写真・映像用品年鑑(写真・映像用品総合カタログ)が、驚くほど薄くなった!!

 写真やカメラに興味をお持ちの方であればご存じかと思いますが、一般社団法人 日本写真映像用品工業会というところが毎年発行してる「写真・映像用品年鑑」という冊子があります。工業会に加入している企業が製造・販売している写真用機器などが掲載されている総合カタログです。国内で販売されているカメラ用品や写真用品の多くが網羅されており、安価ということもあり、便利な冊子です。年一回、2月ごろに発行されるのですが、毎年購入する必要もないので、私は数年ごとに購入していました。

 先日、新宿のカメラ屋さんに立ち寄った際、この冊子の2022年度版が置いてあったので久しぶりに購入してみようと思い、手に取ってビックリしました。冊子がぺらっぺらに薄くなっています。パラパラっと中を見たところ、厚さだけでなく内容も随分希薄になったなという印象です。
 お金を出して買うほどのものではないと思い、棚に戻そうとしましたが、時代の流れを反映しているような薄い冊子に何だか興味が湧いて購入してしまいました。510円(税込)でした。

▲写真・映像用品年鑑 左:2022年度版 右:2016年度版

 私が初めて写真・映像用品年鑑を買ったのはずいぶん前のことで、いつだったのかは覚えていませんが、少なくとも20年以上は経っていると思います。
 新しいのを購入すると、ひとつ前の号を残して二つ前の号は廃棄してしまいます。数年に一度しか購入しないので、いま手元に残っている最も古いのは2016年度版(No.46)です。
 2016年度版を購入した時も、それまでのに比べると薄くなったという感じはしたのですが、それとともに、掲載されている商品の写真や文字がすごく小さくなり、ずいぶん見難くなったと感じたのを覚えています。とはいえ、掲載されている情報量が特に減ったという印象はありませんでした。経費削減のためにページ数を減らし、見易さを犠牲にしたのだろう程度に思っていました。

 ところが、今回購入した2022年度版はページ数も情報量も格段に減っています。昨年も一昨年も、その前も購入していないので、徐々に薄くなったのか、急激に薄くなったのかわからないのですが、来年は消えてしまうのではないかと思ってしまうほどです。新聞の折り込み広告などにまぎれて古紙回収に出されても気がつかないのではないかというくらいの薄さで、まさに風前の灯火といった感じです。

 手元にある中でいちばん古い2016年度版と、今回購入した最新の2022年度版を比較してみました。

  ・総ページ数 : 352ページ –> 88ページ
  ・カタログページ数 : 292ページ –> 41ページ
  ・掲載企業数 : 42社 –> 12社
  ・工業会会員数 : 51社 –> 40社

 2016年からの6年間で、冊子の厚さ(ページ数)は約1/4に、カタログが掲載されているページ数は1/7以下に、掲載している企業数も1/4近くまで減少しています。掲載企業数が12社というのはまさに驚きです。
 掲載されている商品(アイテム)数も非常に少なくなっているし、カタログページよりも他のページの方が多いという状況で、もはや「年鑑」とか「総合カタログ」と呼べる内容ではないというのが正直な感想です。
 代表的なところを挙げてみると、これまでかなりのページ数を使って掲載していたケンコー・トキナー、スリック、富士フイルム、近代インターナショナル、ユーエヌなどは数ページに減少してしまい、エツミ、ベルボン(今はハクバになっていますが)、ハクバ、マルミなどは掲載すらされていません。
 価格も昔は300円くらいだったと記憶しているのですが、それと比べるとかなり値上がりしています。
 あまり意味があるとも思えませんでしたが厚さを測ってみたところ、2016年度版は10mmちょうど、2022年度版はわずか2.9mmでした。

▲写真・映像用品年鑑 上:2022年度版 下:2016年度版

 数年の間に何故ここまで薄くなってしまったのかということについては想像に難くなく、ネットで大方の情報を得ることができるようになった現在、このような総合カタログの必要性が薄れてきていることが大きな原因であろうと思われます。
 たくさんの企業の商品が掲載されている分厚いカタログをめくるよりも、パソコンやスマホで自分の見たいもの、知りたいことを検索したほうがはるかに早いし、何よりお手軽です。しかも、企業が提供しているサイトの方が圧倒的に詳しい情報を得ることができます。

