中判レンズ ペンタックス67:SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 PENTAX67用のレンズです。焦点距離が75mmですので中判カメラ用としては広角の部類に入ります。35mm判カメラでいうと35~38mmくらいのレンズに相当する画角といったところでしょうか。風景を撮る際、私にとってこの焦点距離と画角は使い易く、比較的出番の多いレンズです。

レンズの主な仕様

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 61度
   レンズ構成枚数 : 4群5枚
   最小絞り    : 22
   最短撮影距離  : 0.7m
   フィルター径  : 82mm
   最大径x長さ  : 91.5mm × 81mm
   重さ      : 600g

SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 フィルター径が82mmあり、寸胴型をしていますので大きく見えますが、重さは600g(カタログ値)で、TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 (590g)とほぼ同じです。ほぼ同じ重さながら図体が大きいので、手に持つと見かけよりも軽く感じます。私のレンズはTAKUMAR 6×7ですが、PENTAX 67になると40gほど軽くなっています。レンズ構成など仕様は同じですので、鏡胴等の材質を変えることで軽量化が図られているのではないかと思います。

特徴的なメニスカスレンズ

 このレンズの外観上の特徴は何といっても前玉にあります。斜め横から見ると曲率の大きなメニスカスレンズがドーム屋根のように盛り上がって見えます。斜めから入射する光を収束するのに効果があるといわれていますが、PENTAX67用のレンズの中でも、これだけ大きな曲率を持ったメニスカスレンズを用いているのはこの75mmとShift75mmだけではないかと思います。コーティングの色は最近のレンズに比べるとあっさりとした感じがします。

SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 開放絞りが4.5と若干暗めですが、風景を撮る分にはそれほど不都合は感じません。一方、最短撮影距離の0.7mはもう少し短くしてほしかったという思いはあります。
 2001年にSMC PENTAX67 75mm 1:2.8 AL というレンズが発売されました。明るいし小ぶりだし最短撮影距離は短いし、とっても欲しかったのですが非常にお高くて結局あきらめました。そもそも製造数が少ないらしく、中古市場でもあまり出回っていませんし、たまに見かけてもかなりの高額です。非球面レンズを採用しているので写りも向上しているのではないかと思いますが、残念ながら実際に使ったことはありません。

被写界深度

 話しを75mm 1:4.5のレンズに戻しますが、鏡胴に刻まれた被写界深度目盛りを見ると、最小絞りのF22で約2.4m~∞までピントが合うことになっています。これは、5mあたりにピント位置を置いておけば、近距離の撮影を除いてはピント合わせをしなくてもパンフォーカスの写真が撮れるということになります。しかし、そんな状態で撮影した写真は四つ切くらいまでのプリントであれば問題ありませんが、半切や全紙に引き伸ばすとピントの甘さが目立ってきます。ましてやフィルムをスキャンしてパソコンで等倍表示などしようものならさらに目立ちます(等倍表示してどうするんだという思いもありますが)。そもそも、この頃のレンズの許容錯乱円が、パソコンで等倍表示するなどということを想定されていないわけですから、これは仕方のないことかもしれません。ですので、被写界深度は深いとはいえ、やはり正確なピント合わせは必要と思います。

このレンズの写りは...(作例)

 さて、このレンズ、PENTAX67用のレンズの中では若干硬めの写りをするように思います。カリカリとした感じではなくキリッとしたシャープさが感じられ、個人的には好感の持てる写りだと思っています。コクのある発色も好みです。
 周辺部の画質の劣化や歪曲収差などもほとんど感じられず、建物などを撮影してもまっすぐなものはまっすぐに写り、気持ちの良い画に仕上がるレンズだと思います。

 下の写真は夜の京王線車両基地をこのレンズで撮ったものです。デイライトフィルムを使っているために照明による色被りが発生していますが、全体にわたって高い解像度を保っており、シャープさが感じられるのではないかと思います(もちろん、今のデジカメはもっとシャープに写せるのでしょうが)。周辺部においても画質の乱れはほとんど感じられないレベルではないかと思います。

京王線若葉台車両基地  PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 75mm

 このレンズの画角は61度ですが、これは私にとって非常にしっくりとくる画角です。クセのない画角、特徴を出しにくい画角という見方もできますが、大きく引き伸ばしたときに不自然さがないのがお気に入りの理由です。
 すでに生産終了品ですので新品は手に入りませんが、中古市場で程度の良い個体がお手頃な価格で出回っていたら、もう一本買っておきたいと思えるレンズです。

