秋の気配が漂い始めた裏磐梯高原

 福島県のシンボル的な存在、会津富士とも呼ばれる磐梯山の北側、標高800mほどのところに広がる高原一帯が裏磐梯で、磐梯朝日国立公園に指定されています。磐梯山の噴火によって誕生したといわれる湖沼群や清流が、見事な景観を作り出しています。高原リゾート地としても高い人気を誇っています。
 まだ、紅葉までにはもう少し時間が必要ですが、夏の名残がありながらも秋の訪れを感じ始めた裏磐梯を中判カメラで撮影してきました。

五色沼湖沼群

 裏磐梯の中でもひときわ人気の高いのが五色沼です。大小、数十の湖沼の総称ですが、沼によってエメラルドグリーンやコバルトブルーなどの異なる色をしていることからつけられた名前のようです。
 全長およそ4kmの探勝路が整備されており、片道2時間ほどで沼巡りをすることができます。起伏はほとんどありませんが、岩がゴロゴロしていたり、雨の後は道がぬかるんでいたりするので足元には注意が必要です。

 五色沼探勝路の入り口は裏磐梯ビジターセンター側と裏磐梯高原駅側の2箇所があり、いずれも駐車場が完備しています。
 また、この間をバスが通っているので、車で行って散策後はバスに乗って戻ってくるということも可能です。

 裏磐梯ビジターセンター側の駐車場からすぐのところにあるのが五色沼で最も大きい毘沙門沼です。

▲毘沙門沼:PENTAX 67Ⅱ SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F22 1/30 PROVIA100F

 水は透き通っていますが、光の具合によってはコバルトブルーやエメラルドグリーンなどに見えます。特に天気の良い日は鮮やかな色になり、木々の緑の映り込みやさざ波によって微妙に変化する色合いが何とも言えぬ美しさになります。
 毘沙門沼のボート乗り場の近くには大きなカエデの木があり、真っ赤に紅葉した時の水の青色とのコントラストは絶景です。

 下の写真は裏磐梯高原駅側の入り口に近いところにある、るり沼です。

▲るり沼:PENTAX 67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F22 1/30 PROVIA100F

 岸辺にはヨシの群落があり、沼の青い水に映り込む景色は一見の価値があります。
 また、この沼を見ることのできる場所は一ヵ所だけと限られていますが、正面に磐梯山を望むポイントであり、背景に磐梯山を入れた景色を撮ることもできます。
 個人的には五色沼の中ではるり沼がいちばんのお気に入りです。

 日差しが強いと木々の緑などもコントラストが高くなりすぎてしまうのですが、良く晴れた日差しの強い日ほど沼は鮮やかで神秘的な発色をするので、写真撮影する立場としては悩ましいところです。

中瀬沼

 五色沼の近く、国道459号線の裏磐梯剣ヶ峰交差点から米沢猪苗代線に入り、少し北上したところに中瀬沼があります。道路沿いの駐車場から徒歩15分ほどで中瀬沼の展望台に行くことができます。

▲中瀬沼:PENTAX 67Ⅱ SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5 F22 1/8 PROVIA100F

 展望台は沼を見下ろせる小高い場所で、正面に磐梯山が見えます。
 この時期、まだ木々の葉っぱが生い茂っているので、沼の大半は隠れてしまっていますが、春から初夏にかけて、また、晩秋の頃になると、葉っぱが少ないので良く見渡せるようになります。

 展望台から見て磐梯山は真南に位置していますので、良く晴れた日は昼頃になると太陽が正面にきてしまい、遠景が霞んだような状態になってしまいます。この写真も雲によって磐梯山への光が遮られており、遠景のコントラストが低くなっています。

 この一帯は中瀬沼探勝路、レンゲ沼探勝路が整備されていて、1時間もあれば一回りできます。近くにあるレング沼はジュンサイが自生していたり、冬には雪まつりが開催され、3,000本のキャンドルが沼に灯った景観は息をのむ美しさです。

曽原湖

 裏磐梯の中では最も小さな湖ですが、湖中には小島があったり、周囲が林で囲まれていたりと、ちょっと日本離れした感じを受ける風景です。湖岸に立っているペンションなどもとてもお洒落で、この風景によく似あっています。

▲曾原湖:PENTAX 67Ⅱ SMC PENTAX67 55mm 1:4 F22 1/8 PROVIA100F

 夏の終りを惜しむかのような雲が出ていますが、木々は黄色くなり始めていて空気もヒンヤリとしています。夏は湖上もボートで賑わっているのですが、乗る人もなく係留されたままのボートがどこか寂しげです。
 秋も間近という季節感を出すために、太陽が雲に隠れて、湖面が少し暗くなる瞬間を狙ってみました。ボートのところだけ木漏れ日があたっていて、良いアクセントになってくれました。

 裏磐梯には湖や沼がたくさんありますが、「〇〇湖」のように湖がつく中では曽原湖が最小です。これより小さいのは「〇〇沼」となっています。湖と沼の違いに明確な定義はないようですが、湖より小さなものを沼と呼んでいるようです。湖というと明るくて開けた感じがしますが、沼というと薄暗くひっそりと佇んでいるという印象があるのは私だけでしょうか?

幻の滝

 桧原湖から磐梯町まで、磐梯山の北側を通る磐梯山ゴールドラインがあります。10年ほど前までは有料道路でしたが、今は無料開放されています。磐梯山にあるスキー場のゲレンデの中を通っているため、冬季は閉鎖されてしまいます。
 その磐梯山ゴールドラインの中ほどに、幻の滝があります。

▲幻の滝:PENTAX 67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 近年までほとんど知られていなかったため、幻の滝と命名されたようです。
 駐車場が整備されており、道路を横切って遊歩道を5分ほど歩けば滝の正面に出ることができます。遊歩道と言っても狭くて急坂なので、しっかりした靴でないと大変です。

 ごつごつとした岩肌を滑るように流れ落ちる涼しげな滝です。落差は15mほどで、特に高いというわけではありませんが、滝つぼの前まで行くと見上げるような体勢になります。風の強いときは飛沫がかかるので覚悟が必要です。

 上の写真は少し離れた場所から長めのレンズで滝の中央部を撮影したものです。右側にあるカエデの木とのコラボレーションがとても綺麗です。
 飛沫がかかって濡れた葉っぱが白くなっていますが、この反射はPLフィルターを使えば取り除くことができます。同様に岩肌のテカリも抑えられ、しっとりとした感じになると思います。

 駐車場からすぐのところにある滝ですが、この辺りも熊が出るらしく、「熊注意」の看板があります。こんな逃げ場のないところで熊に出会ったらパニックになりそうです。

小野川不動滝

 小野川湖からデコ平方面に通じる道路から分岐し、細い道をしばらく上ると小野川不動滝の駐車場に着きます。ここから約1km、30分ほど山道を登ると滝に到着します。探勝路はよく整備されていますが、途中に150段ほどの勾配のきつい階段があります。
 落差25mの大瀑布で、かなり手前からでも滝の轟音が聞こえてきます。滝の手前に渓谷に架かる橋があり、橋の上からも全景を見ることができます。

 下の写真は橋を渡った先を滝に向かう遊歩道から撮ったものです。

▲小野川不動滝:PENTAX 67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F32 2s PROVIA100F

 今の時期、水量は少なめなので滝に近づくことができますが、雪解け時で水量の多いときはここまで近づくと飛沫でびしょ濡れになってしまい、撮影どころではありません。
 引いて滝全体を入れたフレーミングも良いですが、水量が少なめだったので滝の上半分だけを撮ってみました。周囲をあまり広く入れず、滝の迫力が損なわれないようにしました。

 この滝は飛沫が多いので、日差しが差し込むと虹がかかることがあります。この日は薄曇りだったので虹を見ることはできませんでしたが、コントラストが高くなりすぎず、ディテールまで表現できたと思います。

 因みに、ここも熊の目撃件数が多いようです。

桧原湖

 裏磐梯で最も大きな湖で、南北に18kmに渡って細長く広がっています。湖の周囲をほぼ湖岸に沿ってぐるりと道路が通っていて、車で一回りすることができます。桧原湖一周のサイクリング大会やバスフィッシングのプロトーナメントなど、イベントの開催も多く行なわれています。

 大きな湖なので場所によって景観もずいぶん異なり、撮影をしながらだと、一日では回り切れないほどたくさんの撮影ポイントがある魅力的な湖です。

 湖の東側にある桧原湖展望台から、夕陽を撮影したのが下の写真です。

▲桧原湖:PENTAX 67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F22 1/15 PROVIA100F

 南北には長くても東西は1kmほどしかなく、対岸の山並みがすぐそこに見えます。
 ちょうど西の空に雲が広がり、その切れ間に太陽がかかったときに撮りました。湖にも反射して、鮮やかなオレンジ色が出現しました。上空の青さを見ていただくとわかるように、まだ夕暮れというほどには暗くないのですが、初秋の夕暮れの雰囲気を出すために露出は切り詰めています。
 また、広さを感じられるように短焦点レンズで撮影しています。

 桧原湖の周囲にはペンションやホテルなどの宿泊施設、オートキャンプ場などがあるので、早朝から夕暮れまでの撮影にはとても便利です。

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 9月中旬というと秋には少し早くて、ちょっと中途半端な感じのする時期ではありますが、夏の賑わいもなくなり、じっくりと撮影するには良い季節かも知れません。暑さもおさまり、朝晩は肌寒いくらいですから、体への負担も少なくてありがたいです。
 何度行ってもまた行きたくなる、そんな魅力にあふれた裏磐梯です。

 あと一ヶ月もすると鮮やかに染まった紅葉を見ることができます。

(2022.9.27)

#裏磐梯 #ペンタックス67 #PENTAX67 #小野川不動滝 #幻の滝

夏の浅間大滝 美しい緑と天然の涼しさはまさに別世界

 今年(2022年)の夏は本当に暑くて、東京でも連日、猛暑日の記録更新というあまり有り難くない話題が飛び交っていました。熱中症にならないように適度に冷房をと言われていますが、冷房の効いた室内にばかり居るのもよろしくないと思い、涼を求めて群馬県にある浅間大滝に行ってきました。
 都心からは高速道路を使えば2時間半ほどで行くことができます。アクセスも比較的容易で、美しい自然と涼しさを満喫でき、夏の撮影にはもってこいのスポットです。

