大判カメラ:リンホフマスターテヒニカ45 Linhof MasterTechnika45

 いわゆる大判カメラです。大判カメラの中では最も小さな4×5インチサイズのフィルム(通称シノゴ)を使います。

フィールドタイプの大判カメラ

 一口に大判カメラといっても色々なタイプがありますが、このカメラはフィールドタイプ(テクニカルカメラとも呼ばれています)に分類されていて、外に持ち出して撮影するときに便利な作りになっています。
 折りたたむとコンパクト(といっても結構でかい)になります。距離計がついているタイプもありますが、私のは距離計なしのタイプです。このカメラを使い始めたころ、なぜ大判カメラで距離計が必要なのだろうと不思議に思いましたが、距離計があることで手持ち撮影が可能になるという話しを聞いてぶったまげたものです。このカメラで手持ち撮影する人を尊敬します。

Linhof MasterTechnika 45

 私がこのカメラを使い始めて20年以上になりますが、これまでに蛇腹の交換が2回、オーバーホールが1回で、故障は一度もありません。もっとも大判カメラの場合、電子機器が入っているわけでもなく複雑な機構が組み込まれているわけでもないので、落としたりぶつけたりしない限り、壊れるようなところがないというのが実態です。
 蛇腹は消耗品なので、使用頻度にもよるのでしょうが、私の場合は8~10年ほどで新しい蛇腹に交換しています。何年か使っているうちに折り目のところに小さな穴(ピンホール)が開いてきます。穴の数が少なければ補修して使いますが、数が増えてくると補修しきれないので交換ということになります。

カメラの主な仕様

 このカメラの主な仕様は以下の通りです(リンホフマスターテヒニカ45 取扱説明書より引用)。
  画面サイズ    : 4×5インチ判
  レンズマウント  : リンホフ規格仕様
  フロントライズ  : 55mm
  フロントフォール : ベッドダウンとティルトアップによる
  フロントティルト : 前後各30度  
  フロントスイング : 左右各15度 
  フロントシフト  : 左右各40mm 
  バックティルト  : 前後各20度  
  バックスイング  : 左右各20度
  最大フランジバック: 430mm
  収納時外形寸法  : 180mm(W)×200mm(H)×110mm(D)
  重量       : 2,600g

フランジバック

 私のLinhof MasterTechnika 45 の最小フランジバックは約50mmです。理論上は50mmくらいまでのレンズが使えることになりますが、私の持っているレンズで最も短いのは65mmです(35mmカメラに換算すると18mmくらいのレンズの画角に相当します)。
 一方、最大フランジバックですが、カメラ自体は430mmまで可能ですが、私のカメラにつけている蛇腹はそこまで伸びないので、390mmくらいが限界です。ということで、65mmから400mmまでのレンズを持っていますが、400mmレンズはテレタイプと呼ばれるフランジバックが短いレンズです。

 最大フランジバックが大きいというのは長い玉が使えるというメリットがありますが、その反面、レールを短くたためないというデメリットもあります。このカメラも65mmや75mmのレンズだとレールが写り込んでしまいますので、ベッドダウンするかフロント部をライズする必要があります。夜景などの暗い被写体を撮影する時など、気づかずにレールが写り込んでしまったという失敗も何度かあります。

フロント部のアオリ

 大判カメラの特徴は何といってもアオリができることですが、風景写真の場合、それほど頻繁にアオリを使うわけではありません。
 Linhof MasterTechnikaのアオリ操作の中で個人的にいちばんのお気に入りがフロントライズ(レンズ部を上げる)の仕組みです。ラチェットハンドルのようなものをスコスコ動かすと、フロント部分が上がったり下がったりします。上がったり下がったりと書きましたが、Linhof Master Technikaはノーマルの状態でフロント部が最下部にありますので、さらに下げるにはベッドダウンするしかなく、フロントフォール(レンズ部を下げる)はできなく、フロントライズのみというのが正しい表現かもしれません。ライズは55mmまでできますので、風景写真を撮る分には十分すぎるアオリ量です。

Linhof MasterTechnika 45  Front Rise

 一方、フロントティルト(レンズ部を前後に倒す)はダイヤルを緩めた後、手で動かすので微妙な操作がしにくいというのが難点です。これに対して国産の大判カメラのWISTAは、ダイヤルをスリスリと回すことでフロント部がゆっくりと前後に傾いてくれるのでとても使い易いと思います。
 フロントティルトは近景から遠景までパンフォーカスに写したい時など、比較的使う頻度の多いアオリです。フロントスイング(レンズ部を左右に首ふり)もパンフォーカスにしたい時などに使いますが、ティルトほどの使用頻度はありません。
 そして、フロントシフト(レンズ部を左右に動かす)に至ってはほとんど出番がありません。この20年間で数回しか使ってないと思われます。

