イルフォード モノクロフィルム ILFORD FP4 PLUS の使用感

 私が使っているモノクロフィルムの中で最も使用頻度の高いのがイルフォードのDELTA100ですが、先日、ストックが切れてしまったので、新たに購入しようと思い新宿のカメラ店まで行きました。ところが、そのお店でもたまたま売り切れで、次の入荷時期もはっきりとわからないとのことでしたので、代わりにイルフォードのFP4 PLUSを購入してきました。
 実は、これまでFP4 PLUSを使ったことはなく、今回が初めての購入です。データシートを見ると、粒状性にも優れており、高画質な画像が得られるとあります。
 試し撮りに新宿に行こうと思ったのですがあまりに暑いので断念し、調布市にある緑が豊かな深大寺に行ってきました。

現像液はイルフォード ID-11を使用

 このフィルムのイルフォードの推奨現像液はILFOTEC DD-X、PERCEPTOL、またはID-11となっていますが、今回は手元にあったID-11を使用しました。データシートによるとEI125の場合、現像時間は原液(20℃)で8分30秒となっていますので、それに準じます。
 定着液はイルフォードのRAPID FIXERを使用しました。

 フィルムを触った印象はDELTA100と同じで、やや硬めでしっかり感があります。
 イルフォードのフィルムを現像するときにいつも思うのですが、撮影後のフィルムを止めたシールがとても剝ぎにくいです。端っこをつまんで持ち上げればくるんと剥けて欲しいのですが、途中から裂け目が入って、細い幅の状態でビリビリと破けていってしまいます。目くじら立てるほどのことではないのですが、結構イライラします。

 外気温が30度を軽く超えているので室温も高いし、水道水の温度も20度を超えているので、深めのバットに氷水を入れて、現像液が19度くらいになるようにしておきます。室温で現像タンクも温まっているので、現像液を入れるとちょうど20度くらいになります。
 寒い時期はヒーターを使うことで微妙な温度調整ができますが、暑い時期に水温を微妙に下げて一定に保つというのは結構大変です。

解像度も高く、滑らかな階調のフィルム

 深大寺を訪れた日は真夏の太陽が照りつける晴天で、日なたにいると汗が止まらないといった暑さでした。大きな建物や樹木があるので、日なたと日陰の明暗差がとても大きい状態です。コントラストを活かした画作りには向いているのかも知れませんが、今回は初めて使うフィルムなので、フィルムの特性がわかり易いような被写体を選んでみました。
 使用したカメラはMamiya 6 MF、レンズは75mm一本だけです。
 なお、レンズフィルターは無色の保護用フィルターのみで、Y2とかYA3などのフィルターは使用していません。

 まずはちんまりと座っていた狛犬を撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/125

 狛犬に陽があたっており、バックは日陰になっている状態です。
 所どころ、黒くなったり苔が生えたりしている石の質感がとてもよく出ていると思います。表面の細かな凹凸も損なわれることなく表現されていて、解像度も申し分ないと思います。
 日陰になっている背景のお賽銭箱や、その奥の階段状になっているところも、状態がはっきりとわかるくらいなめらかに表現できています。
 狛犬のお尻の下あたりはさすがに黒くつぶれ気味ですが、それでも墨を塗ったようなべったりとした状態になっておらず、台座の質感が残っています。

 狛犬の後ろ足の辺りを拡大したのが下の写真です。

 石のざらざらとした感じが良く出ていて、十分な解像度があると言っても良いと思います。

 次の写真は元三大師堂の高欄を、下から見上げるアングルで撮影したものです。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/60

 画の左上から日が差し込んでいる状態で、宝珠柱や擬宝珠の一部が明るくなっています。この部分を明るくし過ぎると質感を損ねてしまうので、露出は切り詰めています。左上の天井部分はかなりつぶれ気味ですが、この方が雰囲気はあると思います。
 宝珠柱の木の質感や、右側にある銅板を巻きつけた架木の質感など、とてもよく出ていると思います。
 中央の宝珠柱の明るいところから暗いところへのグラデーションも見事で、円柱になっているのが良くわかります。

