写真撮影における測光と露出設定(1) 露出を決める要素

 最近のカメラは自動露出計が内蔵されており、様々なシチュエーションに合わせた適正露出を自動で決定してくれますが、大判カメラなど、露出計が内蔵されていない場合は露出計を使って測光するなどして露出値を決める必要があります。経験を積むことである程度の露出は露出計がなくても決めることができるようになりますが、精度を高めるためには露出計が必要になります。
 写真撮影において露出の設定はとても重要な要素ですが、そもそも測光とはどういうことなのか、そして、測光した結果を露出設定にどのように反映するのか、というようなことを説明していきたいと思います。

光の表現の仕方と単位

 まず、測光や露出設定に最低限必要な光の定量的な表現の仕方(とらえ方)について触れておきたいと思います。
 写真というのは、光源から発せられた光が被写体に当たり、被写体面で反射した光がカメラ(撮像面)に入射することで像が記録されるわけです。

 光源(太陽とか電球など)から発せられる単位時間当たりの光の量を「光束」といい、単位は「ルーメン[lm]」で表します。そして、ある方向への光の強さを「光度」といい、単位は「カンデラ[cd]」です。
 そして、この光が被写体に入射するわけですが、被写体の単位面積あたりに入射する光束を「照度」といい、記号は「I」、単位は「ルーメン毎平方メートル[lm/m²]」、または「ルーメン毎平方フィート[lm/ft²]」で表されます。

  【照度】
    定義:単位面積あたりに入射する光束
    記号:I
    単位:[lm/m²]、または[lm/ft²]

 また、1[ft²]あたりの光束[lm]を、1[fc](フィートカンデラ)という単位で表すこともあります。
 すなわち、1[fc] = 1[lm/ft²]になります。

 光度が1[cd]の点光源から1[sr]内に放射される光束が1[lm]となります。
 (ステラジアン[sr]とは、半径rの球体の表面を、表面積がr²となる円で切り取ったときの錐面と球の中心との立体角になります。球の表面積は4πr²ですので、光度1[cd]の光源が全方向に放射する光束は4π[lm]となります。)

 照度Iが入射した被写体面は反射率ρの反射面となり、観測者(カメラ)からは見かけ上の単位面積当たりの明るさとして認識されます。これを「輝度」といい、記号は「B」、単位は「カンデラ毎平方メートル[cd/m²]」、または「カンデラ毎平方フィート[cd/ft²]」で表されます。
 これは、反射面によって照度が輝度に変換されたことを意味し、反射面は照度を受けて光る二次光源と言えます。

  【輝度】
    定義:見かけ上の単位面積あたりの明るさ
    記号:B
    単位:[cd/m²]、または[cd/ft²]

 また、[fL](フィートランバート)という単位が用いられることがあり、1[fL] = 1/π[cd/ft²]になります。

 写真撮影における測光とは、この「照度」、または「輝度」を測定することをいいます。

露出を決める要素とその関係

 実際に測光した照度、または輝度をもとに露出値を決めることになるわけですが、その要素は照度、輝度を含めて5つあります。

  (1)絞り値(F値)
  (2)露出時間(シャッター速度)
  (3)被写体の照度
  (4)被写体の輝度
  (5)感材の感度(ISO感度)

 照度と輝度は必ずしも両方必要ではなく、どちらか一方だけで露出値を決めることができます。

 この5要素の関係は、被写体の照度もしくは輝度と、感材の感度から露出量が決定され、それを絞り値と露出時間の組合せに換算するということになります。
 そして、これらを簡易に計算するため、APEXシステムという方法(仕組み)によってそれぞれの要素が以下のような数値に置き換えられています。

  絞り値  –> Av
  露出時間 –> Tv
  照度   –> Iv
  輝度   –> Bv
  感度   –> Sv

 これらの値から導き出される露出値はEvで表されます。

  露出値  –> Ev

 これによって、これらの数値の関係は以下のような非常に簡単な式によって表すことができます。

  Ev = Av + Tv …… 式(1)
  Ev = Iv + Sv …… 式(2)
  Ev = Bv + Sv …… 式(3)

 では、これらの数値について、順番に説明していきます。

絞り値(F値)とAvの関係

 絞り値というのはF5.6とかF8とか、カメラを扱う方であれば非常になじみの深い数値ですが、この値はレンズの焦点距離と有効径によって決まり、以下のような関係式が成り立っています。

  F値 = 焦点距離/有効径 …… 式(4)

 例えば、焦点距離50mm、有効径25mmのレンズの場合、F値は2になります。
 F2から1段絞るとF2.8、さらに1段絞るとF4となり、1段絞るとF値は√2倍(約1.4倍)になっていきます。

 しかし、これだと計算がしにくいので、1段絞ったら1だけ上がる数値に置き換えたのが「Av」です。
 F値をAとすると、AとAvは以下のような関係になります。

  Av = 2log₂ A …… 式(5)

 この式にF値(A)をあてはめると、以下のようになります。

   <F値>  <Av> 
   0.7   -1
   1    0
   1.4   1
   2    2
   2.8   3
   4    4
   5.6   5
   8    6
   11    7

