イルフォード モノクロフィルム ILFORD FP4 PLUS の使用感

 私が使っているモノクロフィルムの中で最も使用頻度の高いのがイルフォードのDELTA100ですが、先日、ストックが切れてしまったので、新たに購入しようと思い新宿のカメラ店まで行きました。ところが、そのお店でもたまたま売り切れで、次の入荷時期もはっきりとわからないとのことでしたので、代わりにイルフォードのFP4 PLUSを購入してきました。
 実は、これまでFP4 PLUSを使ったことはなく、今回が初めての購入です。データシートを見ると、粒状性にも優れており、高画質な画像が得られるとあります。
 試し撮りに新宿に行こうと思ったのですがあまりに暑いので断念し、調布市にある緑が豊かな深大寺に行ってきました。

現像液はイルフォード ID-11を使用

 このフィルムのイルフォードの推奨現像液はILFOTEC DD-X、PERCEPTOL、またはID-11となっていますが、今回は手元にあったID-11を使用しました。データシートによるとEI125の場合、現像時間は原液(20℃)で8分30秒となっていますので、それに準じます。
 定着液はイルフォードのRAPID FIXERを使用しました。

 フィルムを触った印象はDELTA100と同じで、やや硬めでしっかり感があります。
 イルフォードのフィルムを現像するときにいつも思うのですが、撮影後のフィルムを止めたシールがとても剝ぎにくいです。端っこをつまんで持ち上げればくるんと剥けて欲しいのですが、途中から裂け目が入って、細い幅の状態でビリビリと破けていってしまいます。目くじら立てるほどのことではないのですが、結構イライラします。

 外気温が30度を軽く超えているので室温も高いし、水道水の温度も20度を超えているので、深めのバットに氷水を入れて、現像液が19度くらいになるようにしておきます。室温で現像タンクも温まっているので、現像液を入れるとちょうど20度くらいになります。
 寒い時期はヒーターを使うことで微妙な温度調整ができますが、暑い時期に水温を微妙に下げて一定に保つというのは結構大変です。

解像度も高く、滑らかな階調のフィルム

 深大寺を訪れた日は真夏の太陽が照りつける晴天で、日なたにいると汗が止まらないといった暑さでした。大きな建物や樹木があるので、日なたと日陰の明暗差がとても大きい状態です。コントラストを活かした画作りには向いているのかも知れませんが、今回は初めて使うフィルムなので、フィルムの特性がわかり易いような被写体を選んでみました。
 使用したカメラはMamiya 6 MF、レンズは75mm一本だけです。
 なお、レンズフィルターは無色の保護用フィルターのみで、Y2とかYA3などのフィルターは使用していません。

 まずはちんまりと座っていた狛犬を撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/125

 狛犬に陽があたっており、バックは日陰になっている状態です。
 所どころ、黒くなったり苔が生えたりしている石の質感がとてもよく出ていると思います。表面の細かな凹凸も損なわれることなく表現されていて、解像度も申し分ないと思います。
 日陰になっている背景のお賽銭箱や、その奥の階段状になっているところも、状態がはっきりとわかるくらいなめらかに表現できています。
 狛犬のお尻の下あたりはさすがに黒くつぶれ気味ですが、それでも墨を塗ったようなべったりとした状態になっておらず、台座の質感が残っています。

 狛犬の後ろ足の辺りを拡大したのが下の写真です。

 石のざらざらとした感じが良く出ていて、十分な解像度があると言っても良いと思います。

 次の写真は元三大師堂の高欄を、下から見上げるアングルで撮影したものです。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/60

 画の左上から日が差し込んでいる状態で、宝珠柱や擬宝珠の一部が明るくなっています。この部分を明るくし過ぎると質感を損ねてしまうので、露出は切り詰めています。左上の天井部分はかなりつぶれ気味ですが、この方が雰囲気はあると思います。
 宝珠柱の木の質感や、右側にある銅板を巻きつけた架木の質感など、とてもよく出ていると思います。
 中央の宝珠柱の明るいところから暗いところへのグラデーションも見事で、円柱になっているのが良くわかります。

 日差しがとても強く、コントラストの高い状態ですが、三元大師堂のほぼ全景を撮影したのが下の写真です。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/125

 お堂の屋根や地面などは白く飛び気味になっており、逆にお堂の中は黒くつぶれ気味といった状態です。日差しの強さが伝わってくる感じで、中間の階調に乏しい、白と黒だけで表現したモノクロならではの写真と言えますが、同じイルフォードのDELTA100と比べるとコントラストが低めといった印象を受けます。
 極端にコントラストを高めて、黒い部分は真っ黒にという表現方法もありますが、つぶれすぎないというのがこのフィルムの特徴のようです。

