リコーイメージングの新しいフィルムカメラ、「PENTAX 17」の発売について思うこと

               リコーイメージングHPより転載

#PENTAX #カメラ業界 #ペンタックス

最近、姿を消しつつある撮影機材などのあれこれ ~手に入らなくなる日も近いかも...~

 デジタルカメラが普及するとともにフィルム写真のシェアはどんどん小さくなっていき、フィルムカメラやフィルムが次々と市場から姿を消していったのは言うまでもありませんが、相変わらずフィルムで写真を撮っている私のような立場からすると、カメラやフィルム以外にも姿を消していっているものがたくさんあって、何とも言えない寂寥感のようなものがあります。
 デジタルカメラではほとんど使うことはないけれど、大判カメラや中判カメラではないと困ってしまうものがたくさんあり、そんな中で、特に数を減らしつつある撮影機材などについて触れてみたいと思います。

スポット単体露出計

 今のカメラには露出計が内蔵されているため単体露出計の必要性はほとんどありませんが、大判カメラには露出計が内蔵されていないので、単体露出計は必須アイテムの一つです。単体露出計はニーズが激減しているので市場から姿を消していくのは自明の理ですが、私が主な被写体としている風景撮影に必要な反射光式単体露出計、しかもスポット単体露出計の現行品は、私が知る限り1~2機種しかありません。

 現在、私が使っている露出計はPENTAXのデジタルスポットメーターという機種で、もちろん現行品ではありません。今のところは正常に機能しているので問題ありませんが、万が一、壊れでもしたら一大事です。
 入射光式の単体露出計は反射光式に比べると現行品も多くありますが、入射光式で反射光式露出計の代替をするというのはやはり無理があります。広範囲を測光するのであれば入射光式でも良いのですが、ここの露出は外したくないというようなピンポイントでの測光にはスポット露出計がどうしても必要になります。

 機械ものなのでいつかは壊れるだろうし、その時のために今から予備を用意しておこうとも思いますが、上でも書いたように現行品は極々限られた機種のみで、しかも、購入しようとするとかなりの高額を覚悟しなければなりません。かといって、中古品も潤沢に出回っているわけではなく、大手ネットオークションサイトを見てもスポット式露出計の出品はとても少ないです。また、中古品の場合は測光精度が不明なため、手を出しずらいというのが正直なところです。
 スポット測光のついているデジタルカメラを代用にと考えないこともありませんが、機材が大きくて重くなるので使い勝手としてはイマイチどころかイマニ、イマサンといった感じです。
 中古カメラ店やネットオークションサイトで根気よく探すしかないのかも知れません。

ケーブルレリーズ

 露出計のように高額でもなく、小物アクセサリーの代表格のようなケーブルレリーズですが、これも店頭からは姿を消しつつあります。それでも大手のカメラ店に行けば手に入りますが、やはり2~3種類しかありません。
 ケールレリーズなどどれでも同じだろうと思われるかも知れませんが、実はそんなことはなく、長さであったり操作部の形状であったり、自分の撮影スタイルにあったものとなると限られてしまいます。
 ちなみに、私にとって使いやすいのは、長さが60~70cmで、操作部が比較的小さなものです。

 ケーブルレリーズはまさに過去の遺物のような存在になってしまっているため、中古市場には多く出回っていますが、私の使用条件に合うものとなるとほとんどありません。
 普通に使っていれば壊れることはまずありませんが、撮影に行った際にどこかで落としてしまったなんてことは十分にありうるので、やはり予備は持っておきたい小物です。ケーブルレリーズがなければ指でシャッターを押すことも可能ではありますが、カメラブレが心配ですし、何よりも撮影時の意気込みに影響を与えます。
 また、構造はいたってシンプルなのですが、この代替となるようなものが見当たりません。
 新品で購入してもたかだか数千円の小物ですが、撮影において果たす役割はとても大きな小物でもあります。

