ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラ ~撮影編~

 昨年(2023年)の暮れから今年の年始にかけ、思いついたようにピンホールカメラ(針穴写真機)を作成しましたが、そのカメラを使って実際に撮影をしてみました。ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使用した広角系固定焦点ピンホールカメラです。
 ピンホールレンズ自体は以前につくったものを若干改良しているだけなので、概ね問題なく撮影はできるだろうと思っていますが、今回、新たに作成したカメラ本体との相性も含めて試し撮りをしてみました。

 なお、ピンホールカメラの製作に関しては以下のページをご覧ください。

  「ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラの製作

モノクロフィルムでの試し撮り

 ホースマンの69判ロールフィルムホルダーにDELTA 100(120)フィルムを入れ、近所の公園で試し撮りをしました。天気は晴れ、撮影した時間帯は午前10時~11時です。

 1枚目は、木立に囲まれた公園の広場を撮影したものです。

 カメラから中央の立木までの距離は3mほど、右端に少しだけ写っている立木までは50~60cmほどだったと思います。また、立木の影でわかるように、太陽はほぼ右側にある撮影ポジションです。
 単体露出計での計測値はEV13(ISO100)だったので、露光時間は4秒としました(ちなみに、このピンホールレンズのF値は180になるように作ったつもりです)。露出に関しては概ね良好、ほぼ予定通りのF値になっている感じです。
 木立の枝の先端もおぼろげながら認識できるので、解像度もピンホールとしてはまずまずといったところでしょう。

 この写真のように近距離を写した場合、周辺部が引っ張られて、見るからに広角系の写真という感じがします。

 2枚目は、立木の枝の広がりを逆光で撮影したものです。

 太陽は中央の立木の幹に隠してありますが、全体にわたり逆光状態なので、立木はすべてシルエットになっています。ピンホールカメラは逆光に弱いのですが、太陽からの光を直接入れなければ、結構クリアな写真になるようです。さすがに太陽を隠している幹の辺りは滲んでいますが、それ以外は比較的綺麗なシルエットになっていると思います。
 1枚目の写真ではあまり気にならなかったのですが、こちらの写真では周辺部の光量不足が感じられます。多少、周辺光量の落ち込みがあった方がピンホール写真らしさがあるという見方もありますが、個人的にはこれ以上の落ち込みがあると失敗作となってしまうので、ギリギリ許容範囲といった感じです。

リバーサルフィルムでの試し撮り

 常々、ピンホール写真はモノクロが似合っていると思っているのですが、せっかくなのでカラーリバーサルフィルムでも撮影をしてみました。使用したフィルムは富士フイルムのVelvia 100(120)です。
 撮影日は異なりますが、撮影場所はモノクロと同じ近くの公園です。

 まず1枚目は紅梅の写真です。

 この日も晴天で、澄んだ青空と梅の花のコントラストがとても綺麗でした。
 中央の梅の花の位置まではおよそ1m。まだ咲き初めで花の数がそれほど多くないので、できるだけ花に近づいての撮影です。
 全体的な露出はほぼ適正な状態だと思われますが、やはり、周辺光量の落ち込みが目立ちます。周辺部が極端に暗くなっているわけではないのでそれほど違和感はありませんが、周辺部が引っ張られるのと相まって、若干気になります。
 ピンホール写真として見れば解像度は悪くはないと思うのですが、梅の花の鮮鋭度となると、正直、厳しいといった感じです。

 2枚目は同じ公園にある白梅を撮影したものです。

 いちばん手前の花まで50cmほどに近づいて撮影しています。上の方は切れてしまいましたが、左右に関しては8割方、フレーム内に収まっています。
 ピンホール写真は全体のピントが合うパンフォーカス写真になりますが、この写真のようにたくさんの花が重なった状態の被写体の場合、ボケた部分がないので雑然とした感じに仕上がってしまいます。撮影の仕方によるところが大きいのでしょうが、この写真ではピンホールらしさがあまり感じられません。ボケた梅の写真、といった方が適切かも知れません。

 もう一枚は、近くの神社の境内で撮影したものです。

 周囲が大きな木立に囲まれているため、ほとんど日陰で暗く落ち込んでいますが、中央の社殿だけは日が差し込んでいて、全体にコントラストが大きくなっている状態です。普通のカメラで撮れば固い感じになってしまいますが、ピンホール写真特有のボケでふわっとした感じに仕上がっています。どうってことのない風景も、ちょっとばかり雰囲気のある写真になっています。
 左側の赤い奉納のぼりに書かれている文字や、社殿の軒下にある注連縄、社殿の後ろにある消火器などのはっきりと認識できるくらいの解像度があります。

カメラの仕様と使い勝手

 今回製作したピンホールカメラは、焦点距離が54mm、F値が180ということで寸法取りをしたのですが、仕上がった写真を見る限り、ほぼ予定通りの仕様になっている感じです。もっとも、焦点距離が3mm長かったり短かったりしたところで、F値は190、もしくは170になる程度なので、実際の露出に与える影響はほとんど誤差の範囲です。つまり、F値が大きいので、多少の寸法の違いは影響がないということです。

 また、上で掲載した写真からも、周辺部がかなり引っ張られているのがわかると思います。これは短焦点になればなるほど顕著に現れますが、このカメラの場合、横位置に置いた時の左右両端で、およそ17%伸びる計算になります。この値は被写体によってはかなり影響が大きく、遠景ではあまり気になりませんが、近景を撮影した場合ははっきりとわかります。それに伴って光量の落ち込みも発生するので、うまく使えば味わいのある写真になるかも知れません。

