大判カメラでの撮影をより快適にするための、ちょっとした工夫のあれこれ

 大判カメラを使って撮影をしていると、いろいろと不便に感じたりすることがたくさんあります。それは、最近のデジタル一眼レフカメラなどと比べると便利な機能や装備が圧倒的に不足しているため、様々な小道具が必要になることであったり、それが故に、何かと手間がかかったりといったようなことです。大判カメラとはそういうものだと割り切ってしまえばどうってことはないのですが、とはいえ、出来るだけ手間がかからず、便利であるに越したことはありません。

 たいそうな機材や装備を用いずとも、ちょっとしたことで便利になったりすることもありますので、私が日ごろから用いているものをいくつかご紹介します。
 必ずしも大判カメラに限ったことだけではありませんが、大判カメラがゆえに気になることもたくさんあるということで。

水準器のキャリブレーション

 大判に限らず、写真というのは水平が傾い置ていると、それを見た時にとても違和感を感じるものです。このような傾きに対して人間の眼はとても敏感で、ほんのわずかな傾きでも感じ取ってしまいます。ですので、特別な表現の意図をもって写す場合はともかく、一般的に水平が傾いた写真は失敗作と言わざるを得ません。
 今のカメラは電子水準器を内蔵しているものが多く、これを頼りにすれば傾いた写真を防ぐことは容易にできますが、大判カメラにはそのようなものがついていないので、昔ながらの気泡が入った水準器を使って水平を確認するということが必要になります。
 カメラや三脚、雲台などに水準器が組み込まれているものもありますが、小さいものが多く、微妙な水平の確認をするには便利とはいえません。

 撮影の際、私は常に水準器を持ち歩いていて、これでカメラの水平を確認するようにしています。
 水準器の値段も100円ショップで購入できるような安価なものから、高い精度で作られたかなり高額なものまでいろいろありますが、私の使っているものは通販で購入したとても安価なものです。
 水準器自体がいくら高精度であっても、カメラに取付けた際に水平が確認できなければ意味がありません。ですので、安かろうが高かろうが使用する際にはキャリブレーション(調整)が必要であり、キャリブレーションができていれば安いものでも全く問題ないと思っています。

 水準器のキャリブレーションは特に難しいことではなく、最も簡単で確実な方法は、海に行って水平線を基準に確認することです。
 手順としては、まず水平線をカメラのフォーカシングスクリーンの横罫線に合わせます。これでカメラの水平が保たれた状態になります。
 次に、水準器をカメラ上部の平らな部分に置きます。この時、水準器内の気泡が2本の線の中央にあれば問題ありませんが、気泡の位置が左右のどちらかにずれているとしたら、その気泡の位置がそのカメラの水平を示していることになります。ですので、もともと水準器に刻まれていた線は無視して、新たに気泡の位置に合わせて水準器に線を書き入れます。これでキャリブレーションは完了です。
 ただし、水準器を置く場所を変えると傾きが変わる可能性もありますので、キャリブレーション後は水準器の置く位置を常に同じ場所にする必要があります。

 しかし、これを行なうためにはわざわざ海に出向かなけらばならず、海から遠いところに住んでいる場合はなかなか骨の折れる仕事です。
 そこで、家の中にいても同様にキャリブレーションができる方法があります。

 家の中で完全な水平をつくり出すことは難しいですが、垂直であれば簡単に作ることができます。
 タコ糸などの先に重りをつけて、もう一端を部屋の壁の高いところや天井などに固定して吊るします。この時、重りをつけた糸は完全な垂直状態になっているので、この糸とカメラのフォーカシングスクリーンの縦罫線とを合わせることでカメラの垂直が保たれます。つまり、カメラの水平が保たれたのと同じ状態になります。なお、フォーカシングスクリーンを縦位置にしておいた方が、より正確に垂直を確認できると思います。
 それ以降の手順は水平の時と同様です。

 このキャリブレーション方法は、使用するカメラと水準器の関係において水平を担保するものであって、水準器の絶対的水平を保証するものではありません。ですので、使用するカメラが変わったり、同じカメラでっても水準器の置く位置が変わってしまうと意味がなくなってしまいます。