冠布

 大判カメラでの撮影時に、外光を遮断するために頭からすっぽりとかぶる風呂敷のようなものです。
 大判カメラの後部についているフォーカシングスクリーンに光が当たると、ここの結像がほとんど見えなくなってしまいます。そのため、外部からの光、特に後部からの光を遮断して結像が良く見えるようにします。フィールドカメラにはフォーカシングスクリーンにフードがついているものもありますが、後方に太陽があるとほとんど役に立ちません。
 この冠布、扱っているお店がとても減ってしまいました。というよりは、冠布の製造をやめてしまった会社(メーカー)が多いというのが正しいと思います。

 冠布が手に入らなければ遮光性の高いカーテンなどを適当な大きさに切って代用することも可能なので、もし市場から姿を消してしまってもそれほど深刻ではありませんが、やはり、専用に作られているものの方が優れているのは言うまでもありません。
 私もかつては数枚持っていましたが、汚れたり、あちこち破れたりしたので捨ててしまい、今は1枚だけになってしまいました。この1枚がボロボロになったら、「お値段以上」のお店に行って遮光カーテンを買って自作してみようと思います。

ライトボックス

 私が使うフィルムはリバーサルがほとんどなので、撮影後のポジを確認するためにライトボックスが必要になります。フィルム用のライトボックスは光の色によってポジの色調が変わらないよう、色温度5,000Kが標準とされています。
 ライトボックスはフィルムチェック以外にもトレースなどで使用する人もいるのでなくなることはないだろうと思っていたのですが、なんと、最近になって急激に姿を消しつつあるように思います。

 私が使っているライトボックスはかなり昔のもので、光源に蛍光管を使っています。今では様々な照明機器がLEDになりつつあり、蛍光管自体が非常に珍しい存在になってしまいました。しかも、色温度が5,000Kという蛍光管はもはや手に入らないのではないかと思っています。数年前に蛍光管を交換しているので、あと数年は光量も落ちることなく使えると思いますが、その先のことはわかりません。
 LEDタイプのライトボックスにしようと思っていろいろ探してみたところ、以前は結構たくさんの機種があったのにすっかり減ってしまい、5,000Kのライトボックスはごくわずかしかありませんでした。研究用とかの非常に高額なものはあるのですが、手ごろな価格のいわゆる民生用は姿を消しつつあるという感じです。

 今使っているライトボックスの蛍光管がヘタってきたら、5,000KのLEDライトを購入して蛍光管と交換しようと思っています。
 ただし、LEDの光は蛍光管のように拡散しにくいので、乳白色板を入れるなどして、色温度が変わらないようにしながら光を拡散させなければならず、若干の工夫が必要そうです。

ポジフィルム用スリーブ、ポジフィルム袋

 ポジ原版はそのままで観賞できるように透明の袋に入れて保管しなければなりません。一般に「OP袋」と呼ばることが多く、フィルムの大きさに合うように何種類もの製品が用意されていました。
 多くの製品はフィルムがちょうど収まるような大きさですが、私が愛用しているのは、撮影データなどを書き込んだメモを差し込めるポケットがついているタイプのものです。

 かつてはいくつものメーカーから出ていたのですが、今ではほとんど見かけなくなってしまいました。店頭からすっかり姿を消してしまったのでメーカーに直接問い合わせをしたことがありますが、製造を終了してしまい、今後も製造する予定はないとの回答でした。
 また、一口にOP袋といっても様々で、非常に薄いタイプのものや腰のしっかりしたもの、透明度が高いものや何年か経つと白っぽくなってしまうものなど、いろいろです。素材の違いなのかもしれません。
 今は買い置きしたものを使っていますが、これが底をついたときに代替となるポジ袋が今のところ見つかっていません。幸いにも、メモをいれるポケットがついていないタイプのポジ袋であれば何種類も販売されているので保管に困ることはなさそうですが、メモ書きを入れて置けるという便利さは損なわれてしまいます。
 何らかの工夫をしてメモ書きを添付できるようにするか、割り切ってメモ書きはあきらめるか、手持ちのポジ袋を使い切るころに検討することとします。

