野草撮影にあると便利な小物のあれこれ

 私が撮影対象としていちばん多いのは自然風景ですが、次いで多い対象物(被写体)が野草です。
 野草は背丈が低く、しかも、草むらの中などにひっそりと咲いていることが多いので、どうしてもローポジションでの撮影になりますし、マクロ撮影とまではいかなくてもかなりの近接撮影になるとこが多いです。また、光の具合を調整したりすることも多く、そのための小物類もいくつか持ち歩いています。
 私が野草撮影に使っているカメラは主にPENTAX67、およびPENTAX67Ⅱですが、今回はこれらのカメラでの撮影の際に用いている小物類をご紹介します。

クランプヘッド

 野草撮影で最も苦労するのが、カメラをいかに低いポジションに構えられるかということです。
 PENTAX67は言わずと知れた中判のフィルムカメラで、レンズも含めるとかなりの重量級となるため、三脚も大型のものを使っています。大型の三脚は、脚を目一杯広げて低くなるようにしても、カメラの位置は地上から40~50cmほどが精一杯という状況です。
 そこで、三脚の脚の部分にカメラを設置できるようなクランプヘッドを使用しています。

 私が使用しているこのクランプヘッドは改造品で、もともとはスリック製の「クランプヘッド38N」という製品と、マンフロット製の「スーパークランプ」という製品を組み合わせて作ったものです。これについては下記のページで紹介しています。

  「スリッククランプヘッドと超ローアングル撮影」

 この自作クランプヘッドを三脚の脚の最下部に取り付けると、最低地上高が数cmという高さでの撮影が可能になります。背丈が数cmしかないような小さな野草でも、ほぼ同じ目線で撮影することができます。
 このスリックのクランプヘッドの難点は、チルトとサイドチルトはできるのですがパンができないということです。つまり、カメラを上下に振ったり水平を調節したりはできるのですが、左右に振ることができません。
 これを解決するにはここに自由雲台のようなものを取付けるしかないのですが、そうすると最低地上高が高くなってしまい、地面すれすれでの撮影ができなくなってしまいます。

アングルファインダー

 クランプヘッドを用いることで低いポジションでの撮影が可能になりますが、そうすると、地面に腹ばいにでもならない限り、カメラのファインダーを覗くのがとても難儀になってしまいます。
 そこでカメラのファインダーを上から覗くことができるアングルファインダーを使用しています。

 ファインダーからの光を直角に曲げてくれるものですが、カメラのファインダーを中心に360°回転するようになっているので、上からも横からも覗くことができます。また、視度調整機能が備わっているので、自分の視力に合わせてくっきりとした像を見ることができます。
 カメラを地面すれすれに構えた状態であっても、しゃがみ込めばファインダー内を見ることができるのでとても便利です。
 私が使っているPENTAX67用のアングルファインダーは、カメラ背面のファインダー窓に嵌まっている視度調整レンズを外し、そこにアングルファインダーをねじ込むという方式なので、取り付け取外しが少々面倒です。野草を撮るときは付けっ放しにすることが多いのですが、そうするとアイレベルでの撮影の時に不便を感じます。取り付け取外しがもっと簡単だといいのですが。

接写リング

 レンズの最短撮影距離を更に短くして近接撮影を行なうためのものです。
 これについても下記のページで紹介しているので、詳細はこちらをご覧ください。

  「PENTAX67用 オート接写リング(エクステンションチューブ)」

 私が接写リングを使う理由は、近接撮影をするということもありますが、いちばんはボケを大きくしたいということです。なので、近くによってマクロ的な撮影をするというよりも、比較的焦点距離の長いレンズに接写リングを取り付けて、少し離れた位置から撮影するというスタイルが多いです。もちろん、3個の接写リングすべてを取付ければ、長焦点レンズでもその撮影距離はかなり短くなりますが、3個も同時に使うことはほとんどなく、なだらかできれいなボケが得られる範囲での使い方が多いです。

 接写リングを使用すると、レンズ側のピント調整リングで合わせることのできる範囲が非常に狭くなってしまうので、接写リングをとっかえひっかえしたり、三脚ごと撮影位置を前後したりしなくて済むように、あらかじめ撮影位置や撮影倍率のアタリをつけておくことが望ましいです。

レフ板

 前にも書いたように野草は背丈の低いものが多いので、うまい具合に光が回ってくれないことも多々あります。小さいがゆえに、光の状態が良くないと出来上がった写真はどことなく精彩を欠いてしまうことも少なくありません。
 光を調整するといっても限界があるのですが、比較的よく使うのがレフ板です。

 ポートレート撮影などでは畳半分くらいもあるような大きなレフ板を使うこともありますが、野草撮影ではそんな大きなものは必要なく、私が使っているのは25cmx40cmほどの大きさで、二つに折りたためば半分の大きさになります。
 このレフ板も自作品で、ボール紙にアルミホイルを張り付けただけのものです。できるだけコンパクトになるよう、真ん中から半分に折りたためるようにしています。
 アルミホイルは光沢のある表と光沢の少ない裏側とがあるので、反射率で使い分けられるようにレフ板の半分に表側、もう半分に裏側を出して貼っています。また、光が拡散(乱反射)するように、アルミホイルをしわくちゃに揉んだものを使用しています。

