KOWA SIX MM コーワシックス MM 国産の中判一眼レフ

 キャベジンやコルゲンで有名な興和株式会社が1960~1970年代にかけて製造していた中判(66判)の一眼レフカメラのひとつで、独特なスタイリングが特徴です。今のカメラにはない無骨さのようなものは感じますが、かといって古臭さがあるわけでもなく、まさに写真を撮る機械といった感じです。
 今回はKOWA SIX MMをご紹介します。

二眼レフのような縦長の独特のフォルム

 コーワシックスシリーズは、1968年に初代のコーワシックスⅠが発売され、以降、さらに3つのモデルが発売されて、全4モデルが存在しているようです。
 KOWA SIX MMは1972年に発売された2番目のモデルです。初代KOWA SIXにミラーアップ機能と多重露光機能が追加されたことで、「MM」というネーミングになっているようです。

▲コーワシックス MM KOWA SIX MM

 コーワシックスシリーズに共通している縦長のフォルムは独特で、ローライフレックスの6000シリーズにちょっと似ています。国産のカメラですが設計したのはドイツ人技術者らしく、他のコーワ製カメラとはずいぶんかけ離れたデザインもうなずける感じです。

 標準ではウエストレベルファインダーが装着されており、上から覗き込むスタイルでの撮影なので縦長のボディというのはホールディングがしやすいです。感覚的には二眼レフカメラとよく似ています。
 サイズは116mmx137mmx157mmで、背丈は二眼レフカメラとほぼ同じですが、一回りほどおデブな感じです。ただし、重さは1,750gあり、かなり重いです。これにレンズをつけて長時間首から下げ続けるのは結構きついものがあります。

 このカメラの主な仕様は以下の通りです。

  ・66判レンズシャッター一眼レフ
  ・シャッター:T、1~1/500秒
  ・ファインダー:ウエストレベル(標準)
  ・レンズマウント:スピゴットマウント
  ・使用フィルム:120(12枚撮り)、および220(24枚撮り)
  ・ミラーアップ機能あり
  ・多重露光機能あり
  ・サイズ:116mmx137mmx157mm
  ・重量:1,750g

明るくて見やすいファインダー

 カメラの上部にあるファインダーカバーを持ち上げるとバネの力でフードがカパッと開きます。シャッターを切った後はミラーが跳ね上がったままになっているので、再度巻き上げ操作をして、ミラーを下ろさないとファインダーに光が入ってきません。
 フォーカシングスクリーンはフレネルタイプが採用されており、とても明るくて見易いファインダーです。

▲KOWA SIX MM のファインダー

 ファインダーのフード内にはルーペが装備されており、ピント合わせの際、細部まで確認ができます。また、このルーペは視度調整用に交換が可能です。

あまりお目にかかることができないスピゴットマウント

 スピゴットマウントという規格があるわけではないようです。レンズとカメラを相対的に回転させてはめ込むのではなく、スピゴットと呼ばれる締め付けリングのようなもので固定する方式のことをいうようです。
 コーワシックスシリーズはボディ側にスピゴット(締め付けリング)があり、レンズを差し込んだ後、このリングを回して固定します。レンズの取り外しの際はシャッターをチャージした状態にしておく必要があります。

▲スピゴットマウント

 スピゴットマウントは構造はシンプルですが、レンズの取付けや取り外しの際、ボディとレンズを持ちながらスピゴットを回さなければならず、操作がし易いとは言えません。手は2本しかないので、レンズ取り外しの時はカメラをテーブルの上とか膝の上に仰向けに置いて操作しないと、レンズを落としてしまいそうです。
 上の写真でオレンジ色の矢印のレバーでスピゴットのロックを解除します。

フィルムの入れ替えがやりにくい

 このカメラの裏蓋は、自動車のハッチバックドアのように上に跳ね上げる方式です。しかも、ファインダーのフードに当たるため、90度くらいしか開きません。
 また、裏蓋の内側にはフィルム圧板があり、これが結構重いので裏蓋が簡単に落ちてきてしまいます。裏蓋は取り外しができるので外してしまえば操作しやすいですが、外したりはめたりは面倒くさいです。

▲裏蓋を開けた状態

 このため、フィルムの交換の際に裏蓋が邪魔になります。レンズの交換の時とは逆に、テーブルの上などにレンズを下に向けて置いた状態にしておかないと、とてもやりにくいです。
 屋外でテーブルなどがないときは、膝の上にカメラを逆さまに置いてフィルムを入れ替えるということになり、あまりスマートではありません。

大型のフィルム巻き上げノブ

 フィルムの巻き上げノブは大型で使い易いです。クランクが折りたたまれているので、これを持ち上げて巻き上げることもできますが、クランクを使わなくても非常に楽に巻き上げができます。

▲大型のフィルム巻き上げノブ

 巻き上げ角度はおよそ270度くらいだと思います。適度な重さがあり、巻き上げが終わるとノブの回転がストンと軽くなります。
 この状態でミラーが下がるので、ファインダースクリーンに像が映し出されます。

