イルフォード モノクロフィルム ILFORD FP4 PLUS の使用感

 私が使っているモノクロフィルムの中で最も使用頻度の高いのがイルフォードのDELTA100ですが、先日、ストックが切れてしまったので、新たに購入しようと思い新宿のカメラ店まで行きました。ところが、そのお店でもたまたま売り切れで、次の入荷時期もはっきりとわからないとのことでしたので、代わりにイルフォードのFP4 PLUSを購入してきました。
 実は、これまでFP4 PLUSを使ったことはなく、今回が初めての購入です。データシートを見ると、粒状性にも優れており、高画質な画像が得られるとあります。
 試し撮りに新宿に行こうと思ったのですがあまりに暑いので断念し、調布市にある緑が豊かな深大寺に行ってきました。

現像液はイルフォード ID-11を使用

 このフィルムのイルフォードの推奨現像液はILFOTEC DD-X、PERCEPTOL、またはID-11となっていますが、今回は手元にあったID-11を使用しました。データシートによるとEI125の場合、現像時間は原液(20℃)で8分30秒となっていますので、それに準じます。
 定着液はイルフォードのRAPID FIXERを使用しました。

 フィルムを触った印象はDELTA100と同じで、やや硬めでしっかり感があります。
 イルフォードのフィルムを現像するときにいつも思うのですが、撮影後のフィルムを止めたシールがとても剝ぎにくいです。端っこをつまんで持ち上げればくるんと剥けて欲しいのですが、途中から裂け目が入って、細い幅の状態でビリビリと破けていってしまいます。目くじら立てるほどのことではないのですが、結構イライラします。

 外気温が30度を軽く超えているので室温も高いし、水道水の温度も20度を超えているので、深めのバットに氷水を入れて、現像液が19度くらいになるようにしておきます。室温で現像タンクも温まっているので、現像液を入れるとちょうど20度くらいになります。
 寒い時期はヒーターを使うことで微妙な温度調整ができますが、暑い時期に水温を微妙に下げて一定に保つというのは結構大変です。

解像度も高く、滑らかな階調のフィルム

 深大寺を訪れた日は真夏の太陽が照りつける晴天で、日なたにいると汗が止まらないといった暑さでした。大きな建物や樹木があるので、日なたと日陰の明暗差がとても大きい状態です。コントラストを活かした画作りには向いているのかも知れませんが、今回は初めて使うフィルムなので、フィルムの特性がわかり易いような被写体を選んでみました。
 使用したカメラはMamiya 6 MF、レンズは75mm一本だけです。
 なお、レンズフィルターは無色の保護用フィルターのみで、Y2とかYA3などのフィルターは使用していません。

 まずはちんまりと座っていた狛犬を撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/125

 狛犬に陽があたっており、バックは日陰になっている状態です。
 所どころ、黒くなったり苔が生えたりしている石の質感がとてもよく出ていると思います。表面の細かな凹凸も損なわれることなく表現されていて、解像度も申し分ないと思います。
 日陰になっている背景のお賽銭箱や、その奥の階段状になっているところも、状態がはっきりとわかるくらいなめらかに表現できています。
 狛犬のお尻の下あたりはさすがに黒くつぶれ気味ですが、それでも墨を塗ったようなべったりとした状態になっておらず、台座の質感が残っています。

 狛犬の後ろ足の辺りを拡大したのが下の写真です。

 石のざらざらとした感じが良く出ていて、十分な解像度があると言っても良いと思います。

 次の写真は元三大師堂の高欄を、下から見上げるアングルで撮影したものです。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/60

 画の左上から日が差し込んでいる状態で、宝珠柱や擬宝珠の一部が明るくなっています。この部分を明るくし過ぎると質感を損ねてしまうので、露出は切り詰めています。左上の天井部分はかなりつぶれ気味ですが、この方が雰囲気はあると思います。
 宝珠柱の木の質感や、右側にある銅板を巻きつけた架木の質感など、とてもよく出ていると思います。
 中央の宝珠柱の明るいところから暗いところへのグラデーションも見事で、円柱になっているのが良くわかります。

 日差しがとても強く、コントラストの高い状態ですが、三元大師堂のほぼ全景を撮影したのが下の写真です。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/125

 お堂の屋根や地面などは白く飛び気味になっており、逆にお堂の中は黒くつぶれ気味といった状態です。日差しの強さが伝わってくる感じで、中間の階調に乏しい、白と黒だけで表現したモノクロならではの写真と言えますが、同じイルフォードのDELTA100と比べるとコントラストが低めといった印象を受けます。
 極端にコントラストを高めて、黒い部分は真っ黒にという表現方法もありますが、つぶれすぎないというのがこのフィルムの特徴のようです。

 コントラストがあまり高くない被写体を探していたところ、うまい具合に木の陰になってなっていた門があったので撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F4 1/30

 直接の日差しはないので極端に明るい部分はありません。全体的に中間的な階調で構成されていますが、とても滑らかに表現されています。キリッとエッジの立った感じはありませんが、柔らかでありながら細部まで高画質で再現されています。特に、綺麗に削られた扉の木の質感、表面の滑らかな感じがよく伝わってきます。一方で、表面がざらついた看板の力強さのようなものも感じられます。

リバーサル現像でも高い解像度と滑らかな階調

 今回、FP4 PLUS の120サイズフィルム2本を撮影してきたので、1本をリバーサル現像してみました。
 現像データは以下の通りです。

  ・第一現像 : イルフォード SilverChrome Developer 希釈 1:4(水) 12分(20℃)
  ・漂白    : 過マンガン酸カリウム水溶液+硫酸水溶液 5分(20℃)
  ・洗浄    : ピロ亜硫酸ナトリウム水溶液 3分(20℃)
  ・再露光   : 片面各1分
  ・第二現像 : イルフォード SilverChrome Developer 希釈 1:4(水) 3分(20℃)
  ・定着    : イルフォード Rapid Fixer 希釈 1:4(水) 5分(20℃)
  ・水洗    : 10分

