昨年(2023年)は記録的な暑い夏でしたが、今年(2024年)はそれに輪をかけて暑い日が続いています。たぶん、昨年の記録を上回る暑い夏になるのではないかと確信をしています。体温に匹敵する、時には体温を上回るような暑い日が続くと撮影意欲も減退します。
私が主に撮影する被写体は自然風景や野生の花などなので、撮影となると暑くても野外に出かけなければなりません。できるだけ気温の低い早朝や夕方の撮影をと思ってはいますが、時には日中に出かけることもあり、容赦ない太陽の光と熱を浴びながら歩いていると気が遠くなるような気がします。
撮影中に熱中症などでぶっ倒れでもしたら大変なので、自分自身の暑さ対策もあれこれやっていますが、同じくらい、カメラやフィルムの暑さ対策も必要になります。できるだけ日陰を選んで歩いたり撮影したりはしていますが、特に大判カメラの場合、撮影の準備や撮影そのものに時間がかかるので、どうしても日にさらされる時間が長くなります。
ということで、今回は私がやっている暑さ対策についてご紹介します。
日傘ホルダー&日傘
夏の撮影でいちばん苦労するのは、いかに直射日光を浴びないようにするかということです。森の中などのように木が生い茂っているところは有難いのですが、自然相手の撮影なのでなかなか都合よくはいきません。
そこで、人工的に日陰を作ろうということで、三脚に日傘を取付けて撮影に臨んでいます。
私が使っているのは、エツミの「傘ホルダーレインブラケット DXⅡ」という製品で、これに日傘を取付けて使っています。もともとは雨降りの日の撮影用にということで用意したものですが、夏の日除け対策にも役立っています。
この製品を購入したのは10年以上前になると思います。かなり以前から販売されていたもので、まるでメタルベンダーを使って手作業で作ったような手作り感満載の風貌です。
最近はクランプ型の傘ホルダーの類いがたくさん販売されていますが、ちょっと力がかかると壊れてしまいそうな気がして食指が動きません。その点、この傘ホルダーはハンマーで力いっぱいたたいてもびくともしなさそうです。
この製品は2つのパーツに分かれているのですが、L型に曲がっているパーツ(固定プレート)は三脚の雲台を固定するネジに差し込み、そのまま運台を締めつけて使用します。取り付けたり外したりが面倒なので、私は取り付けたままにしています。ここに、もう一つのパーツ(ブラケット)を取付けて使用します。こちらは取り付けたままにしておくと三脚の持ち運びの際にとても邪魔になるので、使用するときに取り付けるようにしています。
何ともシンプルな構造ですが結構しっかりしていて、大きめの傘でもぐらつくことがありません。傘の取り付け角度は前後にそれぞれ30度ほど調整ができるので、撮影アングルや日差しの向きなどに合わせて動かすことができます。
傘の柄の直径が概ね10mm以下であればどんな傘でも問題なく取り付けることができますが、私は撮影の際は折りたたみ傘を持ち歩いているので、それを使用しています。
人工的な小さな日陰ですが、この日陰があると無いとでは夏の撮影時にかかる負担は雲泥の差です。
カメラ用の日除けカバー
日除けの傘があれば自分自身だけでなくカメラも日差しから守ることができるのですが、太陽の位置や角度によってはどうしてもカメラに直射日光が当たってしまうという場合もあります。真夏の強烈な日差しにさらしておくとカメラの筐体や蛇腹がものすごく熱くなります。このような状態を長時間続けておくと、カメラへのダメージも大きいだろうと思われ、その対策用にカメラカバーを持ち歩いています。
これは、100均で購入した保冷袋を切り開いて、カメラにかぶせるようにしたものです。これだけだと腰がなくてフニャフニャしてしまうので、内側に薄手の段ボール紙を貼っています。
これをカメラの上にかぶせ、左右両側に取り付けたゴム紐をカメラの下側に回しかけて固定するだけという単純なものです。
使用するレンズによってレンズ自体の長さや繰り出す蛇腹の長さが異なるので、あまりピッタリとした寸法にするのではなく、若干大きめにしておいて、前後に自由に動かせるようにしています。
以前は白っぽい色のタオルをカメラにかけて日除けをしていたのですが、タオルをかけてしまうとカメラの操作がしにくくなるのと、タオルがカメラに密着してしまうので、以外と熱が伝わってしまうということがあり、このカバーを使うようになりました。
とても軽く、畳んでカメラバッグに入れておけば邪魔にもならないので思いのほか重宝しています。
フィルム用保冷バッグ
暑い夏の撮影でもっとも神経を使うのがフィルムです。フィルムは冷凍保存ができるくらいですから寒さには強いのですが、高温のところに長時間さらされると乳剤が変質してしまいます。なので、暑い季節に野外撮影に行くときは、フィルムをできるだけ涼しいところに保管するようにしています。
本来は保冷剤を入れた保冷バッグを使うのが望ましいのですが、かさばってしまうので現実的ではありません。
そこで、小さな保冷袋にフィルムを入れて携行するようにしています。
この保冷袋はフィルム用というわけではありませんが、ちょうど4×5判のフィルムホルダーが入る大きさのものを見つけたので購入したものです。4×5判フィルムホルダーが6枚と、ブローニーフィルムが5~6本入ります。
保冷剤を入れているわけではないので冷やすことはできませんが、フィルムの温度が上がるのを極力抑えることはできます。この保冷袋ごとカメラバッグに入れています。
4×5判フィルムホルダーが6枚だと両面で12枚のフィルムを携行することができるので、手ごろな大きさだと思います。