 草むらなどで光が十分に回っていないときなど、柔らかな光をあてて全体的に明るくするという目的で使用します。

 また、二つ折りにできるレフ板をくの字に折ることで地面に自立させることができます。レフ板を手で持っていなくても済むということと、本来のレフ板の使い方ではありませんが、被写体の脇に立てることで風よけにもなります。野外で撮影していると風で花が揺れてしまうということもよくありますが、この小さなレフ板でも被写体ブレを防ぐことに大いに役立ってくれます。

手鏡(ミラー)とストロボスポット光アダプタ

 レフ板は全体的に柔らかな光を回すために使いますが、部分的に強めの光を当てたいということもあります。周囲は暗めにして、花のところなど部分的に明るくしたいというような場合です。
 レフ板に比べると使う頻度は低いのですが、お目当ての野草を引きたたせるために、私は手鏡とストロボを使うことがります。

 まず手鏡ですが、カードサイズの小さな手鏡の中央部分だけを出して、周囲は黒い紙でマスクしたものを使います。

 カードサイズと言えども、そんな大きな反射光は必要なく、直径3~4cmほどの大きさの反射面があればほぼ用が足ります。
 手鏡と同じ大きさの黒い紙の中央をくり抜き、これを鏡に重ねて使うだけです。くり抜く大きさのものを数種類用意しておけば便利かもしれません。
 手鏡程度であれば荷物にもならなく便利ではありますが、光の調整ができません。太陽の光をもろに反射させるので、結構強い光が当たります。周囲が影になっているときだとコントラストがとても高くなってしまうので、使い方を誤ると失敗作をつくり出しかねません。

 手鏡に比べると荷物としてはかさばりますが、光の調整ができるのがストロボです。
 マクロ撮影などで影ができないリングストロボを使う方も多いと思いますが、全体を明るくするのではなく、あくまでもスポット光を手に入れたいということなので、私はごく普通のクリップオンストロボ(しかもかなり昔の製品)を使っています。
 ただし、ストロボそのままでは照射される光がかなり広範囲に広がってしまうので、ごく狭い範囲だけに照射できるようなアダプタを自作して使っています。

 アダプタというほど大層なものではないのですが、100均のお店で黒色のストローを買ってきて、これを半分の長さに切って束ねただけのものです。これをストロボの発光窓の前に被せて使います。
 ストローの直径が約5mm、長さが約90mmで、ストロボから発せられた光はここを通ることでほぼ直進成分の光だけに絞られます。斜め成分の光はストローの中を通る際に減衰してしまうので、照射される光は絞られたスポット光になります。

 正面から見るとこんな感じになります。

 これでもストロボの発光窓と同じくらいの大きさの照射光になってしまうので、さらに小さくするためにアダプタの先端に黒い紙で作ったマスクを取付けます。これで、直径3~4cmほどのスポット光になります。
 ストロボ側で光量を調整できるので、作画意図に合わせた光を得ることができます。

半透明ポリ袋

 手鏡やストロボとは反対に、光を拡散させて弱める目的で使用します。
 使っているのはスーパーなどのレジ近くに置いてあるタイミーパック、いわゆる半透明のポリ袋です。このポリ袋をボール紙で作った四角い枠に張り付けただけのものです。

 非常に薄い素材でできていて、光の透過率はかなり高いと思われるのですが、きれいに拡散されるので影になることなく柔らかな光にすることができます。ちょうど雲を通り抜けてきた光と同じような状態になります。
 直射日光が当たっていてコントラストが高すぎるときは、雲がかかってくれないかなぁと空を仰ぎ見ることがありますが、そういときに限って青空が広がっているものです。そんな時にこのポリ袋を被写体の上の方に置くだけで、雲がかかった時のような光の状態になります。

 サイズは大きい方が使い勝手は良いと思うのですが、大きすぎるとカメラバッグに入らなくなってしまうので、スーパーのレジに置いてある程度の大きさが手ごろではないかと思います。

洗濯ばさみ

 屋外で野草撮影していて以外に重宝するのが洗濯ばさみです。
 洗濯ばさみをそのまま使うのではなく、私は洗濯ばさみどうしを紐でつないだものと、菜箸の先端に洗濯ばさみを括り付けたものの2種類をカメラバッグに入れて持ち歩いています。

 これらをどう使うかというと、まず、洗濯ばさみどうしを紐でつないだ方ですが、これは撮影に際に邪魔になる枝や草などをちょっと脇に避けてもらうときなどに使います。枝を折ったり草を切ってしまうわけにはいかないので、これを洗濯ばさみでつまんで引っ張って、もう一方の洗濯ばさみをほかの木の枝なり三脚なりに挟みます。これで、撮影が終わるまでの暫時、邪魔になるものに避けてもらうことができます。

 菜箸の先端に括り付けたほうも目的は似たようなものですが、こちらは地面に刺して使うことが多いです。紐でつないだ洗濯ばさみの一方を止める場所がないときに、この菜箸を地面に刺してここに止めるとか、あるいは菜箸の先端の洗濯ばさみで避けたいものを挟み、菜箸を地面に刺すなどといった使い方です。もちろん、手で持っていることもできますが、地面に刺しておいた方が楽です。
 また、上で紹介した半透明のポリ袋の枠をこれで保持するといった使い方もします。
 なお、洗濯ばさみは挟む力が強すぎない木製のものを使用しています。