Linhof MasterTechnika 45  Front Tilt

バック部のアオリ

 このカメラのバック部(フィルム部)のアオリも特徴的で、4か所のねじを緩めるとバック部を約40mm、後方に引き出すことができます。しかも4本の軸が独立して動くので、ティルトとスイングを自由に行うことができます。ねじを緩めて引き出した状態ではバック部がグニャグニャとだらしなく動いてしまいますが、アオリの自由度は抜群だと思っています。これと同じ方式はHorseman45 FAなどのカメラでも採用されています。
 フロント部のあおりはやりすぎるとイメージサークルの小さなレンズではケラレてしまうことがありますが、バック部のアオリではケラレることがないので、画像の変形が気にならない場合はあえてバック部のアオリを使うことがあります。

Linhof MasterTechnika 45  Back Tilt & Back Swing

バック部のアオリを使った作例

 バック部であおると近景を強調した写真を撮ることができます。下の写真は福島県にある小峰城と桜を65mmレンズで撮影したものです。バック部を大きくあおって、お城の天守閣にも頭のすぐ上にある桜にもピントをもってきています。

小峰城と桜  Linhof MasterTechnika 45 Fujinon SWD65mm 1:5.6 F32 1/15 PROVIA100F

 長年このカメラを使ってきましたが、とにかく作りが堅牢で使っていても安心感のあるカメラです。加工精度が素晴らしいのだと思いますが、各部が適度な重さをもって動き、ロックするとびくともしません。カメラによって写真の出来が異なるわけではありませんが、自分の撮影意図に応えてくれるカメラだと思っています。
 このカメラの後継機であるLinhof MasterTechnika 2000については、別の機会にご紹介したいと思います。

(2020.7.28)

#リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

中判レンズ ペンタックス67:SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4

 PENTAX67用の純正レンズの中でいちばん明るいレンズです。35mmカメラに換算すると50mmくらいのレンズの画角に相当し、中判レンズでは標準レンズに分類されます。

有名なアトムレンズ...ではないようです

 私の持っている105mmは「SMC TAKUMAR」で、「SUPER-TAKUMAR」の次であり「PENTAX」になる前のレンズです。シリアル番号が8490千番台ですので、1980年代中頃に製造されたレンズではないかと思います。ちなみに「TAKUMAR」の由来は、当時の旭光学工業の社長の弟さんである梶原琢磨氏からとったといわれています。

SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4

 このレンズ、初期のものは屈折率を上げるためにガラスに酸化トリウムが添加されている、いわゆる「アトムレンズ」というのは有名な話ですが、私の持っているレンズがそれに該当するのかどうか、よくわかりません。アトムレンズは経年で黄変するといわれていますが、私のレンズは目視する限り、黄変は認められません。1970年代後半をもってアトムレンズは終焉を迎えたという話しもあるので、たぶん私のレンズは放射線は出していないと思われます。
 余談ですが、数年前までPENTAX6x7 SHIFT 75mmというレンズを持っていましたが、このレンズはかなり黄変しており、カラーポジにはっきりと影響が出るほどでした。このレンズは製造年からしてアトムレンズではないと思うのですが、あまり出番がなかったので手放してしまいました。

レンズの主な仕様

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 46度
   レンズ構成枚数 : 5群6枚
   最小絞り    : 22
   最短撮影距離  : 1.0m
   フィルター径  : 67mm
   最大径x長さ  : 91.5mm × 60mm
   重さ      : 590g

 SMC TAKUMAR 6×7 105mm、見かけは小ぶりですが持った時にズシッとした重さを感じます(カタログ上は590gとなっています)。鏡胴が金属製ということもあるのでしょうが、明るくするために大口径のレンズを使っていることも重さの理由かもしれません。このレンズをPENTAX67に装着すると、絶妙なバランスを保っているように感じます。カメラとレンズで総重量が2.5kg近くにもなるので確かに重いのですが、このバランスのせいなのか、実際の重量ほどには感じないといったところでしょうか。
 ヘリコイドも適度の重さがあり、35mmカメラ用のレンズに比べるとヘリコイドは重いと思うのですが、重量級のカメラに対してスカスカと動いてしまうようなことがありません。