深い木立に囲まれた美しい滝

 群馬県を東西に流れる吾妻川の支流の一つ、鼻曲山を源流とする熊川にある滝で、北軽井沢周辺では最大の滝だそうです。落差はおよそ15m、水量も豊かで勢いよく流れ落ちる迫力のある滝です。
 浅間大滝に行くルートはいくつかありますが、今回は高崎から県道54号線(長野原倉渕線)を西に向かい、浅間山が正面に見える二度上峠を越えて行きました。峠を下り、しばらく走ると浅間大滝の入り口があります。駐車場に車を停めて、川沿いに10分ほど歩くと滝が見えてきます。

 2019年の台風による土砂崩れでしばらく立ち入りができなかったのですが、今は復旧して滝を見ることができるようになりました。以前は対岸に渡る太鼓橋が架かっていたのですが、その橋も流されてしまったようです。橋はなくなりましたが滝つぼから下流は水深も浅いので、長靴を履いていれば川に入って対岸に行くことも滝つぼに入ることもできます。
 川の両側はかなり急峻な崖になっており、大きな木々が覆いかぶさるようになっているので、昼間でも薄暗くヒンヤリとしています。

 滝の少し下流側から全景を撮影したのが下の写真です。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5 F22 2s PROVIA100F

 覆いかぶさる木立を強調するよう、広角レンズを使ってみました。薄曇りの天気で、しかも木々に光が遮られて渓谷はずいぶん暗く感じます。一方、上半分の木立の部分はかなり明るいので、下半分との明暗差は結構大きい状態です。
 ハーフNDフィルターをかければ明暗差が緩和され、流れを明るめにすることができますが、深い森の中の薄暗い雰囲気を出すためにハーフNDフィルターは使っていません。
 また、木の枝が重なることで葉っぱの濃淡が描く模様が綺麗で、個人的には気に入っています。

 この写真のように、広角レンズで見上げるアングルで撮ると、滝は実際の見た目よりも小さく写ってしまいます。滝はずいぶん遠くにあるように見えるかもしれませんが、写真から受ける印象よりもかなり近い場所から撮影しています。滝の迫力を出来るだけ損なわないようにということで、画全体の中での滝の配分には結構悩みます。

天然のミストシャワーが涼しい

 落差15mというのは、滝の真下にでも行かない限り、見上げるほどの高さではありませんが、それでも滝つぼの近くまで行くとかなりの量の飛沫があります。陽が差し込んでいないうえに天然のミストシャワーを浴びるので肌寒いくらいです。東京のうだるような暑さと比べると別世界で、まさに生返るという言葉がぴったりです。
 マイナスイオンというものがあるのかどうか、目に見えないし、肌でも感じられないので私には良くわかりませんが、こんな環境に一週間もいたら、さぞかし体も元気になるだろうと思います。

 滝の迫力が感じられるカットをと思い、滝の正面にまわって撮ってみました。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 200mm 1:4 F32 4s PROVIA100F

 あまり滝に近づくと、飛沫でカメラも体も濡れてしまうので、すこし離れたところから長めのレンズで撮っています。
 滝の上部の川幅はあまり広くないように見えますが、一段落ちた後、手を広げたように落ちる流れがとても綺麗です。直瀑と違い横幅があるので、落差の割には迫力が感じられます。

 滝のほぼ正面から撮っていますが、写真としてはわずかに右向きという感じです。ですので、カメラを少しだけ右に振って、右側を広く入れた方が窮屈な感じがなくなったように思います。もしくは、若干右側に寄って、左向きの写真として写した方が良かったかもしれません。
 撮影時と出来上がった写真を見た時で違った印象になるのは珍しいことではありませんが、この写真もその一例です。

 下の写真は滝の右側の方から、上部の流れ落ちるところを撮影した一枚です。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 200mm 1:4 F32 2s PROVIA100F

 放物線を描いて落ちる滝のボリューム感を出すため、滝の占める割合を多めにしてみました。
 風はほとんどなかったのですが、やはり滝の正面は風があるので、左側の木の枝がブレてしまっています。これによって、写真全体のシャープさが損なわれてしまった感じです。
 この枝が止まっていてくれたらと思うのですが、自然相手に長時間露光する場合は、いつ風が吹くかわからないのでなかなかうまくいきません。

黒い岩と流れの美しいコントラスト

 浅間大滝周辺の岩は溶岩流が固まったものだそうですが、黒っぽいものが多く、岩と水の流れだけを写すとコントラストがとても綺麗で、モノトーンの写真のようになります。

 滝つぼのところをクローズアップしたのが下の写真です。

▲浅間大滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 200mm 1:4 F22 4s PROVIA100F

 ほぼ滝の中央の、いちばん水量の多いところを撮りました。
 滝の全景ももちろん魅力的ですが、部分的なカットも写真としては面白いと思います。場所によって繊細さであったり、あるいは力強さであったり、いろいろな表情があるので飽きることがありません。
 この写真では流れ落ちる水が線状に見えていますが、もっと長時間露光すれば雲のようにふんわりとした感じになり、全くイメージの異なる写真になると思います。

 この滝では滝行をする人がいるらしく、まさにこの場所に立って落ちる水に打たれるようですが、私は見たことがありません。この水に打たれたらかなり痛そうです。

 なお、浅間大滝のちょっと下流に行ったところに、滝というほどではありませんが小さな段差になっているところがあります。絵になるスポットだと思います。

三段の岩を流れ落ちる魚止めの滝

 浅間大滝の駐車場から浅間大滝とは反対方向に少し下ると魚止めの滝があります。浅間大滝の下流にある滝ですが、ナメのように岩を滑り落ちていくという感じの滝で、渓流瀑という部類に入ります。大きく三段になった岩を流れ落ちるため、魚も登ることができないということでつけられた名前のようです。
 落差は10mほどですが滝の全長が長いため、浅間大滝とは違った迫力があります。

 滝のところまで降りていくと全景が見えるのですが、その途中から撮影してみました。

▲魚止めの滝 : PENTAX67Ⅱ smc-PENTAX67 165mm 1:2.8 F22 2s PROVIA100F

 前景に木や草を入れて、滝を少し隠すように構成しています。若干高い位置から俯瞰気味に撮ることで、下から全景を写すよりも滝の迫力を出そうとしたのが狙いですが、手前の草はちょっと多すぎた感じです。また、左上の木々が暗く落ち込んでくれたので、流れの白さが際立っています。
 ごつごつとした岩の上を流れる水の軌跡は得も言われぬ美しさがあります。実際に見たよりも、写真では水量がかなり多いように感じますが、長時間露光のなせる業といったところです。

 この滝は、水量が少ないときであれば注意しながら登っていくことができますが、降りるときは登るときの何十倍も恐怖を覚えるので要注意です。一度だけ滝滑りをしている人を見かけたことがありますが、私には無理です。

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 駐車場から徒歩10分の範囲に浅間大滝と魚止めの滝という2つの素晴らしいスポットがあるにもかかわらず、訪れる人がとても少ない感じです。私もこれまで何度も訪れていますが、駐車場が満車になったとか、人が多くて撮影ができないというようなことは一度もありません。地の利も悪くないと思うのですが、近くにある、観光バスが列をなす白糸の滝とはずいぶん違います。

 私がこの滝を訪れる一ヶ月ほど前、近くの路上で熊が目撃されたそうです。日本各地でクマの目撃情報が増えている気がして、以前は気にも留めなかったところでも、最近はクマが出るんじゃないかと妙に気になったりします。切り立った崖を降りて来ることはないとは思うのですが、滝の音にかき消されて他の音が聞こえない状態だと、やっぱり不安な気持ちになります。

(2022.8.24)

#PENTAX67 #ペンタックス67 #浅間大滝 #渓谷 #魚止めの滝

ニッコウキスゲ咲く、夏の霧ヶ峰高原 花の旅

 長野県の中部にある霧ヶ峰高原は、車山を最高峰に標高1,500mから1,900mに広がる比較的起伏の緩やかな高原で、八ヶ岳中信高原国定公園に指定されています。大きな樹林はほとんどないため、360度の展望がききます。
 下界ではうだるような暑さでもここは爽やかな風が通り抜け、まさに別世界といった感じです。
 梅雨明けの7月中旬ごろから一斉に咲き始め、高原全体を黄色に染めるニッコウキスゲは有名ですが、湿原も多く存在するため、他にもたくさんの高山植物があることでも知られています。
 今年は梅雨開けが異常に早かったせいか、霧ヶ峰高原の花もだいぶ進んでいる感じですが、今回は、夏の霧ヶ峰高原で撮影した花をいくつかご紹介します。

ニッコウキスゲ(日光黄菅)

 霧ヶ峰の中でもニッコウキスゲが広範囲に群生しているのは、強清水周辺とヴィーナスの丘と呼ばれる車山肩から蝶々深山の一帯にかけてです。特にヴィーナスの丘の辺りの群生密度はとても高く、まさに一面が黄色に染まります。
 しかし、花の数はその年によってずいぶん差があり、少ない年は一面に黄色というわけにはいかず、まばらな感じのときもあります。それでもかなりの数の花が咲いているのですが、多いときの映像が脳裏に焼きついているので、余計にそう感じるのかもしれません。

 高原の高く青い空とニッコウキスゲのコントラストはとても美しく、爽やかな印象を受けますが、朝日が昇って黄色の花がオレンジ色に染まる景色も幻想的で、ほんのわずかの時間だけ見ることのできる光景です。

 下の写真は朝日が昇った直後に撮影したものです。

▲霧ヶ峰高原:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 右上にあるのが車山で、その左側に薄く見えているのが蓼科山です。
 車山の山頂には気象レーダーのドームが設置されているのですが、この時はいい具合に霧がかかってドームを隠してくれました。
 霧ヶ峰高原はその名の通り、霧の発生がとても多く、特に明け方はものすごい早さで霧が流れていくので、霧のかかり方によっては雰囲気が大きく変わってしまいます。個人的には、太陽が稜線の上に出たくらいの時の光の具合がいちばん好きで、この時に霧がどうかかっているかはまさに神頼みといった感じです。
 ニッコウキスゲは一日花のため、一つの花は一日でしぼんでしまうようなのですが、次から次へと咲くので、およそ一週間ほどはこのような見事な状態が続きます。

