夏の野外撮影 暑さ対策グッズのあれこれ

 昨年(2023年)は記録的な暑い夏でしたが、今年(2024年)はそれに輪をかけて暑い日が続いています。たぶん、昨年の記録を上回る暑い夏になるのではないかと確信をしています。体温に匹敵する、時には体温を上回るような暑い日が続くと撮影意欲も減退します。
 私が主に撮影する被写体は自然風景や野生の花などなので、撮影となると暑くても野外に出かけなければなりません。できるだけ気温の低い早朝や夕方の撮影をと思ってはいますが、時には日中に出かけることもあり、容赦ない太陽の光と熱を浴びながら歩いていると気が遠くなるような気がします。
 撮影中に熱中症などでぶっ倒れでもしたら大変なので、自分自身の暑さ対策もあれこれやっていますが、同じくらい、カメラやフィルムの暑さ対策も必要になります。できるだけ日陰を選んで歩いたり撮影したりはしていますが、特に大判カメラの場合、撮影の準備や撮影そのものに時間がかかるので、どうしても日にさらされる時間が長くなります。

 ということで、今回は私がやっている暑さ対策についてご紹介します。

日傘ホルダー&日傘

 夏の撮影でいちばん苦労するのは、いかに直射日光を浴びないようにするかということです。森の中などのように木が生い茂っているところは有難いのですが、自然相手の撮影なのでなかなか都合よくはいきません。
 そこで、人工的に日陰を作ろうということで、三脚に日傘を取付けて撮影に臨んでいます。

 私が使っているのは、エツミの「傘ホルダーレインブラケット DXⅡ」という製品で、これに日傘を取付けて使っています。もともとは雨降りの日の撮影用にということで用意したものですが、夏の日除け対策にも役立っています。
 この製品を購入したのは10年以上前になると思います。かなり以前から販売されていたもので、まるでメタルベンダーを使って手作業で作ったような手作り感満載の風貌です。
 最近はクランプ型の傘ホルダーの類いがたくさん販売されていますが、ちょっと力がかかると壊れてしまいそうな気がして食指が動きません。その点、この傘ホルダーはハンマーで力いっぱいたたいてもびくともしなさそうです。

 この製品は2つのパーツに分かれているのですが、L型に曲がっているパーツ(固定プレート)は三脚の雲台を固定するネジに差し込み、そのまま運台を締めつけて使用します。取り付けたり外したりが面倒なので、私は取り付けたままにしています。ここに、もう一つのパーツ(ブラケット)を取付けて使用します。こちらは取り付けたままにしておくと三脚の持ち運びの際にとても邪魔になるので、使用するときに取り付けるようにしています。

 何ともシンプルな構造ですが結構しっかりしていて、大きめの傘でもぐらつくことがありません。傘の取り付け角度は前後にそれぞれ30度ほど調整ができるので、撮影アングルや日差しの向きなどに合わせて動かすことができます。 
 傘の柄の直径が概ね10mm以下であればどんな傘でも問題なく取り付けることができますが、私は撮影の際は折りたたみ傘を持ち歩いているので、それを使用しています。

 人工的な小さな日陰ですが、この日陰があると無いとでは夏の撮影時にかかる負担は雲泥の差です。

カメラ用の日除けカバー

 日除けの傘があれば自分自身だけでなくカメラも日差しから守ることができるのですが、太陽の位置や角度によってはどうしてもカメラに直射日光が当たってしまうという場合もあります。真夏の強烈な日差しにさらしておくとカメラの筐体や蛇腹がものすごく熱くなります。このような状態を長時間続けておくと、カメラへのダメージも大きいだろうと思われ、その対策用にカメラカバーを持ち歩いています。

 これは、100均で購入した保冷袋を切り開いて、カメラにかぶせるようにしたものです。これだけだと腰がなくてフニャフニャしてしまうので、内側に薄手の段ボール紙を貼っています。
 これをカメラの上にかぶせ、左右両側に取り付けたゴム紐をカメラの下側に回しかけて固定するだけという単純なものです。
 使用するレンズによってレンズ自体の長さや繰り出す蛇腹の長さが異なるので、あまりピッタリとした寸法にするのではなく、若干大きめにしておいて、前後に自由に動かせるようにしています。

 以前は白っぽい色のタオルをカメラにかけて日除けをしていたのですが、タオルをかけてしまうとカメラの操作がしにくくなるのと、タオルがカメラに密着してしまうので、以外と熱が伝わってしまうということがあり、このカバーを使うようになりました。
 とても軽く、畳んでカメラバッグに入れておけば邪魔にもならないので思いのほか重宝しています。