MMから採用されたミラーアップ機構

 どのような機構になっているのかよくわからないのですが、ミラーアップに関しては独特な動きをします。巻き上げを行なった後、ミラーアップノブを回してシャッターボタンを押すと、シャッターは切れずにミラーアップだけが行なわれます。その後、再度、シャッターボタンを押すとシャッターが切れます。
 ただし、1回目のシャッターボタンを押した後はミラーが上がっているので、ファインダーには何も映っていません。2回目のシャッターボタンを押すまでの間、ファインダーでは何も見えない状態になるので、この間にカメラが動いてしまうと構図が変わってしまいます。

▲ミラーアップノブ

 PENTAX67ほどではありませんが、ミラーショックはそこそこある方だと思います。ミラーアップを使うよりもセルフタイマーを使った方がブレ防止には効果があると思うのですが、10秒と長いのであまり現実的ではありません。それこそ、手持ち撮影の場合はその間にカメラが動いてしまいそうです。

カメラグリップの取付けもできますが

 専用のカメラグリップが用意されており、カメラの底にネジで締め付けるようになっています。
 私は純正品は持っていませんが、マミヤCシリーズ用のグリップを若干改造して取り付けるようにしていました。カメラの底部にある2個のピン穴の間隔がほんの少し異なる(マミヤCシリーズの方が狭い)ので、グリップの2本のピンの1本を抜いています。
 カメラにグリップを取り付けるとこんな感じです。

▲カメラグリップ(マミヤCシリーズ用を改造)

 左手だけでカメラを支えられるので安定するようにも思えますが、私は二眼レフカメラのように、カメラの下側を両手で支える方が使い易く、グリップはほとんど使ったことがありません。
 アイレベルファインダーを取り付けた時は便利かも知れません。

撮影はしなくとも、ときどき動かすことも大切

 このカメラに限ったことではありませんが、特に機械式のカメラは時々、撮影と同じように稼動箇所を動かすことが大切です。コーワシックスは長期間使わずにいると、巻き上げ機構が固着してしまうという傾向があるようです。巻き上げができないとレンズの取り外しもできなくなってしまいますから、そうなるとカメラの側板を外して修理するしかなくなってしまいます。

 さすがに発売から50年も経っているので、巻き上げ機構以外でも故障する可能性も十分に起こりえます。人気のあるカメラという話しもよく耳にしますが、中古市場では意外と安い価格で出回っていますので、部品取り用に中古品を1台、買っておこうかなと思っています。
 
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 ディスプレイしておくだけでも様になるカメラだと思いますが、やはり、撮影してこそのカメラだと思います。次回はレンズのご紹介をしたいと思います。

(2021年8月30日)

#KOWA_SIX #コーワSIX

大判写真と35mm判写真は何がどのように違うのか

 私は風景を撮る機会が多いので、大判カメラ(主に4×5判)を使う頻度も高くなります。カメラはでかいし、撮影に手間がかかり著しく機動性に欠けるし、フィルムや現像などコストはかかるし、デメリットばかりが目立ってしまいがちですが、仕上がった大判写真の美しさや迫力は、数々のデメリットを補って余りある魅力があります。
 写真としての出来不出来は大判だろうが35mm判だろうが関係なく、大判だから良い写真が撮れるわけではありませんし、もちろん35mm判でも良い写真は撮れます。ですが、大判と35mm判とでは明らかに異なる点がいくつかあります。今回はその違いについて触れてみたいと思います。

フィルムサイズの違いとその影響

 35mm判と大判で最もわかり易い明確な違いは、言うまでもなく一目瞭然、フィルムのサイズです。実際に画像が記録される大きさは、

  35mm判 : 36mm × 24mm
  4×5判  : 121mm × 95mm

 で、面積比でいうと4×5判は35mm判の約13.3倍になります。
 アスペクト比(縦横比)が異なりますが、4×5判の対角の長さは35mm判の約3.56倍になります。

 フィルムをデジカメの撮像素子のような画素数で表現することはあまり意味があるとは思いませんが、比較をするうえで数値化したほうがわかり易いので、あえて画素数で表してみます。
 富士フィルムが公開しているデータシートによると、リバーサルフィルムVelviaの場合、解像力は80~160本/mmとなっています。コントラストが非常に低いときで80本/mm、高コントラスト時で160本/mmということですので、中間の値をとって120本/mmとして計算してみます。

 この「解像力」の意味ですが、120本/mmとは、1mmの幅の中に120本の線を識別できるということです。したがって、最低でも240画素以上が必要ということになります。
 この値をフィルムのサイズにかけ合わせると以下のようになります。

  35mm判 :  36mm × 240本/mm × 24mm × 240本/mm
       = 8,640dot × 5,760dot
       ≒ 4,977万画素

  4×5判 :  121mm × 240本/mm × 95mm × 240本/mm
       = 29,040dot × 22,800dot
       ≒ 6億6,211万画素