 第二現像液は1:9に希釈するのですが、面倒くさいので第一現像液をそのまま使用し、現像時間を半分の3分としました。なお、各工程の間に水洗を入れています。

 本堂の脇に、梅の花の形をした金属製の飾りのようなもの(名前も用途もわかりません)があったので撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/60

 梅の花びらのところに木漏れ日が落ちているところを狙いました。木漏れ日のところだけは明るめですが、その他は全体的に日陰になっているので黒くつぶれるところもなく、背景もはっきりわかる状態で写っています。梅の花にピントを合わせ、あまり絞り込まずに背景をぼかしています。
 やはり、梅の花びらのところのグラデーションが綺麗に出ていますし、ベタッとした感じではないので、立体感もあります。

 もう一枚、お寺の境内を出て、参道沿いにあるお蕎麦屋さんの店先のタヌキを撮ったのが下の写真です。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/500

 参道にも大きな木が茂っているので日陰になっているのですが、ちょうどタヌキのところに陽が差し込んでいました。バックが明るくなりすぎないよう、露出はタヌキの顔の辺りを基準にしています。当然、背景は露出アンダーになりますが、それでも看板の文字が読めるくらいには再現されています。

 通常のネガ現像であろうがリバーサル現像であろうが、同じフィルムを使って現像に失敗しない限りは同じような感じに仕上がるはずです。ただし、今回は使用した現像液が異なるので、その差はあるかと思いましたが、解像度や滑らかな階調、黒の出方などはネガ現像したものと比べても差はわかりません。リバーサル現像した方はスキャナで読み取る際、カラーモードで行ないますので、拡大するとごくわずかに色が乗っているのがわかりますが、スキャナの処理アルゴリズムに依存するところが大きいと思われます。
 リバーサル現像して得られるポジ原版は、ライトボックスに乗せれば出来具合が一目でわかるので便利ですが、現像の手間がかかるのが難点です。

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 初めて使用したフィルムですが、全体の印象としては、細部まで再現する高い解像度を持ちながら、非常に滑らかで柔らかな階調表現のできるフィルムといった感じです。DELTA100と比べるとコントラストは低く感じますが、低すぎてボヤっとしてしまうようなことはなく、繊細な表現力を持っているフィルムと言えば良いかも知れません。
 正確なところはわかりませんが、DELTA100よりもラチチュードが若干広いような感じもします。
 リバーサル現像してもいい感じに仕上がりますし、DELTA100と比較した場合、好みもありますが、被写体や撮影意図によって使い分けのできるフィルムだと思います。

(2022.8.2)

#イルフォード #ILFORD #マミヤ #Mamiya #深大寺

リバーサルフィルムのラチチュードは本当に狭いのか?

 一般にリバーサルフィルム(ポジフィルム)はラチチュード(適正露光域とか露出寛容度)が狭いので露出設定がシビアだと言われています。この「狭い」というのが何と比べて狭いのかというと、カラーネガフィルムと比べて狭いと思われているふしがあるようなのですが、ちょっと違うような気がしています。
 私は圧倒的にリバーサルフィルムを使う頻度が高く、確かに露出設定には神経を使いますが、特段、カラーネガに比べてラチチュードが狭いとは感じたことはありません。
 リバーサルフィルムを使った撮影はハードルが高いと言われることもありますが、決してそんなことはないと思っています。

カラーリバーサルとカラーネガのフィルム特性

 何故、リバーサルフィルムのラチチュードが狭いと言われているかというと、写真としてのそもそもの使い方の違いから来ているのではないかと思います。リバーサルは現像した時点で完成形ですが、カラーネガの場合は現像しただけでは完成しておらず、プリントが前提となっています。このため、プリントの段階で調整がきくので、カラーネガはラチチュードが広いと思われているのではないかということです。
 確かにプリントの段階で調整できるのはその通りですが、これはフィルム上に大きく圧縮された画像を、コントラストの高いペーパー上に伸長させて再現することで実現しているわけです。

 残念ながらずいぶん前に終了してしまいましたが、ダイレクトプリントというサービスがあり、リバーサルフィルムから直接プリントできました。ネガフィルムからのカラープリントに比べると、プリント時の調整幅は狭く、シャドー部がつぶれがちであったりしましたが、インターネガを介してプリントするとカラーネガフィルムからのプリントに引けを取らない調子が再現できていました。
 それを考えると、カラーネガフィルムに比べてリバーサルフィルムのラチチュードが狭いとは言い切れないのではないかと思います。

 富士フイルムから出ているデータシートからフィルムの特性グラフを参照してみました。フジカラーPRO 160 NHというネガフィルムと、フジクロームVelvia 100Fというリバーサルフィルムの比較です。

 ネガフィルムの場合、実際の被写体の明暗が反転した状態でフィルムに記録されるので、光が当たった部分が暗くなります。すなわち、グラフ上の濃度の数値が大きいということになります。逆に光が当たってない部分は明るくなるので、濃度の数値が小さくなります。
 一方、リバーサルフィルムはネガと反対ですから、光の当たった部分は濃度が低く、光の当たってない部分は濃度が高くなります。このため、グラフの傾きは、ネガとリバーサルで反対になります。

 上のグラフの横軸の相対露光量の範囲を見ると、ネガ(PRO 160 NH)はおよそ-3.6~+0.5、リバーサル(Velvia100F)はおよそ-3.4~+1.0となっていて、若干の違いはあるものの、露光量に対して画像として記録できる範囲に大きな差はありません。
 ただし、曲線の傾きがネガの方が緩やかで、リバーサルはネガに比べて傾きが大きいことがわかります。これは、ネガの方が広い露光範囲で露光量に応じた濃度が得られることを意味しています。