 日差しがとても強く、コントラストの高い状態ですが、三元大師堂のほぼ全景を撮影したのが下の写真です。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/125

 お堂の屋根や地面などは白く飛び気味になっており、逆にお堂の中は黒くつぶれ気味といった状態です。日差しの強さが伝わってくる感じで、中間の階調に乏しい、白と黒だけで表現したモノクロならではの写真と言えますが、同じイルフォードのDELTA100と比べるとコントラストが低めといった印象を受けます。
 極端にコントラストを高めて、黒い部分は真っ黒にという表現方法もありますが、つぶれすぎないというのがこのフィルムの特徴のようです。

 コントラストがあまり高くない被写体を探していたところ、うまい具合に木の陰になってなっていた門があったので撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F4 1/30

 直接の日差しはないので極端に明るい部分はありません。全体的に中間的な階調で構成されていますが、とても滑らかに表現されています。キリッとエッジの立った感じはありませんが、柔らかでありながら細部まで高画質で再現されています。特に、綺麗に削られた扉の木の質感、表面の滑らかな感じがよく伝わってきます。一方で、表面がざらついた看板の力強さのようなものも感じられます。

リバーサル現像でも高い解像度と滑らかな階調

 今回、FP4 PLUS の120サイズフィルム2本を撮影してきたので、1本をリバーサル現像してみました。
 現像データは以下の通りです。

  ・第一現像: SilverChrome Developer 1:4(水) 12分(20℃)
  ・漂白: 過マンガン酸カリウム水溶液+硫酸水溶液 5分(20℃)
  ・洗浄: ピロ亜硫酸ナトリウム水溶液 3分(20℃)
  ・再露光: 片面各1分
  ・第二現像: SilverChrome Developer 1:4(水) 3分(20℃)
  ・定着: Rapid Fixer 希釈 1:4(水) 5分(20℃)
  ・水洗: 10分

 第二現像液は1:9に希釈するのですが、面倒くさいので第一現像液をそのまま使用し、現像時間を半分の3分としました。なお、各工程の間に水洗を入れています。

 本堂の脇に、梅の花の形をした金属製の飾りのようなもの(名前も用途もわかりません)があったので撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/60

 梅の花びらのところに木漏れ日が落ちているところを狙いました。木漏れ日のところだけは明るめですが、その他は全体的に日陰になっているので黒くつぶれるところもなく、背景もはっきりわかる状態で写っています。梅の花にピントを合わせ、あまり絞り込まずに背景をぼかしています。
 やはり、梅の花びらのところのグラデーションが綺麗に出ていますし、ベタッとした感じではないので、立体感もあります。

 もう一枚、お寺の境内を出て、参道沿いにあるお蕎麦屋さんの店先のタヌキを撮ったのが下の写真です。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/500

 参道にも大きな木が茂っているので日陰になっているのですが、ちょうどタヌキのところに陽が差し込んでいました。バックが明るくなりすぎないよう、露出はタヌキの顔の辺りを基準にしています。当然、背景は露出アンダーになりますが、それでも看板の文字が読めるくらいには再現されています。

 通常のネガ現像であろうがリバーサル現像であろうが、同じフィルムを使って現像に失敗しない限りは同じような感じに仕上がるはずです。ただし、今回は使用した現像液が異なるので、その差はあるかと思いましたが、解像度や滑らかな階調、黒の出方などはネガ現像したものと比べても差はわかりません。リバーサル現像した方はスキャナで読み取る際、カラーモードで行ないますので、拡大するとごくわずかに色が乗っているのがわかりますが、スキャナの処理アルゴリズムに依存するところが大きいと思われます。
 リバーサル現像して得られるポジ原版は、ライトボックスに乗せれば出来具合が一目でわかるので便利ですが、現像の手間がかかるのが難点です。