 自然のものはあるがままの状態で写すべきとも思いますが、時にはどうしてもフレームの中に入ってほしくないものがあるのも事実で、そういったときに使っています。

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 フィールドでの野草撮影は結構手間がかかります。被写体が小さいというのもありますが、光の状態などによって全く雰囲気が変わってしまうので、気に入った光、気に入ったアングルなどを決めるのに時間がかかります。その間にも状況はどんどん変わっていってしまいます。自然の状態にできるだけ手は加えたくないと思うのですが、最低限の処理で撮影をするようにしています。
 野草撮影といってもそうそう珍しい花に出会えるわけではありませんが、植物図鑑やネット上の記事でしか見たことのない野草に出会ったりするとやはり嬉しいものです。
 一方で、昨年ここに咲いていたはずなのに、今年はなくなっていたなんていうこともあり、環境の変化で生きていけなくなったのか、盗掘によるものなのかはわかりませんが、寂しい思いをすることもあります。
 どちらかというと華やかさはなく地味なものが多い野草ですが、野生で生きていく力強さも相まって何とも魅力のある存在です。

(2024.8.23)

#PENTAX67 #クランプ #ペンタックス67 #小道具 #接写リング

夏の野外撮影 暑さ対策グッズのあれこれ

 昨年(2023年)は記録的な暑い夏でしたが、今年(2024年)はそれに輪をかけて暑い日が続いています。たぶん、昨年の記録を上回る暑い夏になるのではないかと確信をしています。体温に匹敵する、時には体温を上回るような暑い日が続くと撮影意欲も減退します。
 私が主に撮影する被写体は自然風景や野生の花などなので、撮影となると暑くても野外に出かけなければなりません。できるだけ気温の低い早朝や夕方の撮影をと思ってはいますが、時には日中に出かけることもあり、容赦ない太陽の光と熱を浴びながら歩いていると気が遠くなるような気がします。
 撮影中に熱中症などでぶっ倒れでもしたら大変なので、自分自身の暑さ対策もあれこれやっていますが、同じくらい、カメラやフィルムの暑さ対策も必要になります。できるだけ日陰を選んで歩いたり撮影したりはしていますが、特に大判カメラの場合、撮影の準備や撮影そのものに時間がかかるので、どうしても日にさらされる時間が長くなります。

 ということで、今回は私がやっている暑さ対策についてご紹介します。

日傘ホルダー&日傘

 夏の撮影でいちばん苦労するのは、いかに直射日光を浴びないようにするかということです。森の中などのように木が生い茂っているところは有難いのですが、自然相手の撮影なのでなかなか都合よくはいきません。
 そこで、人工的に日陰を作ろうということで、三脚に日傘を取付けて撮影に臨んでいます。

 私が使っているのは、エツミの「傘ホルダーレインブラケット DXⅡ」という製品で、これに日傘を取付けて使っています。もともとは雨降りの日の撮影用にということで用意したものですが、夏の日除け対策にも役立っています。
 この製品を購入したのは10年以上前になると思います。かなり以前から販売されていたもので、まるでメタルベンダーを使って手作業で作ったような手作り感満載の風貌です。
 最近はクランプ型の傘ホルダーの類いがたくさん販売されていますが、ちょっと力がかかると壊れてしまいそうな気がして食指が動きません。その点、この傘ホルダーはハンマーで力いっぱいたたいてもびくともしなさそうです。

 この製品は2つのパーツに分かれているのですが、L型に曲がっているパーツ(固定プレート)は三脚の雲台を固定するネジに差し込み、そのまま運台を締めつけて使用します。取り付けたり外したりが面倒なので、私は取り付けたままにしています。ここに、もう一つのパーツ(ブラケット)を取付けて使用します。こちらは取り付けたままにしておくと三脚の持ち運びの際にとても邪魔になるので、使用するときに取り付けるようにしています。

 何ともシンプルな構造ですが結構しっかりしていて、大きめの傘でもぐらつくことがありません。傘の取り付け角度は前後にそれぞれ30度ほど調整ができるので、撮影アングルや日差しの向きなどに合わせて動かすことができます。 
 傘の柄の直径が概ね10mm以下であればどんな傘でも問題なく取り付けることができますが、私は撮影の際は折りたたみ傘を持ち歩いているので、それを使用しています。

 人工的な小さな日陰ですが、この日陰があると無いとでは夏の撮影時にかかる負担は雲泥の差です。

カメラ用の日除けカバー

 日除けの傘があれば自分自身だけでなくカメラも日差しから守ることができるのですが、太陽の位置や角度によってはどうしてもカメラに直射日光が当たってしまうという場合もあります。真夏の強烈な日差しにさらしておくとカメラの筐体や蛇腹がものすごく熱くなります。このような状態を長時間続けておくと、カメラへのダメージも大きいだろうと思われ、その対策用にカメラカバーを持ち歩いています。