フィルム用保冷バッグ

 暑い夏の撮影でもっとも神経を使うのがフィルムです。フィルムは冷凍保存ができるくらいですから寒さには強いのですが、高温のところに長時間さらされると乳剤が変質してしまいます。なので、暑い季節に野外撮影に行くときは、フィルムをできるだけ涼しいところに保管するようにしています。
 本来は保冷剤を入れた保冷バッグを使うのが望ましいのですが、かさばってしまうので現実的ではありません。
 そこで、小さな保冷袋にフィルムを入れて携行するようにしています。

 この保冷袋はフィルム用というわけではありませんが、ちょうど4×5判のフィルムホルダーが入る大きさのものを見つけたので購入したものです。4×5判フィルムホルダーが6枚と、ブローニーフィルムが5~6本入ります。
 保冷剤を入れているわけではないので冷やすことはできませんが、フィルムの温度が上がるのを極力抑えることはできます。この保冷袋ごとカメラバッグに入れています。
 4×5判フィルムホルダーが6枚だと両面で12枚のフィルムを携行することができるので、手ごろな大きさだと思います。

クールタオル

 野外撮影の際にタオルは汗を拭くだけでなく様々な用途に使えるので傾向は必須ですが、暑い時期に普通のコットンタオルを首にかけていると熱がこもってさらに暑く感じます。吸水性には優れているので何かと便利ではありますが、暑さ対策という点からするとイマイチといったところです。
 私は少しでも涼しさを感じられるようにということで、暑いときの野外撮影にはクールタオルを用いています。

 この類いの商品はたくさん販売されていて、どれが良いのやら判断に迷いますが、私が使っているのは特別なものではなく、薄い生地のクールタオルです。水で濡らした後、絞ったりブンブン振ったりするとひんやり感のあるタオルになります。暑いときは20分もすれば水分は抜けてしまいますが、それでも肌触りがサラサラした素材なので気持ちが良いです。乾いた状態で首にかけていても、熱がこもるような感じはありません。

冷却スプレー

 渓流沿いを歩いて撮影しているときのように、常に手が届くところに水がある場合は、タオルが乾けばすぐに濡らすことができますが、山や森に入るとなかなかそういうわけにはいきません。携行している飲み水でタオルを濡らすということもできますが、大量の水を持ち歩いているわけではないので、飲用以外の用途に使うことはほとんどありません。
 そこで、濡れタオルの代用として重宝するのが冷却スプレーです。

 あまり容量の大きなものは重いしかさばるので、ほどほどの大きさのものをカメラバッグに入れています。タオルに吹きかけるとすぐにキンキンに冷えるし、薄手のTシャツなどの上から吹きかけるととてもひんやりとします。
 ただし、ひんやり感はそう長くは続かないので、一時的に冷やすだけの効果です。それでも、暑さに火照った体にはありがたい存在です。
 直接肌に吹きかけると冷たさを通り越して痛みを感じるので要注意です。

瞬間冷却材

 冷却スプレーは局所的、かつ、短時間しか冷えないのに対して、もう少し長い時間、体を冷やしたいというときのために瞬間冷却材を携行しています。
 外袋を叩いて中の袋を破ると、中に入っている硝酸アンモニウムと水が反応して瞬時に冷たくなる仕組みのようです。

 外気温によっても違うのでしょうが、暑いときでも20分くらいは冷たい状態を保ってくれます。これを手ぬぐいなどにくるんで首筋や額に巻いておくと体全体が冷える感じがします。
 軽いので5~6個持ち歩いてもそれほど負担にはなりませんが、私は3個ほどを携行して、本当に暑いときにだけ使うようにしています。
 とても便利なアイテムですが、使い終わった後、ゴミになってしまうのが難点です。

防虫スプレー

 防虫スプレーは暑さ対策というわけではありませんが、特に初夏から秋口にかけては虫に刺されるリスクも高いので、防虫スプレーは常に携行しています。
 これもいろいろな商品が販売されているので自分に合ったものを使えばよいのですが、私は天然由来成分配合と書かれたものを使っています。これまでたくさんの種類の防虫スプレーを使ってみましたが、臭いがきつかったり、スプレーすると肌がべたついたりするものも多くあり、適度な香りとサラサラ感のあるものということで、今はこれを使っています。

