接着します。
 アクリル板の厚さは2mmありますが、このままだとフィルターをはめ込む幅が100mmになってしまいますので、アクリル板を0.1mmほど削ります。平ヤスリの上にアクリル板をのせて、20~30回ほど擦ると板厚が1.9mmほどになります。1.9mmを若干下回るくらいの厚さが望ましいです。

 マグネットをアクリル板に接着した状態が下の写真です。

▲ネオジムマグネットをアクリル板に接着

 このパーツをホルダー本体に仮止めして、マグネット間の幅をノギスで測ってみて、100.2~100.3mmに納まっていればOKです。これよりも狭い場合は、アクリル板をもう少し削ります。削りすぎるとマグネット間の幅が広くなって、磁力の影響が弱まってしまいますので要注意です。

 これをホルダー本体の内側に取付ける(仮止め)とこのようになります。

▲フィルターホルダー本体にマグネットを取付け(仮止め)た状態

 この段階では仮止めにしておきます。ホルダーに接着してしまうと、あとで微調整ができなくなってしまいます。

角型フィルター側面にステンレス板を接着

 次に、角型フィルターをホルダーのマグネットで保持するため、フィルター側面にステンレス板を張り付けます。使用するのは厚さ0.1mmのステンレス板、というよりステンレスシートです。裏面に粘着シールがついているタイプであれば、あらためて両面テープを張らなくても済むので便利です。
 また、磁石に着く材質でなければならないので、「SUS430」という素材のステンレスを使います。「SUS304」というステンレスも出回っていますが、こちらは磁石に着きません。

 ご存じのようにステンレスは硬いですが、厚さが0.1mmですのでハサミやカッターナイフで簡単に切れます。ただし、ハサミで切るとステンレスが反ってしまいますので、カッターナイフで切るのがお勧めです。
 角型フィルターの厚さと同じ2mm幅、長さはフィルターより10mmほど短かく切ります。そして、このステンレス板を角型フィルターの側面に張り付けます。

 実際に張り付けた状態が下の写真です。

▲角型フィルターの側面に、厚さ0.1mmのステンレス板を張り付けた状態

 この状態で角型フィルターの幅を測ってみます。計算上は100.2mmをわずかに上回ることになります。
 そして、この値と、前で測定したマグネット間の幅を比較して、マグネット間の幅の方がわずかに(0.05~0.1mm)広いことを確認します。もし、マグネット間の幅の方が狭い場合は、マグネットを接着したアクリル板を少し削ります。

 ステンレス板を着けた角型フィルターをホルダーに嵌め、ホルダーを立てた時に角型フィルターがずり落ちないことを確認します。また、ピッタリしすぎているとはめ込みや取り外しの際に力がかかり過ぎてしまいますので、適度な力で取り外しできる状態であることも確認します。

マグネットをホルダーに接着

 以上の確認が済んだら、マグネットを着けたアクリル板をホルダーに接着します。これで完成です。
 
 実際にレンズに取付けるとこんな感じです。

▲PENTAX67に角型フィルターホルダーを取付けた状態

 マグネットはかなり強力なので、少々の風や振動などでフィルターが外れてしまうというような心配はなさそうです。
 ハーフNDフィルターのようにファインダーを覗きながらフィルターの位置を動かす場合も、フィルターの片側を少し持ち上げることで簡単に上下することができるので便利です。

 私が保有している角型フィルターはすべてアクリル製なので非常に軽いですが、重いガラス製の角型フィルターでも問題なく保持できそうです。
 ただし、万が一、落ちてしまって割れたり傷がついたりということが心配であれば、マグネットを少し大型(強力)なものにすれば問題ないと思いますが、そうするとホルダー自体も少し大きく、重くなってしまいます。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今回、このホルダーを作成するのにかかったコストですが、アクリル板は以前使った端切れなのでコストはかかっていませんが、新たに購入しても300~400円くらいです。ネオジムマグネットは100個で550円でした。そして、いちばんお高かったのがステンレスシートですが、30cmx90cmサイズで1,400円ほどでした。実際に使うのは端の方のほんのわずかな部分です。
 年末年始で家にいる時間が長かったので作ってみましたが、近いうちに撮影で使ってみたいと思います。実際に使ってみるといろいろな問題も出てくるかもしれませんが、使用レポートは別の機会にしたいと思います。

(2022.1.3)

#フィルター

撮影中にクマに出会ったら... クマ避けの鈴は効果があるのか?