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 初めて使用したフィルムですが、全体の印象としては、細部まで再現する高い解像度を持ちながら、非常に滑らかで柔らかな階調表現のできるフィルムといった感じです。DELTA100と比べるとコントラストは低く感じますが、低すぎてボヤっとしてしまうようなことはなく、繊細な表現力を持っているフィルムと言えば良いかも知れません。
 正確なところはわかりませんが、DELTA100よりもラチチュードが若干広いような感じもします。
 リバーサル現像してもいい感じに仕上がりますし、DELTA100と比較した場合、好みもありますが、被写体や撮影意図によって使い分けのできるフィルムだと思います。

(2022.8.2)

#イルフォード #ILFORD #マミヤ #Mamiya #深大寺

Mamiya 6 MF マミヤ6 MF レンズ編

 ニューマミヤ6シリーズ用として50mm、75mm、150mmの3本のレンズがラインナップされています。いずれもコンパクトで、優れた描写力を持ったレンズだと思います。マミヤの歴代のレンズのほとんどには「セコール」の名が冠されていましたが、このレンズにはその名がなく、「G」とだけ記されています。
 今回はこれら3本のレンズをご紹介します。

マミヤ G 75mm 1:3.5

 オルソメター型4群6枚構成のレンズです。66判では標準レンズに分類され、最短撮影距離は1m、フィルター径は58mm、画角は55°で、35mm判の40mmくらいのレンズの画角に相当します。3本のレンズの中では最も小ぶりで、まるで35mm判カメラ用のレンズのようです。

▲Mamiya G 75mm 1:3.5

 絞りリングは1段ごとのクリックで、1/2段のクリックはありません。中間絞り(例えばF8とF11の中間など)を使いたい時にはちょっと不便さを感じます。
 ヘリコイドは軽すぎず重すぎず、滑らかに動くので微妙なピントも合わせやすいです。

 オルソメターはツァイスの歴代レンズ中でも特に傑作と言われており、イメージサークルが大きいことや画面周辺まで破綻が少ないという特徴があるようです。そのためか、大判レンズによく使われているレンズ構成です。
 一方で、明るくできないという欠点があるようですが、このレンズは開放でF3.5の明るさを持っています。

 開放では自然でクセのない柔らかい描写をしますが、絞り込むにしたがってコントラストの高い、非常にシャープな描写になります。歪曲収差もほとんど感じられません。

 下の写真は高山市(岐阜県)のさんまち通りで撮ったスナップです。

▲さんまち通り  Mamiya 6 MF Mamiya G 75mm 1:3.5 F3.5 1/30 PROVIA100F

 雨が降り出しそうな薄暗い日でしたので絞り開放で撮っていますが、細部まで見事に解像しているのがわかります。カリカリしすぎないシャープな写りが気に入っています。

 一方、晴天の日に桜を撮ったのが下の写真です。

▲亀ケ城跡の桜  Mamiya 6 MF Mamiya G 75mm 1:3.5 F22 1/30 PROVIA100F

 青空と桜のコントラストがきれいに出ていると思います。最小絞り(F22)まで絞り込んでいますので、ほぼパンフォーカス状態で、桜の木の枝先も磐梯山も、とてもシャープに写っています。

 一般的に標準と言われるレンズよりも若干、短焦点(広角寄り)ですが、真四角なフォーマットなので個人的には非常に使い易い画角だと思います。

マミヤ G 50mm 1:4

 ビオゴン型5群8枚構成のレンズです。最短撮影距離は1m、フィルター径は58mm、画角は75°で、35mm判の28mmくらいのレンズの画角に相当する広角レンズです。75mmレンズに比べると全長が1cmほど長く、後玉が大きく飛び出しているのが特徴です。
 50mmという短焦点レンズなので、最短撮影距離はもう少し短いとありがたいと思うことがあります。

▲Mamiya G 50mm 1:4

 コントラストが高く、非常になめらかな描写で、かつシャープな写りのするレンズです。75mmに比べると若干、硬調に写るように感じます。
 また、このレンズをつけたとき、ブライトフレームの周辺部ではファインダー像が樽型に歪みますが、気にするほどではありません。

