PENTAX67用のレンズです。焦点距離が75mmですので中判カメラ用としては広角の部類に入ります。35mm判カメラでいうと35~38mmくらいのレンズに相当する画角といったところでしょうか。風景を撮る際、私にとってこの焦点距離と画角は使い易く、比較的出番の多いレンズです。
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レンズの主な仕様
レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
画角 : 61度
レンズ構成枚数 : 4群5枚
最小絞り : 22
最短撮影距離 : 0.7m
フィルター径 : 82mm
最大径x長さ : 91.5mm × 81mm
重さ : 600g
フィルター径が82mmあり、寸胴型をしていますので大きく見えますが、重さは600g(カタログ値)で、TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 (590g)とほぼ同じです。ほぼ同じ重さながら図体が大きいので、手に持つと見かけよりも軽く感じます。私のレンズはTAKUMAR 6×7ですが、PENTAX 67になると40gほど軽くなっています。レンズ構成など仕様は同じですので、鏡胴等の材質を変えることで軽量化が図られているのではないかと思います。
特徴的なメニスカスレンズ
このレンズの外観上の特徴は何といっても前玉にあります。斜め横から見ると曲率の大きなメニスカスレンズがドーム屋根のように盛り上がって見えます。斜めから入射する光を収束するのに効果があるといわれていますが、PENTAX67用のレンズの中でも、これだけ大きな曲率を持ったメニスカスレンズを用いているのはこの75mmとShift75mmだけではないかと思います。コーティングの色は最近のレンズに比べるとあっさりとした感じがします。
開放絞りが4.5と若干暗めですが、風景を撮る分にはそれほど不都合は感じません。一方、最短撮影距離の0.7mはもう少し短くしてほしかったという思いはあります。
2001年にSMC PENTAX67 75mm 1:2.8 AL というレンズが発売されました。明るいし小ぶりだし最短撮影距離は短いし、とっても欲しかったのですが非常にお高くて結局あきらめました。そもそも製造数が少ないらしく、中古市場でもあまり出回っていませんし、たまに見かけてもかなりの高額です。非球面レンズを採用しているので写りも向上しているのではないかと思いますが、残念ながら実際に使ったことはありません。
被写界深度
話しを75mm 1:4.5のレンズに戻しますが、鏡胴に刻まれた被写界深度目盛りを見ると、最小絞りのF22で約2.4m~∞までピントが合うことになっています。これは、5mあたりにピント位置を置いておけば、近距離の撮影を除いてはピント合わせをしなくてもパンフォーカスの写真が撮れるということになります。しかし、そんな状態で撮影した写真は四つ切くらいまでのプリントであれば問題ありませんが、半切や全紙に引き伸ばすとピントの甘さが目立ってきます。ましてやフィルムをスキャンしてパソコンで等倍表示などしようものならさらに目立ちます(等倍表示してどうするんだという思いもありますが)。そもそも、この頃のレンズの許容錯乱円が、パソコンで等倍表示するなどということを想定されていないわけですから、これは仕方のないことかもしれません。ですので、被写界深度は深いとはいえ、やはり正確なピント合わせは必要と思います。
このレンズの写りは...(作例)
さて、このレンズ、PENTAX67用のレンズの中では若干硬めの写りをするように思います。カリカリとした感じではなくキリッとしたシャープさが感じられ、個人的には好感の持てる写りだと思っています。コクのある発色も好みです。
周辺部の画質の劣化や歪曲収差などもほとんど感じられず、建物などを撮影してもまっすぐなものはまっすぐに写り、気持ちの良い画に仕上がるレンズだと思います。
下の写真は夜の京王線車両基地をこのレンズで撮ったものです。デイライトフィルムを使っているために照明による色被りが発生していますが、全体にわたって高い解像度を保っており、シャープさが感じられるのではないかと思います(もちろん、今のデジカメはもっとシャープに写せるのでしょうが)。周辺部においても画質の乱れはほとんど感じられないレベルではないかと思います。
このレンズの画角は61度ですが、これは私にとって非常にしっくりとくる画角です。クセのない画角、特徴を出しにくい画角という見方もできますが、大きく引き伸ばしたときに不自然さがないのがお気に入りの理由です。
すでに生産終了品ですので新品は手に入りませんが、中古市場で程度の良い個体がお手頃な価格で出回っていたら、もう一本買っておきたいと思えるレンズです。
(2020.8.29)