 10月の後半に山形、秋田、青森方面に紅葉の撮影に行ってきました。訪れた時はまだ色づきはじめでしたが、わずか一週間で一気に紅葉が進んだ感じでした。

 秋田県の、とある滝の撮影に行った時のことです。
 その滝は車を降りてから山道を30分ほど登った先にあります。最近はあちこちで目にする「熊注意!」の看板がここにもありました。私は山に入るときはクマ避けの鈴(ベアベル)をつけるのですが、この日も腰につけて歩き始めました。
 15分ほど歩いた頃でしょうか、視界の隅に動くものが飛び込んできました。「もしや...」と思って右の方を見ると真っ黒な岩のようなものがもぞもぞと動いています。たぶんクマです。距離は50~60m、もしかしたらもう少し離れていたかもしれません。こちらに背を向けているらしく、顔は見えません。
 相手はこちらの存在に気がついているのかどうかわかりませんが、走っている様子もなく、ソーシャルディスタンスを保っていると思っているのか、ゆっくりとした足取りで森の中に消えていきました。見えていた時間は4~5秒だと思います。

 私がつけているベアベルは結構甲高い音がするので、かなり離れていても聞こえます。人間でさえ聞こえるのですから、クマの耳には確実に届いていたと思われますが、音がしたから去っていったのか、そもそも聞こえていなかったのか、それは当人に聞いてみないとわかりません。

▲クマ避けの鈴(ベアベル)

 離れていたとはいえクマを目撃した私はというと、それまでのハイテンションな気持ちがすっかり萎えてしまいました。クマは森の奥に行ったのでこのまま滝を目指すか、それともあきらめて引き返すか、どちらとも決められずにその場に立ち尽くしていました。
 クマは、滝に向かう道とはずいぶん違う方向に行ったようですが、この先でまたご対面なんていうこともないとは限りません。そう考えると足が前に出ません。

 私は過去にも二度、クマを見かけたことがあります。いずれも今回のように離れたところから見かけただけで、至近距離で遭遇したとか、ばったり鉢合わせしたとかいうことはありません。しかし、クマを見かけた後、そこから先に進むのは非常に勇気がいります。ベアベルを鳴らしながら歩いても効果があるのか、疑心暗鬼になってしまいます。クマが街中に現れたとか、民家の庭を荒らしたとかいうニュースが時々ありますが、そういうのを聞くにつけ、クマが物音に警戒して去っていくということ自体が本当なんだろうかと思ったりもします。

 5~6年前になりますが、秋田県の阿仁町というところに撮影に行ったことがあります。その時、地元のマタギの方と偶然お会いした際に教えていただいたのですが、クマは火薬のにおいをいちばん嫌うらしいです。爆竹を10本ほど鳴らしておくと、少なくともその日、その周辺にはクマは寄ってこないとのことです。クマと出会った時のことを考えるよりも、素人はクマに出会わない方法を考える方が良いともいわれました。
 確かに森に響き渡る音と漂う火薬の臭いは効果てきめんという感じがしますが、何十本もの爆竹を持って、歩きながら爆竹を鳴らすというのはさすがに気が引けます。しかも、枯葉に火でも着きようものなら大変なことになってしまいます。

 しかし、このマタギの方の話が妙に頭に残っていて、その後、クマ避けグッズをいろいろ探してみました。唐辛子のスプレーが最も効果があるようですが、これは目の前にクマがいた時の話ですし、そもそも、急にクマに出くわしたときにスプレーを噴射するような余裕はないと思います。たとえ運よくスプレーを噴射できたとしても、風向きによっては自分の顔に降り注ぐなんていうのが関の山です。

 そして、いろいろ探した結果、たどり着いたのが電子ホイッスルです。

▲電子ホイッスル

 長さが10cmほどで手のひらにすっぽりと納まる大きさです。電池式で、警察官が交通整理をするときなどに吹いている笛のような音がします。しかも、かなりの大音量です。実際にどれくらいの効果があるのか、この音でクマは去ってくれるのかはわかりませんが、森の中で鳴らすと鳥は驚いて飛び去って行きます。
 以来、私は森や山に入るときは、この電子ホイッスルをポケットに入れて歩くようにしています。もちろん、ベアベルも腰に着けています。