 Avとは、絞りF1.0をAv=0として、絞りの段数を表していると言い換えることができます。Avの値が1増えると露出量は1/2倍(半分)になります。
 F1.4とF5.6を例にとると、それぞれのAvは1と5ですから、その差となる4がF1.4からF5.6までの段数ということになります。そして露出量は1/2 ^ 4 = 1/16となります。

 逆に、AvからF値を求める場合は、下の式になります。

  F値 = √2 ^ Av …… 式(6)

露出時間(シャッター速度)とTvの関係

 次に露出時間についてですが、露出時間をTとすると、TとTvの間は下のような関係になっています。

  Tv = -log₂ T …… 式(7)

 この式にあてはめると、露出時間1秒をTv=0とし、露出時間が半分(シャッター速度が2倍)になるとTvの値が1増え、露出時間が2倍(シャッター速度が半分)になるとTvの値が1減ることがわかります。

  <露出時間[s]> <tv>
    2     -1
    1      0
    1/2     1
    1/4     2
    1/8     3
    1/15    4
    1/30    5
    1/60    6
    1/125    7

 Avと同様に、Tvは露出時間(シャッター速度)の段数を表していることになります。Tvの値が1増えると露出時間は1/2倍(半分)になります。
 Tvを求める式でlogの逆数をとっているのは、露出時間が小さく(短く)なるほど、Tvの値を大きくする必要があるからです。

 また、下の式により、Tvから露出時間(T)を求めることができます。

  T = 1 / (2^Tv) …… 式(8)

AvとTvの関係

 絞りを1段絞ったら露出時間を2倍にすれば同じ露出が得られるというのは経験則で理解していると思いますが、これを式で表したのが式(1)です。

  Ev = Av + Tv …… 式(1)

 例えば、絞り値F2.8(Av=3)、露出時間1/60秒(Tv=6)の時と、 絞り値F5.6(Av=5)、露出時間1/15秒(Tv=4)の時はいずれも Evの値が9になるので、同じ露出値であることがわかります。
 つまり、AvとTvを足して9になる組合せのすべてが同じ露出値になる、ということを表した式であることがわかると思います。

 このように、絞り値と露出時間をそれぞれAv、Tvという値で表すことで、露出値の扱い(計算)が簡単になります。見慣れたEvの値がこのような構造になっていることも理解いただけるのではないかと思います。

被写体の照度とIvの関係

 露出値を決める5つの要素のうち、実際に測光対象となるのが被写体の照度、もしくは輝度ですが、まずは照度についてです。
 APEXの定義にあてはめると、被写体の照度IとIvには以下の関係式が成り立ちます。

  Iv = log₂(2^4/100)・I = log₂(I/6.25) …… 式(9)

 APEXの定義では、照度の単位に[fc](フィートカンデラ)が用いられているようです。6.25[fc]をIv=0としていますが、なぜこの値が用いられたのか、その理由は良くわかりません。下の表でわかるように、照度[fc]の値が切れの良い数字になるということで決められたのかもしれません(例えば、100[fc]をIv4にしたとか)。

 上の式に照度IとIvをあてはめると以下のようになります。

  <照度[fc]> <Iv> 
   3.125   -1
   6.25   0
   12.5   1
   25    2
   50    3
   100    4
   200    5
   400    6
   800    7

 照度が2倍になるとIvの値が1増え、照度が1/2倍(半分)になるとIvの値が1減るのはAvやTvと同様です。

 ちなみに、Iv=0のときの照度6.25[fc]を、なじみのある単位[lx](ルクス)に置き換えると約67ルクスになります(1[fc]=10.764[lx])。これは、夜の街灯下に近い感じです。蛍光灯照明されたオフィス内は6~700ルクスと言われていますので、かなり暗いことがわかると思います。

 一般に、照度は「入射光式露出計」で測光します。被写体に当たる光の量を測定するので被写体の色などの影響は受けませんが、被写体のある場所で測定しなければならず、風景などのように被写体が遠方にある場合は測定が困難です。

被写体の輝度とBvの関係

 輝度は[fL](フィートランバート)という単位を用いています(1[fL] = 1/π[cd/ft²])。
 被写体の輝度BとBvをAPEXの定義にあてはめると、以下のようになります。

  Bv = log₂B …… 式(10)

 これは、輝度1[fL]がBv=0となります。

 上の式に輝度BとBvをあてはめると以下のようになります。

  <輝度[fL]> <Bv> <輝度[cd/ft²]>
   0.5    -1   0.16
   1     0   0.32
   2     1   0.64
   4     2   1.27
   8     3   2.55
   16     4   5.09
   32     5   10.2
   64     6   20.4
   128    7   40.7

 輝度が2倍になるとBvの値が1増え、輝度が半分になるとBvの値が1減るのは他の要素と同様です。

 さて、照度Iで照らされた被写体の見かけ上の明るさを輝度というのは上で説明しましたが、光源が理想的な均等拡散反射面を照らしているとき、照度と輝度の間には以下のような関係が成り立ちます。

