500mlの現像液で4×5″シートフィルム4枚を処理する現像タンクの製作(1) 構想編

 以前、別のページでも書きましたが、私は4×5判のモノクロフィルムを自家現像する場合、主にパターソンのPTP116という現像タンクを使っています。一度に最大で6枚のフィルムを処理することができるので便利ではありますが、使用する現像液の量も多いので、もう少し少ない量で処理できれば良いと常々思っていました。国内外の製品をいろいろ物色してみたところ、SP-445という製品があるようなのですがかなり高額なため、思い切って自作してみようと思い至りました。
 どのような現像タンクにするか、今回はその構想についてまとめてみました。

条件は、500mlの現像液で4×5″フィルム4枚を現像

 なぜ500mlかというと、それほど深い拘りがあるわけではないのですが、ブローニーフィルムの現像に使っている現像タンクに必要な現像液が500mlだからという程度のことです。500mlであれば作り置きした現像液を保管するにも場所をとらずに済みますし、ブローニーの現像液をそのまま4×5判にも使うことができるので便利です。
 また、時どきしかやらないのですが、モノクロフィルムのリバーサル現像に使う薬剤の中にはワンショットで作り置きのきかないものもあり、そういった点からも使う量は少ないに越したことはありません。

 しかし、現像液が500mlであっても、処理できるフィルムが1~2枚しかないというような状態ではあまり効率が良くないので、少ない現像液といえども一度に4枚くらいは処理できるようにしないとあまり意味がありません。何年か前に、パターソンのPTP115というブローニー用の現像タンクで2枚の4×5判フィルムを現像するためのホルダーを作ったことがありますが、これはあくまでも1枚とか2枚という現像をしなければならないという時のためであって、常用するためのものではありません。

筐体(タンク)を直方体にすることで内容積を削減

 現像液の量が最も少なくて済む方法は、たぶんバット(皿)に現像液を入れて処理する方法だと思われます。印画紙を現像するのと同じようなやり方です。
 ただし、この方法だと結構場所をとるし、暗室、もしくはかなり大型のダークボックスのようなものが必要になります。また、バットに複数枚のシートフィルムを入れることで、フィルム同士が重なってしまって現像ムラができないかという心配もあります。

 そこで、バットを立てたような形の現像タンク、すなわち、SP-445のような直方体の形状をした現像タンクにすれば液の量も少なくて済むだろうということで、あれこれと思案をしてみました。

 そうしてイメージしたのがこのような現像タンクです。

 現像タンク本体の上部に現像液の注入口、および排水口を設け、本体側面には水洗い時の排水口を設けます。そして 、本体内部にはシートフィルム用のホルダーを入れるという構造です。
 円筒形の現像タンクのようにフィルムを回転させる撹拌はできないので、倒立撹拌のみとなりますが、これはもう妥協するしかありません。もし、どうしても回転撹拌をしたいということであれば、現像タンク全体を回転させる治具を別途用意するしかありませんが、将来的に必要性を感じるようであれば、あらためて検討することとします。

 いま考えている現像タンクの内部構造(透視図)はこんな感じです。

 明るい場所で処理できることを前提としているため、注入口や排水口からの光が内部に入り込まないようにしなければなりません。
 本体上部にある注入口に注がれた現像液は、二つのすべり台を流れるようにして本体内部に入ります。向かい合わせに設置されたすべり台によって、注入口からの光の入り込みを防ごうという狙いです。

 また、本体側面の排水口からの光の入り込みを防ぐため、2枚の斜光板を設置しておきます。

 本体側面の排水口は水洗の時にしか使わない予定なので、キャップ(栓)をしておけば光が入ることもなく、斜光板はなくても良いと思ったのですが、リバーサル現像のときは第一現像や漂白の工程の後にも水洗いを行なうため、それを考慮して斜光板を設置することにしました。
 水洗の際は上部の注入口から水道水を流しっぱなしにすると、本体底部からの水が側面の排水口から流れ出ていくという想定で、水洗の効率を狙ったつもりです。

 そして、フィルムホルダーですが、下の図のようなものを考えています。

 フィルムの出し入れがやり易いように、ホルダーの側板にスリット(溝)をつけただけの簡単なものです。フィルムとフィルムの間隔は約5mmで、これだけの隙間があれば問題ないと思われますし、フィルムの裏表を気にする必要もありません。フィルムの間隔をもっと詰めれば、同じ寸法で6枚とか8枚も可能になると思いますが、工作が結構大変そうです。
 また、倒立撹拌によってフィルムやホルダー自体が動いてしまわないように、本体内に入れた後にホルダーを固定する押さえ板を設置する予定です。

 本体は上から1/3くらいの位置で上部と下部の二つの分離するようにする予定で、上部は蓋のような形で下部に被さるようにします。ここからの水漏れを防ぐため、ゴムパッキンのようなものが必要になるかも知れません。
 なお、フィルムを装填するときは暗室やダークバッグなどの中で行なう必要がありますが、中に入れた後は明所で処理できるのは他の現像タンクと同じです。

 さて、この現像タンクに必要な現像液の量ですが、4×5判フィルムを縦位置にした状態で、若干の余裕をもって現像液に浸る深さを140mmとして内容積を計算すると、504mlとなります。実際にはフィルムホルダーや斜光板なども浸ることになるので、たぶん、460mlくらいで足りるのではないかと思います。

 素材はすべてアクリル板で作ることを想定しています。そこそこの強度もありながら加工のし易さもあり、高度な工作機械がなくても比較的簡単に加工できますし、材料費も安く済むのが理由です。
 その他には注入口や排水口に取付けるブッシングのようなものと、それ用のキャップがあれば材料は事足りそうです。

排水をシミュレーション

 もう一つ、現像タンクの重要な機能として、排水がスムーズにできるかということがあります。出来るだけ短時間に排水でき、そして、内部に現像液が残らないようにしなければなりません。光が入り込まないように斜光板を何枚も設置しているため、これがスムーズな排水を妨げる可能性があります。

 そこで、うまく排水ができるかどうかを簡単な図で確認してみました。
 下の図は、現像タンクを正立させた状態から、注入口のある方向に徐々に回転させていったときに、内部の現像液がどのように動くかを簡単に示したものです。

 上の図でわかるように、正立状態から180度回転(図の⑤の状態)させた時点で、斜めに設置された斜光板(すべり台)のところにわずかに現像液が残ってしまうことになりそうです。
 この残った分を排出するためには、さらに45度ほど回転(図の⑥の状態)させたのち、135度くらいの位置(図の④の状態)まで戻す必要がありそうです。倒立すればすべて排水完了というのが望ましいのですが、余計にひと手間が必要になってしまい、このあたりは再検討の余地があるかも知れません。
 簡単なシミュレーションなので、実際にはこの通りにいくかどうかわかりません。正確な図面を描いたうえで再度、検討が必要になりそうです。

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 手作り感満載の現像タンクですが、この構想通りにいけば案外と使い物になるのではないかと楽観視しています。
 また、アクリル板やブッシングなど、すべて購入したとしても材料費は3,000円もかからないと思われますので、手間賃の方がはるかに高額になってしまいます。購入したほうが結果的には安く済むと思いますが、作る楽しみということで。
 作り始める前にはもっと正確な図面を起こさなければなりませんが、もうしばらくの間、練り直しも含めて構想を温め、頃合いを見計らって材料の調達を始めようと思っています。
 実際の製作についてはあらためてご紹介できればと思います。

(2023.2.21)

#現像タンク #大判フィルム #フィルムホルダー

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