SMC TAKUMAR6×7 105mm の写りと作例

 個人的には非常に素直な写りのする素晴らしいレンズだと思っています。ガウスタイプのレンズは歪曲収差をおさえることができるといわれていますが、このレンズもダブルガウス構成になっており、風景が主な被写体の私にとって気になるような収差はほとんど見られません。開放で撮った際、被写体によってはごくまれに周辺部でふわっとしたような写りに感じられることがあります。ポジをルーペで見てみるとコマ収差が若干残っているような感じもしますが、詳しいことはわかりません。

 シャープな写りをしますがカリカリとした硬さはなく、やわらかさを持ったシャープさとでも言ったらよいのか、それが画の立体感を生み出しているように思えます。そして、46°という画角は変に誇張することなく、ごく自然に風景を切り取ってくれるように感じます。画角は35mmカメラに50mmレンズをつけた時とほぼ同じとはいえ、焦点距離は約2倍の105mmあるわけですから、当然ぼけ方も50mmレンズのそれとは異なりますので、やはり中判カメラならではの画が生み出されます。

 下の写真は福島県で偶然見つけた水芭蕉の群落です。小雨が降っていて、奥の方には霧が立ち込めています。写真の良し悪しはともかく、見事な描写をしてくれていると思います。

水芭蕉群落  PENTAX67 SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F16 1s Velvia50

 PENTAX67用の純正レンズはこれを含めて全部で11本そろえていますが、このレンズ、出番の多さでは3本の指に入ります。

余談

 写りには関係ありませんが、私はTAKUMARレンズの平目ローレット加工されたデザインのヘリコイドが好きです。しかし、PENTAXになってからはあや目ローレットになってしまいました。しかも金属ローレット加工ではなく、ゴムのような材質のリングをはめ込んであるだけなので、質感も高級感も失われてしまっています。

(2020.7.26)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写

中古の大判カメラ&レンズの価格

 私が使っているカメラやレンズはすでに生産終了品であるばかりかメーカーサポートも終了しており、壊れた場合は自分で修理するか、手に負えない場合はカメラ修理専門店にお願いすることになります。しかし、修理不可能な場合はもう使うことができなくなってしまいます。そんな最悪の事態にならないよう、修理が難しそうな機材については予備を用意しています(丸ごと使うというよりはパーツをとるため)。当然新品が手に入るわけではないので、中古カメラ店に行ったりネットオークションなどを使ってお目当ての品を探すことになります。

 そんな中で最近気がついたことがあります。それは、中古のフィルムカメラやレンズの価格が高くなっているということです。数年前は程度の良いレンズなどでも市場に出回っている数の多いものは捨て値同然で売られていたものですが、ここ最近は価格が高騰している感じがします。ネットオークションなどでも結構高い値がつけられており、時たま安い値で出品されていても、あっという間に値が吊り上がっていってしまいます。特に大判カメラや大判レンズにその傾向が強いように思います。

 大判カメラや中判カメラを使う人がそんなに多いとは思えないのですが、ここ数年は中判や大判の売れる台数が伸びているという話を中古カメラ店の方から伺ったことがあります。しかし、私もあちこち撮影に出かけますが、中判や大判のカメラで撮影している人に出会うことは一年に一回あるかどうかといった感じで、ほとんど出会うことはありません。いったいどこで何を撮影しているのだろうと不思議にさえ思います。

 そういえば、私は新宿の大手カメラ店でフィルムを購入することが多いのですが、ここ数年、大判フィルムが売り切れという状況に遭遇したことが数回あります。フィルムを使う人が減る一方なので、お店も仕入れる数量を減らしているのだろうと思っていたのですが、どうやらそれだけの理由ではないかもしれません。昔は大判フィルムを購入するのはほとんどがプロでしたが、最近はプロではなくアマチュアの購入が圧倒的に多いという話を聞いたことがあります。

 そんな状況を鑑みると、中古市場でフィルムカメラやレンズの価格が上昇しているのもうなずける気がします。フィルムを使う人がどんどん減り、フィルムの種類も減り、価格がどんどん上がっていく中で、フィルムカメラを使う人が増えているとしたら、それはとても喜ばしいことです。私の愛機でもあるPENTAX67が若いカメラ女子にとても人気があるらしく、あの重いカメラを女性が使っている姿を妙にカッコ良く思えるのは私だけではないと思います。