 近年、ニホンジカの食害や踏み荒らしによる被害からニッコウキスゲを保護するため、電気柵が設けられています。その効果もあってニホンジカの数も減少しているようです。以前は夜中に霧ヶ峰に向って車を走らせていると鹿に遭遇することが良くありましたが、最近はあまり見かけなくなりました。

ウスユキソウ(薄雪草)

 亜高山帯に分布しているキク科の植物で、ヨーロッパのエーデルワイスと同じ仲間です。エーデルワイスのようなモコモコした毛がないので、薄く雪をかぶっているという例えはまさにピッタリという感じです。ウスユキソウという名前は、植物の中でも雅名の一つに数えられているようで、確かに優雅な名前ではあります。
 同じ仲間のミネウスユキソウやタカネウスユキソウはもっと標高の高いところに咲いていますが、霧ヶ峰高原で見ることができるのはこのウスユキソウだけです。

▲ウスユキソウ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 2X F5.6 1/30 PROVIA100F

 草原のようなところでも育成していますが、上の写真のような岩礫地でよく見かけます。生育環境がわかるように、両側の岩を多めに入れてみました。
 どちらかと言えば地味な花で、赤や黄色の花のように目を引くわけではありませんが、見つけた時はつい立ち止まって見てしまう、そんな魅力のある花です。

 あまり広い範囲を写し込むと雑然とした感じになってしまうので、少し離れたところから望遠レンズを使って撮影しています。ぼかし過ぎて背景が何だか分からなくなってしまわないよう、適度な距離と絞りを選んでいます。

シシウド(獅子独活)

 背丈が2mを超えるほど伸びるセリ科の植物です。霧ヶ峰高原では良く見かけますし、他の植物に比べて抜きんでて大きいのでとても目立ちます。
 花火のように広がった花にはたくさんのハチやハナアブがひっきりなしに来ており、花の上はとても賑わっています。

▲シシウド:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F11 1/250 PROVIA100F

 上の写真は、太陽がちょうど南中にかかるころに撮ったものです。
 シシウドの根元に屈みこみ、カメラを上に向けて太陽をもろに入れて撮影しました。太陽を直接入れているのでかなりのプラス補正をしています。シシウドが白くなりすぎないように、かといってシルエットになってしまわないようにということで露出値を決めましたが、完全にシルエットにしてしまっても良かったかもしれません。

 このように真夏の太陽を直接入れる場合、レンズやカメラがダメージを受けてしまうので短時間で撮り終えてしまわねばなりません。また、これは短焦点(45mm)レンズを使っていますが、それでもファインダーを長く覗いていると目をやられてしまうので注意が必要です。

 シシウドは花が終わると結実し、やがて本体は枯れてしまいます。茶色くカサカサとした茎が折れているのを見ると、秋が来たなという感じがします。
 なお、春の新芽は食べられるらしいですが、私は食べたことはありません。確かに芽が出てきたところはウドとよく似ていて、間違えて採ってしまいそうです。

ハクサンフウロ(白山風露)

 霧ヶ峰高原ではニッコウキスゲと並んで人気のある花です。
 小さな花ですが、赤紫色の花はとてもよく目立ちます。背丈は30~50cmほど、他の植物の中に埋もれるようにして咲いています。花の直径は3cmほどで、花芯の辺りが白くなっているのが特徴的です。小さな花ですが結構たくさんの花をつけるので、宝石をちりばめたようです。

 このほかにグンナイフウロやタチフウロ、アサマフウロなどのフウロソウの仲間を何種類か見ることができます。

 群生している中から一輪だけを撮ったのが下の写真です。

▲ハクサンフウロ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200m 1:4 EX3 F4 1/125 PROVIA100F

 背丈の低い花なので、どうしても俯瞰気味の撮影が多くなってしまうのですが、ひょんと飛び出した一輪を見つけたので下から見上げるようなアングルで撮りました。
 花の傷みもなく綺麗だったのと、茎が描くラインがとても美しかったので、それを強調するように背景は極力シンプルにしました。バックを大きくぼかすように接写リングを使っています。

 あまり明るくし過ぎると雰囲気が損なわれてしまうので、露出はアンダー気味にしています。
 また、花弁にわずかな朝露が残っていると思いますが、あっという間に消えてしまうので、のんびりと構えてはいられません。
 下半分が紫色にぼやーっとしていると思いますが、これはバックに咲いているハクサンフウロのボケです。

 因みに、こんな感じで咲いています。

▲ハクサンフウロ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F22 1/60 PROVIA100F

ホソバノキソチドリ(細葉の木曽千鳥)

 野性の蘭の一種で、深山の草原のようなところに自生する多年草です。
 背丈は20~30cmほどと小さく、草むらに咲いて、しかも花が黄緑色なのでよく探さないと見つかりません。花は小さいのですが非常に複雑な形状をしており、いかも蘭といった感じです。五線紙の上に書かれた音符のようにも見えます。
 同じ仲間にトンボソウというのがあり、非常によく似ているのですが、距がピンと跳ね上がっているので何とか見分けがつきます。霧ヶ峰高原ではトンボソウの方が圧倒的に個体数が少ないと思われます。

 草むらで見つけたホソバノキゾチドリ、花の数は多くありませんが撮ってみました。

▲ホソバノキゾチドリ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200m 1:4 EX3 F4 1/60 PROVIA100F

 何しろ、これ以上ないというくらい花が地味なので、草むらの中からこの花を浮かび上がらせるのは結構大変です。
 光が入り込んでいない方がバックは柔らかくなるのですが、花自体も平坦な感じになってしまいます。バックが少々うるさくなってしまいましたが、光が当たってコントラストがついているところを狙ってみました。それだけだとアクセントに欠けるので、隣に玉ボケを入れてみました。
 右側からスーッと伸びている細い葉っぱを入れるのは迷ったのですが、そのままにしておきました。

 このほかにも野性の蘭の仲間のミズチドリやテガタチドリ、クモキリソウなども非常にまれではありますが、見かけることがあります。いずれも多年草なので、見つけると翌年も同じ場所に咲くはずなのですが、数年後に訪れてみたが見当たらないということもよくあります。盗掘されてしまうのかもしれません。

シュロソウ(棕櫚草)

 湿り気の多い場所を好むらしく、湿原では割とよく見かけます。
 時に群生することもあり、そこそこ見応えはありますが、花の色はお世辞にも美しいとはいえません。
 茎は1m近くまで伸びますが、花はとても小さくて5mmほどしかありません。この小さな花が茎の周りにびっしりとついている様は、試験管を洗うブラシのように思えてなりません。
 強い毒性を持った植物というのは多くありますが、このシュロソウも根茎に毒があるらしいです。

 この花、日中はどのように撮ってもさえない写真になってしまうので、朝日が差し込んでいる状態で撮影してみました。

▲シュロソウ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200m 1:4 2X F4 1/125 PROVIA100F

 前方から朝日が差し込んでいる状況で、お世辞にも美しいと言えない花も、だいぶ鮮やかになってくれました。朝日なので色温度が低く、かなり赤みが強くなっていますが、玉ボケも手伝って朝の感じは出ているかと思います。
 写真ではわかりにくいかも知れませんが、花弁はかなり肉厚です。この厚い花弁を透過する強い光、そして花が密集しているため、輪郭がわかりにくくなってしまいました。もう少し早い時間帯、日の出直後あたりだと朝露をまとっているので、もっと風情のある写真になったと思います。

 小さくてよくわかりませんが、虫が張り付いています。

マツムシソウ(松虫草)

 亜高山帯で広く見ることができます。薄紫色の花はとても涼しげな感じがして、群生したマツムシソウが風になびいている光景はとても風情があります。
 低山や平地でも見ることがありますが、標高の高いところの花に比べると花弁の数が少なく、どことなく貧相な印象を受けます。
 花が終わると花床が盛り上がって、まるでイガクリ坊主のような愛嬌のある姿になります。
 日本固有種ですが、多くの都道府県で減少傾向にあるらしく、レッドリスト入りした絶滅危惧種になっているようです。

 下の写真は夕暮れに近づいてきたころ、マツムシソウをシルエットで撮影したものです。

▲マツムシソウ:PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 6×7 105m 1:2.4 F22 1/125 W10 PROVIA100F

 そのままで撮ると空が白くなりすぎてしまうので、色温度変換フィルター(W10)を装着しています。
 あまりたくさん群生しているとゴチャゴチャしてしまうので、数本の茎がいい塩梅に伸びている株を選んで撮りました。より、夕暮れの感じが出せればと思い、傍らに草を入れてみました。
 太陽を入れていますが、前で紹介したシシウドの写真と違い、太陽高度が低くなっているのと、薄く雲がかかっているのとで、強烈な夏の太陽の印象はありません。
 また、この時は持ち合わせていなかったのですが、軽くレフ板をあてて、マツムシソウのシルエットを少し柔らかくするのもありだと思いました。

 この時期の霧ヶ峰高原は、一年でもっとも賑わう季節ですが、夕暮れが近づくと人の数のずいぶんと減り、撮影するにはありがたい時間帯です。

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 霧ヶ峰高原の夏は本当に短くて、8月の声をきくとそろそろ秋の気配が漂い始めます。そして、咲く花の種類も夏の花から秋の花へと一気に入れ替わります。秋の花は地味な色合いのものが多いのに加えて、8月になると訪れる人の数もぐっと減るので、うら寂しさを感じるほどです。
 8月の半ばごろに、今度は秋の花を撮りに訪れれみたいと思っています。

(2022.7.24)

#霧ヶ峰高原 #ペンタックス67 #PENTAX67 #プロビア #PROVIA

緑鮮やかな山形・秋田の滝巡り くぐり滝/慈光滝/玉簾の滝/奈曽の白滝/元滝伏流水/止滝/銚子の滝

 日本は山が多いので各地でたくさんの滝を見ることができますが、やはり、東北地方と中部地方は滝が多いイメージがあります。滝の明確な定義はあいまいなようで、どれくらいの高さ(大きさ)から滝というのかはわかりませんが、山形県のホームページを見ると、「日本一の滝王国 山形」と書かれていますし、地図を見ても滝の記号が多いと感じるのは東北地方です。
 比較的水量も多く、緑が鮮やかな梅雨の時期に、山形県から秋田県にかけて滝巡りをしてみました。たどり着くのまでに時間のかかる滝もあるので、一日に訪れることのできる滝の数は限られてしまいますが、実際に行った滝の中からいくつかをご紹介します。

くぐり滝(山形県)

