大判カメラの撮影時における失敗のあれこれ

 大判カメラは使用できるレンズの自由度が大きいとか、アオリが使えるとか、あるいは、35mm判のカメラでは使わないような小道具を用いるなど、大判カメラならではの特殊性があります。これによっていろいろと撮影の幅が広がるのですが、その反面、その特殊性に起因する失敗も起こりえます。
 今回は大判カメラでの撮影時に起こりやすい失敗について触れてみたいと思います。

アオリの掛け過ぎでケラレる失敗

 大判カメラの撮影でいちばん多い失敗が「ケラレ」によるものではないかと思います。ケラレと言っても原因は一つではなく多岐に渡っていますが、中でも起こり易いのがアオリによるケラレです。
 簡単に言うと、あおることで撮像面がイメージサークルからはみ出してしまうことです。
 
 一般的なフィールドカメラの場合、フロント(レンズ)部をアオリ過ぎてイメージサークルをはみ出すと、写真の四隅のうち、写真の上辺、下辺、左辺、右辺のいずれかの辺の両端が黒っぽくなってしまいます。ライズやフォール、ティルトをかけすぎると上辺、もしくは下辺の両端が、シフトやスイングをかけすぎると左辺、または右辺の両端が影響を受けます。
 ライズ(フォール)、もしくはティルトと、シフト、またはスイングを同時にかけると、四隅のうちの3か所がケラレてしまうこともあります。

 下の写真はフロントライズをかけすぎたため、画面上部の両端がケラレてしまった例です。

 
 上部の両端が黒っぽくなっているのがわかると思います(ポジをライトボックスに置いて撮影しているので、画質が悪いのはご容赦ください)。

 イメージサークルは、その外側になると突然真っ暗になるわけではなく、徐々に光量が落ちていくので、カメラのフォーカシングスクリーンではケラレているのが良くわからないことがあります。特に短焦点レンズを使っていると、フォーカシングスクリーンの周辺部はかなり暗くなってしまうので、一層わかりにくいという状態です。

 これは、フォーカシングスクリーンの四隅に付けられた切り欠きからレンズをのぞき込んで、ケラレていないかどうか確認することで防ぐことができます(切り欠きがついていないフォーカシングスクリーンもあります)。
 また、レンズの絞りが開放の時にケラレれていても、絞り込むことでケラレが解消する場合もあります。

 下の2枚の写真は、イメージサークルが174mm(F22)のレンズをカメラに取付け、フォーカシングスクリーンの右下の位置からレンズを見たものです。
 1枚目が絞りF5.6(開放)、2枚目が絞りF22の状態です。

 
 1枚目の写真(開放)ではケラレており、レモン型になっているのがわかると思います。これをF22まで絞り込むと5角形の絞りがきれいに見えており、ケラレが解消されています。
 十分に余裕のあるイメージサークルを持ったレンズであればほとんど気にする必要もありませんが、カメラの持っているアオリの可動範囲と同程度、もしくはそれ以下のイメージサークルのレンズであおる時は確認したほうが無難です。

レンズのイメージサークルが小さすぎることによる失敗

 そもそも、使用するレンズのイメージサークルが撮像面をカバーしていないことが原因です。
 これが起きる頻度はそれほど高くないと思いますが、69判くらいしかカバーしていないレンズを4×5判の撮影に使用してしまったというような場合です。
 この場合、アオリを使わなくても四隅が黒くなってしまいます。

 下の写真はまさにそのような失敗例です。

 
 また、カタログデータ上、4×5判をぎりぎりカバーするイメージサークルが記述されていても、この値は絞りF22の場合が一般的ですので、絞りを開くとやはりケラレてしまうことがあります。

 アオリのところでも書きましたが、同様にフォーカシングスクリーンの切り欠きから覗き込むことで確認することができます。

蛇腹でケラレる失敗

 蛇腹が内側に張り出してしまい、これが写り込んでしまうという失敗です。これが起きる原因は蛇腹固有の問題のような気がします。
 長年使っているうちに蛇腹がへたってきて、腰が弱くなって蛇腹自身の重さで垂れ下がってしまうと、フォーカシングスクリーンの上側に黒く写り込んでしまうということが起きます。

 また、蛇腹にはそれぞれ折りたたんだ時につく癖のようなものがあり、内側に膨らむような癖がついていると、やはり写り込んでしまう可能性があります。このようなクセのある蛇腹の場合は、レンズを取り付ける前に蛇腹の中に手を突っ込んで、内側から軽く押してあげることで防ぐことができます。
 しかし、このような状態は蛇腹についている癖なので放っておいても直ることはなく、毎回手を突っ込んで内側から押すのも面倒なので、蛇腹を交換する方が得策かと思います。

 下の写真は蛇腹が内側に膨らんでしまい、黒く写り込んでしまった例です。

 
 写真上部の黒い縁が下側に円弧を描いているのがわかると思います。これが蛇腹によるケラレです。

レンズフードでケラレる失敗

 大判カメラの場合、アオリを使うことがあるので35mm判カメラなどで使う筒状のレンズフードはほとんど使いません。アオリを使わなければ問題ありませんが、アオリを使ったときにこのレンズフードでケラレが生じてしまう可能性があることが使わない理由です。