 コントラストがあまり高くない被写体を探していたところ、うまい具合に木の陰になってなっていた門があったので撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F4 1/30

 直接の日差しはないので極端に明るい部分はありません。全体的に中間的な階調で構成されていますが、とても滑らかに表現されています。キリッとエッジの立った感じはありませんが、柔らかでありながら細部まで高画質で再現されています。特に、綺麗に削られた扉の木の質感、表面の滑らかな感じがよく伝わってきます。一方で、表面がざらついた看板の力強さのようなものも感じられます。

リバーサル現像でも高い解像度と滑らかな階調

 今回、FP4 PLUS の120サイズフィルム2本を撮影してきたので、1本をリバーサル現像してみました。
 現像データは以下の通りです。

  ・第一現像 : イルフォード SilverChrome Developer 希釈 1:4(水) 12分(20℃)
  ・漂白    : 過マンガン酸カリウム水溶液+硫酸水溶液 5分(20℃)
  ・洗浄    : ピロ亜硫酸ナトリウム水溶液 3分(20℃)
  ・再露光   : 片面各1分
  ・第二現像 : イルフォード SilverChrome Developer 希釈 1:4(水) 3分(20℃)
  ・定着    : イルフォード Rapid Fixer 希釈 1:4(水) 5分(20℃)
  ・水洗    : 10分

 第二現像液は1:9に希釈するのですが、面倒くさいので第一現像液をそのまま使用し、現像時間を半分の3分としました。なお、各工程の間に水洗を入れています。

 本堂の脇に、梅の花の形をした金属製の飾りのようなもの(名前も用途もわかりません)があったので撮ってみました。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/60

 梅の花びらのところに木漏れ日が落ちているところを狙いました。木漏れ日のところだけは明るめですが、その他は全体的に日陰になっているので黒くつぶれるところもなく、背景もはっきりわかる状態で写っています。梅の花にピントを合わせ、あまり絞り込まずに背景をぼかしています。
 やはり、梅の花びらのところのグラデーションが綺麗に出ていますし、ベタッとした感じではないので、立体感もあります。

 もう一枚、お寺の境内を出て、参道沿いにあるお蕎麦屋さんの店先のタヌキを撮ったのが下の写真です。

▲深大寺 Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/500

 参道にも大きな木が茂っているので日陰になっているのですが、ちょうどタヌキのところに陽が差し込んでいました。バックが明るくなりすぎないよう、露出はタヌキの顔の辺りを基準にしています。当然、背景は露出アンダーになりますが、それでも看板の文字が読めるくらいには再現されています。

 通常のネガ現像であろうがリバーサル現像であろうが、同じフィルムを使って現像に失敗しない限りは同じような感じに仕上がるはずです。ただし、今回は使用した現像液が異なるので、その差はあるかと思いましたが、解像度や滑らかな階調、黒の出方などはネガ現像したものと比べても差はわかりません。リバーサル現像した方はスキャナで読み取る際、カラーモードで行ないますので、拡大するとごくわずかに色が乗っているのがわかりますが、スキャナの処理アルゴリズムに依存するところが大きいと思われます。
 リバーサル現像して得られるポジ原版は、ライトボックスに乗せれば出来具合が一目でわかるので便利ですが、現像の手間がかかるのが難点です。

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 初めて使用したフィルムですが、全体の印象としては、細部まで再現する高い解像度を持ちながら、非常に滑らかで柔らかな階調表現のできるフィルムといった感じです。DELTA100と比べるとコントラストは低く感じますが、低すぎてボヤっとしてしまうようなことはなく、繊細な表現力を持っているフィルムと言えば良いかも知れません。
 正確なところはわかりませんが、DELTA100よりもラチチュードが若干広いような感じもします。
 リバーサル現像してもいい感じに仕上がりますし、DELTA100と比較した場合、好みもありますが、被写体や撮影意図によって使い分けのできるフィルムだと思います。

(2022.8.2)

#イルフォード #ILFORD #マミヤ #Mamiya #深大寺

久しぶりのモノクロフィルムのリバーサル現像 イルフォード DELTA100

 ビューティーモデル1という骨董カメラの試し撮りの際、マミヤ6 MFにモノクロフィルムを入れて一緒に持っていきました。その時に撮った写真をリバーサル現像してみました。
 リバーサル現像は通常のネガ現像よりもプロセスが多くて手間がかかるのであまりやらないのですが、カラーリバーサルほど難しくはないし、リバーサルで見るモノクロも味わいがあるので、久しぶりにやってみました。