 では、この画素数の違いが、写真にとってどの程度の影響があるかということを試算してみます。35mm判と4×5判ではアスペクト比が違うので、横置きの場合の水平方向(長辺)を対象に進めます。

 いま、35mm判カメラに焦点距離50mmのレンズをつけて、5m先の被写体にピントを合わせることを想定してみます。水平方向の長さ36mmのフィルムに対して焦点距離50mmのレンズですので、水平画角は39.6度になります。
 4×5判のフィルムでこれと同じ水平画角となるレンズの焦点距離は168mmです。実際に168mmなどという中途半端な焦点距離のレンズはないと思いますが、便宜上、この値で話を進めます。
 下の図を参照してください。

 上の図から分かるように、5m先にある被写体を、水平画角39.6度でとらえた時、フィルムに写る水平方向の長さは3.6m(3,600mm)です。
 この3.6mを、35mm判では8,640dotで、4×5判では29,040dotで記録するわけですから、それぞれの分解能は以下のようになります。

  35mm判 : 3,600mm ÷ 8,640dot = 0.417mm/dot
  4×5判 : 3,600mm ÷ 29,040dot = 0.124mm/dot

 つまり、5m先にある被写体について、35mm判では最小で0.417mmまで識別でき、4×5判では最小で0.124mmまで識別できるということになります。言い換えると、35mm判が1ドットで記録される範囲を、4×5判は約3.36ドットで記録されるということです。
 これは、数値上からは5m先にいる人の指の指紋が識別できる解像度ですが、実際には指紋のコントラストはそんなに高くないと思いますので現実的には無理ではないかと思われます。

 また、色が変化しているような場合、4×5判の方が色の変化を滑らかに記録できることになります。35mm判で画素と画素の間の色の変化を、4×5判では3.36段階に分けて記録されるわけですから、滑らかさの違いは想像に難くないと思います。
 画素数が多いことで細部まで記録できるのはもちろんですが、写真を見た時に、35mm判に比べて4×5判で撮った写真の方が階調が豊かに感じられるのはこのような理由ではないかと思います。

 なお、実際にはレンズによっても左右されると思いますが、ここではレンズによる影響は考慮していません。

被写界深度の違いとその影響

 フィルムサイズ(画素数)の違いの次は被写界深度の違いです。
 上と同じ条件(35mm判に焦点距離50mmのレンズ、4×5判に焦点距離168mmのレンズをつけ、5m先の被写体を対象)のときの被写界深度を比較してみます。

 被写界深度の計算式(近似式)は以下の通りです。

  前側被写界深度 D₁ = a²εF / (f² + aεF)
  後側被写界深度 D₂ = a²εF / (f² - aεF)

 ここで、
  a :被写体までの距離[mm]
  ε:許容錯乱円[mm]
  F :絞り値
  f :レンズの焦点距離[mm]
 です。

 許容錯乱円は35mm判の場合、0.022~0.028mmの値が使われていることが多いようなので、ここでは中間の値の0.025mmを用いることにします。
 上の式に、a = 5,000、ε = 0.025、f = 50、および、f = 168、絞り値Fには大判レンズの開放値として多く採用されているF = 5.6をあてはめてみます。

 まず、35mm判、焦点距離50mmのレンズの場合です。

  前側被写界深度 = 5,000×5,000×0.025×5.6 / (50×50 + 5,000×0.025×5.6)
          = 1,094mm

  後側被写界深度 = 5,000×5,000×0.025×5.6 / (50×50 – 5,000×0.025×5.6)
          = 1,944mm

 続いて、4x5mm判、焦点距離168mmのレンズの場合です。

  前側被写界深度 = 5,000×5,000×0.025×5.6 / (168×168 + 5,000×0.025×5.6)
          = 121mm

  後側被写界深度 = 5,000×5,000×0.025×5.6 / (168×168 – 5,000×0.025×5.6)
          = 127mm

 この結果から分かるように、同じ絞り値F5.6の場合、35mm判(f=50mmレンズ)の被写界深度は3,038mmですが、4×5判(f=168mmレンズ)の被写界深度はわずか248mmしかありません(いずれも前側被写界深度と後側被写界深度を加算した値です)。

 ピントが合っているように見える範囲は、35mm判は4×5判の12倍以上あるわけですから、写真を見た時に明らかに違いが感じられます。4×5判ではピントの合っている範囲がごく一部であっても、35mm判だとかなり広範囲にピントが合っているように見えるはずです。この被写界深度の違いはフィルムサイズの違いによる影響よりもはるかに大きなインパクトを与えます。

 被写界深度は絞り値に影響を受けるので、4×5判(f=168mmレンズ)で35mm判(f=50mmレンズ)と同じだけの被写界深度を稼ぐには絞り値をどれくらいにすればよいかを計算してみます。