(2020.8.29)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写

ヴィンテージカメラの魅力

 例年になく長い梅雨がやっと明けたと思ったら耐え難いくらいの猛暑が押し寄せ、しかも今年は新型コロナの影響で遠出もままならない状態です。撮影も思うようにできず、悶々とした日を過ごしています。
 そんなわけで、たまには中古カメラ店にでも行ってみようかと思い、新宿と中野にある中古カメラ店を何件かはしごしてきました。

 近年、中古カメラ店に行って感じるのは、若い女性客が多いということです。しかも、デジカメではなくフィルムカメラを探している女性を多く見かけます。聞くともなく、店員さんとの会話が耳に入ってくるのですが、これからフィルムカメラを始めようと思っている女性が多いことに驚きです。
 食べ物にしてもいろいろなお店にしても、若い女性から支持されることが売上の伸びる大きな要因らしいです。フィルムカメラも若い女性に支持されて、市場が大きくなってほしいものです。

 さて、私はカメラのコレクターではありませんので、実際に使いもしないカメラやレンズを買うことはほとんどありません。ですが、中古カメラ店に並んでいる年代物のカメラを見ると、「いいなぁ」「ほしいなぁ」という気持ちが湧いてくるのも事実です。買っても実際に撮影に使うことはほとんどないだろうということがわかっていながらも、欲しいと思うのは何故なんでしょう?月並みな言い方をすると、カメラの持つオーラのようなものに引き付けられるのだということになると思うのですが、本当の心理状態はちょっと違う気もします。

 そんな葛藤をしながら何のことはない、カメラの放つオーラに負けてしまい、買ってしまいました。それが下の写真のドイツ製カメラ、Voigtlander BESSAMATICです。調べたところ、発売は1959年とのことですので60年以上前のカメラですが、傷や汚れは全くと言ってよいほどなく、とてもきれいな状態を保っています。しかも、昔懐かしい茶色の革製のケースまでついています。
 これでお値段9,000円。どこか壊れているんじゃないかと思いましたが、全く問題なく動作している感じです。

Voigtlander BESSAMATIC + COLOR-SKOPAR X 1:2.8/50

 このカメラについてはたくさんの方が記事を書いていらっしゃいますので詳細はそちらをご覧いただくとして、私の心を動かしたのは何といってもそのフォルムです。昔のカメラはどれもそうですが、金属製のボディは重厚感がありますし、デザインも機能美に満ちていると思います。60年を経ても全く古臭さを感じさせません。それどころか、個人的には最近のカメラのデザインよりもはるかにセンスがあると思います。

 しかし、金属製であれば何でも良いというわけではなく、やはりデザインはとても重要な要素です。金属製であっても心動かされないデザインのカメラもあります。もちろん個人の好みですから人それぞれですが、うっとりと眺めていられる美しさを持ったカメラというのは、中古カメラ店の棚の中でも輝いていると感じるのは贔屓目でしょうか?

 職人のこだわりが随所に感じられるこのカメラ、60年前にどういう人が手にして、どういう経路をたどって今、私の手元にあるのか、そんなことを想像させるのもこういったカメラの魅力かもしれません。
 このカメラがヴィンテージカメラに属するのかどうかよくわかりませんが(なにしろ9,000円ですから)、撮影に行く回数が激減している昨今、こんなヴィンテージカメラを探してみるのも悪くないなと思っています。

 このカメラでバシバシ撮影することはないと思われますが、一度は撮影をしてみたいと思います。どんな写りをするのか、楽しみです。

(2020.8.16)

#ベッサマチック #BESSAMATIC #中古カメラ

ピンホールカメラ(針穴写真機)をつくる

 初めて針穴写真機を作ったのは、確か小学校の夏休みの自由研究だったと思います。フィルムの代わりにポラロイド印画紙を使用することで、その場で写真を見ることができました。ぼんやりといえども、レンズもないのに像が焼き付けられることをとても不思議に思ったものでした。