 携行するので、できるだけ小さなボトルのものを購入しています。

 防虫スプレーはその名の通り虫よけで、いちばんなじみ(?)があるのが蚊だと思います。確かに蚊はどこにでもいるし、刺されると痒くて撮影の集中力が低減するし、防御したい虫の代表格ではありますが、実は私がいちばん避けたいのはアカウシアブです。蚊に比べると出会う頻度は格段に少ないのですが、どこにでも生息しているらしいので、どこで遭遇しても不思議ではありません。
 このアカウシアブ、見た目の大きさも姿かたちもスズメバチにそっくりです。ハチの場合、こちらが何かしなけば刺すことはないですし、追い払えば逃げていきますが、アカウシアブは動物の血液を吸うことが目的なのでしつこくつきまとい、追い払っても逃げません。刺すといういうよりは血液を吸うために肌を噛み切るらしいのですが、そうすると大きく腫れて痛みもあり、それが何日も続いて大変なことになるようです。
 私もアカウシアブには何度もつきまとわられたことがあります。幸いにもまだ噛まれた経験はありませんが。
 防虫スプレーがアカウシアブにどの程度の効果があるかわかりませんが、虫が嫌がる臭いであれば寄ってこないのではないかと思い使っています。

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 年々、夏の暑さが厳しくなる気がしており、夏の野外撮影は本当にしんどいと感じることが増えたように思います。毎年、自分が歳をとっていることも影響しているかもしれませんが...
 このような暑いときに撮影に行かなくてもよいではないかと思ったりもしますが、やはり、この時期でなければ撮れないものもあるわけで、暑い々々と言いながらもカメラを背負って出かけていきたくなります。
 20年くらい前まではこのような暑さ対策グッズなど持たずに出かけていたと思うのですが、年齢を重ねたことを差し引いても、近年は急速に暑さが増していると思います。
 いろいろなものを携行すればそれだけ荷物が重くなるわけで、本来は暑いときは荷物を軽くしたいのに、それに逆行している現実があります。

 そういえば、最近、水冷式のベストが脚光を浴びているようで、鳥肌が立つほど涼しいというレポートを見たことがあります。そんなに効果があるのかとだいぶ気になっているのですが、大量の水を背負った状態でさらにカメラバックを背負うことは困難だと思われ、今のところ購入に至っていません。

(2024.8.8)

#大判フィルム #小道具

500mlの現像液で4×5″シートフィルム4枚を処理する現像タンクの製作(1) 構想編

 以前、別のページでも書きましたが、私は4×5判のモノクロフィルムを自家現像する場合、主にパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。一度に最大で6枚のフィルムを処理することができるので便利ではありますが、使用する現像液の量も多いので、もう少し少ない量で処理できれば良いと常々思っていました。国内外の製品をいろいろ物色してみたところ、SP-445という製品があるようなのですがかなり高額なため、思い切って自作してみようと思い至りました。
 どのような現像タンクにするか、今回はその構想についてまとめてみました。

条件は、500mlの現像液で4×5″フィルム4枚を現像

 なぜ500mlかというと、それほど深い拘りがあるわけではないのですが、ブローニーフィルムの現像に使っている現像タンクに必要な現像液が500mlだからという程度のことです。500mlであれば作り置きした現像液を保管するにも場所をとらずに済みますし、ブローニーの現像液をそのまま4×5判にも使うことができるので便利です。
 また、時どきしかやらないのですが、モノクロフィルムのリバーサル現像に使う薬剤の中にはワンショットで作り置きのきかないものもあり、そういった点からも使う量は少ないに越したことはありません。

 しかし、現像液が500mlであっても、処理できるフィルムが1~2枚しかないというような状態ではあまり効率が良くないので、少ない現像液といえども一度に4枚くらいは処理できるようにしないとあまり意味がありません。何年か前に、パターソンのPTP115というブローニー用の現像タンクで2枚の4×5判フィルムを現像するためのホルダーを作ったことがありますが、これはあくまでも1枚とか2枚という現像をしなければならないという時のためであって、常用するためのものではありません。

筐体(タンク)を直方体にすることで内容積を削減

 現像液の量が最も少なくて済む方法は、たぶんバット(皿)に現像液を入れて処理する方法だと思われます。印画紙を現像するのと同じようなやり方です。
 ただし、この方法だと結構場所をとるし、暗室、もしくはかなり大型のダークボックスのようなものが必要になります。また、バットに複数枚のシートフィルムを入れることで、フィルム同士が重なってしまって現像ムラができないかという心配もあります。