 上で示した被写界深度から絞り値Fを求めるように変形します。

  絞り値 F = ( (a²ε/D₁f²) - (aε/f²) )⁻¹

 この式に、35mm判(f=50mmレンズ)の前側被写界深度 D₁=1,094 を当てはめて計算すると、

  絞り値 F = ((5,000×5,000×0.025 / 1,094x168x168) – (5,000×0.025 / 168×168))⁻¹
       = 63.24

 となり、F64まで絞ると、35mm判(f=50mmレンズ)のF5.6とほぼ同じ被写界深度になることがわかります。

 なお、許容錯乱円の値を35mm判と同じ0.025mmを用いましたが、4×5判からプリントする場合は35mm判に比べて拡大率が低いので、一般には許容錯乱円の値も35mm判よりも大きな値(0.08~0.1)を使うことが多いようです。しかし、フィルム上での比較ということで、ここではあえて同じ値で計算しました。

 適当な作例がありませんが、ストックの中から探してきました。
 1枚目が4×5判に焦点距離210mmのレンズをつけて撮ったもの、2枚目がAPSサイズのデジカメで焦点距離40mm近辺で撮ったものです。

▲4×5判 210mm F8 1/30
▲APSサイズ 約40mm F8 1/20

 2枚のフレーミングは少しずれていますが、おおよそ同じ位置から撮っています。ツツジまでの距離は4~5mといったところです。絞り値はいずれもF8で、4×5判で210mmレンズと、APSサイズで40mmレンズの画角はほぼ同じです。
 風が強くてかなり被写体ブレを起こしていますが、今回はそこは無視してください。

 4×5判の方は後方の白樺の木がほとんどボケていますが、デジカメの方はかなり後方まで鮮明に写っているのがわかると思います。
 同じ被写体、同じ構図ですが、写真を見たイメージはずいぶん違うと思います。

ボケの大きさの違いとその影響

 3点目の違いはボケの大きです。ここでいうボケとは、ピントが合っていないところのボケの大きさをいいます。
 ここでも上と同じ条件(35mm判に焦点距離50mmのレンズ、4×5判に焦点距離168mmのレンズをつけ、5m先の被写体を対象)のときに、無限遠のボケの大きさがどれくらい異なるのかを試算してみます。

 まず、ボケの大きさはレンズの絞り値によって決まります。
 レンズの焦点距離 f、絞り値 F、そして有効径 Dの間には次のような関係式が成り立ちます。

  絞り値 F = f/D

 よって、レンズの有効径は、

  有効径D = f/F

 上の式に、焦点距離50mm、および168mm、絞り値5.6をあてはめてレンズの有効径を求めると、

  50mmレンズの有効径 = 50 / 5.6
            = 8.928mm

  168mmレンズの有効径 = 168 / 5.6
             = 30mm

 となります。

 これを図に表すとこうなります。

 上の図で、ピントの合っていないところがボケの大きさを表すことになるわけですが、絞り値が等しければ光軸に平行に入ってきた無限遠光は同じところに焦点を結ぶので、ボケの大きさも等しくなります。

 では、この状態から5m先の被写体にピントを合わせた場合のレンズの位置を計算してみます。

 レンズの焦点距離 f、レンズから被写体までの距離 a、レンズから撮像面までの距離 bの間には次のような関係があります。

  1/a + 1/b = 1/f

 よって、

  1/b = 1/f - 1/a

 この式に、a = 5,000、f = 50、および、f = 168 をあてはめると、

  50mmレンズ 1/b = 1/50 – 1/5,000
        b = 50.505mm

  168mmレンズ 1/b = 1/168 – 1/5,000
        b = 173,841mm

 となります。
 すなわち、無限遠からの繰出し量が50mmレンズの場合は0.505mm、168mmレンズだと5.841mmということです。
 レンズが前に繰り出した分、無限遠はボケることになります。

 次に、無限遠のボケ径は次の式で求められます。

  ∞ボケ径 d = F²/F(a - f)

 この式に、絞り値 F = 5.6、被写体までの距離 a = 5,000、焦点距離 f = 50、および、f = 168 をあてはめると、

  50mmレンズ∞ボケ径 = 50×50 / 5.6x(5,000 – 50)
            = 0.090mm

  168mmレンズ ∞ボケ径 = 168×168 / 5.6(5,000 – 168)
             = 1.043mm

 となり、5m先にピントを合わせた時の無限遠のボケの大きさは、35mm判(f=50mmレンズ)に対して4×5判(f=168mmレンズ)は約11.6倍にもなります。これは被写界深度の違いと同様で、写真を見た時に35mm判と4×5判では明らかに印象が異なります。同じ画角で同じ範囲を写しても、35mm判に比べて4×5判の方が急激に、しかも大きくボケていくことがわかります。

 では、焦点距離168mmのレンズの無限遠のボケ径が、50mmレンズと同じ大きさ(0.09mm)になるにはどれくらいまで絞ればよいかを計算してみます。

 上の式から、絞り値 F は次のように求めることができます。

  絞り F = f²/ d(a - f)