 大判カメラ用に蛇腹式のフードもありますが使いにくいので、ハレ切りの方が簡単で確実です。

 下の写真はハレ切りを取り付けた状態です。

 
 黒い薄板や厚紙と自在に動くクリップがあれば十分に機能しますし、かさばらなくて便利です。私はカメラのアクセサリシューに取付けて使っています。

ベッドの写り込みによる失敗

 短焦点(広角、超広角)レンズを使ったときにおこりやすい失敗です。特に縦位置の撮影の際に起こる可能性が高いといえます。カメラにもよりますが、蛇腹を長く繰出せるカメラの方がベッド自体が長いため、このようなことが起こりやすく、例えば焦点距離65mmのレンズをつけた場合、リンホフマスターテヒニカ45ではベッドが写り込んでしまいますが、ウイスタ45SPだと写り込みが起きません。

 このベッドの写り込みはフォーカシングスクリーンの上側にボヤっと出るだけなので、気がつかないことがあります。特に夜景など、暗い状態での撮影の時には気づかずにシャッターを切ってしまうこともあります。
 せっかく苦労して撮っても、出来上がった写真を見たらベッドが写っていたなんてことが起きると、テンションダダ下がりです。
 このカメラでは〇〇mmより短い焦点のレンズではベッドが写り込む、ということを把握しておくと防止策の一つになります。

 残念ながら、掲載できるサンプルがありません。

ケーブルレリーズの写り込みによる失敗

 大判カメラの撮影にはケーブルレリーズが必需品ですが、これがレンズの前にびよ~んと飛び出してしまい、写り込んでしまうという失敗です。画の中に黒くボケた太い線が無遠慮に写っているのを見ると、ベッドの写り込みと同じくらい、テンションが下がります。

 構図を決めたりピントを合わせているときは、レリーズが飛び出していると気がつくのですが、ピントを合わせた後、シャッターをチャージしたりフィルムホルダーをセットしたりする間にレリーズが飛び出してしまったのを気づかずにいるとこのようなことが起きます。

 これはケアレスミスのようなものなので気をつければ防ぐことができますが、ケーブルレリーズを手元まで引き回した後、動かないように固定しておくのが望ましいと思います。
 私は三脚の雲台に配線止め金具を張り付けておき、ケーブルレリーズをここにはめ込むようにしています。

  
 このようにしておくとケーブルレリーズがブラブラすることがないので、レンズの前に飛び出してしまうのを防ぐとともに、レンズのレリーズをねじ込む部分がレリーズの重さで破損してしまうのを防ぐこともできます。

多重露光と未露光の失敗

 意図的に多重露光した場合を除き、撮影したにもかかわらず、同じフィルムで再度撮影してしまったという失敗が多重露光です。
 逆に、撮影したつもりで現像に出したら真っ黒なポジが戻ってきた、というのが未露光です。

 なぜこのようなことが起こるかというと、これも撮影時のケアレスミスによるところが大きいと思います。
 4×5判以上のシートフィルムはフィルムホルダーの両面に一枚ずつ入れておきますが、撮影前と撮影済みを引き蓋で判断するようにしています。一般的に引き蓋のラベルは片面が白、片面が黒になっており、例えば撮影前は白側を出しておき、撮影後は引き蓋をひっくり返して黒側を出して差し込む、というような使い方をします。
 しかし、撮影後に引き蓋をひっくり返すのを忘れてしまうことがあると、このような事態になってしまう可能性があります。

 
 大判カメラは今の一眼レフのようにEXIFデータを自動で記録してくれないので、一枚ごとに撮影記録を書きとめていきます。これによって、たとえ引き蓋をひっくり返すのを忘れてもこのような失敗を防ぐことができますが、撮影枚数が多いときなど、後になって引き蓋の状態と撮影記録が食い違っていても、どちらが正しいかわからなくなってしまうことがあります。
 撮影時の自分なりの手順が身についてくると、このような失敗は起きなくなりますが。 

フィルムホルダーからの光線漏れによる失敗

 これについて、私は実際に経験したことがないのですが、フィルムホルダーの引き蓋を引いた際に、引き蓋の差込口から光が入ってしまうということです。

 フィルムホルダーの引き蓋の差込口のところは、光が漏れないような加工が施されているのですが、ここから光が入ってしまうということは、ここがへたっているのではないかと思われます。
 このようなことが起きないように、シャッターを切る際は冠布をかけるという方もいらっしゃいますが、私は何もかけずにそのままシャッターを切っています。光が入り込んでしまうようであれば、フィルムホルダーを交換したほうが良いかもしれません。

露出設定の間違いによる失敗

 これは大判カメラに限った話ではありません。そもそも露出を読み間違えた、あるいは測光をミスったということが原因の場合と、測光は正しくできたが絞りやシャッター速度の設定を間違えたことが原因の場合が考えられます。

 絞りやシャッター速度の設定ミスは、測光したEV値からの換算で間違えてしまうということがいちばん多いのではないかと思います。例えば、EV10となるような絞りとシャッター速度の組合せは何通りもあるわけで、EV値から換算しようとして、1段分間違えてしまったというような状況です。露出計やEV値の換算表を用いることでこのような失敗は防ぐことができます。

 露出や測光については奥が深いので、これらは別の機会で触れたいと思います。

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 どんなに注意をしていても失敗はつきもので、全くなくすということはなかなか難しいのですが、大判カメラの場合、フィルムのコストもバカにならないので、極力、失敗をなくすよう、撮影は慎重に行ないたいものです。

(2021年6月12日)

#アオリ

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