 そこで、バットを立てたような形の現像タンク、すなわち、SP-445のような直方体の形状をした現像タンクにすれば液の量も少なくて済むだろうということで、あれこれと思案をしてみました。

 そうしてイメージしたのがこのような現像タンクです。

 現像タンク本体の上部に現像液の注入口、および排水口を設け、本体側面には水洗い時の排水口を設けます。そして 、本体内部にはシートフィルム用のホルダーを入れるという構造です。
 円筒形の現像タンクのようにフィルムを回転させる撹拌はできないので、倒立撹拌のみとなりますが、これはもう妥協するしかありません。もし、どうしても回転撹拌をしたいということであれば、現像タンク全体を回転させる治具を別途用意するしかありませんが、将来的に必要性を感じるようであれば、あらためて検討することとします。

 いま考えている現像タンクの内部構造(透視図)はこんな感じです。

 明るい場所で処理できることを前提としているため、注入口や排水口からの光が内部に入り込まないようにしなければなりません。
 本体上部にある注入口に注がれた現像液は、二つのすべり台を流れるようにして本体内部に入ります。向かい合わせに設置されたすべり台によって、注入口からの光の入り込みを防ごうという狙いです。

 また、本体側面の排水口からの光の入り込みを防ぐため、2枚の斜光板を設置しておきます。

 本体側面の排水口は水洗の時にしか使わない予定なので、キャップ(栓)をしておけば光が入ることもなく、斜光板はなくても良いと思ったのですが、リバーサル現像のときは第一現像や漂白の工程の後にも水洗いを行なうため、それを考慮して斜光板を設置することにしました。
 水洗の際は上部の注入口から水道水を流しっぱなしにすると、本体底部からの水が側面の排水口から流れ出ていくという想定で、水洗の効率を狙ったつもりです。

 そして、フィルムホルダーですが、下の図のようなものを考えています。

 フィルムの出し入れがやり易いように、ホルダーの側板にスリット(溝)をつけただけの簡単なものです。フィルムとフィルムの間隔は約5mmで、これだけの隙間があれば問題ないと思われますし、フィルムの裏表を気にする必要もありません。フィルムの間隔をもっと詰めれば、同じ寸法で6枚とか8枚も可能になると思いますが、工作が結構大変そうです。
 また、倒立撹拌によってフィルムやホルダー自体が動いてしまわないように、本体内に入れた後にホルダーを固定する押さえ板を設置する予定です。

 本体は上から1/3くらいの位置で上部と下部の二つの分離するようにする予定で、上部は蓋のような形で下部に被さるようにします。ここからの水漏れを防ぐため、ゴムパッキンのようなものが必要になるかも知れません。
 なお、フィルムを装填するときは暗室やダークバッグなどの中で行なう必要がありますが、中に入れた後は明所で処理できるのは他の現像タンクと同じです。

 さて、この現像タンクに必要な現像液の量ですが、4×5判フィルムを縦位置にした状態で、若干の余裕をもって現像液に浸る深さを140mmとして内容積を計算すると、504mlとなります。実際にはフィルムホルダーや斜光板なども浸ることになるので、たぶん、460mlくらいで足りるのではないかと思います。

 素材はすべてアクリル板で作ることを想定しています。そこそこの強度もありながら加工のし易さもあり、高度な工作機械がなくても比較的簡単に加工できますし、材料費も安く済むのが理由です。
 その他には注入口や排水口に取付けるブッシングのようなものと、それ用のキャップがあれば材料は事足りそうです。

排水をシミュレーション

 もう一つ、現像タンクの重要な機能として、排水がスムーズにできるかということがあります。出来るだけ短時間に排水でき、そして、内部に現像液が残らないようにしなければなりません。光が入り込まないように斜光板を何枚も設置しているため、これがスムーズな排水を妨げる可能性があります。

 そこで、うまく排水ができるかどうかを簡単な図で確認してみました。
 下の図は、現像タンクを正立させた状態から、注入口のある方向に徐々に回転させていったときに、内部の現像液がどのように動くかを簡単に示したものです。

 上の図でわかるように、正立状態から180度回転(図の⑤の状態)させた時点で、斜めに設置された斜光板(すべり台)のところにわずかに現像液が残ってしまうことになりそうです。
 この残った分を排出するためには、さらに45度ほど回転(図の⑥の状態)させたのち、135度くらいの位置(図の④の状態)まで戻す必要がありそうです。倒立すればすべて排水完了というのが望ましいのですが、余計にひと手間が必要になってしまい、このあたりは再検討の余地があるかも知れません。
 簡単なシミュレーションなので、実際にはこの通りにいくかどうかわかりません。正確な図面を描いたうえで再度、検討が必要になりそうです。