 山形県で偶然見つけた「古代の丘」で土偶(もちろんレプリカ)を撮ってみました。

▲古代の丘  Mamiya 6 MF Mamiya G 50mm 1:4 F16 1/30 PROVIA100F

 非常にシャープな写りをしており、土偶の質感も良く出ていると思います。このレンズの最短撮影距離である1mほどまで土偶に近づいていますが、後ろの土偶にもピントが合っています。

 もう一枚、青森県の五能線を走る特急を撮ったのが下の写真です。

▲五能線  Mamiya 6 MF Mamiya G 50mm 1:4 F8 1/250 PROVIA100F

 こちらは、列車がブレないように1/250でシャッターを切るため、絞りF8で撮っていますが、近景からしっかり解像しています。掲載している写真は解像度を落としているのでわかりにくいですが、手前の葉っぱの葉脈までしっかりと写っています。
 ちょっと硬めに感じられる描写ですが、広角には似合っていると思います。

マミヤ G 150mm 1:4.5

 35mm判に換算すると80mmくらいのレンズの画角に相当する中望遠レンズです。超低分散レンズを採用した5群6枚構成で、撮影距離は1.8m、フィルター径は67mm、画角は32°です。

▲Mamiya G 150mm 1:4.5

 このレンズを付けるとブライトフレームは非常に小さく、決して使い易いレンズとは言えません。ですが、ファインダーではわからない中望遠レンズらしいボケがあり、使用頻度は高くありませんが、良い写りをしてくれるレンズです。

 下の写真は田圃の傍らにある観音像を撮ったものです。

▲観音様  Mamiya 6 MF Mamiya G 150mm 1:4.5 F4.5 1/60 PROVIA100F

 150mmという焦点距離ならではのボケが出ていると思います。被写界深度も浅く、長焦点の特徴を活かした画をつくることができます。被写界深度は浅いですがピントの合ったところは非常にシャープで、ボケの中にピンポイントで被写体を浮かび上がらせることができるレンズです。
 ボケも嫌味がなく綺麗で、見ていて気持ちの良い描写をしてくれると思います。

 そしてもう一枚、柳の芽吹きを撮ってみました。

▲芽吹き  Mamiya 6 MF Mamiya G 150mm 1:4.5 F4.5 1/125 PROVIA100F

 浅い被写界深度を活かして、芽吹きの新緑の部分を撮ってみました。柳の枝の質感も良く出ていると思います。離れた場所から被写体のごく一部だけにフォーカスできるのは望遠レンズならではです。
 ただし、150mmなので決して大きくボケるわけではありません。被写体と背景、または前景との距離が近いとボケきれずにうるさい感じになってしまうので、被写体の前後に大きく空間のある状態が望ましいです。

 このレンズ、市場ではあまり人気がないらしく、中古品は割と安い価格で取引きがされているようですが、間違いなく市場評価以上の性能があると思います。
 他の2本に比べて仕様頻度は低いですが、その特性を活かすと魅力ある写真が撮れると思います。

使う場所を選ばないカメラ&レンズ

 レンズが3本しかラインナップされていないというのはずいぶん少ないという感じもしますが、実際に使用するうえで特に不便さを感じたことはありません。広角、標準、望遠に1本ずつという潔さのようなものさえ感じますし、少ないがゆえにそれぞれのレンズの特徴を活かした作画ができるのではないかと思います。
 また、いずれも中判フィルムを十分に活かす性能を持ったレンズであると思います。

 ニューマミヤ6シリーズは、本体もレンズも携行性にも優れ、スナップに良し、風景撮影に良し、他に類を見ないオールラウンドなカメラだと思います。
 今後、このようなカメラやレンズが出てくることは期待できそうもなく、大切に使っていきたいと思います。

(2021年5月30日)