 また、曲線が示す最大濃度はネガが約2.7(青)に対して、リバーサルは約3.8(緑)ですから、リバーサルの方が高い濃度まで再現できることになります。しかし、リバーサルは相対露光量が-0.2くらいで曲線がフラットになってしまいますが、ネガは+0.5でもまだフラットになっていません。
 これが、ネガは露出をオーバー気味にした方が良く、リバーサルは露出をアンダー気味にした方が良いと言われている原因ではないかと思います。
 とはいえ、あくまでもフィルムの特性が示す傾向であって、意図を持った作品作りを除けば、再現性という点ではネガでもリバーサルでも適正露出で撮るのが望ましいはずです。

ポジ原版をライトボックスで見てみると..

 リバーサルフィルムの特性曲線のグラフで、相対露光量の多いところと少ないところでは曲線の傾きがなだらかになっています。これは、黒くつぶれてしまっていたり、白く飛んでしまっているように見える画像の中にもコントラストとして記録されてるということです。

 実際にリバーサルフィルムで撮影した中から、黒くつぶれているところが多いポジ原版を探してきました。ライトボックス上で撮影したのが下の写真です。

 肉眼で見たのと同じようにはいきませんが、画の右半分が真っ黒につぶれているのがわかると思います。
 まだ陽が十分に差し込む前の渓谷で撮影したものですが、黒くつぶれた右半分のさらに上半分はこの渓谷の左岸にある岩肌で、下半分は水面なのですが上の岩肌を映しこんでいて、結果、右半分が真っ黒といった状態です。肉眼で見た時には岩肌ももっと明るく見えたのですが、撮影するとこんな状態です。人間の眼のすばらしさをあらためて感じます。

 それはさておき、この写真ではほとんどわかりませんが、この黒くつぶれた中にも所どころ明るい箇所があり、何やら写っているというのが見てとれます。墨で塗りつぶしたように真っ黒というわけではなさそうです。特に右下の辺りは川底の石がぼんやりと見えるので、それなりの画像は記録されていると思われます。

黒つぶれしているポジ原版をスキャンしてみる

 では、このポジ原版をスキャンしてみます。
 特に画質調整などの加工はせず、スキャンした素のままの画像が下の写真です。

 ポジ原版をライトボックスの上に乗せて撮影したものに比べると、多少は細部も認識できるとは思いますが、アンダー部が黒くつぶれているのは変わりありません。画の左半分がほぼ適正露出なのに比べると明らかにアンダーです。
 それでも、ポジを肉眼で見たのに比べると画像が記録されている印象を受けるので、どの程度のまで認識できるかをレタッチソフトで明るくしてみます。画質をあまり犠牲にしないようにして、極端に劣化されない範囲で明るくしてみたのが下の写真です。右側上部の岩の部分です。

 一見、黒くつぶれているように見えますが、実はかなりのディテールまで画像として認識できるレベルに記録されています。もちろん、この著しくアンダーな部分を救済すれば、ほぼ適正露出である左半分は大きく露出オーバーになってしまいます。ですが、黒くつぶれているとはいえ全く画像が認識できないわけではなく、それどころかかなり鮮明に記録されているといえます。
 これが黒い中にも微妙なコントラストがある、リバーサルフィルムの表現力ではないかと思います。

 特性曲線のグラフでもわかるように、相対露光量に濃度が比例する範囲は狭いかも知れませんが、その前後が画像として記録されていないわけでなく、しっかりと記録されています。
 そういう視点からすると、一概にリバーサルフィルムのラチチュードが狭いと言い切ってしまうことはできないと思います。むしろ、露光量が少ない範囲においてもしっかりと記録できるパフォーマンスを持っていると言っても良いのではないかと思います。

 因みに、この写真の左半分にある木々の緑に対して、右側の黒くつぶれているように見える箇所の測光値は-3EV以上になります。

 なお、この写真の右半分があまり明るくなってしまうと重厚感がなくなり、この場の雰囲気が大きくそがれてしまいます。もう少し明るくても良かったとは思いますが、意図して撮影した範囲ではあります。

白飛びでも画像として認識できるか?

 黒つぶれとは反対に、露出オーバーで白く飛んでしまった状態でも画像として記録されているのか気になるところです。
 ポジ原版のストックを探したのですが適当なものが見つかりません。唯一、露出設定を著しく間違えて撮影したポジがありましたので、これで検証してみます。

 このポジは滝を撮影したものです。NDフィルターを装着して撮影するつもりでしたが、ピント合わせなどをした後にNDフィルターをつけるのを忘れてたか、NDフィルターはつけたが絞り込むのを忘れてシャッターを切ってしまったかのどちらかですが、いずれにしろ実にお粗末な結果と言わざるを得ません。たぶん、これだけスケスケ状態になっているので、絞り込むのを忘れていたのだろうと想像しますが、そうすると5EVほどの露出オーバーということになります。
 ポジ原版を見ても何が写っているのかよくわかりません。撮影した本人でさえわからないのですから、他人からすれば全く認識不能といったところでしょう。

 この写真の中央付近を切り出して、無理矢理に画質調整をしてみたのが下の写真です。

 岩の質感などはわかる程度にはなりましたが色調はどうしようもなく崩れており、もはや写真として成り立たないレベルです。しかしながら、真っ白に近い中にこれだけの情報が残っているというのは驚きです。
 この例は極端すぎますが、3EVくらいのオーバーであればもう少しまともな画像が得られるのではないかと思います。