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 手作り感満載の現像タンクですが、この構想通りにいけば案外と使い物になるのではないかと楽観視しています。
 また、アクリル板やブッシングなど、すべて購入したとしても材料費は3,000円もかからないと思われますので、手間賃の方がはるかに高額になってしまいます。購入したほうが結果的には安く済むと思いますが、作る楽しみということで。
 作り始める前にはもっと正確な図面を起こさなければなりませんが、もうしばらくの間、練り直しも含めて構想を温め、頃合いを見計らって材料の調達を始めようと思っています。
 実際の製作についてはあらためてご紹介できればと思います。

(2023.2.21)

#現像タンク #大判フィルム #フィルムホルダー

4×5判シートフィルムをブローニーフィルム用現像タンクで現像する

 私はモノクロフィルムを使う頻度はリバーサルに比べるとそれほど高くありませんが、それでも時どき、ブローニー判や4×5判のモノクロフィルムで撮影を行ないます。撮影後のモノクロフィルムは自家現像をしており、4×5判のシートフィルムの現像にはパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。このPTP116という現像タンクは現像液が大量に必要なので、フィルムの枚数が少ないときにはもったいない気がします。
 そこで、フィルム枚数が少ない(1~2枚)ときには、ブローニーフィルム用のパターソンのPTP115という、少し小ぶりの現像タンクで4×5判シートフィルムを現像していますので、今回はそれをご紹介したいと思います。
 なお、実際に作成したのは何年も前のことであり、製作過程の画像がありませんのでご了承ください。

パターソンのPTP115で4×5判シートフィルム2枚を現像

 パターソンのPTP115という製品は、35mm判フィルム、およびブローニーフィルム用の現像タンクで、ブローニーフィルム用のリールは1本しか入りませんが35mm判用であれば一度に2本のリールを処理することができます。一回に使用する現像液の量は500mlなので、比較的少なくて済みます。

▲パターソン PTP115 現像タンク

 PTP115は4×5判シートフィルムを横置きにしたときにちょうど収まる深さがありますので、フィルムを適当にタンクの中に放り込んでおいても現像はできるかもしれません。しかし、フィルムは水分を含むと腰が弱くなって現像タンクの内壁に張り付いてしまう可能性があります。
 また、フィルムを何らかの方法で固定しておかないと現像タンクの中を自由に泳ぎ回ってしまうため、フィルム同士がくっついてしまう可能性も考えられ、あまり好ましくありません。

 フィルムをくるんと丸めて輪ゴムで止めて、それを現像タンクに入れて処理するという方もいらっしゃるようですが、撹拌の勢いで輪ゴムが外れてしまうのではないかという心配があり、私は試したことがありません。

 私は2枚のシートフィルムを固定するための簡単なホルダー(治具)を自作し、それを用いています。
 現像タンク内のスペースとしては4枚くらいは入れられると思うのですが、一度に4枚を処理するのであればPTP116を使った方が楽です。あくまでも1枚とか2枚の現像をするとき用です。
 また、フィルムを4枚入れてしまうと現像タンク内がぎゅうぎゅう詰め状態になり、回転攪拌ができなくなってしまいます。パターソンの製品は回転撹拌ができるようになっているので、それを活かすためにあえて2枚の処理用としています。

シートフィルムを固定するホルダー

 4×5判のシートフィルムは現像タンク内の内壁に沿って湾曲させなければなりません。手でフィルムの両端を挟んで内側に押すとフィルムが湾曲しますが、その状態を保持するようなホルダーがあればよいので、下の図、および写真のような簡単なものを自作しました。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー
▲PTP115用 シートフィルムホルダー

 素材は厚さ0.15mm、サイズは100mmx200mmのステンレス板です。1枚400円ほどだったと思います。
 この厚さであれば切ったり曲げたりも簡単にできますし、いったん曲げてしまえば自然にもとに戻ることはありません。0.15mmというとペラペラな感じに思われるかもしれませんが、ステンレスなのでかなりしっかりしています。

 現像タンクの内壁に沿うように全体を湾曲させるのですが、直径3~4cmくらいの丸棒に巻き付けるようにして、急激な力を加えずゆっくりと転がすように曲げていくと割ときれいにできます。もちろん、金型で成形したようにはいきませんが、多少の凹凸があった方が現像液の流れる隙間になって良いかも知れません。