#マミヤ #Mamiya #レンズ描写 #プロビア #PROVIA

Mamiya 6 MF マミヤ6 MF ボディー編

 長い歴史を持つ二眼レフカメラのほとんどはスクエアフォーマットですが、比較的近年に製造販売されたカメラで「ましかく写真」が撮れるカメラはそれほど多くはありません。そういった意味でもマミヤ6 MF はレアなカメラであると思います。完成度の高さや携行性の良さなどが話題になるカメラですが、私もましかく写真が撮りたくなると持ち出すカメラの一つです。

このカメラの主な諸元


 ニューマミヤ6シリーズの後期型として、1993年に発売された66判のレンズ交換式レンジファインダーカメラです。主な諸元は以下の通りです(Mamiya 6 MF 取扱説明書より抜粋)。

   型式     : 6×6判レンジファインダー、レンズ交換式、沈胴式カメラ
   使用フィルム : 120フィルム(12枚撮り)、220フィルム(24枚撮り)
   画面サイズ  : 6×6判(実画面サイズ56×56mm)
   フィルム送り : レバー1回巻き上げ185度(予備角30度)
   シャッター速度: B、4秒~1/500秒 電子式レンズシャッター
   露出制御   : 絞り優先AE、受光素子SPD(ファインダー内)、露出補正±2EV(1/3EVステップ)
   距離計    : レンズ偏角方式、実像式二重像合致、基線長60mm(有効基線長34.8mm)
   ファインダー : 距離計連動ファインダー、ブライトフレーム自動切り替え(50、75、150mm)
   電池     : LR44またはSR44を2個
   大きさ    : 155(H)×109(W)×69(D)mm (沈胴時は54(D)mm)
   質量     : 900g

Mamiya 6 MF + G 50mm 1:4

 MFというのは「マルチフォーマット」のことで、フィルム面にアパーチャーマスクを取り付けることによって645判の撮影ができたり、35mmフィルムアダプターを取り付けることでパノラマ撮影ができたりします。ただし、645判での撮影は66判をマスクするだけでフィルム送りが変わるわけではないので、フィルムが非常にもったいない気がします。

いかにもマミヤらしい沈胴機構

 このカメラのいちばんの特徴は何と言っても沈胴式の機構です。外からは見えませんが、内部に蛇腹が組み込まれており(裏ブタをあけると蛇腹が見えます)、収納時はレンズマウント部が15mmほど沈み込みます。さらにレンズ自体も15mmほど沈み込みますので、レンズを装着した場合は30mmほど薄くなることになります。この30mm薄くなることで、バッグに入れるときにはとても助かります。

Mamiya 6 MF + G 50mm 1:4 沈胴時

  

裏蓋を開くと見える蛇腹

 少々気になるのは蛇腹が劣化してきたときのことです。交換するとなると結構面倒で、コストもかかりそうに感じます。大判カメラのように蛇腹に穴が開いたからといって光線漏れが起きることもないようにも見えますが、あえて蛇腹を採用している以上、穴が開けば光線漏れを起こしてしまうのでしょう。しかし、大判カメラほど頻繁に動かすこともないので、劣化についてはそれほど心配しなくても良いのかもしれません。

明るいファインダー

 ファインダーの倍率は0.56倍で、若干低めの感じもしますが、明るくて見やすファインダーです。レンズを交換するとブライトフレームも自動で切り替わりますし、パララックスの自動補正機能も備わっています。
 ピント合わせ用の二重像も見やすいですが、縦のラインがない被写体の場合はピント合わせにちょっと苦労するかもしれません。
 
 ファインダーの視度補正レンズは交換可能で、マミヤ645やマミヤ7と共通のようです。

 ファインダー内の表示はシャッター速度と露出オーバー、およびアンダーのインジケータ、そしてアラーム用のファンクションランプだけという非常にシンプルなものです。シャッターボタンから指を離せば数秒後にはこれらも消灯するので、フレーミング時の邪魔になるようなこともありません。

少々、クセのある内蔵露出計

 このカメラには露出計が内蔵されていますが、使いこなすには慣れが必要です。露出計が内蔵されている場所というのがファインダー内のため、外部の光、特に空からの光に影響を受けやすくなっています。すなわち、ファインダーに強い光が入り込むとそれに反応して、露出がアンダー側に振れてしまう傾向にあります。撮影の条件によっては1EV以上、アンダーの値を示すこともあります。

