日本は山が多いので各地でたくさんの滝を見ることができますが、やはり、東北地方と中部地方は滝が多いイメージがあります。滝の明確な定義はあいまいなようで、どれくらいの高さ(大きさ)から滝というのかはわかりませんが、山形県のホームページを見ると、「日本一の滝王国 山形」と書かれていますし、地図を見ても滝の記号が多いと感じるのは東北地方です。
比較的水量も多く、緑が鮮やかな梅雨の時期に、山形県から秋田県にかけて滝巡りをしてみました。たどり着くのまでに時間のかかる滝もあるので、一日に訪れることのできる滝の数は限られてしまいますが、実際に行った滝の中からいくつかをご紹介します。
【Table of Contents】
くぐり滝(山形県)
南陽市を走る国道348号線から分岐する細い道があり、2~3kmほど進むと駐車場に着きます。訪れる人は多くありませんが、車のすれ違いができない狭い道なので注意が必要です。
駐車場からは歩きになりますが、2~3分歩くと滝が見え、さらに2~3分で滝に到着します。
落差は14mほど、雪解けの頃は水量も多いようですが、訪れた時は少なめでした。
この滝の特徴は何と言っても、岩にぽっかりと開いた大きな穴から流れ落ちていることです。なぜこのような穴があいたのかわかりませんが、穴の直径は5mほどもあるそうなので、かなり大きな穴です。
また、この滝は三方がこのような絶壁に囲まれていて、滝つぼに立つととても圧迫感があります。
この滝を近い距離(滝つぼの辺り)から撮ろうとすると、カメラを上に振ってかなり見上げるようなアングルでの撮影になります。大きな岩の穴を入れようとすると短焦点(広角)のレンズでの撮影になり、上方が小さくなってしまいます。それを防ぐため、目いっぱいのアオリ(フロントライズ)をかけています。
滝の下流方向は開けていますので、滝から離れたところまで移動すれば長焦点レンズでも全貌を撮ることができます。
また、この日は曇り空だったこともあり、空は入れたくなかったので、上辺はギリギリのところでカットしています。そのため、岩穴の上部が少し切れています。岩穴の上部もすべて入れたい場合は、やはり少し離れたところから長めのレンズで撮る必要があります。
撮影していた時間はおよそ一時間ですが、その間、訪れる人は誰もいませんでした。
慈光滝(山形県)
この滝は真室川町から酒田市に向かう国道344号線沿いにあります。道路のすぐ脇にあるので、車で走っていても目に入ってきます。すぐ近くに車2台分ほどの駐車スペースがあり、アクセスは非常に良いのですが、あまりにも道路に近いため、三脚を立てるには道路反対側の草むらということになってしまいます(滝の前で三脚を立てようとすると車にはねられる危険ありです)。
黒い岩肌を滑り落ちるような、とても優美な感じのする滝です。だいぶ散ってしまっていますが、わずかに赤いヤマツツジの花が見えます。
落差は6mほどあるようなのですが、この写真に写っているのは4mほどです。全景を入れようとすると道路の脇に立って覗き込むような位置で撮らねばならず、手持ち撮影しかできません。ということで、この写真は道路反対側からガードレール等が入らないギリギリの範囲で構成しています。
雨が上がった直後で全体に柔らかな光が回り込んでいますが、画左側の木がちょっと明るすぎる感じです。
また、この滝の反対側の路肩から河原に降りて滝の前まで行くことができるのですが、流木や木の枝、枯れ草などが雑然としていたので撮影はあきらめました。
数年前、紅葉の時期に訪れたことがあり、華やかに色づいた中に黒と白のコントラストの滝がとても綺麗でした。その時は縦構図で紅葉を上に多く入れたのですが、今回は上方が明るすぎたので横構図にしてみました。
露光時間は4秒ですが、時々、車が目の前を通るので、運が悪いと車の屋根が写り込んでしまい、高いフィルムが一枚、無駄になってしまいます。