四切サイズの額縁

 このサイトを始めた頃に、四切サイズの額縁が減ったというページを書きましたが、ここ最近はさらに拍車がかかった感じです。特にワイドマットタイプの四切は数えるほどしかありません。しかも、ここにきて額縁全体がかなり値上がりしています。値上がりしているのは額縁に限ったことではありませんが、額縁の値上げ幅は半端ない感じです。
 すべての額縁が減ってしまっているわけではなく、A4とかA3、ワイド四切といったサイズのものはむしろ増えている感じがします。たぶん、35㎜判フィルムの縦横比に近いことが理由だと思われます。
 そして、額縁だけでなく、一般に市販されている四切サイズのプリンタ用紙も次々と姿を消してしまいました。数年前までは各社から紙質が異なる複数の四切の製品が出ていましたが、今では数えるほどに減ってしまいました。この現象を見ても、四切のニーズがいかに少ないかということが良くわかります。

 私が使うフィルムは大判の4×5判と中判の67判がほとんどなので、縦横比が比較的近い四切はほとんどトリミングせずに額装できます。
 フィルムにしてもデジタルにしても35㎜判を使う方が圧倒的に多いでしょうから、四切が減るのは致し方ないとも思えますが、気に入ったデザインの額縁のラインナップに四切が入っていないのを目の当たりにすると、思わずため息が出てしまいます。
 個展でも開かない限り、額縁というのはそんなに大量に使うものではないので、気に入った額縁をオーダーで何枚か作ってもらい、それを使い続けることを考えています。当然、市販品に比べて割高になりますが、何年も使えるものですし、何よりも気に入った写真を気に入った額に入れる方がはるかに心が和みます。
 そして、プリンタ用紙はというと、A3サイズを購入して四切サイズにカットして使う日がくるのではないかと思っています。

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 フィルムカメラやフィルム写真に関する機材やアクセサリーなどがどんどん減ってしまうのは仕方のないことです。それでも、途絶えてしまわないように、細々ながらでも製品を供給し続けてくださるメーカーがあることはとてもありがたいことです。製造数が減れば価格が上がるのも当然のことかもしれませんが、たとえ種類が減っても販売が続いている実態を見ると、フィルム写真もまだ大丈夫かと淡い期待を抱いてしまいます。
 とはいえ、いずれは姿を消してしまうものもあるでしょうから、予備を用意しておくとか、代替の方法を考えておくとか、そういう対策も必要になると思っています。ないものは工夫して作る、というのも楽しみの一つかも知れません。

(2024.5.10)

#カメラ業界 #ライトボックス #レリーズ #額装

写真・映像用品年鑑(写真・映像用品総合カタログ)が、驚くほど薄くなった!!

 写真やカメラに興味をお持ちの方であればご存じかと思いますが、一般社団法人 日本写真映像用品工業会というところが毎年発行してる「写真・映像用品年鑑」という冊子があります。工業会に加入している企業が製造・販売している写真用機器などが掲載されている総合カタログです。国内で販売されているカメラ用品や写真用品の多くが網羅されており、安価ということもあり、便利な冊子です。年一回、2月ごろに発行されるのですが、毎年購入する必要もないので、私は数年ごとに購入していました。

 先日、新宿のカメラ屋さんに立ち寄った際、この冊子の2022年度版が置いてあったので久しぶりに購入してみようと思い、手に取ってビックリしました。冊子がぺらっぺらに薄くなっています。パラパラっと中を見たところ、厚さだけでなく内容も随分希薄になったなという印象です。
 お金を出して買うほどのものではないと思い、棚に戻そうとしましたが、時代の流れを反映しているような薄い冊子に何だか興味が湧いて購入してしまいました。510円(税込)でした。

▲写真・映像用品年鑑 左:2022年度版 右:2016年度版

 私が初めて写真・映像用品年鑑を買ったのはずいぶん前のことで、いつだったのかは覚えていませんが、少なくとも20年以上は経っていると思います。
 新しいのを購入すると、ひとつ前の号を残して二つ前の号は廃棄してしまいます。数年に一度しか購入しないので、いま手元に残っている最も古いのは2016年度版(No.46)です。
 2016年度版を購入した時も、それまでのに比べると薄くなったという感じはしたのですが、それとともに、掲載されている商品の写真や文字がすごく小さくなり、ずいぶん見難くなったと感じたのを覚えています。とはいえ、掲載されている情報量が特に減ったという印象はありませんでした。経費削減のためにページ数を減らし、見易さを犠牲にしたのだろう程度に思っていました。