 また、その構造上、レンズを交換しても測光範囲が変わるわけではないので、短焦点の50mmレンズを装着した場合は中心部をスポット的に測光しますが、長焦点の150mmレンズの場合は全面を平均的に測光することになります。内臓露出計に頼って撮影する場合は、このようなクセを把握しておくことが必要になります。

 ちなみに、私は上空からの光の影響を防ぐため、ファインダーの上に自作のシェードを取り付けています。

アクセサリーシューに取付けたファインダーシェード

しっかりとしたフェイルセーフ機構

 このカメラはレンズシャッターを採用しているため、レンズを外すとフィルムが光にさらされてしまいます。それを防ぐため、レンズ交換時は遮光幕を出す必要があり、遮光幕を出した状態でないとレンズが外れないようになっています。
 そして、レンズ交換後は遮光幕を収納しないとシャッターが切れないようになっています。私も遮光幕の収納を忘れてシャッターが切れず、「あれ?」となったことが何度かあります。

 また、前の方で沈胴機構が組み込まれていると書きましたが、沈胴した状態だとやはりシャッターが切れません。
 こうしたフェイルセーフの仕組みがしっかりと組み込まれている辺りにもマミヤらしさが出ていると思います。

カメラ底面にある遮光幕レバー

 フェイルセーフではありませんが、裏蓋まわりにモルトプレーンを使用していないというのも個人的には気に入っています。加工精度がしっかりと保たれれば、モルトプレーンを使わなくても十分に遮光性が確保できるということなのでしょう。

操作性に優れた使い易いカメラ

 中判カメラですが、75mm(標準)レンズを装着しても重さは1.2kg弱で、それほど重いと感じることはありません。PENTAX67は標準レンズを着けると軽く2kgを越えてしまうので、それと比べるととても軽く感じます。
 カメラを持った時のホールド感も良く、私にように手が小さくても、全く違和感なく手になじむ感じです。フィルム巻き上げレバーもシャッターボタンも、持ち変えることなく親指と人差し指で操作できます。

 ちょっと使いにくいと感じるのが露出補正ダイヤルです。これは、親指でリリースボタンを押しながら人差し指でレバーを動かすのですが、若干操作しにくいのと、補正ダイヤルのクリックが浅いのか、カチッ、カチッと動いてくれません。これはもしかしたらカメラの個体差によるものかもしれません。

 また、レンズシャッターですので切れるときの衝撃は皆無と言っても良く、「チャッ」という小気味良い音がして切れます。
 あまり大きな問題ではありませんが、裏蓋をあけておかないと空シャッターが切れないというのもこのカメラの特徴かもしれません。

 このカメラ用のレンズは50mm、75mm、150mmの3本がラインナップされています。私はスナップ撮影に使用することが多いのですが、風景撮影でも素晴らしい写りをしてくれます。レンズについては次回でご紹介したいと思います。

(2021.5.11)

#マミヤ #Mamiya

谷根千 Mamiya 6 でお散歩写真(東京都台東区・文京区)

 少し前になりますが今年の6月の長かった梅雨の最中、県境を越えずに近場でお手軽に撮影ということで、東京の下町風情が今も漂う「谷根千」に行ってきました。谷根千とは、台東区谷中、文京区根津、千駄木の一帯を指す総称です。持ち出したカメラはMamiya 6 MF、レンズは55mmと75mmの2本という軽装です。

旧都電停留場跡

 東京メトロ千代田線の根津駅を出て不忍通りを南に少し歩くと旧都電停留場跡があり、2008年まで都電荒川線を走っていた都電7500形の車両が展示されています。ここにはかつて、池之端七軒町という停留場があったそうですが、いまはこじんまりとした公園になっています。

