ニッコウキスゲ咲く、夏の霧ヶ峰高原 花の旅

 長野県の中部にある霧ヶ峰高原は、車山を最高峰に標高1,500mから1,900mに広がる比較的起伏の緩やかな高原で、八ヶ岳中信高原国定公園に指定されています。大きな樹林はほとんどないため、360度の展望がききます。
 下界ではうだるような暑さでもここは爽やかな風が通り抜け、まさに別世界といった感じです。
 梅雨明けの7月中旬ごろから一斉に咲き始め、高原全体を黄色に染めるニッコウキスゲは有名ですが、湿原も多く存在するため、他にもたくさんの高山植物があることでも知られています。
 今年は梅雨開けが異常に早かったせいか、霧ヶ峰高原の花もだいぶ進んでいる感じですが、今回は、夏の霧ヶ峰高原で撮影した花をいくつかご紹介します。

ニッコウキスゲ(日光黄菅)

 霧ヶ峰の中でもニッコウキスゲが広範囲に群生しているのは、強清水周辺とヴィーナスの丘と呼ばれる車山肩から蝶々深山の一帯にかけてです。特にヴィーナスの丘の辺りの群生密度はとても高く、まさに一面が黄色に染まります。
 しかし、花の数はその年によってずいぶん差があり、少ない年は一面に黄色というわけにはいかず、まばらな感じのときもあります。それでもかなりの数の花が咲いているのですが、多いときの映像が脳裏に焼きついているので、余計にそう感じるのかもしれません。

 高原の高く青い空とニッコウキスゲのコントラストはとても美しく、爽やかな印象を受けますが、朝日が昇って黄色の花がオレンジ色に染まる景色も幻想的で、ほんのわずかの時間だけ見ることのできる光景です。

 下の写真は朝日が昇った直後に撮影したものです。

▲霧ヶ峰高原:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 右上にあるのが車山で、その左側に薄く見えているのが蓼科山です。
 車山の山頂には気象レーダーのドームが設置されているのですが、この時はいい具合に霧がかかってドームを隠してくれました。
 霧ヶ峰高原はその名の通り、霧の発生がとても多く、特に明け方はものすごい早さで霧が流れていくので、霧のかかり方によっては雰囲気が大きく変わってしまいます。個人的には、太陽が稜線の上に出たくらいの時の光の具合がいちばん好きで、この時に霧がどうかかっているかはまさに神頼みといった感じです。
 ニッコウキスゲは一日花のため、一つの花は一日でしぼんでしまうようなのですが、次から次へと咲くので、およそ一週間ほどはこのような見事な状態が続きます。

 近年、ニホンジカの食害や踏み荒らしによる被害からニッコウキスゲを保護するため、電気柵が設けられています。その効果もあってニホンジカの数も減少しているようです。以前は夜中に霧ヶ峰に向って車を走らせていると鹿に遭遇することが良くありましたが、最近はあまり見かけなくなりました。

ウスユキソウ(薄雪草)

 亜高山帯に分布しているキク科の植物で、ヨーロッパのエーデルワイスと同じ仲間です。エーデルワイスのようなモコモコした毛がないので、薄く雪をかぶっているという例えはまさにピッタリという感じです。ウスユキソウという名前は、植物の中でも雅名の一つに数えられているようで、確かに優雅な名前ではあります。
 同じ仲間のミネウスユキソウやタカネウスユキソウはもっと標高の高いところに咲いていますが、霧ヶ峰高原で見ることができるのはこのウスユキソウだけです。

▲ウスユキソウ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 2X F5.6 1/30 PROVIA100F

 草原のようなところでも育成していますが、上の写真のような岩礫地でよく見かけます。生育環境がわかるように、両側の岩を多めに入れてみました。
 どちらかと言えば地味な花で、赤や黄色の花のように目を引くわけではありませんが、見つけた時はつい立ち止まって見てしまう、そんな魅力のある花です。

 あまり広い範囲を写し込むと雑然とした感じになってしまうので、少し離れたところから望遠レンズを使って撮影しています。ぼかし過ぎて背景が何だか分からなくなってしまわないよう、適度な距離と絞りを選んでいます。

シシウド(獅子独活)

 背丈が2mを超えるほど伸びるセリ科の植物です。霧ヶ峰高原では良く見かけますし、他の植物に比べて抜きんでて大きいのでとても目立ちます。
 花火のように広がった花にはたくさんのハチやハナアブがひっきりなしに来ており、花の上はとても賑わっています。

▲シシウド:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F11 1/250 PROVIA100F

 上の写真は、太陽がちょうど南中にかかるころに撮ったものです。
 シシウドの根元に屈みこみ、カメラを上に向けて太陽をもろに入れて撮影しました。太陽を直接入れているのでかなりのプラス補正をしています。シシウドが白くなりすぎないように、かといってシルエットになってしまわないようにということで露出値を決めましたが、完全にシルエットにしてしまっても良かったかもしれません。

 このように真夏の太陽を直接入れる場合、レンズやカメラがダメージを受けてしまうので短時間で撮り終えてしまわねばなりません。また、これは短焦点(45mm)レンズを使っていますが、それでもファインダーを長く覗いていると目をやられてしまうので注意が必要です。

 シシウドは花が終わると結実し、やがて本体は枯れてしまいます。茶色くカサカサとした茎が折れているのを見ると、秋が来たなという感じがします。
 なお、春の新芽は食べられるらしいですが、私は食べたことはありません。確かに芽が出てきたところはウドとよく似ていて、間違えて採ってしまいそうです。

ハクサンフウロ(白山風露)

 霧ヶ峰高原ではニッコウキスゲと並んで人気のある花です。
 小さな花ですが、赤紫色の花はとてもよく目立ちます。背丈は30~50cmほど、他の植物の中に埋もれるようにして咲いています。花の直径は3cmほどで、花芯の辺りが白くなっているのが特徴的です。小さな花ですが結構たくさんの花をつけるので、宝石をちりばめたようです。

 このほかにグンナイフウロやタチフウロ、アサマフウロなどのフウロソウの仲間を何種類か見ることができます。

 群生している中から一輪だけを撮ったのが下の写真です。

▲ハクサンフウロ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200m 1:4 EX3 F4 1/125 PROVIA100F

 背丈の低い花なので、どうしても俯瞰気味の撮影が多くなってしまうのですが、ひょんと飛び出した一輪を見つけたので下から見上げるようなアングルで撮りました。
 花の傷みもなく綺麗だったのと、茎が描くラインがとても美しかったので、それを強調するように背景は極力シンプルにしました。バックを大きくぼかすように接写リングを使っています。

 あまり明るくし過ぎると雰囲気が損なわれてしまうので、露出はアンダー気味にしています。
 また、花弁にわずかな朝露が残っていると思いますが、あっという間に消えてしまうので、のんびりと構えてはいられません。
 下半分が紫色にぼやーっとしていると思いますが、これはバックに咲いているハクサンフウロのボケです。

 因みに、こんな感じで咲いています。

▲ハクサンフウロ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 45mm 1:4 F22 1/60 PROVIA100F

ホソバノキソチドリ(細葉の木曽千鳥)

 野性の蘭の一種で、深山の草原のようなところに自生する多年草です。
 背丈は20~30cmほどと小さく、草むらに咲いて、しかも花が黄緑色なのでよく探さないと見つかりません。花は小さいのですが非常に複雑な形状をしており、いかも蘭といった感じです。五線紙の上に書かれた音符のようにも見えます。
 同じ仲間にトンボソウというのがあり、非常によく似ているのですが、距がピンと跳ね上がっているので何とか見分けがつきます。霧ヶ峰高原ではトンボソウの方が圧倒的に個体数が少ないと思われます。

 草むらで見つけたホソバノキゾチドリ、花の数は多くありませんが撮ってみました。

▲ホソバノキゾチドリ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200m 1:4 EX3 F4 1/60 PROVIA100F

 何しろ、これ以上ないというくらい花が地味なので、草むらの中からこの花を浮かび上がらせるのは結構大変です。
 光が入り込んでいない方がバックは柔らかくなるのですが、花自体も平坦な感じになってしまいます。バックが少々うるさくなってしまいましたが、光が当たってコントラストがついているところを狙ってみました。それだけだとアクセントに欠けるので、隣に玉ボケを入れてみました。
 右側からスーッと伸びている細い葉っぱを入れるのは迷ったのですが、そのままにしておきました。

 このほかにも野性の蘭の仲間のミズチドリやテガタチドリ、クモキリソウなども非常にまれではありますが、見かけることがあります。いずれも多年草なので、見つけると翌年も同じ場所に咲くはずなのですが、数年後に訪れてみたが見当たらないということもよくあります。盗掘されてしまうのかもしれません。

シュロソウ(棕櫚草)

 湿り気の多い場所を好むらしく、湿原では割とよく見かけます。
 時に群生することもあり、そこそこ見応えはありますが、花の色はお世辞にも美しいとはいえません。
 茎は1m近くまで伸びますが、花はとても小さくて5mmほどしかありません。この小さな花が茎の周りにびっしりとついている様は、試験管を洗うブラシのように思えてなりません。
 強い毒性を持った植物というのは多くありますが、このシュロソウも根茎に毒があるらしいです。

 この花、日中はどのように撮ってもさえない写真になってしまうので、朝日が差し込んでいる状態で撮影してみました。

▲シュロソウ:PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200m 1:4 2X F4 1/125 PROVIA100F

 前方から朝日が差し込んでいる状況で、お世辞にも美しいと言えない花も、だいぶ鮮やかになってくれました。朝日なので色温度が低く、かなり赤みが強くなっていますが、玉ボケも手伝って朝の感じは出ているかと思います。
 写真ではわかりにくいかも知れませんが、花弁はかなり肉厚です。この厚い花弁を透過する強い光、そして花が密集しているため、輪郭がわかりにくくなってしまいました。もう少し早い時間帯、日の出直後あたりだと朝露をまとっているので、もっと風情のある写真になったと思います。