 ところが、今回購入した2022年度版はページ数も情報量も格段に減っています。昨年も一昨年も、その前も購入していないので、徐々に薄くなったのか、急激に薄くなったのかわからないのですが、来年は消えてしまうのではないかと思ってしまうほどです。新聞の折り込み広告などにまぎれて古紙回収に出されても気がつかないのではないかというくらいの薄さで、まさに風前の灯火といった感じです。

 手元にある中でいちばん古い2016年度版と、今回購入した最新の2022年度版を比較してみました。

  ・総ページ数 : 352ページ –> 88ページ
  ・カタログページ数 : 292ページ –> 41ページ
  ・掲載企業数 : 42社 –> 12社
  ・工業会会員数 : 51社 –> 40社

 2016年からの6年間で、冊子の厚さ(ページ数)は約1/4に、カタログが掲載されているページ数は1/7以下に、掲載している企業数も1/4近くまで減少しています。掲載企業数が12社というのはまさに驚きです。
 掲載されている商品(アイテム)数も非常に少なくなっているし、カタログページよりも他のページの方が多いという状況で、もはや「年鑑」とか「総合カタログ」と呼べる内容ではないというのが正直な感想です。
 代表的なところを挙げてみると、これまでかなりのページ数を使って掲載していたケンコー・トキナー、スリック、富士フイルム、近代インターナショナル、ユーエヌなどは数ページに減少してしまい、エツミ、ベルボン(今はハクバになっていますが)、ハクバ、マルミなどは掲載すらされていません。
 価格も昔は300円くらいだったと記憶しているのですが、それと比べるとかなり値上がりしています。
 あまり意味があるとも思えませんでしたが厚さを測ってみたところ、2016年度版は10mmちょうど、2022年度版はわずか2.9mmでした。

▲写真・映像用品年鑑 上:2022年度版 下:2016年度版

 数年の間に何故ここまで薄くなってしまったのかということについては想像に難くなく、ネットで大方の情報を得ることができるようになった現在、このような総合カタログの必要性が薄れてきていることが大きな原因であろうと思われます。
 たくさんの企業の商品が掲載されている分厚いカタログをめくるよりも、パソコンやスマホで自分の見たいもの、知りたいことを検索したほうがはるかに早いし、何よりお手軽です。しかも、企業が提供しているサイトの方が圧倒的に詳しい情報を得ることができます。

 また、カタログの制作には時間もかかるしお金もかかります。昔のように商品の情報を伝える術が限られていた場合は、お金をかけても情報が集約された総合カタログのようなものは有効だったのでしょうが、今は状況が変わってきています。時間やコストをかけても効果性や効率性が期待できないということでしょう。

 そして、冊子の厚さ以上に気になるのが、日本写真映像工業会に加盟している企業数の減少です。
 写真用品や映像用品の製造・販売をしている企業数がどれくらいあるのかわかりませんが、写真業界の動向調査やカメラ業界に関する白書などを見ると、売上が減少したり、倒産したという企業が増えていることは事実のようです。そういったことが大きな原因になっているとは思いますが、6年間で2割も減ってしまうというのは驚きです。
 それまではなくてはならないとされていたものが、カメラがデジタル化されたことによって不要になったというものはかなりの数に上ると思われます。フィルムが最たるものでしょうが、レンズ用のフィルターとか、ストロボなどの照明機器、写真をパソコンなどで見ることが当たり前になったことでアルバムや額縁等々、非常に広範囲に影響が及んでいると思います。
 もちろん、新しい市場も形成されているわけですが、全体としての規模は確実に縮小しているのは間違いのないことなのでしょう。

 そういった環境の変化が及ぼす影響は大きいと思われ、写真・映像用品年鑑に掲載されている企業数も商品数も格段に減ってしまいましたが、掲載されている内容を見ると、全商品を掲載するよりは主力商品や特徴的な商品などに絞っているのと、商品そのものよりも企業のイメージを前面に出しているものが増えている傾向にあるという印象を受けます。商品の詳細は自社のホームページで紹介しているので、そちらを見てくださいという思いなのかもしれません。