リバーサルフィルムのラチチュードは決して狭くない

 リバーサルの場合は現像が上がった時点で完成ですから、今回のようにレタッチソフトで画質調整をすることに意味があるとは思いませんが、真っ黒につぶれているように見えたり真っ白に飛んでしまっているような中にも、かなりしっかりと記録されているというのは事実であり、フィルムの力だと思います。
 また、露出オーバーよりも露出アンダーの方がよりしっかりと記録されており、特性曲線と一致しています。もっともこれは、露光量が増えれば増えるほど情報が消えていってしまうので、当たり前のことと言えますが。

 リバーサルフィルムは、特性曲線が傾いている範囲がカラーネガに比べて少ないのでラチチュードが狭いと言われているのかもしれませんが、決して狭いわけではないと思います。
 黒くつぶれたり白く飛んだりしている中にも情報が記録されていることでべったとした感じにならず、良くわからないけれど何やら写っている、というような印象を受けることで写真全体の雰囲気が変わってきます。ここにフィルム独特の味わいが醸し出されているのではないかと勝手に思い込んでいます。

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 モノクロプリントやカラープリントはもちろんですが、リバーサルフィルムからのダイレクトプリントでも覆い焼きや焼き込みといった作業で色を調整したりディテールを引き出したりしていたことを考えると、リバーサルフィルムの潜在能力の凄さをあらためて感じます。
 そして、特性の違いはありますがカラーネガフィルムに比べてハードルが高いということはなく、特に構えて使うフィルムでもないと思っています。むしろ、特性を知っておくことでいろいろな使い方ができる、そういったことに応えてくれるフィルムだと思います。
 ただし、お値段はお高めですが...

(2022.6.19)

#リバーサルフィルム #露出

4×5判シートフィルムをブローニーフィルム用現像タンクで現像する

 私はモノクロフィルムを使う頻度はリバーサルに比べるとそれほど高くありませんが、それでも時どき、ブローニー判や4×5判のモノクロフィルムで撮影を行ないます。撮影後のモノクロフィルムは自家現像をしており、4×5判のシートフィルムの現像にはパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。このPTP116という現像タンクは現像液が大量に必要なので、フィルムの枚数が少ないときにはもったいない気がします。
 そこで、フィルム枚数が少ない(1~2枚)ときには、ブローニーフィルム用のパターソンのPTP115という、少し小ぶりの現像タンクで4×5判シートフィルムを現像していますので、今回はそれをご紹介したいと思います。
 なお、実際に作成したのは何年も前のことであり、製作過程の画像がありませんのでご了承ください。

パターソンのPTP115で4×5判シートフィルム2枚を現像

 パターソンのPTP115という製品は、35mm判フィルム、およびブローニーフィルム用の現像タンクで、ブローニーフィルム用のリールは1本しか入りませんが35mm判用であれば一度に2本のリールを処理することができます。一回に使用する現像液の量は500mlなので、比較的少なくて済みます。

▲パターソン PTP115 現像タンク

 PTP115は4×5判シートフィルムを横置きにしたときにちょうど収まる深さがありますので、フィルムを適当にタンクの中に放り込んでおいても現像はできるかもしれません。しかし、フィルムは水分を含むと腰が弱くなって現像タンクの内壁に張り付いてしまう可能性があります。
 また、フィルムを何らかの方法で固定しておかないと現像タンクの中を自由に泳ぎ回ってしまうため、フィルム同士がくっついてしまう可能性も考えられ、あまり好ましくありません。

 フィルムをくるんと丸めて輪ゴムで止めて、それを現像タンクに入れて処理するという方もいらっしゃるようですが、撹拌の勢いで輪ゴムが外れてしまうのではないかという心配があり、私は試したことがありません。

 私は2枚のシートフィルムを固定するための簡単なホルダー(治具)を自作し、それを用いています。
 現像タンク内のスペースとしては4枚くらいは入れられると思うのですが、一度に4枚を処理するのであればPTP116を使った方が楽です。あくまでも1枚とか2枚の現像をするとき用です。
 また、フィルムを4枚入れてしまうと現像タンク内がぎゅうぎゅう詰め状態になり、回転攪拌ができなくなってしまいます。パターソンの製品は回転撹拌ができるようになっているので、それを活かすためにあえて2枚の処理用としています。

シートフィルムを固定するホルダー

 4×5判のシートフィルムは現像タンク内の内壁に沿って湾曲させなければなりません。手でフィルムの両端を挟んで内側に押すとフィルムが湾曲しますが、その状態を保持するようなホルダーがあればよいので、下の図、および写真のような簡単なものを自作しました。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー
▲PTP115用 シートフィルムホルダー

 素材は厚さ0.15mm、サイズは100mmx200mmのステンレス板です。1枚400円ほどだったと思います。
 この厚さであれば切ったり曲げたりも簡単にできますし、いったん曲げてしまえば自然にもとに戻ることはありません。0.15mmというとペラペラな感じに思われるかもしれませんが、ステンレスなのでかなりしっかりしています。

 現像タンクの内壁に沿うように全体を湾曲させるのですが、直径3~4cmくらいの丸棒に巻き付けるようにして、急激な力を加えずゆっくりと転がすように曲げていくと割ときれいにできます。もちろん、金型で成形したようにはいきませんが、多少の凹凸があった方が現像液の流れる隙間になって良いかも知れません。

 ホルダー両端の折り返してあるところにフィルムの端を入れると、フィルムが元に戻ろうとする力でホルダーに固定されます。ホルダーの中央部が内側に山折りしてあるのは、水分を含んだフィルムが柔らかくなってホルダーに張り付いてしまうのを防ぐためです。
 また、ステンレス板の下側を若干短くして、両端を折り返したときに斜めになるようにしていますが、これはパターソンの現像タンクが上にいくにしたがって内径がわずかに大きくなっており、それに合わせるためです。
 とはいえ、それほど精密に加工する必要はないので、現物合わせといった感じです。