大判カメラに取っ手(ベルト)を取付ける

 木製のフィールドタイプの大判カメラは、本体の上部に取っ手がついているものが多くあります。
 一方、金属製のフィールドタイプの大判カメラの場合、取っ手は本体の側面についているものが多いように思います。これはこれで、カメラをホールディングするときには便利なのですが、カメラをバッグに出し入れする場合は使い勝手が良くありません。使用するカメラバッグの形態や慣れなどによるところも大きいのでしょうが、カメラをバッグから取り出し、三脚に固定する一連の操作のやり易さを考えると、取っ手はカメラ本体の上部についている方がはるかに便利です。

 ということで、私が使っている金属製のフィールドカメラの上部には取っ手(ベルト)を取り付けてあります。

 使用している素材はカメラのネックストラップの両端の細いベルトの部分です。あちこち傷んできて捨てようと思っていたネックストラップの先端の部分を切り取って再利用しています。
 リンホフマスターテヒニカ2000の本体上部側面にはアイボルト(丸環ボルト)のようなものがついていて、これにベルトを取付けています。
 アイボルトに通してある台形をした金属のリングは、大型のゼムクリップを使って自作したものです。そこにネックストラップの細いベルトを通し、バンドリングで固定してあります。

 この取っ手(ベルト)はカメラの出し入れの際にしか使用しないので、軽くて邪魔にならない存在でありながら、カメラの重さに十分耐えられなければなりません。それを満足するということで、ネックストラップの素材は打ってつけです。また、水に濡れても全く問題ありません。
 この取っ手のおかげでカメラの出し入れはとても楽になりました。さすがにこの取っ手を持って、カメラをブラブラさせながら歩くことはしませんが。

カメラバッグの蓋を自立させる

 私はバックパック型のカメラバッグと、ショルダー式のアルミケースを持っていますが、圧倒的に使用頻度が高いのはバックパック型です。両手がフリーになるので便利なのと、同じ重さであっても、片方の肩にかけるよりは背負ったほうが軽く感じるからです。
 私が愛用しているバックパック型はロープロ Loweproのプロトレッカー BP450AW Ⅱというバッグで、機能的にもデザイン的にもとても気に入っているのですが、唯一気になっているのは、バッグの蓋を半分くらい開いた状態で保持できないということです。ナイロン素材でできているため仕方のないことですが、大判カメラを使っているとバッグから物を出し入れする回数が多いので、これが思いのほかストレスになります。
 45度くらい開いた状態で固定出来たらどんなにか便利だろうとずっと思い続けていました。

 そして思いついたのが、自動車のボンネットを開いたときに支える支柱のような方式です。

 大がかりなものにすると重くなるので、重量的には誤差の範囲内で簡単に支えられるものということで、針金ハンガーを伸ばしてコの字型に曲げ、カメラバッグの蓋の内側に配線クリップでとめただけの極めて単純なものです。
 バッグの蓋を45度くらいに開いた状態で、この針金ステーの先端をバッグの内側にある保持部に差し込めば蓋は固定されます。保持部はマジックテープに短く切ったストローを貼りつけただけのもので、この位置を変えれば蓋の開度も変わります。

 これまでは、開いた蓋を片方の手で持っていなければならなかったのですが、これのおかげで両手で物を出し入れすることができるようになりました。片手だとうまく取り出せなかったり、落としてしまったりということもあったのですが、そういうこともなくなり、ストレス解消です。

大判レンズ用の格納箱

 大判レンズにはレンズボードがついていて、レンズ自体は小ぶりであってもレンズボードがあるために収納効率はあまりよくありません。カメラバッグに入れるときなどは出来るだけ隙間が少なくなるようにしたいのですが、なかなかうまい方法がありません。
 全く頓着することなく、レンズをバッグの中にゴロゴロと入れている方もいらっしゃって、私も試したことがありますが、レンズ同士がひっかってしまって取り出しにくいとか、目的のレンズを探しにくいとかがあり、使い勝手はあまり良くないというのが実感でした。

 ということで、いろいろと試行錯誤した結果、レンズがすっぽりと納まる直方体の箱が最も便利だという結論に至り、今はこの方法を用いています。

 箱は薄手(厚さ2mm程度)の段ボールを切り出し、レンズボードがついたレンズの寸法に合わせて箱にしているだけです。
 #0と#1シャッターのレンズの場合、箱の深さはリンホフ規格のレンズボードの高さが入る約100mm、横幅はレンズボードの幅の約96mm、長さは入れるレンズの全長に合わせています。
 一方、#3シャッターはボード幅よりも大きいので、深さは同じにできますが横幅は大きくしなければなりません。
 また、箱の内側にはレンズ名や焦点距離を書いておき、お目当てのレンズがすぐにわかるようにしてあります。