 日本写真映像工業会という社団法人は1961年の設立らしいので、今年で61年という歴史ある団体です。活動内容についてはあまり詳しくありませんが、写真用品の認知向上や普及、品質向上、業界の発展ということを大きな目的にしていたことは間違いないと思います。
 その中の具体的な活動の一つとして、写真・映像用品年鑑の発行があったと思うのですが、時代の流れとは言え、あまりの変貌ぶりと言えます。私は4年ぶりの購入なので、一層その感が強いのかも知れませんが、毎年、目にされていらっしゃった方々にとってはじわじわと感じられていたことと思います。

 以前のように、300ページも400ページもあったカタログは、特に目的があるわけでもないのですがページをめくっていくこと自体に楽しみがあり、小さな写真と文字で紹介された各社の商品の中から新しい発見があるというのも総合カタログの持つ魅力だったと思っています。
 ただし、それは膨大な量の商品が掲載されているからこそであって、情報量が少ないとその魅力は一気に色褪せてしまいます。
 また、私のようにフィルム写真をやっている立場からすると、ページ数の少ない最新のカタログを見ても自分が使いたいと思うものがあまりなく、昔のカタログの中にこそ自分の使いたいものがゴロゴロしています。

 とはいえ、こんなに薄くなっても発刊し続けるということに対して頭が下がりますし、何十年も発刊し続けてきたことへの誇りのようなものも感じずにはいられません。長きに渡って写真用品の業界に大きな影響を与えてきたことは紛れもない事実だと思います。
 個人的には、以前のようにたくさんの情報が詰まった総合カタログの存在は大歓迎なのですが、継続していくことの大変さ、難しさを垣間見たような気がしました。
 毎年購入するわけではありませんが、来年(2023年)度の写真・映像用品年鑑は発行されるのだろうかと、今回購入した2022年度版を見ているととても気になってしまいます。

 因みに、写真・映像用品年鑑は日本写真映像工業会のホームページから無料で閲覧することができます。ただし、商品カタログ以外のページ(「写真が上達するコツ」、「撮影・写真用品の基礎知識」、「フォト検通信」など)は掲載されていませんでした。

(2022.7.16)

#カメラ業界

今度は「日本カメラ」が休刊!!

 先日、またもや衝撃的なニュースが流れました。月刊誌である「日本カメラ」が休刊するとのことです。昨年のアサヒカメラの休刊から一年を待たずしての日本カメラの休刊です。私はアサヒカメラよりも日本カメラを好んで購入していたので、このニュースには衝撃を受けました。

 これで、月刊のカメラ雑誌の御三家と言われた、カメラ毎日、アサヒカメラ、日本カメラのすべてがなくなってしまいました。月刊のカメラ雑誌は他にも刊行されていますが、やはり御三家と言われるだけあって他の雑誌とは一線を画しているという感じでした。

 雑誌は広告収入が重要だと言われていますが、いつごろからでしょうか、日本カメラに掲載される広告の数が徐々に減り始めました。
 全盛期の頃の日本カメラは紙質も良く、400ページ近くあったように記憶しており、かなり厚い雑誌でした。グラビアや記事の合間にメーカーの広告がカラーで掲載され、巻末の方には中古カメラ店などの広告がかなりのページを占めていました。全ページの3割くらいは広告ページではなかったかと思います。個人的には中古カメラ店の広告を見ている時間がいちばん長かったように思います。

 最近の日本カメラは紙質も薄くなり、広告も激減してしまい、経営的に大変なんだろうということは雑誌を見ていても想像がつきました。昨年のアサヒカメラの休刊の際にも、もしかしたらいずれ日本カメラも...ということが脳裏をかすめましたが、まさかこんなに早くにその日が来るとは思っていませんでした。

 前身となる「アマチュア写真叢書」が隔週刊の雑誌として創刊されたのが昭和23年とのことですので、実に足掛け73年にわたって続いてきたわけです。子供の頃、日本カメラという雑誌は特別な存在のように感じており、いつかは自分で購入し、読者になるということに憧れていたことを思い出します。