 小さくてよくわかりませんが、虫が張り付いています。

マツムシソウ(松虫草)

 亜高山帯で広く見ることができます。薄紫色の花はとても涼しげな感じがして、群生したマツムシソウが風になびいている光景はとても風情があります。
 低山や平地でも見ることがありますが、標高の高いところの花に比べると花弁の数が少なく、どことなく貧相な印象を受けます。
 花が終わると花床が盛り上がって、まるでイガクリ坊主のような愛嬌のある姿になります。
 日本固有種ですが、多くの都道府県で減少傾向にあるらしく、レッドリスト入りした絶滅危惧種になっているようです。

 下の写真は夕暮れに近づいてきたころ、マツムシソウをシルエットで撮影したものです。

▲マツムシソウ:PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 6×7 105m 1:2.4 F22 1/125 W10 PROVIA100F

 そのままで撮ると空が白くなりすぎてしまうので、色温度変換フィルター(W10)を装着しています。
 あまりたくさん群生しているとゴチャゴチャしてしまうので、数本の茎がいい塩梅に伸びている株を選んで撮りました。より、夕暮れの感じが出せればと思い、傍らに草を入れてみました。
 太陽を入れていますが、前で紹介したシシウドの写真と違い、太陽高度が低くなっているのと、薄く雲がかかっているのとで、強烈な夏の太陽の印象はありません。
 また、この時は持ち合わせていなかったのですが、軽くレフ板をあてて、マツムシソウのシルエットを少し柔らかくするのもありだと思いました。

 この時期の霧ヶ峰高原は、一年でもっとも賑わう季節ですが、夕暮れが近づくと人の数のずいぶんと減り、撮影するにはありがたい時間帯です。

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 霧ヶ峰高原の夏は本当に短くて、8月の声をきくとそろそろ秋の気配が漂い始めます。そして、咲く花の種類も夏の花から秋の花へと一気に入れ替わります。秋の花は地味な色合いのものが多いのに加えて、8月になると訪れる人の数もぐっと減るので、うら寂しさを感じるほどです。
 8月の半ばごろに、今度は秋の花を撮りに訪れれみたいと思っています。

(2022.7.24)

#霧ヶ峰高原 #ペンタックス67 #PENTAX67 #プロビア #PROVIA

秋間梅林(群馬県安中市)で満開の梅を撮影

 秋間梅林は群馬県安中市の秋間川上流の丘陵地帯に広がる梅林で、「ぐんま三大梅林」の一つと言われているようです。その広さは50ヘクタールにも及ぶらしく、変化に富んだ景観を見ることができます。都心から車だと、高速道路を使っておよそ2時間ほどの道のりです。
 秋間梅林は実を収穫することを目的に栽培されている梅林で、その多くが白梅です。例年、3月上旬から中旬にかけて見頃を迎え、折り重なるように咲く姿は圧巻です。
 今年、3年ぶりに秋間梅林を訪れてみました。

観梅公園一帯の梅林

 一般に秋間梅林というと、この観梅公園一帯を指すようです。小高い山の頂付近に観梅公園があり、そこを中心に南側斜面、東側斜面、北側斜面に梅林が広がっています。付近には駐車場も完備されており、車で行くこともできますが、私はいつも東側の県道122号線(八本松松井田線)沿いにある駐車場に車を止めて、歩いて山を登っていきます。山といってもなだらかな遊歩道が整備されているので、きつい思いをしなくても上っていくことができます。

 下の写真は上り口にある駐車場から撮影した一枚です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 200mm 1:4 F22 1/8 PROVIA100F

 この辺りは梅の畑というよりは梅の公園といった感じで整備されており、紅梅もたくさん見ることができます。山の北側斜面になるので頂上付近に比べると花の時期は少し遅いようです。
 写真の左方向から朝日が差し込んでおり、色温度が低いため、全体的にちょっと赤みを帯びています。
 まだ早朝なので人影はほとんどありませんが、日中になるとこの遊歩道もたくさんの観光客が行き交います。左上の方には東屋もあるので、梅見には最高の場所です。

 雑木林全体はまだ冬枯れの状態ですが、それと満開の梅を対比することで早春の感じを出そうと狙ってみました。
 写真ではわかりにくいかも知れませんが、満開の一歩手前といったところで、これくらいの時の方が花の色は綺麗に出ると思います。

 さて、次は登っていく途中で見つけた白梅の老木です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 55mm 1:4 F22 1/30 PROVIA100F

 奥の方に広がっている収穫用に栽培されている木に比べるとかなり背丈も高く、枝も伸び放題という感じですが、何とも言えない風格というか、力強さを感じます。たくさんの花をつけており、まだまだ樹勢も衰えていないようです。
 畑の中の所どころにこのような老木があり、素晴らしい景観をつくりだしてくれています。

 梅の木の高さを出すように、右側の木の真下に近いところからの撮影です。
 花の白い色が飛ばないようにギリギリまで露出をかけていますが、下の三分の一はもう少しアンダーの方がこの写真の雰囲気は上がると思います。

 もう一枚、観梅公園のある頂上付近から東側斜面を望んだのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 45mm 1:4 F22 1/15 PROVIA100F

 短焦点レンズで梅畑を広く入れると空が広く入り過ぎてしまうので、梅の枝を覆いかぶさるように入れています。梅の枝は曲がりくねっているものが多いので、形のよさそうな枝を選んでみました。
 この場所は秋間梅林という丘陵地帯を最も感じられる場所だと個人的に思っており、起伏にとんだ地形が見渡せるのでお気に入りの場所です。
 もう少しカメラアングルを下げたいところですが、そうすると家が何件も入り込んでしまうのでこれくらいが限界です。下の方にこっそりと屋根が写っているのがわかるかと思います。

 観梅公園一帯は白梅だけでなく紅梅の木もたくさんあり、華やかな風景を見ることができます。

 なお、観梅公園までの道路は狭いので、車で行かれる場合は運転に注意が必要です。

飽馬神社周辺の梅林

 秋間梅林の中心は観梅公園と呼ばれる小高い山の一帯ですが、そこから北東方向に少し行ったところに飽馬神社という小さなお社があります。この辺りは農家の方が栽培している梅畑が広がっており、山の南斜面に開けているのでとても眺望の良い場所です。天気が良ければ西の方角に妙義山を見ることができます。訪れる人もほとんどおらず、撮影にはもってこいの場所です。

 下の写真は満開の梅畑を下から見上げるアングルで撮った一枚です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-TAKUMAR67 75mm F22 1/30 PROVIA100F

 収穫用に栽培されている梅の木は枝が綺麗にそろえられており、まっすぐ上に延びている枝が印象的です。枝の密度も花の密度も高いので、非常にボリューム感があります。
 梅畑の脇に庚申塔があり、とてもいいアクセントになっています。
 また、梅の木の下の方は見通しがきくので、木の間から背景を入れて奥行きを出してみました。

 この辺りはいろいろな種類の梅が栽培されているらしく、このように白い花の他にピンクの花をつける木も見られます。ピンク色の花は温かみが感じられますが、白いほうが花の数が多いのか、ボリュームがあります。

 同じく、飽馬神社の南側にある梅畑を撮影したのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 200mm 1:4 F8 1/125 PROVIA100F

 ここから見る梅畑がいちばん密集しているように感じます。高いところから見下ろすポジションなので、一層そう感じるのかもしれません。

 全体的に柔らかな感じを出すように、半逆光気味になる位置から絞りを浅くしての撮影です。手前の木にはピントを合わせていますが、奥の方の木々はわずかにピントを外しています。霞がかかっているというか、フレアがかかっているというか、そんな感じを狙ってみました。
 白梅に交じって所どころにピンクの梅も見られますが、その色の変化があることで、画が単調になるのを防いでくれています。

 この写真の右方向に妙義山が見えます。妙義山をバックにした梅林も魅力的ですが、脚立などを使って高い位置から撮らないと構図が決めにくいのが難点です。
 また、この一帯は観光客用に整備されているわけではないので駐車場などはありません。車は道路脇の広いところに、邪魔にならないように止めておくしかありません。

群馬フラワーハイランド

 秋間梅林から北西に車で5分ほど行ったところに群馬フラワーハイランドがあります。
 ここは個人の方が長年にわたって整備されてきた花の楽園で、特に1月から3月にかけて咲く寒紅梅が有名ですが、四季折々の花を見ることができる場所です。秋間梅林のすぐ近くですので、ぜひ訪れてみたい場所です。

 まずは白梅を撮った一枚です。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 PROVIA100F

 さほど大きくない木なので花の数も多くありませんが、ぽつぽつと咲いている姿が印象的でした。暗い背景に白い花だけでは寂しすぎる感じがしたので寒紅梅を入れてみましたが、ちょっと紅が強すぎたようです。
 白梅を浮かびあがらせるために長焦点レンズを使い、絞り開放で撮っています。
 また、明るくなりすぎないように露出はアンダー気味にしました。

 画全体が締まるようにと思い太めの黒い幹を入れてみましたが、右側の幹はない方が良かったように思います。
 青空に抜いた白梅は爽やかな感じがありますが、このようなシックな雰囲気もいいものです。

 フラワーハイランドは梅だけでなく様々な花が見られますが、ミツマタもこの時期に見ることのできる花の一つです。

▲PENTAX67Ⅱ SMC-PENTAX67 45mm 1:4 F16 1/15 PROVIA100F

 高級和紙の原料になるミツマタですが、枝をものすごく広げるので、黄色の花が浮いているように見えます。まるで海を漂うクラゲの大群のようです。
 花自体は地味で、色も決して鮮やかとはいえませんが、無数に咲いているとその辺りだけぼーっと明るくなったような感じがします。