 一般的に、写真は解像度が高くてくっきりと写っていた方が好ましいと思いますが、ピンホール写真に関しては必ずしもそうとは言えません。むしろ、ボヤっとしていた方が好ましいと感じる場合が多々あります。
 そういった視点からすると、今回使った直径0.3mm(にしたつもり)のピンホールは、解像度が少し高すぎるようにも思えます。ピンホール径をもう少し大きくして、全体的なボケを大きくした方がピンホール写真っぽくなるかも知れません。

 カメラの使い勝手という点では、二眼レフカメラを横にしたくらいの大きさなのでこじんまりとしていて持ち運びも苦にならいのですが、難点はホールド性がよろしくないということです。三脚に取り付けてしまえば何ら問題はないのですが、三脚に着けたり外したりする際、落としてしまいそうでちょっと不安になります。ストラップかグリップのようなものがあると安心感が高まるというのが率直な感想です。

 簡易的なスピードファインダーに関しては、もちろん、精度は良くありませんが、フレーミングした範囲と実際に写る範囲にそれほど大きな乖離はなく、実用レベルであると思います。
 ただし、スピードファインダーのフィルム側のアクリル板の取り付け位置が、フィルムホルダーの後端よりも前にあるため、のぞきにくいという欠点があります。前方のアクリル板との間隔を保ちながら、取り付け位置を全体的に30mmほど、後ろにずらした方が使いやすいことがわかりました。今から改造するのは大変なので、次回、また製作することがあれば反映したいと思います。

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 ピンホール写真というのはノスタルジックでもあり、また、そのボケ具合から独特な印象を持った写真になり、シンプルな仕組みでありながらなかなか奥の深いものだと思っています。
 しかしながら、何でもかんでもピンホールカメラで撮れば雰囲気のある写真になるかというとそうではなく、やはり、作品作りということを意識することも大事だと思います。
 普通のカメラでもいろいろとレンズが欲しくなるのと同じで、ピンホールカメラでもピンホール径や焦点距離の異なるもので撮影してみたくなります。何種類ものピンホールカメラを作って、自分のイメージにぴったりと合うものを見つけるのもピンホールカメラの面白さかも知れません。
 今年の年末にでも、仕様の違ったピンホールカメラを作ってみたいと思います。

(2024.2.29)

#Horseman #ピンホール写真 #ホースマン #白梅 #紅梅

ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラの製作

 年末にジャンク箱の中を漁っていたところ、下の方からホースマンの69判のロールフィルムホルダーが出てきました。しかも、大判(4×5判)用ではなく、中判カメラ用のホルダーです。私がこれを取付けられるような中判カメラを持っていたのは20年以上も前のことですから、多分、そのころに手に入れたものだと思うのですが全く記憶にありません。
 外観はそこそこ綺麗で、確認してみたところ、動作にも問題はなさそうでした。しかし、これが使えるカメラがないので、またジャンク箱の中に戻そうと思ったのですが、ふと、これを使ってピンホールカメラを作ってみたくなりました。なぜか、時々ピンホールカメラを作ってみたくなることがあります。
 ということで、69判のピンホールカメラを製作しました。

焦点距離54mm、絞り値 F180の広角系ピンホールカメラ

 以前、大判カメラを使ったピンホール写真を撮ろうと思い立ち、それ用のピンホールレンズを作ったことがありました。興味のある方は下のページをご覧ください。

  「ピンホールカメラ(針穴写真機)をつくる

 ただし、大判カメラを使ったピンホールカメラなので焦点距離などの自由度も大きいのですが機材が大げさになってしまい、気軽にピンホール写真を撮りに行くという感じではなありませんでした。最初のうちこそ結構使っていましたが、徐々にその頻度も減り、最近ではほとんど持ち出すことはなくなってしまいました。
 そんな経緯もあり、今回はもっとお手軽なピンホールカメラをつくることにしました。焦点距離なども固定にし、できるだけ小型軽量にするということを第一に、下の図のような仕様にすることにしました。

 ピンホールレンズは前回作ったものを使うこととし、それ以外は新規に作成します。
 ピンホールカメラなので広角系の方が使い勝手が良いだろうということで、画角は80度前後、35mm判のカメラにすると焦点距離28mmくらいのレンズに相当するカメラとします。
 厳密な焦点距離や画角は必要ありませんが、露出値の換算をする際にやり易いよう、F値は切れの良い数字にする必要があります。前回作ったピンホール径は0.3mmなので、これをベースに焦点距離が50~60mmで切れの良いF値ということで計算した結果、焦点距離54mmの時にF値が180になるので、これを採用することにしました。欲を言えば、F値は128、もしくは256の方が換算しやすいのですが、そうすると焦点距離が短すぎたり長すぎたりしてしまうので、F180で妥協することにしました。

 なお、今回作成するピンホールカメラに使用する部材等はすべて身近にある端材などを流用し、新規に購入せずに行なうこととします。

ピンホールレンズの改造

 まずはピンホールレンズの改造からです。
 前回作ったのは、シャッターNo.1の大判レンズから前玉と後玉を外し、シャッターの前面に自作のピンホールをはめ込むというものでしたが、これだとシャッター位置よりもだいぶ前にピンホールレンズがくることになります。そのため、焦点距離が長くなってしまい、画角を大きくすることができないという欠点がありました。
 そこで、今回はピンホールレンズをシャッター幕のすぐ前に設置することにしました。これを、前玉のレンズを全部外した枠だけを使ってシャッター幕の直前のピンホールレンズを固定するという方法をとります。