 また、同社からは日本カメラだけでなく、撮影のテクニックをまとめたシリーズや撮影機器、撮影地のガイドブックであったり、エッセイ集、写真集などなど、本当に多岐にわたる書籍が刊行されていて、私もずいぶんとお世話になったものです。いずれも「日本カメラ社」という名に恥じることのない、責任を持った書籍であったと思います。 

 書棚に2014年発行の日本カメラが残っていたのであらためて見てみましたが、この頃にはすでに広告の量がかなり減っているという感じです。しかし、記事は非常に多岐に渡っており、毎月、これだけの記事を書くのは大変なご苦労があっただろうということは想像に難くないと思います。掲載されている広告を見ると、ニコンからはDfが、ペンタックスからはK-3が発売された時期で、デジタルカメラにも勢いがあったという感じがします。


 アサヒカメラと違って日本カメラの場合は会社自体が解散してしまうようなので、再開の可能性に期待することは望めないかもしれませんが、このような格のある雑誌がまた一つ、なくなってしまうことは残念でなりません。

(2021年4月19日)

#カメラ業界 #日本カメラ

Velbonベルボンの事業譲渡

 8月に日本の代表的な三脚メーカーであるベルボンが、その事業をハクバ写真産業に譲渡するというニュースが流れました。譲渡されても事業はそのまま継承され、Velbonのブランドも残っていくとのことですが、私もベルボン三脚の一ユーザーであるため、ちょっと複雑な思いでこのニュースを読んでいました。

 三脚に限らずカメラ事業はどこも経営状態は決して楽ではないようで、この手のニュースは珍しくはありません。三脚といえば、同じく大手メーカーのスリックも今はケンコートキナーの子会社になっています。事業は継承されるとはいえ、経営者が変われば経営方針も変わる可能性がある一方で、譲受した側はそれまでの事業との相乗効果によってさらに事業が拡大する可能性もあるわけで、今後どうなっていくのか、先のことは全く分かりません。

 上でも書きましたように私はベルボンのユーザーで、現在、同社の三脚を大小合わせて5台持っています(出番が多いのは5台のうちの2台ですが)。用途によって揃えていたらいつの間にか5台になってしまったのですが、ベルボン以外の三脚も含めて、これまでに三脚が壊れたという経験は一度もありません。普通に使っていれば壊れるようなものではないので、これはユーザーからするととてもありがたいことです。しかし、メーカーにとってはリピートの可能性が読めないということがあるのかも知れません。
 例えばパソコンなどは5~6年で買い替えています。壊れてしまうということもありますが、むしろOSを含めたソフトウェアに起因する理由の方が大きいのではないかと思います。一方三脚はというと、現在使っているベルボンの三脚の中で最も古いのは25年くらい前に購入したものです。普通に使っていれば一生もの、というのは決して大げさではないと思います。

 最近のデジタルカメラには手振れ補正機能が備わっており、5段、6段程度の補正は難なくこなしてしまうため、三脚を使う必要性が減ってきているということもあると思いますし、画質の問題は多少あるにしろ、ISO感度を大きくできるのも同じように三脚の必要性を下げているのではないかと思います。
 また、常々感じていたことですが、ベルボンにしてもスリックにしても三脚や一脚のラインナップの多さには驚きです。例えばベルボンのカタログを見ると、三脚の現行機種だけで70種類近く存在しています。一社で70機種ものカメラを出しているメーカーなどありませんから、三脚というのはいかに多様性に応えなければならないものなのかということを考えさせられます。日本国内にカメラ人口がどれくらいいるのかは知りませんが、すべての人が三脚を持っているとは思えませんし、発売しているすべての機種が同じように売れているとも思えません。
 そんな事情を考えると、三脚事業が決して楽ではないだろうということが想像できます。

