いわゆる大判カメラです。大判カメラの中では最も小さな4×5インチサイズのフィルム(通称シノゴ)を使います。
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フィールドタイプの大判カメラ
一口に大判カメラといっても色々なタイプがありますが、このカメラはフィールドタイプ(テクニカルカメラとも呼ばれています)に分類されていて、外に持ち出して撮影するときに便利な作りになっています。
折りたたむとコンパクト(といっても結構でかい)になります。距離計がついているタイプもありますが、私のは距離計なしのタイプです。このカメラを使い始めたころ、なぜ大判カメラで距離計が必要なのだろうと不思議に思いましたが、距離計があることで手持ち撮影が可能になるという話しを聞いてぶったまげたものです。このカメラで手持ち撮影する人を尊敬します。
私がこのカメラを使い始めて20年以上になりますが、これまでに蛇腹の交換が2回、オーバーホールが1回で、故障は一度もありません。もっとも大判カメラの場合、電子機器が入っているわけでもなく複雑な機構が組み込まれているわけでもないので、落としたりぶつけたりしない限り、壊れるようなところがないというのが実態です。
蛇腹は消耗品なので、使用頻度にもよるのでしょうが、私の場合は8~10年ほどで新しい蛇腹に交換しています。何年か使っているうちに折り目のところに小さな穴(ピンホール)が開いてきます。穴の数が少なければ補修して使いますが、数が増えてくると補修しきれないので交換ということになります。
カメラの主な仕様
このカメラの主な仕様は以下の通りです(リンホフマスターテヒニカ45 取扱説明書より引用)。
画面サイズ : 4×5インチ判
レンズマウント : リンホフ規格仕様
フロントライズ : 55mm
フロントフォール : ベッドダウンとティルトアップによる
フロントティルト : 前後各30度
フロントスイング : 左右各15度
フロントシフト : 左右各40mm
バックティルト : 前後各20度
バックスイング : 左右各20度
最大フランジバック: 430mm
収納時外形寸法 : 180mm(W)×200mm(H)×110mm(D)
重量 : 2,600g
フランジバック
私のLinhof MasterTechnika 45 の最小フランジバックは約50mmです。理論上は50mmくらいまでのレンズが使えることになりますが、私の持っているレンズで最も短いのは65mmです(35mmカメラに換算すると18mmくらいのレンズの画角に相当します)。
一方、最大フランジバックですが、カメラ自体は430mmまで可能ですが、私のカメラにつけている蛇腹はそこまで伸びないので、390mmくらいが限界です。ということで、65mmから400mmまでのレンズを持っていますが、400mmレンズはテレタイプと呼ばれるフランジバックが短いレンズです。
最大フランジバックが大きいというのは長い玉が使えるというメリットがありますが、その反面、レールを短くたためないというデメリットもあります。このカメラも65mmや75mmのレンズだとレールが写り込んでしまいますので、ベッドダウンするかフロント部をライズする必要があります。夜景などの暗い被写体を撮影する時など、気づかずにレールが写り込んでしまったという失敗も何度かあります。
フロント部のアオリ
大判カメラの特徴は何といってもアオリができることですが、風景写真の場合、それほど頻繁にアオリを使うわけではありません。
Linhof MasterTechnikaのアオリ操作の中で個人的にいちばんのお気に入りがフロントライズ(レンズ部を上げる)の仕組みです。ラチェットハンドルのようなものをスコスコ動かすと、フロント部分が上がったり下がったりします。上がったり下がったりと書きましたが、Linhof Master Technikaはノーマルの状態でフロント部が最下部にありますので、さらに下げるにはベッドダウンするしかなく、フロントフォール(レンズ部を下げる)はできなく、フロントライズのみというのが正しい表現かもしれません。ライズは55mmまでできますので、風景写真を撮る分には十分すぎるアオリ量です。
一方、フロントティルト(レンズ部を前後に倒す)はダイヤルを緩めた後、手で動かすので微妙な操作がしにくいというのが難点です。これに対して国産の大判カメラのWISTAは、ダイヤルをスリスリと回すことでフロント部がゆっくりと前後に傾いてくれるのでとても使い易いと思います。
フロントティルトは近景から遠景までパンフォーカスに写したい時など、比較的使う頻度の多いアオリです。フロントスイング(レンズ部を左右に首ふり)もパンフォーカスにしたい時などに使いますが、ティルトほどの使用頻度はありません。
そして、フロントシフト(レンズ部を左右に動かす)に至ってはほとんど出番がありません。この20年間で数回しか使ってないと思われます。
バック部のアオリ
このカメラのバック部(フィルム部)のアオリも特徴的で、4か所のねじを緩めるとバック部を約40mm、後方に引き出すことができます。しかも4本の軸が独立して動くので、ティルトとスイングを自由に行うことができます。ねじを緩めて引き出した状態ではバック部がグニャグニャとだらしなく動いてしまいますが、アオリの自由度は抜群だと思っています。これと同じ方式はHorseman45 FAなどのカメラでも採用されています。
フロント部のあおりはやりすぎるとイメージサークルの小さなレンズではケラレてしまうことがありますが、バック部のアオリではケラレることがないので、画像の変形が気にならない場合はあえてバック部のアオリを使うことがあります。
バック部のアオリを使った作例
バック部であおると近景を強調した写真を撮ることができます。下の写真は福島県にある小峰城と桜を65mmレンズで撮影したものです。バック部を大きくあおって、お城の天守閣にも頭のすぐ上にある桜にもピントをもってきています。
長年このカメラを使ってきましたが、とにかく作りが堅牢で使っていても安心感のあるカメラです。加工精度が素晴らしいのだと思いますが、各部が適度な重さをもって動き、ロックするとびくともしません。カメラによって写真の出来が異なるわけではありませんが、自分の撮影意図に応えてくれるカメラだと思っています。
このカメラの後継機であるLinhof MasterTechnika 2000については、別の機会にご紹介したいと思います。
(2020.7.28)