 シャッターにピンホールレンズを取付けたのが下の写真です。

 以前のものと比べ、これ単体でも焦点距離を15mmほど短くすることができました。
 また、前玉の枠がフードの役目をしてくれるので、直接ピンホールレンズに太陽光があたるのをある程度防ぐことができ、フレアのようなものが生じるのを軽減することができます。

ピンホールカメラ筐体の製作

 カメラの筐体はアクリル板か木板で作ろうと考えていたのですが、アクリル板だとなんとなく味気がないので、木板を使うことにしました。適当な端材がないか探したところ、厚さ9mmの合板があったのでこれを使用します。
 各部の寸法はホースマンのロールフィルムホルダーに合うようにしなければならないので、必要個所を採寸して筐体のサイズを算出します。

 実際に筐体の図面を引くとこのようになります。

 上の図で分かるように、端材で作った四角な枠の中にロールフィルムホルダーがすっぽりと嵌まり込む構造になります。光線漏れがないよう、内寸は正確にする必要があります。
 また、シャッターを取付けるフロントパネルは厚さ5mmの合板を使用しました。この板の中央に直径48mmの穴をあけ、ここにシャッターを取付けます。

 これを組み上げたのが下の写真です。

 木工用の接着剤で貼り付けているのでそのままでも強度的には問題ありませんが、デザイン性を考慮して真鍮製の釘を打ってみました。

 ピンホールカメラは長時間露光が必要なので、三脚使用が前提となります。そこで、筐体の底面に三脚用の台座を取付けます。
 厚さ9mmの合板を適当な大きさ(ここでは35mmx70mm)にカットし、その中央にメネジを埋め込みます。直径8.5mmの下穴をあけ、そこにねじ込めば完成です。ネジの径の方が若干大きいので、ねじ込むにはかなり力が要りますが、雲台プレートのネジを締め付けるときに動いてしまうと使い物にならないので、固いくらいが丁度良いです。もし、緩いようであれば、メネジの周囲に瞬間接着剤を少し流し込んでおけば心配ありません。

 この三脚台座を筐体の底板に接着します。

 次に、筐体天板の加工を行います。
 後ほど触れますが、今回は簡易型のスピードファインダーのようなものを取付けられるようにするのと、フィルムホルダーを固定するため、天板に若干の加工を施します。

 加工内容は下の図の通りです。

 まず、スピードファインダーを取付けるための磁石を埋め込みます。これは、レンズ側に2個、フィルムホルダー側に1個です。
 今回使用した磁石は、約9mmx14mm、厚さが約2mmのネオジム磁石です。小さいですがとても強力な磁石です。これを天板につけるのですが、天板の表面が平らになるように磁石を埋める穴を掘ります。

 こんな感じです。

 この穴に接着剤を流し込み、磁石をしっかりと固定します。

 さてもう一つ、ロールフィルムホルダーを筐体に固定しなければならないのですが、固定ピンを筐体側から差し込み、フィルムホルダーの溝に嵌合させるという簡単な方法です。
 固定ピンは大型のゼムクリップを利用して自作しました。サイズは適当で構いませんが、ピンの長さはある程度、正確にする必要があります。今回、筐体に使用した端材の板厚が9mmなので、この板を貫通してフィルムホルダーの溝に届かせるには13mmの長さが必要です。短すぎるとフィルムホルダーがしっかり固定できませんし、長すぎると固定ピンが浮いてしまいます。
 この固定ピンは筐体の底板にも取り付けます。

 これで筐体の組み立ては完了ですので、内側に反射防止のため、艶消し黒で塗装をします。
 外側はそのままでも問題はありませんが、少しでも見栄えをよくするため、透明のラッカーを数回塗りました。
 なお、隙間からの光線漏れはないと思いますが、もし心配なようであればモルトを貼っておけば心配ないと思います。

 ちなみに、ロールフィルムホルダーを取り付ける際は、固定ピンを浮かせた状態でフィルムホルダーを筐体にはめ込み、その後、固定ピンを奥まで押し込みます。これで、フィルムホルダーが外れることはありません。

簡易型スピードファインダーの製作

 ピンホールカメラの撮影でいちばん苦労するのがフレーミングです。ピンホールはその名の通りとても小さいので、フォーカシングスクリーンのようなものに投影しても暗くてほとんど像を認識することができません。
 そこで今回は、簡易型のスピードファインダーなるものを取付けることにしました。

 仕組みはいたって簡単です。

 上の図でお分かりいただけると思いますが、フィルム面と同じ大きさのブライトフレームを書き込んだ透明の板を焦点距離と同じだけ離れた位置から見ることで、フィルムに写る範囲を確認するというものです。

 レンズ側に取り付けるのは、フィルム面よりも一回り大きな透明の板です。今回は、厚さ1.8mmの透明のアクリル板を使いました。これをL字型に曲げ、そこにブライトフレームを書き込みます。使用するフィルムのサイズが69判で実寸が56mmx83mmなので、それに合わせて白いペンキで線を引いています。
 もう一つ、フィルム側に取り付けるものも同じように透明のアクリル板をL字型に曲げますが、こちらはずっと小さなもので大丈夫です。

 そして、レンズ側のブライトフレームの中心に小さなマーキングをします。私は、同じように白のペンキを使いましたが、何でも構いません。
 一方、フィルム側に取り付けるファインダーには、レンズ側フレームの中心のマーキングと同じ高さのところに小さな穴をあけます。