 南陽市を走る国道348号線から分岐する細い道があり、2~3kmほど進むと駐車場に着きます。訪れる人は多くありませんが、車のすれ違いができない狭い道なので注意が必要です。
 駐車場からは歩きになりますが、2~3分歩くと滝が見え、さらに2~3分で滝に到着します。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W 125mm 1:5.6 F45 8s PROVIA 100F

 落差は14mほど、雪解けの頃は水量も多いようですが、訪れた時は少なめでした。
 この滝の特徴は何と言っても、岩にぽっかりと開いた大きな穴から流れ落ちていることです。なぜこのような穴があいたのかわかりませんが、穴の直径は5mほどもあるそうなので、かなり大きな穴です。
 また、この滝は三方がこのような絶壁に囲まれていて、滝つぼに立つととても圧迫感があります。

 この滝を近い距離(滝つぼの辺り)から撮ろうとすると、カメラを上に振ってかなり見上げるようなアングルでの撮影になります。大きな岩の穴を入れようとすると短焦点(広角)のレンズでの撮影になり、上方が小さくなってしまいます。それを防ぐため、目いっぱいのアオリ(フロントライズ)をかけています。
 滝の下流方向は開けていますので、滝から離れたところまで移動すれば長焦点レンズでも全貌を撮ることができます。

 また、この日は曇り空だったこともあり、空は入れたくなかったので、上辺はギリギリのところでカットしています。そのため、岩穴の上部が少し切れています。岩穴の上部もすべて入れたい場合は、やはり少し離れたところから長めのレンズで撮る必要があります。

 撮影していた時間はおよそ一時間ですが、その間、訪れる人は誰もいませんでした。

慈光滝(山形県)

 この滝は真室川町から酒田市に向かう国道344号線沿いにあります。道路のすぐ脇にあるので、車で走っていても目に入ってきます。すぐ近くに車2台分ほどの駐車スペースがあり、アクセスは非常に良いのですが、あまりにも道路に近いため、三脚を立てるには道路反対側の草むらということになってしまいます(滝の前で三脚を立てようとすると車にはねられる危険ありです)。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 4s PROVIA 100F

 黒い岩肌を滑り落ちるような、とても優美な感じのする滝です。だいぶ散ってしまっていますが、わずかに赤いヤマツツジの花が見えます。
 落差は6mほどあるようなのですが、この写真に写っているのは4mほどです。全景を入れようとすると道路の脇に立って覗き込むような位置で撮らねばならず、手持ち撮影しかできません。ということで、この写真は道路反対側からガードレール等が入らないギリギリの範囲で構成しています。
 雨が上がった直後で全体に柔らかな光が回り込んでいますが、画左側の木がちょっと明るすぎる感じです。

 また、この滝の反対側の路肩から河原に降りて滝の前まで行くことができるのですが、流木や木の枝、枯れ草などが雑然としていたので撮影はあきらめました。

 数年前、紅葉の時期に訪れたことがあり、華やかに色づいた中に黒と白のコントラストの滝がとても綺麗でした。その時は縦構図で紅葉を上に多く入れたのですが、今回は上方が明るすぎたので横構図にしてみました。
 露光時間は4秒ですが、時々、車が目の前を通るので、運が悪いと車の屋根が写り込んでしまい、高いフィルムが一枚、無駄になってしまいます。

玉簾の滝(山形県)

 弘法大師が神のお告げによって発見したと伝えられている落差63m、山形県随一の高さを誇る見事な滝です。広い駐車場が完備されており、駐車場から滝まで徒歩10分ほどです。滝の前には御嶽神社のお社があり、かつては山岳宗教の修験場だったようです。
 太陽の光によって滝の飛沫が玉簾のように見えることからついた名前らしいです。

 水量も多く、豪快に流れ落ちるので、滝からかなり離れていても飛沫が飛んできます。滝つぼの前まで行くことができますが、びしょ濡れになる覚悟が必要です。
 この写真を撮影した神社の裏手に当たる場所は昼間でも薄暗く、滝の飛沫の影響もあるのか、とてもひんやりとしています。長時間、一人きりでいると何だか心細くなってきます。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM105mm 1:5.6 F45 4s PROVIA 100F

 本当は曇っていてほしかったのですが、ご覧のように見事に晴れ渡ってしまいました。周囲には大きな木があるので、晴れてしまうとコントラストがつきすぎてしまいます。全体に光りの回り込んだ状態を撮りたかったのですが、自然はこちらの思うようにはなってくれません。
 周りの木や斜面をシルエットになるようにして、滝を取り囲むような構図にしてみました。偶然のタイミングですが、滝の背後の右側の崖に木の影が落ち込んでいるのがいいアクセントになってくれました。

 滝を撮るときは人工物は入れないようにすることがほとんどですが、敢えて今回は滝つぼの前に設置されている柵と立て看板のようなものを小さく入れてみました。

 なお、この滝はゴールデンウィーク期間と夏休み期間、夜になるとライトアップされるようです。

奈曽の白滝(秋田県)

 日本海沿いに北上する国道7号線から鳥海山方面に分岐する道路に入り、10分ほど走ると到着します。広い駐車場があり、一帯は奈曽の白滝公園になっています。
 滝に行くにはこの公園内を抜けるか、金峯神社の境内を通るかのどちらかですが、滝が見える観瀑台のようなところまでは徒歩で15分ほどです。金峯神社は鳥海山の修験の拠点だったらしく、境内はかなり急な石段が続いています。
 観瀑台は金峯神社の本殿の近くにあるのですが、障害物がなく滝の全貌が見えるのはここと、長い石段を下りた先の滝つぼの前だけです。

 下の写真は観瀑台からではなく、奈曽川にかかっている吊り橋の上から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F45 8s PROVIA 100F

 奥に見えるのが奈曽の白滝の滝つぼで、そこからの流れを撮ってみました。滝は落差26m、幅11mの豪快な滝ですが、滝そのものよりもその先の流れがとても綺麗でした。
 雨が降ったり止んだりという天気でしたが、滝を撮るには最高です。水が少し濁っていましたが、長時間露光で撮影すれば波が白くなるので、濁りをごまかすことができます。

 濡れた岩のテカリを抑えるためにPLフィルターを使おうかと思いましたが、岩がそれほど多くないのと、緑が不自然にな色になってしまうのを避けるため、PLフィルターは使用していません。
 下側(手前側)をもう少し広く入れたかったのですが、すぐ下に吊り橋を支えているワイヤーがあり、それが写り込んでしまうので手前で止めています。

 吊り橋の上に三脚を立てているので、人が吊り橋に入ると大きく揺れます。しかも全長75mの橋を渡りきるまで揺れ続けるので、この場所で撮影するのは人の少ない早朝がお勧めです。

元滝伏流水(秋田県)

 奈曽の白滝から車で数分も走ると元滝伏流水の駐車場に着きます。駐車場からは整備された遊歩道があり、15分ほどで伏流水が見えてきます。
 元滝はさらに上流になるらしいのですが、がけ崩れで立ち入り禁止になっていました。

 元滝伏流水は鳥海山の溶岩の末端から流れ出ている湧き水で、水温は年間を通じてほぼ変わらず、10度くらいとのことです。とてもきれいな水で、イワナやヤマメがいるらしく、撮影に行った時も釣りをしている人を見かけましたが、釣れたところは見られませんでした。

▲Linhof MasterTechnika 45 RodenStock Sironar-N 210mm 1:5.6 F32 8s PROVIA 100F

 岩の間から流れ落ちる水と苔むした岩、うっそうとした森がつくる景観は、形容しがたい、ぞくっとするような空間です。
 川の中ほどに草が根を下ろした小さな岩があったので、これを手前に入れて撮影しました。ほとんど無風状態だったので、草もブレずに写ってくれました。
 画左側は上部に大きな岩があり、その陰になっているので、右の方に比べるとかなり暗い状況です。右半分に弱いハーフNDフィルターをかけても良いのですが、これくらいの明暗差があった方が奥行きが感じられると思います。
 全体にあまり明るくしてしまうと、ぞくっとするような感じが薄れてしまうので、露出は切り詰め気味にしています。

 もう少し下流(写真の左方向)に行くと川の中に苔むした大きな岩がゴロゴロしており、また違った美しさを見ることができます。

止滝(秋田県)

 十和田湖に向かう国道103号線、青森県との県境に近いところにある滝です。103号線に沿って流れる大湯川にある滝で、道路のすぐ脇にあります。大湯川の水量はあまり多くないのですが、この止滝のところは川幅が狭くなっているので、大きな滝ではありませんが迫力があります。
 滝つぼのすぐ上(道路脇)には小さな神社のお社があり、滝が祀られているのかも知れません。
 滝の下流すぐのところに駐車場があるので、滝へのアクセスはとても便利です。

 下の写真は、滝つぼの少し下流にある橋の上から撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C 300mm 1:8.5 F45 2s PROVIA 100F

 川の流れを多く入れたかったのですが、水量が少なく、あまり風情がなかったので、上の緑を多く入れました。また、滝の手前に伸びている枝が滝にかかり過ぎないポジションから撮影しています。
 折り重なる木々が平面的にならないように近くにある枝を大きく入れてみましたが、風でブレてしまい、ちょっと中途半端な感じです。これが止まってくれていると、全体がもっとすっきりとした印象になると思うのですが。

 この写真ではよくわかりませんが、カエデの木が何本もありましたので、秋の紅葉の季節はとても美しい景色になるのではないかと思います。

銚子の滝(秋田県)

 止滝から少し上流に行き、国道103号と104号が分岐している少し先にある滝です。滝のすぐ前まで車で行くことができます。
 江戸時代の紀行家、菅江真澄が訪れたらしく、「菅江真澄の道」と書かれた案内柱が立っています。

 銚子の滝とか銚子滝という名前の滝はあちこちにあり、滝の形が銚子に似ていることからつけられたものが多いですが、この滝も昔は銚子の形をしていたようです。
 落差は20mほど、季節によってはかなりの水量があるようです。

 滝は北西を向いて流れ落ちているので、晴れた日の日中は逆光になってしまうのと、晴れているとコントラストが強すぎて滝が目立たなくなってしまいます。やはり曇りとか雨の日がお勧めです。
 滝つぼは左右にかなり広がっているので、立つ位置によって滝の形や見え方がずいぶん変わってきます。

