リバーサルフィルム写真はいつまで続けることができるのか?

 2022年4月1日から富士フィルムの製品が大幅に値上げされました。例えば、ベルビア50の120サイズ5本入りの価格が、つい先日までは5,800円くらいだったのが、一気に9,500円ほどになりました(いずれも新宿の大手カメラ店での店頭価格です)。60%以上の値上げ幅です。モノクロフィルムのACROSⅡも120サイズ1本が1,260円になりました。
 フィルムの需要が激減する中、製造販売を続けていくことは並大抵のことではないということは想像がつきます。富士フィルムという大企業だからこそ継続していただけているのであり、これが小さな会社であれば到底維持できなかったであろうと思います。

 とはいえ、一気に60%以上もの値上げというのは、フィルムユーザーに暗い影を落とされたように感じるのも事実です。
 記憶が定かではありませんが、今から7~8年ほど前はベルビア50の120サイズ5本入りが一箱2,500円くらいだったと思います。つまり、1本あたり、500円前後といったところです。それが今回の値上げで、1本あたりに換算すると2,000円に届かんとしています。
 また、同じ時期のリバーサルの現像料金は120サイズが1本600円くらいだったと記憶していますが、現在は1,300~1,400円くらいになっています。
 120サイズのブローニーフィルム1本の価格と現像料金を合わせると、およそ1,100円だったのが3,300円ほどに上がったということです。実に3倍です。

 コダックがE100というリバーサルフィルムを新たに製造販売を開始し、120サイズのブローニーフィルム5本入りが一箱14,700円という価格を見た時、このフィルムを買う人がいるのだろうかと思ったものでした。しかし一方で、富士フィルムの製品もこのような価格になる日が来るのではないかと思ったりもしました。
 今回、さすがに10,000円は超えませんでしたが、E100に近い価格になったのを見ると、「やっぱり」という感じが否めません。
 今回の富士フィルムの値上げは非常にインパクトが大きく、この先、フィルムや現像料金がどこまで高騰するのだろうか、そして、こんなに高くなったリバーサルフィルムを使い続けることができるのだろうかと考えると、なんだかとても暗い気持ちになります。

 コストが3倍になったら使用するフィルム量を1/3に減らせば、計算上、トータルのコストは変わらないわけです。昔のように比較的リーズナブルな価格でフィルムを購入できた時はバシバシとシャッターを切り、駄作も量産していたわけですから、つまらない写真を撮らないようにすればフィルム消費量は確かに減ると思います。
 しかし、一つの被写体をいくつかのアングルや異なる構図で撮りたい時に、それを我慢しなけれなばならないとすると、それはとてもストレスに感じます。
 無駄なものは撮らない、でも、撮りたいものは我慢しない、というメリハリが必要になってくるんだろうなぁと思います。

 とはいえ、この先もさらなる値上げが行なわれることは想像に難くなく、無駄打ちをしないように頑張ったところで限界があるような気もします。残念ながら、リバーサルフィルムはモノクロフィルムで代用というわけにはいかないので、リバーサルフィルムをあきらめざるを得ない日が来るようで、考えれば考えるほど憂鬱になってきます。
 私が買い置きしてあるフィルムはおよそ1年分くらいです。いま、冷蔵庫に入っているフィルムは、これまでと同じペースで使うと、来年の今頃には底をついてしまうことになります。一箱10,000円近くもするフィルムを買い続けることができるのか、気持ちも萎えてきてしまいます。

 新宿の大手カメラ店の店員さんが話してくれたのですが、3月の後半に富士フィルムから価格改定のアナウンスがあった直後、店頭からフィルムが消えたそうです。値上がりする前に買い置きしておこうという人が殺到したということでしょう。
 また、8×10のシートフィルムは10,000円ほど値上がりしましたが、4×5判はまだ値上がりしていないようです。値上がりする前に少し買い置きしておこうかとも思いますが、8×10の値上がり幅からすると、ブローニーほどの値上がりにはならないのでないかと楽観視しており、今のところ買い置きは踏みとどまっています。

 先のことはわかりませんし、また、いろいろ心配したところでどうなるものでもないので、可能な限りはフィルム写真を続けていこうと思います。フィルムが高騰することで一枚々々を大事に撮るようになることは肯定的にとらえるべきことかもしれません。
 しかしながら、一般庶民にとってリバーサルが手の届かない高嶺の花になりきってしまわないように願うばかりです。