PENTAX67を使ったピンホールカメラ

 以来、何台ものピンホールカメラを作っては壊ししてきましたが、いま手元に残っているピンホールカメラは一台もありません。唯一、針穴写真を撮ることができるのは、PENTAX67のボディキャップにピンホールを加工(ビールの空き缶に針で穴をあける)したものだけです。
 これは10年ほど前に作ったものですが、針穴写真といえどもそれなりに画質を追求したく、ピンホールの大きさ(直径)を何種類も作りました。その中で最もシャープに写るピンホール(レンズ)だけが手元に残っています。
 直径0.2mm~0.6mmまで、0.1mm間隔で5枚のピンホールを作りましたが、直径0.3mmのピンホールがいちばんきれいに写りました。直径が小さければ小さいほど画像はシャープになると思っていたのですが、小さくなると光の回析によって像がぼけてくるようです。
 調べたところ、最適なピンホール径はd=√2fλで求められるとのこと(fは焦点距離、λは光の波長)。PENTAX67のフランジバックは約85mmですので、これをこの式に当てはめると約0.3mmとなります。

PENTAX67 ピンホールカメラ

 PENTAX67による針穴写真は思いのほか綺麗に写り、我ながら感激したものです。しかし、焦点距離が固定になってしまいますので、接写リングをかませることで85mmから197mmまで、14mm刻みで焦点距離を変えることが出来ました。

ピンホールレンズを自作

 今回、大判フィルムやブローニーのパノラマで針穴写真を撮ってみようと思い、ピンホールレンズを作成してみました。手元にあるリンホフマスターテヒニカにピンホールレンズを着けることで、約50mm~370mmの焦点距離を実現することができます。
 PENTAX67を使ったときは、カメラ自体にシャッターがついていたので問題はなかったのですが、大判カメラにはシャッターがついていないので、シャッターを何とかしなければなりません。最初はレンズキャップを外したり着けたりでいいだろうと思っていたのですが、それだと日中の明るいときの撮影時など、シビアなことがわかりました。
 ピンホール径を0.3mmにした場合、最も焦点距離の短いときでf168くらいになり、太陽の光の強いところでは1/2秒とか1/3秒のシャッターを切らなければなりません。これをレンズキャップで行なうのは結構無理があると思い、ちゃんとしたシャッターをつけることにしました。 

 まず、インターネットオークションでジャンクの大判レンズ探しからです。できるだけピンホールの包括角度を大きく取れるようにするため、#1か#3のシャッターのついたレンズで、希望は1,000円くらい。レンズはカビがあろうが腐っていようが構いません。シャッターさえ動けば問題はないので根気よく探します。

 そんなある日、運よく#1シャッターのついたレンズが1,200円で出ていましたのでゲット。数日後、品物が届きました。「ジャンク品によりNCNRで」とありましたが、程度が良いので驚きました。レンズもきれいですが今回は不要ですので、前玉と後玉を外してシャッター部だけを使います(外した前玉と後玉は防湿庫で保管してあります)。

 厚さ0.1mmの銅板に直径0.3mmの穴をあけ、これを中央をくりぬいたレンズキャップに取り付けます。そして、大判レンズのシャッター部にピタッとはめ込めばピンホールレンズは完成です。

SEIKO #1 シャッターを利用したピンホールレンズ

 今回使用したシャッターですが、ピンホールレンズ取り付け位置がレンズボードから18mm前方にあります、また、シャッター部後端の内径が42mmですので、これらから計算すると包括角度は約100度ということになります。したがって、4×5フィルムを使用してもケラれない最短の焦点距離は約65mmになります。カメラの最短フランジバックが約50mmですから、この状態でピンホールレンズを取り付けると、ピンホールからフィルムまでの距離が68mmとなり、ぎりぎりケラれずに済みそうです(あくまで計算上ですが)。
 ということで、リンホフマスターテヒニカに取り付けた場合、実際には68mm~388mmの焦点距離を持ったピンホールカメラということになります。

構図確認用ピンホールレンズの作成

 しかしこのピンホールレンズのままでは暗くて、大判カメラのピントグラスでは何が投影されているかわからず、構図の確認ができません。ファインダーがあれば問題ないのですが、無段階に変化する焦点距離に対応できるファインダーを自作するのは困難なので、ピンホール径を2.5mmまで大きくした構図確認用のピンホールを作成しました。構図を決めるときにはこれを使い、撮影の際には撮影用のピンホールレンズに交換します。

構図確認用ピンホールレンズ (中央の穴径が約2.5mm)