 これは、100均で購入した保冷袋を切り開いて、カメラにかぶせるようにしたものです。これだけだと腰がなくてフニャフニャしてしまうので、内側に薄手の段ボール紙を貼っています。
 これをカメラの上にかぶせ、左右両側に取り付けたゴム紐をカメラの下側に回しかけて固定するだけという単純なものです。
 使用するレンズによってレンズ自体の長さや繰り出す蛇腹の長さが異なるので、あまりピッタリとした寸法にするのではなく、若干大きめにしておいて、前後に自由に動かせるようにしています。

 以前は白っぽい色のタオルをカメラにかけて日除けをしていたのですが、タオルをかけてしまうとカメラの操作がしにくくなるのと、タオルがカメラに密着してしまうので、以外と熱が伝わってしまうということがあり、このカバーを使うようになりました。
 とても軽く、畳んでカメラバッグに入れておけば邪魔にもならないので思いのほか重宝しています。

フィルム用保冷バッグ

 暑い夏の撮影でもっとも神経を使うのがフィルムです。フィルムは冷凍保存ができるくらいですから寒さには強いのですが、高温のところに長時間さらされると乳剤が変質してしまいます。なので、暑い季節に野外撮影に行くときは、フィルムをできるだけ涼しいところに保管するようにしています。
 本来は保冷剤を入れた保冷バッグを使うのが望ましいのですが、かさばってしまうので現実的ではありません。
 そこで、小さな保冷袋にフィルムを入れて携行するようにしています。

 この保冷袋はフィルム用というわけではありませんが、ちょうど4×5判のフィルムホルダーが入る大きさのものを見つけたので購入したものです。4×5判フィルムホルダーが6枚と、ブローニーフィルムが5~6本入ります。
 保冷剤を入れているわけではないので冷やすことはできませんが、フィルムの温度が上がるのを極力抑えることはできます。この保冷袋ごとカメラバッグに入れています。
 4×5判フィルムホルダーが6枚だと両面で12枚のフィルムを携行することができるので、手ごろな大きさだと思います。

クールタオル

 野外撮影の際にタオルは汗を拭くだけでなく様々な用途に使えるので傾向は必須ですが、暑い時期に普通のコットンタオルを首にかけていると熱がこもってさらに暑く感じます。吸水性には優れているので何かと便利ではありますが、暑さ対策という点からするとイマイチといったところです。
 私は少しでも涼しさを感じられるようにということで、暑いときの野外撮影にはクールタオルを用いています。

 この類いの商品はたくさん販売されていて、どれが良いのやら判断に迷いますが、私が使っているのは特別なものではなく、薄い生地のクールタオルです。水で濡らした後、絞ったりブンブン振ったりするとひんやり感のあるタオルになります。暑いときは20分もすれば水分は抜けてしまいますが、それでも肌触りがサラサラした素材なので気持ちが良いです。乾いた状態で首にかけていても、熱がこもるような感じはありません。

冷却スプレー

 渓流沿いを歩いて撮影しているときのように、常に手が届くところに水がある場合は、タオルが乾けばすぐに濡らすことができますが、山や森に入るとなかなかそういうわけにはいきません。携行している飲み水でタオルを濡らすということもできますが、大量の水を持ち歩いているわけではないので、飲用以外の用途に使うことはほとんどありません。
 そこで、濡れタオルの代用として重宝するのが冷却スプレーです。

 あまり容量の大きなものは重いしかさばるので、ほどほどの大きさのものをカメラバッグに入れています。タオルに吹きかけるとすぐにキンキンに冷えるし、薄手のTシャツなどの上から吹きかけるととてもひんやりとします。
 ただし、ひんやり感はそう長くは続かないので、一時的に冷やすだけの効果です。それでも、暑さに火照った体にはありがたい存在です。
 直接肌に吹きかけると冷たさを通り越して痛みを感じるので要注意です。

瞬間冷却材

 冷却スプレーは局所的、かつ、短時間しか冷えないのに対して、もう少し長い時間、体を冷やしたいというときのために瞬間冷却材を携行しています。
 外袋を叩いて中の袋を破ると、中に入っている硝酸アンモニウムと水が反応して瞬時に冷たくなる仕組みのようです。

 外気温によっても違うのでしょうが、暑いときでも20分くらいは冷たい状態を保ってくれます。これを手ぬぐいなどにくるんで首筋や額に巻いておくと体全体が冷える感じがします。
 軽いので5~6個持ち歩いてもそれほど負担にはなりませんが、私は3個ほどを携行して、本当に暑いときにだけ使うようにしています。
 とても便利なアイテムですが、使い終わった後、ゴミになってしまうのが難点です。

防虫スプレー

 防虫スプレーは暑さ対策というわけではありませんが、特に初夏から秋口にかけては虫に刺されるリスクも高いので、防虫スプレーは常に携行しています。
 これもいろいろな商品が販売されているので自分に合ったものを使えばよいのですが、私は天然由来成分配合と書かれたものを使っています。これまでたくさんの種類の防虫スプレーを使ってみましたが、臭いがきつかったり、スプレーすると肌がべたついたりするものも多くあり、適度な香りとサラサラ感のあるものということで、今はこれを使っています。