 ここにそれぞれの値をあてはめると、

  絞り F = 168×168 / 0.09x(5,000 – 168)
      = 64.9

 となり、およそF64まで絞ると50mmレンズのボケ径とほぼ同じになることがわかります。

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 このように、4×5判で撮影した写真は、撮像面の大きさによる画像の鮮明さや階調の豊かさに加え、被写界深度の違いやボケの大きさの違いによって、同じ範囲を写した写真でも35mm判の写真とは全くイメージの異なる画になります。
 どの範囲にピントを合わせ、どのようにボケを取り入れるかなどは作画意図によって変わってきますが、大判写真というのは豊かな階調やボケの大きさなどの要素が合わさり、非常に奥行きのある画になるという特徴があると思います。

 一方で、被写界深度が深ければピントの合う範囲が広いので、全体として締まりのある感じになるでしょうし、浅ければ被写界深度を稼ぐために苦労するかもしれませんが、その反面、主張したいところだけを浮かび上がらせることができます。どちらがより良いということではなく、35mm判なり4×5判なり、それぞれの特性を活かした作画をすべきなんだろうと思います。

 また、今回は35mm判と4×5判が同じ画角になるようにそれぞれ、50mm、168mmの焦点距離のレンズで試算しましたが、35mm判のカメラに168mmの焦点距離のレンズを付けても被写界深度やボケの大きさに関しては4×5判で計算した値と同じになります。
 ただし、写る範囲がぐっと狭まりますので、出来上がる写真のイメージはまったく違うものになります。

 大判写真というのは単にフィルムが大きいので綺麗に写るということだけでなく、35mm判とは大きく異なる要素がいくつかあります。そういったことを理解したうえで構図をどうするか、どのように撮影するかということを考えるのも大判写真の楽しさかもしれません。

(2021年8月22日)

#レンズ描写 #写真観

現像済みのフィルムの経年劣化と保管

 フィルムを使っていると、撮影前のフィルムの保管、撮影後から現像するまでの保管、そして現像後のフィルムの保管と、常に「保管」をどうするかということがついて回ります。
 フィルムをデータ化されている方も多いと思いますが、やはり、せっかく撮った写真をフィルムの状態で残しておきたいというのが正直な気持ちです。
 そこで今回は、現像後のフィルムの経年劣化や保管方法について触れてみたいと思います。

ビネガーシンドローム

 ネガにしてもリバーサルにしても現像後のフィルムというのは、スリーブに入ったまま箱などに放り込まれ、長年にわたってそのままの状態で保管されっぱなしということが多いのではないかと思います。いったんプリントしたり電子化したりした写真のネガやポジはそれほど頻繁に使うものではないので、以降は日の目を見る機会が非常に少なくなります。
 ある日、ふと思いついたように現像済みのフィルムを保管しておいた箱を開けてみたら、ツーンとする酢のような臭いがしたという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。

 これは一般に「ビネガーシンドローム」と呼ばれており、フィルムが高温多湿の密閉された状態に長期間置かれていたことによる劣化で、フィルムのベース素材が空気中の水分と結びついて変質(加水分解)していく現象と言われています。
 初期の段階は酢のような臭い(酢酸臭)だけですが、進行するとフィルム表面がべとつきはじめ、さらに進行するとフィルムがワカメのように波打ったりカールしたりしてしまいます。
 ビネガーシンドロームが一度起きてしまうと、修復することはもちろん、完全に進行を止めることもできません。
 保管してある箱を開けただけでは臭いがわからなくても、スリーブからフィルムを抜き出して鼻を近づけたときに、ふんわりと酢の臭いがしたら、既にビネガーシンドロームが始まっている証拠です。

 このビネガーシンドロームは、セルローストリアセテートという素材で作られたフィルムに起きる現象のようで、ポリエステル製のフィルムでは発生しないようです。
 富士フィルムのデータシートを調べてみたところ、カラーネガ、モノクロ、リバーサルのいずれも35mmフィルム、およびブローニー(120、220)フィルムはセルローストリアセテートが使用されており、シートフィルム(4×5、8×10)に関してはポリエステル素材を使用しているとのことでした。
 すなわち、シートフィルム以外はビネガーシンドロームの呪縛からは逃れられないということになります。

退色と黄変

 ビネガーシンドロームと同じくらい避けがたい経年劣化が「退色」と「黄変」です。
 退色は色が抜けていってしまう現象で、退色前と比べるとずいぶんあっさりした色合いになってしまいます。ネガは見ただけではわかりにくいですが、プリントすると良くわかります。

 下の写真はおよそ35年前にカラーネガフィルム(フジカラー)で撮ったものですが、退色してしまった例です。

▲退色の例 カラーネガフィルムにて撮影

 モノクロ写真ではないかと思えるほど、あっさりした色になってしまっています。退色前のものと比較するまでもなく、誰が見ても退色しているのは明らかです。

 そして、退色よりも発生頻度が高いのではないかと思われるのが黄変です。黄変も退色の一つかもしれませんが、画全体、もしくは一部分が黄色く変色してしまう現象です。青が抜けて(退色)しまうことで黄色くなってしまうようですが、ネガを見ただけではわからず、プリントしたりスキャンして初めて黄変に気がつくことが多いです。