 この箱をカメラバッグの中に並べて詰めていくことで、カメラバッグの中でレンズが躍ってしまうようなこともありません。
 段ボール自体はとても軽いのと、内部が空洞になっているため若干のクッションの役目も果たしてくれます。もし、衝撃が気になるようであれば箱の底に厚さ2~3mmのクッション材を敷いておけばかなり効果的だと思います。

三脚に蓄光テープを巻き付ける

 私が主に使っている三脚はベルボンのジオ・カルマーニュN830という製品ですが、結構大型の三脚です。三脚は当然のことながら、脚を伸ばせば伸ばすほど、3本の脚が地面に描く三角形の面積も大きくなります。
 大判カメラでの撮影の場合、いろいろな小道具を使うので、カメラバッグはできるだけ三脚の真下あたりに置いておきたいのですが、足元の状態によっては脇の方に置かなければならないこともあります。その結果、カメラとバッグの間を行ったり来たりすることになります。
 昼間の明るいときであれば何ら問題はないのですが、夜の撮影時などは足元も暗いので、三脚の脚が見えずに蹴とばしてしまうこともあります。三脚を倒してしまうようなことはありませんが、せっかく構図決めやピント合わせをした後だったりすると、もう一度やり直さなければなりません。

 そこで、暗闇でも三脚の先端がわかるように、蓄光テープを巻き付けてあります。

 これは、光にあてた後は暗闇でも発光し続けるので、とても目立ちます。明るさは徐々に落ちていきますが、それでも1時間くらいは十分な明るさを保っていますし、もし、暗くなってしまったら懐中電灯などの光を当てると、再度蓄光されて明るく光るようになります。
 三脚だけでなく、カメラバッグなどにも貼っておけば目印になると思います(私は貼っていませんが)。

 また、人通りが多い場所での夜間撮影の時など、三脚を立てておくと前を通った人が脚に足を引っかけてしまう心配もあります。もちろん、細心の注意を払って三脚を立てるべきですが完璧というわけにはいかず、そんなときも緑色に光っていれば、多少なりともそういった事故を軽減することができるかも知れません。

カメラバッグ内を明るくする照明

 これも夜間撮影時のためのものですが、カメラバッグの中が暗くて物が見えにくいというのは不便なものです。私は夜間撮影時にはネックライトを使っていますが、バッグ内を隅々まで照らすには光量不足です。明るくするためにはかなり腰をかがめなければなりません。
 バッグの中全体を明るく照らしてくれるような照明を取付けようと思い、通販サイトで探してみました。

 最近は小型でも明るいLEDライトがとても安い金額で購入することができ、しかも驚くほどたくさんの製品に溢れていて目移りしてしまうのですが、とにかく小型のものということで長さ10cmほどのLEDライトをゲットしました。

 電源はモバイル用の予備バッテリーを使います。以前、とあるメーカーからもらったものですが、全く使っていなかったので、今回デビューです。
 これをマジックテープでカメラバッグの蓋の内側に取付けてあります。

 LEDライトにはスイッチがないのですが、バッテリーにはスイッチがついているのでオンオフが可能です。蓋を開けたら自動で点灯っていうのが理想ですが、それほど頻繁に使うものではないので良しとしましょう。
 バッテリーの容量とLEDライトの消費電力から計算すると、フル充電された状態で10時間以上使えるようなので、長時間の夜間撮影でも問題ありません。
 実際に点灯させると予想以上に明るく、バッグ内は隅々まで見えるどころか、明るすぎて恥ずかしいくらいです。

 マジックテープでとめてあるだけなので取り外しも簡単にでき、懐中電灯の代わりにも使用できます。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 大判カメラに限ったことだけではないとは言いながら、最新の35mm判の一眼レフを使っていれば、それほど気にならないことも事実です。機材の進歩は撮影時の状況を変えてしまうのは言うまでもありませんが、今更ながら大判カメラは何かと手間がかかるということです。
 だからこそ、長年使っていると気になったり不便に感じたりということが出てきますが、今の時代、大判カメラに関する新製品やグッズが発売されるなどということは望むべくもなく、自分で工夫するしかないといった感じです。
 それはそれで楽しいことでもありますが、所詮は素人が思いつきでやっていることですから他愛もないことでもあり、すべてがうまくいくわけでもありません。それでも、昨日よりも少しは良くなったという自己満足も大事なことかと思っています。