 実際に4×5判シートフィルムを入れるとこんな感じになります。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー(フィルムを入れた状態)

 フィルムの乳剤面が内側になるようにホルダーにはめ込みます。

 このホルダーを2枚作って、現像タンクの中に向かい合わせに入れます。
 その状態が下の写真です。

▲PTP115とシートフィルムホルダー

 ホルダー自体は現像タンク内でどこにも固定されていませんので、倒立撹拌を行なえば多少は動くと思いますが、特に問題はないと思います。また、2枚のホルダーの折り返した両端同士が接しているので、動くとしても円周方向であり、現像タンクの中心方向に動くことはありません。

 なお、ステンレス板の表面はとても滑らかですが端面や角はざらついていたり尖っているので、フィルムを傷めないためにも、サンドペーパーなどで出来るだけ滑らかにしておきます。
 また、油などを落とすためにアルコールや中性洗剤できれいに洗っておきます。

回転撹拌用の羽根

 パターソンの現像タンクは、中央にセンターコラムと呼ばれる回転撹拌用のパイプ(筒)を入れないと光が入り込んでしまうのですが、通常はこのセンターコラムにリールを差し込み、回転撹拌を行ないます。つまり、リール(フィルム)を回転させる仕組みになってるわけです。
 しかし、今回のようにリールを使わずにフィルムがホルダーとともにほぼ固定状態ですので、ここにセンターコラムだけを入れて回転させてもほとんど意味がありません。倒立撹拌を行なえば何の問題もありませんが、せっかく回転撹拌できるようになっているので使えるようにしてあります。

 上の写真でわかると思いますが、2枚のフィルムを入れると現像タンクの中央にレモン型の空間ができます。この空間を利用して撹拌用の羽根を回転させるようにしています。
 羽根の部分は35mmフィルムのケースとアクリル板、そしてそれを固定するステンレス板で自作しています。

▲PTP115用センターコラム(右)と撹拌用の羽根(左)

 フィルムケースの素材は弾力があるので、回転撹拌用のセンターコラムに抜き差しできるようにするためにはうってつけです。
 この羽根をセンターコラムに装着して、通常の回転撹拌のようにすれば現像タンク内で羽根が回転して水流が発生します。フィルムを回転させるのではなく、現像液を撹拌するという方式です。
 もちろん、倒立撹拌でも全く問題はありません。

▲センターコラムに撹拌用の羽根を取付けた状態

現像上のトラブルもなく、問題なく使える

 実際にこれを作ったのは4~5年前で、現像するフィルム枚数が少ないときはこれを使っていますが、これまでに現像ムラなどのトラブルは一度もおきたことがありません。
 最初は、フィルムがホルダーから外れてしまうのではないかと心配もしましたがそんなこともなく、回転撹拌しても倒立撹拌してもしっかりと保持されていました。

 また、実際に使ってみて感じたのは、フィルムをホルダーにはめ込むのが実に簡単ということです。ホルダーにはめる際は暗室やダークバッグの中などの真っ暗闇で行なうわけですが、構造が単純なだけに変なところにはまってしまうこともなく、手探りでも簡単に行なえます。
 唯一、注意をするとしたら、フィルムの裏表を間違えないようにするということぐらいでしょうか。実際に裏表を反対にした状態で試したことはありませんが、乳剤面の水流が不十分で現像ムラが起きる可能性は考えられます。

 なお、一回に必要な現像液の量は500mlです。

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 回転撹拌をあきらめれば、4枚を同時に現像できるようなホルダーも考えられますが、形状が複雑になるので加工精度が求められ、手作業で製作するのは難しいかも知れません。一度に多くの枚数を処理できるのは効率的ですが、少しずつ現像の条件を変えたいというときにはこのほうが無駄がなくて便利かもしれません。

(2022.5.14)

#パターソン #PATERSON #フィルムホルダー #モノクロフィルム

初めてのARISTA EDU ULTRA 200 モノクロフィルムの使用感

 日頃、私が使用しているフィルムのおよそ8割はリバーサルで、残りの2割ほどがモノクロフィルムになります。いまやリバーサルフィルムは種類が激減し、選択肢がないに等しいですが、モノクロフィルムはこのデジタル全盛の時代においても海外製品を中心に種類も比較的多くそろっています。
 私はいろいろなフィルムをあれこれ使うことはあまりなく、気に入ったものを使い続けるタイプです。モノクロフィルムも常用しているのはイルフォードのDELTA100、富士フィルムのACROS Ⅱ、ローライのRPX25など、3種類ほどですが、今回、ARISTA EDU ULTRA 200を初めて使ってみました。

前々から、ちょっと気になっていたモノクロフィルム

 ARISTA EDUはチェコ製のモノクロフィルムで、もともとULTRA 400という製品が発売されており、今から数年前にULTRA 100とULTRA 200が追加されたようです。写真学校の学生など向けに価格を抑えるという戦略をとっていたらしく、「EDU」という名前はそこから来ているとのことです。私が購入した時も120サイズが930円くらいだったので、イルフォードのDELTA100や富士フィルムのACROSⅡに比べると、確かに安いという印象があります。

 私がいろいろなフィルムに浮気をしないのは、リバーサルフィルムは選択肢がないということも理由の一つですが、モノクルフィルムの場合はちょっと違って、フィルムによって特性が違い過ぎるのと、それに相まって現像の仕方で仕上がりがずいぶん変わってくるため、自分が気に入る仕上がりにたどり着くまでにかなりの時間と手間とお金がかかってしまいます。そのため、一度気に入ったフィルムと現像を見つけると、それを使い続けるということになります。