 花だけだと単調になってしまうので、太い白樺(だと思います)の幹を入れてみました。
 また、アンダー気味の方がこの花の雰囲気が出ると思い、露出は切り詰めています。

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 秋間梅林は観梅公園を中心に撮影スポットがたくさんあるので、被写体には困りません。道路沿いの畑にも随所で梅を見ることができるので、いわゆる梅園とは異なる、梅の木を入れた風景写真も撮り易いと思います。
 歩いて回るには広すぎて車がないと不便ですが、北陸新幹線の安中榛名駅の近くですので、新幹線で安中榛名まで行って、レンタカーを使うという方法もあると思います。

(2022年3月30日)

#梅 #ペンタックス67 #PENTAX67 #秋間梅林

花をきれいに撮る(5) 夏の終りから秋に咲く花

 今年(2021年)の東京の夏は短かったという印象です。9月になると急に暑さがやわらぎ、一気に秋が来たのではないかと思えるような日が続いていました。急激に秋になってしまうのではないかとも思いましたがそんなことはなく、30度を超える日も数回あったと記憶しています。
 野に咲く花も、夏の花から秋の花に変わっていくのが感じられる季節です。今回は夏の終りから秋にかけて咲く野草を紹介します。

秋桜(コスモス)

 秋といえば何といっても秋桜を外すわけにはいきません。もともとはメキシコ原産らしいですが、今ではすっかり日本の風景となっています。「風を見る花」というロマンチックな愛称を持っており、秋を感じさせてくれる代表的な花となっています。
 田圃の畦や農道の脇に咲く秋桜も風情がありますが、牧場などで大群生している姿は圧巻です。花の色が白やピンク、赤など多彩なのも華やかさを増していると思います。

 秋桜で有名な長野県の内山牧場で撮ったのが下の写真です。

▲秋桜 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 内山牧場は3haもの広大な丘陵地に100万本の秋桜が咲くお花畑です。
 青く澄み渡った空と咲き誇る秋桜のコラボレーションも見事ですが、上の写真は朝日が昇ってきたところを逆光で撮りました。正面にある林の上に朝日が顔を出して、秋桜畑に光が差し込んだ瞬間です。
 300mmの望遠レンズを使い、すぐ手前にある秋桜を大きくぼかし、かなり先の方にある秋桜にピントを合わせています。ピントが合っている範囲はごくわずかです。

 もろに逆光ですので、秋桜の本来の花の色は損なわれていますが、花一つひとつが発光しているような描写を狙ってみました。

 色温度の低い朝の光なので、全体的に赤っぽくなっています。色温度補正フィルターで赤みを落としても良いのですが、このままの方が朝の雰囲気が感じられると思います。

 太陽が正面にあるので、レンズに直接光が当たらないようにハレ切りを使っています。
 このような感じに写せるのはほんのわずかな時間です。太陽が高くなってくると光も白くなりますし、上からの光になるので、秋桜が光り輝くようにはなりません。

ガガイモ

 夏の終り頃から良く見かける野草です。つる性の植物で繁殖力がかなり強いらしく、雑草化してしまうのでどちらかというと嫌われ者のイメージがあります。
 薄紫色の星形をした、小さな可愛らしい花をつけます。細かい毛が密生しているため、砂糖菓子のような感じもします。

 下の写真は雨上がりに撮影したガガイモの花です。

▲ガガイモ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 M135mm 1:4 F4 1/125 EX3 PROVIA100F

 小さな花なので、俯瞰気味に撮ると葉っぱやつるの中に小さな花が埋もれてしまい、花の可愛らしさがまったく浮かび上がってきません。
 半逆光気味になるよう、下から見上げる感じで撮ると花の表情が出せると思います。
 そして、背景には余計なものを入れず、できるだけシンプルにした方が引き立ちます。

 この写真、太陽の位置は画面のほぼ右側の真上方向にあり、トップライトに近い感じで撮影しています。花に立体感を出すため、陰になる部分ができるような位置を選んでいます。
 そして、背景はできるだけ暗くなるように、日陰になっている林を入れました。陽が当たっている花と背景のコントラストが大きいので、真っ黒で平面的になり過ぎないよう、光が差し込む木々の隙間を右上に入れました。

 そのままでも十分に可愛らしい花ですが、水滴がつくことでみずみずしさも出ているのではないかと思います。
 なお、中望遠のレンズに接写リングをつけて撮影しています。

ヤマハギ

 秋の七草のひとつです。山地の草地などに自生しており、早いものでは7月の終り頃から咲き始めるものもあります。背丈は2メートルほどにもなり、紫色の花をびっしりとつけた姿は見応えがあります。
 観賞用として庭に植えられているのを見かけることも多いですが、鎌倉に行くと宝戒寺をはじめ、萩寺と呼ばれる萩の咲く名所がたくさんあります。

 牧草地に咲くヤマハギを撮ったのが下の写真です。

▲ヤマハギ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 こんもりと生い茂った姿も秋らしい風景ですが、萩の花を輝かせるため、早朝の太陽があまり高くなる前の時間帯に逆光気味で撮影しました。バックは草地ですが、ところどころに萩の紫色がボケて入っています。
 暗い背景を選んで、萩の花を浮かび上がらせても綺麗だと思うのですが、初秋の早朝のさわやかさを出すために、あえてハイキー気味で撮っています。
 萩だけではなんとなく締まりがないので、咲き始めたワレモコウの花を隣にいれてアクセントになるようにしてみました。
 また、あまりうるさくなりすぎない程度に、適度に玉ボケを入れています。

 バックをできるだけシンプルにするため、300mmの望遠レンズでの撮影です。
 萩の咲く風景として撮影する場合はもっと短い焦点距離のレンズを使いますが、萩をポートレート風に撮るには長い焦点距離の方が萩の表情を引き出すことができます。

イヌタデ

 畑や道端、野原などでごく普通に見ることのできる野草ですが、秋を彩る野草の一つだと思います。
 子供がままごとで、この花を赤飯に見立てたところから「アカマンマ」という名前で呼ばれたりしますが、何とも風情のある名前です。
 時に畑や田んぼを埋め尽くすほどの大群落をつくることもあります。

 日当たりの良い畑に咲いていたイヌタデを撮ってみました。

▲イヌタデ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 群落というほどではありませんが、かなり広範囲にわたって咲いていました。イヌタデだけでも配置をうまく考えれば画面のバランスはとれると思うのですが、クローバー(シロツメクサ)も所どころに見られたので、これも入れてみました。

 ほとんどが背丈の低いものばかりのため、小さな花が背景に埋もれないよう、地面にすれすれの位置からの撮影です。画面の下の方に下草を入れて、その間から顔を出している様子がわかるようにしています。
 太陽の光がちょっと強すぎる感じです。薄雲がかかって、もう少し柔らかな光になってくれると良かったのですが、ぎりぎり、初秋らしい光の感じにはなっているかと思います。

 200mmの中望遠レンズに接写リングをつけての撮影ですが、接写リングをもう一個くらいかませて、被写界深度をもう少し浅くしても良かったかと思っています。

ユウガギク

 日当たりの良い草地でよく見ることができます。漢字で書くと「柚香菊」で、かすかに柚のような香りがすると言われています。夏の終り頃から晩秋まで、比較的長い期間咲いています。
 花の大きさは3cmほどと小さいですが、たくさんの花をつけるので華やかな感じがします。

 田圃の畦に咲いているユウガギクを撮ってみました。

▲ユウガギク PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 ユウガギクの花弁の白と、周囲の草の緑のコントラストがきれいでした。花はたくさん咲いていましたが、一輪だけにピントを合わせ、他の花はアウトフォーカスにしました。
 白い花弁の質感が飛んでしまわないよう、花弁をスポット測光して露出を決めています。実際には全体的にもう少し明るい感じだったのですが、花の質感を残すためにはこれが限界といった感じです。

 いろいろな草の葉っぱが入り乱れており、雑然とした感じもしますが、そういところに咲いている状況を出したかったので、あまり整理しすぎないようにしました。

 ユウガギクによく似たノコンギクやカントウヨメナなども同じ時期に咲く仲間で、あちこちで見かけることができます。早朝、朝露に濡れた姿は趣があります。

エゾリンドウ

 秋の山を代表する多年草です。鮮やかな紫色の花色は遠目にもよく目立ちます。すっと伸びた茎はとてもスマートですが、大きめの頭がアンバランスな感じで、ちょっとユーモラスにも思えます。

 花屋さんで切り花として売っているのはこのエゾリンドウの栽培種らしいです。

 下の写真は山地の草原に咲くエゾリンドウです。

▲エゾリンドウ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/30 PROVIA100F

 標高が高いので草紅葉が始まっています。短い夏が過ぎ、秋も深まりつつある感じがする景色です。花の色が鮮やかなため、アップで撮ると華やかさが際立ちすぎてしまうので、草紅葉をいれて秋の寂しい感じが出るようにしました。
 花の密度が濃いところもあったのですが、あまりたくさん咲いているところよりもある程度の間隔をもって咲いている方が秋らしさが出ます。
 もう少し露出を切り詰めても良かったかもしれませんが、これ以上切り詰めると花の色が濁ってしまいます。エゾリンドウが咲いている風景として作画する場合はもっとアンダー気味が似合うと思います。

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 夏に咲く花と比べて秋に咲く花は色も地味目で、花の大きさも小型なものが多くなります。どことなくもの悲しさを感じることもありますが、それもまた秋に咲く花の魅力の一つだと思います。

(2021.10.12)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #プロビア #PROVIA

花をきれいに撮る(4) 夏の高原に咲く花

 梅雨が明けると日差しも強くなり、高原では花の数が一気に増えます。高原に咲く花はどちらかというと地味なものが多いですが、自然の中で力強く生きる美しさがあると思います。
 薔薇のような華やかさはありませんが、短い夏を懸命に生き、そして高原を彩ってくれる野草をご紹介したいと思います。

シシウド(獅子独活)