(2023.5.8)

#Velbon #Linhof_MasterTechnika #Lowpro #ベルボン #ロープロ

ギア雲台 Manfrotto マンフロット410の分解・調整

 私は主にマンフロットの410というギア雲台を使用しています。構図決めの際、微妙な調整がし易いのが愛用している主な理由です。3軸(パン、ティルト、ロール)が、それぞれ独立したノブを回すことで動くのですが、長年使っているとこのノブが重く(固く)なってきます。重くなると動かす際にとても力がいるので、分解して調整することにしました。

分解の手順

 マンフロット410雲台の外見は複雑な形をしていますが、構造は比較的シンプルです。

▲マンフロット410 ギア雲台

 分解は1軸ごとにやっていきます。どの軸も構造は同じです。
 まずはロール軸からですが、マンフロットのロゴと角度目盛りが書かれたラベルを剝がします。これはかなり強力な両面テープで張り付けてあるので、ラベルの端を剥がし、強く持ち上げるとラベルにキズ(折り目)がついてしまいます。ラベルの周囲から細めのマイナスドライバを差し込み、少しずつ持ち上げていくと綺麗に剥がれます。

▲オレンジ色の矢印のラベルを剥がす

 クッション性のある厚めの両面テープが使われており、剥がすとラベルの裏側と雲台本体の両方にテープが残ってしまいます。これを再利用することは難しいので、綺麗に剝ぎ取ってしまいます。
 ラベルを剥がした状態が下の写真です。

▲ロール軸のラベルを剥がした状態

 ラベルを剥がすとギアをおさえている丸い金属板(押さえ板)があり、その中央にネジ(オレンジ色の矢印)がありますので、4mmの6角レンチを使ってこのネジを緩めます。
 中央のネジを抜くと丸い押さえ板も外れますので、ロール軸の可動部も外れます。
下の写真でもわかるように、中は空洞です。

▲押さえ板を外した状態

 この状態で、ロール軸のギアのかみ合わせをリリースするノブ(下の写真の黄色の矢印)をいっぱいに回し、押さえ板がはまっていた反対側(オレンジ色の矢印の箇所)を軽く押すと、中にはまっている円筒形のギアがポロっと外れます。これで分解完了です。

▲押さえ板がはまっていたのと反対側の状態

ノブが重くなる原因

 このギア雲台は、上で外した円筒形のパーツの外側に付けられたギアに、ウォームギアがかみ合い、ウォームギアを回すことでそれぞれの軸が回転する仕組みになっています。そして、遊び(ガタ)が出ないように、強力なバネでウォームギアを円筒形のギアに押し付けています。
 ところが、長年使っていると円筒形のギアが徐々に摩耗して、歯高が低くなってしまいます。ここにウォームギアが押し付けられるので、ウォームギアの歯先が円筒形のギアの歯の底に当たってしまい、摩擦抵抗が大きくなり、ノブが非常に重くなるということになってしまいます。

▲円筒形のギア

 上の写真で、黒く汚れている辺りの歯が摩耗しているのがわかるでしょうか?
 一方、ウォームギアの方は特に摩耗しているようには見えません(下の写真)。

▲ウォームギア

 円筒形のギアはアルミ製で、ウォームギアは真鍮製です。真鍮はブリネル硬さでアルミの3倍ほどありますから、アルミ製のギアの方が摩耗してしまうのだと思います。

ギアのかみ合う位置を変える

 摩耗してしまったパーツは新しいものに交換するのが望ましいのですが、パーツ代も結構高額のようですので、まだ摩耗していないところを使うようにします。

▲未使用で歯が摩耗していない箇所

 この雲台のティルト軸とロール軸の可動範囲はそれぞれ120°です。この範囲を行ったり来たりしているので、円筒形のパーツは全周のおよそ1/3しか使っていません。残りの2/3は未使用状態ですので、この未使用部分とウォームギアがかみ合うようにすれば、ノブが重いという問題は解消されます。