  輝度B = (反射率ρ/π)・照度I …… 式(11)

 この式に照度[fc]と輝度[cd/ft²]をあてはめると、反射率ρは16%となります。
 例えば、上の表から、Iv=4の照度は100[fc]、Bv=4の輝度は5.09[cd/ft²]ですので、これらの値を、上の式をもとに反射率を求めるように変形した式にあてはめてみます。

  反射率ρ = 輝度B/照度I× π
       = 5.09 / 100 x 3.14
       = 0.16

 一般に被写体の反射率は18%(ニュートラルグレー)という値が採用されていますが、この定義式からするとAPEXでは16%としているようです。その理由は定かではありませんが、16%とすることで輝度[fL]の値が切れの良い数字(1、2、4、8…)になるからではないかと勝手に思ってます。

 因みに、一般に使われる反射率18%という値は、白と黒の中間の反射率だという理由で採用されているようです。
 かなり反射率が低い黒色でも3%ほどは反射され、また、かなり反射率の高い白色でも100%の反射はなく、96%程度といわれており、この値を3%を起点に反射率が2倍ごとの数列で表現すると、

  3 - 6 - 12 - 24 - 48 - 96

 となります。
 ここに、各数値の中間の値を追加すると以下のようになります。

  3 - 6 - 12 - 24 - 48 - 96
   4.5 - 9 - 18 - 36 - 72

 この数列でわかるように、18%がちょうど中間の値ということになります。

 なお、被写体の輝度は「反射光式露出計」で測光しますが、同じ照度であっても被写体の色や表面の状態などによって輝度は異なりますので、測光値も変わってきます。一方、風景など遠方の被写体でも測定できるというメリットがあります。

感材の感度(ISO感度)とSvの関係

 露出を決める要素の5番目は感材の感度です。
 一般に「ISO感度」と呼ばれており、ISO100とかISO200などと表現されています。絞り値やシャッター速度と同様にカメラ側(またはフィルム)で設定するものなので、なじみ深い数値です。

 感度SとSvをAPEXの定義にあてはめると以下のようになります。

  Sv = log₂(2^5/100)・S = log₂(S/3.125) …… 式(12)

 これは、ISO3.125をSv=0とし、ISO感度が2倍になるとSvの値が1増えます。

 上の式にISO感度SとSvをあてはめると以下のようになります。

   <ISO感度> <Sv>
    1.5625  -1 
    3.125   0
    6.25    1
    12.5    2
    25     3
    50     4
    100    5
    200    6
    400    7

 なじみの深いISO100はSv=5となります。

IvとSv、BvとSvの関係

 感材の感度(ISO感度)が高ければ多少暗くても写りますし、また、明るい場所であればISO感度が低くても問題ないわけですが、これを式で表したのが式(2)、および式(3)になります。

  Ev = Iv + Sv …… 式(2)
  Ev = Bv + Sv …… 式(3)

 例えば、輝度128[fl](Bv=7)の被写体をISO100の感度(Sv=5)で撮影する場合と、輝度32[fl](Bv=5)の被写体をISO400の感度(Sv=7)で撮影する場合、いずれもEvの値は12であり、同じ露出値になることを示しています。
 このように、被写体の照度、輝度、感材の感度をそれぞれ、Iv、Bv、Svという値で表すことで、露出値の計算が容易になります。

 なお、感材の感度をどのような基準で決めたのかはわからないのですが、例えば、輝度が1[fL](Bv=0)の被写体を、絞り値F1.0(Av=0)、露出時間1秒(Tv=0)で撮影した時、被写体が中庸濃度で写る感材の感度をISO3.125(Sv=0)としたのではないかと思います。式(1)から式(3)を成り立たせるためにはそうする必要があるように思います。

露出値の式が意味すること

 露出値Evを求める3つの式のうち、式(1)は絞り値と露出時間と露出値の関係を表していますが、Av、およびTvの値が大きくなるほど、入射する光の量は少なくなることを意味します。
 一方、式(2)、および式(3)は照度、輝度、感材の感度と露出値の関係を表していますが、Iv、Bv、およびSvの値が大きくなるほど、より多くの光の影響を受けることを意味しています。

 式(1)から式(3)は等価ですから、以下のようになります。

  Ev = Av+Tv = Iv+Sv = Bv+Sv

 すなわち、同じ露出値を得るためには、より多くの光の影響を受ける状態(Iv、Bv、Svが大きい)のときは入射する光の量を少なく(Av、Tvを大きく)するということを示しており、逆に、光の影響が少ない状態 (Iv、Bv、Svが小さい)のときは入射する光の量を多く(Av、Tvを小さく)するということを示しており、 3つの式が等価であることがわかると思います。
 写真撮影ではごく当たり前に行なわれていることですが、式で表すとこのようになります。

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 今回は露出を決める5つの要素とそれらの関係について説明をしましたが、次回以降はこれらの値の具体的な使い方や測光の仕方等について触れていきたいと思います。

(2021年9月4日)

#露出 #EV値

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