玉簾の滝(山形県)
弘法大師が神のお告げによって発見したと伝えられている落差63m、山形県随一の高さを誇る見事な滝です。広い駐車場が完備されており、駐車場から滝まで徒歩10分ほどです。滝の前には御嶽神社のお社があり、かつては山岳宗教の修験場だったようです。
太陽の光によって滝の飛沫が玉簾のように見えることからついた名前らしいです。
水量も多く、豪快に流れ落ちるので、滝からかなり離れていても飛沫が飛んできます。滝つぼの前まで行くことができますが、びしょ濡れになる覚悟が必要です。
この写真を撮影した神社の裏手に当たる場所は昼間でも薄暗く、滝の飛沫の影響もあるのか、とてもひんやりとしています。長時間、一人きりでいると何だか心細くなってきます。
本当は曇っていてほしかったのですが、ご覧のように見事に晴れ渡ってしまいました。周囲には大きな木があるので、晴れてしまうとコントラストがつきすぎてしまいます。全体に光りの回り込んだ状態を撮りたかったのですが、自然はこちらの思うようにはなってくれません。
周りの木や斜面をシルエットになるようにして、滝を取り囲むような構図にしてみました。偶然のタイミングですが、滝の背後の右側の崖に木の影が落ち込んでいるのがいいアクセントになってくれました。
滝を撮るときは人工物は入れないようにすることがほとんどですが、敢えて今回は滝つぼの前に設置されている柵と立て看板のようなものを小さく入れてみました。
なお、この滝はゴールデンウィーク期間と夏休み期間、夜になるとライトアップされるようです。
奈曽の白滝(秋田県)
日本海沿いに北上する国道7号線から鳥海山方面に分岐する道路に入り、10分ほど走ると到着します。広い駐車場があり、一帯は奈曽の白滝公園になっています。
滝に行くにはこの公園内を抜けるか、金峯神社の境内を通るかのどちらかですが、滝が見える観瀑台のようなところまでは徒歩で15分ほどです。金峯神社は鳥海山の修験の拠点だったらしく、境内はかなり急な石段が続いています。
観瀑台は金峯神社の本殿の近くにあるのですが、障害物がなく滝の全貌が見えるのはここと、長い石段を下りた先の滝つぼの前だけです。
下の写真は観瀑台からではなく、奈曽川にかかっている吊り橋の上から撮影したものです。
奥に見えるのが奈曽の白滝の滝つぼで、そこからの流れを撮ってみました。滝は落差26m、幅11mの豪快な滝ですが、滝そのものよりもその先の流れがとても綺麗でした。
雨が降ったり止んだりという天気でしたが、滝を撮るには最高です。水が少し濁っていましたが、長時間露光で撮影すれば波が白くなるので、濁りをごまかすことができます。
濡れた岩のテカリを抑えるためにPLフィルターを使おうかと思いましたが、岩がそれほど多くないのと、緑が不自然にな色になってしまうのを避けるため、PLフィルターは使用していません。
下側(手前側)をもう少し広く入れたかったのですが、すぐ下に吊り橋を支えているワイヤーがあり、それが写り込んでしまうので手前で止めています。
吊り橋の上に三脚を立てているので、人が吊り橋に入ると大きく揺れます。しかも全長75mの橋を渡りきるまで揺れ続けるので、この場所で撮影するのは人の少ない早朝がお勧めです。
元滝伏流水(秋田県)
奈曽の白滝から車で数分も走ると元滝伏流水の駐車場に着きます。駐車場からは整備された遊歩道があり、15分ほどで伏流水が見えてきます。
元滝はさらに上流になるらしいのですが、がけ崩れで立ち入り禁止になっていました。
元滝伏流水は鳥海山の溶岩の末端から流れ出ている湧き水で、水温は年間を通じてほぼ変わらず、10度くらいとのことです。とてもきれいな水で、イワナやヤマメがいるらしく、撮影に行った時も釣りをしている人を見かけましたが、釣れたところは見られませんでした。
岩の間から流れ落ちる水と苔むした岩、うっそうとした森がつくる景観は、形容しがたい、ぞくっとするような空間です。
