ローライ Rollei RPX25 超微粒子、高解像度、高コントラストのモノクロフィルム

 私が使っているモノクロフィルムの中でいちばん使用頻度が高いのがイルフォードのDELTA100、次いで富士フィルムのACROSⅡ、そして、ローライのRPX25です。それ以外のフィルムはお試しに使ってみる程度で、常用しているのはこの3種類です。
 RPX25はDELTA100やACROSⅡに比べると使用頻度は低いのですが、カリッと締まった描写が気に入っています。ISO感度が低いので使いにくいところもありますが、他のフィルムとは一線を画したようなところがあるフィルムだと思っています。

低感度のパンクロマチックモノクロフィルム

 ISO25という低感度フィルムです。世の中にはISO6とかISO12とかの超低感度フィルムも存在するようですが、ブローニーサイズの現行品で普通に手に入るフィルムとしては、このRPX25が最も低感度ではないかと思います。かつて、コダックからISO25のコダクロームKMとPKMという低感度リバーサルフィルムが販売されていましたが、RPX25を見ているとそれを思い出します。
 本来が低感度フィルムなのでEI25として使用するのが一般的だと思いますが、現像液によってはEI320にも対応可能なようです。私はEI320どころかEI50としても使ったことがないので、どのような写りになるのか知りませんが、のっぴきならない事情があったり、あるいは特別な表現を求めるとき以外は不必要にEIを高くすることもないと思います。

 このフィルムを使って私が撮影するのはほとんどが風景です。晴天時の日中に絞りを開いての撮影であれば手持ちでもいけますが、少し薄暗いときや絞り込んでの撮影、または夜景の撮影時などは三脚が必須です。シャッター速度はどうしても遅くなりがちなので、被写体ブレを起こしたくないようなときは気を使います。

 ちなみに、RPX25の120サイズのフィルム、ヨドバシカメラでは1本1,900円ですが、通販のかわうそ商店では1本1,090円です。さらに10本セットだと9,900円なので、1本あたり990円となります(いずれも2023年3月24日時点の税込み価格です)。フィルムが高騰している現在、10本セットはいえ、1本あたりが1,000円を切っているというのはお安いのではないかと思います。

コダック Kodak のD-76でネガ現像

 現像液はローライのスーパーグレイン SUPER GRAIN が望ましいのかもしれませんが、普段使っているコダックのD-76を使用しました。EI25の場合、1+1の希釈で20℃、8分となっていますので、それに従っています。このところ、暖かさを通り越して初夏のような陽気になっており、気温も20度近くまで上がっているので、現像液を温めたり冷やしたりという手間が省け、現像するにはありがたい気候です。

 コダックの薬品の国内販売が終了してしまったようですが、アマゾンなどではまだ在庫があるのか、購入ができるようです。私は販売終了のアナウンスがあった際に5袋ほど買い置きしておきましたが、そろそろ底をつきそうです。海外では販売されているようなので個人輸入という手もありますが、私の場合、それほどD-76に拘っているわけではないので、なくなったら別の現像液を使うことになりそうです。

黒が締まった硬調な描写が特徴

 先日、隅田川に架かる橋を撮りに出かけた際、RPX25を2本だけ持って行きました。その時に撮った写真を何枚かご紹介します。
 いずれも大判カメラに67判のロールフィルムホルダーを着けて撮影しています。

 まず1枚目の写真ですが、蔵前橋の下から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD65mm 1:5.6 F22 2s

 この日は良く晴れていて、橋の下から見ると川面に反射した光が橋げたを照らしていて、無機質の鉄骨ならではのコントラストになっていました。日中なので外はかなり明るく、背景はほとんど白飛びしています。
 橋脚からアーチ型に伸びた鉄骨が放射状に広がって見えるように短焦点レンズを使っています。もちろん、実際にはこんな風に放射状になっているわけではなく、同じ間隔を保ちながら平行に並んでいます。もう少し短めのレンズを使って真上まで入れた方が迫力が出たかも知れません。

 橋げたの下の部分は反射した光で明るいのですが奥の方までは光が届いていません。しかし、奥の方が黒くつぶれているかというとそういうわけでもなく、橋げたの構造がわかるような画像が記録されています。黒に対しての許容度が高い感じを受けます。
 また、中間調も綺麗に表現されていて、黒か白かに二分されてしまうのではなく、なだらかなグラデーションになっています。全体としてはカリッとした感じを受ける描写ですが、豊かな階調も損なわれることなく表現されていて、硬調な中にも柔らかさを感じます。

 次は、橋の下から係留されている釣船を撮影した写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F8 1/250