イルフォードの推奨プロセスで処理

 今回、撮影に使ったフィルムはイルフォードのDELTA100 PROFESSIONALです。シャープネスでキリッと締まった画像が得られるので、個人的には気に入っています。
 ということで、現像はイルフォードの推奨プロセスを参考に行ないました。イルフォードから提示されているプロセスは下記の通りです。

  1) 第一現像 : 20度 12分
  2) 水洗   : 20度 5分
  3) 漂白   : 20度 5分
  4) 水洗   : 20度 1分
  5) 洗浄   : 20度 2分
  6) 水洗   : 20度 30秒
  7) 再露光  : 片面30秒
  8) 第二現像 : 20度 6分
  9) 停止   : 20度 30秒
  10) 水洗   : 20度 30秒
  11) 定着   : 20度 5分
  12) 水洗   : 20度 10分
  13) 水滴防止 : 20度 30秒
  14) 乾燥

 なお、イルフォードの推奨プロセスには停止工程と水滴防止工程は記載されていませんが、これらは通常の現像でも行なう工程なので今回も入れています。

 現像液は「ブロモフェン」または「PQユニバーサル」が推奨となっていますが、手元になかったので今回はシルバークロームデベロッパーを使用しました。
 漂白液は過マンガン酸カリウム水溶液と希硫酸(硫酸水溶液)の混合液、洗浄液はピロ亜硫酸ナトリウム水溶液を使っており、これらはイルフォード推奨プロセスと同じです。
 また、定着液はシルバークロームラピッドフィクサーを使いました。

 全工程にわたり水温20度を保つというのは結構難しいので、いちばん影響のある第一現像だけは極力、20度に近い状態を保つように気をつけましたが、それ以外は±1~2度の変動があると思います。

黒が締まったイルフォードらしい描写

 リバーサル現像後のスリーブの写真です。ライトボックスにのせた状態で撮影しています(全12コマ中の9コマ)。

▲リバーサル現像後のスリーブ(ライトボックス上で撮影)

 モノクロフィルムを使うときはモノクロ用のフィルター(Y2とかYA3など)を装着することが多いのですが、今回はいずれも使用していません。
 コントラストもまずまずで、黒もイルフォードらしい感じが出ていると思います。

 下の写真は東京都庁の都民広場にある彫像「天に聞きく」です。

▲Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/30 DELTA100

 彫像にも建物にも陽があたっていないので全体的に軟調な感じがしますが、彫像のエッジは綺麗に出ているのではないかと思います。手振れが心配だったので絞りはF5.6で撮影していますが、もう一段くらい開いた方が良かったようです。

 次の写真は、新宿にある住友ビルの一階部分の天井です。屋根を支える鉄骨が描くラインが綺麗です。

▲Mamiya 6 MF G 50mm 1:4 F4 1/15 DELTA100

 屋内での撮影なのでコントラストはあまり高くありませんが、屋根から差し込む光で鉄骨に模様が描かれていますが、そこそこ綺麗に表現できていると思います。
 太陽が西に回り込んでこの屋根に光が差し込むと、よりアーティスティックな模様が浮かび上がるのではと想像します。

 さて、もう一枚は公園での一コマです。

▲Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/250 DELTA100

 斜光状態なのでコントラストが高めになっています。中央の地面は落ち葉が白く輝いており、飛び気味です。左右にある2本の木の幹は日陰になっていますが、ぎりぎりディテールが見て取れる感じです。

ネガ現像とリバーサル現像の比較

 同じフィルム(イルフォード DELTA100 PROFESSIONAL)で撮影し、普通にネガ現像したものとリバーサル現像したものとで違いがあるかということで、下の写真はネガ現像したものです。

▲Mamiya 6 MF G 50mm 1:4 F8 1/60 DELTA100

 電話ボックスを撮影したもので、同じ場所や同じ条件で撮影したわけではないので比較しにくいですが、ネガ現像したほうが黒の締まりが強いように感じます。光の条件が違うのでそう感じるのかもしれませんが、現像による影響もあるかも知れませんし、スキャナで読み取る際はネガ設定とポジ設定と異なりますので、その影響も考えられます。
 やはり、リバーサル現像の方が難しく、扱いを慎重にやらないと良い結果が出ないようです。

 参考に、リバーサル現像とネガ現像した写真の部分拡大を掲載しておきます。
 下の写真の1枚目がリバーサル現像(新宿住友ビル)の天井部分を拡大したもの、2枚目がネガ現像(電話ボックス)の自転車のハンドル部分を拡大したものです。

▲新宿住友ビルの写真の部分拡大
▲電話ボックスの写真の部分拡大

 粒状感やシャープネスなどに大きな違いは感じられません。

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 手間のかかるリバーサル現像ですが、スリーブをライトボックスで観賞できるのは便利です。それ以外にリバーサル現像するメリットはほとんど思いつかないのですが、いつもとは違うフィルムで撮影したような気持ちになれるので、気分転換にはなるかも知れません。

(2022年2月4日)

#イルフォード #ILFORD #モノクロフィルム

イルフォードもコダックも値上げ! フィルムはどこまで高くなるのか?