 携行するので、できるだけ小さなボトルのものを購入しています。

 防虫スプレーはその名の通り虫よけで、いちばんなじみ(?)があるのが蚊だと思います。確かに蚊はどこにでもいるし、刺されると痒くて撮影の集中力が低減するし、防御したい虫の代表格ではありますが、実は私がいちばん避けたいのはアカウシアブです。蚊に比べると出会う頻度は格段に少ないのですが、どこにでも生息しているらしいので、どこで遭遇しても不思議ではありません。
 このアカウシアブ、見た目の大きさも姿かたちもスズメバチにそっくりです。ハチの場合、こちらが何かしなけば刺すことはないですし、追い払えば逃げていきますが、アカウシアブは動物の血液を吸うことが目的なのでしつこくつきまとい、追い払っても逃げません。刺すといういうよりは血液を吸うために肌を噛み切るらしいのですが、そうすると大きく腫れて痛みもあり、それが何日も続いて大変なことになるようです。
 私もアカウシアブには何度もつきまとわられたことがあります。幸いにもまだ噛まれた経験はありませんが。
 防虫スプレーがアカウシアブにどの程度の効果があるかわかりませんが、虫が嫌がる臭いであれば寄ってこないのではないかと思い使っています。

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 年々、夏の暑さが厳しくなる気がしており、夏の野外撮影は本当にしんどいと感じることが増えたように思います。毎年、自分が歳をとっていることも影響しているかもしれませんが...
 このような暑いときに撮影に行かなくてもよいではないかと思ったりもしますが、やはり、この時期でなければ撮れないものもあるわけで、暑い々々と言いながらもカメラを背負って出かけていきたくなります。
 20年くらい前まではこのような暑さ対策グッズなど持たずに出かけていたと思うのですが、年齢を重ねたことを差し引いても、近年は急速に暑さが増していると思います。
 いろいろなものを携行すればそれだけ荷物が重くなるわけで、本来は暑いときは荷物を軽くしたいのに、それに逆行している現実があります。

 そういえば、最近、水冷式のベストが脚光を浴びているようで、鳥肌が立つほど涼しいというレポートを見たことがあります。そんなに効果があるのかとだいぶ気になっているのですが、大量の水を背負った状態でさらにカメラバックを背負うことは困難だと思われ、今のところ購入に至っていません。

(2024.8.8)

#大判フィルム #小道具

クマ除けグッズのあれこれ クマに出逢わないための効果的な方法はあるのか? 

 今年(2023年)は例年になくクマの出没やクマによる被害が多いとのことで、連日のようにこのニュースが流れています。本来、クマは警戒心も強く臆病な動物で、特に人間を怖がると言われていますが、人家の庭に来てくつろいでいたり、車がぶんぶん走る街中をスタスタと駆けていく映像などを見ると、本当に人間を怖がっているのだろうかと思ってしまいます。
 酷暑ともいえる今年の夏の暑さの影響で山の木の実が少ないため、食べ物の多い里に降りて来るという専門家の方の解説もよく聞きますが、どうもそれだけが理由ではないように感じてしまいます。
 本州に生息しているツキノワグマはどちらかというと草食系のようで、本来、クマは人間を襲ったり食べるために里に下りたり街中に出てくるわけではないと思いますが、食料を得るためにクマにとっても背に腹は代えられないということなのでしょうか?

 私が撮影する被写体は主に自然風景なので、どうしても一人で山に入ることが多くなります。もともと、クマだけでなくシカやイノシシ、サルなどが生息しているところに入っていくわけですから、そういった動物たちに出会っても不思議はないとは思いますが、これまでの数十年の間でクマを見かけたのは4~5回だけです。ですので、これまではそれほどクマに対する警戒心のようなものを強く持ち合わせてはいませんでした。とはいえ、クマには出逢いたくないので、山に入るときはクマ除けの鈴(ベアベル)程度は着けていました。
 しかし、近年のクマ目撃回数やクマによる被害件数の増加を見るとベアベルだけでは心もとなく感じるようになり、ここ数年でクマ対策のグッズをいろいろと揃えてきました。特に今年のようにその回数が急増しているという話しを聞くにつけ、対策を強化しなければいけないと思っています。

 ということで、以前はベアベルのみという状態だったのですが、徐々に持ち歩くクマ除けアイテムが増えていき、現在では山に入る際には下の写真のようなものを携行しています。

▲クマ除けグッズ:左からクマスプレー、電子ホイッスル、ベアベル、熊おどし、クマ除けピストル、下側中央がクマ忌避剤「熊をぼる」、その右が爆竹

 まず、いちばん基本的なアイテムのベアベルです。
 クマ除けグッズで最もポピュラーなのがこのベアベルですが、たくさんの製品が市販されています。形状や色も様々ですが、いちばん特徴的なのがその音色です。「カラカラ」というような乾いた音や「チリンチリン」という可愛らしい音のするもの、あるいは「カーンカーン」というような音のするものまで様々です。
 クマの生態に詳しい方の話だと音の大小はあまり関係ないらしいです。クマの聴覚はとても発達しているので、小さな音でもかなり遠くから聞き分けることができるようです。
 私が使っているベアベルは真鍮製で、「キーンキーン」というような甲高い音がします。音も大きめで、かなり遠くにいても聞こえるようです。これを腰に下げているので、歩いているときは常に「キーンキーン」と鳴り響いています。この音でクマの方から避けてくれればありがたいのですが、どの程度の効果があるのかはわかりません。
 一人で山の中を歩いていたり撮影しているときに遠くの方からこのベアベルの音が聞こえると、人が来るんだというのがわかってちょっとホッとしたりします。
 なお、このベアベルの音がうるさいと感じる人もいるようです。人が大勢いるような場所では鳴らさないようにしておくのもマナーかも知れません。