 下の写真はほぼ正面から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 8s PROVIA 100F

 滝の上部にヤマツツジが咲いていたので、これをできるだけ入るように、かつ、空は入れないようにというフレーミングです。
 画左側の柱状節理がとても綺麗だったので、ここの質感が出るように露出を決めています。
 水量はさほど多くないので、迫力というよりは繊細な美しさを感じますが、滝の下半分と左側の柱状節理の部分を切り取ると、美しさに加えて滝の迫力が感じられる写真になると思います。

 この滝の少し手間に「錦見の滝」があり、林の中にたたずむ美しい滝です。この辺りは滝が密集しています。

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 山形県と秋田県の滝、およそ20ヵ所を巡ってきましたが、訪れたにもかかわらず光の具合が良くなくて撮影しなかった滝もあります。そういう滝は、「また、出直してきなさい」と言われているのだと思い、再度、訪れてみたいと思っています。
 今回、紹介できなかった他の滝については、別の機会にご紹介できればと思っています。

 それにしても、滝というのは魅力があります。

(2022.7.9)

#滝 #渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_mastertechnika

秋間梅林(群馬県安中市)で満開の梅を撮影

 秋間梅林は群馬県安中市の秋間川上流の丘陵地帯に広がる梅林で、「ぐんま三大梅林」の一つと言われているようです。その広さは50ヘクタールにも及ぶらしく、変化に富んだ景観を見ることができます。都心から車だと、高速道路を使っておよそ2時間ほどの道のりです。
 秋間梅林は実を収穫することを目的に栽培されている梅林で、その多くが白梅です。例年、3月上旬から中旬にかけて見頃を迎え、折り重なるように咲く姿は圧巻です。
 今年、3年ぶりに秋間梅林を訪れてみました。

観梅公園一帯の梅林

 一般に秋間梅林というと、この観梅公園一帯を指すようです。小高い山の頂付近に観梅公園があり、そこを中心に南側斜面、東側斜面、北側斜面に梅林が広がっています。付近には駐車場も完備されており、車で行くこともできますが、私はいつも東側の県道122号線(八本松松井田線)沿いにある駐車場に車を止めて、歩いて山を登っていきます。山といってもなだらかな遊歩道が整備されているので、きつい思いをしなくても上っていくことができます。

 下の写真は上り口にある駐車場から撮影した一枚です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 200mm 1:4 F22 1/8 PROVIA100F

 この辺りは梅の畑というよりは梅の公園といった感じで整備されており、紅梅もたくさん見ることができます。山の北側斜面になるので頂上付近に比べると花の時期は少し遅いようです。
 写真の左方向から朝日が差し込んでおり、色温度が低いため、全体的にちょっと赤みを帯びています。
 まだ早朝なので人影はほとんどありませんが、日中になるとこの遊歩道もたくさんの観光客が行き交います。左上の方には東屋もあるので、梅見には最高の場所です。

 雑木林全体はまだ冬枯れの状態ですが、それと満開の梅を対比することで早春の感じを出そうと狙ってみました。
 写真ではわかりにくいかも知れませんが、満開の一歩手前といったところで、これくらいの時の方が花の色は綺麗に出ると思います。

 さて、次は登っていく途中で見つけた白梅の老木です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 55mm 1:4 F22 1/30 PROVIA100F

 奥の方に広がっている収穫用に栽培されている木に比べるとかなり背丈も高く、枝も伸び放題という感じですが、何とも言えない風格というか、力強さを感じます。たくさんの花をつけており、まだまだ樹勢も衰えていないようです。
 畑の中の所どころにこのような老木があり、素晴らしい景観をつくりだしてくれています。

 梅の木の高さを出すように、右側の木の真下に近いところからの撮影です。
 花の白い色が飛ばないようにギリギリまで露出をかけていますが、下の三分の一はもう少しアンダーの方がこの写真の雰囲気は上がると思います。

 もう一枚、観梅公園のある頂上付近から東側斜面を望んだのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 45mm 1:4 F22 1/15 PROVIA100F

 短焦点レンズで梅畑を広く入れると空が広く入り過ぎてしまうので、梅の枝を覆いかぶさるように入れています。梅の枝は曲がりくねっているものが多いので、形のよさそうな枝を選んでみました。
 この場所は秋間梅林という丘陵地帯を最も感じられる場所だと個人的に思っており、起伏にとんだ地形が見渡せるのでお気に入りの場所です。
 もう少しカメラアングルを下げたいところですが、そうすると家が何件も入り込んでしまうのでこれくらいが限界です。下の方にこっそりと屋根が写っているのがわかるかと思います。

 観梅公園一帯は白梅だけでなく紅梅の木もたくさんあり、華やかな風景を見ることができます。

 なお、観梅公園までの道路は狭いので、車で行かれる場合は運転に注意が必要です。

飽馬神社周辺の梅林

 秋間梅林の中心は観梅公園と呼ばれる小高い山の一帯ですが、そこから北東方向に少し行ったところに飽馬神社という小さなお社があります。この辺りは農家の方が栽培している梅畑が広がっており、山の南斜面に開けているのでとても眺望の良い場所です。天気が良ければ西の方角に妙義山を見ることができます。訪れる人もほとんどおらず、撮影にはもってこいの場所です。

 下の写真は満開の梅畑を下から見上げるアングルで撮った一枚です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-TAKUMAR67 75mm F22 1/30 PROVIA100F

 収穫用に栽培されている梅の木は枝が綺麗にそろえられており、まっすぐ上に延びている枝が印象的です。枝の密度も花の密度も高いので、非常にボリューム感があります。
 梅畑の脇に庚申塔があり、とてもいいアクセントになっています。
 また、梅の木の下の方は見通しがきくので、木の間から背景を入れて奥行きを出してみました。

 この辺りはいろいろな種類の梅が栽培されているらしく、このように白い花の他にピンクの花をつける木も見られます。ピンク色の花は温かみが感じられますが、白いほうが花の数が多いのか、ボリュームがあります。

 同じく、飽馬神社の南側にある梅畑を撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 200mm 1:4 F8 1/125 PROVIA100F

 ここから見る梅畑がいちばん密集しているように感じます。高いところから見下ろすポジションなので、一層そう感じるのかもしれません。

 全体的に柔らかな感じを出すように、半逆光気味になる位置から絞りを浅くしての撮影です。手前の木にはピントを合わせていますが、奥の方の木々はわずかにピントを外しています。霞がかかっているというか、フレアがかかっているというか、そんな感じを狙ってみました。
 白梅に交じって所どころにピンクの梅も見られますが、その色の変化があることで、画が単調になるのを防いでくれています。

 この写真の右方向に妙義山が見えます。妙義山をバックにした梅林も魅力的ですが、脚立などを使って高い位置から撮らないと構図が決めにくいのが難点です。
 また、この一帯は観光客用に整備されているわけではないので駐車場などはありません。車は道路脇の広いところに、邪魔にならないように止めておくしかありません。

群馬フラワーハイランド

 秋間梅林から北西に車で5分ほど行ったところに群馬フラワーハイランドがあります。
 ここは個人の方が長年にわたって整備されてきた花の楽園で、特に1月から3月にかけて咲く寒紅梅が有名ですが、四季折々の花を見ることができる場所です。秋間梅林のすぐ近くですので、ぜひ訪れてみたい場所です。

 まずは白梅を撮った一枚です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 PROVIA100F

 さほど大きくない木なので花の数も多くありませんが、ぽつぽつと咲いている姿が印象的でした。暗い背景に白い花だけでは寂しすぎる感じがしたので寒紅梅を入れてみましたが、ちょっと紅が強すぎたようです。
 白梅を浮かびあがらせるために長焦点レンズを使い、絞り開放で撮っています。
 また、明るくなりすぎないように露出はアンダー気味にしました。

 画全体が締まるようにと思い太めの黒い幹を入れてみましたが、右側の幹はない方が良かったように思います。
 青空に抜いた白梅は爽やかな感じがありますが、このようなシックな雰囲気もいいものです。

 フラワーハイランドは梅だけでなく様々な花が見られますが、ミツマタもこの時期に見ることのできる花の一つです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 45mm 1:4 F16 1/15 PROVIA100F

 高級和紙の原料になるミツマタですが、枝をものすごく広げるので、黄色の花が浮いているように見えます。まるで海を漂うクラゲの大群のようです。
 花自体は地味で、色も決して鮮やかとはいえませんが、無数に咲いているとその辺りだけぼーっと明るくなったような感じがします。

 花だけだと単調になってしまうので、太い白樺(だと思います)の幹を入れてみました。
 また、アンダー気味の方がこの花の雰囲気が出ると思い、露出は切り詰めています。

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 秋間梅林は観梅公園を中心に撮影スポットがたくさんあるので、被写体には困りません。道路沿いの畑にも随所で梅を見ることができるので、いわゆる梅園とは異なる、梅の木を入れた風景写真も撮り易いと思います。
 歩いて回るには広すぎて車がないと不便ですが、北陸新幹線の安中榛名駅の近くですので、新幹線で安中榛名まで行って、レンタカーを使うという方法もあると思います。

(2022年3月30日)

#梅 #ペンタックス67 #PENTAX67 #秋間梅林

紅葉の奥入瀬渓流を大判カメラで撮る

 奥入瀬渓流は十和田湖の子ノ口から焼山まで、およそ14kmに渡って美しい流れが続いています。両岸には豊かな樹木やたくさんの滝があり、変化に富んだ景観は見飽きることがありません。流れとほぼ同じ高さに遊歩道が整備されているので、高いところから見下ろす渓谷とは違う景色を見ることができます。
 例年の紅葉は10月中旬から11月上旬と言われていますが、今年(2021年)は10月24日の週がいちばんの見ごろだった感じです。紅葉の奥入瀬渓流を大判カメラで撮ってきました。

三乱(さみだれ)の流れ

 個人的には奥入瀬渓流の中でいちばん好きな場所です。
 流れは比較的穏やかで、その中に点在している大小の岩と、その上の着生植物が作り出す景観は得も言われぬ美しさがあります。すぐ脇を車道が走っているので、車の中からもその美しい景観を見ることができます。

 下の写真は早朝に撮った一枚です。

▲三乱の流れ Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON W125mm 1:5.6 F45 8s PROVIA100F

