写真関係の団体に会員として加入するということ

 2週間ほど前のことです。友人から、「○○日に撮影会があるんだけど、参加してくれない?」とのお誘いの連絡が来ました。詳しく聞いてみると、東京の御茶ノ水・神田界隈を散策しながら写真撮影をするイベントが開催されるとのことです。どうやら、近年流行っているフォトウォーキングのようです。
 私は昔に比べてスナップを撮ることが少なくなってきたのと、そもそも、私はそのような撮影会に参加すること自体がまったくないのでやんわりと断ったのですが、「ぜひ、参加してくれ!」と、お誘いから懇願に変わってきました。私の友人が懇意にしてもらっている人が企画したイベントらしいですが、参加者が集まらなくて困っているとのこと。2人でも3人でも集まった人だけでやればいいじゃないかと思ったのですが、諸事情でそういうわけにもいかず困っているようです。
 あまり気が進まなかったのですが、撮影に行くこと自体が嫌なわけでもないのでとりあえず了解しておきました。

 それから数日後、指定された場所に出向きました。参加者は私の友人と私を含めて十数名で、若い人ばかりかと思っていましたがそこそこ年配の人も何人かいらっしゃいました。また、数人はリピーターのようでしたが、私のように初参加という人が大半でした。
 主催者の挨拶やら自己紹介やらが終わっていよいよ散策撮影会が始まりました。お互いに初対面の人ばかりなので会話も少なく、静かな感じで始まったのですが、最初の撮影ポイントに着いてから様相が変わってきました。各自、思い々々に撮影しては、その写真をお互いに見せ合っているのです。その光景を見て私は「しまった!」と思いました。

 私が持ってきていたカメラは富士フイルムのGW690Ⅱという骨董品のような中判のフィルムカメラです。当然のことながら、撮ったその場で見ることなど出来ません。私の持っているカメラに気がついた年配の方が、「フィルムカメラですか?渋いですね」と、半分ねぎらいのような、半分哀れみのような言葉をかけてくれました。
 一応、私も一眼レフのデジカメを1台とレンズ1本だけ持っています。が、ほとんど出番はなく、日ごろからフィルムカメラを使っているため、当日も深く考えずに弁当箱のようにでかいGW690Ⅱを持ち出してきてしまったというわけです。
 また、このような撮影会に参加した経験はなく、その場でお互いに撮影した写真を見せ合うという文化には無頓着でした。
 そんなわけで、私が撮った写真をその場でお見せすることはできませんでしたが、フィルムカメラに興味を持っていただいたり、同じ場所で撮影しているということもあり、村八分になることもなく、数時間の撮影会を終えることができました。

 ちなみに、当日、実際に撮影したうちの1枚が下の写真です。

▲FUJI GW690Ⅱ F4 1/30 GP3

 JR神田駅のガード下の光景です。神田は東京と秋葉原に挟まれていて、東京駅周辺も秋葉原駅周辺もどんどん開発が進んでいますが、神田界隈だけは昔の名残をとどめています。何だか取り残されたような感じを受けますが、昭和の臭いが漂っているような景色も好きです。ガード下の支柱もレトロな感じです。
 昨年の暮れに2本だけ購入した中国製のモノクロフィルム、GP3が1本残っていたので使ってみました。

 今回のような撮影会参加は私にとっては初の体験でしたが、撮影しながら参加された方といろいろ話をしてみて感じたのは 、カメラや撮影を通じて人との交流を図りたいとか、カメラを始めたばかりだけどどうやったら上達するのかがわからないので参加してみたという方が多いということです。今回の撮影会には指導してくれる講師のような方はいないのですが、それでも共通の趣味を持った人たちと一緒に撮影を楽しみたいという思いを持っているということです。一人で黙々と撮るよりも大勢で楽しく、ということを求めているということの表れのようにも思います。

 国内にはたくさんの写真に関する団体が存在していて、その趣旨や活動内容は様々ですが、大雑把に4つぐらいに分けられるように思っています。

 まず一つ目は、「○○連盟」とか「○○協会」という名前がついていることが多い団体で、有名どころでは「全日本写真連盟」や「全東京写真連盟」、「日本風景写真協会」などがあります。活動は全国規模で行なわれていて、一般社団法人のような形式で組織運営していたり、名だたる企業が運営母体や協賛、あるいは後援という形で関わっていたりします。
 会員になるためには入会金や年会費などを納めなければならないとか、入会のための審査が必要だったりするところもあります。格式もあるがハードルも高いといった感じもしますが、活動内容も充実しているので、やはり価値は高いと思います。

 二つ目はメーカー系の企業が主催していることが多い団体で、特にカメラメーカーには必ずと言ってよいくらい存在しています。知名度や資金力もあるので、著名な写真家などを招いての講演会や講座なども頻繁に開催されていて、そのほとんどが盛況のようです。
 年会費なども必要なところが多いと思いますが、入会のハードルが高いということはなく、誰でも気軽に入ることができるのもメリットかも知れません。