 太陽の位置はほぼ正面上方にあり逆光状態ですが、上部に橋げたの一部を入れることで明るい空をカットして、光が直接入るのを防いでいます。また、遠くにある釣船を注視しているような効果を狙ってみました。
 川面は光の反射でとても明るいので、陽があたっていない釣船とのコントラストが高く、長めの焦点距離のレンズで撮っていることもあり、立体感が出ていると思います。釣船の右舷側はかなり暗いのですが、つぶれてしまうことなく描写されています。

 個人的には水面の反射で輝いている左舷の金属の質感が気にいっています。

 3枚目の写真は、橋げたの一部だけを撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F16 2s

 水面の反射によって、橋げたの鉄骨の一部だけが明るく照らされている状況です。塗装がされているので、実際にはこんなに輝いては見えないのですが、光が当たっていないところとのコントラストと相まってモノクロならではの描写です。大量に打たれたリベットの頭部がわずかに光っているところなどに構造物の重厚感が感じられます。
 何度も塗料の塗り重ねがされてきたのだと思いますが、白く輝いている中にも表面の凹凸がわかりますし、暗部のディテールも良く出ていて、このフィルムのポテンシャルの高さを感じます。

 この日は隅田川に架かる橋の夜景を撮るのが目的で出かけたので、このフィルムでも数枚、夜景を撮影してみました。
 そのうちの1枚が下の写真です。

 日没して1時間ほど経った午後7時ごろに撮影したものです。いわゆるマジックアワーと呼ばれる時間帯は過ぎて、既に空は真っ暗です。
 このような状況において、低感度のフィルムで撮影しても弱い光はなかなか写り込んでくれません。いくら長時間露光をしても弱い光には反応してれないので、極端な言い方をすると、明るいところと暗いところだけで構成された画になってしまいがちです。
 ライトアップされた橋の欄干やアーチ、および水面への映り込みは明るいのですが、それ以外はほぼ黒といった状態で、まるで二値化された画像のようです。非常に硬い感じの描写になっていますが、これはこれで独特の趣が感じられます。

見事にヌケの良いポジが得られるリバーサル現像

 フィルム2本を撮影してきたので、1本をリバーサル現像してみました。
 RPX25は長年使ってきましたが、これまでこのフィルムでリバーサル現像をしたことは一度もなく、今回、初の試みです。
 RPX25のリバーサル現像に関するデータがないので、通常のネガ現像のデータをもとに現像時間を換算してみました。
 実際の現像時間については以下の通りです。

  第1現像 : 8分45秒
  漂白 : 5分
  洗浄 : 3分
  露光 : 片面1分
  第2現像 : 3分
  定着 : 7分

 現像液はイルフォードのシルバークロームデベロッパーを1:4(水)に希釈して使用しました。

 現像後のポジ原版が下の写真です。

 スリーブに入れたポジをライトボックス上で撮影したものなので画質が良くありませんが、黒の締まり具合、ヌケの良さ、解像度の高さなどは感じていただけるのではないかと思います。

 右上のコマをスキャンしたのが下の写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F22 1s

 こうしてスキャンして画像にしてしまうとネガ現像したものなのか、リバーサル現像したものなのかは判断がつきません。全体的に硬調な描写やしっかりと締まった黒、右の奥に見えるビルの中間調など、豊かな描写をしていると思います。金属の質感も良く出ていますが、橋脚の石の質感も見事です。

 現像の過程で大きな失敗をしなければ、ネガ現像だろうがリバーサル現像だろうが、解像度やコントラストの出方に違いはないと思われますが、リバーサル現像の方が工程が多い分、わずかな失敗でも積み重なって画質に影響を与える可能性はあります。ですので、あえてリバーサル現像をする理由もないのですが、やはり、現像後のポジをライトボックスで見た時の感動はひとしおです。
 イルフォードのDELTA100もヌケの良いポジを得られますが、もしかしたらRPX25の方が上を行っているかも知れません。

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 低感度フィルムなので多少の制約を受けることもありますが、高い解像度やコントラスト、超微粒子による緻密な描写など、魅力のあるフィルムであることは確かです。硬調な描写は見ていて気持ちの良いものですが、硬いだけではないのがこのフィルムの特性かも知れません。
 もともとコントラストの高いフィルムですが、モノクロ用のフィルター(Y2、YA3など)を装着するとさらに高コントラストになります。被写体によっては不自然になってしまうかも知れませんが、一つの表現手法でもあると思います。

 また、このフィルムは冷蔵庫などに入れておくことで長期保存も可能らしいので、買い置き向きかも知れません。

(2023.3.24)

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