 同じく、およそ35年前にカラーネガフィルムで撮った写真ですが、見事なまでに黄変しています。

▲黄変の例(1)  カラーネガフィルムにて撮影

 青い色が抜けてしまい、補色となるなる黄色が目立ってくるのだと思います。
 また、同じころに撮影したものでも、あまり黄変が生じていないスリーブもあります。スリーブによって出たりでなかったりしているので、フィルムの違いとか現像処理の影響とかがあるのかもしれません。

 黄変がそれほど感じられない写真でも、拡大してみると黄変が発生しているものもたくさんあります。
 下の写真はパッと見では比較的黄変は少なく感じます。

▲黄変の例(2)  カラーネガフィルムにて撮影

 しかし、上の空の部分を拡大してみると、こんな感じです。

▲黄変の例(2) の部分拡大

 斑点のように黄色が広がっているのがわかると思います。たぶん、あと何年かすると真っ黄色になってしまうと思われます。

リバーサルフィルムは退色に強い

 カラーネガフィルムに比べてリバーサルフィルムは退色や黄変に対して非常に強い印象です。
 下の写真は36年前にリバーサルフィルム(フジクローム)で撮影したものです。

▲リバーサルフィルムにて撮影

 若干の退色は認められますが、変色はほとんど感じられません。
 保管条件はほとんど同じですので、リバーサルフィルムの方がはるかに劣化に対する耐性が強いのがわかります。
 私は圧倒的にリバーサルフィルムを使うことが多いのですが、カラーネガのように退色や変色で手に負えなくなったということがありません。

私流、フィルム劣化の防止と保管方法

 残念ながらフィルムの経年劣化を完全に防止することは不可能と思われます。一説には冷凍保存すれば良いという話しもあります。確かに、何十万年も前に死んだマンモスが永久凍土から発見された例があるくらいなので、フィルムも冷凍保存すれば劣化は防げるかもしれませんが、再利用することはあきらめねばなりません。

 しかし、ビネガーシンドロームにしろ退色にしろ、進行を遅らせることはある程度可能だと思います。高温と高湿と光をどれだけ防ぐことができるかによって、劣化の速度はずいぶん変わるといわれていますので、冷凍保存とは言わないまでも、冷蔵庫で保存することができればかなり効果的だとは思います。しかし、保管するフィルム量が多くなると個人でそれを行なうのは結構ハードルが高いと思います。

 また、日の当たらない、比較的涼しい場所で保管することは大切ですが、スリーブに入れっぱなしというのはあまり好ましくないと思っています。特に、ビネガーシンドロームを発症している状態だと、フィルムとスリーブがくっついてしまい、使い物にならなくなってしまう可能性があります。

 私は、重要なフィルムについてはスリーブを使わず、中性紙に挟んで保管しています。「ピュアガード」という製品名で販売されている中性紙があるのですが、これをフィルムの幅に切り、蛇腹状に折って、ここにフィルムを挟んでいます。
 下の写真はブローニーフィルムの例です。

▲中性紙を用いたフィルムの保管(ブローニーフィルム)
▲ピュアガード

 これを同じく中性紙で作られた箱に入れて保管しています。
 ビネガーシンドロームの予防には通気性も重要だと言われていますので、スリーブのようにフィルムと密着することもなく、通気性も多少は改善されると思います。
 そして、普通に市販されているキャビネット(金属製)に入れておくだけですが、キャビネットの天井にパソコンに使われているような冷却ファンを2個、取り付けてあります。これでキャビネット内の空気を常に入れ替えるようにしています。キャビネット内には光が入らないので、フィルムを入れた箱には蓋をしてありません。

 この方法でどれくらいの効果があるのか、定量的なデータは持ち合わせておりませんが、いま手元にある最も昔に撮影したフィルムを見る限り、退色はあるものの、ワカメ状態になっているものやカールしているものは確認されていません。ただし、鼻を近づけるとわずかに酢の臭いがするものがあります。やはり、ビネガーシンドロームは進行していると思われます。
 因みにいちばん古いのはカラーネガフィルムで、1983年4月の撮影ですから、今から38年前ということになります。

 それでは、何年くらいすると酢の臭いがしてくるのか、保管してあるカラーネガフィルムを一年ごとに遡って臭いをかいでみました。
 その結果、2002年6月に撮影したフィルムからかすかに酢の臭いが感じられました。今から19年前になります。これがさらに5年ほど遡る(24年前)と、酢の臭いはだいぶはっきりとしてきます。

 一方、リバーサルフィルムからは酢の臭いがしません。手元にあるリバーサルフィルムで最も古いのが37年前に撮影したものです。
 富士フィルムの資料を見る限り、フィルムベースの素材はネガフィルムと同じセルローストリアセテートですので、同様にビネガーシンドロームが起きると思われるのですが、不思議です。
 なお、私の嗅覚は「並」だと思います。念のため。