 昨年(2021年) 末、銀塩カメラの愛好者にとっては極めて衝撃的なニュースが飛び込んできました。2022年の早いうちに、イルフォードもコダックもフィルムをはじめとした写真用品の値上げをするという内容です。詳細はわかりませんが、今でも十分に高いのに更に高くなるということで、ずいぶん暗い気持ちになったものです。

 2022年1月現在の主なフィルムの価格を調べてみました。いずれも東京の大手カメラ店での実売価格(税込)です。

 【イルフォード 135フィルム(35mm判) 36枚撮り】

   モノクロ HP5(ISO400) 990円
   モノクロ FP4(ISO125) 990円 
   モノクロ DELTA400(ISO400) 1,320円
   モノクロ DELTA100(ISO100) 1,210円
   モノクロ DELTA3200(ISO3200) 1,580円

 【イルフォード 120フィルム(ブローニー判)】

   モノクロ HP5(ISO400) 990円
   モノクロ FP4(ISO125) 990円 
   モノクロ DELTA400(ISO400) 1,150円
   モノクロ DELTA100(ISO100) 1,100円
   モノクロ DELTA3200(ISO3200) 1,370円

 【コダック 135フィルム(35mm判) 36枚撮り】

   モノクロ トライX400(ISO400) 2,120円
   モノクロ T-MAX400(ISO400) 2,270円 
   モノクロ T-MAX100(ISO100) 2,080円
   カラーネガ ColorPlus(ISO200) 1,050円
   カラーネガ PORTRA800(ISO800) 3,060円
   カラーネガ PORTRA400(ISO400) 13,740円(5本パック)
   カラーネガ Ektar100(ISO100) 2,490円
   リバーサル E100(ISO100) 4,110円

 【コダック 120フィルム(ブローニー判) 5本パック】

   モノクロ TRI-X400(ISO400) 11,000円
   モノクロ T-MAX100(ISO100) 7,710円
   モノクロ T-MAX400(ISO400) 11,000円
   カラーネガ PORTRA800(ISO800) 16,180円
   カラーネガ PORTRA400(ISO400) 13,290円
   カラーネガ Ektar100(ISO100) 11,930円
   リバーサル E100(ISO100) 14,700円

 参考までに富士フイルムの価格です。

 【富士フイルム 135フィルム(35mm判) 36枚撮り】

   モノクロ ACROS100Ⅱ(ISO100) 1,040円
   カラーネガ FUJICOLOR100(ISO100) 1,080円 
   カラーネガ SUPERIA PREMIUM 400(ISO400) 1,350円
   リバーサル PROVIA100F(ISO100) 1,760円
   リバーサル Velvia50(ISO50) 2,030円

 【富士フイルム 120フィルム(ブローニー判)】

   モノクロ ACROS100Ⅱ(ISO100) 1,040円
   リバーサル PROVIA100F(ISO100) 5,550円(5本パック)
   リバーサル Velvia50(ISO50) 5,710円(5本パック)

 こうしてあらためてフィルムの価格を見てみると、つくづく高いと感じます。特にコダックの製品が際立っているように思います。極めつけは35mm判リバーサルフィルムのE100で、1本4,000円を超えているという驚くべき価格です。アメリカの人件費高騰による影響が大きいともいわれていますが、実際のところはよくわかりません。
 フィルムの需要が激減している現実からすると致し方ない気もしますが、値上げ幅は20%以上という話しもあり、35mm判のフィルム1本が軒並み2,000円という時代になるのではないかと思わずにいられません。
 もちろん、ここに掲載したフィルム以外に格安の製品がありますので、それらも同様に値上げになるのかどうかはわかりません。

 一方で、若い世代を中心にフィルムカメラを使う人が増えているという話しも聞きます。これまでフィルムカメラなど使ったことがないけど、フィルム写真の雰囲気が良いとか、インスタ映えするとか、フィルムカメラ自体がかっこいいとか、いろいろな理由があるようです。富士フイルムの「写ルンです」の売上げが好調なのも、こういった理由かもしれません。