 夏の青空に花火のように咲くシシウドはかなり存在感があります。大きなものでは背丈が2m以上にもなりますが、セリの仲間だそうです。花には蜜が多いのか、たくさんのハチやハナアブがひっきりなしにやってきて、花の上はとても賑わっています。

 下の写真は大きなシシウドを青空に抜くアングルで撮影しました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 45mm 1:4 F8 1/60 PLフィルター PROVAI100F

 空を深い青にして花とのコントラストを高めるため、PLフィルターを使用しています。PLの効果を強くし過ぎるとペンキを塗ったようにベタッとした感じになってしまうので、半分くらいの強さにしています。
 また、夏の雰囲気を出すため、下の方に雲が湧いてくるのを待って撮りました。
 広角レンズを使っているのでパンフォーカスになりすぎないよう、できるだけ花に近づいて背景が少しボケるようにしました。
 ワンポイントで右下にニッコウキスゲを入れてみました。

 花の細部が飛ばないよう、露出は少しだけ切り詰めています。

シロバナニガナ(白花苦菜)

 黄色の花をつけるニガナの変種らしいですが、ニガナよりも少し大振りの花をつけます。といっても2cmほどしかありませんから、一円硬貨くらいの大きさです。母種となるニガナに比べると、見かける割合はぐっと少ないです。

 群落をつくってたくさんの花が咲いていることが多いのですが、一輪だけ開いている個体があったので撮ってみました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2,EX3 PROVIA100F

 花が小さいため、前後にゴチャゴチャしたものがあると花が埋もれてしまうので、望遠レンズに接写リングをつけて被写界深度をできるだけ浅くしています。
 背景が緑だけだと単調になってしまいますが、先端が赤くなった蕾がいくつかあって、これらが柔らかくボケてアクセントになってくれていると思います。

 針金のように細い茎はわずかの風でも揺れるので、風が止まった瞬間を狙ってシャッターを切ります。

ハクサンフウロ(白山風露)

 高原に咲く数ある花の中でも人気の高いのがこのハクサンフウロです。フウロソウの仲間には地名がついているものが多く、これも石川県の白山に多く見られることからつけられたようです。
 花の大きさは3cmほどで決して大きくありませんが、赤紫色の宝石をちりばめたように高原を彩ってくれます。

 朝露に濡れて輝いているところを撮ったのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F5.6 1/125 EX2,EX3 PROVIA100F

 写真の左側上方から朝日が差し込んでいて、逆光に近い状態です。バックにあまり光が当たらなく、暗く落ち込むアングルから撮りました。
 花弁はかなり輝度が高く、それに対して背景は暗いのですが、黒くなりすぎないように朝露がつくる玉ボケをできるだけたくさん入れるようにしました。
 朝日が当たると花弁についた朝露は瞬く間に消えてしまうので、時間との勝負です。

 この花は背丈が低いので、周囲の植物の葉に埋もれるように咲いています。上から撮ると周囲の葉っぱが邪魔になるので、花と同じくらいの高さまでカメラを下げたアングルで撮影すると、背景をシンプルにしやすくなります。

コオニユリ(小鬼百合)

 山地に行くと良く見かけるユリです。鮮やかなオレンジ色をした花をつけるので、とてもよく目立ちます。多年草なので、盗掘でもされない限りは毎年同じところで見ることができます。
 りん茎(いわゆる球根)は百合根といって食用にされるので、盗掘されることも多いようです。

 大きくなるとたくさんの花をつけますが、下の写真のコオニユリは一輪だけの花をつけていました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 M-135mm 1:4 F4 1/125 PROVIA100F

 下向きに咲くのがユリの花の特徴ですが、うつむき加減に一輪だけ咲いている姿は何とも風情があります。スーッと伸びた茎の先端に花をつけた立ち姿がわかるように茎を長めに入れ、この花の咲いている環境もわかるように、ぼかした背景を多めに取り入れました。絞りすぎるとゴチャゴチャしてしまうので、絞りは開放です。

 この日は雨が降り出しそうな曇り空でしたが、ひっそりと咲くコオニユリには、このしっとりとした感じが似合っていると思います。
 雨に濡れたコオニユリも魅力的だと思い、雨が降らないかしばらく待っていましたが、残念ながらこの日は降りませんでした。

タチフウロ(立風露)

 ハクサンフウロと同じフウロソウの仲間ですが、背丈が50cmほどまで伸びます。薄紫色の花弁に赤紫の筋が目立ちます。ハクサンフウロのように群落をつくっているのは見たことがなく、数株がポツンぽつんと咲いているという感じです。
 背丈が大きいせいか、明るい日差しが似合う花だと思います。

 下の写真は、他の植物のかげに隠れるように一株だけ咲いていたタチフウロです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 165mm 1:2.8 F5.6 1/125 EX3 PROVIA100F

 背景をぼかすため、望遠レンズに接写リングをつけての撮影です。被写界深度が浅いので、二輪の花にピントが合う角度から撮っています。
 強い光が当たらない方が花の柔らかさは出せるのですが、日当たりの良い草むらに咲いている雰囲気を出そうと思い、日差しがある状態で撮りました。

 写真だと、緑の中に薄紫色の花が咲いているので目立つように見えますが、実際には緑の中に溶け込んでしまっているといった感じで、注意して探さないと見過ごしてしまいます。

オトギリソウ(弟切草)

 山地などで比較的よく見ることができます。葉や茎は止血などの生薬になるらしく、この草を原料にした秘伝薬の秘密を弟が隣家の恋人に漏らしたため、兄が激怒して弟を切り殺したという悲しい言い伝えからつけられた名前だと言われています。
 花は1.5cmほどと小さく、一日花なので一つの花が咲いているのは一日だけですが、次々と花が開いてきます。

 草むらに咲いていることが多く、画作りには結構苦労します。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 EX3 PROVIA100F

 上の写真も周りを背丈の高い植物に囲まれて一本だけが咲いていました。
 悲しい言い伝えがあるからというわけではありませんが、ちょっと陰のある感じにしようと思い、左右を他の植物の葉っぱで暗く落としながら、上方に青空を入れてトンネル効果を出してみました。
 そして、花に光が当たるところでシャッターを切りました。ミツバチだと思うのですが、ちょうど飛んできて花にとまってくれました。

 同じ光源下だと黄色はかなり輝度が高くなるので、飛んでしまわないように注意が必要ですが、露出がアンダーになると可憐な花の表情が台無しになってしまうので、露出設定には悩みます。この写真も花弁をスポット測光し、2/3段のプラス補正をしています。

コウリンカ(紅輪花)

 かつては良く見かけましたが、今ではレッドデータブック(レッドリスト)入りした絶滅危惧種になってしまいました。
 キク科の植物ですが、一般のキクに比べて頭花の数がとても少ないのでスカスカした感じがします。ですが、鮮やかなオレンジ色はとても印象的です。
 一般的には「紅輪花」と書くことが多いですが、「光輪花」と書くこともあるようです。

 背丈は50cmほどになり、草むらからは頭一つ飛び出しといった感じなので、撮影はし易い方だと思います。

 下の写真は、ちょうど見ごろを迎えたコウリンカです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 165mm 1:2.8 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 この花を撮るには背景との距離をできるだけ大きくとり、長めのレンズを使って前後を大きくぼかすのが良いと思います。花の色がとても鮮やかなので、背景が多少明るくても浮かび上がりますが、ゴチャゴチャしていると埋もれてしまいます。
 ときどき、群落をつくっていることもあるので、たくさんの花が咲いている光景も素晴らしいですが、数輪だけをクローズアップしてもお洒落な写真になると思います。

イブキトラノオ(伊吹虎の尾)

 日当たりの良い山地でよく見かける多年草です。試験管を洗うブラシのような恰好が特徴的です。ほぼ白色に近い極淡い紅色をした花で、非常に地味な存在です。1m近くまで伸びたたくさんの花穂が風にゆらゆらしている光景は少しばかり興味を引きますが、あまりシャッターを切ろうとは思いません。

 しかし、夕暮れになるとこの地味な花も少しばかり状況が変わってきます。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX M67 300mm 1:4 F5.6 1/30 W8フィルター PROVIA100F

 上の写真は、二本のイブキトラノオを夕陽に重ねて撮影したものです。
 花の形状がシンプルがゆえに、シルエットになるとイブキトラノオの特徴が良く見えてきます。隣にニッコウキスゲとコバギボウシもシルエットになっています。

 この写真はW8色温度補正フィルターを使用して、夕暮れ時の雰囲気を出しています。
 中央下部にあるニッコウキスゲに軽くレフ板を当てて、花の色がわかるようにしても良かったかなと思っています。

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 夏の高原は魅力のある野草が素晴らしい環境の中で咲いており、被写体に困ることはありませんし、様々な撮り方をすることができるのも魅力の一つです。図鑑でしか見た事のない花に出会った時の喜びもひとしおですし、同じ花であっても会うたびに違う表情を見せてくれるので、何度でも行きたくなる場所です。
 8月も中旬になると、標高の高い場所では短い夏に終わりを告げ、秋の風が吹き始めます。ちょっと寂しが漂う秋の高原もいいものです。機会があれば秋の高原に咲く花も紹介したいと思います。

 (2021.7.28)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #プロビア #PROVIA

花をきれいに撮る(3) 初夏の野草

 木々の新緑の淡い色合いは日増しに変わり、平地ではすっかり色濃くなりました。桜の季節が終わると、フィールドの景色は一変する感じです。
 野に咲く花の数も随分と増えてきて、あれも撮りたいこれも撮りたいと気持ちばかりが急いてしまいます。今回はちょうど今頃に咲く野の花をいくつかご紹介します。

アカツメクサ

 ムラサキツメクサとも呼ばれますが、シロツメクサと同じヨーロッパ原産の多年草です。もともとは牧草として輸入されたらしいですが、今ではすっかり日本にも定着してしまい、いたるところで見ることができます。シロツメクサよりもずっと背丈が大きくなり、花も大きくて鮮やかな色をしているので見応えがあります。