 そんな背景はありながら、ISO100やISO400に比べると種類が少ないISO200という感度が気になったからかも知れません。
 新宿のカメラ店にいそいそと出向き、120サイズのフィルムを2本だけ購入してきました。

現像はイルフォードのID-11を使用

 ARISTA EDU ULTRAシリーズの3種類のうち、ULTRA 100とULTRA 400はトラディショナルタイプですが、ULTRA 200はT粒子タイプらしいです。そのため、推奨現像液は「T-MAX」となっていますが、手元に持ち合わせがなかったので、今回はイルフォードのID-11を使用しました。
 希釈は1:1、現像時間は20℃で9分としました。

 現像しようと思い、リールにフィルムを巻きつけるときにはじめて気がついたのですが、フィルムがすごく薄い感じがしました。35mm判フィルムやシートフィルムと違ってブローニーフィルムの場合は裏紙がついているので、現像のときまで直接フィルムを触ることはありません。
 私が使い慣れているフィルムはパリパリした硬い感じがしますが、このフィルムはフニフニとした感じです。
 イルフォードDELTA100はフィルムベースの厚さが0.11mm(データシートより)らしいですが、このフィルムの厚さを測ってみたところ0.1mmを下回っています。マイクロメータがないので正確な厚さはわかりませんが、DELTA100に比べると薄いのは確かなようです。

 そして、現像後の現像液をみてビックリ、現像液がメロンソーダというか、バスクリンを入れ過ぎたお風呂のような見事なエメラルドグリーン色になっていました。
 現像液はワンショットで廃棄ということはほとんどなく何度か使い回しをしますが、この色を見ると次回も使えるのかしらと思ってしまうくらいです。

 もう一つ驚いたのがフィルムがクリンクリンにカールすることです。乾けばフラットになるかと思ったのですがそんなことはなく、2コマずつカットしてスリーブに入れるにも苦労するくらいです。フィルムを入れたスリーブ全体が湾曲するくらいですから、かなり強力にカールしているのがわかります。

 そんな驚きの連続ではありましたが、何とか無事に現像ができました。

コントラストは低めだが、なだらかな階調

 今回、撮影に使用したカメラはPENTAX67、レンズはSMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 です。

 まず一枚目は、新宿中央公園で撮影した「絆」像です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F5.6 1/125 ARISTA EDU 200

 順光に近い右側からの斜光状態での撮影です。バックのビルの壁面にも光が当たっているため、全体的にフラットになりがちな状況です。
 微粒子をうたっているだけあって、まずまずの解像度が得られているのではないかと思います。
 また、シャドー部もベタッとした感じはなく、ディテールも残っています。

 一方、コントラストは若干低い印象を受けます。被写体や光の状況によって異なりますが、個人的にはメリハリが不足しているように感じます。しかしこれは、現像液や現像時間によって変わってくるかも知れません。

 昼休みの時間帯ということもあり、芝生の上には多くの人がいたので急いで撮影したため、像に角が生えてしまったのはご愛嬌ということで。

 次の写真は公園脇の交差点を撮影したものです。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F11 1/250 ARISTA EDU 200

 一枚目の写真に比べると斜光の度合いが強いのと陰になっている部分が多いので、全体としてコントラストが高めに見えます。
 しかし、ビル(都庁)の壁面や路面、木々の枝などを見るとわかりますが、コントラストは決して高くはありません。

 この写真は画素数を落としているのでわからないと思いますが、ネガ原版をルーペで見ると木々の枝先も認識できるので合格点とは思いますが、特別に解像度が高い印象は受けません。

 もう一枚、公園内の雑木林を撮影した写真です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F11 1/125 ARISTA EDU 200

 画面左側から光が差し込んでいる状況です。
 中央左にある2本の木の幹や、直接光が当たっていない地面なども黒くつぶれることなく表現されていますが、やはり全体の印象はコントラストが低めといった感じです。

 まったく同じ場所ではありませんが、この雑木林をイルフォードのDELTA100で撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F11 1/30 ILFORD DELTA100

 ULTRA 200と比べると明らかにコントラストが高いのがわかると思います。全体的に黒の締まった、メリハリが感じられる描写です。
 黒がくっきりと出る分、ディテールは若干犠牲になっていますが、とはいえ、墨を塗ったようなベタッとした黒ではなく、階調も出ているので立体感も損なわれていません。

 因みに、こちらのフィルムもイルフォードID-11(希釈1:1)を使用し、20℃で11分の現像をしています。

 ARISTA EDU ULTRA 200、イルフォードのDELTA100と比べるとその違いが明確にわかりますが、なだらかな階調表現ができるフィルムではないかと思います。パキッとしたメリハリの利いた画にはなりませんが、ディテールを犠牲にすることなく、柔らかな表現ができるフィルムといったところでしょうか。
 ポートレートとか花とか、あるいは、のどかな風景の撮影などには向いているかも知れません。

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 このフィルムを使った撮影を終えてから10日ほど経ったある日、フィルムを購入した新宿のカメラ店に立ち寄ったところ、何と、このフィルムの価格が1,300円に値上がりしていました。もちろん、ULTRA 100もULTRA 400も同じ1,300円です。イルフォードのDELTA100をはるかに超えて、ローライのRPX400と同じ価格になってしまいました。驚きです。
 もはや、学生向けのフィルムとはいえなくなってしまった感じです。

(2022年4月4日)

#アリスタ #ARISTA_EDU #PENTAX67 #ペンタックス67 #モノクロフィルム

久しぶりのモノクロフィルムのリバーサル現像 イルフォード DELTA100

 ビューティーモデル1という骨董カメラの試し撮りの際、マミヤ6 MFにモノクロフィルムを入れて一緒に持っていきました。その時に撮った写真をリバーサル現像してみました。
 リバーサル現像は通常のネガ現像よりもプロセスが多くて手間がかかるのであまりやらないのですが、カラーリバーサルほど難しくはないし、リバーサルで見るモノクロも味わいがあるので、久しぶりにやってみました。