 ベアベルだけでは少し心もとないという思いと、歩いていないときは音がしないということもあり、4~5年ほど前に電子ホイッスルを購入しました。これはボタンを押すだけで、交通整理の警察官が吹いている笛のような音がします。しかもかなりの大音量で、取扱説明書には約120dbと書かれています。実際に近くで鳴らされると本当にうるさいと感じます。また、音量は3段階に切り替えが可能で、音色も3種類が用意されていますが、もちろん最大音量で使用しています。
 この電子ホイッスルはストラップで首から下げて携行していますが、歩きながら時どき鳴らしたり、撮影に入る前や撮影の合間に10秒ほど鳴らします。ベアベルに比べるとかなり遠くまで音が届くと思うのですが、これもクマに対して効果があるかどうかは不明です。
 ただし、近くに人がいる場所で鳴らすとかなり驚かせてしまうので、これを使用するときは近くに人がいないことを確認する必要があります。

 3つ目のアイテムはクマ除けピストルです。
 5~6年前に秋田県に撮影に行った際、地元の猟師の方から、「爆竹がいちばん効果がある」と教えていただき、その後、いろいろ探して見つけたものです。小学校の運動会などで使われるスターターを小型にしたようなもので、火薬を装填して引き金を引くと「パーン」という大きな音がします。価格は数百円だったと思います。おもちゃのようなものですが、円形に配置された8個の火薬を装填すると、8連発が可能になります。更に、撃った直後は辺りに火薬のにおいが漂います。
 山の中で撃つとこだまのように響き渡り、数百メートルくらい離れていても十分に聞こえるだろうという感じです。何の確証もないのですが、この音を聞けばクマも逃げてくれるだろうという都合の良い思い込みがあり、これを鳴らすと何だかとても心強くなります。
 もちろん、電子ホイッスルと同様で、周囲に人がいないことを確認してから使うのは言うまでもありません。

 クマ除けピストルに特に不満があったわけではありませんが、秋田の猟師さんの言葉が妙に頭の隅に残っていて、爆竹を使ったクマ除けを何とかできないかと考えていました。爆竹は子供の頃によく遊んだ記憶があり、身近に感じられたこともあるかも知れません。
 いろいろ調べていたところ、「熊おどし」というのがあることを知りました。これは北海道や東北では昔から使われてきたもののようです。片方のフシを切り落とした竹筒に爆竹を入れて火をつけるだけ、といういたってシンプルなものです。動画もいくつかアップされていたのでそれらを参考にしながら、2年ほど前に自作をしました。
 竹筒では強度的に不安があったので、金属素材で作ることにしました。直径20mmほどのステンレスパイプの切れ端があったので、これを長さ15cmほどにカットし、このパイプに、剪定で切り落とした庭の桜の枝を削ってはめ込むという簡単なものです。手で持って爆発させるので、その爆風が手にかからないようにステンレスパイプとの隙間がないようにするだけで、これといった難しさはありません。
 ステンレスパイプの先端内側に爆竹を引っかけ、ライターで導火線に火をつけると数秒後にはステンレスパイプの中で爆発します。その音はクマ除けピストルの比ではなく、感覚的には倍以上の音量ではないかと思うほどです。たまたま、道路脇にあるガードレールの近くで使ったことがあったのですが、爆発の衝撃波でガードレールが共鳴するくらいでした。爆竹を複数本入れて着火するとその威力はさらに増しますが、大量に詰め込めばよいというものでもなく、せいぜい2~3本くらいが限度かと思います。やはり空洞がないと音が良くないし、いくらステンレスと言えども同時に爆発させればダメージも大きいと思います。
 クマの生態に詳しい方によると、いきなり爆竹を鳴らすのではなく、笛(ホイッスル)を鳴らした後に熊おどしなどの爆竹を鳴らすと効果的だそうです。もし近くにクマがいた場合、いきなり爆竹の音が鳴り響くとクマもパニックを起こすかもしれないというのが理由のようです。
 爆竹を取り出し、ステンレスパイプの先端に引っ掛け、火をつけるという手間がかかるので、クマ除けピストルのような迅速性はないし連射も出来ませんが、効果はかなりあるように感じます。
 また、火をつけた爆竹を地面に放り出すわけでもないので、落ち葉に火が着くという心配もありません。
 私はステンレスパイプで自作しましたが、しっかりした素材で底のついた筒状のものであれば何でも代用可能だと思います。