 なお、ウォームギアのところにはグリスが塗ってありますが劣化してきているので、ウエスなどで綺麗にふき取り、新しいグリスを塗り込んでおきます。

 また、円筒形のギアも汚れていますので、こちらも綺麗にふき取り、グリスを塗っておきます。

組み上げの手順

 組み上げは、まずロール軸のギアのかみ合わせをリリースするノブをいっぱいに回した状態で、円筒形のギアをはめ込みます。この時、ギアが摩耗していない未使用の箇所がウォームギアがとかみ合うように、はめ込む位置を確認します。120°可動しても、摩耗した部分がウォームギアとかみ合うことがないようにします。

 次に、ロール軸を雲台に嵌合させ、押さえ板をはめてネジを締め込めば組み上げは完了です。

 この状態でロール軸の可動範囲いっぱいまでノブを回してみて、重くなることがなければ大丈夫です。もし途中で重くなるようであれば、摩耗している歯の部分にかみ合っているので、再度分解してギアの位置を移動させる必要があります。

 また、丸い押さえ板を止めるネジですが、これが緩んでくるとギア雲台にガタが生じますので、このネジはかなり強く締めておいた方がよろしいと思います。

 動作確認をして問題がなければ、最初に剥がしたラベルを張り付けます。何年後かにまた調整をすることを考慮すると、両面テープで張り付けるのが良いのではないかと思います。

ティルト軸の調整

 ティルト軸もロール軸と同様の手順で行ないます。
 ティルト軸の可動範囲もロール軸と同じ120°で、全周の2/3は未使用の状態ですので、そことウォームギアがかみ合うようにすればOKです。

パン軸の調整 

 パン軸も分解の手順は同じですが、状況が若干異なっています。パン軸の可動範囲は360°あり、このため、円筒形のギアの全周に渡って歯が摩耗している可能性があります。その場合は、ウォームギアとのかみ合い位置を変えても改善は見込めません。
 また、摩耗箇所が部分的であったとしても、使用している途中で摩耗箇所とウォームギアがかみ合う位置に来る可能性は十分にあるので、完全に問題解消というわけにはいきません。もし、パン軸のノブが重くて支障があるようでしたら、パーツを新しいものに交換するか、もしくは、雲台そのものを新しくするかしかありません。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 この調整で、ノブが快調に動くのがどれくらいの期間かというのは使用頻度によって異なるので一概に言えませんが、いずれノブが重くなったとしても、ティルト軸とロール軸の円筒形ギアに関してはまだ1/3が未使用なので、さらにもう一度、調整できる余裕が残っています。それまでパン軸が耐えられればですが。

(2021.7.1)

#マンフロット #Manfrotto #ギア雲台

スリッククランプヘッドと超ローアングル撮影

 野草の撮影をすることが多いのですが、野草というのは背丈の低いものが圧倒的に多く、カメラもできるだけ低い位置で構えるということになります。もちろん、上から俯瞰するアングルもありますが、野草の目線で撮ろうとすると低くしなければなりません。

超ローアングル撮影は苦労が多い

 手持ち撮影であれば地面に寝転がって撮ることでローアングルも可能ですが、中判カメラで接写リングをつけたレンズで撮ることが多いので、手持ちでは無理があります。どうしても三脚が必要になります。

 各メーカーからローアングル撮影用の三脚も販売されていますが、めいっぱい低くしても雲台を含めると25cmくらいが限界かと思います。また、通常の撮影では地面に接するのは三脚の石突の部分だけですが、ローアングルにすると脚がいっぱいに開くため、地面に接するのが石突ではなく脚の先の方になります。地面が平らなところならまだしも、野山や田圃の畦のようなところは三脚を安定させるのに一苦労します。というような理由で、私は三脚をローアングルにして使うことはほとんどありません。
 ビーンズバッグという手もありますが、微妙なアングル調整をすることが難しいので選択肢には入りにくいです。

スリックのクランプヘッドという便利グッズ

 スリックから「クランプヘッド」という製品が出ており、需要が多いのかどうかわかりませんがロングセラー商品です。若干のマイナーチェンジはされているようですが、発売からかれこれ30年近くになるようです。
 ご存じの方も多いと思いますが、三脚の脚に取付けてローアングル撮影を可能にするグッズです。取り付ける脚の太さに応じて3種類(32mmまで、38mmまで、45mmまで)ありますので、自分の三脚に合わせて選択することになります。

