BESSAMATIC(ベッサマチック)で撮ってみました

 4か月ほど前に新宿の中古カメラ店で衝動買いしたVoigtlander BESSAMATIC(フォクトレンダー ベッサマチック)がどんな写りをするのか、モノクロフィルムを入れて撮影してみました。使用したのは富士フィルムのACROS100Ⅱです。

 ついているレンズはデッケルマウントのCOLOR-SCOPAR X(カラースコパー) 1:2.8/50。60年以上も前のカメラですが、現代のフィルム一眼レフカメラと基本的なところはほぼ同じです。ただし、クイックリターンミラーは採用されていないため、フィルムを巻き上げないとミラーが上がったままで、ファインダーを覗いても真っ暗です。
 何と言ってもいちばん特徴的なのは、絞りとシャッター速度を連動させるライトバリュー方式の露出操作だと思います。絞りとシャッター速度を合わせた後、シャッター速度ダイヤルを動かすと連動して絞りダイヤルも動き、常に同じ露出を維持するような仕組みになっています。すごい機構を組み込んだものだと思いますが、個人的にはあまり使い勝手が良いとは思いません。シャッター速度だけ変えたいと思っても絞りまで動いてしまうので、絞りを元に戻す操作をしなければならず、ちょっと煩わしいです。

 フォーカシングはスプリットイメージ方式が採用されています。しかし、縦の線がはっきりしないような被写体ではマット面で合わせることになりますが、ピントの山が非常につかみにくいスクリーンです。
 セレン式の露出計も内蔵されていて動作はしているようですが、精度のほどはわかりません。

 今のカメラのようにカメラ本体にストラップをつける金具がないので、首から下げる場合は昔懐かしい茶色の革のケースに入れなければなりません。これがまた、何とも言えず格好が良いです。

Voigtlander BESSAMATIC

 さて、実際に撮影してみた感想ですが、想像していたよりもはるかにシャープな写りをするレンズでした。60年も前のレンズなので、もっとふわっとした感じの写りを想像していたのですが、ちょっと驚きです。しかし、逆光気味になると途端に画質が落ちてしまいますが、これは仕方のないことかもしれません。

 下の写真は東京都庁の都民広場です。

東京都庁 都民広場

 半円形に湾曲した壁面のグラデーションも綺麗に出ていますし、光が強く当たっているところの光の滲みもあまり感じられません。黒のしまりがいい感じに出ているのはフィルムのおかげだと思います。

 もう一枚、新宿NSビルに設置されている世界最大の振り子時計、「ユックリズム」です。

新宿NSビル ユックリズム振り子時計

 ビルの中なので全体にコントラストが低めですが、それでもシャープな写りをしていると思います。

 以前は35mm判カメラもごろごろしていたのですが、ほとんど手放してしまい、手元に残っている35mm判カメラはCONTAX T2だけです。T2はコンパクトカメラなので持ち歩きには便利ですが、「よし、撮るぞ!」という気合のようなものは湧いてきません。
 それに比べて今回持ち出したBESSAMATICは、写真を撮るという行為そのものが楽しくなるようなカメラです。決して使い易いカメラではありませんが、そのフォルムといい、茶色のケースに入ったレトロな感じといい、「カメラだなぁ」と感じさせてくれます。
 とはいえ、今後もこのカメラの出番が増えることはないと思いますが、中古カメラ店を覗いて心惹かれるものがあれば、また衝動買いをしてしまうかも知れません。

 なお、今回の現像は富士フィルムのミクロファインを使っています。

(2020.12.18)

#BESSAMATIC #ベッサマチック #中古カメラ #モノクロフィルム

ヴィンテージカメラの魅力

 例年になく長い梅雨がやっと明けたと思ったら耐え難いくらいの猛暑が押し寄せ、しかも今年は新型コロナの影響で遠出もままならない状態です。撮影も思うようにできず、悶々とした日を過ごしています。
 そんなわけで、たまには中古カメラ店にでも行ってみようかと思い、新宿と中野にある中古カメラ店を何件かはしごしてきました。

 近年、中古カメラ店に行って感じるのは、若い女性客が多いということです。しかも、デジカメではなくフィルムカメラを探している女性を多く見かけます。聞くともなく、店員さんとの会話が耳に入ってくるのですが、これからフィルムカメラを始めようと思っている女性が多いことに驚きです。
 食べ物にしてもいろいろなお店にしても、若い女性から支持されることが売上の伸びる大きな要因らしいです。フィルムカメラも若い女性に支持されて、市場が大きくなってほしいものです。

 さて、私はカメラのコレクターではありませんので、実際に使いもしないカメラやレンズを買うことはほとんどありません。ですが、中古カメラ店に並んでいる年代物のカメラを見ると、「いいなぁ」「ほしいなぁ」という気持ちが湧いてくるのも事実です。買っても実際に撮影に使うことはほとんどないだろうということがわかっていながらも、欲しいと思うのは何故なんでしょう?月並みな言い方をすると、カメラの持つオーラのようなものに引き付けられるのだということになると思うのですが、本当の心理状態はちょっと違う気もします。

 そんな葛藤をしながら何のことはない、カメラの放つオーラに負けてしまい、買ってしまいました。それが下の写真のドイツ製カメラ、Voigtlander BESSAMATICです。調べたところ、発売は1959年とのことですので60年以上前のカメラですが、傷や汚れは全くと言ってよいほどなく、とてもきれいな状態を保っています。しかも、昔懐かしい茶色の革製のケースまでついています。
 これでお値段9,000円。どこか壊れているんじゃないかと思いましたが、全く問題なく動作している感じです。

Voigtlander BESSAMATIC + COLOR-SKOPAR X 1:2.8/50

 このカメラについてはたくさんの方が記事を書いていらっしゃいますので詳細はそちらをご覧いただくとして、私の心を動かしたのは何といってもそのフォルムです。昔のカメラはどれもそうですが、金属製のボディは重厚感がありますし、デザインも機能美に満ちていると思います。60年を経ても全く古臭さを感じさせません。それどころか、個人的には最近のカメラのデザインよりもはるかにセンスがあると思います。

 しかし、金属製であれば何でも良いというわけではなく、やはりデザインはとても重要な要素です。金属製であっても心動かされないデザインのカメラもあります。もちろん個人の好みですから人それぞれですが、うっとりと眺めていられる美しさを持ったカメラというのは、中古カメラ店の棚の中でも輝いていると感じるのは贔屓目でしょうか?

 職人のこだわりが随所に感じられるこのカメラ、60年前にどういう人が手にして、どういう経路をたどって今、私の手元にあるのか、そんなことを想像させるのもこういったカメラの魅力かもしれません。
 このカメラがヴィンテージカメラに属するのかどうかよくわかりませんが(なにしろ9,000円ですから)、撮影に行く回数が激減している昨今、こんなヴィンテージカメラを探してみるのも悪くないなと思っています。

 このカメラでバシバシ撮影することはないと思われますが、一度は撮影をしてみたいと思います。どんな写りをするのか、楽しみです。

(2020.8.16)

#ベッサマチック #BESSAMATIC #中古カメラ