 そして、今年の春に新たに手に入れたのがクマ忌避剤です。これは、「熊をぼる」という製品名で販売されているもので、1個2,300円ほどで購入しました。
 中身は木酢とカプサイシン(唐辛子成分)の混合液らしく、強烈な臭いでクマを寄せつけない効果があるらしいです。これをバックパックなどにぶら下げておくと、風下方向では1kmくらい離れていてもクマは感じ取るらしく、とても効果があると書かれていました。風上にいるクマに対しての効果は薄くなるのかもしれませんが、風の向きは常に一定ではないので、かなりの広範囲に匂いが広がるのではないかと思います。ただし、結構危険な液体のようで、直接手に触れると火傷をしたようになるらしく、取り扱いには注意が必要です。
 木酢なのでスモークのような強い臭いがします。家の中で袋から取り出すと強烈な臭いが立ち込め、半日くらいは臭いが残っています。これをつけて歩いていると風下にいる人にも臭いを浴びせることになってしまい、不快な思いをさせてしまう可能性があります。迷惑をかけたりトラブルになるのも困るので、人が多いところでは密閉袋に入れておくのが無難です。

 ここまで紹介したアイテムは、クマに人間の所在を知らせるとか、クマが嫌がる音や臭いを出すというもので、つまり、クマに出会わないようにすることを狙ったものです。たとえクマが生息していることがわかっていても、ソーシャルディスタンスをとってクマと出逢いさえしなければそれほど恐ろしさは感じません。ですから、クマと出くわさないのが最良なのですが、運悪く出くわしてしまったときには、たぶんこれらのアイテムでは役に立たないと思います。
 そこで、そのようなときのために「クマスプレー」を携行しています。

 これは実際に一度も使ったことがないので効果のほどはわかりませんが、説明書によるとカプサイシンが大量に含まれた超危険な液体が8~10mほどの距離まで噴射されるようです。また、噴射できる時間はおよそ7~8秒とのことです。したがって、クマがかなり近くに来た時に噴射しなければ効果がないということになります。そのような近距離にクマがいる状態で落ち着いてスプレーを吹きかけることができるのか、また、風向きによっては自分の方に流れてくる可能性もあるわけで、そういったことに注意しながら対応できるのか、そちらの方がはなはだ心配ですが、最後の砦といったところでしょうか。
 クマスプレーは結構高額(私が購入したものは13,000円ほどしました)で、使用期限も4~5年しかないし、しかも、これを使わざるを得ないような状況では、たぶん1回で使い切ってしまうだろうということもあり、今までは購入を見送っていました。しかし、今年のクマの出没や被害の多さをきいて4か月ほど前に初めて購入してみました。
 なお、6,000~7,000円という格安の商品もありますが、使用期限が数ヶ月しかないというようなものであることが多いらしく、格安品を購入する場合は注意が必要なようです。
 近年はクマスプレーを携行している登山者を多く見かけます。実際にクマに遭遇し、使った経験のある方にお会いしたことはありませんが、お守り代わりに持っているという方が多いようです。

 運悪くクマに出逢ったらいきなりスプレーをかけるのではなく、刺激を与えないように静かに後ずさりしながらクマにさよならするのが良いみたいですが、そういうことも理解はしていても、実際にそのような場面に遭遇した時に体がそのように動くかどうか、はなはだ疑問ではあります。

 腰のベルトにベアベルとクマスプレーをつけ、首には電子ホイッスルをぶら下げ、ウエストポーチにクマ除けピストルや熊おどしを入れ、バックパックにはクマ忌避剤をぶら下げ、撮影機材よりもクマ除けグッズの方に力が入っている感じがしないでもありませんが、クマには出逢いたくないので仕方ありません。
 突然、藪からぬっと出てこられてはどうしようもありませんが、歩いているときはあちこちを見ることができるので、黒いものが動いていると気がつきやすいと思います。いちばん恐怖心が高まるのは撮影しているときです。周囲に目がいかないし、滝や渓流の近くに入れば音がかき消されてしまうし、そんなときにクマに近寄られても全く気がつきません。撮影に入る際には音と匂いでクマを遠ざけておくしかありません。
 これらのクマ除けグッズが、はたしてクマに対して効果があるかは不明ですが、クマも人間には出逢いたくないと思っているという言葉を信じて、注意しながら山に入りたいと思います。

(2023.10.24)

#クマ避け鈴 #小道具

撮影中にクマに出会ったら... クマ避けの鈴は効果があるのか?

 10月の後半に山形、秋田、青森方面に紅葉の撮影に行ってきました。訪れた時はまだ色づきはじめでしたが、わずか一週間で一気に紅葉が進んだ感じでした。

 秋田県の、とある滝の撮影に行った時のことです。
 その滝は車を降りてから山道を30分ほど登った先にあります。最近はあちこちで目にする「熊注意!」の看板がここにもありました。私は山に入るときはクマ避けの鈴(ベアベル)をつけるのですが、この日も腰につけて歩き始めました。
 15分ほど歩いた頃でしょうか、視界の隅に動くものが飛び込んできました。「もしや...」と思って右の方を見ると真っ黒な岩のようなものがもぞもぞと動いています。たぶんクマです。距離は50~60m、もしかしたらもう少し離れていたかもしれません。こちらに背を向けているらしく、顔は見えません。
 相手はこちらの存在に気がついているのかどうかわかりませんが、走っている様子もなく、ソーシャルディスタンスを保っていると思っているのか、ゆっくりとした足取りで森の中に消えていきました。見えていた時間は4~5秒だと思います。