 下の写真は小さな沼の淵に咲いていたアカツメクサを撮ったものです。

アカツメクサ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 /60 C-up3使用 PROVIA100

 バックの緑は芽が出始めて間もない菖蒲ではないかと思われますが、沼を覆いつくすほどになっており、これがアカツメクサの花色を引き立ててくれています。曇りの日なので柔らかな感じになりましたが、晴れているとコントラストが強くなりすぎてこういう柔らかさは出せません。
 左下にもう一輪、アクセントとしてぼかして入れてみました。

 この写真はクローズアップレンズを使っています。もっぱら接写リングを使うことが多く、クローズアップレンズを使うことはほとんどないのですが、バックをできるだけ柔らかくしたかったので、画質は多少低下しますがあえて使ってみました。クローズアップレンズは強い光が当たると滲みが出ることがあるので注意が必要です。

キツネアザミ

 田畑や道端などで割とよく見かけます。ノアザミよりも少し早く、東京近郊では4月下旬ごろから咲き始めるところもあります。アザミによく似ていることからキツネアザミと命名されたようです。花はアザミに比べて小ぶりで、葉っぱにはトゲもなく、全体的にほっそりとした印象です。

 群落をつくることが多く、下の写真も道路脇の空き地にたくさん咲いているところを撮りました。

キツネアザミ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 1.4X使用 PROVIA100

 夜に降った雨が水滴となって残っていたので、逆光になる位置から玉ボケができるように狙ってみました。背景を大きくぼかしたかったので、200mmのレンズに1.4倍のテレコンバータをつけています。
 巾着袋みたいな形をした可愛らしい花なのでアップで撮っても良いのですが、たくさん咲いている中から一株だけにピントを合わせています。
 バックが黒ではなく紺色になってくれたので、この花の色とのコントラストがきれいになったと思います。

ハルジオン

 大正時代に観賞用として輸入されて鉢植えで育てられていたのが、戦後、野に放たれてしまい各地に広がっていったといわれています。今ではかなり標高の高いところでも普通に見かけますので、その繁殖力はすさまじいものがあります。
 あまり見向きもされることのない野草かもしれませんが、よく見ると淡いピンク色をした綺麗な花です。

ハルジオン PENTAX67Ⅱ smc PENTAX M-135mm 1:4 F4 1/250 EX2使用 PROVIA100

 この花は視界に入っても全く気に留めないくらいよく見かけますが、花が小さいうえに背景がごちゃごちゃしているところに咲いていることが多く、イメージ通りの被写体を探すとなると苦労します。
 上の写真は用水路のヘリに数輪咲いていたうちの一つで、用水路にわずかに陽が差し込み始めたときに撮ったものです。このため、背景は黒く落ち込み、少しだけ差し込んだ光に輝く水面の波が玉ボケになっています。
 小さな花なので、背景をできるだけシンプルにしないと花が浮き立ってきません。

 6月くらいになるとこれによく似たヒメジョオンが咲き始めますが、個人的には淡いピンク色をしたハルジオンの方が好きです。

イカリソウ

 花の形が船のアンカー(錨)に似ていることからこの名前がつけられたようです。強壮強精の生薬として古くから用いられてきたらしく、あの有名なユンケルにも入っているようです。
 花の色は赤紫、ピンク、薄黄色、白などがありますが、いちばんよく見かけるのが下の写真のような赤紫色の花です。

イカリソウ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/30 EX1+2使用 PROVIA100

 群落をつくって咲くことが多く、花の数も多いので切り取りには苦労します。
 曇りの日の方が花のディテールがきれいに出るのですが、この写真を撮った日は晴天で強い日差しがもろに当たっていたので、逆光に黄色く輝く葉っぱをバックに花を配置しました。
 複雑な形をした花なので、背景が雑然としていると花の形がわかりにくくなってしまいます。できるだけバックをすっきりとさせながら、茎と葉っぱが少しだけ入るアングルを探して撮りました。

 この花は茎から伸びた長い花穂にぶら下がった状態で咲いているので、少しの風でもゆらゆらと揺れてしまいます。無風状態の日であればいちばん良いのですが、なかなかそうのような日に出くわすこともないので、風がやむ瞬間を狙って撮ることになります。

チゴユリ

 日本全国の落葉樹林の林床で見ることができます。大きくはユリの仲間ですが、イヌサフラン科という聞きなれない科に分類されているようです。漢字で書くと「稚児百合」で、可愛らしい花姿にピッタリの名前だと思います。

チゴユリ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/30 EX2+3使用 PROVIA100

 背丈は20cmほどと小さく、しかもうつむき加減に咲いているので、撮影もカメラを地面すれすれまで下げないとこの花の表情はとらえられません。また、林の中に咲いていることが多いため、ISO100のフィルムでは高速シャッターを切ることができず、三脚は必須です。
 この写真は200mのレンズに接写リングを2個つけての撮影ですので、ピントの合う範囲は非常に浅いです。

 この花が咲く時期の林床は落ち葉が一面に広がっているので、どうしても背景が茶色っぽくなってしまいがちです。しかし、それだとこの可愛らしい花の雰囲気が損なわれてしまうので、緑色の葉っぱがバックに来るようなポジションが好ましいと思います。 
 白い花弁が濁らないように、かつ、質感が飛んでしまわないように露出を決めなければいけないので、葉っぱ、花弁、雄しべをスポット測光して決めています。

カタクリ

 この時期に咲く山野草の中では3本の指に入るくらい人気のある花ではないかと思います。関東でもカタクリの群生地は何か所かありますが、一面に紫色の花が咲いている光景は見事です。

 下の写真は群生してるというほどではありませんが、それでもたくさんのカタクリが咲いているところに偶然に出くわした時に撮ったものです。

カタクリ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 300mm 1:4 F4 1/30 2x使用 PROVIA100

 カタクリは日が当たるとこのように花弁が反り返ります。ですので、このような姿を撮るには明るい日差しがあることが条件になります。
 魅力のある花なのでアップでポートレート的に撮るのも素敵ですが、少し引いたところから周囲の環境を入れながら複数の花を撮ることでも、この花の魅力を出すことができると思います。

 上の写真は草の間にカタクリの花を置いて、背景を広く入れるように低い位置から撮影しました。300mmの望遠レンズでだいぶ離れた位置からの撮影です。
 日が当たらないと花弁が閉じてしまいますが、日差しが強すぎると花が硬い感じになってしまうので、太陽に薄雲がかかる時を狙って撮っています。

 カタクリの自生地は保護されていて立ち入り禁止なっていることが多いので、撮影には望遠レンズを持参したほうが良いと思います。

 ごくまれに、紫色に交じって白花のカタクリを見かけることがあります。数万株に一つだと言われることがありますが、出会う確率はもう少し高いと思われます。白花のカタクリに出会ったときはちょっと幸せな気持ちになります。

キクザキイチリンソウ

 日当たりの良い林床に群落をつくって咲いていることが多いです。キクザキイチゲとも呼ばれますが、花弁が菊のようで一輪だけの花をつけるのでこの名前があるようです。花の色は白、薄紫、濃い紫など多様性に富んでいますが、圧倒的に多いのは白花ではないでしょうか。

 下の写真は薄紫色の個体です。

キクザキイチリンソウ PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/30 2x使用 PROVIA100

 太陽の光を十分に受けるようにほとんどが上を向いて咲いているのですが、この花はこちらを向いて咲いていました。葉っぱを広げ、まるでバレリーナのような感じです。
 薄紫色の清楚な感じが出るように、まだ日が差し込んでいない林を背景にしました。
 接写リングを使って撮ろうとも思いましたが、近づくと他の花を踏んでしまいそうでしたので、望遠レンズに2倍のテレコンバータをつけて、すこし離れた場所からの撮影です。

 カタクリと一緒に咲いていることも多く、明るい日差しの似合う花ですが、ちょっとシックな感じが似合うのも薄紫色ならではと思います。

 キクザキイチリンソウによく似た花に「アズマイチゲ」がありますが、白花だけのようです。

(2021.5.6)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #プロビア #PROVIA

春のあきる野 龍珠院の桜、広徳寺の桜を大判カメラで撮る

 今年(2021年)は桜の開花がとても早く、平年に比べて10日ほど早いようです。
 あきる野市の桜の開花は都心に比べるとだいぶ遅いのですが、開花情報を見てみるとやはり今年は早くて、3月末には満開になっていました。
 ということで、あきる野にある古刹、龍珠院と広徳寺に桜を撮りに行ってきました。

乙津花の里にたたずむ龍珠院

 多摩川の支流の一つである南秋川に沿って走る檜原街道を西に向かい、檜原村に入る手前に「乙津」という地域があります。この一帯は春になると桜やミツバツツジをはじめとした様々な花があちこちで咲き、「乙津花の里」と呼ばれています。

 そんな乙津地域の北側高台にあるお寺が龍珠院です。臨済宗建長寺派のお寺で、600年の歴史があるそうです。花のお寺としても有名で、桜が満開時の風景はそれは見事です。

 下の写真は道路側からお寺の全景を写したものです。

龍珠院 Linhof MasterTehinika 45 FUJINON SWD65mm 1:5.6 F22 1/15 PROVIA100F

 今年は新型コロナ感染拡大防止のため、駐車場が閉鎖されていましたが、桜はいつも通り見事に咲いていました。
 ソメイヨシノが満開で、そこにミツバツツジ、ミツマタ、菜の花等が色どりを添えてくれています。お寺の参道の左側にあるソメイヨシノの大木が入るよう、広角レンズで全景を撮りました。しかし、そのままだと空が広く入りすぎてしまうので、頭上にある桜の枝を入れました。
 また、全体をパンフォーカスにしたかったので、カメラのバック部のアオリを使って頭上の桜がボケないようにしています。ソメイヨシノの白い花が濁らないよう、露出は紫色のミツバツツジを基準に設定しています。
 