 こうして出来上がったピンホールレンズは最短の焦点距離68mmでf226、最長の焦点距離388mmでf1293というとてつもなく暗いレンズです。焦点距離388mmで撮影することはまずないと思われますが、f1293がどれくらい暗いかというと、真夏の日中でf16-1/250秒というときに、約30秒の露光が必要ということになります。

露出換算用のツールが必要

 当然のことながら、こんな値は単体露出計の目盛りの範囲を超えていますので、露出計で測った後に換算しなければなりません。これが結構面倒で、計算を間違えると露出オーバーやアンダーになってしまいますので、簡単に換算できるためのツールを作りました。

 古くなって変色してきたPLフィルターのガラスを外し、透明なガラスと交換します。そして、枠のベース部分の円周上にシャッター速度を書き込みます。一方、くるくる回転する枠のガラスには絞り値を書き込みます。露出計で測定した絞りとシャッタースピードの目盛りを合わせると、ピンホールレンズのf値の時のシャッタースピードがすぐにわかるという仕組みです。

露出換算用のツール(PLフィルター利用)

大判カメラによるピンホールカメラ

 今回作成したピンホールレンズをリンホフマスターテヒニカに装着するとこんな感じです。

Linhof MasterTechnika 45 ピンホールカメラ

 さて、このピンホールレンズ、4×5フィルムを使って焦点距離100mmで撮影すると、計算上、周辺部では約1EV(1段)の光量の落ち込みがあると思われます。フランジバックを最も短くした焦点距離68mmでは、2EV強の光量の落ち込みになりそうです。周辺光量の落ち込みが気にならなくなるのは150mm以上かと思います。
 周辺光量の落ち込み、それもまた針穴写真の面白さかもしれませんが、実はまだ撮影に行くことができておらず、作例をご紹介することができません。近々、撮影日記のページでご紹介できればと思っています。

(2020.8.10)

#ピンホール写真 #中古カメラ

エプソン EPSON GT-X970 フラットベッドスキャナ

 もっぱらフィルムでの撮影をしている私にとって、スキャナはなくてはならない存在です。現像からあがってきたフィルムをパソコンに取りむためには、スキャナを使わざるを得ません。

GT-X970

 私が使っているスキャナはEPSON GT-X970というフラットベッド型のスキャナで、もう10年以上使っています。筐体は結構でかいです。フィルム専用のスキャナというわけではありませんが、私はフィルムスキャン以外にはほとんど使ったことがありません。フィルム専用のほうが性能的にも優れているとは思いますが、私が使っているフィルムはブローニーやシートフィルムが主体であるため、それ用のフィルム専用スキャナなどは高額すぎて手が出せません。

EPSON GT-X970

ブローニー用フィルムホルダー

 GT-X970はすでに製造が終了し、現在は後継機のGT-X980になっています。光源がLEDになったりアンチニュートンリングガラスを採用したり、随所でバージョンアップされているようですが、一度にスキャンできるフィルムの枚数が減ってしまっているのが残念な点です。GT-X970はフィルムサイズに応じて専用のフィルムホルダーが用意されており、1回のスキャンで66判で6コマ、67判~69判だと4コマ、4×5だと2コマまで可能です。私は35mmフィルムはあまり使いませんが、35mmのスリーブだと1回で24コマのスキャンができるので、大量に取り込む方にとってはありがたいと思います。

EPSON GT-X970 ブローニーフィルムホルダー

フィルムスキャンを依頼した場合の費用

 撮影したフィルムのすべてをスキャンしてデジタル化しているわけではありません。額装するために大きくプリントするものや、経年劣化させたくないものなどをデジタル化して保存しています。専門の業者さんにお願いした方が機器も技術も格段に優れているのでしょうが、いかんせんコストがかかりすぎます。例えば、富士フィルムが提供しているスキャンサービスだと、ブローニーを1,000万画素でお願いした場合、1コマ550円もかかってしまいます。ブローニー(67判)を1,000万画素ということは1,280dpiほどであり、大伸ばしする際には解像度が低すぎます。
 67判のポジから半切(356mmx432mm)サイズにプリントする場合、印刷時の解像度を600ppiにしようとすると約8,700万画素必要であり、これはフィルムを約4,000dpiでスキャンしなければならないということです。プリントには半分の300ppiでも印刷品質の違いは多分わからないのではないかと思いますが、仮に300ppiで印刷するにしても、約2,000dpiでのスキャンが必要になります。