ビネガーシンドロームと退色の修復

 ビネガーシンドロームでカールしたりワカメ状になったフィルムは、80度くらいの温度をかけながら加圧することでフィルムから水分を除去し、平面性を保つことができるという事例があるようです。まるでアイロンをかけるようですが、私は実際に試したことはありません。興味のある方は検索してみてください。
 カールしている程度なら直るかも知れませんが、ワカメ状になっていたり、フィルムベースが傷んでしまっているような場合、修復は無理ではないかと思います。

 また、退色や変色については、フィルム上で色を取り戻すことは不可能ですが、スキャンしてデータ化した後にレタッチソフト等である程度復元することはできます。しかし、これは私も何度かやったことはありますが、やり方が下手なのか、やはり色が不自然になってしまい好ましい結果は得られません。特に黄変してしまったネガは手に負えないといった感じです。

 フィルムが劣化する前にデータ化しておくのが最も効果的な方法かもしれませんが、これまでに撮りためた膨大な量のフィルムをすべてデータ化するとなると、まさにライフワークになってしまいそうです。
 さらに、データが壊れたり消えたりしたときの対策まで考えると、これまた大変な作業になりそうです。

 修復については機会があれば別途掲載したいと思います。

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 今回ご紹介した保管方法は一般的に認証されているわけでもなく、あくまでも個人的に試みている方法であり、その効果性については不明です。効果を定量的に測定するためには比較が必要ですが、近いうちに保管条件を変えた実験をしてみたいと思います。ただし、結果が出るまでに何年もかかると思われますので、ご紹介できるかどうか..

(2021年8月16日)

#カラーネガフィルム #リバーサルフィルム #保管

カラーリバーサル 1コマあたりのコストはこんなに高い!

 私が写す被写体は風景が多く、使うフィルムの中で圧倒的に使用頻度が高いのがカラーリバーサルフィルムです。以前はリバーサルフィルムの種類も豊富でしたが、今では5本の指で余るくらいに銘柄が減ってしまいました。
 追い打ちをかけるように近年、フィルム自体の価格が高騰し、現像料金も驚くほど高くなりました。モノクロは自家現像するのですが、カラーリバーサルは何度やってもラボに依頼したようなきれいな色が出ないので、料金が高くても依頼することになってしまいます。

 実際に、カラーリバーサルで撮影した場合、いかほどの費用が掛かっているのか、今更ながらですが、リバーサルフィルムの中でも特に良く使用する富士フイルムの「PROVIA 100F」について調べてみました。なお、記載の金額は2021年7月時点のものです。カメラ店によって多少の違いはあるかも知れませんが、私が良く利用している大手カメラ店での金額を採用しています。

▲ 左上:67判  右上:4×5判  下:135

 現在、PROVIA 100Fには135(35mm)、120(ブローニー)、4×5、8×10の4種類がラインナップされています。
 まず、フィルム自体の価格は以下の通りです。いずれも最小販売単位の実売価格です。

  ・135-36(36枚撮り)  1,760円/本
  ・120(5本パック)   5,550円/箱
  ・4×5(20枚入り)   13,900円/箱
  ・8×10(20枚入り)   53,350円/箱

 これを1コマあたりにすると以下のようになります。120フィルムについては67判で1本あたり10コマということで計算しています。

  ・135-36(36枚撮り)   48.9円/枚
  ・120(5本パック)    111.0円/枚
  ・4×5(20枚入り)    695.0円/枚
  ・8×10(20枚入り)   2,667.5円/枚

 そして、ここに以下のような現像料金がかかってきます。135と120は1本、4×5と8×10は1枚が最小現像単位になります。

  ・135-36    1,493円/本
  ・120      1,313円/本
  ・4×5      377円/枚
  ・8×10    1,609円/枚

 現像料金もフィルムの価格と同様に1コマあたりにすると、

  ・135-36    41.5円/枚
  ・120    131.3円/枚
  ・4×5    377.0円/枚
  ・8×10   1,609.0円/枚

 となります。

 よって、フィルムの価格と現像料金を合わせた1コマあたりのコストは以下のようになります。

  ・135-36   90.4円/枚
  ・120    242.3円/枚
  ・4×5   1,072.0円/枚
  ・8×10  4,276.5円/枚

 
 なんと、35mmフィルムでさえ、1コマあたり90円以上という高額です(135の36枚撮りフィルムは37枚撮れるので、もう少し安くなるというご意見もあるかも知れませんが)。
 正確なことはわかりませんが、まだフィルムの需要がそこそこ高く、銀塩全体が元気だった頃(たぶん、7~8年前)に比べると、2倍以上のコストになっていると思われます。

 フィルムサイズが大きくなるとそれに伴って高額になるのは理にかなっていますが、1コマあたりの価格比と有効面積比をみてみると以下のようになります。いずれも135フィルムを1としたときの比率です。

       <価格比> <面積比>
  ・135-36    1      1
  ・120      2.68    4.47
  ・4×5     11.86    13.06
  ・8×10    47.31    54.28