 私がカメラやレンズを購入するのは予備機やパーツ取りが主な目的だというのは前にも書いた通りですが、価格は安いに越したことはありません。かつて、大判カメラや大判レンズは高価で簡単に購入できるものではありませんでした。中古の価格が上がったとはいえ、新品の価格の何分の一という金額で購入できるので、機材の面で今はとても恵まれているのかもしれません。これでフィルムの価格がもう少し下がってくれれば言うことはないのですが。

(2020.7.24)

#中古カメラ

ホースマン Horseman パノラマフィルムホルダー

 ときどき、無性にパノラマ写真を撮りたくなることがあります。今はスマホやデジカメで複数枚の写真を合成して簡単にパノラマ写真を作ることができますが、私の場合、フィルム上にパノラマ写真を残したいという欲望です。世の中には昔からいろいろなパノラマカメラが存在していますが、それらはどれも高価で簡単に手を出せるものではありません。

パノラマ写真の火付け役

 1990年代、コンパクトカメラに「パノラマモード」なるものが装備され、パノラマ写真がブームになったことがありました。最初にどのメーカーが始めたのかはわかりませんが、35mmフィルムの上下をそれぞれ5mmほどマスクすることで、14mm×36mmほどのパノラマ写真(アスペクト比は1:2.5)にするというものでした。しかし、もともと決して大きくはない35mmフィルム1コマの約4割を使わないわけですから、プリントすると画像の粗さが目立ってしまいます。ですが当時としては横長の写真が目新しく感じたせいか、各メーカーからがパノラマ用の額縁やアルバムがたくさん発売されていました。
 残念ながら私は実際に使ったことがないので、ネガや写真がありません。

フルパノラマカメラ 富士フイルム TX-1

 1998年に富士フィルムから「TX-1」というカメラが発売されました。35mmフィルム用のレンジファインダーカメラですが、通常の写真のほかにフルパノラマの写真が撮れる、しかも1コマごとにノーマルとフルパノラマを自由に切り替えられるという画期的なカメラでした。私はこのカメラがどうしても欲しくなり、2000年だったと思いますが欲望に抗いきれずに買ってしまいました。レンズは30mm、45mm、90mmの3本がラインナップされていましたが、45mmと90mmのレンズも一緒に購入しました。
 下の写真は実際にTX-1の45mmレンズで撮ったポジです。1コマの大きさは24mm×65mmで、アスペクト比は1:2.7です。

「富士見高原 花の里」 Fujifilm TX-1 45mm 1:4

 35mmフィルムとはいえ、通常の1コマの2倍近くの面積があるので見応えもありますし、解像度やコントラストもさすがFujinonという感じです。しかしながら、1コマの対角が70mm近くもあるので、レンズは中判をカバーするほどのイメージサークルを持っているとはいえ、やはり周辺光量の落ち込みが目立ちます。

 1年、2年とTX-1を使っているうちに、レンズのバリエーションに不足を感じるようになりました。かといって30mmレンズは高額すぎて手が出せません。ある日、PENTAX67に35mmフィルムを入れればフルパノラマ写真が撮れるではないかと思い、手元にあったPENTAX67を少しいじってみました(PENTAX67のパノラマ改造については、別途ご紹介したいと思います)。

PENTAX67をパノラマ仕様に改造

 下の写真がPENTAX67改で撮ったフルパノラマのポジです。1コマのサイズが24mm×70mmで、アスペクト比は1:2.9、TX-1よりも5mmほど横長です。そして何よりも手元にある35mmフィッシュアイから500mm望遠まで10本のレンズが使えることと、周辺光量の落ち込みが全くないので、不満は一気に解消しました。

「石舟橋」 PENTAX67 smcPENTAX 55mm 1:4

ホースマン ロールフィルムホルダー

 しかし欲望とは限りがないもので、35mmフィルムでのパノラマでは飽き足らなくなり、中判フィルムでのパノラマ写真が撮りたくなってきました。前にも書いたように市販されているカメラはとても高価で買えないので、大判カメラ用のロールフィルムホルダーを手に入れることにしました。連日オークションサイトで探し、程度が良くて価格も手頃なホースマン製の6×12ロールフィルムホルダーをやっとゲットすることができました。
 このフィルムホルダーはブローニーフィルム(120)1本で6枚の撮影ができます。220フィルム用があるとうれしいので調べてみましたが、そもそも生産されていないようです。
 構図を決め、ピントを合わせた後、大判カメラのバック部(フォーカシングスクリーン)を外し、このフィルムホルダーを装着しなければならないので結構手間です。

