檜原村 初夏の風景を大判カメラで撮る

 4月の後半、檜原村(東京都)に行ってきました。檜原村は都心から車で2時間ほどですが、東京都とはいえ、さすがに標高も高いので、都心よりも季節の進み方はずいぶん遅いようです。まさに新緑真っ盛りといった感じで、大判カメラで初夏の風景を撮ってみました。
 今回持ち出したカメラは、リンホフマスターテヒニカ2000です。

新緑と山桜のコラボレーション

 あきる野市を抜け、檜原街道を西(檜原都民の森方面)に行くと徐々に山深くなってきます。それでも道の両側には民家が見られますが、南郷の駐在所を過ぎたあたりから民家はめっきり減り、東京とは思えない豊かな自然が続きます。山々はまだ淡い色をしており、ところどころに桜(山桜と思われます)も咲いています。

 下の写真は走っている途中で見つけた山桜です。それほど大きな木ではありませんが、隣のオオモミジと思われる新緑とのコラボレーションがきれいだったので撮ってみました。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 FUJINON CM 105mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 この日は曇り空でしたが、強い日差しが当たっているよりは全体的に柔らかな描写になるので、このような被写体を撮るにはむいています。
 道路脇から撮っており、ワーキングディスタンスが制限されてしまうので、若干、広角寄り(105mm)のレンズでの撮影です。大きな木ではないので、あえて左右を切り詰めてみました。
 オオモミジの新緑の色が濁らないように、露出は少し明るめにしています。
 ほとんど無風状態でしたので、1/4秒の低速シャッターでもブレることなく写ってくれました。

矢沢を彩る新録

 檜原街道は南秋川に沿って走っていますが、この南秋川にはいくつもの支流が流れ込んでいます。矢沢もそんな支流の一つで、神奈川県との県境にある生藤山の山麓がその源流です。小さな沢ですが景観が美しく、被写体に富んでいます。矢沢に沿って林道があるのですが、残念ながら途中で通行止めになっていました。

 南秋川に合流する手前の橋の上から撮ったのが下の写真です。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 FUJINON W 210mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 水量は決して多くありませんが、とてもきれいな水が流れています。河原の白い石と木々の緑のコントラストが美しい景観をつくりだしています。
 渓谷の深さを表現しようと思い、川を左下に寄せ、急峻な右岸を多めに入れてみました。沢に張り出す左右の枝が重なりすぎないアングルから撮っています。

 また、全体をパンフォーカスにしたかったのでカメラのフロント部を少しだけ下にあおっていますが、左上の奥の木々は被写界深度を外れてしまっている感じです。

 この矢沢はこのような景観が上流まで続いているので、林道の通行止めが解除されたら源流まで行ってみたいと思っています。

山萌える

 この時期の檜原村は木々が芽吹いて間もない頃で、山全体が淡い色彩に覆われています。少し山の上の方に目をやると、緑というよりは「白緑(びゃくろく)」とか「薄萌葱(うすもえぎ)」といった名前がぴったりの色をしています。
 しかし、このような色は長くは続かず、日増しに濃くなっていきます。

 白緑というにふさわしい色合いをした景色に出会いました。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 Schneider APO-SYMMAR 180mm 1:5.6 F32 1/4 PROVIA100F

 木によって色合いが微妙に異なり、何とも言えない美しさが作り出されています。所どころに桜が咲いており、淡い色を一層引き立てているように感じます。

 このような景観が広がっているので、どこを切り取るか非常に迷いますが、木々が最もこんもりと見えるアングルと、全体が単調なパターンにならないように所どころにアクセントとなるものが配置されるような構図を選びました。
 露出を切り詰めてしまうと、この淡い感じが消えてしまうし、露出をかけすぎると飛んでしまうし、非常に悩むところです。

 この色合い、ポジ原版をライトボックスで見ると息をのむ美しさですが、画面ではお伝え出来ないのが残念です。

ひっそりと佇む龍神の滝

 檜原村にはたくさんの滝がありますが、個人的に気に入っているのが「龍神の滝」です。檜原街道からすぐのところにあり、斜面に設けられた遊歩道を下っていくと容易に訪れることができます。
 落差が18mほどの滝で、かつてはかなりの水量があったようですが、いまはずいぶんと減ってしまい、一筋の糸のような滝です。

▲Linhof MasterTECHNIKA 2000 Schneider APO-SYMMAR 150mm 1:5.6 F32 8s PROVIA100F

 周囲は大きな木々でおおわれているため、昼間でも薄暗い状態です。時おり木漏れ日が差し込み、岩や水面に模様を描き出していたので、滝つぼのところだけを撮ってみました。
 昼なお薄暗いところにたたずむ雰囲気が壊れないよう、ごつごつした岩が黒くつぶれないぎりぎりのところまで露出を切り詰め、水が白く飛びすぎないようにしました。