 流れのすぐ手前まで降りて行って撮影しています。渓流に太陽の光が差し込む前で、しかも前の夜に雨が降ったようで、しっとりとした色合いになってくれました。ほとんど無風状態でしたので、少々長めの露光をしても被写体ブレは気にならないだろうと思い、8秒の露光をしています。
 手前にある岩から奥のl紅葉までピントを合わせたかったので、フロントティルトのアオリをかけています。
 また、流れの奥行き感と広さを出すために、カメラの位置を水面から60cmほどの高さでの撮影です。

 木々はとても綺麗に色づいていますが、紅葉をあまりたくさん入れると画の締まりがなくなってしまうので、切り詰めています。その分、流れを広く入れて、点在する岩をアクセントにしました。
 早朝のしっとり感が損なわれないように露出は気持ちアンダー気味にしています。

 もう一枚、少し上流側で見つけた、岩の上に根を下ろしている黄葉です。

▲三乱の流れ Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 1s PROVIA100F

 背景を広く入れ過ぎると岩の上の黄葉が目立たなくなってしまうので、流れとの対比で黄葉が引き立つようにしました。もう少し下流側から流れを多く入れようとも思いましたが、そうすると背景も広く入ってしまいゴチャゴチャしてしまうので、流れに対して真横から撮っています。
 また、岩の上から伸びている2本の幹がとてもいいアクセントになっていたので、これがはっきり見えるアングルを選んでいます。
 こちらもほぼ無風状態だったのですが、ところどころ、わずかに葉っぱがブレています。

 まだ完全に黄葉しきっておらず緑が残っていますが、そのグラデーションがとても綺麗です。露出アンダーになるとこのグラデーションが濁ってしまうので、葉っぱの部分を何ヵ所か測光して露出を決めています。

石ヶ戸(いしけど)の瀬

 石ヶ戸休憩所がある辺りを石ヶ戸の瀬と呼ぶようです。石ヶ戸休憩所は広い駐車スペースもあり、観光バスも多く来るのでたくさんの観光客でにぎわっています。
 すぐ近くに、カツラの大木で支えられた巨大な一枚岩があり、それを石ヶ戸と呼ぶようですが、その岩の下はまるで小屋のような空間になっています。
 石ヶ戸の瀬の辺りは流れが大きなカーブを描いており、そのためか変化に富んだ景観を見ることができます。

 下の写真は石ヶ戸の瀬の中でも流れが激しい場所です。橋のようになった倒木が何とも言えぬ景色を作り出しています。

▲石ヶ戸の瀬 Linhof MasterTechnika 2000 APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 4s PROVIA100F

 奥入瀬はどちらかというと紅葉よりも黄葉のイメージが強いのですが、この辺りは紅葉が点在しており、そのコントラストが綺麗です。
 奥行き感を出すために、手前の岩を多めに入れています。手前から奥までピントが合うようにフロントティルトのアオリをかけています。ほぼ無風状態だったので、岩の上の草もほとんどブレずにすみました。
 一方、上部中央にある黄緑色の葉っぱがアウトフォーカスになってしまい、ちょっと気になります。撮影位置をもう少し前にできればよかったのですが足場が悪く、このあたりが自然相手の難しいところです。

 上の写真より少し下流の、流れが極めて穏やかになっている場所で撮影したのが下の写真です。

▲石ヶ戸の瀬 Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON CM105mm 1:5.6 F22 1/2 PROVIA100F

 傾斜がほとんどなく、波も全くというほど立っていません。ここも、苔むした倒木がとても良いアクセントになっていると思います。
 前の写真のときと比べて陽が高くなっているので林全体が明るくなっていますが、若干暗めの方がこの場の雰囲気には合うと思い、露出は少し切り詰めています。

 波を立てて激しく流れる景色も素晴らしいですが、このように音もなく静かに流れる、まるで時が止まったような景色を見られるのも奥入瀬渓流の魅力だと思います。

 もう一枚、近くでとても綺麗に色づいた木を見つけたので撮ってみました。

▲石ヶ戸の瀬 Linhof MasterTechnika 2000  FUJINON CM105mm 1:5.6 F22 1/2 PROVIA100F

 上の方の葉っぱが赤くなってきており、そのグラデーションがとても綺麗です。
 ここの流れもとても穏やかで、波音もほとんど聞こえません。長時間露光しても波の軌跡はほとんど写らないので、川面を流れる落ち葉が線を描く程度のシャッター速度で撮影しています。欲を言うと、もう少し流れる落ち葉がたくさん欲しかったところです。

 カメラをもう少し上に振ると、切り立った崖の上の方に赤く色づいた木々が点々とあったのですが、このオレンジ色の葉っぱを引き立たせるため、敢えて上の方の紅葉は入れませんでした。もう少し引いた場所から短めのレンズで広い範囲を撮ると、これとは違った美しい渓谷美の写真になるのではないかと思います。

阿修羅(あしゅら)の流れ

 奥入瀬渓流の中でいちばん人気の場所ではないかと思います。ガイドブックや雑誌などでも紹介される回数が最も多いのが、ここ、阿修羅の流れだそうです。
 近くにわずかながら駐車スペースもあり、ここを目当てに来る方も多いようです。写真撮影する人、絵を描く人など、人が耐えることがありません。
 それでも早朝は人の数がとても少なく、ゆっくりと撮影することができます。

 下の写真は流れのすぐ近くの遊歩道から、できるだけ低いポジションで撮ったものです。

▲阿修羅の流れ Linhof MasterTechnika 2000 SUPER-ANGULON 90mm 1:8 F45 8s PROVIA100F

 岩の間を縫うように流れる姿はとても豪快です。焦点距離90mmの短焦点レンズを使っていますが、流れを強調するために林の上部はあまり入れないようにしています。
 早朝で岩に光が回り込む前の時間帯なので、岩の重みのようなものが感じられます。8秒の露光をしていますが、風がなく葉っぱもピタッと止まってくれたのは運が良かったです。
 蛇行した激しい流れと川中の岩、着生植物のバランスは本当に美しく、奥入瀬渓流の中でいちばん人気というのも頷けます。

 右上の林に光が差し込んでいるのがわかると思いますが、林を切り詰めた分、流れが奥の方に続いている感じを出そうと思い、この辺りが少し明るくなるのを待っての撮影です。

 上の写真の少し上流から縦位置で撮ったのが下の写真です。

▲阿修羅の流れ Linhof MasterTechnika 2000 FUJINON W125mm 1:5.6 F22 4s ND8 PROVIA100F

 一枚目の写真の場所と比べると流れは穏やかで激しさはありません。しかし、左奥から大きくカーブしながら流れ落ち、テーブル状になったところに波が描く模様は、激しさと穏やかさが同居している感じが表わされているように思います。

 林全体に光が回り込んで黄葉が鮮やかになってきたので、黄葉を多めに入れてみました。紅葉や黄葉は光が入り込むと鮮やかに発色しますが、光が強すぎると白っぽくなってしまいます。太陽に雲がかかって光が柔らかくなったところを狙って撮影しました。

 この写真のすぐ右側と正面の奥には道路が走っています。何気なくシャッターを切ったら車が写り込んでいた、なんてこともあるので撮影の際は注意が必要です。

白銀(しろがね)の流れ

 奥入瀬渓流の数ある滝の中でも人気の高い雲井の滝、その少し上流にあるのが白銀の流れです。轟々と音を立ててダイナミックに流れるところは高い位置から見下ろすしかありませんが、その下流はとても穏やかな流れになっています。ここは、阿修羅の流れと銚子大滝の中間あたりで、それが理由かどうかわかりませんが、訪れる人も比較的少ない感じがします。

 下の写真は白銀の流れのいちばん下流にあたるところです。

▲白銀の流れ Linhof MasterTechnika 2000  SUPER-ANGULON 90mm 1:8 F22 4s ND8 PROVIA100F

 左端にちょっと見えている階段を上ると白銀の流れを見下ろせる場所に出ます。
 この写真の場所は川幅が急に広くなるので、水深も浅く、穏やかな流れです。この時期は落葉が進んで葉っぱの数も少ないので、開けた感じのする場所です。

 流れの中に横一列に整然と並んだ岩が何とも言えません。穏やかな流れでありながら適度な波があるので、長時間露光するとまるで雲が流れているような描写になります。
 対岸にある巨木がとても印象的で、このおかげで画全体が締まっている感じです。

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 美しさもその規模も他に類を見ない奥入瀬渓流です。今回は石ヶ戸から子ノ口の間を撮影しましたが、石ヶ戸から焼山までの間の紅葉も素晴らしいです。範囲が広いので短い期間ですべてを撮るには無理があります。限られた時間の中である程度狙いを絞り込んでおかないと、被写体に振り回されてしまいそうです。
 新緑の美しさも格別で、来年、新緑の頃に訪れることができたらいいなと思ってます。

(2021年11月16日)

#奥入瀬渓流 #紅葉 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

緑深い夏の桐生川源流林を大判カメラで撮る

 桐生川は群馬県桐生市の北東にある根本山を源に、桐生市街地を通って渡良瀬川に合流する、延長約57kmの川で、美しい景観の中をとてもきれいな水が流れています。釣り人にも人気のある渓流のようですが、今回は緑に包まれた夏の桐生川の景観を撮影してみました。

木々の緑と苔むした岩がつくる見事な景観

 桐生市街地を通る桐生田沼線(66号線)を北上していくと、やがて、桐生川と並行するようになります。さらに北上すると桐生川ダムが見えてきます。発電も行なっている貯水ダムとのことで、ダム湖にかかる梅田大橋から見るとかなりの貯水量があるように見えます。

 このダムの上流側一帯が「桐生川源流林」と呼ばれており、森林浴の森 日本100選に選ばれているようです。ほとんど護岸工事がされていない手つかずの状態で残っている美しい渓流です。
 川幅は10メートルくらいでしょうか、決して大きな川ではありませんが、両岸の木々や岩とともに織りなされる景観がどこまでも続いており、一日中いても飽きることがありません。

 下の写真は、比較的見通しのきくところから撮った桐生川の景観です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W250mm 1:5.6 F32 1/2 PROVIA100F

 昨日までの雨のせいか、水量も多めで水も若干濁っていますが、それでも透明度の高い水が流れています。空全体はどんよりと曇っていますが、コントラストが強くなりすぎず柔らかな描写になってくれました。
 釣り人のような装備をして行けば、川を遡上して撮影ができそうです。機材を水没させないように注意が必要ですが、次回は挑戦してみたいと思います。