スリック クランプヘッド

 アイディア製品だとは思うのですが、いま主流になっているカーボン三脚で使用する場合、クランプを閉めすぎると脚がメリメリと割れてしまうそうなので要注意です。私もこの製品を使っていますが、三脚がカーボン製なので脚に取付けたくはありません。そこで、ロックナット部分に取付けようと思いましたが、ロックナットの径が太すぎて取付けができません。

クランプヘッドの改造

 ということで、クランプ部分を取り外し、マンフロット製のスーパークランプに交換しています。交換といってもそのまま取付けられるわけではないので、クランプヘッドとスーパークランプをつなぐための特殊ネジを作り、これを用いて接合しています(下の写真)。

マンフロット スーパークランプ & 取付け用特殊ネジ(自作)
スリック クランプヘッド + マンフロット スーパークランプ

 このスーパークランプは無骨ながら非常に強力です。直径60mmくらいまでクランプすることができますので、三脚のロックナットも楽々つかんでくれます。
 しかし、ロックナット部分とはいえ、あまり強く締めすぎるのはよろしくないと思うので、ロックナットにスチールパイプを被せてクランプしています。こうすることで、締め付ける力が均等にかかるので、多少強く締めても問題はありません。
 これにPENTAX67を取り付けると、下の写真のような状態になります。

三脚ロックナットへの取付け

 一番下のロックナットに取付けることで地面からヘッド(雲台)まで8cmほどの高さになりますので、かなりのローアングル撮影が可能になります。
 この場合、カメラの位置が低いので、アングルファインダーがないと撮影にかなり難儀をします。

超ローアングル撮影の作例

 ここまでカメラ位置を下げると、背丈が数cmというような小さな野草もそこそこの目線で撮ることができます。
 下の写真は春に撮ったものですが、ここまでローアングル撮影ができます。

タンポポ

もっとローアングルにしたい

 これよりもさらにローアングルで撮りたい場合は、三脚のセンターポールの下端に雲台(ボール雲台が便利です)を取り付け、ここにカメラをつけることで地面すれすれのローアングルが実現できます。

三脚センターポール下端への取付け

 ただし、カメラが逆さまになっていますので操作性は著しくよろしくありません。レンズの絞り目盛りやシャッター速度ダイアルなどは下側になってしまいますので、鏡にでも映さない限り目視での確認はできません。また、3本の脚の間にカメラがぶら下がっている状態ですのでファインダーを覗きにくく、やはりアングルファインダーは必須だと思いますが、このローアングルならではの、ちょっと違った世界が見えることも事実です。

(2020.12.5)

#スリック #SLIK #クランプ

三脚:Velbon ベルボン ジオ・カルマーニュ N830 + マンフロット 410

 別のページでも触れましたが、私はベルボンの三脚のユーザーです。ベルボンの三脚は小さなものから大型まで5台持っていますが、その中でメインで使っているのがGeoCarmagne N830(ジオカルマーニュN830)で、この三脚にManfrotto410(マンフロット410)というギア雲台を取り付けています。

ジオ・カルマーニュ N830のスペック

 N830は大型に分類されるカーボン製の三脚で、脚をいっぱいに伸ばすと1,790mmの高さになります。これに雲台の高さ(約130mm)が加わり、さらにセンターポールを上げると2メートルをはるかに超える高さになります。エレベータも含めて目いっぱい伸ばして使うことはほとんどありませんが、ごくまれに脚立に乗って撮影するときなどに威力を発揮してくれます。
 一方、脚をすべて収納しても縮長は三脚のみで817mm、雲台を含めると約950mmほどもあり、結構大きいです。N830の姉妹品でN840という4段三脚がありますが、こちらは収納した状態で130mmほど短い上に、いっぱいに伸ばすとわずかながらN830を上回るスペックです。重さもほとんど同じですので持ち歩きにはN840の方が便利です。ですが、あえてN830を使っているのは、撮影時、ほとんどの場合は2段目を引き出すだけで必要な高さを確保できるからです。N840は2段目と3段目を引き出さなければならず、手間がかかってしまいます。撮影場所を移動する際には脚を収納し、移動後にまた引き出すわけですから、この手間が煩わしく、少しでも簡単にしたいという思いです。