Horseman 612 Film Holder
Linhof MasterTechnika45 + Horseman Film Holder

ブローニーフィルムでパノラマ撮影

 下の写真が6×12ホルダーで撮ったパノラマのポジです。1コマのサイズは56mm×118mmです。アスペクト比は1:2.1で、TX-1やPENTAX67改に比べると縦横比は控えめですが、十分見ごたえがあります。

「津軽海峡」 Linhof MasterTechnika45 Fujinon W150mm 1:5.6 Horseman 612 Holder

 世の中には6×17というパノラマ専用のカメラもあります。いつかは6×17に挑戦したいと考えていますが、いつになることやら...

 ところで、パノラマ写真は圧倒的に横位置での撮影が多いのですが、個人的には縦位置のパノラマ写真が好きです(縦長をパノラマというのが適切かどうかわかりませんが)。もちろん横長の画も迫力ありますが、縦長の掛け軸のような画は格別のものがあると感じています。
 下の写真は6×12の縦位置での写真です。横位置のパノラマは比較的絵にしやすいのですが、縦位置のパノラマは結構難しいです。はたして、この風景を超縦長の6×17で撮ることができるだろうかと思います。

「安久津八幡神社」 Linhof MasterTechnika
            Fujinon W125mm 1:5.6
            Horseman 612 Holder

(2020.7.11)

#パノラマ写真 #ホースマン #Horseman #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

中判カメラ:PENTAX67Ⅱ ペンタックス67Ⅱ

 私が持っているカメラの中で最も出番の多いのがこのPENTAX67Ⅱです。

ペンタックス最後の67判カメラ

 私がこのカメラを購入した当時、PENTAXブランドのカメラは「旭光学工業」という会社で製造されていましたが、その後、事業の再編や会社の合併等があり、現在はリコーイメージングという会社に事業が引き継がれています。とはいえ、このカメラの生産はすでに終了しており、メーカーの正式サポートも終了しているという状態です。

PENTAX67Ⅱ + smcPENTAX67 45mm 1:4

 このカメラを購入してから20年近く経ちますが、いまだに故障したことは一度もなく、本当に信頼性の高いカメラだと思います。
 私のPENTAX67Ⅱはオリジナルからいじっている箇所が2点あります。
 一つはフォーカシングスクリーンを全面マットタイプに交換しています。標準ではマイクロプリズム式のフォーカシングスクリーンがついていますが、風景写真を撮るときに画面全体でピントが立ち上がってくるほうが使いやすいという理由で全面マットタイプにしています。
 二つ目はシャッタスピードを1/2段に設定できるようにしています。微妙な露出の時に、もちろん絞りを1/2段加減することでも対応できますが、どうしても絞り開放で撮りたいとかということがあるので、シャッタースピードで対応できるようにという意図です。

 また、PENTAX67Ⅱの前身であるPENTAX67は、220のフィルムで20コマの撮影ができましたが、PENTAX67Ⅱは21コマの撮影が可能になっています。現在は220のフィルムがなくなってしまいましたので意味がないかもしれませんが、私は220のフィルムをストックしてありますので、まだもうしばらくの間、その恩恵にあずかることが来ます。

こんな不満点も

 信頼性の高いカメラではありますが、100%満足かというとそういうわけでもなく、細かなことを上げれば不満な点もたくさんあり、特に次の二つについては不満度合いの大きいところです。
 ●アイレベルファインダーの視野率が低い
 前身のPENTAX67も含めてアイレベルファインダーの視野率が90%しかなく、ファインダーで確認できるよりもかなり広い範囲がフィルム上に記録されてしまいます。これに気をつけないと、現像が上がってきてみたらファインダーでは見えなかった余計なものが写り込んでいた、なんてことが起こりえます。
 最終的に写真に仕上げる際、周囲がカットされてしまうので、これを考慮して視野率を抑えているという話もありますが、私個人としては大きなお世話といった感じです。
 別売りのウエストレベルファインダーを使えば視野率100%は確保できるのですが、撮影時のカメラの位置を高くできないという不便さがあります。
 ●ボディーがプラスチック製
 これはカメラの機能や写りに関係はありませんが、見た目の安っぽさが気になってしまいます。最近はどのメーカーのカメラもプラスチックが多用されていますが、昔の金属製のカメラを持った時のズッシリ感と手に伝わるヒンヤリ感は、「撮るぞ!」という気持ちを掻き立ててくれる気がします。
 しかし、プラスチックボディとはいえPENTAX67Ⅱはかなりの重量があるので、これ以上重くなってほしくないというのも正直なところですが。