たくさんの民話が残る梅田地区

 桐生川源流林一帯は梅田町に属するようですが、ここにはたくさんの民話が言い伝えられているようです。川沿いの道路を走っていると、所々にそんな言い伝えが書かれた看板を目にします。
 そんな伝説の一つ、村の家畜を襲ったり田畑を荒らす大蛇が済んでいたという「蛇瑠淵(じゃるぶち)」は、岩の間を縫うように流れる景観を見ることができ、そんな伝説に真実味を感じさせてくれます。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 8s PROVIA100F

 上の写真は蛇瑠淵付近を撮ったものですが、どこか妖気漂う雰囲気を出そうと思い、左上の林がアンダー目になるよう、露出を切り詰めて撮影してみました。
 一昔前は水量もずっと多く、青く渦巻くように流れていたらしいですが、いまはかなり水量が減ってしまったようです。それでも十分に魅力的な流れだと思います。

 蛇瑠淵の少し下流に「千代の滝・千代が渕」があります。ここも、山賊から村を救った若い娘が足を滑らせて滝に落ちたという悲しい伝説があるようです。
 この滝は落差が5mほどで、滝を真上から見下ろすことができます。滝のところだけ極端に川幅が狭くなっているため、かなり激しい音を立てて流れ落ちています。
 岩の間をうねるように落ちているので、滝を正面から見ることはできません。

 下の写真は千代の滝に落ち込む手前(上流側)の流れを撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON C300mm 1:8.5 F32 24s PROVIA100F C4フィルター

 薄暗い滝壺に落ちていく雰囲気を出すため、C4色温度変換フィルターをつけての撮影です。青と緑の中間の色、「碧」という感じの色を出そうと思ってフィルターを使いました。非現実的な色ですが、この場の雰囲気には合っているのではないかと思います。

 もう一枚、下の写真は千代の滝の滝つぼに降りて撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6 F11 2m50s PROVIA100F C4フィルター

 こちらも同様にC4フィルターを使っています。
 周囲を木々に囲まれていてかなり暗い状態だったので、空が少し明るくなったところを狙っての撮影です。滝から射し込む光で正面の岩が光っているのがわかると思います。
 この滝壺の水深は30~40cmくらいなので、水に入っていけば滝の落ち口を見ることができます。夏場は子供たちの格好の水遊びの場になるようです。

ひたすら優美な流れも魅力的

 上で紹介した蛇瑠淵のような流れとは対照的に、滑(ナメ)のような優美な流れも随所で見ることができます。傾斜が緩やかなところは流れも穏やかで、両岸を木々に囲まれた薄暗い中を流れる様もいいものです。

 正面奥の木々の上部が開けており、鮮やかな緑と褐色の川面のコントラストがとても綺麗だったので撮ったのが下の写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F45 2s PROVIA100F ハーフNDフィルター

 正面の木々がかなり明るかったのでハーフNDフィルターを使っています。
 晴天時に陽が射し込んでいると全く違った感じになると思いますが、このような幽玄な感じは曇天ならではだと思います。

 さらに少し下流で撮影したのが下の写真です。この辺りも流れは穏やかで、滑のような状態が続いています。

▲Linhof MasterTechnika 45 SUPER-ANGULON 90mm 1:8 F32 16s PROVIA100F

 手前の流れを大きく取り入れ、かつ、S字を描くように蛇行している流れがわかるポジションから撮影しました。
 また、この写真では色温度変換フィルターは使用していませんが、C4フィルターを装着して碧い色を出しても似合うのではないかと思います。

あちこちにユキノシタの群落が

 ちょうどユキノシタが満開の時期で、林床のあちこちで見ることができます。薄暗い林の中でひっそりと咲く姿は妖艶ささえ感じます。花の色が白いので、そこだけ明かりが灯っているようです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F11 1/2 PROVIA100F

 この花は明るい日差しの下よりも、このような薄暗いところの方が似合うと思います。谷川べりなどの湿った場所や半日陰地の岩場などに自生するようなので、それももっともだと思いますが。
 このような小さな花の群落を撮る場合、被写界深度を浅くしないと花が背景に埋もれてしまいますが、浅くしすぎるとピントの合う花がほんの一部になってしまうため、レンズの焦点距離と絞りの選択には悩みます。

 桐生川源流林に咲く花の種類は決して多くはないので、花を見かけるとなんだか癒される感じがします。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 被写体が豊富で様々な撮り方ができる桐生川源流林ですが、あまり欲張りすぎると被写体に振り回されてしまいそうです。それくらい魅力があるということですが、ある程度、的を絞って撮影に臨んだほうが良いかもしれません。
 楓の木がたくさんありましたので、秋の紅葉の時期は美しい光景が見られると思います。

 桐生川源流林は桐生川に沿って車道が通っていて、桐生川ダムから清風園という割烹旅館の辺りまでは道幅も比較的広いですが、その先に行くとすれ違いもできないくらいの狭い道路が続きます。たくさんの車が行き交うわけではありませんが、運転は注意が必要です。
 また、車を止める場所も非常に少ないので、他の車や地元の方などの迷惑にならないように心掛けることも忘れないようにしたいものです。

(2021年7月19日)

#桐生川源流林 #渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

檜原村 初夏の風景を大判カメラで撮る

 4月の後半、檜原村(東京都)に行ってきました。檜原村は都心から車で2時間ほどですが、東京都とはいえ、さすがに標高も高いので、都心よりも季節の進み方はずいぶん遅いようです。まさに新緑真っ盛りといった感じで、大判カメラで初夏の風景を撮ってみました。
 今回持ち出したカメラは、リンホフマスターテヒニカ2000です。

新緑と山桜のコラボレーション

 あきる野市を抜け、檜原街道を西(檜原都民の森方面)に行くと徐々に山深くなってきます。それでも道の両側には民家が見られますが、南郷の駐在所を過ぎたあたりから民家はめっきり減り、東京とは思えない豊かな自然が続きます。山々はまだ淡い色をしており、ところどころに桜(山桜と思われます)も咲いています。

 下の写真は走っている途中で見つけた山桜です。それほど大きな木ではありませんが、隣のオオモミジと思われる新緑とのコラボレーションがきれいだったので撮ってみました。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 FUJINON CM 105mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 この日は曇り空でしたが、強い日差しが当たっているよりは全体的に柔らかな描写になるので、このような被写体を撮るにはむいています。
 道路脇から撮っており、ワーキングディスタンスが制限されてしまうので、若干、広角寄り(105mm)のレンズでの撮影です。大きな木ではないので、あえて左右を切り詰めてみました。
 オオモミジの新緑の色が濁らないように、露出は少し明るめにしています。
 ほとんど無風状態でしたので、1/4秒の低速シャッターでもブレることなく写ってくれました。

矢沢を彩る新録

 檜原街道は南秋川に沿って走っていますが、この南秋川にはいくつもの支流が流れ込んでいます。矢沢もそんな支流の一つで、神奈川県との県境にある生藤山の山麓がその源流です。小さな沢ですが景観が美しく、被写体に富んでいます。矢沢に沿って林道があるのですが、残念ながら途中で通行止めになっていました。

 南秋川に合流する手前の橋の上から撮ったのが下の写真です。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 FUJINON W 210mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 水量は決して多くありませんが、とてもきれいな水が流れています。河原の白い石と木々の緑のコントラストが美しい景観をつくりだしています。
 渓谷の深さを表現しようと思い、川を左下に寄せ、急峻な右岸を多めに入れてみました。沢に張り出す左右の枝が重なりすぎないアングルから撮っています。

 また、全体をパンフォーカスにしたかったのでカメラのフロント部を少しだけ下にあおっていますが、左上の奥の木々は被写界深度を外れてしまっている感じです。

 この矢沢はこのような景観が上流まで続いているので、林道の通行止めが解除されたら源流まで行ってみたいと思っています。

山萌える

 この時期の檜原村は木々が芽吹いて間もない頃で、山全体が淡い色彩に覆われています。少し山の上の方に目をやると、緑というよりは「白緑(びゃくろく)」とか「薄萌葱(うすもえぎ)」といった名前がぴったりの色をしています。
 しかし、このような色は長くは続かず、日増しに濃くなっていきます。

 白緑というにふさわしい色合いをした景色に出会いました。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 Schneider APO-SYMMAR 180mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 木によって色合いが微妙に異なり、何とも言えない美しさが作り出されています。所どころに桜が咲いており、淡い色を一層引き立てているように感じます。

 このような景観が広がっているので、どこを切り取るか非常に迷いますが、木々が最もこんもりと見えるアングルと、全体が単調なパターンにならないように所どころにアクセントとなるものが配置されるような構図を選びました。
 露出を切り詰めてしまうと、この淡い感じが消えてしまうし、露出をかけすぎると飛んでしまうし、非常に悩むところです。

 この色合い、ポジ原版をライトボックスで見ると息をのむ美しさですが、画面ではお伝え出来ないのが残念です。

ひっそりと佇む龍神の滝

 檜原村にはたくさんの滝がありますが、個人的に気に入っているのが「龍神の滝」です。檜原街道からすぐのところにあり、斜面に設けられた遊歩道を下っていくと容易に訪れることができます。
 落差が18mほどの滝で、かつてはかなりの水量があったようですが、いまはずいぶんと減ってしまい、一筋の糸のような滝です。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 8s PROVIA100F

 周囲は大きな木々でおおわれているため、昼間でも薄暗い状態です。時おり木漏れ日が差し込み、岩や水面に模様を描き出していたので、滝つぼのところだけを撮ってみました。
 昼なお薄暗いところにたたずむ雰囲気が壊れないよう、ごつごつした岩が黒くつぶれないぎりぎりのところまで露出を切り詰め、水が白く飛びすぎないようにしました。

 滝の全景を撮るには対岸からか、もしくは滝つぼから広角で見上げる構図になるかと思いますが、綺麗な滝なのでいろいろな撮り方ができると思います。
 水量は多くありませんが近づくと飛沫が飛んできますので、風の強い日などは要注意かも知れません。

 なお、この滝では滝行が行なわれ、それに訪れる人も多いらしいのですが、一度もお目にかかったことはありません。

 村域の9割以上が山林という檜原村ですが、それゆえにたくさんの自然に恵まれており、森林、渓谷、滝など、四季を通じていろいろな景色に出会うことができます。

(2021.6.4)