Velbon GeoCarmagne N830

カーボン三脚の安定性

 この三脚、大きいし重いし、持ち運びは決して楽とは言えませんが、何といってもその安定性が抜群で、大きなカメラや重いレンズを載せても安心して使うことができます。カーボン三脚は見かけに比べて実際に持ってみるとかなり軽く感じるので、初めてカーボン三脚を使った時はちょっと不安な気持ちもありました。

 同じくベルボンのMark-7(マーク7)というアルミ製の三脚も持っていますが、こちらはN830よりも小柄ながら持った時にズシッときます。それだけに三脚を据えた時の安定感、安心感というものが気に入っていたのですが、カーボン三脚はそのズシッとした感じが希薄で大丈夫かなと思ったものでした。しかし、そういったことは自分の感覚でしかなく、使っているうちに不安な気持ちは払拭されました。

 個人的なこだわりですが、脚のロックはナットロック式が好きです。レバーロック式の方がワンタッチで楽かもしれませんが、脚の伸縮を微妙な硬さに調整できることと、脚にでっぱりがないということでナットロック式の三脚を選んで使っています。

スクリューギア方式のエレベータ

 また、小型三脚を除いて、センターポールはスクリューギアで上下できるものにしています。センターポールを上げて使うことはさほど多くはありませんが、ねじを緩めるとセンターポールがフリーになってしまうタイプは、緩めるときに気をつけないと重みでストンと落ちてしまうし、緩めた状態ではガクガク動いてしまい、なんだか心もとありません。
 N830を立てた状態で雲台の上部を持って、前後左右に強く力を入れてみてもほとんど動くことはありません。脚の剛性が高いのはもちろんですが、エレベータ部分の作りもしっかりしていることがわかります。

Velbon GeoCarmagne N830

ギア雲台 マンフロット410

 さて、マンフロット410ですが、私がギア雲台を使っている理由は、構図決めの際に微妙な位置(角度)調整ができることと、ピタッと位置決めができることに尽きるといっても過言ではありません。一般的な3-Way雲台の場合、構図を決めてパン棒を締めても微妙に動いてしまうことがあります。特に重い望遠レンズをつけているときなどは、その重みでわずかですが首を下に振ってしまいます。これを考慮して若干上に振った位置で締めてもなかなか思うような位置に止めることができず、これはかなりのストレスです。
 その点、ギア雲台は位置決めしたところでピタッと止まり、その後は全く動くことはありません。特にマクロ撮影や風景でも望遠レンズを使うときなど、ストレスなく位置決めができ、そのありがたみを痛感します。その代わり、一般的な3-Way雲台のように2軸、もしくは3軸をフリーにしたスピーディな動きは苦手です。

マンフロット410の改造

 とても使い易い雲台ではありますが、クイックシュープレートはとても使いにくいです。これは多くの方がそのように感じられているようです。私はベルボンの三脚を多用しているので、クイックシューもベルボンのQRA-667という製品を使っています。そのため、410のプレートと不要なパーツを外し、ねじ穴を切るなど若干の加工をしてベルボンのクイックシューを直接取り付けています。マンフロットのプレートの上にベルボンのクイックシューを載せてもよいのですが、できるだけ軽くしたいということと、剛性を損ねる要素は少しでも取り除きたいという理由からです。
 また、ノブが小さくて回しにくいので、椅子の足にかぶせるカバーを取り付け、ノブ径を大きくして回し易いようにしています。

Manfrotto 410 + Velbon QRA-667

 この雲台の耐荷重は5kgとなっています。私が使っているカメラとレンズで最も重い組み合わせは、PENTAX67Ⅱに500mmの望遠レンズをつけたときで、その重さは約4.9kg(カタログ値)になります。これにフィルターとかクイックシュープレートとかフィルムとかが加わるので、実際には5kgを越えていると思われます。5kgを越えたからすぐに壊れるわけではないと思いますが、この雲台の使用範囲ぎりぎりといったところでしょうか。
 大判カメラはこれほど重くなることはないので、全く問題なく使うことができます。

 ベルボンのN830にマンフロット410を取り付けるとその重さは約4.6kgあり、いくら見栄を張っても決して軽いとは言えませんが、安定性と使い易さでメインの三脚として愛用しています。

(2020.9.9)

#ベルボン #Velbon #マンフロット #Manfrotto #ギア雲台