 本堂に向かって右の方に回り込んで撮ったのが下の写真です。

龍珠院 Linhof MasterTehinika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F22 1/15 PROVIA100F

 2本のソメイヨシノがアーチをつくるように重なって見えるアングルから撮っています。下にミツバツツジを入れて、花に囲まれた本堂をイメージしました。
 桜の大きさを表現するため、できるだけ木に近づいて見上げるアングルにしています。

 この写真のさらに左の方には枝垂桜があるのですが、まだ三分咲きといったところでした。枝垂桜が満開になるとソメイヨシノとは違う、落ち着いた華やかさがあるのですが、その頃にはソメイヨシノが散ってしまうので、撮るタイミングは悩むところです。

 また、ミツバツツジも見ごろでとても綺麗でしたので撮ってみました。

龍珠院 Linhof MasterTehinika 45 FUJINON T400mm 1:8 F11 1/60 PROVIA100F

 お寺の参道の入り口のところに咲いていたミツバツツジです。少し離れたところから焦点距離の長いレンズで撮っています。背景がボケ過ぎずに何が写っているかわかる程度の絞り設定にしてみました。背景を思い切りぼかす表現もありますが、それだとミツバツツジだけの写真になってしまうので、「花のお寺」ということがわかるようにしています。しかし、もう少しぼかしても良かったかなと、出来上がったポジを見て思いました。

 参道の両側にはお地蔵さまが並んでおり、お地蔵様がお花見をしているようなアングルも撮りたかったのですが、そのためには道路に三脚を立てなければならず、通る車やほかの方の迷惑になるので断念しました。

 この時期、本当にたくさんの花が咲いているお寺で、一日中いても撮りあきない場所です。

堂々とした風格のある広徳寺

 龍珠院から檜原街道を五日市方面に戻り、広徳寺に向かいました。
 広徳寺は山の北斜面に建つお寺で、総門の前には「臨済宗建長寺派」と書かれた立派な門柱が立っています。龍珠院と同じ宗派のようです。

 ここは龍珠院よりも桜が進んでおり、ソメイヨシノは満開の時期を少し過ぎていましたが、茅葺き屋根とのコラボが何とも良い風情でした。

広徳寺 Linhof MasterTehinika 45 APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 1/8 PROVIA100F

 このお寺は建物が立派なので、もう少し左の方の屋根も入れたかったのですが、画全体の締まりがなくなってしまう感じがしたため、狭い範囲の切り取りにしました。
 桜の花の中心が赤っぽくなってきており、明日には散り始めてしまいそうな感じでした。風の強い日であれば綺麗な花吹雪が見られたと思います。

 本堂の前には枝垂桜の巨木があるのですが、残念ながらまだほとんど咲いていませんでした。山の陰になっていてあまり日当たりが良くないからなのか、満開まではもうしばらくかかりそうです。

 「正眼閣」と書かれた額がかけられている重厚感あふれる山門の前にはオオシマザクラとも違うようですが、花の色が白い桜の木があります(下の写真)。

広徳寺 Linhof MasterTehinika 45 FUJINON CM105mm 1:5.6 F32 1/8 PROVIA100F

 青空にとてもよく映えていたので、桜を空に抜き、山門を入れて撮ってみました。山門は大きな杉の木の陰になっていたので、黒くつぶれてしまわないように若干露出をオーバー目にしましたが、かろうじて「正眼閣」という文字が読める感じです。
 山門の向こう側に立っている2本の木は銀杏で、秋の黄葉は素晴らしいそうです。

 また、総門から山門に向う参道脇にはたくさんのシャガがありましたが、開花はもう少し先のようです。

大悲願寺の桜はすでに散っていました

 広徳寺での撮影を終えて帰る途中、五日市線の武蔵増戸駅近くにある大悲願寺に立ち寄ってみましが、残念ながらここの桜はほとんど散っていました。
 
 あきる野は都心から車で1時間半ほどで行くことができますが、東京とは思えないくらい豊かな自然が残されています。桜の時期は短いですがこれから新緑の季節を迎え、山の色が日増しに濃くなっていきます。そんな新緑の季節にもぜひ訪れてみたいと思います。

 今回の写真はすべて大判カメラで撮りました。掲載するために画像の解像度を落としていますので、大判写真のすばらしさを伝えられなくて残念です。

(2021.4.10)

#あきる野 #龍珠院 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika #PROVIA

花をきれいに撮る(2) 春の野草

 3月の声をきくとフィールドの野草も急激に増えてくる感じです。花の少ない冬が終わり、心もうきうきしてきます。
 春の野草は背丈が低いものが圧倒的に多く、撮影にも苦労します。ローアングルでの撮影が多くなりますが、今回はそんな春の野草の撮影にフォーカスしてみたいと思います。

ヒメオドリコソウ

 オオイヌノフグリとともに、今ではすっかり日本の春の風景となってしまったヒメオドリコソウ。シソ科の帰化植物ですがその繁殖力は旺盛で、日本中のいたるところで見ることができます。日本原産のオドリコソウはすっかり少なくなってしまいましたが、ヒメオドリコソウは増える一方です。

 葉っぱの色がくすんだ紫色をしてるため、群生しているところはお世辞にも美しいとは言えません。しかし、よく見ると赤紫の可愛らしい小さな花をつけています。
 この野草は、群生しているところよりも、1本だけ、あるいは数本だけのところを狙った方が可愛らしさを表現できると思います。

 下の写真は、1本だけですがオオイヌノフグリとコラボしているところを撮ってみました。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 EX2+3 PROVIA100F

 オオイヌノフグリとともに、春先に最も早く咲く野草の一つです。明るい日差しが感じられる方がこの野草には似合っていると思います。
 カメラを地面すれすれまで下げて撮っています。この写真のヒメオドリコソウの背丈は6~7cmほどですが、20cmくらいまで伸びますので、あまり大きくないほうがバランスは良くなると思います。
 赤紫色の花に露出を合わせていますので、オオイヌノフグリは露出オーバーになっています。

ムラサキハナナ

 この野草も良く見かけます。オオアラセイトウ、ショカッサイ、ハナダイコンなどとも呼ばれており、厳密にはそれぞれ違いがあるらしいのですが、私にはよくわかりません。花の色が紫色と赤紫色があるようですが、それも個体差なのかどうかもわかりません。
 この花が群生しているところを見かけることがありますが、それは見事です。

 群生しているほどではありませんが、そこそこ咲いている中から1本だけを撮ったのが下の写真です。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/30 1.4X PROVIA100F

 午前中の比較的早い時間帯、まだ太陽があまり高くならないうちに逆光の状態で写しています。薄い花びらを光が透過して輝きを放っているような雰囲気を狙ってみました。
 この野草は比較的、背丈も大きくなるため、地面にはいつくばって撮る必要もないのでありがたいです。

 露出アンダーだと赤紫色が濁ってしまうので、1段くらいオーバー目にした方が明るい雰囲気が出せると思います。

タチツボスミレ

 スミレの中では早めに咲き始めます。日当たりのよい道端や草原、森林、やぶなどに普通に見られる多年草です。背丈は20cmくらいまで伸びますが、春先に見られるのは半分ほどの背丈です。背丈には不釣り合いなくらい大きな花をつけるので、わずかな風でも大きな花が揺れてしまい、風の強いときの撮影は苦労します。

 下の写真は、里山の道端に咲いていたものです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 全面に光が当たっていると平面的になってしまうので、薄雲がかかって、花のところに直接光が当たらない瞬間を狙って撮りました。そのため、光が当たっている背景はかなり露出オーバーになっています。
 タチツボスミレと背景との距離が近いので、背景のごちゃごちゃしたものがボケきれていません。200mmのレンズで撮っていますが、もう少し長めのレンズの方が背景を美しくできたと思います。

 いちばん右の花とその隣の花では、わずかに右の花が手前にあります。両方の花にピントを合わせるため、レンズから二輪の花までの距離が等しくなるよう、カメラアングルを決めています。

タンポポ

 どこででも普通に見られる野草ですが、その多くはセイヨウタンポポです。日本の在来種であるニホンタンポポは本当に少なくなってしまいました。それでも、タンポポの咲いている風景というのは心和むものがあります。

 下の写真もセイヨウタンポポです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 165mm 1:2.8 F4 1/30 EX3 PROVIA100F

 5月くらいになるとタンポポの背丈もかなり伸びますが、3月の頃に咲くタンポポは、葉っぱもロゼッタ状になっており、花も地面に張り付いてるくらいに背丈が低いものが多いです。一緒に咲いている小さな白い花はタネツケバナですが、それに埋もれてしまうくらいの背丈です。
 カメラを地面につくくらいまで下げ、タンポポとほぼ同じ目線から撮っています。タンポポだけクローズアップして撮ると花の表情が良く出ますが、周りの環境を含めて写すことにより、タンポポの魅力を引き出すことができると思います。

 タンポポに限らず、黄色の花は見た目以上に明るいので、かなり多めに露出をかけないと花の色が黒っぽく濁ってしまいます。太陽に向かって咲いている姿は、明るめの方が似合っていると思います。

クサノオウ

 ケシ科の越年草で有毒植物です。皮膚病などにも効果があるらしく、昔から薬として使われてきたようです。
 初夏の野草というイメージが強かったのですが、近年は暖かいせいか、関東では3月中旬くらいから見かけるようになりました。遠くからも目につく黄色い花を咲かせる野草です。