イルフォードの推奨プロセスで処理

 今回、撮影に使ったフィルムはイルフォードのDELTA100 PROFESSIONALです。シャープネスでキリッと締まった画像が得られるので、個人的には気に入っています。
 ということで、現像はイルフォードの推奨プロセスを参考に行ないました。イルフォードから提示されているプロセスは下記の通りです。

  1) 第一現像 : 20度 12分
  2) 水洗   : 20度 5分
  3) 漂白   : 20度 5分
  4) 水洗   : 20度 1分
  5) 洗浄   : 20度 2分
  6) 水洗   : 20度 30秒
  7) 再露光  : 片面30秒
  8) 第二現像 : 20度 6分
  9) 停止   : 20度 30秒
  10) 水洗   : 20度 30秒
  11) 定着   : 20度 5分
  12) 水洗   : 20度 10分
  13) 水滴防止 : 20度 30秒
  14) 乾燥

 なお、イルフォードの推奨プロセスには停止工程と水滴防止工程は記載されていませんが、これらは通常の現像でも行なう工程なので今回も入れています。

 現像液は「ブロモフェン」または「PQユニバーサル」が推奨となっていますが、手元になかったので今回はシルバークロームデベロッパーを使用しました。
 漂白液は過マンガン酸カリウム水溶液と希硫酸(硫酸水溶液)の混合液、洗浄液はピロ亜硫酸ナトリウム水溶液を使っており、これらはイルフォード推奨プロセスと同じです。
 また、定着液はシルバークロームラピッドフィクサーを使いました。

 全工程にわたり水温20度を保つというのは結構難しいので、いちばん影響のある第一現像だけは極力、20度に近い状態を保つように気をつけましたが、それ以外は±1~2度の変動があると思います。

黒が締まったイルフォードらしい描写

 リバーサル現像後のスリーブの写真です。ライトボックスにのせた状態で撮影しています(全12コマ中の9コマ)。

▲リバーサル現像後のスリーブ(ライトボックス上で撮影)

 モノクロフィルムを使うときはモノクロ用のフィルター(Y2とかYA3など)を装着することが多いのですが、今回はいずれも使用していません。
 コントラストもまずまずで、黒もイルフォードらしい感じが出ていると思います。

 下の写真は東京都庁の都民広場にある彫像「天に聞きく」です。

▲Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/30 DELTA100

 彫像にも建物にも陽があたっていないので全体的に軟調な感じがしますが、彫像のエッジは綺麗に出ているのではないかと思います。手振れが心配だったので絞りはF5.6で撮影していますが、もう一段くらい開いた方が良かったようです。

 次の写真は、新宿にある住友ビルの一階部分の天井です。屋根を支える鉄骨が描くラインが綺麗です。

▲Mamiya 6 MF G 50mm 1:4 F4 1/15 DELTA100

 屋内での撮影なのでコントラストはあまり高くありませんが、屋根から差し込む光で鉄骨に模様が描かれていますが、そこそこ綺麗に表現できていると思います。
 太陽が西に回り込んでこの屋根に光が差し込むと、よりアーティスティックな模様が浮かび上がるのではと想像します。

 さて、もう一枚は公園での一コマです。

▲Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/250 DELTA100

 斜光状態なのでコントラストが高めになっています。中央の地面は落ち葉が白く輝いており、飛び気味です。左右にある2本の木の幹は日陰になっていますが、ぎりぎりディテールが見て取れる感じです。

ネガ現像とリバーサル現像の比較

 同じフィルム(イルフォード DELTA100 PROFESSIONAL)で撮影し、普通にネガ現像したものとリバーサル現像したものとで違いがあるかということで、下の写真はネガ現像したものです。

▲Mamiya 6 MF G 50mm 1:4 F8 1/60 DELTA100

 電話ボックスを撮影したもので、同じ場所や同じ条件で撮影したわけではないので比較しにくいですが、ネガ現像したほうが黒の締まりが強いように感じます。光の条件が違うのでそう感じるのかもしれませんが、現像による影響もあるかも知れませんし、スキャナで読み取る際はネガ設定とポジ設定と異なりますので、その影響も考えられます。
 やはり、リバーサル現像の方が難しく、扱いを慎重にやらないと良い結果が出ないようです。

 参考に、リバーサル現像とネガ現像した写真の部分拡大を掲載しておきます。
 下の写真の1枚目がリバーサル現像(新宿住友ビル)の天井部分を拡大したもの、2枚目がネガ現像(電話ボックス)の自転車のハンドル部分を拡大したものです。

▲新宿住友ビルの写真の部分拡大
▲電話ボックスの写真の部分拡大

 粒状感やシャープネスなどに大きな違いは感じられません。

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 手間のかかるリバーサル現像ですが、スリーブをライトボックスで観賞できるのは便利です。それ以外にリバーサル現像するメリットはほとんど思いつかないのですが、いつもとは違うフィルムで撮影したような気持ちになれるので、気分転換にはなるかも知れません。

(2022年2月4日)

#イルフォード #ILFORD #モノクロフィルム

エプソン EPSON GT-X970 フラットベッドスキャナ

 もっぱらフィルムでの撮影をしている私にとって、スキャナはなくてはならない存在です。現像からあがってきたフィルムをパソコンに取りむためには、スキャナを使わざるを得ません。