 三つ目が自治体や地元の有志の方々が運営しているもので、「○○倶楽部」みたいな名前がついていることが多い団体です。全国の市区町村に最低でも一つは存在しているのではないかと思えるくらいたくさんあります。
 団体の規模自体はそれほど大きくありませんが、事務局も設置されていてしっかりと運営されているという印象があります。当然、加入されている方は地元の方に限定というところが多いと思いますが、それだけに会員同士の交流も親密という感じです。定例会や撮影会、展示会なども積極的に行なっているところが多く、まさに地域に根差しているという団体かも知れません。

 そして四つ目が、今回、私が飛び入りで参加させてもらったような同好会とかサークルと呼ばれているものです。SNSなどの発達で、個人が発起人のようになってサークルを立ち上げ、ネット上に発信して加入者や参加者を募るということが容易にできるため、近年、その数は急激に増えているように思います。
 入会金や年会費などは不要、都度実費のみ負担というところが多いので、気軽に参加できるということもありますし、散策をしながら撮影を行なうというイベント開催の形式が最も多いようなので、写真を通じて仲間づくりというのにはもってこいかも知れません。
 一方で、事務局のようなものは存在していなかったり、定例会や展示会のようなものを行なっているのは少数派という感じもします。

 このように写真に関する団体はたくさん存在していて、私も二つの団体の末席に名を連ねさせていただいております。過去にはメーカー系の団体に加入していたこともありましたが、今は退会してしまい、現在会員になっているのは二つだけになりました。
 会員になっているとはいえ、私は決して優良会員ではなく、定例会には参加することが多いですが、撮影会などには行ったことがありません。

 では、なぜ安くはない年会費を払いながら加入し続けているかというと、他の会員の方々からたくさんの刺激をいただくことができるからです。
 ネットが発達・普及したおかげで居ながらにして世界中の人々が撮影した写真を閲覧することはできますが、それはあくまでも写真の画像を見ているのであって、本来の写真としてみるためにはしっかりとプリントされている必要があるというのが私の持論です。高精細の大型モニタに映せば同じじゃないかという意見もあろうかと思いますが、やはり、プリントしたものは別物だと、私は勝手に思い込んでします。
 加入している団体の定例会などに出席すると、会員の方が撮影した写真を四切くらいの大きさにプリントしたものを見せていただきながら、撮影に使った機材はもちろん、撮影時の状況なども直接聞くことができます。そして、私がいちばん刺激を受けるのが、何を表現しようとしたのか、何を伝えようとしたのか、あるいは、なぜこのような構図にしたのかといったようなことです。これらは文章ではなかなか伝わりにくいことで、直接、撮影された方から聞くことで情報量は何倍にも何十倍にもなります。
 写真だけを見て撮影者の意図を想像することはできますが、それが真実かどうかはわかりません。直接お聞きすることで様々な気づきがあったりします。

 また、他の方の写真を見るだけでなく、自分が撮影した写真を見ていただき、それに対してフィードバックをもらうことも大きな刺激になります。私も心が狭いのですべてのフィードバックに納得できるわけではありませんが、そういう見方や考え方もあるんだということを知るのは大切なことで、それを何年後かに納得できたということがこれまでに何度もありました。

 写真の楽しみ方、あるいは目標や目的は人それぞれで、仲間と楽しく撮影したいという人もいれば、写真の腕を上げたいという人もいたり、納得のいく作品作りをしたいなど千差万別です。一人でコツコツと勉強したり経験を積んだりもできますが、他の人と交流をするということは楽しみを拡大したり目的を達成するためにとても重要なことだと思います。そもそも人間というのは、自分の撮った写真を人に見せたい、人に見てもらいたいという思いが根底にあるようですから。

 前の方で書いた団体の中には財政的に運営が厳しいところも少なくないようですし、会員の高齢化が進んで限界集落のようになっているところもあるという話しも聞きます。また、スマホで撮る人が増えたことでスマホ以外のカメラ人口が減少しているという統計もあるようです。カメラメーカーにとっては切実な問題でしょうが、スマホで撮影したものでも立派な写真であることには違いありません。
 あらゆるものが時代とともにその形を変えていくので、写真関連の団体の在り方も徐々に変化していくと思いますが、自分の目的や感性に合った団体を見つけて、そこに加入してみるというのは意義のあることだと思います。自身の成長はもちろんですが、加入する人が増えることで団体も活性化し、存続していくことができるわけです。

 最後に、もしも、今回のような散策撮影会にまた参加することがあったとしたら、その時は「チェキ」を手に入れて持っていきたいと思っています。なんてったって撮った写真をその場で見ることができるのですから。