臨江寺 国指定の史跡

 裏通りを谷中方面に向かいます。根津駅前から北東に延びている言問い通りを横断し、さらに進むと、ちょっとそそられる感じの居酒屋を発見。もちろん時間が早いのでまだ開店前ですが、ぜひ来てみたいと思わせるたたずまいです。
 このあたりにはたくさんのお寺が集まっており、その中の一つ、臨江寺に立ち寄ってみました。道路からお寺の山門まで結構な距離があり、その奥に緑が鮮やかに映える境内があります。このお寺、蒲生君平のお墓があり、国指定の史跡になっているようです(勉強不足で蒲生君平なる御仁を存じ上げませんでした)。

臨江寺

赤字坂 かつての財閥のお屋敷跡

 臨江寺の少し先の交差点を右折して赤字坂に向かいます。澤の屋という旅館を過ぎた先から急に上り坂になります。急に雨脚が強くなってきたので、坂の途中にある真島町会詰所の軒下をお借りして雨宿りです。
 赤字坂とは妙な名前だと思って調べてみたところ、明治のころ、渡辺治右衛門という財閥がここに住んでおり、日本橋で「明石屋」という乾物屋を営んでいたことから、「明治坂(あかじざか)」と呼ばれていたらしいです。ところが昭和の大恐慌によって破産してしまい、以後、皮肉をもって「赤字坂」となったとのことです。坂を上る左手に立派な石垣がありますが、この上が渡辺治右衛門の邸宅だったのかもしれません。

初音六地蔵

 赤字坂を上りきったところを左折、しばらく行くと神田白山線(都道452号)に出ます。この通りを少し行ったところにお地蔵様(初音六地蔵)が祀られていました。初音とはこの辺りの昔の地名らしく、初音の森という鶯がたくさん集まる場所だったらしいです、昔の地名は風情がありますね。

初音六地蔵

おしゃれなお店が多い

 初音六地蔵の先の交差点を左に、細い通りに入ります。両側は住宅が軒を連ねる通りなんですが、そこに様々なお店があってついつい立ち寄ってみたくなります。昔からあったと思われるお店もありますが、どちらかというと最近になって民家を改装して営業を始めたという感じのおしゃれなお店が多いです。

和の器 韋駄天

観音寺の築地塀

 下の写真は有名な観音寺の築地塀です。国の有形文化財にもなっているとのことで、なんだか江戸時代にタイムスリップしたような感じになります。映画やドラマのロケに使われることもあるらしく、ぜひ撮影現場を見てみたいものです。

観音寺 築地塀

 日暮里駅に近づくにつれお店の数の増えてきます。うなぎ料理のお店、薬膳カレーのお店、あにまるデザイン雑貨のお店、ミシンのお店等々。軒先に藍色に染め抜いた暖簾がかかっている古民家風の建物があり、暖簾をよく見ると「未来定番研究所」と書かれています。なんでも、5年後の未来の生活を創造するというコンセプトで大丸松坂屋百貨店が運営しているとのこと。
 朝倉文夫の作品が展示されている朝倉彫塑館に立ち寄ろうと思いましたが、残念ながら休館日でした。

谷中銀座商店街

 御殿坂に出て夕やけだんだんを下ると谷中銀座です。昔ながらの総菜屋さんや魚屋さんもあれば、今風のこじゃれたお店があったりで、商店街というのは歩いているだけで楽しい場所です。

谷中銀座商店街

 谷中銀座を通り抜け、本駒込駅方面に向かいます。細い路地が入り組んだ一帯ですが、高村光太郎の旧居跡があったり、ファーブル昆虫館があったり、見どころの多い場所です。有名な和モダン銭湯の「ふくの湯」さんもこの一角にあります。

重厚感のある東京大学農正門

 本駒込の駅前から本郷通りに出て、本郷三丁目方面に向かいます。左手は東京大学の広大なキャンパスです。東大といえば赤門が有名ですが、この農正門も趣があります。さすが東大といった感じです。

東大 農正門

(2020.12.15)

#谷根千 #マミヤ #Mamiya #リバーサルフィルム