#檜原村 #渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika

御岳渓谷 2020年最後の紅葉をPENTAX67Ⅱで撮影

 御岳渓谷は多摩川の上流、東京都青梅市にある渓谷です。多摩川は、山梨県にある笠取山の山頂直下を源として、東京都、神奈川県を経由して東京湾に注ぎこむ一級河川ですが、上流の方は護岸工事をされていないところも多く、きれいな水が流れています。御岳渓谷のあたりはカヌーの聖地とも呼ばれているらしく、カヌーで川下りをしている人をたくさん見かけます。
 11月中旬あたりから綺麗な紅葉が見られるので、2020年最後の紅葉撮りに行ってきました。

 電車だとJR青梅線の御嶽駅からすぐ、車だと近くに有料駐車場があり、そこから歩いて10分ほどで御岳渓谷に着きます。夏の暑い時期やカヌーの大会があるときは賑わいますが、普段はそれほど人出が多いわけでもなく、ゆっくりと撮影をすることができます。

玉堂美術館前の大イチョウが輝いて

 紅葉の時期、何と言ってもひときわ目を引くのが玉堂美術館の前にある大イチョウの黄葉です。下の写真は対岸(左岸側)から撮ったものです。

玉堂美術館前の大イチョウ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 この辺りは南側がすぐ山になっているため、朝のうちは日陰になっていますが、日が回り込んでくると黄色く色づいたイチョウがまさに黄金色に輝きます。樹高が30mほどもあるらしく、自ら光を放っているような姿は圧巻です。
 イチョウの葉っぱは枝についている間は綺麗な黄色を保っており、この色のまま一気に落葉していきます。他の黄葉のように葉っぱが茶色くならないので、綺麗な状態のまま散っていく潔さのようなものがあって好きです。少し強い風が吹いたときなどに一気に散る姿も見事です。

名水百選の蒼い流れ

 御岳渓谷一帯の流れは御岳渓流とも呼ばれており、名水百選に選ばれているようです。水深はあまり深くなさそうですが、大きな岩がごろごろしており、綺麗な景観をつくってくれています(下の写真)。

御岳渓谷 PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 55mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 1/2段ほど露出を抑えめにして、渓谷の蒼然たる感じを狙ってみました。まだ渓谷に陽が差し込む前なので、全体に青っぽく色かぶりをしています。
 それにしてもこんなところをカヌーで下っていくのですから凄いです。

燃えるようなイロハモミジの紅葉

 左岸側にはカエデ(イロハモミジ)がたくさんあり、日が差し込むと燃えるような色を見せてくれます。

イロハモミジ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX-M67 300mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 対岸は日が当たっていないので黒く落ち込み、そこに真っ赤に色づいたカエデが浮かび上がります。薄曇りくらいの光の方が柔らかな感じになって個人的にはその方が好きですが、この日は快晴のため光が強すぎたのと、ほぼ正面からの光で撮ってしまったために全体的に硬く、ぎらついた感じになってしまいました。

落ち着いた色合いのトウカエデの黄葉

 下の写真は御岳小橋の脇で見つけた黄葉です。たぶん、トウカエデではないかと思います。

トウカエデ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 PROVIA100F

 だいぶ落葉してしまってスカスカしてますが、まだ綺麗な色を保っていました。太陽の位置もだいぶ高くなっているので、前のカエデの写真に比べると落ち着いた感じになりました。葉っぱが落ちた後の枝も白く輝いて、晩秋らしさが出ているのではないかと勝手に思ってます。

やはりイロハモミジの紅葉は第一級品

 午後2時過ぎ、そろそろ引き上げようと青梅街道に出る階段を昇って行ったところ、偶然に綺麗な紅葉を見つけました。赤と黄色と緑が混在した何とも美しいイロハモミジです。

イロハモミジ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F11 1/8 PROVIA100F

 逆光で撮っていますが、大木で上の方まで葉があるため、撮影している場所は日陰になっています。紅葉が濁らないように露出はかなりオーバー目にしています。緑から黄色、そして赤へのグラデーションも影響していると思いますが、柔らかな感じが気に入ってます。まだほとんど落葉しておらず、葉っぱが密集しているためにこのような撮り方ができますが、落葉してスカスカ状態だとこのような感じは出せないと思います。

 東京都心の紅葉はあまり鮮やかに色づかないものが多いですが、標高230mmほどの御岳渓谷のあたりは気温の寒暖差が大きいためか、色がとても鮮やかです。同じ東京とは思えない豊かな自然が残されており、近くにある御岳山にはレンゲショウマの群生地があるようです。一度、訪れてみたいものです。

(2021.1.13)

#御岳渓谷 #渓谷 #ペンタックス67 #PENTAX67 #紅葉

八方ヶ原(栃木県)で紅葉と渓谷の撮影(後編)

 八方ヶ原での撮影の2日目です。風も少なく、穏やかな秋晴れが続いています。2日目はもう少し標高の高いところでの撮影です。

おしらじの滝

 まずは「おしらじの滝」からスタートです。矢板から塩原に抜ける八方道路(県道56号)をひたすら進むと、登り切ったあたりに駐車場があります。駐車場の脇から滝に下る登山道のような道がついていますので、ここを下っていきます。あちこちぬかるんでいて歩きやすいとは言えませんが、急なところには柵も設置されています。最近設置されたようで、遊歩道の整備を進めているのかもしれません。

 10分ほど下ると滝の正面に到着します。以前は滝つぼまで降りて行かれたようですが、現在は立ち入り禁止になっており、4~5人も立てばいっぱいになりそうな狭い観瀑台から見るしかありません。必然的に撮影のアングルもほぼ固定されてしまいます。
 水が枯れてしまって滝が消滅してしまうことも多いらしいのですが、この日はまずまずの水量が流れ落ちていました。

おしらじの滝  Linhof Mastertechnika 45 Schneider APO-Symmar 180mm 1:5.6
                     F22 6s PROVIA100F

 それにしても美しい滝です。豪快な音を立てて落ちる迫力のある滝も見事ですが、それとは対極にあるような優美な滝です。私が今までに見た中でも、3本の指に入るくらいの優美な滝ではないかと思います。吸い込まれるような深い色をした静かな滝つぼに滝が映り込んでおり、優美さを一層引き立てている感じです。陽が差し込むと滝つぼはターコイズブルーのような美しい色に輝くようですが、残念ながら早朝なので滝つぼには光が差し込んでおらず、奇跡の色を見ることはできませんでした。
 もう少し露光時間を長くして、水面に浮いている葉っぱの動く軌跡を写し込んだ方が良かったかもしれません。

 1時間ほど撮影をしていましたが、その間、訪れる人は一人もおらず、気兼ねなく撮影をすることができました。とても狭い場所なので、他に滝を見に来たり撮影しに来た方がいらっしゃると、三脚立ててゆっくり撮影というわけにはいきません。日中になると訪れる人も増えると思います。
 撮影を終えて駐車場に向かいますが、戻りは重い機材を担いで急な坂を上っていかなければならないので少々しんどいです。

鹿の股沢風景林で紅葉の撮影

 さて、次はスッカン沢に向かいます。この先、道路は下りになり、間もなく那須塩原市に入ります。紅葉真っ盛りといった感じで、ハッと目を引くような黄紅葉があちこちにあります。このあたり一帯は、「鹿の股沢風景林」と呼ばれており、美しい落葉樹の林が続いています。ちょっと寄り道して、この風景林の中で撮影していくことにしました。林の中に分け入っていくと、車道からでは見ることのできない発見があります。
 下の写真は林の中で偶然見つけた紅葉です。ハウチワカエデではないかと思われます。周囲はすでに落葉している木が多く、そのため、紅葉がひときわ輝いている感じです。

ハウチワカエデ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 55mm 1:4 F22 1/8 Velvia50

 写真でもわかると思いますが、この林の中に入るとこのような感じでたくさんの木があって見通しがききません。撮影をしているうちに方角がわからなくなり、どちらを向いても同じような景色で迷ってしまうこともありますので、出口までの目印を決めておいたほうが無難です。
 この風景林、初めて入り込んでみましたが、とても魅力的な場所です。新緑の季節もさぞかし美しいのではないかと思います。

スッカン沢 遊歩道修復工事中

 スッカン沢も紅葉の最盛期でしたが、昨年(令和元年)の台風19号で被害を受けた遊歩道の改修工事中のため、沢に降りることができません(現在は解除されているようです)。スッカン沢には「雄飛の滝」や「仁三郎の滝」など、見ごたえのある滝がたくさんあるのですが残念です。
 せっかくなので沢を見下ろす雄飛橋から1枚撮影してみました。まだ沢に陽が回り込んできていないので、若干色かぶりしていますが、右端の紅一点のモミジがとても映えていると思います。

スッカン沢  Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 150mm 1:5.6
                    F32 4s PROVIA100F

 スッカン沢を下りながら撮影する予定でしたが工事中のためそういうわけにもいかず、予定を変更してもう少し那須塩原方面に向かうことにしました。下調べをしっかりしておかないとだめですね。

カエデの紅葉が真っ盛り

 県道56号線は塩原方面に向けて上りになります。スッカン沢から北寄りの山は紅い色(紅葉)が多いように感じます。紅葉はどれも美しいですが、やはり何といってもカエデの紅葉は第一級だと思います。カエデの紅葉を見つけるとシャッターを切りたくなってしまいます。
 下の写真はヤマモミジかオオモミジのどちらかではないかと思うのですが、炎のような色が印象的で撮った一枚です。

ヤマモミジ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F8 1/60 Velvia50

 こういった光景は晴れた日でなければ撮れませんが、個人的には燃え立つような紅葉よりも、どちらかというとしっとりとした紅葉のほうが好きです。しかし、紅葉と青空の組み合わせは何とも言えない爽快感がありますし、何といっても秋の清々しい空気を感じます。

 今回掲載した写真のうち、2枚目と4枚目はVelvia50で撮影したものです。やはり、このフィルムの発色には派手さがあります。この派手さも、鮮やかな紅葉を写し取るには向いているのかもしれません。

 北関東以北の紅葉の時期はほぼ終わってしまいましたが、東京近郊の紅葉はこれからです。寒い地方の紅葉と比べると東京のそれは鮮やかさでとてもかないませんが、美しい紅葉に出会えることを期待したいです。
 

(2020.11.21)

#八方ヶ原 #渓谷 #紅葉 #リバーサルフィルム