(2023.3.17)

#GW690#GP3

中国製モノクロフィルム 「上海 SHANGHAI GP3 100(220)」 の使用感

 中国製の「上海」というブランドのフィルムの存在は知っていたのですが、実際に使ったことはもちろん、使おうと思ったことはこれまで一度もありませんでした。しかし、ブローニーの220サイズのフィルムを今でも製造しているということでちょっと気にはなっていました。
 220フィルムをほとんど見かけることがなくなってしまった昨今、興味本位でGP3(ISO100)の220サイズを2本だけ購入してみました。どんな写りをするのか、試し撮りをしてきたのでご紹介します。

上海 SHANGHAI GP3 100 というフィルム

 このフィルムに関する知識がほとんどなかったので少し調べてみたところ、「上海建城テクノロジー」という会社が製造販売しているとのこと。もともとこの会社は1958年に設立された国営の映画会社だったようです。OEMとしてフィルム提供もしているようで、もしかしたら、この会社のフィルムが違うブランドで売られているのかも知れません。

 私が購入した時、220サイズのフィルム1本の価格は1,800円(税込)でした。
 数年前には220のモノクロフィルム1本が1,800円なんて考えられなかったのですが、フィルム価格が高騰している今では金銭感覚がマヒしてしまって安く感じられるので、慣れとは恐ろしいものです。

 イルフォードのDELTA100に似た色の使い方をした箱のデザインですが、漢字で書かれた「上海」の文字が異彩を放っています。
 箱が封印されていないことと、フィルムをとめてあるテープの糊が強力で剥がしにくいことを除けば、一般に出回っているブローニーフィルムと外観上の大差はありません。
 また、リーダーペーパーの先端には富士フイルムの製品に見られるような丸い穴が開いていて、スプールの突起に引っ掛けるようになっています。これはスプールが空回りするのを防ぐことができるので便利です。

現像液はコダックのD-76を使用

 一般に出回っている現像液であれば特に問題なく使えそうだったので、今回は手元にあったコダックのD-76を使用しました。現像に関するデータを調べてみたところ、D-76の原液を使用した場合、20度で9分となっていましたのでそれに準じました。
 停止液、定着液はいずれも富士フイルムの製品(富士酢酸、スーパーフジックス)を使用しました。

 フィルムを触った印象はやや硬めでしっかり感があります。イルフォードのフィルムと似た印象ですが、イルフォードよりも若干カールが強いように感じました。

 現像後のフィルムベースはわずかに青みがかった色をしています。
 また、普通のフィルムに見られるようなメーカー名やフィルム名、コマ番号などは一切入っていません。記録しておかないと、どのフィルムで撮影したのかわからなくなってしまいそうです。
 乾燥させてもフィルムのカールは強くて、スリーブに入れるため3コマずつにカットしても手を離すとくるんと丸まってしまいます。スリーブに入れてもスリーブ全体が湾曲するくらいですから、かなり強力です。

 下の写真はネガをライトボックスに乗せて撮影したものです。

 現像後のネガを見ると、黒(ネガでは白い部分)が引き締まった印象を受けます。黒からグレー、そして白へとなだらかに変化していくというよりは、黒は黒、白は白、といった感じのネガです。ちょっと硬いというか、パキッとした感じがします。

上海 SHANGHAI GP3 ISO100の写り

 今回、初めて使うGP3フィルムの試し撮りということで、新宿の東京都庁周辺を撮影してきました。使用したカメラはMamiya 6 MF、レンズは75mmと150mmです。
 都庁周辺は高層ビルが林立していたり、たくさんのブロンズ像やオブジェがあるので、試し撮りをするにはうってつけのスポットです。

 一枚目は都庁の都民広場にあるブロンズ像の一つ、「早蕨」です。

▲Mamiya 6 MF G150mm 1:4.5 F5.6 1/250

 都民広場は東側に都議会議事堂があるため、午前中はこの建物の影になってしまい、ここにあるブロンズ像には陽があたりません。コントラストがあまり高くない状態で撮影するには午前中がお勧めです。

 上の写真は、ブロンズ像に陽があたり始めた時間帯に撮ったもので、南側(写真では右側)から陽が差しており、それによって像にも明暗差が出ている状態です。像の右側が白く光って立体感が出ています。全体のコントラストはそれほど高くなく、無難な光線状態といった感じでしょうか。
 背景となるビルの壁面などが非常に近いところにあるので主被写体が埋もれがちになっていますが、コントラストが高く表現されているので、壁面の模様からは浮かび上がっている感じです。

 画全体から受ける印象は、メリハリがあり、黒もそこそこ締まった感じがします。ベタッとつぶれることもなく像の質感も十分に感じられる仕上がりだと思います。
 ですが、解像度がちょっと荒いというか、ざらついた感じがします。