 音がとても大きいので、近くに人がいるときに鳴らすとかなり驚かせてしまいます。ですので、これを使うのは誰もいない森や山の中です。
 クマが出るんじゃないかという恐怖心は、歩いているときよりも撮影をしているときのほうが大きいわけですが、ファインダーを覗いていると周囲に目がいかないので、後ろからクマが忍び寄ってきても気がつかないというのがその理由です。
 撮影に入る前に周囲に人がいないことを確認したうえで数秒間、この電子ホイッスルを鳴らし続けます。これだけで何となく安心した気分になり、撮影に没頭することができます。

 今回、滝に向かう途中でクマを見かけ、その後、先に進むか引き返すか決めかねて20分ほどその場にたたずんでいましたが、恐怖心もおさまってきたこともあり、撮影に行ってきました。他に人の姿はなかったので、ときどき電子ホイッスルを鳴らしながら進んだのは言うまでもありません。
 そして、電子ホイッスルの効果があったのかどうかはわかりませんが、その後、クマの姿を見かけることはありませんでした。

 この電子ホイッスルですが、クマ避けだけでなく、緊急時に自分の存在を知らせるということにも使えそうです。幸いにもそういう事態になったことはありませんが、撮影で森や山に入るときは電子ホイッスルと強力な光を照射するLEDライトは常に持ち歩いています。
 火薬を燃焼させたときの臭いがするスプレーがあればぜひ購入して、持ち歩きたいものです。

 余談ですが、山でよく出くわすのがカモシカと鹿(ニホンジカ)です。彼らは警戒心が強いのでソーシャルディスタンスを保ちながらじっとこっちを見ているだけで、襲ってくるようなことはないので安心です。
 また、イノシシも数回見かけたことがあります。イノシシはものすごい勢いで走っていくので、その正面に立っていれば弾き飛ばされてしまいそうですが、不思議なものでクマに対するような恐怖心はありません。
 クマやイノシシの足跡と、それが新しいものか古いものかの見分け方などを教えてもらったこともありますが、撮影の時は地面についた足跡にまで気が回らず、残念ながら教えてもらったことも役に立てられていません。

(2021年12月3日)

#クマ避け鈴 #小道具

大判カメラ撮影に必要な小道具、あると便利な小道具たち(2)

 前回は大判カメラでの撮影の際に必要となる小道具について触れましたが、今回は、必ずしもなくても良いがあると便利、といった小道具たちを紹介したいと思います。
 こういった小道具は何を撮影するかによってその内容も変わってきますので、主な被写体が自然風景や野草という私の撮影スタイルにおいて、普段から持ち歩いている小道具のご紹介ということでご理解ください。

タイマー

 主に長時間露光する際の時間の計測に使います。
 大判カメラ用のレンズに内蔵されているシャッターは、1秒以上の設定はできないものが圧倒的に多いです。それ以上の長い露光をする場合はB(バルブ)、またはT(タイム)ポジションにして、シャッターを開けている時間を計測しなければなりません。もちろん、秒針のある腕時計でも計測は可能ですが、数分以上の露光をする場合、秒針が何回転したかわからなくなってしまうことがあります。

 そこで、タイマーを携行し、これで計測するようにしています。私が愛用しているタイマーはタニタ製のキッチンタイマーです。

▲キッチンタイマー

 非常に小型で軽いので、シャツの胸ポケットなどに入れておいても邪魔になりません。
 このタイマーはカウントアップとカウントダウンの2つのモードがあり、カウントアップにしておくと0秒からカウントをはじめ、経過時間がわかります。一方、カウントダウンにしておくと、あらかじめ設定した時間からカウントが始まり、残り時間がわかります。
 いずれも途中での一時停止もできますし、タイムアップした際のアラームやバイブの設定もできます。
 操作部には開け閉めできるカバーがあり、計測中に不用意に触っても問題がないようになっています。

 100円ショップに売っているタイマーでも全く問題ありませんが、このタニタ製タイマーのわかり易い操作性と可愛らしいデザインが気にいっています。

メジャー

 マクロ撮影を行なう際、カメラの蛇腹の繰出し量を測ったり、被写体までの距離を測るのに使用します。
 カメラから被写体までの距離が、概ね、使用するレンズの焦点距離の10倍以下(150mmレンズならおよそ1.5m以下)の場合、露出補正が必要になりますので、蛇腹の繰出し量を実測して露出補正量を計算するのが目的です。