 次に、スピードファインダーをカメラの筐体に取り付けるため、L字型に曲げたところに磁石を取付けます。
 これは、両面テープや接着剤などで貼り付けても良いのですが、私はアクリル板に磁石がはまるサイズの穴をあけ、そこに円形の磁石をはめ込み、瞬間接着剤で固定しました。
 ここで重要なのが磁石の向きと固定する位置です。
 まず磁石の向き(極性)ですが、筐体の天板につけた磁石とくっつくようにしなければなりません。これを間違えると磁石の反発力でファインダーがぶっ飛んでしまいます。
 次に磁石を固定する位置ですが、レンズ側のファインダー面が、概ねレンズの位置に来るように磁石を固定すること、フィルム側のファインダー面が、概ねフィルムの位置に来るように磁石を固定することです。つまり、2枚のファインダーの間隔が、焦点距離にほぼ等しくなるようにします。

 こうして出来上がった簡易型スピードファインダーが下の写真です。

 使い方は簡単で、フィルム側のファインダーの小さな穴からレンズ側ファインダーの中心点が重なるように覗きます。その時のブライトフレームの内側がフィルムに写り込む範囲になります。それほど精度の高いものではありませんが、フレーミングをする上ではまずまず使い物になるレベルだと思います。
 後は、これをカメラに取り付けるだけです。強力な磁石を使用しているため、取り付け位置を気にしなくても2枚の磁石がほぼ中心でくっつきます。
 取り外す時もファインダーの上の方を持って、前後どちらかに押せば簡単に外すことができます。使わないときは取り外しておけば、よりコンパクトなカメラになります。

 磁石を固定するための瞬間接着剤の量が多すぎたようで、アクリル板が白くなってしまいました。後日、白いペンキか何かを吹き付けて綺麗にしてやろうと思います。

 実際にカメラに取り付けるとこのようになります。

 フィルムホルダー側(後側)から見た写真がこちらです。

作例...は、まだありません。

 まだ撮影に行っていないので、残念ながら作例はご紹介できません。近いうちに実際に撮影をしてみようと思います。

 このカメラを実際に操作した時の感触ですが、剛性はそこそこ保たれているようで、三脚に固定すれば安定しています。フィルムの巻き上げやシャッターチャージなどの際にもぐらついたりきしんだりすることがありません。ここで使用したシャッターはSEIKO製ですが、シャッターチャージレバーがとても重く、動かすのに力が要るのですが、特に問題なく使用に耐えられます。
 また、ストラップは着けてありませんが、やはりストラップがあった方が扱い易いように思います。適当な金具があれば、筐体の両サイドに取り付けてみたいと思います。

 なお、撮影の際にはフィルムホルダーの引き蓋を外すのを忘れないようにする必要があります。シャッターがついているので、フィルムホルダーの引き蓋は外したままでも問題ないと思いますが、万が一のため、引き蓋は着けておく方が安心です。

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 20年以上も暗いジャンク箱の中で眠っていた69判のロールフィルムホルダーですが、やっと日の当たる場所に出ることができたという感じです。
 また、今回は家にあった端材や部材などを利用して作ったので見てくれはイマイチですが、ちゃんとした材料を使えばもっときれいなカメラに仕上がると思います。

 ピンホールカメラは簡単に作ることができるということも手伝ってか、根強い人気があるようです。世界に1台しかない自分だけのカメラということにも愛着が湧くのかも知れません。銘板なんぞを取付ければ、一層カメラらしくなると思います。

(2024.1.5)

#ピンホール写真 #Horseman #ホースマン

縦長パノラマ写真の魅力 -6×12フィルムホルダーで撮る掛け軸写真-

 パノラマ写真を撮る頻度は決して高くありませんが、大判カメラを持ち出すときは必ずと言っても良いくらい、6×12のロールフィルムホルダーも持っていきます。
 パノラマ写真というのは、自分が撮るのも含めて圧倒的に横長が多いのですが、縦長のパノラマ写真というのは不思議な魅力があります。縦長のパノラマ写真はなかなか思うように撮れないのですが、今回は数少ない縦長パノラマ写真を何枚かご紹介したいと思います。

人間の視野角にあてはまらないフォーマット

 横に対して縦が極端(概ね2倍以上)に長い画像を見ると、最初はちょっとした違和感を感じます。理由はよくわかりませんが、縦長の画像を見た時に、視点が画像の下から上に動くのが自分でもわかります(私の場合、上から下ではなく、常に下から上に動くというのが何とも不思議です)。この、パッと見た後に、なめるように視点が上に移動することが違和感となっているのかもしれません。

 人間の眼の視野角というのは個人差がありますが、水平(左右)方向に180~200度、垂直(上下)方向に120~130度のようです。水平方向の方が垂直方向の約1.5倍も広く見ていることになり、これは比率にすると約3:2となります。つまり、人間は自然にものを見た時に、3:2のアスペクト比で画像をとらえているということのようです。35mmフィルムの一コマが36mmx24mmで、アスペクト比が3:2になっているのは偶然ではないのかも知れません。
 それはさておき、人間の眼は横長にとらえるのが自然であるならば、縦長の画像を見た時に違和感のようなものがあるのは当然のようにも思えます。

 しかし、縦長のパノラマ写真にはちょっとした新鮮さのようなものが感じられて、つい撮りたくなってしまいます。縦に細長く切り取られた画像の両サイド(左右)の外側が妙に気になったりもしますが、一方で、狭く窮屈なフォーマットの中にバランスよく収まった画像には無駄のない美しさのようなものも感じます。まさに「掛け軸写真」といった感じです。
 が、これは単純に普段見慣れている横長の画像とは異なっているからかも知れません。