 顔のあたりを部分拡大したのが下の写真です。

▲部分拡大

 やはり解像度が荒く、ざらついた感じがします。

 次の写真は、同じく都民広場にあるブロンズ像の「はばたき」です。

▲Mamiya 6 MF G150mm 1:4.5 F5.6 1/125

 背景は陽があたって白く輝いている高層ビルです。
 像には全く陽があたっていないので黒く落ち込んでいます。背景との明暗差が大きいのでシルエットに近い状態ですが、完全なシルエットにするのではなく、顔の表情がわかるくらいにしています。

 解像度としてはまずまずといった感じで決して悪くはないのですが、やはり黒がボヤっとした印象になっています。ですが、像も真っ黒につぶれてしまうこともなく、顔の表情もはっきりとわかるくらいですから、階調表現としても悪くはないと思います。

 ブロンズ像の3枚目は逆光状態で撮影したものです。

▲Mamiya 6 MF G150mm 1:4.5 F5.6 1/250

 左上から像に光があたっている状態で、それを背後から撮影しています。背景の都庁のビルは日陰になっているのでトーンが落ち込んでいます。
 像の左側のコントラストが高く、肩や顔の辺りは白く飛び気味、逆に陰になった部分は黒くつぶれているので全体的にとても硬い感じがします。金属の質感が出ているという見方もできるかもしれませんが、このような状況下にはあまり向いていないフィルムのようにも思えます。

 また、焦点距離150mmのレンズで撮っていますが、背景の都庁ビルが思ったほどボケてくれず、像の浮かび上がりが不足している感じです。もう少し短いレンズで像に寄って撮影したほうが良かったかもしれません。

 4枚目は都民広場を見下ろす位置から撮影したものです。

▲Mamiya 6 MF G150mm 1:4.5 F5.6 1/250

 画の右側から太陽光が差し込み、都民広場の地面に濃淡のパターンが描かれている状態を撮りました。カラーコーンがぽつんと置かれていたのでそれを入れてみました。
 陰になっている部分はかなり暗いのですが、つぶれてしまうことなく地面に敷かれたタイルがしっかりと識別できます。一方、ハイライト部分、特にカラーコーンなどは立体感が失われるほど白飛びしています。

 全体的に解像度が極端に悪いという感じはしませんが、明部の階調は良くありません。

 もう一枚、都庁の第一庁舎と第二庁舎の間にある「水の神殿」というオブジェを撮ったものです。

▲Mamiya 6 MF G75mm 1:3.5 F5.6 1/125

 池のように水が張ってあり、その水面に映ったビル群を撮影しています。
 このオブジェのある辺りは高いビルに遮られて日陰になっており、水面が暗く落ち込んでいるので向こうにあるビルがくっきりと映っています。風もほとんどなかったので水面が波立つこともなく、まるで鏡のようです。

 全体的に落ち着いた感じのトーンであり、このような状況下では比較的よい写りをしていると思います。黒もそこそこ締まっていながらつぶれることなく表現できているのではないかと思います。

 ちょうど1年ほど前、ほぼ同じ位置から富士フイルムのACROSⅡで撮影した写真があったので比較のために掲載します。

▲Mamiya 6 MF G75mm 1:3.5 F5.6 1/125 ACROSⅡ

 こうして比較してみると、明らかにACROSⅡの方が解像度も高く、滑らかな印象になっているのがわかると思います。
 黒の締まりはGP3の方が高く、メリハリのある写真に仕上がっていますが、ACROSⅡの方は細部にわたって表現されていながら、全体として柔らかさが感じられます。
 ただし、現像条件が同じでないので、それによる影響も含まれている可能性はあります。

 どちらの表現が良いかは好みでしょうが、フィルムのクオリティとしてはACROSⅡの方が高いと思います。

 GP3の印象としては、黒のグラデーションも比較的きれいに表現できるフィルムといった感じです。反面、オーバー気味の露出にはあまり強くないという感じがします。
 また、解像度も決して悪くはありませんが、特別良いというわけでもなく、そのあたりの癖を把握しておけば十分に使えるフィルムだと思います。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今でも220サイズのフィルムが供給されているということは、それだけで何だか貴重な存在にも感じられます。敢えて220フィルムを使う理由もありませんが、1本で倍のコマが撮れるメリットは大きいと思います。
 今回、2本購入したのでもう1本残っていますが、積極的に使いたいというわけでもなく、かといって使わずに冷蔵庫に入れたままにしておくのももったいないので、試しにリバーサル現像をしてみようかと思っています。リバーサル現像しても大きな違いが出るとは思えませんが、ひょっとしたら何か発見があるやも知れません。結果が出たらご紹介したいと思います。

(2023.1.1)

#上海 #SHANGHAI #ACROS #GP3 #D76 #Mamiya