 また、カタログの制作には時間もかかるしお金もかかります。昔のように商品の情報を伝える術が限られていた場合は、お金をかけても情報が集約された総合カタログのようなものは有効だったのでしょうが、今は状況が変わってきています。時間やコストをかけても効果性や効率性が期待できないということでしょう。

 そして、冊子の厚さ以上に気になるのが、日本写真映像工業会に加盟している企業数の減少です。
 写真用品や映像用品の製造・販売をしている企業数がどれくらいあるのかわかりませんが、写真業界の動向調査やカメラ業界に関する白書などを見ると、売上が減少したり、倒産したという企業が増えていることは事実のようです。そういったことが大きな原因になっているとは思いますが、6年間で2割も減ってしまうというのは驚きです。
 それまではなくてはならないとされていたものが、カメラがデジタル化されたことによって不要になったというものはかなりの数に上ると思われます。フィルムが最たるものでしょうが、レンズ用のフィルターとか、ストロボなどの照明機器、写真をパソコンなどで見ることが当たり前になったことでアルバムや額縁等々、非常に広範囲に影響が及んでいると思います。
 もちろん、新しい市場も形成されているわけですが、全体としての規模は確実に縮小しているのは間違いのないことなのでしょう。

 そういった環境の変化が及ぼす影響は大きいと思われ、写真・映像用品年鑑に掲載されている企業数も商品数も格段に減ってしまいましたが、掲載されている内容を見ると、全商品を掲載するよりは主力商品や特徴的な商品などに絞っているのと、商品そのものよりも企業のイメージを前面に出しているものが増えている傾向にあるという印象を受けます。商品の詳細は自社のホームページで紹介しているので、そちらを見てくださいという思いなのかもしれません。

 日本写真映像工業会という社団法人は1961年の設立らしいので、今年で61年という歴史ある団体です。活動内容についてはあまり詳しくありませんが、写真用品の認知向上や普及、品質向上、業界の発展ということを大きな目的にしていたことは間違いないと思います。
 その中の具体的な活動の一つとして、写真・映像用品年鑑の発行があったと思うのですが、時代の流れとは言え、あまりの変貌ぶりと言えます。私は4年ぶりの購入なので、一層その感が強いのかも知れませんが、毎年、目にされていらっしゃった方々にとってはじわじわと感じられていたことと思います。

 以前のように、300ページも400ページもあったカタログは、特に目的があるわけでもないのですがページをめくっていくこと自体に楽しみがあり、小さな写真と文字で紹介された各社の商品の中から新しい発見があるというのも総合カタログの持つ魅力だったと思っています。
 ただし、それは膨大な量の商品が掲載されているからこそであって、情報量が少ないとその魅力は一気に色褪せてしまいます。
 また、私のようにフィルム写真をやっている立場からすると、ページ数の少ない最新のカタログを見ても自分が使いたいと思うものがあまりなく、昔のカタログの中にこそ自分の使いたいものがゴロゴロしています。

 とはいえ、こんなに薄くなっても発刊し続けるということに対して頭が下がりますし、何十年も発刊し続けてきたことへの誇りのようなものも感じずにはいられません。長きに渡って写真用品の業界に大きな影響を与えてきたことは紛れもない事実だと思います。
 個人的には、以前のようにたくさんの情報が詰まった総合カタログの存在は大歓迎なのですが、継続していくことの大変さ、難しさを垣間見たような気がしました。
 毎年購入するわけではありませんが、来年(2023年)度の写真・映像用品年鑑は発行されるのだろうかと、今回購入した2022年度版を見ているととても気になってしまいます。

 因みに、写真・映像用品年鑑は日本写真映像工業会のホームページから無料で閲覧することができます。ただし、商品カタログ以外のページ(「写真が上達するコツ」、「撮影・写真用品の基礎知識」、「フォト検通信」など)は掲載されていませんでした。

(2022.7.16)

#カメラ業界

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