縦長パノラマの構図はなかなか決めにくい

 そんな不思議な魅力を持った掛け軸写真ですが、実際に撮るとなると構図決めに結構苦労します。
 テーブルフォトのように被写体を自由に動かすことができれば良いのですが、自然が相手の場合はそういうわけにもいかず、横1に対して縦2のアスペクト比に収める構図を探すのが思いのほか大変、というのが私の実感です。適当に撮ると、写真の上下に無駄なものがたくさん入っていたり、左右が狭められてとても窮屈な写真に見えてしまったりします。

 例えば、広い風景などでは近景、中景、遠景がうまい具合に配置されると、全体としてまとまりもあり、奥行き感もある写真になるのですが、これがなかなか難しいです。
 また、空間の取り方も難しく、変なところに配置すると無駄な部分がとても目立ってしまいます。
 私が多用しているフィルムは4×5判や67判なので、アスペクト比はおよそ1.2:1(横:縦)ですから、縦長パノラマにこのような戸惑いを感じるのは仕方がないかも知れません。

 4×5判や67判は長年使っているので写し込める範囲が感覚的につかめるのですが、縦長のパノラマは慣れていないせいか、その感覚がイマイチしっくりときません。そのため、6×12サイズのプアマンズフレームを自作して、これを持ち歩きながら、ここはといった場所でフレームをのぞき込んで構図を確認しています。

縦長パノラマ写真(掛け軸写真)の作例

 思うように撮れない掛け軸写真ですが、これまで撮った中から何枚かをご紹介します。いずれも大判カメラに6×12のロールフィルムホルダーを装着しての撮影です。

 まず、1枚目の写真は長野県にある八岳の滝です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W150mm F32 4s PROVAI100F

 多くの滝は横幅よりも高さの方が大きいので、掛け軸写真にし易い被写体と言えると思います。この滝も高さに比べて横の広がりはあまりないので、この縦長フォーマットにうまい具合に納まってくれました。
 4×5判や67判で撮るともっと横の広がりがあり、滝の周囲の環境が良くわかるのですが、このような縦長フォーマットで撮ると滝が強調され、画全体がシンプルな構成になります。
 また、滝を正面からではなく、向かって左手方向から撮っているので、画の左上から右下にかけての滝のラインが出せており、安定感も出せたのではないかと思っています。

 2枚目も同じく長野県北部にある小菅神社の参道です。

▲WISTA 45SP Schneider APO-SYMMAR 150mm F32 2s PROVAI100F

 参道の両側に大きな杉の木が立っている場所なので、これも掛け軸写真には向いている風景だと思います。杉並木が奥へと続く参道をより狭く感じさせているのと、縦長フォーマットにすることで杉の木の高さも感じられると思います。
 この写真では、できるだけ杉の木の上の方まで入れるため、カメラを上方に振っていますが、そのままだと杉の木の上部が中央に寄ってしまいます。それを防ぐため、フロントライズのアオリをかけています。

 次の写真は、埼玉県で通りがかりに偶然見つけた巨木です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W180mm F22 1/4 PROVAI100F

 木の種類(名前)はわかりませんが、まだ芽吹きの前で、朝焼けのグラデーションの中に綺麗なシルエットとなって立っていました。
 個人的には木の占める割合をもう少し少なくしたかったのが本音です。その方が掛け軸っぽくなるだろうと思います。ちょっと掛け軸写真というイメージからは外れてしまった感じです。

 さて、次の写真は栃木県の宮川渓谷で撮ったものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm F32 4s PROVAI100F

 大きな渓谷ではありませんが、奥からS字を描いている流れがとても綺麗です。左端中央あたりの流れが少しちょん切れてしまい、窮屈感が否めませんが、奥行き感はまずますといったところでしょう。もう少しだけ、短焦点のレンズを使った方が良かったかもしれません。
 滝のように高さはないのですが、奥行き感を出せれば掛け軸写真になるという感じです。
 また、手前から奥までパンフォーカスにするため、フロントティルトのアオリをかけています。

 次は、山梨県の河口湖畔から富士山と桜を撮った写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SW90mm F45 1/8 PROVAI100F

 縦長に収めるため、桜の木の真下に入って短焦点(広角)レンズで見上げるようなアングルで撮りました。富士山の占める比率を2割くらいにし、残りの8割は桜で埋めています。もう少し桜のボリュームが欲しかったところですが、そうすると花に陽が当たらず暗くなってしまうので、まばらに咲いている枝を選びました。
 富士山の下の方には河口湖の水面が見えるのですが、建物などの人工物も写ってしまうため、フレーミングから外しました。

 最後の写真は、近所の公園で撮影した桜(フゲンゾウ)のアップです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W250mm F5.6 1/30 PROVAI100F

 この桜は八重咲で、しかも花が大きいのでとても豪華な感じがします。花は淡いピンクで、上品な色合いです。
 このように、数輪の花を縦長のフォーマットに入れると空間がたくさんできてしまいますが、そこに何かを入れるとゴチャゴチャしてしまいますし、なにも入れないと間の抜けた感じになってします。バックには別の枝があるのですが、これを目いっぱいぼかし、形はわからず、色合いだけがわずかに残るようにしました。

 このような構図の時に花の位置をどこにするか、何しろ空間が多いので非常に悩みます。結局、中央より少し下目に置いたのですが、もう少し下の方が掛け軸写真には向いていると感じています。

縦長パノラマ写真(掛け軸写真)はディスプレイにも苦労する

 掛け軸写真でもう一つ苦労するのがディスプレイです。
 ポジ原版をライトボックスで見るだけであったり、パソコンのモニタに映すだけであれば特段問題はないのですが、プリントして額装しようとすると結構大変です。