 私がつけているベアベルは結構甲高い音がするので、かなり離れていても聞こえます。人間でさえ聞こえるのですから、クマの耳には確実に届いていたと思われますが、音がしたから去っていったのか、そもそも聞こえていなかったのか、それは当人に聞いてみないとわかりません。

▲クマ避けの鈴(ベアベル)

 離れていたとはいえクマを目撃した私はというと、それまでのハイテンションな気持ちがすっかり萎えてしまいました。クマは森の奥に行ったのでこのまま滝を目指すか、それともあきらめて引き返すか、どちらとも決められずにその場に立ち尽くしていました。
 クマは、滝に向かう道とはずいぶん違う方向に行ったようですが、この先でまたご対面なんていうこともないとは限りません。そう考えると足が前に出ません。

 私は過去にも二度、クマを見かけたことがあります。いずれも今回のように離れたところから見かけただけで、至近距離で遭遇したとか、ばったり鉢合わせしたとかいうことはありません。しかし、クマを見かけた後、そこから先に進むのは非常に勇気がいります。ベアベルを鳴らしながら歩いても効果があるのか、疑心暗鬼になってしまいます。クマが街中に現れたとか、民家の庭を荒らしたとかいうニュースが時々ありますが、そういうのを聞くにつけ、クマが物音に警戒して去っていくということ自体が本当なんだろうかと思ったりもします。

 5~6年前になりますが、秋田県の阿仁町というところに撮影に行ったことがあります。その時、地元のマタギの方と偶然お会いした際に教えていただいたのですが、クマは火薬のにおいをいちばん嫌うらしいです。爆竹を10本ほど鳴らしておくと、少なくともその日、その周辺にはクマは寄ってこないとのことです。クマと出会った時のことを考えるよりも、素人はクマに出会わない方法を考える方が良いともいわれました。
 確かに森に響き渡る音と漂う火薬の臭いは効果てきめんという感じがしますが、何十本もの爆竹を持って、歩きながら爆竹を鳴らすというのはさすがに気が引けます。しかも、枯葉に火でも着きようものなら大変なことになってしまいます。

 しかし、このマタギの方の話が妙に頭に残っていて、その後、クマ避けグッズをいろいろ探してみました。唐辛子のスプレーが最も効果があるようですが、これは目の前にクマがいた時の話ですし、そもそも、急にクマに出くわしたときにスプレーを噴射するような余裕はないと思います。たとえ運よくスプレーを噴射できたとしても、風向きによっては自分の顔に降り注ぐなんていうのが関の山です。

 そして、いろいろ探した結果、たどり着いたのが電子ホイッスルです。

▲電子ホイッスル

 長さが10cmほどで手のひらにすっぽりと納まる大きさです。電池式で、警察官が交通整理をするときなどに吹いている笛のような音がします。しかも、かなりの大音量です。実際にどれくらいの効果があるのか、この音でクマは去ってくれるのかはわかりませんが、森の中で鳴らすと鳥は驚いて飛び去って行きます。
 以来、私は森や山に入るときは、この電子ホイッスルをポケットに入れて歩くようにしています。もちろん、ベアベルも腰に着けています。

 音がとても大きいので、近くに人がいるときに鳴らすとかなり驚かせてしまいます。ですので、これを使うのは誰もいない森や山の中です。
 クマが出るんじゃないかという恐怖心は、歩いているときよりも撮影をしているときのほうが大きいわけですが、ファインダーを覗いていると周囲に目がいかないので、後ろからクマが忍び寄ってきても気がつかないというのがその理由です。
 撮影に入る前に周囲に人がいないことを確認したうえで数秒間、この電子ホイッスルを鳴らし続けます。これだけで何となく安心した気分になり、撮影に没頭することができます。

 今回、滝に向かう途中でクマを見かけ、その後、先に進むか引き返すか決めかねて20分ほどその場にたたずんでいましたが、恐怖心もおさまってきたこともあり、撮影に行ってきました。他に人の姿はなかったので、ときどき電子ホイッスルを鳴らしながら進んだのは言うまでもありません。
 そして、電子ホイッスルの効果があったのかどうかはわかりませんが、その後、クマの姿を見かけることはありませんでした。

 この電子ホイッスルですが、クマ避けだけでなく、緊急時に自分の存在を知らせるということにも使えそうです。幸いにもそういう事態になったことはありませんが、撮影で森や山に入るときは電子ホイッスルと強力な光を照射するLEDライトは常に持ち歩いています。
 火薬を燃焼させたときの臭いがするスプレーがあればぜひ購入して、持ち歩きたいものです。

 余談ですが、山でよく出くわすのがカモシカと鹿(ニホンジカ)です。彼らは警戒心が強いのでソーシャルディスタンスを保ちながらじっとこっちを見ているだけで、襲ってくるようなことはないので安心です。
 また、イノシシも数回見かけたことがあります。イノシシはものすごい勢いで走っていくので、その正面に立っていれば弾き飛ばされてしまいそうですが、不思議なものでクマに対するような恐怖心はありません。
 クマやイノシシの足跡と、それが新しいものか古いものかの見分け方などを教えてもらったこともありますが、撮影の時は地面についた足跡にまで気が回らず、残念ながら教えてもらったことも役に立てられていません。

(2021年12月3日)

#クマ避け鈴 #小道具