 私は中判や大判のフィルムカメラをメインで使っていますので三脚は必需品です。スナップなど、中判であれば手持ちで撮影することもありますが、手振れ補正もなければISO感度の変更もできません(フィルムで決まってしまいます)ので、薄暗いところなどでは三脚がなければお手上げです。
 三脚によって写りが変わるわけではないので、どこの三脚でも同じだろうという意見もあろうかと思いますが、私の場合、その使い易さで長年、ベルボンの三脚を使い続けてきました。
 事業譲渡によってVelbonブランドがすぐになくなってしまうことはないと思いますが、決して多くの台数が売れることはないだろうと思われる大型三脚などがラインナップから消えてしまうのではないかという懸念も少しあります。
 幸いにもほとんど壊れることのない三脚ですので、いま使っているものが壊れなければこれといった支障はありませんが、経営者が変わろうともVelbonが日本の三脚のトップブランドであり続けてほしいという思いは変わらずに強くあります。

(2020.9.2)

#ベルボン #Velbon #カメラ業界

アサヒカメラが休刊

 先日、新宿の大型の本屋さんに立ち寄ったところ、カメラ雑誌のコーナーに「アサヒカメラ」の7月号(最終号)がビニール袋に入った状態で、再入荷と書かれて並んでいました。アサヒカメラは7月号をもって休刊になってしまいましたが、創刊は1926年(大正15年)らしく、94年もの長きにわたり発刊され続けてきたのかと思うと感慨深いものがあります。

 私が初めてアサヒカメラを手にしたのは、確か学生の時だったのではないかと思います。私はどちらかというと日本カメラの方を好んで購入しておりましたが、記事の内容によってはアサヒカメラを購入することもありました。昔は毎月のように購入してましたが、いつの頃からか購入頻度が減り、ここ数年は年に数回程度しか買わないかといった状況でした。
 何故買わなくなってしまったのかと振り返ってみると、デジタルカメラの普及に伴い、雑誌の記事もデジタルカメラ、デジタル写真に移行していったわけですが、それに伴って私の購入頻度も徐々に減っていった気がします。フィルムにこだわっていた私にとって、銀塩写真やフィルムカメラに関する記事が少なくなっていくことで、雑誌に対する興味が薄れていったのかもしれません。

 いま手元に残っている最も古いアサヒカメラは2004年の8月号です。定価は840円(税込)で、特集記事は「銀塩もデジタルもプリントを極める」となっています。今のアサヒカメラに比べると紙質も厚く、広告ページがかなりあります。巻末のほうの中古カメラ店の広告ページを楽しみにしていた記憶があります。デジタルに関する記事や広告もだいぶ増えていますが、まだ銀塩やフィルムに関する記事のほうが多い感じです。

 2010年頃までは発行部数も5万部以上あったらしいですが、それ以降は徐々に減って、2万部まで落ち込んでしまったようです。アサヒカメラに限らず、書籍や雑誌、新聞など紙媒体の刊行物は減少の一途をたどっていますが、アサヒカメラが何故そこまで発行部数が減ってしまうのか、納得のいく理由が今一つわかりません。デジタル化は大きな原因かもしれませんが、一方でこれだけ多くのカメラ・写真人口がいるのに、何故アサヒカメラのような雑誌を読む人が減ってしまうのでしょうか?カメラや写真に関する情報を得ようとする人が減少傾向にあるのではないかと思ってしまいます。

 カメラがあまりにも普及してしまい、誰でも簡単にきれいな写真が撮れるようになったため、カメラという機械が特別なものではなくなってしまったからなんでしょうか?かつてのカメラは庶民にとって特別なものであり、それゆえにカメラにも写真にもその人なりの拘りがあったと思うのですが、あまりにも身近になりすぎて、そういう拘りを持つ人が減ってきているのかもしれませんね。

 アサヒカメラが創刊された1926年(大正15年)はカール・ツァイス財団によってツァイス・イコン社が設立された年だそうです。ツァイス・イコンによって世界で初めてといわれるスプリングカメラの「イコンタ」が世に送り出されたのが1929年ですから、遡ること3年も前にこの雑誌が創刊されたということを思うと、創刊した方の見識の高さというのか先見の明というのかよくわかりませんが、驚きを隠せません。

 廃刊ではなく「休刊」とのことですので、またいつの日か復活してくれることを願ってやみません。

(2020.6.30)

#アサヒカメラ #カメラ業界