 まずプリントですが、このようなアスペクト比の用紙などそもそもありませんから、大きな用紙の一部を使うことになります。当然、左右の余白はカットしてしまいますので非常にもったいないです。一枚の用紙に2枚の写真を並べてという方法も考えられますが、それには最低でも半切以上の大きさが欲しいですし、そうなるとプリンタの制限も生じてきます。

 そして、プリントよりも難題なのが額です。
 規格品にはあろうはずもなく、額装するのであれば特注するしかありません。特注すればどのような額でも大概は作ってもらえますが、コストは覚悟しなければなりません。
 市販品の額のマット紙だけを自作、または加工してもらう方法もありますが、マット幅が上下と左右で異なるのは格好良くありません。

 床の間にかける掛け軸のように表装するのもありかと思いましたが、写真に表装は似合わないと思います。

 ちなみに額装するとこんな感じになるのですが、こんな額に入れられるような写真を撮りたいものです。

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 縦長パノラマ写真、掛け軸写真はうまくいくとインパクトのある写真になりますが、時間とお金をかけて額装するほどの写真にするのが難しいというのが正直なところです。
 しかしながら、掛け軸写真はやめられそうもありませんので、これからも細々と続けていこうと思っています。

(2022年3月12日)

#ホースマン #Horseman #パノラマ写真 #リバーサルフィルム #構図

PENTAX67を使って35mmフィルムでフルパノラマ写真を撮る

 だいぶ以前になりますが、ホースマンのパノラマフィルムホルダの紹介ページにおいて、PENTAX67でパノラマ写真が撮れるような改造をしたことをチラッと書きましたが、今回はそれをご紹介したいと思います。
 パノラマ写真は何とも言えない魅力がありますが、写真として仕上げるのは難しいと思います。
 今回ご紹介するのは、かなり以前に作ったものなので作成途中の写真はありません。悪しからず。

24mm×70mm アスペクト比1:2.9のパノラマ写真

 PENTAX67に限らず、中判カメラに35mmフィルムを入れてパノラマ撮影をされている方は結構いらっしゃると思います。35mmフィルムのパトローネとブローニーフィルム(120、220)の太さがほぼ同じため、うまい具合に35mmフィルムが中判カメラの中に納まるので、面倒な加工をしなくてもパノラマ写真が楽しめるというお手軽さが受けているのかもしれません。

 かつて、富士フイルムからTX-1という35mmフルパノラマ写真が撮れるカメラが発売されていましたが、67判のカメラを使うことでTX-1を上回るアスペクト比1:2.9のパノラマ写真が撮れます。これはかなり迫力のある写真になります。

フィルムマスクの作成

 特にフィルムマスクもせずに、35mmフィルムのパーフォレーションのところも露光させるというダイナミックな写真を撮られる方も多いですが、今回は70mm×24mm(正確には69.4mm×24mm)になるようなフィルムマスクを作成しました。
 このフィルムマスクを作成したもう一つの理由は、フィルムの平面性を保つためです。マスクなしで横幅70mmのフィルムを左右両端だけで支えると、フィルム圧板があってもフィルムの上下がレンズ側に湾曲してしまいます。フィルムマスクをつけることでフィルムの上下端を支えるので、フィルムの湾曲を極力抑えることができます。

 PENTAX67のアパーチャー(フィルム露光枠)の大きさは、69.4mm×55mmです。このため、この枠の上下に15.5mm幅のマスクを取り付けます。
 マスクの簡単な図面は下の通りです。

▲PENTAX67用 フィルムマスク寸法

 厚さ2mmのアクリル板で、PENTAX67のアパーチャーにピッタリはまるマスクのベースを作ります。この上に、厚さ0.8mmのプラスチック板でマスクを作り、貼り付けます。
 厚さ0.8mmのプラスチック板を貼り付けると、ブローニーフィルムの上下端が乗るレールとちょうど同じ高さになります。ちなみに、0.8mmのプラスチック板は、不要になったクレジットカードを流用しています。

 こうして作成したフィルムマスクが下の写真です。2枚必要です。

▲PENTAX67用 フィルムマスク

 このマスクをPENTAX67に装着するとこんな感じになります。

▲PENTAX67にフィルムマスクをつけた状態

 シャッター膜の上に見える上下2枚の黒い板がフィルムマスクで、このマスク間の幅が24mmになります。

35mmパトローネ用のスプールの作成

 35mmフィルムのパトローネの太さはブローニーフィルムとほぼ同ため問題ありませんが、長さが短いので、ブルーニーのスプールと同じ長さになるように付け足す必要があります。
 ブローニーのスプールの両端を切断し、ここに、35mmフィルムのパトローネにはめ込むための加工を施します。
 パトローネの軸は上端と下端で形状が違うので、下の写真ような2種類の加工を行ないます。

▲35mmフィルムパトローネ用スプール軸

 フィルムが上下中央に来るように、それぞれ寸法は正確にする必要があります。主な寸法は下図の通りです。

▲35mmフィルムパトローネにはめるスプール軸

 ブローニー用のスプールを、両端からそれぞれ7mm、12mmのところで切断し、ここに上の図面の青い網掛けのパーツを作成し、スプールにはめ込みます。私は、加工のし易い厚さ3mmのプラスチック板で作成しました。

 これを35mmフィルムのパトローネに嵌めると、こんな感じです。

▲35mmフィルムパトローネにスプール軸を装着した状態

フィルム巻き取り側のスプールの作成

 PENTAX67の裏蓋を開けた右側にはフィルムを巻き取っていくための空のスプールが入ります。ブローニーフィルム用のスプールをそのまま使うこともできますが、巻き取った後がタケノコ状態になってしまうと写真が斜めになってしまうので、それを防ぐために35mmフィルムがちょうど収まるようにスプールの両端にガイドをつけます。