 近所の公園の脇に咲いていたクサノオウを撮ってみました。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 薄紙のような花弁が印象的です。日が当たっていない建物の陰をバックに、黄色の花を浮き立たせました。
 このようなシチュエーションでは画全体でとらえてもうまく露出設定ができないので、スポット露出計を用いてピンポイントで測光するのが望ましいです。
 この写真には写っていませんが、下の方の葉っぱが適正な明るさになるように露出を決めています。花の部分はそれよりも1.3段ほど、露出が多めになっています。先ほどのタンポポと同じで、黄色い花はかなり露出を多めにかけないと暗い印象になってしまいます。

 また、この花は産毛のようなものがびっしりと生えたつぼみも印象的で、良いアクセントになってくれます。

イチリンソウ

 野山に生える代表的な春の野草で、里山や林床などでよく見られます。可愛らしい白い花はとても清楚な感じがします。花が咲き終わり、初夏には地上部分がすっかり枯れてしまいますが、地下茎はしっかりと残っていて、長い期間をその状態で過ごすようです。
 群落をつくって咲くことが多く、写欲をそそられる花です。

 下の写真は偶然見つけたイチリンソウの群落です。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 たくさんの花が咲いているときは、どの花を撮るか迷います。いろいろなアングルから見て、画としてバランスの良い部分を見つけ出せればいいのですが、これがなかなか思うようにいきません。テーブルフォトのように被写体を自由に動かすことができればいいのですが。

 それぞれ好き勝手な方を向いて咲いていますが、こちらを向いている一輪を見つけたので、花の形が良くわかるアングルから撮影しました。カメラを目いっぱい低く構え、空が少し入るくらいにレンズを上向きにしています。これによって明るい春の日差しを表現しようとしました。
 こじんまりと咲いているオオイヌノフグリも色どりを添えてくれています。

 花が白いので、緑の葉っぱが適正になるように露出を決めると、色が濁らずに清楚な感じが保てると思います。

イワウチワ

 少し山に入った半日陰の岩場で見かける多年草です。どちらかというと北斜面の岩場で見られることが多く、他の植物が生えていないようなところにしっかりを根を下ろしています。薄ピンク色の花はとても可愛らしいです。
 イワウチワによく似た花にトクワカソウがありますが、葉っぱの形で区別できるようです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 F4 1/30 EX2 PROVIA100F

 岩場に枯葉が降り積もったような場所に生えているので、周辺の色合いはとても地味です。そのため、薄ピンク色の花は一層目立ちます。陽が差し込むと宝石をちりばめたような光景になります。
 上の写真も逆光気味で撮っており、花びらが浮き上がってくるようなところを狙いました。
 花がとても可愛らしいのでアップで撮りたくなりますが、周囲の環境がある程度わかるように撮った方が、この花の魅力が伝わるように思います。
 自動露出で撮ると、周囲が暗いので花の質感が飛んでしまう可能性があります。花をスポット測光して露出を決めた方が、花の質感を損なうことがないと思います。

 この花の撮影で苦労するのは、三脚が立てにくいところに咲いていることです。平らな足場の良いところに咲いているのを見たことがありません。しかし、毎年撮りに行きたくなるくらい魅力のある花のひとつです。

(2021.4.3)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #プロビア #PROVIA

フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~啓蟄~

 いよいよ三月、啓蟄という言葉を聞くと本格的な春の訪れを感じます。やはり暖冬なのか、今年(2021年)は2月から暖かな日が多く、春の訪れが早いように感じます。梅の開花も随分と早かったようで、桜の開花も例年よりも早いとの予想のようです。
 この時期はフィールドの変化が早く、近所の公園も一週間も経つと様子がずいぶん変わります。

マンサクが満開でした

 花つきが豊かなため、古くから豊年満作に通ずるとして好まれてきたと言われています。山野では木々の芽吹きもまだ先という時期に、黄色の花をびっしりとつけた姿は遠目にもそれとわかります。まるで縮れ麺を短く切ったような花姿は、どこかユーモラスでさえあります。この花が咲くと寒い季節の幕引きともいわれているらしいです。
 公園に植えられてたり、やはり縁起の良い花ということからなのか、庭木としても植えられているのをよく見掛けます。
 最近は、花の色が赤に近いアカバナマンサクというのも良く見かけるようになりましたが、花の色がちょっと毒々しくて個人的にはあまり好きになれません。やはり黄色の方が品が感じられます。

 下の写真は偶然見つけたマンサクの花です。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm 1:4 F4 1/500 PROVIA100F

 背景に裸木を入れて、黄色に輝くマンサクの花との対比を出してみました。花の形がユニークなのでアップで撮るのも面白いですが、やはり全体を入れた方が季節感が感じられると思います。

 マンサクといえば、秋田に「まんさくの花」という地酒があります。有名なので名前は知っているのですが、ほとんど飲んだ記憶がありません。秋田はマンサクが多いのかと思って調べてみたところ、NHKの連続ドラマ「マンサクの花」からつけた名前らしいです。「マンサクの花」という響きが心地よくて好きです。

日向ではオオイヌノフグリも咲いています

 オオイヌノフグリは、春先に最も早く咲き始める野草ではないかと思います。ヨーロッパ原産の帰化植物ですが、すっかり日本の春の風景になじんでしまっています。日本には明治の初めごろに入ってきたらしいですが、今では河原の土手や田んぼの畦道、道端など、いたるところで見ることができます。小さな花ですが、その繁殖力は驚くばかりです。
 瑠璃色の花は何とも可愛げがありますが、不名誉な名前をつけられてちょっとかわいそうな気もします。

 もともとは日本には在来種であるイヌノフグリがあるのですが、オオイヌノフグリに生育地を奪われてしまい、減少の一途をたどっているようです。オオイヌノフグリに比べると花の大きさが半分くらいしかありませんが、地味でつつましやかな感じがします。

 空き地に咲いていたオオイヌノフグリを撮ってみました。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX3 PROVIA100F

 太陽に向かって背伸びしているようなイメージを出したいと思い、アングルを決めました。
 小さな花なので撮影には苦労します。群生しているところはまさに春の風景といった感じですが、一輪とか数輪を撮ろうとすると、目線をかなり下げなければならないので大変です。地面に腹ばいになって撮るのが楽ですが、たくさんの花を押しつぶしてしまうのでそれもはばかられます。

 同じく帰化植物であるヒメオドリコソウやホトケノザなどと大群落をつくることがありますが、そういう光景を見られるようになるにはもう少し先のようです。

テントウムシはまだ見かけません

 日差しがぽかぽかと暖かなとき、オオイヌノフグリの群落にはテントウムシの姿をよく見かけます。ナナホシテントウが多いのですが、花と同じくらいの大きさで、もぞもぞと花の上を歩きまわっている姿をみると、ほのぼのとした気持ちになります。
 まだ少し寒いのか、この写真を撮ったときには残念ながらテントウムシを見かけることはありませんでした。啓蟄とはいえ、虫が出てくるまではもう少しかかるようです。

(2021年3月7日)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気

花をきれいに撮る(1) 梅

 風景と同じくらい花の写真を撮ることが多いのですが、立春から一ヶ月が経ち、フィールドではぽつぽつと花が見られるようになってきています。花を撮りにフィールドに出かける回数も増えていきそうです。
 「花はきれいに撮りたい」と常々思っているのですが、これがなかなか難しく、納得のいく写真はそう簡単に撮れません。そもそも、何をもって「きれい」というかもうまく説明できないのですが、小難しいことはともかく、パッと見た時に「きれいだ!」と感じることが大事なんだろうと思います。
 撮り方に良いとか悪いとか、決まった手法とかがあるわけでもありませんが、花と対峙して自分なりに撮った写真と、それをどのように撮ったかということも含めてご紹介できればと思います。
 第1回目は「梅」です。

ポートレート風に花の表情を撮る

 人を被写体として撮影するポートレートというのは、その人の魅力を最も的確に表現できる手法だと思っています。人と同じように花にも表情があり、ポートレート風に撮ることで花の魅力を引き出すことができます。
 梅は大きなものでは樹高が数メートルにもなり、たくさんの花をつけるので、花のポートレートとしては一輪とか数輪、あるいは一枝だけを対象とした方が花の表情を出しやすいと思います。このときに大事なのは、主役である花をどうやって引き立たせるかということです。花自体がいくら綺麗に写っていても、画全体の中に埋没してしまっているようでは残念という他ありません。

 下の写真は、小さな枝先に咲いている白梅を撮ったものです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 早春の日差しの中で咲く白梅の楚々とした美しさを出そうと思い、背後からの光が透過することで花弁が輝いている状態を撮りました。バックが明るいと花が引き立ってこないので、日が当たっていない大きな常緑樹をいれて、背景全体を暗く落としています。
 しかし、それだけだとバックが黒一色で単調になってしまうので、後方にある梅の花を大きくぼかして入れ、若干青空も入れて明るさを加えました。
 花が逆光で輝いているので、スポット露出計で測った値に2倍の露出補正をしています。
 また、バックを大きくぼかすために焦点距離が長めのレンズに接写リングをかませ、花まで80cmほどの距離で撮っています。このため、さらに1.5倍ほどの露出補正をしています。
 背景をシンプルにするには、焦点距離が長めのレンズの方が効果的です。

 上の写真とは対照的に、静けさの中でひっそりと咲く可憐な姿をソフトフォーカスで撮ったのが下の写真です。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 SOFT 120mm 1:3.5 F5.6 1/60 EX2 PROVIA100F

 春がまだ浅い感じを出すために、一輪だけ咲いている小さな枝を撮りました。この日は曇りで日差しが直接あたっていないため、そのままでも柔らく写りますが、温もり感を出すためにソフトフォーカスレンズを使いました。この花は紅梅というよりも濃い目のピンクといった色合いですが、このような描写も似合っています。
 背景に余計なものを入れず、太い枝と一輪の花だけのシンプルな構成にしました。また、窮屈にならないように周囲の空間を広めにとって、斜め上にスッと伸びた小枝のラインの美しさが出るようにしてみました。
 2号の接写リングをかませていますので、花弁をスポット測光した値に対して1.5倍の露出補正をしています。 