 ホルダー両端の折り返してあるところにフィルムの端を入れると、フィルムが元に戻ろうとする力でホルダーに固定されます。ホルダーの中央部を内側に山折りしてあるのは、水分を含んだフィルムが柔らかくなってホルダーに張り付いてしまうのを防ぐためです。
 また、ステンレス板の下側を若干短くして、両端を折り返したときに斜めになるようにしていますが、これはパターソンの現像タンクが上にいくにしたがって内径がわずかに大きくなっており、それに合わせるためです。
 とはいえ、それほど精密に加工する必要はないので、現物合わせといった感じです。

 実際に4×5判シートフィルムを入れるとこんな感じになります。

▲PTP115用 シートフィルムホルダー(フィルムを入れた状態)

 フィルムの乳剤面が内側になるようにホルダーにはめ込みます。

 このホルダーを2枚作って、現像タンクの中に向かい合わせに入れます。
 その状態が下の写真です。

▲PTP115とシートフィルムホルダー

 ホルダー自体は現像タンク内でどこにも固定されていませんので、倒立撹拌を行なえば多少は動くと思いますが、特に問題はないと思います。また、2枚のホルダーの折り返した両端同士が接しているので、動くとしても円周方向であり、現像タンクの中心方向に動くことはありません。

 なお、ステンレス板の表面はとても滑らかですが端面や角はざらついていたり尖っているので、フィルムを傷めないためにも、サンドペーパーなどで出来るだけ滑らかにしておきます。
 また、油などを落とすためにアルコールや中性洗剤できれいに洗っておきます。

回転撹拌用の羽根

 パターソンの現像タンクは、中央にセンターコラムと呼ばれる回転撹拌用のパイプ(筒)を入れないと光が入り込んでしまうのですが、通常はこのセンターコラムにリールを差し込み、回転撹拌を行ないます。つまり、リール(フィルム)を回転させる仕組みになってるわけです。
 しかし、今回のようにリールを使わずにフィルムがホルダーとともにほぼ固定状態ですので、ここにセンターコラムだけを入れて回転させてもほとんど意味がありません。倒立撹拌を行なえば何の問題もありませんが、せっかく回転撹拌できるようになっているので使えるようにしてあります。

 上の写真でわかると思いますが、2枚のフィルムを入れると現像タンクの中央にレモン型の空間ができます。この空間を利用して撹拌用の羽根を回転させるようにしています。
 羽根の部分は35mmフィルムのケースとアクリル板、そしてそれを固定するステンレス板で自作しています。

▲PTP115用センターコラム(右)と撹拌用の羽根(左)

 フィルムケースの素材は弾力があるので、回転撹拌用のセンターコラムに抜き差しできるようにするためにはうってつけです。
 この羽根をセンターコラムに装着して、通常の回転撹拌のようにすれば現像タンク内で羽根が回転して水流が発生します。フィルムを回転させるのではなく、現像液を撹拌するという方式です。
 もちろん、倒立撹拌でも全く問題はありません。

▲センターコラムに撹拌用の羽根を取付けた状態

現像上のトラブルもなく、問題なく使える

 実際にこれを作ったのは4~5年前で、現像するフィルム枚数が少ないときはこれを使っていますが、これまでに現像ムラなどのトラブルは一度もおきたことがありません。
 最初は、フィルムがホルダーから外れてしまうのではないかと心配もしましたがそんなこともなく、回転撹拌しても倒立撹拌してもしっかりと保持されていました。

 また、実際に使ってみて感じたのは、フィルムをホルダーにはめ込むのが実に簡単ということです。ホルダーにはめる際は暗室やダークバッグの中などの真っ暗闇で行なうわけですが、構造が単純なだけに変なところにはまってしまうこともなく、手探りでも簡単に行なえます。
 唯一、注意をするとしたら、フィルムの裏表を間違えないようにするということぐらいでしょうか。実際に裏表を反対にした状態で試したことはありませんが、乳剤面の水流が不十分で現像ムラが起きる可能性は考えられます。

 なお、一回に必要な現像液の量は500mlです。

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 回転撹拌をあきらめれば、4枚を同時に現像できるようなホルダーも考えられますが、形状が複雑になるので加工精度が求められ、手作業で製作するのは難しいかも知れません。一度に多くの枚数を処理できるのは効率的ですが、少しずつ現像の条件を変えたいというときにはこのほうが無駄がなくて便利かもしれません。

(2022.5.14)

#パターソン #PATERSON #フィルムホルダー #大判フィルム #現像タンク