▲フィルム巻き取り側のスプール

 スプール端からのガイドの幅をそれぞれ19mmにすると、中央のフィルムを巻き取る部分の幅は35mmになります。
 このガイドをどうやって取り付けるか、いろいろ悩んだのですが、幅を19mmに切った画用紙をくるくると巻き付けていくというお手軽な方法で済ませました。

ファインダーのマスク

 ファインダーが67判のままだと構図決めがやりにくいので、ファインダースクリーンのところにマスキングテープでマスクをします。幅15mmのマスキングテープをファインダースクリーンの上下端に合わせて貼ると、中央の幅がちょうど24mmになります。

▲PENTAX67 ファインダーマスク

 マスクは何を使っても良いのですが、マスキングテープを使うと真っ暗にならず、少し映像が見えるので便利です。また、マスキングテープは剥がしても痕が残らないので、元に戻すときも便利です。

35mmフィルムの先端にリーダーペーパーをつける

 以上で必要なパーツは揃いましたが、最後に、35mmフィルムにちょっとした手を加えます。
 35mmフィルムと違い、ブローニーフィルムには先端にリーダーペーパーがついています。このリーダーペーパーを空のスプールに巻き付け、フィルムを巻き上げていくわけですが、リーダーペーパーの端からフィルムの1コマ目まで、45cmほどの長さがあります。
 35mmフィルムをそのまま使用すると、約45cmも無駄に巻き上げられてしまい、とてももったいないです。
 そこで、35mmフィルムの先端にリーダーペーパーを取り付けます(下の写真)。

▲35mmフィルムにリーダーペーパーをつけた状態

 私は、セロハンを35mm幅に切って、これをフィルムの先端にテープで貼り付けています(透明でわかりにくいので、黒のマジックで縁取りしてます)。
 一旦、このセロハンのリーダーペーパーをパトローネの中に巻き込み、その状態でカメラにセットします。なお、全部巻き込んでしまわずに、先端を少し残しておきます。全部巻き込んでしまうと、取り出すのに苦労します。
 こうすることで、フィルムの無駄をなくすことができます。

カメラへのフィルムの装填

 さて、いよいよカメラへの装填です。
 カメラの右側に巻き取り用のスプール、左側に35mmフィルムのパトローネをはめ込みます。そして、35mmフィルムの先端に取り付けたリーダーペーパーを引き出し、右側のスプールに巻き付けます。

▲PENTAX67に35mmフィルムを装填した状態

 その後、カメラの巻き上げレバーを動かしてフィルムを巻き上げていきますが、フィルムの先端がパトローネからチラッと見えたところで巻き上げを止めます。この位置がスタートマークに相当します。上の写真ではフィルムがかなり顔を出していますが、もっと手前で止めておくのが望ましいです。

 この状態でカメラの裏蓋を閉じ、巻き上げレバーを動かして巻き上げていくと、フィルムカウンターが「1」のところで巻き上げができなくなります。これで撮影ができる状態になっているわけですが、この時、フィルムもちょうど1コマ目あたりがアパーチャーのところにきているという感じです。

 なお、PENTAX67の枚数切り替えダイヤルを「220」にしておかないと、10枚撮影した時点で巻き上げはできますがシャッターがチャージがされなくなり、以後、撮影ができなくなってしまうので要注意です。

撮影可能な枚数

 36枚撮りフィルムを使い、うまく1コマ目の頭出しができていると18枚の撮影が可能です。
 フィルムの頭出しがうまくいかず、少し無駄が出てしまうと17枚までは可能で、18枚目を巻き上げようとすると、フィルムの終端が来てしまい、途中で動かなくなってしまいます。そうなった場合は無理をせず、装填したフィルムの撮影はそこで終了ということです。
 なお、カラーネガフィルムには27枚撮りというものがありますが、これについては使ったことがないので何枚の撮影ができるか不明です。撮影コマ数の比率で計算すると13枚くらいかと思われますが...

撮影後のフィルムの取り出し

 ブローニーフィルムは撮影後、そのまま巻き取ってしまいますので、35mm判カメラのような巻き戻し機能はありません。そのため、撮影後はカメラの裏蓋を開けてフィルムを取り出さなければなりません。
 当然、真っ暗闇で行なわなければフィルムが感光してしまうので、ダークバッグや暗室の中で行なう必要があります。35mmフィルムのパトローネを取り出し、くるくると手で回しながらフィルムをパトローネに巻き込んでいくという煩わしさがあります。
 フィルムを何本も持って行っても、ダークバッグがなければ2本目以降の撮影はできませんので注意が必要です。

アスペクト比1:2.9のパノラマ写真の作例

 実際にPENTAX67パノラマ改造機を使って撮影した写真です。

▲PENTAX67 SMC-TAKUMAR6x7 75mm 1:4.5 F16 36s PROVIA100F

 やはり、アスペクト比が大きいのと、35mmフィルムといえども、フルに使っているので中判並みの解像度があります(解像度を落としているので画面ではわかりにくいと思いますが)。
 唯一の悩みは、このパノラマ写真をプリントしても、きちんと額装できる額縁が市販品にはないということです。額装する場合はマット紙を特注するか、自作しなければなりません。