GT-X970のスキャン時間

 というような事情で、とにかく手間がかかるのですが自分でスキャンしているわけです。保存用には6,400dpiでスキャンし、TIFF形式でファイリングしています。そんな解像度は必要ないと思われるかもしれませんが、いろいろ加工したり、また将来どのような使い方をするかわからないからということと、何といっても6,400dpiでスキャンしたポジは細部に至るまで見事に再現されているということが理由です。
 しかし、67判1コマを6,400dpiでスキャンすると、その画素数は約2億5,000万画素になり、これをTIFF形式にするとファイルサイズは1.4GBを越えてしまいます。3,200dpiと6,400dpiの比較をしてみると以下の通りです。
            <3,200dpi>   <6,400dpi>
  スキャン時間     3分10秒    5分40秒    ※DIGITAL ICE はオフ
  画素数        6,200万    2億4,700万
  ファイルサイズ(TIFF) 350MB     1.48GB

 他のフラットベッド型スキャナでフィルムスキャンを行なったことがないので比較して論ずることはできませんが、私ような使い方をしている限りにおいて、このGT-X970は十分な性能があると思います。ただし、スキャンの解像度を上げた場合、ピントのズレが目立ってきます。これに関してはたくさんの方が投稿されております。機器により個体差があるようですが、スキャナのガラス面からフィルム面までの距離によってピントの合い方が異なるということは共通しているようです。

フィルムホルダーの嵩上げで画像がシャープに

 私も自分のスキャナで試してみましたが、ブローニー用のフィルムホルダーの場合、1.2mm嵩上げした時に最もシャープな画像が得られました。一方、4×5用のフィルムホルダーの場合は全く嵩上げしない状態で最もシャープになりました。3mmくらい嵩上げした時が最もシャープになるというような記事もありますので、かなり個体差があるのかもしれません。
 ちなみに、フィルムホルダーのスペーサーの向きを変えることで若干の嵩上げはできるのですが、スペーサーだけで1.2mmは上げられないため、私は1.2mmの板を張り付けて嵩上げしています。

EPSON GT-X970 ブローニーフィルムホルダー 1.2mm 嵩上げ

 このスキャナはお手軽にスキャンができる全自動モードやホームモードと、細かな設定ができるプロフェッショナルモードがありますが、フィルムのスキャンにはプロフェッショナルモードを使います。カラーバランスやカラーパレット、ヒストグラムの調整などができます。標準の設定から大きく変更することはあまりありませんが、フィルムをスキャンする時点では可能な限り、ポジ原版に忠実な状態にしたいと思っていますので、若干の調整を行なうことはあります。私のスキャナはマゼンタ系が強くでる傾向がありますので、カラーバランスを調整することが比較的多いです。できるだけポジをライトボックスで見たときに近い状態でスキャンしたいという理由です。

フィルムスキャナの将来は?

 フィルムスキャンに限らず、今の時代、スキャナの需要はかなり低いと思われます。私のようなフィルムに拘っている輩からすると、フィルムスキャナがなくなってしまうと、モノクロは自分でプリントできますが、ポジのプリントやデジタル化はお店にもっていかざるを得なくなります。ポジやネガをデジカメでデュープする方法もありますが、やはり画質が落ちてしまいますし、スキャナ並みの画質を得ようとするとかなりの手間がかかってしまうので積極的になれません。
 そんなマイノリティーにとって、今でもフィルムスキャナが製造販売されているということは言葉では言い表せないくらいありがたいことです。メーカーさんにとって、マイノリティーのためにスキャナを製造販売したところで、採算は取れていないのではないかと思いますが、継続していただけることを願うばかりです。

(2020.8.7)

#スキャナ #エプソン #EPSON

シュナイダー 大判レンズ アポジンマー 150mm Schneider APO-SYMMAR 5.6/150

 Schneider製、150mmの大判用レンズです。正式には「Schneider KREUZNACH APO-SYMMAR 5.6/150(シュナイダー クロイツナッハ アポジンマー)」という長い名前がついています。

レンズの主な仕様

 4×5判カメラでこのレンズを使った場合、35mm判カメラに換算すると42mm前後のレンズの画角に相当します。シャッターはCOPALの#0ですので、ポケットに入れられるくらいの小ぶりのレンズです。
 私は150mmという焦点距離は結構好きで、このレンズの使用頻度も高めです。写りに関しても個人的には文句のつけようのない、お気に入りのレンズです。