 こうしてみると、面積あたりのコストパフォーマンスが最も高いのが120フィルムということになります。

 と、ここまでは簡単な計算で求められるのですが、ここからが本題になります。
 これは私の経験によるものなので、一般的に通用するかどうかはわかりませんが、という前提で進めさせていただきます。あらかじめご承知おきください。

 フィルムを使った撮影の場合、たとえ失敗であってもフィルムにしっかりと記録され、確実に1コマを消費してしまいます。デジカメのように失敗したものをなかったことにしてしまうわけにはいきません。例えば135の36枚撮りフィルムを使った場合、失敗作でも1コマで90円以上の費用がぶっ飛んでしまいます。8×10に至っては4枚の千円札に侍従までついて、いずれも羽が生えて飛んでいくという悲惨な結果です。

 そう考えると、上で1コマあたりのコストを単純計算しましたが、失敗作や保存しておく価値のない駄作などを差し引いて、最終的に残ったコマ数で算出するのが正しいコストの出し方ではないかと思うわけであります。仮に、36枚撮ったうち10枚が失敗作で、残す価値のあるものが26枚だったとすると、1コマあたりのコストは36で割るのではなく26で割るべきです。そうすると、1コマあたり90円ではなく、125円ほどに跳ね上がることになります。
 もちろん、失敗作だろうが駄作だろうが、大切に残しておきたいということであれば話しは別です。ですが、私の場合、失敗作や駄作は廃棄してしまうのでコストに跳ね返ってきます。

 では、実際に失敗作や駄作がどれくらい発生するかということですが、保管してある撮影済みのポジを少し調べてみました。どれくらいの廃棄が出ているか、ある程度は感覚的にわかってはいましたが、あらためて調べてみたところ、135フィルムで約59%、120フィルムで約11%、4×5フィルムで約3%が廃棄されていました。8×10は撮影枚数が少なすぎてデータが取れませんでした。因みに私の場合、失敗作より駄作の方が圧倒的に多いです。

 廃棄されずに手元に残った枚数で1コマあたりのコストを割り出してみると、

  ・135-36   約221円/枚
  ・120     約272円/枚
  ・4×5   約1,105円/枚
  ・8×10    —

 となります。

 こうしてデータを見てみると、135フィルムではいかに無駄なシャッターを切っていたかということがわかります。結果的に2.4倍ものコストがかかっており、120フィルムのコストに迫る勢いです。
 露出を大幅に間違えたり意図しないブレが生じたりという失敗作はともかく、一応、写真として成立しているものを駄作とするかどうかは本人の主観の問題ですが、あまり考えずにシャッターを切っていたということが歴然としています。
 一方、120や4×5フィルムになると、廃棄に回る数はずいぶん減少します。失敗作が出ないわけではありませんが、35mmフィルムに比べると、コストの上昇率はかなり低く抑えられています。

 こうした結果になる理由はいくつかありますが、まず、中判や大判はそもそものコストが高いので、ここと決めたもの以外はほとんど撮らないということが挙げられます。撮るべき対象物をしっかり見定めて、頭の中で画を組み立てるということをするので、あまり考えずに撮るということがありません。
 また、中判カメラや大判カメラは撮影までの手間がかかるので、画作りにも神経が行き届くという感じがします。特に大判カメラの場合は一発勝負というところがあるので、構図決めにしてもピント合わせにしても露出設定にしても、とにかく慎重に行ないます。
 結果、失敗作や駄作の減少につながるのだと思います。

 しかしながら、35mmフィルムのようにたくさん撮った中から最高のものを選ぶ、ということがなかなかできません。そんなことを中判や大判でやった日にはコストがどれくらいかかるか分かったものではありませんし、何よりもそんなに大量に撮れるほどの機動性がありません。

 まぁ、所詮は自己満足の世界かも知れませんが、中判や大判には写真を撮ったという実感があることも事実です。

 撮影スタイルは人それぞれですから、一枚を大切に撮る人もいれば、瞬間を逃さないためにたくさん撮る人もいると思いますが、私の場合、使用するカメラ、というよりは使用するフィルムのサイズによって無意識のうちに撮影のスタイルが変わっているということです。
 シャッターを切るごとに頭の中で「チャリーン」と音がして、コストが積み上げられていくわけではありませんし、これはと思った被写体に対してはコストのことなど全く無視して撮り続けます。常にコストを気にしながら撮るなどということはしたくありません。

 ですが、こうして1コマあたりのコストをはじき出してみると、つくづく「高いなぁ」と思います。写真に限ったことではありませんが、コストがかかりすぎると控えようと思うのは人間の常です。無い袖は振れないと言いますから仕方のないことですが、これ以上、フィルムの価格も現像料金も上がらないことを願うばかりです。

 それならデジタルにすればいいじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、フィルムに拘っている時代錯誤野郎の独り言と聞き流してください。

(2021年8月7日)

#リバーサルフィルム