 理由はともかく、フィルム人口が増えてくれるのはありがたいことです。私もときどき、中古カメラ店に足を運ぶことがありますが、確かに20代くらいの若い人を見かけることが増えた気がします。「これからフィルムカメラを始めたいので」と言って、お店の方に相談しているのを耳にしたことが何度もあります。しかも、女性のお客さんを見かけるようになったのは驚きです。数年前までは、中古カメラ店と言えば中高年以上のおっさんの姿しかなかったのですから。

コンパクトカメラの売行きが好調らしい

 しかし、これからフィルムカメラを始めようとしている方にとって、現在のフィルムの価格はべらぼうな値段に感じるのではないかと思います。加えて、現像料金がかかります。初めてフィルムで撮ろうという人が、いきなり自家現像するというのはゼロではないにしても極めて少数派だと思われますので、現像料金もバカになりません。
 カメラ自体は中古カメラ店でリーズナブルな値段で購入できたとしても、フィルム代や現像代がランニングコストとして重くのしかかってきます。家庭用のインクジェットプリンターとインクカートリッジの値段の関係に似た構図になっています。

 今回掲載した35mm判の中でいちばん安いフィルムを使っても、一回シャッターを押せばフィルム代と現像代を合わせて60円ほどがかかるわけで、最も高いコダックのリバーサルフィルムE100を使いようものなら、1カットあたり160円ほどにもなってしまいます。
 デジタルカメラのように機材を揃えるのに費用はかかっても、その後のランニングコストはほとんどかからないというのであれば気にせずにバシバシ撮れますが、フィルムだとなかなかそういうわけにはいきません。まさに「一球入魂」といった感じでシャッターを押すことになります。
 逆にそれが新鮮でいいという意見をお持ちの方もいらっしゃるようですが、それにしてもランニングコストは安いに越したことはありません。

 フィルム価格の高騰は簡単に言えばフィルム需要が激減しているからなのでしょうが、さらに価格が上がれば需要は一層減り、今でも負のスパイラルに入っているのに、ますます深まってしまいます。
 とはいえ、今の状況で需要が拡大することは到底望めません。フィルムカメラに興味を持つ若い世代の人が増えたといっても、下がってきた需要を回復できるほど多くの人が興味を持ってくれているとも思えません。

 私は主にリバーサルフィルムを使用していますが、ここ数年、消費するフィルムの数が減ってきています。年間に撮影に出かける回数は特に減っておらず、むしろ増えていると思うのですが、使うフィルム数は減っています。
 これは、従来は同じ場所で何カットも撮影したのですが、最近は2カットとか3カット、少ないときは1カットしか撮らないので、結果として消費量が減っているわけです。その理由は、複数カットを撮っても廃棄に回ってしまうものがあってもったいないということと、やはりフィルムの価格が上がったということが大きく影響しています。致し方ないことだとは思いながらも、自分自身も負のスパイラルを加速している一人なんだという思いもあります。

 今回のイルフォードやコダックの値上げのニュースを聞いて思ったのは、このままフィルム価格が上がり続けて、いくらになるまで自分はフィルムを使い続けていられるんだろう、いくらになったらフィルムをあきらめるのだろうということです。例えば、今の価格の2倍になったらあきらめるかというと、そうとも思えません。「もう少し、もう少し...」とあがきながら細々と使い続けているんだろうなと思います、たぶん...

 話は変わりますが、最近、若い女性が二眼レフカメラや中判カメラを首から下げて、街中を歩いている姿を見かけることが多くなりました。たぶん、スナップを撮っているのではないかと思われるのですが、妙にカッコ良くて思わず見入ってしまうことがあります。どんなフィルムを使っているのか、もちろん尋ねたこともありませんが、とても応援したい気持ちになります。
 前出のフィルムに興味を持った若い世代もそうですが、こういう方々がフィルム価格の高騰が理由で、せっかく踏み入れたフィルムの世界から足を洗ってしまうことがないようにと願うばかりです。

二眼レフカメラや中判カメラを持ち歩いている人を見かけることも

 この先フィルムがどうなっていくのか、私などには全くわかりませんが、すぐになくなるとも思えません。市場では中古カメラの価格が下がるどころか、むしろ上がっているようにも感じます。私には不思議な現象に思えるのですが、中古価格の高騰がフィルムの足を引っ張ることにならなければ良いがと思っています。

 それにしても値上げは痛い! これ、本音です。

(20221年1月14日)

#イルフォード #ILFORD #コダック #KODAK