GT-X970

 私が使っているスキャナはEPSON GT-X970というフラットベッド型のスキャナで、もう10年以上使っています。筐体は結構でかいです。フィルム専用のスキャナというわけではありませんが、私はフィルムスキャン以外にはほとんど使ったことがありません。フィルム専用のほうが性能的にも優れているとは思いますが、私が使っているフィルムはブローニーやシートフィルムが主体であるため、それ用のフィルム専用スキャナなどは高額すぎて手が出せません。

EPSON GT-X970

ブローニー用フィルムホルダー

 GT-X970はすでに製造が終了し、現在は後継機のGT-X980になっています。光源がLEDになったりアンチニュートンリングガラスを採用したり、随所でバージョンアップされているようですが、一度にスキャンできるフィルムの枚数が減ってしまっているのが残念な点です。GT-X970はフィルムサイズに応じて専用のフィルムホルダーが用意されており、1回のスキャンで66判で6コマ、67判~69判だと4コマ、4×5だと2コマまで可能です。私は35mmフィルムはあまり使いませんが、35mmのスリーブだと1回で24コマのスキャンができるので、大量に取り込む方にとってはありがたいと思います。

EPSON GT-X970 ブローニーフィルムホルダー

フィルムスキャンを依頼した場合の費用

 撮影したフィルムのすべてをスキャンしてデジタル化しているわけではありません。額装するために大きくプリントするものや、経年劣化させたくないものなどをデジタル化して保存しています。専門の業者さんにお願いした方が機器も技術も格段に優れているのでしょうが、いかんせんコストがかかりすぎます。例えば、富士フィルムが提供しているスキャンサービスだと、ブローニーを1,000万画素でお願いした場合、1コマ550円もかかってしまいます。ブローニー(67判)を1,000万画素ということは1,280dpiほどであり、大伸ばしする際には解像度が低すぎます。
 67判のポジから半切(356mmx432mm)サイズにプリントする場合、印刷時の解像度を600ppiにしようとすると約8,700万画素必要であり、これはフィルムを約4,000dpiでスキャンしなければならないということです。プリントには半分の300ppiでも印刷品質の違いは多分わからないのではないかと思いますが、仮に300ppiで印刷するにしても、約2,000dpiでのスキャンが必要になります。

GT-X970のスキャン時間

 というような事情で、とにかく手間がかかるのですが自分でスキャンしているわけです。保存用には6,400dpiでスキャンし、TIFF形式でファイリングしています。そんな解像度は必要ないと思われるかもしれませんが、いろいろ加工したり、また将来どのような使い方をするかわからないからということと、何といっても6,400dpiでスキャンしたポジは細部に至るまで見事に再現されているということが理由です。
 しかし、67判1コマを6,400dpiでスキャンすると、その画素数は約2億5,000万画素になり、これをTIFF形式にするとファイルサイズは1.4GBを越えてしまいます。3,200dpiと6,400dpiの比較をしてみると以下の通りです。
            <3,200dpi>   <6,400dpi>
  スキャン時間     3分10秒    5分40秒    ※DIGITAL ICE はオフ
  画素数        6,200万    2億4,700万
  ファイルサイズ(TIFF) 350MB     1.48GB

 他のフラットベッド型スキャナでフィルムスキャンを行なったことがないので比較して論ずることはできませんが、私ような使い方をしている限りにおいて、このGT-X970は十分な性能があると思います。ただし、スキャンの解像度を上げた場合、ピントのズレが目立ってきます。これに関してはたくさんの方が投稿されております。機器により個体差があるようですが、スキャナのガラス面からフィルム面までの距離によってピントの合い方が異なるということは共通しているようです。

フィルムホルダーの嵩上げで画像がシャープに

 私も自分のスキャナで試してみましたが、ブローニー用のフィルムホルダーの場合、1.2mm嵩上げした時に最もシャープな画像が得られました。一方、4×5用のフィルムホルダーの場合は全く嵩上げしない状態で最もシャープになりました。3mmくらい嵩上げした時が最もシャープになるというような記事もありますので、かなり個体差があるのかもしれません。
 ちなみに、フィルムホルダーのスペーサーの向きを変えることで若干の嵩上げはできるのですが、スペーサーだけで1.2mmは上げられないため、私は1.2mmの板を張り付けて嵩上げしています。

EPSON GT-X970 ブローニーフィルムホルダー 1.2mm 嵩上げ

 このスキャナはお手軽にスキャンができる全自動モードやホームモードと、細かな設定ができるプロフェッショナルモードがありますが、フィルムのスキャンにはプロフェッショナルモードを使います。カラーバランスやカラーパレット、ヒストグラムの調整などができます。標準の設定から大きく変更することはあまりありませんが、フィルムをスキャンする時点では可能な限り、ポジ原版に忠実な状態にしたいと思っていますので、若干の調整を行なうことはあります。私のスキャナはマゼンタ系が強くでる傾向がありますので、カラーバランスを調整することが比較的多いです。できるだけポジをライトボックスで見たときに近い状態でスキャンしたいという理由です。

フィルムスキャナの将来は?

 フィルムスキャンに限らず、今の時代、スキャナの需要はかなり低いと思われます。私のようなフィルムに拘っている輩からすると、フィルムスキャナがなくなってしまうと、モノクロは自分でプリントできますが、ポジのプリントやデジタル化はお店にもっていかざるを得なくなります。ポジやネガをデジカメでデュープする方法もありますが、やはり画質が落ちてしまいますし、スキャナ並みの画質を得ようとするとかなりの手間がかかってしまうので積極的になれません。
 そんなマイノリティーにとって、今でもフィルムスキャナが製造販売されているということは言葉では言い表せないくらいありがたいことです。メーカーさんにとって、マイノリティーのためにスキャナを製造販売したところで、採算は取れていないのではないかと思いますが、継続していただけることを願うばかりです。

(2020.8.7)

#スキャナ #エプソン #EPSON