 それにしても、今は亡きアスティアとかセンシア、フジクローム400、フォルティア、トレビなど、フジクロームだけでも今の何倍もの製品がラインナップされていた頃がとても懐かしいです。

(2022年4月9日)

#リバーサルフィルム #富士フイルム

“リバーサルフィルム写真はいつまで続けることができるのか?” への12件の返信

  1. こぼうし様

    >私もヨーボ1520とパターソンPTP115を使っています。
    ヨーボは120フィルム2本を一度に現像できるので効率的です。ただし、専用の撹拌用治具がないと倒立撹拌のみとなってしまいます。ですので、私は2本現像するときはヨーボを使いますが、1本だけの現像の時はパターソンを使っています。

    貴重な情報をどうもありがとうございます。
    今ヨーボ1520の解説動画(Silversalt)を見た所です。フィルムの巻きつけが難しそうで少し躊躇しています。大分昔(40年程前),キング製の「片面スパイラル」のリールと現像タンクを使っていました。その時は135フィルムでしたが,リール軸のストッパーにフィルムの先端を固定し,片面のスパイラルの溝にフィルムの片側の縁を流し込んでいくと短時間で簡単にフィルムが巻けました。しかし,ヨーボの「両側尺取り虫式巻き取り法」だと時間がかかりそうで,暗闇で巻けるか心配です。パターソンも同じような方式でしょうか。

    もし「片面スパイラル」方式のリールとタンクがあれば自分には使いやすいと思うのですが,もしそのような製品をご存知でしたら教えていただけたら幸いです。

    1. Mumumusさん

      ヨーボもパターソンもリールの仕組みはよく似ていますが、巻き込んだフィルムがバックしないようにするため、ヨーボは指先でフィルムを押さえるのに対してパターソンは金属製の小さなボールがフィルムを押さえつけてくれる仕組みになっています。
      どちらもフィルムを巻き込んでいくのは特に難しくありませんし、巻き取り自体、120フィルムであれば10秒ほどで完了しますが、最初にフィルムの先端をリールの左右の溝に差し込むのに少々慣れが必要かも知れません。現像前のフィルムは手を離すとすぐにカールしてしまうのがいちばんの理由です。
      フィルムが1本犠牲になりますが、コツをつかむため、明るいところで実際にやってみてはいかがでしょう。

      キング製の「片溝式」というやつですね。今は見かけなくなりましたね。ヤフオクなどを探せば中古品があるかも知れませんが、他メーカー含めても現行品で片溝式というのはないのでないかと思います。

      1. こぼうし様,早速のお返事をありがとうございます。

        >キング製の「片溝式」というやつですね。

        そうそう,「片溝式」でした。昔は割と人気があったと思いますが,最近は(ネットでも探しましたが)廃番になっているようです。135フィルムは片溝式が便利と思いますが,120は幅広なので片側だと支持力が不足するかもしれません。キングも120用には「テープ式」の製品しか出していない(?)ようです。残念ですが,普通のリールを探そうと思います。

        >ヨーボは指先でフィルムを押さえるのに対してパターソンは金属製の小さなボールがフィルムを押さえつけてくれる仕組みになっています。
        >巻き取り自体、120フィルムであれば10秒ほどで完了しますが、最初にフィルムの先端をリールの左右の溝に差し込むのに少々慣れが必要かも知れません。

        なるほど。とても参考になります。まずはヨーボかパターソンのどちらかを購入する予定です。失敗は避けたいので,明るいところで何度かフィルムの「巻き取り練習」をしようと思います。
        いろいろ貴重な情報を教えていただきありがとうございました。

  2. フィルムの楽しみは現像上がってくるまで分からない焦らしプレーにある。仕事はその場で確認出来ないと撮り直しになると不可能なことになるのでデジタル化は産業革命でした。

    1. おじゃま虫さん
      ご覧いただきまして、ありがとうございます。
      確かにデジタルカメラによる恩恵は計り知れなく、産業革命といえるくらいの変革ですね。
      その一方で、デジタルの力には抗えないと思いながらも、アナログの良さも感じています。

  3. 全く仰る通りと思います。

    自分はフィルムでは富士のリバーサル120(Velvia)を主に使ってきたので影響が大です。確かに昔は一本500~600円だったなーと郷愁気味に思い出しています。現像代も高くなりましたね。