 滝の全景を撮るには対岸からか、もしくは滝つぼから広角で見上げる構図になるかと思いますが、綺麗な滝なのでいろいろな撮り方ができると思います。
 水量は多くありませんが近づくと飛沫が飛んできますので、風の強い日などは要注意かも知れません。

 なお、この滝では滝行が行なわれ、それに訪れる人も多いらしいのですが、一度もお目にかかったことはありません。

 村域の9割以上が山林という檜原村ですが、それゆえにたくさんの自然に恵まれており、森林、渓谷、滝など、四季を通じていろいろな景色に出会うことができます。

(2021.6.4)

#檜原村 #渓流渓谷 #リンホフマスターテヒニカ #Linhof_MasterTechnika #新緑

大判カメラ リンホフマスターテヒニカで撮る払沢の滝(東京都檜原村)

 明日からしばらく雨の日が続きそうとの予報でしたので、急に思い立ち、檜原村にある払沢の滝に行ってきました。
 新型コロナ感染拡大抑止対策のための県境を越えての移動自粛が解除されたとはいえ、東京から出ることに気を使ってしまいます。檜原村の方からすれば、同じ東京とはいえ都心方面からは来てほしくないという気持ちもあろうかと思いますが、なるべく人と接しないように気をつけながら行くことにしました。

東京で唯一、日本の滝百選に選ばれている落差62mの滝

 東京の滝では唯一、日本の滝百選に選ばれている払沢の滝を訪れるのは2年ぶりです。都心から車で1時間半ほど。平日のせいもあり、駐車場には2台の車が止まっていただけでした。雨は降らない予報でしたが、霧雨のような雨が降っていたのでしばらく車の中で待機。30分ほどで雨も上がり、空が明るくなってきたので滝に向かいます。今日は大判カメラでの撮影です。駐車場から滝まではゆっくり歩いても15分ほど。きれいに整備された遊歩道があるので歩くのも楽です。滝に向かって遊歩道の左手側が深い渓谷になっています。
 途中、下ってくるカップルに出会いましたが、滝についたときには誰もいませんでした。雨が続いていたせいか、滝の水量も多いように感じます。落差62メートル、4段になって落ちる滝らしいのですが、ほとんど最下段しか見えません。下から2段目が木の間からわずかに見える程度です。

 下の写真は滝から少し離れ、手前に滝つぼからの流れを入れてみました。風はほとんどなかったのですが、やはり4秒の露光ですので木の葉がぶれています。手前の岩にもピントが来るようにカメラのバック部をあおっています。
 縦位置で90mmレンズを使うとカメラのレールが写り込んでしまうので、フロントを少しライズさせなければなりません。

▲Linhof MasterTechnika 45 Schneider SuperAngulon 90mm 1:8
                   F32 4s PROVIA100F

 滝を訪れる人も徐々に増えてきたので、滝を3カット撮って下流に移動です。

小さいながら、趣のある滝も

 下の写真は落差50cmほどの小滝です。落差の割には深い滝つぼです。雨に濡れて黒く引き締まった岩の表情が綺麗でした。岩が白っぽくならないように、アンダー気味の露出設定にしました。少しだけフロントティルトのあおりをかけています。
 この小さな滝、妙に人気があるようで、この滝をバックにスマホを使って自撮りしている人がたくさんいました。

▲Linhof MasterTechnika45 ApoSymmar 150mm 1:5.6 F22 8s PROVIA100F

 ここから下流は渓谷が深くなって降りていくこともできないので、渓流の写真はここまでです。もう少し下流に忠助淵というところがあるのですが、この時期は木の葉が茂っていて見通しがききません。
 少し前まで雨が降っていたのと、曇っているため柔らかな光が綺麗に回り込んでいて、遊歩道沿いの木々の緑がとても鮮やかです。遊歩道脇のドクダミの花も満開で、薄暗い森の中に小さな明かりが灯っているようです。

雨に濡れた緑が美しい

 下の写真は遊歩道沿いの杉林です。雨に濡れて褐色になった杉の幹と木々の葉っぱの緑のコントラストがとても美しいです。もう1/2段ほど露出をアンダーにしたほうが雰囲気が出たかもしれませんが、そうすると葉っぱの緑が濁ってしまい、難しいところです。

▲Linhof MasterTechnika45 Schneider ApoSymmar 180mm 1:5.6 F32 8s PROVIA100F

 この後、杉の幹に絡むボタンヅル等を撮り、駐車場に戻りました。駐車場に戻ったのが午後1時過ぎ。約3時間の撮影行で、本日の撮影は大判(4×5)フィルムで8カットでした。
 出発するときは全部で3台しか止まっていなかった車が、帰ってきたときには10台ほどになっていました。
 帰路、八王子にある道の駅に立ち寄り、野菜や果物を買い求めました。この道の駅は地元産の野菜や果物がたくさんあるため、平日でも結構混んでいます。
 その後は新宿に直行し、本日撮影したフィルムを現像に出してきました。

(2020.6.24)

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