日本の代表的な大判カメラのメーカーであるウイスタが製造販売している金属製大判フィールドカメラです。現時点でも同社の金属製大判(4×5)カメラとしてはこの45SPのほかに45VX、45RFを含めた全3機種が製造販売されているようですが、オンラインショップをのぞくと45RF以外は品切れとなっていますので、もしかしたら生産終了かもしれません。
堅牢なボディとユニークな構造
国産の金属製大判フィールドカメラとしてはTOYO FIELD(トヨフィールド)やHORSEMAN(ホースマン)も有名ですが、トヨフィールドはかなり大きいし、ホースマンはコンパクトですが小さすぎて使いにくく、個人的にはウイスタの大きさがいちばん使い易いと思っています。オールダイキャストで作られたボディは非常に堅牢です。
このカメラの標準蛇腹での繰出し量は約300mmで、あまり長い玉は使えません。FUJINONのC300というレンズはフランジバックが282mmですから使うことはできますが、近景を撮影しようとすると無理があります。ですので、300mmレンズを使うのであればテレタイプが無難です。もちろん長尺蛇腹に交換すれば問題ありません。
一方、カメラの構造上、レールが短くできているので65mmレンズでもベッドダウンなしでもケラレることはありません。これは広角撮影の時はとてもありがたいです。
また、リンホフのようにベッド部と本体を固定するタスキがなく、大型のノブで締めつける方式が採用されたユニークな構造になっています。
カメラの主な仕様
このカメラの主な仕様は以下の通りです(WISTA 45SP 取扱説明書より引用)。
画面サイズ : 4×5インチ判
レンズマウント : リンホフ規格仕様
フロントライズ : 56mm
フロントフォール : バックティルトとティルトアップによる
フロントティルト : 前後各15度
フロントスイング : 左右各15度
フロントシフト : 左右各40mm
バックティルト : 前90度、後15度
バックスイング : 左右各15度
最大フランジバック: 300mm
収納時外形寸法 : 180mm(W)×197mm(H)×105mm(D)
重量 : 2,900g
リンホフボード使用時に注意すること
レンズボードはリンホフ規格を採用しているので、リンホフボードに取付けたレンズをそのまま使うことができます。ただし、リンホフ規格のボードはレンズ取付け穴がボード中心から約8mm下にオフセットされているため、ウイスタで使う場合はレンズ部を約8mm上げなければなりません。これでレンズの中心とフィルム面の中心がそろうことになります。これを忘れると、イメージサークルの小さなレンズではケラレてしまうことがあり、私もFUJINON W105mmレンズでその失敗を何度か経験しました。
下の写真はフロント部のライズ前後の状態です(左がライズなし、右が約8mmライズした状態)。
フロント部のアオリ
アオリについて少し触れてみたいと思います。
まずフロント部ですが、ライズ、ティルト、スイング、シフトのいずれも十分な量のアオリが可能です。フォール(レンズ部を下げる)については、リンホフボードを使用した場合に限り、最下端から8mm上がったところがニュートラルになるため、結果的にベッドダウンせずに約8mmのフォールが可能ということになります。
フロントティルトはフリクション方式により微動が可能で、とても使い易いです。ただし、ニュートラル位置にクリックがないので、戻す際には目で確認するしかありません。スイングとシフトは手による移動になりますが、ニュートラル位置にクリックがあるので目で確認しなくても戻すことができます。
バック部のアオリ
バック部はリンホフのように全体が自由に動くのではなく、ティルトとスイングがそれぞれ独立した操作になります。ティルトは本体とベッド部を固定しているノブを緩めることで前後に倒れます(前に90度、後ろに15度)。フィルム下端に近いところが支点となって上部が前後に振れるので、ピント合わせはしやすいと思います。
バック部のスイングは、本体全体が左右に15度ずつ首を振るのに加えて、カメラの左右側面中央のノブを回すことにより、左右それぞれ独立して4度の微動スイングができるようになっています。このあたりの作りはさすがに日本のメーカーといった感じです。
大判カメラの場合、冠布をかぶってカメラの後方から操作をするわけですが、その状態でフロント部もバック部もすべての操作ができるよう、ノブの配置等が考えられていると思います。
下の写真はバック部の微動スイング前後の状態です(左がスイングなし、右がスイングをした状態)。
フレネルタイプのフォーカシングスクリーン
フォーカシングスクリーン(ピントグラス)は標準でフレネルタイプが採用されており、通常の擦りガラスに比べるとかなり明るいです。周辺部でも明るく、超広角レンズ以外はほぼ正面からピント合わせができるのでとてもありがたいです。擦りガラスの場合は斜めからのぞき込むなどしないと周辺部はとても見にくく、ピント合わせに苦労があります。子供の頃、テレビに写った女性のスカート中が見えるのではないかと、テレビの下の方からのぞき込んでいた姿に似ています。周りの人からすると、風呂敷のようなものをかぶって中でゴソゴソと何をやっているんだと思われているに違いありません。
しかし、フレネルタイプは倍率の高いルーペでシビアなピント合わせをしようとすると、フレネルレンズの同心円模様が目立ってしまい、ピント合わせしにくいということもあります。
フレネルタイプか通常の擦りガラスタイプか、どちらが好みかはそれぞれでしょうが、私はピントがキリッと立ってくる擦りガラスタイプが好きです。
豊富なアクセサリー
もう一つ、ウイスタのカメラの特筆すべき点はアクセサリー群の豊富さだと思います。私はほとんどアクセサリーをもっていませんが、交換蛇腹や交換レールに始まりレンズボード、フォーカシングフード、フィルムホルダー、レンズフード、スライドアダプタ等々、その発想力と開発力に驚くばかりです。
(2020.9.19)