    仕方なく,他の選択肢(窮余策)としてモノクロ120(ローライレトロ80S)を使い始めました。本当はモノクロポジが使いたいのですが,今は120の製品がないようですね。

    なので,モノクロフィルムのリバーサル現像の記事にも興味をもちました。こんな現像方法があるのですね。とても参考になります。ただ,処理は難しそうで,自分の場合,道具を揃えることから始めねばならず敷居は高そうです。

    1. Mumumuさん
      ご訪問いただきまして、ありがとうございます。
      リバーサルフィルムで撮り続けることができるのか、本当に切実な問題になってきましたね。
      ローライのレトロ80Sは以前から気にはなっていたのですが、まだ使ったことがありません。
      モノクロフィルムのリバーサル現像はちょっと手間がかかりますが、ネガとは違った味わいがあります。現像タンクや現像液など、最初にちょっとコストがかかりますが、ランニングコストはかなり抑えらるのでお勧めです。

      1. ご返信ありがとうございます。

        いやはや,本当にカラーリバーサル受難の時代になってしまいましたね。昨日,3月中に注文していた最後のVelvia120一箱をカメラ店に受け取りにいきました。支払った金額の5180円に対して,新価格は8600円。この高騰はかなり厳しい。MacoかAGFAかRolleiか,Fomaや上海でもいいから何処か新しいリバーサルフィルムを作ってくれるといいのだが。

        ローライのレトロ80Sは,まだ使い始めで手探り状態です。高コントラストで近赤外が写るようなので,遠景や深緑の撮影には向きそうです。Rolleiのサイトを調べたら,白黒リバーサル現像用のキットが出ているようです。Macoのオンラインで65ユーロ程。20本現像すれば一本当たり約500円。安くは無いけど許容範囲内でしょうか。
        https://www.rolleianalog.com/products/rollei-sw-dia-kit/?lang=en

        でも,風景や花にはやっぱりカラーリバーサルが良いなあ。

        1. Mumumuさん
          ご連絡ありがとうございます。
          ローライのリバーサル現像キットは使ったことがありませんが、1本あたり500円が高いか安いかは微妙なところですね。

          私は必要な薬剤を個別に購入していますが、全部新規にそろえたとして10,000円くらいかかります。
          いちばん消費するのが現像液ですが、ILFORDのシルバークローム(1L入り)が1本1,000円ほどで、これで120フィルム40~50本は現像可能です。
          その他の薬剤はものによって異なりますが、1本購入すればフィルム150~400本はいけます。
          フィルム1本あたり70~80円ですので、コストだけを考えればだいぶ安く済みます。
          ただし、フィルムによって特性が異なるので、ローライのフィルムをお使いであればキットの方が安心感はあると思います。現像に失敗すると高いフィルムが無駄になってしまいますから。

          あとは現像タンクやビーカーなどが必要ですが、アマゾンとかを使えば10,000円ほどで揃えられると思います。

          おっしゃる通り、リバーサルの美しさは別格ですね。
          私はカラーリバーサルの現像にも挑戦してきましたが、どうしてもラボのような発色にならず、フィルムがもったいないので今はラボにお願いしています。

          1. ご連絡ありがとうござます。

            >フィルム1本あたり70~80円ですので、コストだけを考えればだいぶ安く済みます。

            これは安くていいですね。ただ全て自前で揃えるには知識と経験と時間が必要。取りあえず現像タンクと現像キットが現実的だが,我が家の財務大臣の了解がえられるかなあ。ネットを見ると,Joboの製品が使い易そうでしょうか。私は専ら120なので,Jobo1520辺りを候補に情報を集めています。

            >リバーサルの美しさは別格ですね。

            確かにリバーサルは色が美しくて濃厚ですね。まだまだ(デジタルバックに移行するまでは)使いたいと思っていたけど,ここまで値段が上がると厳しいなあ。Rollei(Maco)がCRシリーズを復活してくれたら嬉しいのだが…

          2. Mumumuさん、こんにちは。
            私もヨーボ1520とパターソンPTP115を使っています。
            ヨーボは120フィルム2本を一度に現像できるので効率的です。
            ただし、専用の撹拌用治具がないと倒立撹拌のみとなってしまいます。
            ですので、私は2本現像するときはヨーボを使いますが、1本だけの現像の時はパターソンを使っています。
            使用する現像液の量はどちらもほとんど同じです。

            ローライクロームも1年くらい前までは何とか手に入ったんですけどね。

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