PENTAX67用 ウェストレベルファインダー

マニュアル撮影への拘り

 このカメラはもちろん露出計が内蔵されており、しかもスポット測光や平均測光にも対応していますが、私はほとんど使ったことがありません。単体露出計(スポットメーター)で計測して、マニュアルモードで撮影するというのが私のスタイルです。カメラ内蔵の露出計を信用していないわけではなく、やはり自分の意図した仕上がりにしたいという思いからです。そのため、撮影に要する時間はかかってしまいますが、現像が上がってきたときのポジの状態を頭の中に描きながら撮影をするというのも楽しいものです。

1枚多く撮れるメリットも過去の話

 PENTAX67Ⅱになってから、220のフィルムで21枚撮れるようになったということは前にも書きましたが、これはフィルムが約5%値下げされたのと同じ効果ですから、当時は結構ありがたく思ったものです。残念ながら220のフィルムの生産は終了してしまいましたが。
 PENTAX67はフィルムのコマ間の長さが乱れることが時々ありましたが、PENTAX67Ⅱではそのようなことが起きた記憶がありません。とても正確にフィルム送りがされている感じです。裏蓋を開けて中を見る限りでは、PENTAX67もPENTAX67Ⅱもフィルム送りの機構は同じように見えます。加工精度が上がったのが理由かどうかよくわかりませんが、いずれにしても1枚多く撮れるのはありがたいことです。

(2020.7.7)

#ペンタックス67 #PENTAX67

四つ切が減った?

 写真の楽しみ方は人それぞれだと思いますが、私は撮った写真を大きく伸ばして額装しています。最低でも四つ切、多くは半切や全紙にプリントして額装しています。
 写真は大きく引き伸ばすと全く別物になります。私のようなへっぽこな写真でも四つ切に伸ばして額装するだけで、著名なフォトグラファーが撮った写真ではないかと思えてしまいます(誤解のないように付け加えますが、あくまでも自己満足の世界です)。

 写真の額は各社から様々なものが出ていますが、マット紙の縁の幅が大きい(ワイドマットタイプ)額のほうが写真が映えます。四つ切の額の場合、多くの製品はマット紙の縁の幅が35mmくらいです。このような額だと2,000円前後という比較的手ごろな値段で購入できますが、マット紙の幅が倍くらいあるワイドマットタイプの額になると価格は3倍以上になります。しかし、同じ写真を額装しても見栄えが全く異なります。つまり、私のようなへっぽこな写真でも立派に見えるということです。

 ところが近年、額縁を購入しようとしてネットで検索したり大手のカメラ店に行っても、四つ切の額縁の種類が極めて少なくなっている気がします。代わりに増えているのがA4とかワイド四つ切です。多分これは、35mmカメラのアスペクト比に近いことが理由ではないかと思われます。四つ切はアスペクト比が1:1.2くらいなので、35mmカメラの1:1.5で撮った写真だと左右が大きくカットされてしまいます。私が使っているカメラは67判や4×5なので、四つ切はフィルムのアスペクト比と近いので、伸ばしてもしっくりくるわけです。

 写真のアスペクト比については人それぞれの好みだと思いますし、写真として仕上げるのにやりやすい比率があると思います。
 それと、これは人間の目の錯覚なのかもしれませんが、同じアスペクト比でも縦位置と横位置では、縦位置のほうがアスペクト比が大きく感じます。ですので、35mmカメラで撮った縦位置の写真はとても縦長に感じてしまいます。

 講釈はともかく、私にとって四つ切の額縁のバリエーションが減ってしまっているのは悲しいことです。額縁はなんでもいいというわけではなく、やはり写真が映えることが重要です。特に私のようなへっぽこ写真の場合、額縁の果たす役割は極めて大きいのです。額装する写真によって似合う額縁、似合わない額縁がありますが、個人的には主張しすぎない額縁が好きです。具体的には額縁のフレームが太すぎない、色が目立ちすぎないというのが好みです。額縁のフレームが目立ちすぎると、額装した写真よりもフレームに目が行ってしまいます。額縁に負けない写真を撮ればいいじゃないかと言われればそれまでですが、額縁によって写真を引き立ててもらうのも、へっぽこフォトグラファーのへっぽこたる所以です。

(2020.7.6)

#額装