 マクロ撮影における露出補正の詳細については以下のページをご覧ください。

  「大判カメラによるマクロ撮影(1) 露出補正値を求める

 ほとんどの場合、メジャーは1mほどの長さが計測できれば用が足りるので、1cm間隔で目盛りを振った紐でも問題なく使えますが、100円ショップで購入できるお手軽さからメジャーを使用しています。

▲メジャー

 その都度、蛇腹の繰出し量を実測するのは面倒だと思い、使用するレンズに合わせて繰出し量が一目でわかるスケールを自作したこともありましたが、レンズに合わせて何本も用意しなければならず、しかも、何本もある中から使用するレンズ用のスケールを探し出すのも面倒で、結局、メジャーの方が便利だという結論に至りました。

 私が使用しているメジャーは100円ショップで購入したものです。100円なのであまり文句も言えませんが、使用されている材質が薄いので50cmほど引き出すとすぐに腰が折れてしまいます。蛇腹の繰出し量を測るだけであれば特に支障ありませんが、被写体までの距離を測るときはもっと長く引き出すのでちょっと使いにくいです。マクロ撮影を頻繁にされる方は、ホームセンターなどでもっとしっかりしたものを購入された方がよろしいかと思います。

ソーラー電卓

 メジャーのところで触れた、露出補正量の計算に使います。
 複雑な計算をするわけではないので暗算でもできますが、小数点が出てきたり面倒くさいので電卓を使ってお手軽に済ませています。
 シャツの胸ポケットや上着のポケットに入れてもかさばらないように、カード型の電卓を使っています。

▲ソーラー電卓

 カード型電卓のため厚さが約2mmと薄いので、カメラの裏蓋に両面テープで貼り付けておいたことがありますが、裏蓋を閉めた状態でないと非常に操作しにくいので、結局取り外してしまいました。

 スマホを持ち歩いていればそこに入っている電卓機能で事足りますが、出し入れの煩わしさが軽減されるので、あえて電卓を使っています。

 なお、当然ですがソーラー電卓なので光がないと全く機能しません。夜間の撮影などで使用する場合は懐中電灯などで照らす必要がありますが、私はそれほど多用するわけではないので特に不便には感じていません。

ダークバッグ

 フィルムホルダーにフィルムを入れたり、撮影済みのフィルムを取り出したりするときに使う、外光を遮断する黒い袋のようなものです。割烹着のような恰好をしています。

▲ダークバッグ

 フィルムホルダーへのフィルムの装填は自宅の暗室で行ないますが、長期間の撮影行の場合など、出先でフィルムの装填が必要になったときなどに使います。大量のフィルムホルダーを持っていくのは重いし嵩張るので、装填していないフィルムを持参し、必要に応じて撮影済みのフィルムと入れ替えて使うことがあります。

 ダークバッグの中にフィルムとフィルムホルダーを入れてファスナーを閉じ、袖口のようなところから両手を突っ込んで手探りで作業を行ないます。
 しかし、暗室のように大きな空間があるわけではないので、決して作業性が良いとは言えません。しかも夏場は暑くて手に汗をかいてくるので、フィルムに汗がつかないよう注意しなければならず、できればやりたくない作業です。
 あらかじめ装填したフィルムを使いきったら終了と割り切っておけば、ダークバッグを持っていく必要もありません。

 なお、PENTAX67などの中判カメラに35mmフィルムを入れてパノラマ撮影する場合、フィルム1本を撮り終えた後は真っ暗な中でフィルムを取り出さなければならないので、何本ものフィルムを使う場合は必須のアイテムになります。

ネックライト

 首にかけることができるLEDライトです。
 夜間の撮影の際には何らかの照明が必要ですが、私が使っているのはパナソニックのネックライトという製品です。とても軽くて、首にかけていても全く重さを感じません。

▲ネックライト

 暗い中でカメラにレンズを取付けたり絞りやシャッター速度を設定したり、撮影データを記録したりと、大判カメラでの撮影は手作業が多く、手元を照らす照明が必要です。そんなときに懐中電灯のようなものだと片手がふさがってしまいますが、これは両手がフリーになるのでとても便利です。
 首にかけるとちょうど胸のあたりに光源が来るので作業がしやすいです。
 また、明るさが2段階あり、「強」にすると足元も良く見えるほどの明るさがありますので、歩行の際の照明としても十分使えます。