川の中ほどに草が根を下ろした小さな岩があったので、これを手前に入れて撮影しました。ほとんど無風状態だったので、草もブレずに写ってくれました。
画左側は上部に大きな岩があり、その陰になっているので、右の方に比べるとかなり暗い状況です。右半分に弱いハーフNDフィルターをかけても良いのですが、これくらいの明暗差があった方が奥行きが感じられると思います。
全体にあまり明るくしてしまうと、ぞくっとするような感じが薄れてしまうので、露出は切り詰め気味にしています。
もう少し下流(写真の左方向)に行くと川の中に苔むした大きな岩がゴロゴロしており、また違った美しさを見ることができます。
止滝(秋田県)
十和田湖に向かう国道103号線、青森県との県境に近いところにある滝です。103号線に沿って流れる大湯川にある滝で、道路のすぐ脇にあります。大湯川の水量はあまり多くないのですが、この止滝のところは川幅が狭くなっているので、大きな滝ではありませんが迫力があります。
滝つぼのすぐ上(道路脇)には小さな神社のお社があり、滝が祀られているのかも知れません。
滝の下流すぐのところに駐車場があるので、滝へのアクセスはとても便利です。
下の写真は、滝つぼの少し下流にある橋の上から撮ったものです。
川の流れを多く入れたかったのですが、水量が少なく、あまり風情がなかったので、上の緑を多く入れました。また、滝の手前に伸びている枝が滝にかかり過ぎないポジションから撮影しています。
折り重なる木々が平面的にならないように近くにある枝を大きく入れてみましたが、風でブレてしまい、ちょっと中途半端な感じです。これが止まってくれていると、全体がもっとすっきりとした印象になると思うのですが。
この写真ではよくわかりませんが、カエデの木が何本もありましたので、秋の紅葉の季節はとても美しい景色になるのではないかと思います。
銚子の滝(秋田県)
止滝から少し上流に行き、国道103号と104号が分岐している少し先にある滝です。滝のすぐ前まで車で行くことができます。
江戸時代の紀行家、菅江真澄が訪れたらしく、「菅江真澄の道」と書かれた案内柱が立っています。
銚子の滝とか銚子滝という名前の滝はあちこちにあり、滝の形が銚子に似ていることからつけられたものが多いですが、この滝も昔は銚子の形をしていたようです。
落差は20mほど、季節によってはかなりの水量があるようです。
滝は北西を向いて流れ落ちているので、晴れた日の日中は逆光になってしまうのと、晴れているとコントラストが強すぎて滝が目立たなくなってしまいます。やはり曇りとか雨の日がお勧めです。
滝つぼは左右にかなり広がっているので、立つ位置によって滝の形や見え方がずいぶん変わってきます。
下の写真はほぼ正面から撮影したものです。
滝の上部にヤマツツジが咲いていたので、これをできるだけ入るように、かつ、空は入れないようにというフレーミングです。
画左側の柱状節理がとても綺麗だったので、ここの質感が出るように露出を決めています。
水量はさほど多くないので、迫力というよりは繊細な美しさを感じますが、滝の下半分と左側の柱状節理の部分を切り取ると、美しさに加えて滝の迫力が感じられる写真になると思います。
この滝の少し手間に「錦見の滝」があり、林の中にたたずむ美しい滝です。この辺りは滝が密集しています。
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山形県と秋田県の滝、およそ20ヵ所を巡ってきましたが、訪れたにもかかわらず光の具合が良くなくて撮影しなかった滝もあります。そういう滝は、「また、出直してきなさい」と言われているのだと思い、再度、訪れてみたいと思っています。
今回、紹介できなかった他の滝については、別の機会にご紹介できればと思っています。
それにしても、滝というのは魅力があります。
(2022.7.9)