クールタオル
野外撮影の際にタオルは汗を拭くだけでなく様々な用途に使えるので傾向は必須ですが、暑い時期に普通のコットンタオルを首にかけていると熱がこもってさらに暑く感じます。吸水性には優れているので何かと便利ではありますが、暑さ対策という点からするとイマイチといったところです。
私は少しでも涼しさを感じられるようにということで、暑いときの野外撮影にはクールタオルを用いています。
この類いの商品はたくさん販売されていて、どれが良いのやら判断に迷いますが、私が使っているのは特別なものではなく、薄い生地のクールタオルです。水で濡らした後、絞ったりブンブン振ったりするとひんやり感のあるタオルになります。暑いときは20分もすれば水分は抜けてしまいますが、それでも肌触りがサラサラした素材なので気持ちが良いです。乾いた状態で首にかけていても、熱がこもるような感じはありません。
冷却スプレー
渓流沿いを歩いて撮影しているときのように、常に手が届くところに水がある場合は、タオルが乾けばすぐに濡らすことができますが、山や森に入るとなかなかそういうわけにはいきません。携行している飲み水でタオルを濡らすということもできますが、大量の水を持ち歩いているわけではないので、飲用以外の用途に使うことはほとんどありません。
そこで、濡れタオルの代用として重宝するのが冷却スプレーです。
あまり容量の大きなものは重いしかさばるので、ほどほどの大きさのものをカメラバッグに入れています。タオルに吹きかけるとすぐにキンキンに冷えるし、薄手のTシャツなどの上から吹きかけるととてもひんやりとします。
ただし、ひんやり感はそう長くは続かないので、一時的に冷やすだけの効果です。それでも、暑さに火照った体にはありがたい存在です。
直接肌に吹きかけると冷たさを通り越して痛みを感じるので要注意です。
瞬間冷却材
冷却スプレーは局所的、かつ、短時間しか冷えないのに対して、もう少し長い時間、体を冷やしたいというときのために瞬間冷却材を携行しています。
外袋を叩いて中の袋を破ると、中に入っている硝酸アンモニウムと水が反応して瞬時に冷たくなる仕組みのようです。
外気温によっても違うのでしょうが、暑いときでも20分くらいは冷たい状態を保ってくれます。これを手ぬぐいなどにくるんで首筋や額に巻いておくと体全体が冷える感じがします。
軽いので5~6個持ち歩いてもそれほど負担にはなりませんが、私は3個ほどを携行して、本当に暑いときにだけ使うようにしています。
とても便利なアイテムですが、使い終わった後、ゴミになってしまうのが難点です。
防虫スプレー
防虫スプレーは暑さ対策というわけではありませんが、特に初夏から秋口にかけては虫に刺されるリスクも高いので、防虫スプレーは常に携行しています。
これもいろいろな商品が販売されているので自分に合ったものを使えばよいのですが、私は天然由来成分配合と書かれたものを使っています。これまでたくさんの種類の防虫スプレーを使ってみましたが、臭いがきつかったり、スプレーすると肌がべたついたりするものも多くあり、適度な香りとサラサラ感のあるものということで、今はこれを使っています。
携行するので、できるだけ小さなボトルのものを購入しています。
防虫スプレーはその名の通り虫よけで、いちばんなじみ(?)があるのが蚊だと思います。確かに蚊はどこにでもいるし、刺されると痒くて撮影の集中力が低減するし、防御したい虫の代表格ではありますが、実は私がいちばん避けたいのはアカウシアブです。蚊に比べると出会う頻度は格段に少ないのですが、どこにでも生息しているらしいので、どこで遭遇しても不思議ではありません。
このアカウシアブ、見た目の大きさも姿かたちもスズメバチにそっくりです。ハチの場合、こちらが何かしなけば刺すことはないですし、追い払えば逃げていきますが、アカウシアブは動物の血液を吸うことが目的なのでしつこくつきまとい、追い払っても逃げません。刺すといういうよりは血液を吸うために肌を噛み切るらしいのですが、そうすると大きく腫れて痛みもあり、それが何日も続いて大変なことになるようです。
私もアカウシアブには何度もつきまとわられたことがあります。幸いにもまだ噛まれた経験はありませんが。
防虫スプレーがアカウシアブにどの程度の効果があるかわかりませんが、虫が嫌がる臭いであれば寄ってこないのではないかと思い使っています。
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年々、夏の暑さが厳しくなる気がしており、夏の野外撮影は本当にしんどいと感じることが増えたように思います。毎年、自分が歳をとっていることも影響しているかもしれませんが...
このような暑いときに撮影に行かなくてもよいではないかと思ったりもしますが、やはり、この時期でなければ撮れないものもあるわけで、暑い々々と言いながらもカメラを背負って出かけていきたくなります。
20年くらい前まではこのような暑さ対策グッズなど持たずに出かけていたと思うのですが、年齢を重ねたことを差し引いても、近年は急速に暑さが増していると思います。
いろいろなものを携行すればそれだけ荷物が重くなるわけで、本来は暑いときは荷物を軽くしたいのに、それに逆行している現実があります。
そういえば、最近、水冷式のベストが脚光を浴びているようで、鳥肌が立つほど涼しいというレポートを見たことがあります。そんなに効果があるのかとだいぶ気になっているのですが、大量の水を背負った状態でさらにカメラバックを背負うことは困難だと思われ、今のところ購入に至っていません。
(2024.8.8)