 懐中電灯のように遠くまで届く指向性の強い光を放つわけではないので、他の人の迷惑になることもあまりないと思います。むしろ、暗い中で自分の存在を周りの人に知らせるという効果もあると思います。

シャワーキャップ

 ホテルのアメニティグッズなどとして置いてあるシャワーキャップです。
 突然、雨がパラついたときとか、滝の撮影で飛沫がかかるとき、あるいは濃い霧の中での撮影時など、カメラやレンズが濡れるのを防ぐために使います。

▲シャワーキャップ

 私は滝を撮影することが多いのですが、豪快な落差のある滝や風が強いときなど、飛沫が舞ってきてカメラが濡れてしまうことがあります。大判カメラは撮影までに手間がかかるので、その間、かなりの飛沫を浴びてしまいます。
 また、濃い霧の中にいると、気がついたら髪の毛にびっしりと細かな水滴がついていたなんていうこともあり、同様にカメラも濡れてしまいます。
 そんな時、シャワーキャップをすっぽりとカメラとレンズに被せれば濡れるのを防ぐことができます(本降りの雨の時はだめです)。

 ピント合わせをする際や実際にシャッターを切るときは、レンズのところにあたる部分に穴を開けます。そのため、何度も繰り返して使用というわけにはいかず使い捨てになってしまいますが、カメラバッグに2~3個入れておくと重宝します。

 雨天時の撮影用として、カメラにかけるレインコートのような製品も販売されていますが、それを使うほどではないときや咄嗟のとき用に、かさばらないので便利です。

 なお、帽子やタオルがないとき、急な雨に降られたら頭に被れば髪の毛が濡れるのを防げますが、変な奴に見られそうなので注意が必要です。

ブロア

 レンズに着いたホコリを吹き飛ばすときに使います。
 屋外で撮影をしていると気がつかないうちにレンズやカメラにホコリがついてしまいます。車のフロントガラスにホコリがつくと視界が悪くなるのと同じで、レンズに着くと画質にも影響があると思いますので、撮影の前にブロアでシュッシュとします。

▲ブロア

 大きなブロアの方が強力な風が出るのですが、意外とカメラバッグの中で場所をとるので、ポケットにも入るくらいの小型のものを持ち歩いています。
 埃っぽいところで撮影をしているとカメラにも結構ホコリが着きます。特に蛇腹の谷のところにうっすらと白くホコリが着くととても気になるので、ときどき吹き飛ばします。

 ブロアの先端にブラシが着いたタイプもありますが、ブラシによって余計にレンズが汚れてしまうことがあるので、私はブラシがついていないタイプを使っています。
 また、素材によっては経年劣化することでブロアの内側が剥離したりして、それがゴミとなってブロアから飛び出すことがあるので、あまり古いものは使わない方が無難かと思います。

プアマンズフレーム

 フレーミングや構図決めの際に、おおよそのアタリをつけるために使用します。
 4×5判用と67判用、612パノラマ用の3種類を自作して、カメラバッグに入れています。

▲プアマンズフレーム  左:4×5判用 右上:67判用 右下:612判用

 厚紙にフィルムと同じ大きさの窓をくり抜き、目盛り(1cm間隔)を振った紐をつけただけの簡単なものです。くり抜いた窓を通して写したい範囲を決め、目盛りをつけた紐がピンと張るように目の下あたりにあてます。その時の目盛りの値が使用するレンズの焦点距離にほぼ等しくなります。

 詳細は下記のページで紹介していますので、ご興味があればご覧ください。

  「構図決めに便利なプアマンズフレームの作成

 目の前に広がる風景を見た時に、どれくらいの焦点距離のレンズを使えば良いかは感覚的にわかります。しかし、使用するフィルムのアスペクト比は決まっているので、例えば、写したい上下の範囲を決めると左右に余計なものが入ってしまう、というようなことはよくありますが、そのようなときにこれがあると便利です。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 あれば便利なものというのは限りがなくて、あれもこれもと言っていると荷物がどんどん増えてしまいます。私もアクセサリー用のバッグの中には様々なものが入っていますが、その中から撮影に持ち出すのは最低限のものにしています。中には一度も使われたことがないものもあります。私のアクセサリー用バッグの中も、そろそろ整理しなければならない時期に来ています。

(2021.11.11)

#撮影小道具