Schneider KREUZNACH APO-SYMMAR 5.6/150

 レンズの主な仕様は以下の通りです(Schneider KREUZNACHカタログより引用)。
   イメージサークル  : Φ220mm(f22)
   包括角度      : 62度
   レンズ構成枚数   : 4群6枚
   最小絞り      : 64
   シャッター     : No.0
   シャッター速度   : T.B.1~1/500
   フィルターサイズ  : 58mm
   前枠外径寸法    : Φ60mm
   後枠外径寸法    : Φ45mm

 開放絞りが5.6、最小絞りが64です。絞り羽根は7枚で、いっぱいに絞っても型崩れしないきれいな7角形を保っています。絞りレバーは35mm一眼レフのレンズのようなクリックはなく、スーッと動きます。シャッタースピードは最高で1/500秒ですが、いままで、このレンズを使った撮影でそんな速いシャッターを切ったことはないと思います。

Schneider KREUZNACH APO-SYMMAR 5.6/150

 また、イメージサークルが220mm(F22)ありますので、4×5フィルムで風景写真を撮る分にはよほど極端なアオリでもしない限り、ケラレるようなことはありません。もう少し広角寄りの125mmレンズも割と出番があるのですが、イメージサークルが200mmを下回ってしまい、あおる時に気を使います。その点でもこの150mmは安心感があります。

シュナイダーとフジノンの写りの違い

 私の持っている大判レンズはSchneiderと国産の富士フィルム製FUJINONでほとんどが占められていますが、APO-SYMMAR 150mmとほぼ同じ仕様で、FUJINON W150mm 1:5.6というレンズがあります。FUJINONの写りも大好きなのですが、SchneiderとFUJINONの写りを比べた場合、Schneiderの方がわずかに暖色系(アンバー気味)の発色をします。逆の言い方をすると、FUJINONの方がわずかに寒色系(シアン気味)の発色傾向があるということです。例えば新緑を撮ると、Schneiderで撮ったほうが葉っぱの緑が極わずかですが、黄色っぽく写ります。レンズのコーティングの違いではないかと思うのですが、確かにFUJINONのコーティングのほうがグリーンとブルーの色味が強めになっています。

 5~6年前まで35mm一眼レフでCONTAXを愛用していたことがありました。CONTAXのレンズは有名なCarlzeissですが、同じレンズでもドイツ製と日本製があり、やはりドイツ製のレンズのほうが暖色系の傾向がありました。これもコーティングの違いによるものだと思いますが、なぜドイツと日本で違うコーティングをしているのか、その理由はわかりません。ドイツ人と日本人の光に対する感覚の違いかもしれませんね。

「APO」を冠したレンズ

 このAPO-SYMMARを購入する前は「APO」がつかないSYMMARを使っていたのですが、それぞれのレンズで撮影したポジをルーペで見比べてみると、APO-SYMMARでは光の滲みが改善されているのがわかります。色収差が抑えられているからだと思いますが、APO-SYMMARは明暗差の大きい境界部分に出やすい滲みもほとんど感じられません。さすが、だてに「APO」の名称を冠していないという感じです。なお、誤解のないように付け加えますが、決してSYMMARの写りが酷いということではありません。あくまでも比較をすると滲みが起きやすいような箇所でその違いが判るというレベルであり、SYMMARの写りも素晴らしいです。

APO-SYMMAR 150mm の写り

 下の写真はAPO-SYMMAR 150mmで撮影した永代橋の夜景です。画面上ではわからないと思いますが、ポジを見ると解像度とコントラストの素晴らしさがわかります。うまく表現できませんが、コクのある色再現性を持ったレンズといったらいいのでしょうか。

永代橋  Linhof MasterTechnika 2000 APO-SYMMAR 5.6/150 F32 48s Velvia100F

 橋のアーチ中央部分をほぼ等倍に拡大したものです。見事な質感の描写だと思います。

永代橋(拡大)  Linhof MasterTechnika 2000 APO-SYMMAR 5.6/150 F32 48s Velvia100F

 最後にどうでもいいことですが、レンズの鏡胴部分に書かれている「Schneider」のロゴがカッコ良くて好きです。

(2020.8.1)

#シュナイダー #Schneider #レンズ描写 #Symmar