樹形全体で華やかさや力強さを表現する

 一輪とか数輪をアップで撮ったものも魅力的ですが、何と言っても樹全体に咲き誇っている状態は圧巻です。
 下の写真は満開になっている紅梅・白梅を撮ったものです。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F32 1/4 PROVIA100F

 紅、白、ピンクの梅が密集して咲いており、華やかさを出すために少し離れたところから望遠レンズで撮っています。あまり余計なものを入れず、むしろ花が画面から若干はみ出すくらいのフレーミングにしています。
 背後に椿の緑を入れ、画全体が平面的になるのを防ぐとともに、その対比で梅の華やかさが引き立つことを狙いました。中央右側に立っている桜と思われる木も、早春の雰囲気を出してくれる良いアクセントになっていると思います。
 晴れた日でしたが、花の色をきれいに出すために太陽に雲がかかった瞬間を狙って撮りました。また、白梅の色が濁らないように、ピンクの梅を基準に露出設定しています。できるだけパンフォーカスにしたかったので、目いっぱい絞り込んでいます。

 もう一枚は、力強く咲く梅の老木(倒木)です(下の写真)。

Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W 210mm 1:5.6 F32 1/15 Velvia100F

 幹の太さからしてもかなりの樹齢があると思われますが、すっかり横倒しになってしまっています。しかし、それでも樹勢が衰えている感じはなく、枝先まで見事に花をつけています。この梅の咲いている環境がわかるようにと、背後に少しだけ山を入れてみました。
 また、綺麗な青空が広がっていましたが、空を入れるとこの老木の力強さが損なわれてしまうと思い、空はカットしています。
 前の写真のような華やかさではなく、倒れてもなお咲く力強さを表現したかったので、幹の質感が飛ばないように露出を若干抑え気味にしています。そのため、梅の花だけを見るとアンダー気味ですが、全体の雰囲気としてはそれほど気にならないと思います。

梅が咲く風景として撮る

 風景の中に梅が咲いている、と言った方がわかり易いかもしれません。梅だけを撮るのではなく風景写真として撮るのですが、その中で梅が重要な役割を果たしているといった感じでしょうか。上で紹介した写真も風景写真と言えなくもありませんので、その境界線は極めて曖昧なものです。

 下の写真は、梅の花越しに妙義山を望む風景として撮りました。

PENTAX67Ⅱ smc TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5 F22 1/30 PROVIA100F

 空を広く入れて広大な感じを出し、そこに満開の梅と山(妙義山)を配しました。画の下の方に梅林が広がっているのですが、これだけではしまりのない写真になってしまうので手前に梅の枝を入れています。妙義山が小さすぎて残念なのですが、大きく写すために焦点距離の長いレンズを使うと広大さが損なわれてしまうので、あえて広角レンズを使っています。

 朝の空気が澄んでいる時間帯での撮影なので青空もくっきりとしており、爽やかな感じが出ているのではないかと思っています。これが午後になると太陽が回ってくるとともに遠景が白く霞んでしまうので、爽やかさが薄れてしまいます。
 手前の梅の花が濁らないように、かつ、青空が白っぽくならないようにということで露出を決めています。
 PLフィルター使えばもっと濃い青を出すことができるのでしょうが、絵の具を塗りたくったようなベットリした感じになるのが嫌いなので、PLフィルターを使うことはあまりありません。

 上の写真は広大な感じを狙っていますが、風景として必ずしも広大である必要はありません。例えば、下の写真のように、限られた範囲であっても梅が咲いている風景といえると思います。

PENTAX67Ⅱ smc TAKUMAR6x7 105mm 1:2.4 F4 1/125 PROVIA100F

 無縁仏の近くに白梅が咲いており、傍らでずっと無縁仏を見守ってきた、そんな物語が感じられればとの思いで撮りました。もし、この梅が紅梅だと華やかさが際立ってしまい、無縁仏との組み合わせは似合わないかもしれません。
 この写真では無縁仏が目立ちすぎないように、あまり絞り込まずに若干ぼかしていますが、主題を無縁仏にした場合は、逆に梅をぼかすという作画もあると思います。この辺りは、何を表現したいかによって変わってきます。

心象的に撮る

 心象とは心の中に生ずる感覚とかイメージのようなものなので、この撮り方は千差万別、その人の主観や感性で自由に撮ればよいと思っています。アップで撮ろうが全体を撮ろうが、どういう撮り方をしようとも伝えたいものがあれば、それで成り立つと思います。

 雨上がり、水滴がついた梅の花をアップで撮ってみました。

PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 F4 1s EX1+2+3 PROVIA100F

 この写真で表現したかったのは、雨に濡れた冷たさではなく、むしろ、春がすぐそこに来ている温もりです。それを大きな水滴と玉ボケを入れることで表現しようとしています。明るさがないとそういう感じは出ないので、露出はオーバー目にしています。
 被写界深度を極端に浅くしたかったので、接写リングの1号から3号をすべてかませています。レンズ先端から梅の花までは20cmほどの近さです。

梅の撮影地

 関東で梅の有名どころと言えば水戸の偕楽園ですが、他にも梅林がたくさんあります。
 例えば、
  湯河原梅林(神奈川県)
  曽我梅林(神奈川県)
  秋間梅林(群馬県)
  越生梅林(埼玉県)
  吉野梅郷(東京都)
  高尾梅郷(東京都)
 などがあります。

 曽我梅林、秋間梅林、越生梅林は観梅ではなく、主に実を採るために農家の方が栽培している梅林です。
 また、吉野梅郷はウイルスに感染したということで、何年か前にすべて伐採されてしまいましたが、その後、植樹が始まりました。今はまだ木は小さいですが、いつの日か、以前のような絶景になってくれると思います。

 近所の公園などでも梅の木が植えられているところが多いので、有名な梅林に行かなくても撮影は十分できます。写真の表現の仕方は決まりがあるわけではなく自由なものです。梅の種類やその日の天候、周囲の環境などで様々な撮り方ができるので、被写体としてとても魅力のあるものだと思っています。

(2021.3.2)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #梅 #プロビア #PROVIA

フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~立春~

 今年の立春は2月3日で、これは実に124年ぶりとの報道がされていました。寒さはまだ続きますが、これからの寒さは余寒というらしく、春に向けて暖かくなっていく寒さということで、こういう使い分けが日本人の感性の豊かさだと思います。
 旧暦では立春のころが1年の始まりだったようで、日本では旧正月を祝う習慣はなくなってしまいましたが、中国の春節やベトナムのテトなど、アジアでは旧正月を祝う国がたくさんあるようです。

梅が咲き始めました

 今ではすっかり日本の風景に溶け込んでいる梅ですが、奈良時代に中国から持ち込まれたものらしく、万葉の時代には花というと桜ではなく白梅のことをさすくらい、当時の人々に愛でられていたようです。
 学問の神様として有名な菅原道真も紅梅を深く愛したひとりで、彼の邸宅は「紅梅殿」とよばれ、春の訪れとともに芳しい香りに包まれたといわれています。藤原時平の訴えにより、九州の大宰府に左遷されてしまうわけですが、以来、日本各地にある天満宮の境内には梅の木が植えられ、神紋には梅鉢が使われるようになったといいます。

 下の写真は近所の公園で撮った早咲きの白梅です。ほかの木はまだ1~2輪がようやく咲き始めたところですが、この梅はこの公園の中でも真っ先に咲きます。

白梅 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 「梅は百花の魁」といわれますが、梅が咲き始めるとあたりが明るくなったようにさえ感じます。満開の状態はもちろん豪華ですが、個人的には梅は咲き始めた頃がいちばん好きです。ぽつぽつと咲き始めた頃のちょっと恥じらうような姿に風情が感じられます。特に白梅には楚々とした感じが漂っていて、例えると、春の光のもとで微笑む小町娘、といったところでしょうか。

 ここ数日の暖かさで紅梅も咲き始めていました。紅梅には白梅と違った華やかさがあります。白梅が楚々とした美しさであれば、紅梅は艶っぽさ漂う美しさといった感じです。

紅梅 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm 1:4 F4 1/500 PROVIA100F

福寿草も眩しいくらいに輝いて

 元日草とか正月花などの別名をもつ福寿草、旧暦の正月、ちょうど今頃に咲き始めることからついた名前のようですが、立春を待ちかねたように咲き始めていました。新年を祝う花として古くから日本人の心を癒してきたといわれていますが、いまの時代は春の訪れを告げる花というイメージの方がしっくりきます。
 雪を割って芽を出す姿には心惹かれるものがありますが、東京ではなかなかそういう姿にお目にかかることはできません。それでも緑がほとんどない大地から芽を出して、身の丈に比べて大きな花を咲かせる姿には癒されます。

福寿草 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 花の少ないこの時期に、輝くような黄色の花は遠目にも良く目立ちます。太陽の動きを追いかけて花の向きを変える性質(向日性)があり、このため、花の内側は外側に比べて温度が高くなるらしいです。まるで、太陽の熱を集めるパラボラ集熱装置のようです。

 品種改良がなされて二重咲や八重咲といった豪華な福寿草もありますが、日本に自生しているのは一種のみだそうです。上の写真の福寿草は自生種と思われますが、定かなことはわかりません。しかし、これから次々といろいろな花が咲き始めることを教えてくれることには変わりありません。 

立春限定の日本酒も

 立春の未明に搾りあがったばかりのお酒のことを「立春朝搾り」といい、日本酒好きの人には待ち焦がれたお酒です。このお酒は火入れをしていない生原酒で、どの蔵元のお酒も日付が入った同じデザインのラベルが貼られています。今年のラベルは、「令和三年辛丑二月三日」と書かれています。実は、このラベルの裏側には、「大吉」の文字が書かれており、ビンの反対側から透かすと見ることができます。ちょっとした遊び心ですね。

(2021年2月8日)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気