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 今回はPENTAX67を使いましたが、他の中判カメラでも同じような方法でパノラマ写真の撮影ができます。機会があれば、ミノルタオートコード(66判の二眼レフカメラ)や富士フイルムのGW690などでもやってみようかと思います。

(2021.7.7)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #パノラマ写真 #ホースマン #Horseman

ホースマン Horseman パノラマフィルムホルダー

 ときどき、無性にパノラマ写真を撮りたくなることがあります。今はスマホやデジカメで複数枚の写真を合成して簡単にパノラマ写真を作ることができますが、私の場合、フィルム上にパノラマ写真を残したいという欲望です。世の中には昔からいろいろなパノラマカメラが存在していますが、それらはどれも高価で簡単に手を出せるものではありません。

パノラマ写真の火付け役

 1990年代、コンパクトカメラに「パノラマモード」なるものが装備され、パノラマ写真がブームになったことがありました。最初にどのメーカーが始めたのかはわかりませんが、35mmフィルムの上下をそれぞれ5mmほどマスクすることで、14mm×36mmほどのパノラマ写真(アスペクト比は1:2.5)にするというものでした。しかし、もともと決して大きくはない35mmフィルム1コマの約4割を使わないわけですから、プリントすると画像の粗さが目立ってしまいます。ですが当時としては横長の写真が目新しく感じたせいか、各メーカーからがパノラマ用の額縁やアルバムがたくさん発売されていました。
 残念ながら私は実際に使ったことがないので、ネガや写真がありません。

フルパノラマカメラ 富士フイルム TX-1

 1998年に富士フィルムから「TX-1」というカメラが発売されました。35mmフィルム用のレンジファインダーカメラですが、通常の写真のほかにフルパノラマの写真が撮れる、しかも1コマごとにノーマルとフルパノラマを自由に切り替えられるという画期的なカメラでした。私はこのカメラがどうしても欲しくなり、2000年だったと思いますが欲望に抗いきれずに買ってしまいました。レンズは30mm、45mm、90mmの3本がラインナップされていましたが、45mmと90mmのレンズも一緒に購入しました。
 下の写真は実際にTX-1の45mmレンズで撮ったポジです。1コマの大きさは24mm×65mmで、アスペクト比は1:2.7です。

「富士見高原 花の里」 Fujifilm TX-1 45mm 1:4

 35mmフィルムとはいえ、通常の1コマの2倍近くの面積があるので見応えもありますし、解像度やコントラストもさすがFujinonという感じです。しかしながら、1コマの対角が70mm近くもあるので、レンズは中判をカバーするほどのイメージサークルを持っているとはいえ、やはり周辺光量の落ち込みが目立ちます。

 1年、2年とTX-1を使っているうちに、レンズのバリエーションに不足を感じるようになりました。かといって30mmレンズは高額すぎて手が出せません。ある日、PENTAX67に35mmフィルムを入れればフルパノラマ写真が撮れるではないかと思い、手元にあったPENTAX67を少しいじってみました(PENTAX67のパノラマ改造については、別途ご紹介したいと思います)。

PENTAX67をパノラマ仕様に改造

 下の写真がPENTAX67改で撮ったフルパノラマのポジです。1コマのサイズが24mm×70mmで、アスペクト比は1:2.9、TX-1よりも5mmほど横長です。そして何よりも手元にある35mmフィッシュアイから500mm望遠まで10本のレンズが使えることと、周辺光量の落ち込みが全くないので、不満は一気に解消しました。

「石舟橋」 PENTAX67 smcPENTAX 55mm 1:4

ホースマン ロールフィルムホルダー

 しかし欲望とは限りがないもので、35mmフィルムでのパノラマでは飽き足らなくなり、中判フィルムでのパノラマ写真が撮りたくなってきました。前にも書いたように市販されているカメラはとても高価で買えないので、大判カメラ用のロールフィルムホルダーを手に入れることにしました。連日オークションサイトで探し、程度が良くて価格も手頃なホースマン製の6×12ロールフィルムホルダーをやっとゲットすることができました。
 このフィルムホルダーはブローニーフィルム(120)1本で6枚の撮影ができます。220フィルム用があるとうれしいので調べてみましたが、そもそも生産されていないようです。
 構図を決め、ピントを合わせた後、大判カメラのバック部(フォーカシングスクリーン)を外し、このフィルムホルダーを装着しなければならないので結構手間です。

Horseman 612 Film Holder
Linhof MasterTechnika45 + Horseman Film Holder

ブローニーフィルムでパノラマ撮影

 下の写真が6×12ホルダーで撮ったパノラマのポジです。1コマのサイズは56mm×118mmです。アスペクト比は1:2.1で、TX-1やPENTAX67改に比べると縦横比は控えめですが、十分見ごたえがあります。

「津軽海峡」 Linhof MasterTechnika45 Fujinon W150mm 1:5.6 Horseman 612 Holder

 世の中には6×17というパノラマ専用のカメラもあります。いつかは6×17に挑戦したいと考えていますが、いつになることやら...

 ところで、パノラマ写真は圧倒的に横位置での撮影が多いのですが、個人的には縦位置のパノラマ写真が好きです(縦長をパノラマというのが適切かどうかわかりませんが)。もちろん横長の画も迫力ありますが、縦長の掛け軸のような画は格別のものがあると感じています。
 下の写真は6×12の縦位置での写真です。横位置のパノラマは比較的絵にしやすいのですが、縦位置のパノラマは結構難しいです。はたして、この風景を超縦長の6×17で撮ることができるだろうかと思います。

「安久津八幡神社」 Linhof MasterTechnika
            Fujinon W125mm 1:5.6
            Horseman 612 Holder

(2020.7.11)

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